[第1実施形態]
実施形態によると、電極が提供される。電極は、集電体と活物質含有層とを備える。活物質含有層は、集電体上に設けられており、第1活物質部及び第2活物質部を含む。第1活物質部及び第2活物質部は、厚さ方向に沿って互いに積層され、活物質粒子をそれぞれ含む。第1活物質部は、集電体と第2活物質部との間に位置する。第1活物質部の長さは、活物質含有層の厚さTに対して0.7T以上0.95T以下の範囲内にある。第1活物質部の長さは、活物質含有層の厚さ方向と平行な方向である第1方向に沿った長さである。第2活物質部は固体電解質粒子を更に含む。第1活物質部の単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量E1(0を含む)と、第2活物質部の単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量E2との比E1/E2は、0以上0.01以下である。
実施形態に係る電極は、集電体側に位置する第1活物質部と表面側に位置する第2活物質部とを含む活物質含有層を含む。活物質含有層は、第1活物質部及び第2活物質部からなる二層構造であってもよい。第1活物質部は、活物質粒子及び任意に固体電解質粒子を含む。第2活物質部は、活物質粒子及び固体電解質粒子を含む。第2活物質部に含まれる固体電解質粒子の量は、第1活物質部に含まれる固体電解質粒子の量よりも多い。
実施形態に係る電極によると、レート特性及びエネルギー密度の双方に優れた二次電池を実現できる。すなわち、正極と負極との間をセパレータで隔てて放電を行った場合、リチウムイオンは、負極側から正極側へと移動し、セパレータと正極活物質含有層との界面から正極活物質含有層の内部へと向かって正極活物質粒子内に吸蔵される。充電を行った場合には、リチウムイオンは、正極側から負極側へと移動し、セパレータと負極活物質含有層との界面から負極活物質含有層の内部へと向かって負極活物質粒子内に吸蔵される。しかしながら、大電流で充放電を行った場合、低電流で充放電を行った場合と比較して、セパレータと活物質含有層との界面においてリチウムイオンの濃度が局所的に高まる。そして、この界面で活物質粒子内へのリチウムイオンの吸蔵又は放出反応が集中して行われる。これにより、活物質含有層の表面側から内部へのリチウムイオンの移動が阻害され、活物質含有層の集電体側において充電又は放電反応が十分に行われず、充放電容量が低下する。
このような問題を改善する方法として、固体電解質粒子を活物質含有層に混合する方法がある。固体電解質粒子はリチウムイオン伝導性に優れるため、活物質含有層内に固体電解質粒子が混合されると、固体電解質粒子を含まない場合と比較して、活物質含有層内のリチウムイオン伝導性が高まる。その一方で、活物質含有層において固体電解質粒子の割合が高まると、活物質粒子の割合が低下するため、電極のエネルギー密度が低下し得る。
実施形態に係る電極においては、局所的にリチウムイオンが集中する活物質含有層の表面側に固体電解質粒子が配置される。これにより、表面側でリチウムイオンと活物質粒子との充電及び放電反応が集中的に起こることが抑制され、活物質含有層の表面側から内部へのリチウムイオンの移動が促進される。そのため、集電体側に位置する活物質含有層においては、表面側に位置する活物質含有層と比較して固体電解質粒子の割合が著しく低い、あるいは、固体電解質粒子を含まなくても、リチウムイオンの吸蔵又は放出反応を十分に行うことができる。それゆえ、実施形態に係る電極は、集電体側に位置する活物質含有層に含まれる固体電解質粒子の量を低減できる。以上のことから、実施形態に係る電極は、優れたレート特性と高いエネルギー密度とを両立させることができる。
図1は、実施形態に係る電極の一例を概略的に示す断面図である。図1は、電極500の短辺方向又は長辺方向であるX方向及び厚さ方向であるZ方向に垂直なXZ平面で切断した断面図である。図1に示す電極500は、集電体50と、集電体50上に設けられた活物質含有層51とを含んでいる。集電体50は、活物質含有層51を担持していない部分、すなわち、タブ50aを含んでいる。活物質含有層51は、Z方向に沿って互いに積層する第1活物質部511と、第2活物質部512とを含んでいる。第1活物質部511は、Z方向において集電体50と第2活物質部512との間に位置する。第1活物質部511は、活物質含有層51の集電体側部と言い換えることができる。また、第2活物質部512は、活物質含有層51の表面側部と言い換えることができる。
第1活物質部511のZ方向の長さL1は、集電体50の主面から、第2活物質部512との境界BOまでの長さである。長さL1は、活物質含有層の厚さTに対して0.7T以上0.95T以下の範囲内にある。長さL1は、例えば、15μm以上80μm以下である。
第2活物質部512のZ方向の長さL2は、第1活物質部511の表面である境界BOから、活物質含有層51の主面までの長さである。言い換えると、長さL2は、活物質含有層の厚さTから、第1活物質部の長さL1を差し引いた値(T-L1)である。長さL2は、例えば、3μm以上20μm以下である。
活物質含有層の厚さT、第1及び第2活物質部の長さL1及びL2、第1活物質部の単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量E1、並びに、第2活物質部の単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量E2は、以下の方法により確認できる。
先ず、電池から電極を取り出す。実施形態に係る電極の活物質粒子が、二酸化チタン、チタン複合酸化物、ニオブチタン複合酸化物、及び、ナトリウム含有チタン複合酸化物からなる場合、この電極を正極として用いている場合には、電池を充電状態にしてから取り出すことが好ましい。また、実施形態に係る電極を負極として用いている場合には、電池を放電状態にしてから取り出すことが好ましい。
実施形態に係る電極の活物質粒子が、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムマンガンニッケル複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、リチウムリン酸鉄、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる場合、この電極を正極として用いている場合には、電池を放電状態にしてから取り出すことが好ましい。また、実施形態に係る電極を負極として用いている場合には、電池を充電状態にしてから取り出すことが好ましい。
取り出した電極を、例えば、エチルメチルカーボネートなどの有機溶剤で洗浄した後、集電体を取り除いて試験片を得る。この試験片において、集電体を取り除くことにより露出した活物質含有層の主面を、最深面とする。最深面の反対側の活物質含有層の主面を、最表面とする。走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて最深面から最表面までの長さを測定し、活物質含有層の厚さTとする。
次に、活物質含有層の厚さ方向の断面について、エネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive X-ray spectrometry:EDX)を用いて元素分析を行う。これにより、活物質含有層に含まれる元素を確認する。
次に、最深面について、X線光電子分光分析(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)を用いて分析を行う。XPS分析に際しては、リチウムと酸素を除く上記EDX分析により確認された元素を選択する。XPS分析の測定領域は、例えば、200μmφとする。また、XPS分析では表面について分析を行うため、測定領域の分析深さは、5nm以下である。このXPS分析により、活物質含有層の最深面における各元素の原子濃度を測定することができる。そして、リチウムと酸素を除き観察された元素の原子濃度における固体電解質粒子に特有の元素の原子濃度を算出することにより、測定領域における固体電解質粒子の単位面積当たりの含有量とみなすことができる。
固体電解質粒子に特有の元素は、例えば、La、Zr、Al及びCaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。すなわち、最深面の測定領域におけるリチウムと酸素を除き観察された元素の原子濃度に占めるLa、Zr、Al及びCaの原子濃度の総和を算出する。原子濃度を算出するときは、この固体電解質粒子の原子濃度の総和の算出を、最深面において5カ所の測定ポイントで行い、これらの平均値を得る。この平均値を、最深面の固体電解質粒子の含有量とする。5カ所の測定ポイントは、例えば、最深面の短辺方向において中央の位置で、長辺方向に沿って均等な間隔を有するように設けられる。
次に、最深面から活物質含有層の厚さ方向に沿って活物質含有層の厚さTの1/10の長さを有する領域を取り除いて、最深面から活物質含有層の厚さTの1/10の深さの位置にあり、最深面と平行な活物質含有層の面を露出させる。以下、この面を第1面という。活物質含有層の切削には、例えば、SAICAS(登録商標、Surface And Interfacial Cutting Analysis System)などの表面切削装置を用いる。なお、取り除く領域の深さは、3μmの厚さであってもよい。第1面について、最深面と同様の方法でXPS分析を行い、第1面の固体電解質粒子の含有量を得る。
これら一連の操作を、活物質含有層の厚さ方向に沿って活物質含有層の厚さTの1/10の長さ毎に、第X面に達するまで行う。第X面は、第X回目の操作で得られた、活物質含有層の最深面から活物質含有層の厚さTの1/10TXの深さに位置する最深面と平行な活物質含有層の面であり、固体電解質粒子の含有量の平均値が、閾値を初めて超えた面である。閾値は、例えば、第1乃至第X-1面の固体電解質粒子の含有量の平均値の100倍である。閾値は、例えば、10atm%である。第X-1面は、第X面の1回前の操作で得られた面である。第1面乃至第X-1面の固体電解質粒子の含有量の平均値を、第1活物質部の単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量E1とする。
次に、第X面と第X-1面との中間に位置し、最深面と平行な面の位置を確認する。すなわち、第X面と第X-1面との中間に位置する面は、最深面から(1/10TX-1/20T)μmに位置する。この面を、第1活物質部と第2活物質部との境界面とする。
次に、上記一連の操作を、第X面から最表面に達するまで行う。第X面乃至最表面の固体電解質粒子の含有量の平均値を、第2活物質部の単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量E2とする。
また、以上の方法により、第1活物質部の長さL1と、第2活物質部の長さL2とを算出できる。すなわち、第1活物質部の長さは(1/10TX-1/20T)μmであり、第2活物質部の長さは、(T-(1/10TX-1/20T))μmである。ここで、Tは活物質含有層の厚さである。
第1活物質部の単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量E1は、0.1atm%より低いことが好ましく、0.07atm%以下であることがより好ましい。第1活物質部の単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量E1は、0atm%であることが更に好ましい。含有量E1が低いと、活物質粒子の割合を高めて、二次電池のエネルギー密度をより高めることができる。
第2活物質部の単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量E2は、10atm%以上であることが好ましく、10.5atm%以上であることがより好ましい。含有量E2が高いと、活物質含有層の表面側でのリチウムイオンの移動が促進されるため、レート特性が高まる。その一方で、含有量E2が過剰に高いと、活物質粒子の割合、二次電池のエネルギー密度が低下し得る。したがって、含有量E2は、18atm%以下であることが好ましく、15atm%以下であることがより好ましい。
第2活物質部において、固体電解質粒子は、活物質含有層内に均一に混合されていることが好ましい。このような状態にあると、リチウムイオンの伝導性がより高まる。第2活物質部において固体電解質粒子が均一に混合されているとは、第X面乃至最表面の各々の固体電解質含有量の平均値を、第2活物質部の含有量E2から差し引いた値が、それぞれ、-4%以上4%以下の範囲内に収まることをいう。
また、第1活物質部が固体電解質粒子を含む場合にも、固体電解質粒子は、活物質含有層内に均一に混合されていることが好ましい。第1活物質部において固体電解質粒子が均一に混合されているとは、最深面乃至第X―1面の各々の固体電解質粒子の含有量を、第2活物質部の固体電解質粒子の含有量E1から差し引いた値が、それぞれ、-4%以上4%以下の範囲内に収まることをいう。
第1活物質部の単位面積当たりの活物質粒子の含有量E3は、50atm%以上であることが好ましく、80atm%以上であることがより好ましい。含有量E3が多いと、活物質粒子の割合を高めて、二次電池のエネルギー密度をより高めることができる。含有量E3の上限値は、一例によると、90atm%以下である。
第2活物質部の単位面積当たりの活物質粒子の含有量E4は、30atm%以上であることが好ましく、60atm%以上であることがより好ましい。含有量E4が高いと、二次電池のエネルギー密度が低下し得る。その一方で、含有量E4が過剰に高いと、レート特性が低下し得る。したがって、含有量E4は、85atm%以下であることが好ましく、80atm%以下であることがより好ましい。
第1活物質部及び第2活物質部の単位面積当たりの活物質粒子の含有量E3及びE4は、上述した単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量E1及びE2と同様の方法で算出することができる。
電極が正極である場合、正極活物質粒子に特有の元素としては、Ni、Mn、Co、及びFeからなる群より選ばれる少なくとも1種である。したがって、リチウムと酸素を除き観察された元素の原子濃度に占めるこれらの元素の原子濃度の総和を、活物質粒子の含有量とみなす。
電極が負極である場合、負極活物質粒子に特有の元素としては、Ti、Nb、Si、及びCからなる群より選ばれる少なくとも1種である。したがって、リチウムと酸素を除き観察された元素の原子濃度に占めるこれらの元素の原子濃度の総和を、活物質粒子の含有量とみなす。
固体電解質粒子としては、無機固体電解質を用いることが好ましい。無機固体電解質としては、例えば、酸化物系固体電解質、又は硫化物系固体電解質を挙げることができる。
固体電解質粒子としては、ペロブスカイト型リチウムランタンチタン含有酸化物、ガーネット型リチウムランタンジルコニウム含有酸化物、NASICON型リチウムアルミニウムチタン含有酸化物、及び、リチウムカルシウムジルコニウム含有酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
酸化物系固体電解質としては、NASICON型構造を有し、一般式LiM2(PO4)3で表されるリチウムリン酸固体電解質を用いることが好ましい。上記一般式中のMは、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、及びカルシウム(Ca)からなる群より選ばれる少なくとも一種類以上の元素であることが好ましい。元素Mは、Zr、Ca、Al及びTiからなる群より選ばれる少なくとも一種類以上の元素であることがより好ましい。
NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質の具体例としては、LATP(Li1+xAlxTi2-x(PO4)3)、Li1+xAlxGe2-x(PO4)3、Li1+xAlxZr2-x(PO4)3を挙げることができる。上記式におけるxは、0<x≦5の範囲内にあり、0.1≦x≦0.5の範囲内にあることが好ましい。固体電解質としては、LATPを用いることが好ましい。
また、酸化物系固体電解質としては、アモルファス状のLIPON(Li2.9PO3.3N0.46)、又はガーネット型構造のLLZ(Li7La3Zr2O12)を用いてもよい。固体電解質は、1種類であってもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
活物質含有層は、集電体の片面又は両面に形成され得る。活物質含有層は、活物質と、任意に導電剤及び結着剤とを含むことができる。活物質含有層は、活物質を単独で含んでもよく、活物質を2種類以上含んでもよい。実施形態に係る電極は、正極として用いてもよく、負極として用いてもよい。
実施形態に係る電極を、負極として用いる場合の詳細について説明する。
負極活物質としては、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi2+yTi3O7、0≦y≦3)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4+xTi5O12、0≦x≦3)、単斜晶型二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ホランダイト型チタン複合酸化物、直方晶型(orthorhombic)チタン複合酸化物、及び単斜晶型ニオブチタン複合酸化物を用いることが好ましい。
上記直方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+aM(I)2-bTi6-cM(II)dO14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、M(I)は、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つである。M(II)はZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、-0.5≦σ≦0.5である。直方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti6O14(0≦a≦6)が挙げられる。
上記単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の例として、LixTi1-yM1yNb2-zM2zO7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z≦2、-0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体例として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる。
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の他の例として、LixTi1-yM3y+zNb2-zO7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x<5、0≦y<1、0≦z≦2、-0.3≦δ≦0.3である。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と負極集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
活物質含有層中の活物質(負極活物質)、導電剤及び結着剤の配合は、それぞれ、68質量%以上96質量%以下、2質量%以上30質量%以下及び2質量%以上30質量%以下の割合であることが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層と集電体との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ30質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
負極活物質含有層の密度は、活物質にカーボン材料を用いる場合、1.0g/cm3以上1.5g/cm3以下であることが好ましい。活物質にチタン複合酸化物を用いる場合、2.0g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましい。
負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、活物質にカーボン材料を用いる場合、1.1g/cm3以上1.3g/cm3以下であることがより好ましい。活物質にチタン複合酸化物を用いる場合、2.1g/cm3以上2.5g/cm3以下であることがより好ましい。
集電体は、活物質にリチウム(Li)が挿入及び脱離される電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。集電体は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、電極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
また、集電体は、その表面に負極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、負極集電タブとして働くことができる。
電極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、電極を作製する。
或いは、電極は、次の方法により作製してもよい。まず、活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、電極を得ることができる。
次に、実施形態に係る電極を正極として用いる場合の詳細について説明する。
正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。酸化物及び硫化物の例には、Li又はLiイオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y<1、LixCoPO4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
電池の電解質として常温溶融塩を用いる場合、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F(0≦x≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、又はこれらの混合物を含む正極活物質を用いることが好ましい。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。常温溶融塩の詳細については、後述する。
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxy methyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
正極活物質含有層において、正極活物質及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。
導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
正極活物質含有層の密度は、2.6g/cm3以上3.4g/cm3以下であることが好ましい。正極活物質含有層の密度がこの範囲内にある正極は、エネルギー密度と電解質の保持性とに優れている。正極活物質含有層の密度は、2.8g/cm3以上3.2g/cm3以下であることがより好ましい。
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして働くことができる。
次に、実施形態に係る電極の製造方法について説明する。
先ず、第1活物質部形成用の第1スラリーを準備する。第1スラリーは、活物質粒子と、任意に含まれる固体電解質粒子、導電剤及び結着剤と、溶媒とを混合することにより得られる。第1スラリーに含まれる溶媒を除く成分において、活物質粒子、固体電解質粒子、導電剤、及び結着剤が占める割合は、それぞれ、70質量%以上90質量%以下、0質量%以上0.1質量%以下、1質量%以上15質量%以下、及び1質量%以上15質量%以下とすることが好ましい。
次に、第2活物質部形成用の第2スラリーを準備する。第2スラリーは、活物質粒子と、固体電解質粒子と、任意に含まれる導電剤及び結着剤と、溶媒とを混合することにより得られる。第2スラリーに含まれる活物質粒子、固体電解質粒子、導電剤及び結着剤の種類は、第1スラリーに含まれるものと同一でもよく、異なっていてもよい。第2スラリーに含まれる溶媒を除く成分において、活物質粒子、固体電解質粒子、導電剤、及び結着剤が占める割合は、それぞれ、70質量%以上90質量%以下、5質量%以上20質量%以下、1質量%以上10質量%以下、及び1質量%以上10質量%以下とすることが好ましい。
次に、第1スラリー上に第2スラリーが重なるように、これらを集電体上に同時に塗工する。第1及び第2スラリーの同時塗工には、例えば、第1吐出口と第2吐出口とが上下に位置する塗工機を用いる。第1吐出口は、第1スラリーを収容する第1収容部に連通する。第2吐出口は、第2スラリーを収容する第2収容部に連通する
集電体上に塗工した第1及び第2スラリーを乾燥させて、積層体を得る。この積層体にプレス処理を施し、所定の寸法に切断する。切断した積層体の真空乾燥を行うことにより、第1及び第2活物質部を含む電極を得る。
以上説明した第1実施形態に係る電極は、固体電解質粒子を含む第2活物質部と、第2活物質部と比較して固体電解質粒子の含有量が少ない若しくは固体電解質粒子を含まない第1活物質部とを含む。したがって、この電極を用いると、レート特性及びエネルギー密度に優れた二次電池を実現できる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態によると、負極と、正極と、電解質とを含む二次電池が提供される。負極及び正極の少なくとも一方は、第1の実施形態に係る電極である。
第2実施形態に係る二次電池は、正極と負極との間に配されたセパレータを更に具備することもできる。負極、正極及びセパレータは、電極群を構成することができる。電解質は、電極群に保持され得る。
また、第2の実施形態に係る二次電池は、電極群及び電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。
さらに、第2の実施形態に係る二次電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
第2の実施形態に係る二次電池は、例えばリチウム二次電池であり得る。また、二次電池は、非水電解質を含んだ非水電解質二次電池を含む。
以下、電解質、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
1)電解質
電解質としては、例えば液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩の濃度は、0.5 mol/L以上2.5 mol/L以下であることが好ましい。
電解質塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
或いは、非水電解質としては、液状非水電解質及びゲル状非水電解質の他に、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、及び無機固体電解質等を用いてもよい。
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
高分子固体電解質は、電解質塩を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。
2)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能なためである。
3)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
4)負極端子
負極端子は、上述の負極活物質のLi吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
5)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li+)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
次に、第2の実施形態に係る二次電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
図2は、第2の実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図である。図3は、図2に示す二次電池のA部を拡大した断面図である。
図2及び図3に示す二次電池100は、図2に示す袋状外装部材2と、図2及び図3に示す電極群1と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、袋状外装部材2内に収納されている。電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。
袋状外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
図2に示すように、電極群1は、扁平状の捲回型電極群である。扁平状で捲回型である電極群1は、図3に示すように、負極3と、セパレータ4と、正極5とを含む。セパレータ4は、負極3と正極5との間に介在している。
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3のうち、捲回型の電極群1の最外殻に位置する部分は、図3に示すように負極集電体3aの内面側のみに負極活物質含有層3bが形成されている。負極3におけるその他の部分では、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極活物質含有層5bとを含んでいる。
図2に示すように、負極端子6及び正極端子7は、捲回型の電極群1の外周端近傍に位置している。この負極端子6は、負極集電体3aの最外殻に位置する部分に接続されている。また、正極端子7は、正極集電体5aの最外殻に位置する部分に接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材2の内面には、熱可塑性樹脂層が設置されており、これが熱融着されていることにより、開口部が閉じられている。
第2の実施形態に係る二次電池は、図2及び図3に示す構成の二次電池に限らず、例えば図4及び図5に示す構成の電池であってもよい。
図4は、第2の実施形態に係る二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図である。図5は、図4に示す二次電池のB部を拡大した断面図である。
図4及び図5に示す二次電池100は、図4及び図5に示す電極群1と、図4に示す外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、外装部材2内に収納されている。電解質は、電極群1に保持されている。
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
電極群1は、図5に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、負極3と正極5とをその間にセパレータ4を介在させながら交互に積層した構造を有している。
電極群1は、複数の負極3を含んでいる。複数の負極3は、それぞれが、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に担持された負極活物質含有層3bとを備えている。また、電極群1は、複数の正極5を含んでいる。複数の正極5は、それぞれが、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面に担持された正極活物質含有層5bとを備えている。
各負極3の負極集電体3aは、その一辺において、いずれの表面にも負極活物質含有層3bが担持されていない部分3cを含む。この部分3cは、負極集電タブとして働く。図5に示すように、負極集電タブとして働く部分3cは、正極5と重なっていない。また、複数の負極集電タブ(部分3c)は、帯状の負極端子6に電気的に接続されている。帯状の負極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
また、図示しないが、各正極5の正極集電体5aは、その一辺において、いずれの表面にも正極活物質含有層5bが担持されていない部分を含む。この部分は、正極集電タブとして働く。正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)と同様に、負極3と重なっていない。また、正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)に対し電極群1の反対側に位置する。正極集電タブは、帯状の正極端子7に電気的に接続されている。帯状の正極端子7の先端は、負極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
第2の実施形態に係る二次電池は、第1の実施形態に係る電極を含んでいる。そのため、第2の実施形態に係る二次電池は、レート特性及びエネルギー密度に優れる。
[第3の実施形態]
第3の実施形態によると、組電池が提供される。第3の実施形態に係る組電池は、第2の実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
第3の実施形態に係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
次に、第3の実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
図6は、第3の実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図である。図6に示す組電池200は、5つの単電池100a~100eと、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100a~100eのそれぞれは、第2の実施形態に係る二次電池である。
バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子6と、隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、図6の組電池200は、5直列の組電池である。例を図示しないが、電気的に並列に接続されている複数の単電池を含む組電池では、例えば、複数の負極端子同士がバスバーにより接続されるとともに複数の正極端子同士がバスバーにより接続されることで、複数の単電池が電気的に接続され得る。
5つの単電池100a~100eのうち少なくとも1つの電池の正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に電気的に接続されている。また、5つの単電池100a~100eうち少なくとも1つの電池の負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に電気的に接続されている。
第3の実施形態に係る組電池は、第2の実施形態に係る二次電池を具備する。したがって、第3の実施形態に係る組電池は、レート特性及びエネルギー密度に優れる。
[第4の実施形態]
第4の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第3の実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第3の実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第2の実施形態に係る二次電池を具備していてもよい。
第4の実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
また、第4の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
次に、第4の実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
図7は、第4の実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。図8は、図7に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
図7及び図8に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
図7に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
複数の単電池100の少なくとも1つは、第2の実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100の各々は、図8に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
正極側リード22の一端は、組電池200に接続されている。正極側リード22の一端は、1以上の単電池100の正極と電気的に接続されている。負極側リード23の一端は、組電池200に接続されている。負極側リード23の一端は、1以上の単電池100の負極と電気的に接続されている。
プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正極側コネクタ342と、負極側コネクタ343と、サーミスタ345と、保護回路346と、配線342a及び343aと、通電用の外部端子350と、プラス側配線(正側配線)348aと、マイナス側配線(負側配線)348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200の一側面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
正極側コネクタ342に、正極側リード22の他端22aが電気的に接続されている。負極側コネクタ343に、負極側リード23の他端23aが電気的に接続されている。
サーミスタ345は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ345は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路346に送信する。
通電用の外部端子350は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子350は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。通電用の外部端子350は、正側端子352と負側端子353とを含む。
保護回路346は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路346は、プラス側配線348aを介して正側端子352と接続されている。保護回路346は、マイナス側配線348bを介して負側端子353と接続されている。また、保護回路346は、配線342aを介して正極側コネクタ342に電気的に接続されている。保護回路346は、配線343aを介して負極側コネクタ343に電気的に接続されている。更に、保護回路346は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
保護回路346は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路346は、サーミスタ345から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路346と外部機器への通電用の外部端子350(正側端子352、負側端子353)との電気的な接続を遮断する。
サーミスタ345から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
なお、保護回路346としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子350を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子350を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子350を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子350を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子の正側端子と負側端子としてそれぞれ用いてもよい。
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
第4の実施形態に係る電池パックは、第2の実施形態に係る二次電池又は第3の実施形態に係る組電池を備えている。したがって、第4の実施形態に係る電池パックは、レート特性及びエネルギー密度に優れる。
[第5の実施形態]
第5の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第4の実施形態に係る電池パックを搭載している。
第5の実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。車両は、この車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構(Regenerator:再生器)を含んでいてもよい。
第5の実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
第5実施形態に係る車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
第5の実施形態に係る車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、それぞれの電池パックが含む電池同士は、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。例えば、各電池パックが組電池を含む場合は、組電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、又は電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。或いは、各電池パックが単一の電池を含む場合は、それぞれの電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
次に、第5の実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
図9は、第5の実施形態に係る車両の一例を概略的に示す部分透過図である。
図9に示す車両400は、車両本体40と、第4の実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。図9に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300が含む電池(例えば、単電池または組電池)は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
図9では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
次に、図10を参照しながら、第5の実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
図10は、第5の実施形態に係る車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図である。図10に示す車両400は、電気自動車である。
図10に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位の制御装置である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、図10に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置301a(例えば、VTM:Voltage Temperature Monitoring)とを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a~300cは、前述の電池パック300と同様の電池パックであり、組電池200a~200cは、前述の組電池200と同様の組電池である。組電池200a~200cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
組電池200a~200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第2の実施形態に係る二次電池である。組電池200a~200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
電池管理装置411は、組電池監視装置301a~301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a~200cに含まれる単電池100のそれぞれについて電圧及び温度などに関する情報を収集する。これにより、電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を収集する。
電池管理装置411と組電池監視装置301a~301cとは、通信バス412を介して接続されている。通信バス412では、1組の通信線が複数のノード(電池管理装置411と1つ以上の組電池監視装置301a~301cと)で共有されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
組電池監視装置301a~301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a~200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との間の電気的な接続の有無を切り替える電磁接触器(例えば図10に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a~200cへの充電が行われるときにオンになるプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、組電池200a~200cからの出力が負荷へ供給されるときにオンになるメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチ及びメインスイッチのそれぞれは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフに切り替わるリレー回路(図示せず)を備えている。スイッチ装置415等の電磁接触器は、電池管理装置411又は車両400全体の動作を制御する車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411又は車両全体の動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。インバータ44が制御されることにより、インバータ44からの出力電圧が調整される。
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。駆動モータ45の回転によって発生する駆動力は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構(リジェネレータ)を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。変換された直流電流は、車両用電源41に入力される。
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子417に接続されている。接続ラインL1には、負極端子414と負極入力端子417との間に電池管理装置411内の電流検出部(電流検出回路)416が設けられている。
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子418に接続されている。接続ラインL2には、正極端子413と正極入力端子418との間にスイッチ装置415が設けられている。
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して電池管理装置411を含む他の管理装置及び制御装置とともに車両用電源41、スイッチ装置415、及びインバータ44等を協調制御する。車両ECU42等の協調制御によって、車両用電源41からの電力の出力及び車両用電源41の充電等が制御され、車両400全体の管理が行われる。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
第5の実施形態に係る車両は、第4の実施形態に係る電池パックを搭載している。したがって、第5の実施形態に係る車両は、走行距離及び走行性能に優れる。
(実施例1)
先ず、活物質、導電剤、結着剤及び溶剤を混合して第1スラリーを調製した。活物質としては、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)の粉末を用いた。導電剤としては、アセチレンブラックを用いた。結着剤としては、PVdFを用いた。溶媒としては、NMPを用いた。活物質、導電剤、及び結着剤の質量比は、90:5:5とした。
次に、活物質、固体電解質、導電剤、結着剤及び溶剤を混合して、第2スラリーを準備した。固体電解質としては、ガーネット型リチウムランタンジルコニウム含有酸化物(Li7La3Zr2O12)の粉末を用いた。活物質、導電剤、結着剤及び溶剤としては、第1スラリーと同様のものを用いた。活物質、固体電解質、導電剤、及び結着剤の質量比は、80:10:5:5とした。
集電体上に第1スラリー及び第2スラリーをこの順で積層するように同時に塗布し、乾燥させて、積層体を得た。集電体としては、厚さ15μmのアルミニウム箔を用いた。単位面積当たりの第1スラリーの塗布量は、105g/m2とした。単位面積当たりの第2スラリーの塗布量は、45g/m2とした。
積層体にプレス処理を施し、所定の寸法に裁断した。その後、裁断した積層体について更に真空乾燥を行い、電極を得た。電極の密度(集電体を除く)は、3.0g/cm3であった。
(実施例2)
リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物として、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2の代わりにLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(実施例3)
リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物として、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2の代わりにLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(実施例4)
リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物として、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2の代わりにLiNi0.3Co0.4Mn0.3O2を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(実施例5)
活物質として、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2の代わりに、リチウムコバルト複合酸化物LiCoO2を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(実施例6)
活物質として、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2の代わりにリチウムアルミマンガン複合酸化物LiAl0.1Mn1.9O4を用いたこと、及び、電極密度を2.6g/cm3としたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(実施例7)
活物質として、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2の代わりに、リチウムニッケルマンガン複合酸化物LiNi0.5Mn1.5O4を用いたこと、及び、電極密度を2.6g/cm3としたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(実施例8)
活物質として、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2の代わりに、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2とリチウムコバルト複合酸化物LiCoO2との混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
なお、第1スラリーにおけるLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiCoO2、導電剤、及び結着剤の質量比は、45:45:5:5とした。また、第2スラリーにおけるLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiCoO2、固体電解質、導電剤、及び結着剤の質量比は、40:40:10:5:5とした。
(実施例9)
リチウムコバルト複合酸化物LiCoO2の代わりにリチウムアルミマンガン複合酸化物LiAl0.1Mn1.9O4を用いたこと、及び、電極密度を2.8g/cm3としたこと以外は、実施例8と同様に電極を作製した。
(実施例10)
リチウムコバルト複合酸化物LiCoO2の代わりにリチウムマンガン鉄マグネシウム複合酸化物LiMn0.8Fe0.15Mg0.05PO4を用いたこと、及び、電極密度を2.6g/cm3としたこと以外は、実施例8と同様に電極を作製した。
(実施例11)
第1スラリーにおけるLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiCoO2、導電剤、及び結着剤の質量比、80:10:5:5のへと変更したこと、及び、第2スラリーにおけるLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiCoO2、固体電解質、導電剤、及び結着剤の質量比を、72:8:10:5:5へと変更したこと以外は、実施例8と同様に電極を作製した。
(実施例12)
固体電解質として、ガーネット型リチウムランタンジルコニウム含有酸化物(Li7La3Zr2O12)の代わりに、ガーネット型リチウムアルミランタンジルコニウム含有酸化物(Li6.25Al0.25La3Zr2O12)を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(実施例13)
固体電解質として、ガーネット型リチウムランタンジルコニウム含有酸化物(Li7La3Zr2O12)の代わりに、NASICON型リチウムアルミチタン含有酸化物(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3)を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(実施例14)
固体電解質として、ガーネット型リチウムランタンジルコニウム含有酸化物(Li7La3Zr2O12)の代わりに、NASICON型リチウムジルコニウムカルシウム含有酸化物(Li1.2Zr1.9Ca0.1(PO4)3)を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(実施例15)
固体電解質として、ガーネット型リチウムランタンジルコニウム含有酸化物(Li7La3Zr2O12)の代わりに、ペロブスカイト型リチウムランタンチタン含有酸化物(Li0.35La0.55TiO3)を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(実施例16)
第1スラリーの塗布量を120g/m2としたこと、及び、第2スラリーの塗布量を30g/m2としたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(実施例17)
第1スラリーの塗布量を135g/m2としたこと、及び、第2スラリーの塗布量を15g/m2としたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(比較例1)
第1スラリーの塗布量を45g/m2としたこと、及び、第2スラリーの塗布量を105g/m2としたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(比較例2)
第1スラリーの塗布量を75g/m2としたこと、及び、第2スラリーの塗布量を75g/m2としたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(比較例3)
第1スラリーとして第2スラリーを用いたこと、及び、第2スラリーとして第1スラリーを用いたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(比較例4)
活物質として、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2の代わりにリチウムアルミマンガン複合酸化物LiAl0.1Mn1.9O4を用いたこと、及び、電極密度を2.6g/cm3としたこと以外は、比較例3と同様に電極を作製した。
(比較例5)
第2スラリーとして第1スラリーを用いたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(比較例6)
第1スラリーの塗布量を150g/m2としたこと、及び、第2スラリーの塗布を省略したこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(比較例7)
先ず、溶媒に結着剤を溶解させた後、導電剤を分散させて分散液を調製した。溶媒としては、NMPを用いた。結着剤としては、PVdFを用いた。導電剤としては、アセチレンブラックを用いた。
この分散液に、活物質及び固体電解質を混合して、混合液を得た。活物質としては、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)の粉末を用いた。固体電解質としては、ガーネット型リチウムランタンジルコニウム含有酸化物(Li7La3Zr2O12)の粉末を用いた。この混合液に、更に溶媒を加えて電極形成用のスラリーを得た。スラリー中の固形分濃度は60質量%とした。スラリーにおいて、活物質、固体電解質、導電剤、及び結着剤の質量比は、100:10:5:3とした。
集電体上にこのスラリーを塗布した後、塗膜を上面として、塗膜が設けられた集電体を乾燥炉に導入した。乾燥炉では、最初のゾーンにおいて、150℃の温度で1分間にわたって急速乾燥を行った。この急速乾燥により、集電体上の塗膜内で固体電解質粒子の表面側への移動(マイグレーション)を生じさせた。乾燥炉の残りのゾーンにおいては、130℃で2分間にわたって乾燥を行った。乾燥後の塗膜が設けられた集電体に対してプレス処理を行い、電極を得た。電極密度(集電体を含まず)は、3.0g/cm3とした。この電極では、活物質含有層の厚さ方向に沿って固体電解質粒子の体積割合が減少していた。また、活物質含有層の表面の少なくとも一部が、固体電解質粒子により構成されていた。
(実施例18)
活物質として、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2の代わりにリチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12)を用いたこと、及び、電極密度を2.0g/cm3としたこと以外は、実施例1と同様に電極を作製した。
(実施例19)
活物質として、リチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12)の代わりにチタン酸化物(TiO2(B))を用いたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(実施例20)
活物質として、リチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12)の代わりにニオブチタン複合酸化物(TiNb2O7)を用いたこと、及び、電極密度を2.5g/cm3としたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(実施例21)
活物質として、リチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12)の代わりに鉄含有ニオブチタン複合酸化物(TiNb1.95Fe0.05O7)を用いたこと、及び、電極密度を2.5g/cm3としたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(実施例22)
活物質として、リチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12)の代わりにタンタル含有ニオブチタン複合酸化物(TiNb1.95Ta0.05O7)を用いたこと、及び、電極密度を2.5g/cm3としたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(実施例23)
活物質として、リチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12)の代わりにモリブデン含有ニオブチタン複合酸化物(TiNb1.95Mo0.05O7)を用いたこと、及び、電極密度を2.5g/cm3としたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(実施例24)
活物質として、リチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12)の代わりにナトリウム含有リチウムチタン複合酸化物(Li2Na2Ti6O14)を用いたこと、及び、電極密度を2.2g/cm3としたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(実施例25)
活物質として、リチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12)の代わりにナトリウム含有リチウムニオブチタン複合酸化物(Li2Na1.8Ti5.8Nb0.2O14)を用いたこと、及び、電極密度を2.2g/cm3としたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(実施例26)
活物質として、リチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12)の代わりにグラファイトを用いたこと、及び、電極密度を1.2g/cm3としたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(実施例27)
活物質として、リチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12)の代わりに、グラファイトとシリコン複合酸化物(SiO)との混合物を用いたこと、及び、電極密度を1.2g/cm3としたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
なお、第1スラリーにおけるグラファイト、SiO、導電剤、及び結着剤の質量比は、80:10:5:5とした。また、第2スラリーにおけるグラファイト、SiO、固体電解質、導電剤、及び結着剤の質量比は、72:8:10:5:5とした。
(実施例28)
固体電解質として、ガーネット型リチウムランタンジルコニウム含有酸化物(Li7La3Zr2O12)の代わりに、ガーネット型リチウムアルミランタンジルコニウム含有酸化物(Li6.25Al0.25La3Zr2O12)を用いたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(実施例29)
固体電解質として、ガーネット型リチウムランタンジルコニウム含有酸化物(Li7La3Zr2O12)の代わりに、NASICON型リチウムアルミチタン含有酸化物(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3)を用いたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(実施例30)
固体電解質として、ガーネット型リチウムランタンジルコニウム含有酸化物(Li7La3Zr2O12)の代わりに、NASICON型リチウムジルコニウムカルシウム含有酸化物(Li1.2Zr1.9Ca0.1(PO4)3)を用いたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(実施例31)
固体電解質として、ガーネット型リチウムランタンジルコニウム含有酸化物(Li7La3Zr2O12)の代わりに、ペロブスカイト型リチウムランタンチタン含有酸化物(Li0.35La0.55TiO3)を用いたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(実施例32)
活物質として、リチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12)の代わりに、リチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12)とチタン酸化物(TiO2(B))との混合物を用いたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
なお、第1スラリーにおけるLi4Ti5O12、TiO2(B)、導電剤、及び結着剤の質量比は、45:45:5:5とした。また、第2スラリーにおけるLi4Ti5O12、TiO2(B)、固体電解質、導電剤、及び結着剤の質量比は、40:40:10:5:5とした。
(実施例33)
活物質として、チタン酸化物(TiO2(B))の代わりに、ニオブチタン複合酸化物(TiNb2O7)を用いたこと、及び、電極密度を2.3g/cm3としたこと以外は、実施例32と同様に電極を作製した。
(実施例34)
活物質として、チタン酸化物(TiO2(B))の代わりに、ナトリウム含有リチウムニオブチタン複合酸化物(Li2Na1.8Ti5.8Nb0.2O14)を用いたこと、及び、電極密度を2.1g/cm3としたこと以外は、実施例32と同様に電極を作製した。
(実施例35)
活物質として、チタン酸化物(TiO2(B))の代わりに、ナトリウム含有リチウムニオブチタン複合酸化物(Li2Na1.8Ti5.8Nb0.2O14)を用いたこと、及び、電極密度を2.1g/cm3としたこと以外は、実施例32と同様に電極を作製した。
なお、第1スラリーにおけるLi4Ti5O12、Li2Na1.8Ti5.8Nb0.2O14、導電剤、及び結着剤の質量比は、80:10:5:5とした。また、第2スラリーにおけるLi4Ti5O12、Li2Na1.8Ti5.8Nb0.2O14、固体電解質、導電剤、及び結着剤の質量比は、71:8:10:5:5とした。
(実施例36)
第1スラリーの塗布量を120g/m2としたこと、及び、第2スラリーの塗布量を30g/m2としたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(実施例37)
第1スラリーの塗布量を135g/m2としたこと、及び、第2スラリーの塗布量を15g/m2としたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(比較例8)
第1スラリーの塗布量を45g/m2としたこと、及び、第2スラリーの塗布量を105g/m2としたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(比較例9)
第1スラリーとして第2スラリーを用いたこと、及び、第2スラリーとして第1スラリーを用いたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(比較例10)
活物質として、リチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12)の代わりにニオブチタン複合酸化物(TiNb2O7)を用いたこと、及び、電極密度を2.5g/cm3としたこと以外は、比較例9と同様に電極を作製した。
(比較例11)
第2スラリーとして第1スラリーを用いたこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(比較例12)
第1スラリーの塗布量を150g/m2としたこと、及び、第2スラリーの塗布を省略したこと以外は、実施例18と同様に電極を作製した。
(比較例13)
活物質として、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2の代わりにリチウムチタン複合酸化物(Li4Ti5O12)を用いたこと、及び、電極密度を2.0g/cm3としたこと以外は、比較例7と同様に電極を作製した。この電極では、活物質含有層の厚さ方向に沿って固体電解質粒子の体積割合が減少していた。また、活物質含有層の表面の少なくとも一部が、固体電解質粒子により構成されていた。
(実施例38)
以下の方法により、図2及び図3に示す非水電解質電池を得た。
先ず、正極、第1セパレータ、負極、及び第2セパレータをこの順で積層させて積層体を得た。この積層体を渦巻き状に捲回した後、90℃の温度でプレス処理を行い、扁平状電極群を作製した。扁平状電極群の幅は30mmであり、厚さは3.0mmであった。正極としては、実施例1で得られた電極を用いた。負極としては、実施例18で得られた電極を用いた。第1及び第2セパレータとしては、厚さ25μmのポリエチレン製多孔質フィルムを用いた。
次に、扁平状電極群をラミネートフィルムからなるパック内に収容した後、80℃の温度で24時間にわたって真空乾燥を施した。ラミネートフィルムは、厚さ40μmのアルミニウム箔の両面にポリプロピレン層を形成して構成され、全体の厚さが0.1mmであった。
真空乾燥後のラミネートフィルムのパック内に、液状非水電解質を注入した後、ヒートシールによりパックを完全密閉した。液状非水電解質としては、混合溶媒に電解質を1Mの濃度で溶解させたものを用いた。混合溶媒は、プロピレンカーボネート(PC)とジエチルカーボネート(DEC)とを1:1の体積比で混合したものを用いた。電解質としては、LiPF6を用いた。
このようにして、図2及び3に示す非水電解質電池を得た。非水電解質電池の幅は35mmであり、厚さは3.2mmであり、高さは65mmであった。非水電解質電池の容量は500mAhであった。
(実施例39)
負極として、比較例12で得られた電極を用いたこと以外は、実施例38に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を得た。
(実施例40)
正極として、比較例6で得られた電極を用いたこと以外は、実施例38に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を得た。
(実施例41)
正極として、実施例8で得られた電極を用いたこと以外は、実施例38に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を得た。
(実施例42)
負極として、実施例32で得られた電極を用いたこと以外は、実施例38に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を得た。
(比較例14)
正極として、比較例6で得られた電極を用いたこと、及び、負極として、比較例12で得られた電極を用いたこと以外は、実施例38に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を得た。
(比較例15)
正極として、比較例3で得られた電極を用いたこと、及び、負極として、比較例12で得られた電極を用いたこと以外は、実施例38に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を得た。
(比較例16)
正極として、比較例6で得られた電極を用いたこと、及び、負極として、比較例9で得られた電極を用いたこと以外は、実施例38に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を得た。
<各種測定>
上述した方法で、活物質含有層の厚さT、第1活物質部の長さL1、第2活物質部の長さL2、比L1/T、第1活物質部の単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量E1、第2活物質部の単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量E2、第1活物質部の単位面積当たりの活物質粒子の含有量E3、第2活物質部の単位面積当たりの活物質粒子の含有量E4、比E1/E2及び均一さを算出した。
なお、比較例7及び13については、最深面から5μmの厚さの活物質含有層の一部を切削して得られた最深面と平行な断面について得られた単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量を、含有量E1とした。また、最表面から5μmの厚さの活物質含有層の一部を切削して得られた最表面と平行な断面について得られた単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量を、含有量E2とした。
この結果を表3及び4に示す。
<レート特性>
実施例1~37、及び、比較例1~13で得られた電極を用いて、レート特性を評価した。具体的には、先ず、3極式セルを作製した。3極式セルの作用極には、実施例1~37、及び、比較例1~13で得られた電極を用いた。3極式セルの対極及び参照極としては、リチウム金属を用いた。非水電解質としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒にLiPF6を溶解させたものを用いた。混合溶媒におけるECとDECとの体積比率は1:2であった。LiPF6の濃度は1.0mol/Lとした。
次に、25℃の温度下で、定電流定電圧充電を行った。実施例1~6、8~17および比較例1~7は1Cの電流値で4.3V、実施例7は1Cの電流値で4.9Vの電圧に到達するまで充電し、所定の電圧にて0.05Cの電流値となるまで定電圧充電を行った。実施例18~25、28~37および比較例8~13は1Cの電流値で1.0V、実施例26、27は1Cの電流値で0.05Vの電圧に到達するまで充電し、所定の電圧にて0.05Cの電流値となるまで定電圧充電を行った。充電後、実施例1~17および比較例1~7では0.2Cの電流値で3.2Vとなるまで、実施例18~37および比較例8~13は0.2Cの電流値で3.0Vとなるまでセルを放電した。このときに得られた放電容量を、放電容量W1とした。
次に、実施例1~6、8~17および比較例1~7は1Cの電流値で4.3V、実施例7は1Cの電流値で4.9Vの電圧に到達するまで充電し、所定の電圧にて0.05Cの電流値となるまで定電圧充電を行った。実施例18~25、28~37および比較例8~13は1Cの電流値で1.0V、実施例26、27は1Cの電流値で0.05Vの電圧に到達するまで充電し、所定の電圧にて0.05Cの電流値となるまでセルを再び充電した。充電後、実施例1~17および比較例1~7では10Cの電流値で3.2Vとなるまで、実施例18~37および比較例8~13は10Cの電流値で3.0Vとなるまでセルを放電した。このときに得られた放電容量を、放電容量W2とした。
放電容量W2を放電容量W1で除することにより、放電容量率W2/W1を得た。
実施例38~42、及び、比較例14~15で得られた非水電解質電池について、25℃の温度下で、同様の方法で評価を行った。充電は定電流定電圧充電とし、1Cの電流値で2.8Vまで定電流充電を行い、2.8V到達後、電流値が0.05Cとなるまで定電圧充電を行った。放電は25℃の温度下で、0.2Cまたは10Cの定電流放電を行った。放電はセル電圧が1.5Vとなるまで行った。得られた値から、放電容量率W2/W1を算出した。
この結果を表3、4及び5に示す。
<エネルギー密度測定>
実施例1~37、及び、比較例1~13で得られた電極について、上述の0.2C放電時の活物質含有層の重量あたりの容量をエネルギー密度(mAh/g)とした。下記の表3及び4から、同じ活物質にて比較した場合、実施例では比較例よりもエネルギー密度が高いことがわかる。これは固体電解質粒子の量および存在位置を適正化しているためであり、過剰に固体電解質粒子を電極層中に含むことなく、エネルギー密度とレート特性を両立できていることを示している。
この結果を表2に示す。
実施例及び比較例に係る電極の製造方法について下記の表1及び表2にまとめる。
上記表1及び表2において、「第1活物質」及び「第2活物質」と表記した列には、活物質の種類を記載している。「固体電解質」と表記した列には、固体電解質の種類を記載している。「第1質量比」と表記した列には、第1スラリーにおける第1活物質、第2活物質、固体電解質、導電剤、及び結着剤の質量比を記載している。「第2質量比」と表記した列には、第2スラリーにおける第1活物質、第2活物質、固体電解質、導電剤、及び結着剤の質量比を記載している。「第1塗布量」と表記した列には、集電体の単位面積当たりの第1スラリーの塗布量を記載している。「第2塗布量」と表記した列には、集電体の単位面積当たりの第2スラリーの塗布量を記載している。
実施例及び比較例に係る電極の特性について下記の表3及び表4にまとめる。
上記表3及び表4において、「厚さT」と表記した列には、活物質含有層の厚さを記載している。「長さL1」と表記した列には、活物質含有層の厚さ方向と平行な方向である第1方向に沿った第1活物質部の長さを記載している。「長さL2」と表記した列には、活物質含有層の厚さ方向と平行な方向である第1方向に沿った第2活物質部の長さを記載している。「L1/T」と表記した列には、活物質含有層の厚さTに占める第1活物質部の長さL1の割合を記載している。「含有量E1」及び「含有量E2」には、それぞれ、第1活物質部及び第2活物質部における単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量を記載している。「含有量E3」及び「含有量E4」には、それぞれ、第1活物質部及び第2活物質部における単位面積当たりの活物質粒子の含有量を記載している。「E1/E2」と表記した列には、含有量E1と含有量E2との比を記載している。「均一さ」と表記した列には、固体電解質粒子が第1及び第2活物質部において均一に分散しているか否かを記載している。「密度」と表記した列には、活物質含有層の密度を記載している。「放電容量率」と表記した列には、0.2Cの電流値で放電した際の放電容量に対する10Cの電流値で放電した際の放電容量を記載した。「エネルギー密度」と表記した列には、電極の重量エネルギー密度を記載した。
実施例及び比較例に係る非水電解質電池の特性について下記の表5にまとめる。
実施例1と比較例1及び2との対比、実施例6と比較例4との対比、並びに、実施例18と比較例8及び9との対比から明らかなように、第1活物質部の長さが0.7T以上であり、含有量E1/E2が0.01以下である電極は、この何れかの要件を満たさない電極と比較して、高い放電容量率及びエネルギー密度を両立することができた。また、実施例1と比較例3との対比、並びに、実施例18と比較例10との対比から明らかなように、第1活物質部の長さが0.7T以上であり、含有量E1/E2が0.01以下である電極は、これらの要件を満たさない電極と比較して、より高い放電容量率及びエネルギー密度を両立することができた。
また、実施例2~11、19~27、及び32~35に示すように、活物質の種類を変更しても高い放電容量率及びエネルギー密度を両立することができた。また、実施例12~15及び28~31に示すように、固体電解質粒子の種類を変更しても高い放電容量率及びエネルギー密度を両立することができた。
また、比較例7及び13に係る電極は、高い放電容量率及びエネルギー密度を両立できなかった。この理由は、レート特性を向上させるためには、固体電解質は電極層のセパレータ側に存在することが重要であるが、比較例7及び13では電極層の表面側だけでなく、電極層の集電箔側まで濃度勾配をつけて存在させているため、一定のレート特性改善は見られるが、エネルギー密度は低下したためと考えられる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態に係る電極は、固体電解質粒子を含む第2活物質部と、第2活物質部と比較して固体電解質粒子の含有量が少ない若しくは固体電解質粒子を含まない第1活物質部とを含む。したがって、この電極を用いると、レート特性及びエネルギー密度に優れた二次電池を実現できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
集電体と、前記集電体上に設けられた活物質含有層とを備え、
前記活物質含有層は、厚さ方向に沿って互いに積層され、活物質粒子をそれぞれ含む第1活物質部及び第2活物質部を含み、
前記第1活物質部は、前記集電体と前記第2活物質部との間に位置し、前記厚さ方向と平行な方向である第1方向に沿った前記第1活物質部の長さは、前記活物質含有層の厚さTに対して0.7T以上0.95T以下の範囲内にあり、
前記第2活物質部は固体電解質粒子を更に含み、
前記第1活物質部の単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量E1(0を含む)と、前記第2活物質部の単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量E2との比E1/E2は、0以上0.01以下である電極。
[2]
前記第2活物質部において、前記活物質粒子及び前記固体電解質粒子は均一に混合されている[1]に記載の電極。
[3]
前記第1活物質部の単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量E1は、0.1atm%以下(0を含む)である[1]又は[2]に記載の電極。
[4]
前記第2活物質部の単位面積当たりの固体電解質粒子の含有量E2は、7atm%以上20atm%以下である[1]乃至[3]の何れか1項に記載の電極。
[5]
前記第1活物質部の単位面積当たりの活物質粒子の含有量は、50atm%以上90atm%以下である[1]乃至[4]の何れか1項に記載の電極。
[6]
前記第2活物質部の単位面積当たりの活物質粒子の含有量は、30atm%以上85atm%以下である[1]乃至[5]の何れか1項に記載の電極。
[7]
前記活物質粒子は、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムマンガンニッケル複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、リチウムリン酸鉄、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む[1]乃至[6]の何れか1項に記載の電極。
[8]
前記活物質粒子は、二酸化チタン、チタン複合酸化物、ニオブチタン複合酸化物、及び、ナトリウム含有チタン複合酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む[1]乃至[6]の何れか1項に記載の電極。
[9]
前記固体電解質粒子は、ペロブスカイト型リチウムランタンチタン含有酸化物、ガーネット型リチウムランタンジルコニウム含有酸化物、NASICON型リチウムアルミニウムチタン含有酸化物、及び、リチウムカルシウムジルコニウム含有酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む[1]乃至[8]の何れか1項に記載の電極。
[10]
正極と、負極と、電解質とを備え、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方は、[1]乃至[9]の何れか1項に記載の電極である二次電池。
[11]
[10]に記載の二次電池を具備する電池パック。
[12]
通電用の外部端子と、
保護回路とを更に具備する[11]に記載の電池パック。
[13]
複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている[11]又は[12]に記載の電池パック。
[14]
[11]乃至[13]の何れか1項に記載の電池パックを搭載した車両。
[15]
前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む[14]に記載の車両。