優れた性能の半導体装置を製造するための転写用マスクを得るために、マスクブランクまたはマスクブランク用基板の表面の欠陥検査を行うことは重要である。なお、本明細書では、マスクブランクおよびマスクブランク用基板を総称して、マスクブランク等という。図1および図2に、マスクブランク用基板の一例の模式図を示す。マスクブランク等の表面のうち、主表面2(一方の主表面2a)の、転写パターンを形成する領域(パターン形成領域)に対しては、高精度の欠陥検査をする必要がある。例えば、マスクブランク用基板の寸法が152mm×152mmの場合には、通常、パターン形成領域の大きさは132mm×104mmである。高精度の欠陥検査は、パターン形成領域を含む領域、例えば142mm×142mmの大きさの領域に対して行われる。本明細書では、この高精度の欠陥検査が行われる主表面の領域のことを、内側領域12という。
パターン形成領域を含む内側領域12の、高精度の欠陥検査のために、例えば、共焦点照明光学系等を用いた欠陥検査装置が用いられている。具体的には、内側領域12では、平面視で数十nm程度のサイズの欠陥を検出することが必要である。本明細書では、内側領域12の高精度の欠陥検査を行うための欠陥検査装置のことを、高精度欠陥検査装置という。高精度欠陥検査装置では、高倍率の欠陥検査をする必要があるので、共焦点照明光学系の焦点深度が浅くなるように設計されている。したがって、高精度欠陥検査装置の作動距離(ワーキングディスタンス:WD)は、0.2~0.3mm程度という小さい値である。ワーキングディスタンスは、マスクブランク等の被検査表面に対する欠陥検査装置の距離であり、より詳しくは対物レンズおよび照明装置等を含む欠陥検査装置の基板側の先端から被検査表面までの距離である。本明細書では、作動距離(ワーキングディスタンス)のことを略して「WD」という場合がある。
本明細書では、マスクブランク等の一方の主表面2aのうち、内側領域12の外側の領域のことを、外周領域14という。マスクブランク等の主表面2の端面1付近は、通常、面取り処理を行っているため、面取り面1bが存在する。したがって、マスクブランク等の外周領域14の端面1付近では、表面形状が急激に変化する。このような表面形状の部分は、高精度欠陥検査装置による測定が不可能である。その理由は、高精度欠陥検査装置のWDが小さいためである。すなわち、高精度の欠陥検査を可能にするため、高精度欠陥検査装置では、WDが所定の小さい範囲となるようにWDを制御している。また、高精度欠陥検査装置の対物レンズ等は、秒速数十mmという速い速度で往復しながら欠陥を測定する。マスクブランク等の表面形状が急激に変化する場合には、高精度欠陥検査装置のWDの制御が追随できず、場合によっては、マスクブランク等の面取り面1bを含む端面1等の表面、並びにマスクブランク等を保持するための治具等に高精度欠陥検査装置の対物レンズ等が衝突し、高精度欠陥検査装置およびマスクブランク等を破壊してしまう恐れがある。また、高倍率の欠陥検査であることから、高精度欠陥検査装置の対物レンズの撮像エリアの大きさに比べ、対物レンズの物理的なサイズが大幅に大きくなる。このため、マスクブランク等の表面形状が急激に変化する場合、高精度欠陥検査装置のWDの制御の追随ができていても、対物レンズの一部がマスクブランク等に衝突する恐れがある。したがって、端面1付近を含む外周領域14に対する、高精度欠陥検査装置による欠陥の測定は困難である。そのため、通常、外周領域14の欠陥検査は、目視により行われている。
外周領域14には、転写パターンは形成されないが、転写用マスクの製品番号および位置決め用のマークなどが、転写パターンの形成と同様のリソグラフィ技術を用いて形成される場合がある。したがって、外周領域14に対して、内側領域12のような高精度の欠陥検査は不要であるが、ある程度の精度で外周領域14の欠陥検査をする必要がある。具体的には、外周領域14では、1~2μm程度の寸法の欠陥を検出することが必要である。目視による検査では、大きな欠陥の有無を判断することはできても、目視では確認できない大きさの欠陥の有無、および欠陥の存在する座標を特定することは困難である。目視の場合、欠陥の見落とし、および誤選別が発生するという問題もある。
上述の問題を解決するために、本発明は、内側領域に対して高精度の欠陥検査を行うとともに、マスクブランクまたはマスクブランク用基板、並びに欠陥検査装置を破壊せずに、外周領域の欠陥検査を自動的に、正確に行うことのできる欠陥検査方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、この欠陥検査方法を用いたマスクブランクおよび転写用マスクの製造方法を提供することを目的とする。具体的には、本発明は、マスクブランクまたはマスクブランク用基板、並びに欠陥検査装置を破壊せずに、内側領域に対して高精度の欠陥情報を取得できるとともに、外周領域の欠陥検査を自動的に、正確に行うことにより、不具合を生じる欠陥の少ない適切なマスクブランクおよび転写用マスクを提供することを目的とする。
また、本発明は、微細でかつ高精度の転写パターンを有する半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
本発明の構成1は、マスクブランクまたはマスクブランク用基板の欠陥検査方法であって、
前記マスクブランクまたは前記マスクブランク用基板が、二つの対向する主表面と、前記二つの対向する主表面に対して垂直な側面とを有し、
一方の前記主表面が、内側領域と、外周領域とを有し、
前記内側領域と、前記外周領域との境界が、前記側面を含む平面から距離dの位置にあり、
欠陥検査方法が、
前記距離dが、d≧1mmであり、
ワーキングディスタンス(WD)がWD≦0.5mmである光学的測定方法によって、前記内側領域の欠陥検査を行い、
ワーキングディスタンス(WD)がWD>0.5mmである光学的測定方法によって、前記外周領域の欠陥検査を行うこと
を含むことを特徴とする、欠陥検査方法である。
本発明の構成1によれば、内側領域に対して高精度の欠陥検査を行うとともに、マスクブランクまたはマスクブランク用基板、並びに欠陥検査装置を破壊せずに、外周領域の欠陥検査を自動的に、正確に行うことのできる欠陥検査方法を得ることができる。
(構成2)
本発明の構成2は、前記外周領域の欠陥検査は、暗視野光学系を用いる光学的測定方法によって行われることを特徴とする、構成1の欠陥検査方法である。
本発明の構成2によれば、外周領域の欠陥検査のために、暗視野光学系を用いることによって、比較的低倍率で外周領域の欠陥検査を行っても比較的高感度で欠陥を検出することができる。したがって、外周領域の欠陥検査を、比較的長いワーキングディスタンスにより行うことができる。
(構成3)
本発明の構成3は、前記内側領域の欠陥検査は、明視野光学系を用いる光学的測定方法によって行われることを特徴とする、構成1または2の欠陥検査方法である。
本発明の構成3によれば、内側領域の欠陥検査のために、明視野光学系を用いることによって、パターン形成領域に対して、高精度の欠陥検査を行うことができる。
(構成4)
本発明の構成4は、前記内側領域の欠陥検査は、光学倍率が10倍以上の光学系で検査することを特徴とする、構成1乃至3のいずれかの欠陥検査方法である。
本発明の構成4によれば、内側領域の欠陥検査のために、所定の光学倍率を用いることによって、パターン形成領域に対して、高精度の欠陥検査を行うことを確実にできる。
(構成5)
本発明の構成5は、前記外周領域の欠陥検査は、光学倍率が5倍以下の光学系で検査することを特徴とする、構成1乃至4のいずれかの欠陥検査方法である。
本発明の構成5によれば、外周領域の欠陥検査のために、所定の低い光学倍率を用いることによって、比較的長いワーキングディスタンスにより、外周領域の欠陥検査を行うことができる。
(構成6)
本発明の構成6は、前記マスクブランクまたは前記マスクブランク用基板は、前記主表面および前記側面の間に面取り面をさらに有し、前記主表面に対して垂直な方向における前記側面および前記面取り面の稜線と前記主表面および前記面取り面の稜線との間の高低差hが、h≦0.5mmであることを特徴とする、構成1乃至5のいずれかの欠陥検査方法である。
本発明の構成6によれば、マスクブランクまたはマスクブランク用基板が、所定の形状の面取り面を有する場合であっても、内側領域に対して高精度の欠陥検査を行うとともに、マスクブランクまたはマスクブランク用基板、並びに欠陥検査装置を破壊せずに、外周領域の欠陥検査を自動的に行うことができる。
(構成7)
本発明の構成7は、前記側面および他方の前記主表面の少なくとも1つが、前記ワーキングディスタンス(WD)がWD>0.5mmである光学的測定方法により検査されることを、さらに含むことを特徴とする、構成1乃至6のいずれかの欠陥検査方法である。
本発明の構成7によれば、外周領域の欠陥検査のための光学的測定方法と同じ測定方法により、側面および/または他方の主表面の欠陥検査を行うことができる。
(構成8)
本発明の構成8は、前記ワーキングディスタンス(WD)がWD>0.5mmである光学的測定方法によって、前記欠陥検査を行うことが、最終検査であることを特徴とする、構成1乃至7のいずれかの欠陥検査方法である。
高精度の欠陥検査の後に、最終検査より前に存在する工程において、予期せぬ汚染粒子の付着等が生じ、欠陥となる場合がある。本発明の構成8によれば、比較的ワーキングディスタンスが長い光学的測定方法により行うことにより、マスクブランクまたはマスクブランク用基板の、内側領域および外周領域を含む主表面の全面を1回の最終検査により行うことができる。
(構成9)
本発明の構成9は、マスクブランクの製造方法であって、
製造方法が、
二つの対向する主表面と、前記二つの対向する主表面に対して垂直な側面とを有するマスクブランク用基板を用意することと、
前記マスクブランク用基板の一方の前記主表面に、パターン形成用の薄膜を形成することと、
前記薄膜を形成した薄膜付き基板の表面を欠陥検査し、その欠陥検査の結果を用いて前記薄膜付き基板からマスクブランクを選定することと
を含み、
前記薄膜付き基板の前記一方の主表面が、内側領域と、外周領域とを有し、
前記内側領域と、前記外周領域との境界が、前記側面を含む平面から距離dの位置にあり、
前記距離dが、d≧1mmであり、
前記薄膜付き基板を欠陥検査することが、
ワーキングディスタンス(WD)がWD≦0.5mmである光学的測定方法によって、前記内側領域の欠陥検査を行い、
ワーキングディスタンス(WD)がWD>0.5mmである光学的測定方法によって、前記外周領域の欠陥検査を行うこと
を含むことを特徴とする、マスクブランクの製造方法である。
本発明の構成9によれば、マスクブランクの製造の際に、所定の欠陥検査を行うことができる。そのため、マスクブランクおよび欠陥検査装置を破壊せずに、内側領域に対して高精度の欠陥情報を取得できるとともに、外周領域の欠陥検査を自動的に、正確に取得できるので、不具合を生じる欠陥の少ない適切なマスクブランクを選定して得ることができる。
(構成10)
本発明の構成10は、前記外周領域の欠陥検査は、暗視野光学系を用いる光学的測定方法によって行われることを特徴とする、構成9のマスクブランクの製造方法である。
本発明の構成10によれば、外周領域の欠陥検査のために、暗視野光学系を用いることによって、比較的低倍率で外周領域の欠陥検査を行っても比較的高感度で欠陥を検出することができる。したがって、外周領域の欠陥検査を、比較的長いワーキングディスタンスにより行うことができる。
(構成11)
本発明の構成11は、前記内側領域の欠陥検査は、明視野光学系を用いる光学的測定方法によって行われることを特徴とする、構成9または10のマスクブランクの製造方法である。
本発明の構成11によれば、内側領域の欠陥検査のために、明視野光学系を用いることによって、パターン形成領域に対して、高精度の欠陥検査を行うことができる。
(構成12)
本発明の構成12は、前記内側領域の欠陥検査は、光学倍率が10倍以上の光学系で検査することを特徴とする、構成9乃至11のいずれかのマスクブランクの製造方法である。
本発明の構成12によれば、内側領域の欠陥検査のために、所定の光学倍率を用いることによって、パターン形成領域に対して、高精度の欠陥検査を行うことを確実にできる。
(構成13)
本発明の構成13は、前記外周領域の欠陥検査は、光学倍率が5倍以下の光学系で検査することを特徴とする、構成9乃至12のいずれかのマスクブランクの製造方法である。
本発明の構成13によれば、外周領域の欠陥検査のために、所定の低い光学倍率を用いることによって、比較的長いワーキングディスタンスにより、外周領域の欠陥検査を行うことができる。
(構成14)
本発明の構成14は、前記マスクブランクまたは前記マスクブランク用基板は、前記主表面および前記側面の間に面取り面をさらに有し、前記主表面に対して垂直な方向における前記側面および前記面取り面の稜線と前記主表面および前記面取り面の稜線との間の高低差hが、h≦0.5mmであることを特徴とする、構成9乃至13のいずれかのマスクブランクの製造方法である。
本発明の構成14によれば、マスクブランクまたはマスクブランク用基板が、所定の形状の面取り面を有する場合であっても、内側領域に対して高精度の欠陥検査を行うとともに、マスクブランクまたはマスクブランク用基板、並びに欠陥検査装置を破壊せずに、外周領域の欠陥検査を自動的に行うことができる。
(構成15)
本発明の構成15は、前記側面および他方の前記主表面の少なくとも1つが、前記ワーキングディスタンス(WD)がWD>0.5mmである光学的測定方法により検査されることを、さらに含むことを特徴とする、構成9乃至14のいずれかのマスクブランクの製造方法である。
本発明の構成15によれば、外周領域の欠陥検査のための光学的測定方法と同じ測定方法により、側面および/または他方の主表面の欠陥検査を行うことができる。
(構成16)
本発明の構成16は、前記ワーキングディスタンス(WD)がWD>0.5mmである光学的測定方法によって、前記欠陥検査を行うことが、最終検査であることを特徴とする、構成9乃至15のいずれかのマスクブランクの製造方法である。
本発明の構成16によれば、比較的ワーキングディスタンスが長い光学的測定方法により行うことにより、マスクブランクまたはマスクブランク用基板の、内側領域および外周領域を含む主表面の全面を1回の最終検査により行うことができる。
(構成17)
本発明の構成17は、構成9乃至16のいずれかのマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクを用い、前記マスクブランクの前記薄膜に転写パターンを形成することを特徴とする転写用マスクの製造方法である。
本発明の構成17によれば、不具合の原因となる欠陥の少ない適切なマスクブランクを用いることができるので、欠陥の少ない適切な転写用マスクを提供することができる。
(構成18)
本発明の構成18は、構成17の転写用マスクの製造方法で製造された転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に前記転写パターンを露光転写することを特徴とする半導体デバイスの製造方法である。
本発明の構成18によれば、微細でかつ高精度の転写パターンを有する半導体デバイスを製造することができる。
本発明によれば、内側領域に対して高精度の欠陥検査を行うとともに、マスクブランクまたはマスクブランク用基板、並びに欠陥検査装置を破壊せずに、外周領域の欠陥検査を自動的に、正確に行うことのできる欠陥検査方法を提供することができる。
また、本発明によれば、この欠陥検査方法を用いたマスクブランクおよび転写用マスクの製造方法を提供することができる。具体的には、本発明によれば、マスクブランクまたはマスクブランク用基板、並びに欠陥検査装置を破壊せずに、内側領域に対して高精度の欠陥情報を取得できるとともに、外周領域の欠陥検査を自動的に、正確に行うことができるので、不具合を生じる欠陥の少ない適切なマスクブランクおよび転写用マスクを提供することができる。
また、本発明によれば、微細でかつ高精度の転写パターンを有する半導体デバイスの製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
[マスクブランク用基板10]
まず、本実施形態の欠陥検査方法に用いることのできるマスクブランク用基板10について説明する。
(マスクブランク用基板10の形状)
図3(a)は、本実施形態の欠陥検査方法に用いることのできるマスクブランク用基板10の一例を示す斜視図である。図3(b)は、図3(a)に示すマスクブランク用基板10の断面模式図である。
本実施形態に用いることのできるマスクブランク用基板10(単に「基板10」と称す場合がある。)は、矩形状の板状体であり、2つの対向する主表面2と、端面1とを有する。2つの対向する主表面2は、この板状体の上面および下面であり、互いに対向するように形成されている。また、2つの対向する主表面2の少なくとも一方は、転写パターンが形成されるべき主表面2である。
端面1は、対向する主表面2の外縁に隣接する。端面1は、平面状の端面部分1d、および曲面状の端面部分1fを有する。平面状の端面部分1dは、対向する2つの主表面2のうち、一方の主表面2aの辺と、他方の主表面2bの辺とを接続する面であり、側面1a、および面取り面1bを含む。側面1aは、平面状の端面部分1dにおける、対向する主表面2とほぼ垂直な部分(T面)である。面取り面1bは、側面1aと対向する主表面2との間における面取りされた部分(C面)であり、側面1aと対向する主表面2との間に形成される。
曲面状の端面部分1fは、基板10を平面視したときに、基板10の角部10a近傍に隣接する部分(R部)であり、側面1cおよび面取り面1eを含む。ここで、基板10を平面視するとは、例えば、対向する主表面2に対して垂直な方向から、基板10を見ることである。また、基板10の角部10aとは、例えば、対向する主表面2の外縁における、2辺の交点近傍である。2辺の交点とは、2辺のそれぞれの延長線の交点であってよい。本例において、曲面状の端面部分1fは、基板10の角部10aを丸めることにより、曲面状に形成されている。
図1および図2を用いて、本実施形態の欠陥検査方法に用いることのできるマスクブランク用基板10について、さらに説明する。図1および図2に示すように、基板10は、2つの対向する主表面2(一方の主表面2aおよび他方の主表面2b)を有する。一方の主表面2aは、転写パターンが形成される表面であり、表側の表面ともいう。他方の主表面2bは、転写パターンが形成される表面とは反対側の表面であり、裏面ともいう。一方の主表面2aは、内側領域12および外周領域14を有する。内側領域12は、転写パターンを形成する領域であるパターン形成領域を含む。外周領域14は、一方の主表面2aのうち、内側領域12の外側の領域である。
図1および図2に示すように、基板10は、二つの対向する主表面2に対して垂直な側面1aを有する。また、図1および図2に示すように、内側領域12と、外周領域14との境界は、側面1aを含む平面18から距離dの位置にある。
図1に示すように、基板10は、主表面2および側面1aの間に面取り面1bを有することができる。図1に示すように、本明細書では、主表面2に対して垂直な方向における側面1aおよび面取り面1bの稜線16aと、主表面2a、2bおよび面取り面の稜線16bとの間の高低差を記号hとして示す。
本明細書において、マスクブランク用基板10の上下方向について言及する場合には、一方の主表面2a(表側の表面)が上方向、および他方の主表面2b(裏面)が下方向を向いているものとする。
なお、上記のマスクブランク用基板10に対する説明は、後述するマスクブランク30についても同様である。すなわち、本実施形態に用いることのできるマスクブランク30も、マスクブランク用基板10と同様に、二つの対向する主表面2、側面1a、内側領域12、外周領域14および所定の距離dを有する。また、マスクブランク30は、面取り面1bおよび所定の高低差hを有することができる。
以下、さらに具体的に、本発明の実施形態のマスクブランク用基板10について、説明する。
(マスクブランク用基板10の材料)
マスクブランク用基板10の製造に用いる材料としては、合成石英ガラス、およびその他各種のガラス材料(例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス等)を用いることができる。その中でも合成石英ガラスは、ArFエキシマレーザー(波長193nm)のような短波長の紫外線に対しても高い透過率を有しているため、高精細の転写パターン形成に用いられるバイナリマスクブランク用基板または位相シフトマスクブランク用基板として好適である。
また、マスクブランク用基板10のために用いる基板として、EUV(Extreme Ultra Violet)光を露光光とする反射型マスクに用いられる低熱膨張ガラスを用いることができる。反射型マスクに用いられる低熱膨張ガラスの例として、例えば、低熱膨張の特性を有するSiO2-TiO2系ガラス(二元系(SiO2-TiO2)および、三元系(SiO2-TiO2-SnO2等))、例えば、SiO2-Al2O3-Li2O系の結晶化ガラスなど、いわゆる多成分系のガラスを使用することができる。
(研磨工程および前洗浄工程)
マスクブランク用基板10の製造工程においては、基板の研磨工程の後、基板の主表面2に存在するパーティクル(例えば基板の表面に付着している研磨砥粒などの異物等)を排除するための前洗浄工程が実施される。これらの工程を経て、欠陥検査工程が行われる前段階のマスクブランク用基板10が製造される。
(欠陥検査)
前洗浄工程の後に、マスクブランク用基板10の表面の異物の付着等の欠陥を検査するための欠陥検査工程を含むことができる。この欠陥検査工程のために、本発明の欠陥検査方法を用いることができる。以下、本発明の実施形態の欠陥検査方法を、マスクブランク用基板10の検査に適用する場合について説明する。後述するように、本発明の実施形態の欠陥検査方法は、マスクブランク30の欠陥検査のために適用することもできる。
本実施形態の欠陥検査方法は、ワーキングディスタンス(WD)がWD≦0.5mmである光学的測定方法によって、基板10の内側領域12の欠陥検査を行い、ワーキングディスタンス(WD)がWD>0.5mmである光学的測定方法によって、基板10の外周領域14の欠陥検査を行う。なお、内側領域12と、外周領域14との境界は、側面1aを含む平面18から距離dの位置にある。距離dは、d≧1mmであり、好ましくはd≧2mmであり、より好ましくはd≧4mmである。また、基板10の寸法が152mm×152mmの場合、距離dは、d≦10mmであると好ましく、d≦8mmであるとより好ましく、d≦6mmであるとさらに好ましい。具体的には、基板10の寸法が152mm×152mmの場合、内側領域12の大きさは、142mm×142mmであることができる。内側領域12および外周領域14の形状は、同じ位置に重心を有する矩形であることが好ましい。
内側領域12の欠陥検査のための光学的測定方法としては、ワーキングディスタンス(WD)が所定の値であればその種類に制限はない。具体的には、内側領域12の欠陥検査のための光学的測定方法としては、明視野光学系を用いる光学的測定方法(例えば、微分干渉光学系およびコンフォーカル光学系等の測定方法)を挙げることができる。また、所定の精度の欠陥検出が可能であれば、内側領域12の欠陥検査のために、暗視野光学系を用いる光学的測定方法を用いることができる。
一般的な欠陥検査装置の場合、検査対象品(基板10)の主表面2の第1方向に走査するステップを第1方向に直行する第2方向に向かって繰り返し行い、第1方向の1回分の走査により得られる電気信号に基づいて、基準値以上のサイズの欠陥の有無を検査する。マスクブランク用基板およびマスクブランクのパターン形成領域の欠陥検査では、そのパターン形成領域内においてナノメートルオーダー(1μm未満)のサイズの欠陥の有無を検出できることが一般的に求められる。マスクブランク30から転写用マスク40を製造する際、主表面2のパターン形成領域内にサイズがナノメートルオーダーであっても欠陥が存在していると転写パターンの精度に影響を及ぼすためである。
このような要求を満たす欠陥検査装置の場合、マスクブランク用基板やマスクブランクの主表面の外周縁近傍の領域を走査することは困難であり、基板10の寸法が152mm×152mmの場合、142mm×142mm以内上の領域を走査する場合が多い。これはナノメートルオーダーのサイズの欠陥を検出するためには撮像エリアを大幅に狭くする必要があり、ワーキングディスタンス(WD)も必然的に短くなるためである。すなわち、上記のような欠陥検査装置の場合、ワーキングディスタンス(WD)がWD≦0.5mmである。この欠陥検査装置の場合、ワーキングディスタンス(WD)がWD≦0.4mmであると好ましく、WD≦0.3mmであるとより好ましい。
一方、マスクブランク用基板およびマスクブランクの主表面におけるパターン形成領域の外側の領域の欠陥検査では、その領域内においてマイクロメートルオーダー(1μm以上)のサイズの欠陥の有無を検出できればよいとされることが一般的である。この場合に用いる欠陥検査装置は、検出できる欠陥サイズの要求レベルが比較的緩いため、ワーキングディスタンス(WD)を長くすることができる。ワーキングディスタンス(WD)を長くすることで、撮像エリアが広くなり、かつ焦点深度も大きくなる。この欠陥検査装置の場合、検出できる欠陥サイズはマイクロメートルオーダーではあるが、広い撮像エリア内の広い範囲内で主表面2の結像範囲内になる。このため、マスクブランク用基板やマスクブランクで表面形状が急減に変化する主表面の外周縁近傍で、欠陥検査装置の対物レンズと主表面との間のワーキングディスタンスを制御して追従を行っても、対物レンズがマスクブランク等に衝突する恐れはない。なお、このような欠陥検査装置のワーキングディスタンス(WD)は、WD>0.5mmである。この欠陥検査装置の場合、ワーキングディスタンス(WD)がWD≧1mmであると好ましく、WD≧5mmであるとより好ましい。
そこで本発明の欠陥検査方法では、パターン形成領域を包含する内側領域12に対する上記のWD≦0.5mmの欠陥検査方法と、外周領域14に対するWD>0.5mmの欠陥検査方法とを組み合わせることにより、厳しい欠陥保証が求められるエリア(内側領域12)の欠陥検査をそのまま維持しつつ、基板10の端面に近い領域(外周領域14)の欠陥検査を行い、両方の領域の欠陥について保証することで、基板10の一方の主表面2a全体の保証を可能にすることができる。
すなわち、内側領域12と、外周領域14との境界が所定の距離dにあり、内側領域12および外周領域14を、それぞれ異なる所定のワーキングディスタンス(WD)の光学的測定方法によって欠陥検査を行うことにより、内側領域12に対して高精度の欠陥検査を行うとともに、マスクブランク30またはマスクブランク用基板10、並びに欠陥検査装置を破壊せずに、外周領域14の欠陥検査を自動的に、正確に行うことができる。
本実施形態の欠陥検査方法では、外周領域14の欠陥検査は、暗視野光学系を用いる光学的測定方法によって行われることが好ましい。
暗視野光学系を用いる光学的測定方法とは、対物レンズに試料の正常部分からの反射光が入らないように斜めなどから観察対象の試料を照明し、試料が散乱した光を観察する測定方法である。明視野光学系で欠陥を撮影した場合、その撮影画像は、明るい背景の中に欠陥が暗く映ったものになるため、比較的小さいサイズの欠陥が背景の光で検出しにくい。これに対し、暗視野光学系で欠陥を撮影した場合、その撮影画像は、暗い背景の中に欠陥が明るく映ったものになるため、比較的小さいサイズの欠陥であっても検出しやすい。このため、外周領域14の欠陥検査のために、暗視野光学系を用いることによって、比較的低倍率(例えば0.7~1倍程度)で外周領域14の欠陥検査を行うことができる。したがって、外周領域14の欠陥検査を、比較的長いワーキングディスタンスにより行うことができる。なお、暗視野光学系を用いる場合には、欠陥の凹凸の判定は難しい。しかしながら、暗視野光学系を用いる欠陥検査装置により、異物等の欠陥の有無、およびその座標を、自動的に、短時間で判定できる。
本実施形態の欠陥検査方法では、外周領域14の欠陥検査は、光学倍率が5倍以下の光学系で検査することが好ましい。外周領域14の欠陥検査のために、所定の低い光学倍率を用いることによって、比較的長いワーキングディスタンスであり、かつ比較的大きい焦点深度で、外周領域14の欠陥検査を行うことができる。
マスクブランク用基板10は、高低差hの面取り面1bを含むことができる。面取り面1bが大きすぎると支障を生じる場合があるので、高低差hは、h≦0.5mmであることが好ましい。マスクブランク用基板10が、所定の形状の面取り面を有する場合であっても、内側領域12に対して高精度の欠陥検査を行うとともに、マスクブランク30またはマスクブランク用基板10、並びに欠陥検査装置を破壊せずに、外周領域14の欠陥検査を自動的に、正確に行うことができる。一方、高低差hは、h≧0.3mmであることが好ましい。
次に、外周領域14の欠陥検査に用いることのできる暗視野光学系を用いた欠陥検査装置の一例について説明する。
図4は、本実施形態に用いることのできる欠陥検査装置の主要部分を説明するための模式図である。図4において、紙面に垂直な方向がX軸、紙面の上下方向がY軸、紙面の左右方向がZ軸とする。
基板10の表面側(図面右側)には、結像光学系100が配設される。結像光学系100はXYZ駆動手段(図示せず。)によって、X軸、Y軸、Z軸方向に駆動可能に構成されている。結像光学系100は、対物レンズ111、結像レンズ112および撮像素子113を備える撮像カメラ110(例えばTDIカメラ)、対物レンズ111と結像レンズ112の間に配置されるオートフォーカスモジュール(同軸AFモジュール)120、照明手段131を有する。照明手段131は対物レンズ111に装着される。
図5および図6に示すように、照明手段131は、リング照明である。リング照明は、複数のLED136、137を円環状に配置するとともに、複数のLED136、137によるスポット光のそれぞれが撮像カメラ110の焦点位置を中心とした領域(画像取得領域、検査領域、撮像領域)に集まるように、複数のLED136、137の指向性および光軸を調整した上で、円環状の部材に固定したものである。照明手段131であるリング照明は、前記リング照明における円環の中心軸と前記結像光学系100の光軸Oと、を一致させ同軸としてある。
照明手段131であるリング照明は、3つの同心円のそれぞれの円に沿って、LEDを円環状に3重(3列)に配置した構成を有する(図5参照)。外側および内側のLED円環列は、青色LEDが使用され、真ん中のLED円環列は、黄色LEDまたはオレンジ色LEDが使用される。
なお、検査対象品の厚さに応じて、照明手段131であるリング照明の作動距離d(ワーキングディスタンス:WD)を調整できるようになっている。ワーキングディスタンスは、検査対象品の表面に対するリング照明の設置距離であり、より詳しくはリング照明の基板10側の先端から基板10表面までの距離である。基板10の検査では、キズ、異物、ガラス内部の異物および脈理などの光学的欠陥が検出される。マスクブランク30(薄膜付き基板10)の検査では、ピンホール、ハーフピンホール、異物などが検出される。
遮光マスク140は、迷光対策として光学系に挿入される。遮光マスク140は、欠陥像の結像に寄与しないような光(迷光)をカットする。遮光マスク140は、大きさを変えながら迷光対策に適した位置に適した大きさで設置するとよい。遮光マスク140は、遮光板を使用してもよく、絞りを使用してもよい。
本実施形態において、代表的な撮像素子113としては、CCD、TDI、CMOSおよびVMISなどの固体撮像装置がある。架台200は、除振台となっている。
照明手段131(リング照明)のハウジング134は、内径R1、外径R2、厚さt、などを設計する(図6参照)。これらの値は欠陥検出能力の向上の観点から決定される。リング照明のハウジング134は、円環状であり、円環の内周面にはLED136、137を取り付けるための傾斜部135が形成されている。ハウジング寸法R3(胴部の厚み)は強度を考慮し設計する(図6参照)。
機械的要請(寸法制限)の第1点は、リング照明の作動距離d(ワーキングディスタンス:WD)であり、これは、基板10の表面に対するリング照明の設置距離であり、より詳しくはリング照明の基板10側の先端から基板10表面までの距離である。作動距離d>0.5mmであるが、基板保持部とのクリアランスを充分に確保するため、リング照明の作動距離は、d≧5mmであることが好ましく、d≧15mmであることがより好ましい。
暗視野要請(光学的要請)は、リング照明の照射角度αである。リング照明の照射角度αは、LED136、137の光線が基板10に入射(照射)される際、光線と基板10の表面とのなす角である。暗視野照明では、対物レンズ111に直接照明光が入らないようにする。
暗視野照明の実現には、結像レンズ系を含めた照明設計が必要になる。結像レンズ112には高開口数(NA)のレンズを使用するため、暗視野照明とするには基板10の表面に対して鋭角の照射が必要となる。そのため、作動距離の確保には、リング外径を大きくする必要がある。結像光学系100における対物レンズ111の倍率およびNAにより照射角度αの上限が決まる。例えば、対物レンズ111の倍率が1倍、NAが0.5であるとき、照射角度αの上限は50°になる。また、迷光低減のため、より安全な角度に照射角度を設定するという観点から、照射角度αの上限は30°以下であると好ましい。
本欠陥検査装置において、撮像素子113はTDIセンサであり、前記結像光学系100はTDIカメラを用いたものであることが好ましい。
本欠陥検査装置は、基板10とTDIカメラとを、一定速度で一定方向に相対的に移動させる手段を有し、基板10の上の撮像領域(撮像対象物)の移動方向および速度とTDIセンサにおけるCCDの電荷転送の方向および速度を合わせることで、CCDの垂直段の数だけ前記撮像領域(撮像対象物)を繰り返し露光し撮影する手段を有することが好ましい。ここで、基板10の上の撮像領域の移動方向および速度とTDIセンサにおけるCCDの電荷転送の方向および速度を合わせることで、CCDの垂直段の数だけ前記撮像領域を繰り返し露光し撮影する手段は、例えば、TDIカメラ内蔵の制御装置(制御回路、CPU、ソフトウエアなど)で行うことができる。
通常のラインセンサは、CCDを一列に並べたものである。TDI(Time Delay Integration)センサ(素子)では、ライン上に配列されたCCD(一列)が、さらに前記ラインに沿った方向に対し垂直な方向にも複数列配置されている。複数列のCCDで得られた画像を積分露光することで、高い感度の画像を得ることができるようになる。
一定速度、一定方向に移動する撮像対象物ならば、撮像対象物の移動方向・速度とCCDの電荷転送の方向・速度を合わせることで、CCDの垂直段の数だけ対象物(1列分のCCDに対応する対象物上の同一領域)を繰り返し露光・撮影させる。
本実施形態の欠陥検査方法は、内側領域12の欠陥検査は、明視野光学系を用いる光学的測定方法によって行われることが好ましい。
明視野光学系を用いる光学的測定方法とは、照明された試料からの反射光を直接対物レンズで拡大し、観察する光学的測定方法であり、暗視野光学系を用いる光学的測定方法と比べて、反射率の違いによる試料観察が可能である。内側領域12の欠陥検査のために、明視野光学系を用いることによって、パターン形成領域に対して、高精度の欠陥検査を行うことができる。
明視野光学系を用いた光学的測定方法の欠陥検査方法としては、例えば、特許文献1に記載のような、微分干渉観察用の微分干渉プリズム(ノマルスキープリズム)を有する光学系(微分干渉光学系)を用いた欠陥検査方法を挙げることができる。また、明視野光学系を用いた光学的測定方法の欠陥検査方法としては、例えば、特許文献3に記載のような、コンフォーカル検査モード(コンフォーカル光学系)を用いた欠陥検査方法を挙げることができる。なお、特許文献3には、明視野光学系の一種である干渉検査モードを用いた欠陥検査方法も記載されている。
コンフォーカル光学系は試料の高さ方向について高い解像力を有しているので、対物レンズの焦点が試料表面に合焦している場合、受光素子には多量の光が入射する。また、焦点が試料表面からずれている場合には、受光素子に入射する光量は著しく減少する。したがって、コンフォーカル光学系を用いた欠陥検査装置により、対物レンズの焦点と試料表面との間の相対距離を変化させながらビーム走査を行い、対物レンズの焦点と試料表面との相対変位量と受光素子の出力である輝度との関係を求めることにより、欠陥の高さ情報、すなわち凸状の欠陥であるかまたは凹状の欠陥であるかを判別することができる。同様に、コンフォーカル光学系を用いた欠陥検査装置により、欠陥の大きさを測定することができる。
具体的には、コンフォーカル光学系を用いた欠陥検査の場合、検出した欠陥のアドレスを用い、試料ステージを移動させて検出された欠陥をビーム走査位置に位置させる。次に、対物レンズの焦点と試料表面との間の相対距離を変えながら複数回ビーム走査を行う。この際、対物レンズを光軸方向に沿って移動させることにより、焦点と試料との間の相対変位量を制御することができる。また、試料ステージを光軸方向に移動することによっても相対変位量を制御することができる。このような測定により、数十ナノメートル程度の大きさの微小な欠陥を正確に検出することができる。
本実施形態の欠陥検査方法は、内側領域12の欠陥検査は、光学倍率が10倍以上の光学系で検査することが好ましい。内側領域12の欠陥検査のために、所定の光学倍率を用いることによって、パターン形成領域に対して、高精度の欠陥検査を行うことを確実にできる。
上述のように、暗視野照明光学系を有する欠陥検査装置は、反射の暗視野リング照明を備える暗視野照明により、散乱光を検出する機構を有する。上述のように、暗視野照明光学系を用いると、ワーキングディスタンス(WD)を長くしても1μm台のサイズの欠陥まで比較的容易に検出することができる(明視野光学系の場合、1μm台のサイズの欠陥の検出が容易ではない)。本実施形態では、欠陥検査装置の結像光学系100にTDIカメラを採択し、欠陥検査情報(画像データ、欠陥情報)を取得することができる。この欠陥検査装置から得られた外周領域14の欠陥検査情報と、上述の内側領域12の欠陥検査情報とを合わせることで、従来の欠陥保証領域(内側領域12)と、従来の欠陥保証領域ではなかった領域(外周領域14)の両方の領域の欠陥保証を可能にすることができる。
本実施形態の欠陥検査方法では、一方の主表面2aの内側領域12および外周領域14の欠陥検査に加えて、側面1aおよび他方の主表面2bの少なくとも1つの欠陥検査をすることができる。側面1aおよび他方の主表面2bの少なくとも1つの欠陥検査は、外周領域14の欠陥検査と同様の方法、すなわち、ワーキングディスタンス(WD)がWD>0.5mmである光学的測定方法により検査することが好ましい。側面1aおよび他方の主表面2bには、転写パターンを形成する必要がないため、比較的低倍率の欠陥検査方法により、欠陥検査をすることができる。なお、ワーキングディスタンス(WD)がWD≧5mmである光学的測定方法を用いて側面1aを検査すると、焦点深度が面取り面1aの面取り幅よりも大きくなる。これにより、側面1aを撮影したときに面取り面1bも結像範囲内に入るため、側面1aと面取り面1bの両方を一度に欠陥検査することができる。
本実施形態の欠陥検査方法では、ワーキングディスタンス(WD)がWD>0.5mmである光学的測定方法によって、マスクブランク用基板10の最終検査を行うことができる。この最終検査は、マスクブランク用基板10の一方の主表面、すなわち内側領域12および外周領域14に対して行うことができる。内側領域12に対する高精度の欠陥検査の後に、最終検査より前に存在する工程において、予期せぬ汚染粒子の付着等が生じ、欠陥となる場合がある。マスクブランク用基板10の最終検査を行うことにより、1回の最終検査により、予期せぬ汚染粒子の付着等を検出することができる。この最終検査の場合、欠陥検査装置のワーキングディスタンス(WD)はWD≧1mmであると好ましく、WD≧5mmであるとより好ましい。
[マスクブランク30]
次に、本発明のマスクブランク30の製造方法の実施形態について説明する。
本実施形態のマスクブランク30の製造方法では、まず、上述のような、二つの対向する主表面2と、二つの対向する主表面2に対して垂直な端面とを有するマスクブランク用基板10を用意する。次に、図7に示すように、マスクブランク用基板10の一方の主表面2aに、パターン形成用の薄膜32を形成する。次に、薄膜32を形成した薄膜付き基板10の表面を欠陥検査し、その欠陥検査の結果を用いて薄膜付き基板10からマスクブランク30を選定する。この欠陥検査には、上述した本発明の欠陥検査方法を用いる。なお、マスクブランク用基板10を用意する際に、マスクブランク用基板10に対して、上述した本発明の欠陥検査方法を用いた欠陥検査を行うことができる。
マスクブランク30の欠陥検査は、単層膜の状態で検査する態様の他、2層膜または3層以上の積層膜の状態で欠陥検査することが含まれる。また、マスクブランク30の検査は、2層膜または3層以上の積層膜の場合、成膜する毎に欠陥検査をすることが含まれる。
本実施形態のマスクブランク30の製造方法で形成されるパターン形成用の薄膜32としては、バイナリマスクブランクに用いられる遮光膜、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜、および、反射型マスクの多層反射膜等を挙げることができる。これらの薄膜32に加え、マスクブランク用基板10の種類、および転写用マスク40の用途に応じて、付加的な機能膜を形成することができる。以下に、バイナリマスクブランク、位相シフトマスクブランクおよび反射型マスクブランクについて説明する。
(バイナリマスクブランク)
バイナリマスクブランクは、上記ウェットエッチング工程まで処理したガラス基板上に遮光膜を含む薄膜32を形成して製造する。遮光膜(転写パターン形成用薄膜32)は、クロム、タンタル、ルテニウム、タングステン、チタン、ハフニウム、モリブデン、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、およびロジウム等から選択された遷移金属単体あるいはその化合物を含む材料で形成することができる。また、例えば、遮光膜は、タンタルに、酸素、窒素、およびホウ素などの元素から選ばれる1種以上の元素を含有したタンタル化合物で形成することができる。
一方、遮光膜は、遷移金属およびケイ素を含有する材料で形成することができる。例えば、遮光膜は、遷移金属およびケイ素に、酸素および窒素から選ばれる1種以上の元素を含有した遷移金属シリサイド化合物で形成することができる。
(位相シフトマスクブランク)
位相シフトマスクブランクは、上記ウェットエッチング工程まで処理したガラス基板上に光半透過膜(転写パターン形成用薄膜32)を有する形態のものであって、該光半透過膜をパターニングしてシフタ部を設けるタイプであるハーフトーン型位相シフトマスクが作製される。
かかる位相シフトマスクにおいては、光半透過膜を透過した光に基づき転写領域に形成される光半透過膜パターンによる被転写ガラス基板のパターン不良を防止するために、ガラス基板上に光半透過膜とその上の遮光膜(遮光帯)とを有する形態とするものが挙げられる。
この光半透過膜としては、例えば、遷移金属およびケイ素を含む材料からなり、これらの遷移金属およびケイ素に、酸素、窒素および炭素から選ばれる1種以上の元素を含有した材料が挙げられる。
また、光半透過膜上に遮光膜を有する形態の場合、上記光半透過膜の材料が遷移金属およびケイ素を含むので、遮光膜の材料としては、光半透過膜に対してエッチング選択性を有する(エッチング耐性を有する)ことが好ましい。遮光膜は、クロム化合物で構成することが好ましい。
また、レジスト膜の膜厚を薄膜化して微細パターンを形成するために、遮光膜上にエッチングマスク膜を有する構成としてもよい。
遮光膜が上記のクロム化合物で形成されている場合、エッチングマスク膜は、この遮光膜に対してエッチング選択性を有する材料であるケイ素化合物からなる材料で構成することが好ましい。また、遮光膜が上記の遷移金属シリサイド化合物、タンタル化合物、またはケイ素化合物で形成されている場合、エッチングマスク膜は、これらの遮光膜に対してエッチング選択性を有する材料であるクロム、またはクロム化合物からなる材料で構成することが好ましい。
(反射型マスクブランク)
反射型マスクブランクの場合、マスクブランク用基板10として上記ウェットエッチング工程まで終えた低熱膨張ガラス(例えば、SiO2-TiO2ガラス)が用いられる。反射型マスクの薄膜32は、ガラス基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、多層反射膜上に露光光を吸収する吸収体膜(転写パターン形成用薄膜32)がパターン状に形成された構造を有する。
多層反射膜は、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層して形成される。
多層反射膜の例としては、Mo膜とSi膜を交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜などがある。また、吸収体膜は、露光光である例えばEUV光を吸収する機能を有するもので、例えばタンタル(Ta)単体またはTaを主成分とする材料を好ましく用いることができる。
(マスクブランク30の欠陥検査)
薄膜付き基板10の表面の欠陥検査は、上述のマスクブランク用基板10の欠陥検査と同様に行うことができる。すなわち、欠陥検査としては、ワーキングディスタンス(WD)がWD≦0.5mm(好ましくはWD≦0.4mm、より好ましくはWD≦0.3mm。)である光学的測定方法によって、内側領域12の欠陥検査を行い、ワーキングディスタンス(WD)がWD>0.5mm(好ましくはWD≧1mm、より好ましくはWD≧5mm。)である光学的測定方法によって、外周領域14の欠陥検査を行うことができる。マスクブランク30の内側領域12および外周領域14は、上述のマスクブランク用基板10の内側領域12および外周領域14と同様である。
また、薄膜付き基板10の表面の外周領域14の欠陥検査は、暗視野光学系を用いる光学的測定方法によって行われることが好ましい。このときの外周領域14の欠陥検査は、光学倍率が5倍以下の光学系で検査することが好ましい。
また、薄膜付き基板10の表面の内側領域12の欠陥検査は、明視野光学系を用いる光学的測定方法によって行われることが好ましい。このときの内側領域12の欠陥検査は、光学倍率が10倍以上の光学系で検査することが好ましい。
本実施形態のマスクブランク30は、上述のマスクブランク用基板10と同様に、高低差h(h≦0.5mm)の面取り面をさらに有することができる。また、この高低差hは、h≧0.3mmであることが好ましい。
本実施形態の欠陥検査方法では、一方の主表面2aの内側領域12および外周領域14の欠陥検査に加えて、側面1aおよび他方の主表面2bの少なくとも1つの欠陥検査をすることができる。側面1aおよび他方の主表面2bの少なくとも1つの欠陥検査は、外周領域14の欠陥検査と同様の方法、すなわち、ワーキングディスタンス(WD)がWD>0.5mmである光学的測定方法により検査することが好ましい。側面1aおよび他方の主表面2bには、転写パターンを形成する必要がないため、比較的低倍率の欠陥検査方法により、欠陥検査をすることができる。なお、ワーキングディスタンス(WD)がWD≧5mmである光学的測定方法を用いて側面1aを検査すると、焦点深度が面取り面1bの面取り幅よりも大きくなる。これにより、側面1aを撮影したときに面取り面1bも結像範囲内に入るため、側面1aと面取り面1bの両方を一度に欠陥検査することができる。
本実施形態の欠陥検査方法では、ワーキングディスタンス(WD)がWD>0.5mm(好ましくはWD≧1mm、より好ましくはWD≧5mm。)である光学的測定方法によって、マスクブランク30の最終検査を行うことができる。この最終検査は、マスクブランク30マスクブランク30の一方の主表面、すなわち内側領域12および外周領域14に対して行うことができる。内側領域12に対する高精度の欠陥検査の後に、最終検査より前に存在する工程において、予期せぬ汚染粒子の付着等が生じ、欠陥となる場合がある。マスクブランク用基板10の最終検査を行うことにより、1回の最終検査により、予期せぬ汚染粒子の付着等を検出することができる。
以上のようにして、本発明のマスクブランク30を製造することができる。
[転写用マスク40の製造]
本発明の転写用マスク40の製造方法の実施形態では、上述のマスクブランク30の製造方法で製造されたマスクブランク30を用いる。図8に示すように、このマスクブランク30の薄膜32に転写パターン32aを形成することにより、転写用マスク40を製造することができる。上述のマスクブランク30は、不具合の原因となる欠陥の少ない適切なマスクブランク30なので、不具合の原因となる欠陥の少ない適切な転写用マスク40を得ることができる。
本実施形態の転写用マスク40の製造方法は、前記のマスクブランク30の製造方法で製造されたマスクブランク30の薄膜32に転写パターン(薄膜パターン32a)を形成する工程を備える。以下、マスクブランク30から転写用マスク40を製造する工程について説明する。なお、ここで使用するマスクブランク30は、上記(2)のハーフトーン型位相シフトマスクブランクである。この位相シフトマスクブランクは、透光性のマスクブランク用基板10上に、光半透過膜(転写パターン形成用の薄膜32)と遮光膜とが順に積層した構造を備える。また、この転写用マスク40(位相シフトマスク)の製造方法は一例であり、一部の手順を変えても製造することは可能である。
まず、位相シフトマスクブランクの遮光膜上に、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。このレジスト膜には、電子線描画用の化学増幅型レジストが好ましく用いられる。次に、レジスト膜に対して、光半透過膜に形成すべき転写パターンを電子線で露光描画し、現像等の所定の処理を施し、転写パターンを有するレジストパターンを形成する。続いて、遮光膜に対してレジストパターンをマスクとしたドライエッチングを行い、遮光膜に光半透過膜に形成すべき転写パターンを形成する。ドライエッチング後、レジストパターンを除去する。次に、光半透過膜に対し、転写パターンを有する遮光膜をマスクとしたドライエッチングを行い、光半透過膜に転写パターンを形成する。続いて、レジスト膜を再度形成し、遮光膜に形成すべきパターン(遮光帯等のパターン)を電子線で露光描画し、現像等の所定の処理を施し、レジストパターンを形成する。遮光膜に対し、遮光帯等のパターンを有するレジストパターンをマスクとするドライエッチングを行い、遮光膜に遮光帯等のパターンを形成する。そして、所定の洗浄処理等を施し、転写用マスク40(位相シフトマスク)が出来上がる。
[半導体デバイスの製造]
本発明の半導体デバイスの製造方法では、上述の転写用マスク40の製造方法で製造された転写用マスク40を用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する。本発明の転写用マスク40を用いることにより、微細でかつ高精度の転写パターンを有する半導体デバイスを製造することができる。
以下、実施例により、本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1として、以下のようにして、マスクブランク用基板10を製造した。なお、実施例1として同じ条件で、100枚のマスクブランク用基板10を製造した。測定された欠陥個数については、100枚の平均値とした。
(ガラス基板の準備および研磨工程)
マスクブランク用基板10の原料として使用するガラス基板は、合成石英ガラス基板(大きさ152.4mm×152.4mm、厚さ6.35mm、面取り面の高低差h=0.5mm)である。この合成石英ガラス基板の主表面2および端面1を研削加工し、さらに酸化セリウム砥粒を含む研磨液で粗研磨処理および精密研磨を終えたガラス基板を両面研磨装置のキャリアにセットし、以下の条件で研磨加工(超精密研磨)を行った。
研磨パッド:軟質ポリシャ(スウェードタイプ)
研磨液:コロイダルシリカ砥粒(平均粒径100nm)+水
加工圧力:50~100g/cm2
加工時間:60分
超精密研磨終了後、コロイダルシリカ砥粒を除去し、ガラス基板の主表面2および端面1に対してブラシ洗浄を行った。次に、ガラス基板の主表面2および端面1に対して所定の洗浄を行った。
上記の洗浄まで行った100枚のガラス基板の一方の主表面2aの内側領域12(寸法:142mm×142mm、側面を含む平面18から境界までの距離d=5.2mm)に対し、レーザー干渉コンフォーカル光学系(明視野光学系)による60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、それぞれ欠陥検査を行った。欠陥検査の際のワーキングディスタンス(WD)は、0.3mm前後とした(オートフォーカスのため、測定箇所によって±0.1mm程度の差が生じる。)。その結果、この欠陥検査を行った100枚のガラス基板の全てが内側領域12で100nm相当以上のサイズの欠陥は検出されなかった。しかし、2枚のガラス基板から内側領域12で100nm相当未満のサイズの欠陥が6個以上検出された。この2枚のガラス基板は、基準を満たせない不合格品として除外した。
次に、上記で説明した図4の構成を備える暗視野光学系(TDIカメラを適用。)の欠陥検査装置を用いて、上記基準に合格した98枚のガラス基板の外周領域14に対し、それぞれ欠陥検査を行った。具体的には、上記のガラス基板の一方の主表面2aの上記内側領域12(寸法:142mm×142mm)より外側の外周領域14(側面1aと、側面1aを含む平面18から距離d=5.2mmとの間の領域)に対し、暗視野光学系による1μm感度の欠陥検査装置を用いて、欠陥検査を行った。欠陥検査の際のワーキングディスタンス(WD)は、WD=21mmとした。その結果、この欠陥検査を行った98枚のガラス基板のうち2枚のガラス基板から外周領域14に1μm相当以上のサイズの欠陥(キズ)が検出された。この2枚のガラス基板は、基準を満たせない不合格品として除外した。
次に、上記の暗視野光学系の欠陥検査装置を用いて、上記基準に合格した96枚のガラス基板の裏側の主表面2bに対して同様の欠陥検査をそれぞれ行った。その結果、この欠陥検査を行った96枚のガラス基板のうちの1枚のガラス基板から、裏側の主表面2bに1μm相当以上のサイズの欠陥(キズ)が検出された。この1枚のガラス基板は、基準を満たせない不合格品として除外した。
次に、上記の暗視野光学系の欠陥検査装置を用いて、上記基準に合格した95枚のガラス基板の4つの端面1(側面1aおよび面取り面1b)に対して同様の欠陥検査を行った。その結果、この欠陥検査を行った95枚のガラス基板のうちの1枚のガラス基板から、側面1aに1μm相当以上のサイズの欠陥(キズ)が検出された。この1枚のガラス基板は、基準を満たせない不合格品として除外した。以上の工程によって、94枚のガラス基板が、マスクブランク用基板10として合格品と判定された。
これらの欠陥の座標等の欠陥情報は、この欠陥検査装置により、自動的に、正確に記録することができた。さらに、これらの欠陥検査を行うことによって、これらの欠陥が検出されたガラス基板をマスクブランク用基板として用いることができない不合格品として自動的に判定することもできた。
以上のように、合成石英ガラス基板を原料として、実施例1のマスクブランク用基板10を製造した。上述のように、実施例1のマスクブランク用基板10の一方の主表面2aの全体について、欠陥の情報を、自動的に、正確に記録することができた。また、この1μm相当以上の欠陥が検出されたガラス基板を不合格品として自動的に判定することもできた。なお、欠陥検査の際に、欠陥検査装置が合成石英ガラス基板に衝突して破壊するなどの事態は生じなかった。
(比較例1)
実施例1で暗視野光学系の欠陥検査装置を用いる外周領域14の欠陥検査を行った100枚のガラス基板に対し、外周領域14の欠陥検査を目視検査で行った。この目視検査は、同じガラス基板に対して複数の検査員が重複して行った。その結果、暗視野光学系の欠陥検査装置を用いた欠陥検査で外周領域14に1μm相当以上のサイズの欠陥(キズ)が検出されていたガラス基板に対する目視検査で、一部の検査員がその欠陥を発見できなかった。目視検査ではこのような欠陥は見落してしまう可能性があることがわかった。
(実施例1のマスクブランクの製造)
実施例1で合格品と判定された94枚のマスクブランク用基板10を用いて、実施例1のハーフトーン型位相シフトマスク用のマスクブランク30を製造した。
上記マスクブランク用基板10の一方の主表面2aの上に、まず窒化されたモリブデンおよびケイ素からなる光半透過膜を成膜した。具体的には、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)との混合ターゲット(Mo:Si=10mol%:90mol%)を用い、アルゴン(Ar)と窒素(N2)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:N2:He=5:49:46)で、ガス圧0.3Pa、DC電源の電力を3.0kWとして、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、モリブデン、ケイ素および窒素からなるMoSiN膜を69nmの膜厚で形成した。次いで、上記MoSiN膜が形成されたガラス基板に対して、加熱炉を用いて、大気中で加熱温度を450℃、加熱時間を1時間として、加熱処理を行った。なお、このMoSiN膜は、ArFエキシマレーザー露光光において、透過率は6.16%、位相差が184.4度となっていた。
上記光半透過膜の上に、以下の遮光膜を成膜した。具体的には、スパッタターゲットにクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO2)と窒素(N2)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.2Pa、ガス流量比 Ar:CO2:N2:He=20:35:10:30)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚30nmのCrOCN層を成膜した。続いて、アルゴン(Ar)と窒素(N2)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.1Pa、ガス流量比 Ar:N2=25:5)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚4nmのCrN層を成膜した。最後に、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO2)と窒素(N2)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.2Pa、ガス流量比 Ar:CO2:N2:He=20:35:5:30)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚14nmのCrOCN層を成膜し、合計膜厚48nmの3層積層構造のクロム系遮光膜を形成した。
この遮光膜は、上記光半透過膜との積層構造で光学濃度(OD)がArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0となるように調整されている。また、前記露光光の波長に対する遮光膜の表面反射率は20%であった。
以上のようにして得られた94枚の薄膜付き基板の一方の主表面2a(遮光膜の表面)の内側領域12および外周領域14の欠陥検査をした。
最初に、ガラス基板に対する欠陥検査の場合と同様に、94枚の薄膜付き基板に対し、レーザー干渉コンフォーカル光学系(明視野光学系)による60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、それぞれ欠陥検査を行った。その結果、この欠陥検査を行った94枚の薄膜付き基板の全てが内側領域12で100nm相当以上のサイズの欠陥は検出されなかった。しかし、4枚の薄膜付き基板から内側領域12で100nm相当未満のサイズの欠陥が6個以上検出された。この4枚の薄膜付き基板は、基準を満たせない不合格品として除外した。また、この欠陥検査で合格品とした90枚の薄膜付き基板において、この欠陥検査で検出された全ての欠陥のサイズと位置(座標)をその欠陥検査を行った薄膜付き基板と対応付けて記録した。
次に、ガラス基板に対する欠陥検査の場合と同様に、暗視野光学系(TDIカメラを適用。)の欠陥検査装置を用いて、上記の欠陥検査で合格した90枚の薄膜付き基板に対する欠陥検査を行った。ここでは、薄膜付き基板の外周領域14だけでなく、内側領域12も同時に欠陥検査を行い、さらに裏側の主表面2bと端面1に対しても欠陥検査を行った。すなわち、ここでの欠陥検査は、マスクブランク30の最終検査として行った。その結果、この欠陥検査を行った90枚のガラス基板のうち、2枚の薄膜付き基板から外周領域14に1μm相当以上のサイズの欠陥(異物)が検出され、1枚の薄膜付き基板から裏側の主表面に1μm相当以上のサイズの欠陥(キズ)が検出された。これらの3枚の薄膜付き基板は、基準を満たせない不合格品として除外した。以上の工程によって、87枚の薄膜付き基板が、ハーフトーン型位相シフトマスク用のマスクブランク30として合格品と判定された。
(実施例1のハーフトーン型位相シフトマスクの製造)
上記で合格品と判定された実施例1のハーフトーン型位相シフトマスク用のマスクブランクを用いて、次のようにして、実施例1のハーフトーン型位相シフトマスク(転写用マスク)40を製造した。
まず、上述のマスクブランク30の上に、レジスト膜として、電子線描画用化学増幅型ポジレジスト膜(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製 PRL009)を形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。上記レジスト膜を塗布後、所定の加熱乾燥処理を行った。レジスト膜の膜厚は150nmとした。
次に上述のマスクブランク30の上に形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターン描画を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターンを形成した。
次に、上記レジストパターンをマスクとして、遮光膜のエッチングを行った。ドライエッチングガスとして、Cl2とO2の混合ガスを用いた。続いて、光半透過膜(MoSiN膜)のエッチングを行って光半透過膜パターンを形成した。ドライエッチングガスとして、SF6とHeの混合ガスを用いた。
次に、残存するレジストパターンを剥離して、再び全面に上記と同じレジスト膜を形成し、マスクの外周部に遮光帯を形成するための描画を行い、描画後、レジスト膜を現像してレジストパターンを形成した。このレジストパターンをマスクとして、遮光帯領域以外の遮光膜をエッチングにより除去した。
次に、残存するレジストパターンを剥離して、位相シフトマスク40を得た。
実施例1のマスクブランク30を用いて、上述のようにして得られた実施例1の位相シフトマスク(転写用マスク)40は、45nmハーフピッチの微細パターンが良好なパターン精度で形成されていた。
(半導体装置の製造)
上述の実施例1の位相シフトマスク40を使用し、露光装置を使用して、半導体基板である被転写体上のレジスト膜にパターン転写を行い、その後、配線層をパターニングして、半導体装置を作製すると、微細でかつ高精度の転写パターンを有する半導体装置を作製することができる。