JP7202830B2 - 呈味剤の製造方法 - Google Patents

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NPMD NITE BP-02244
本発明は、呈味剤の製造方法に関する。
乳原料を用いた呈味剤の製造方法として、乳原料をリパーゼ処理することによりフレーバー組成物を得る方法が知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、リパーゼ処理のみ行うことにより得られる乳原料を用いた呈味剤は、リパーゼ処理による脂肪酸による不良臭が強いため、自然な乳風味を呈することが困難であった。
特許第5871759号明細書
本発明は、脂肪酸による不良臭が低減された呈味剤を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、乳脂肪分を5~85重量%及び無脂乳固形分を3~50重量%含む基質を、リパーゼを含む酵素により酵素処理することに加え、15~45℃の発酵において有機酸量(単位:mM)あたりのジアセチル量(単位:ppm)の比率が0.02以上であることを特徴とする乳酸菌を含む乳酸菌による発酵処理することで、製造される呈味剤の脂肪酸による不良臭を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は例えば、以下の[1]~[5]を提供する。
[1]乳脂肪分を5~85重量%及び無脂乳固形分を3~50重量%含む基質を、酵素により処理する酵素処理工程及び乳酸菌により発酵させる発酵処理工程を含む呈味剤の製造方法であって、
乳酸菌が、15~45℃の発酵において有機酸量(単位:mM)あたりのジアセチル量(単位:ppm)の比率が0.02以上であることを特徴とする乳酸菌を含み、
酵素がリパーゼを含む、方法。
[2]乳酸菌が、ラクトバチルス・パラカゼイを含む、上記[1]に記載の方法。
[3]酵素がリパーゼである、上記[1]又は[2]に記載の方法。
[4]呈味剤が乳食品添加用又は乳様食品添加用である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]発酵処理工程及び酵素処理工程後、中和する工程をさらに含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、脂肪酸による不良臭が低減された呈味剤を製造することができる。
実施例1で作製した呈味剤を添加した合成クリーム、呈味剤を添加しない合成クリーム及び生クリーム(TFC47)を希釈したクリームを用いて作製したチルドコーヒーの官能評価の結果を示すチャート図である。 実施例1で作製した呈味剤を添加した合成クリームを用いて作製したホワイトソース及び生クリーム(TFC47)を希釈したクリームを用いて作製したホワイトソースの官能評価の結果を示すチャート図である。 実施例1で作製した呈味剤を添加した合成クリームを用いて作製したホワイトソース及び市販の呈味剤(曽田香料デイリッチCH)を添加した合成クリームを用いて作製したホワイトソースの官能評価の結果を示すチャート図である。
本発明において呈味剤とは、乳風味を付与することを目的とする添加物を意味する。本発明は、乳脂肪分を5~85重量%、無脂乳固形分(SNF)を3~50重量%含む基質を用いれば、いかなる乳原料を用いてもよい。
本発明の基質は、乳脂肪分を5~85重量%含む。基質における乳脂肪分含有量の下限値は、基質の全量に対して6重量%、10重量%、又は15重量%であってよい。また、基質における乳脂肪分含有量の上限値は、基質の全量に対して80重量%、70重量%、65重量%、60重量%又は50重量%であってよい。乳脂肪分がクリーム由来である場合、上記範囲内であると、乳化の破壊が起こりにくいため好ましい。また、本発明の基質は、無脂乳固形分を3~50重量%含む。基質における無脂乳固形分含有量の下限値は、基質の全量に対して4重量%、5重量%、又は6重量%であってよい。また、基質における無脂乳固形分含有量の上限値は、基質の全量に対して55重量%、30重量%、又は15重量%であってよい。
基質は、例えば、バターなどの固体を含んでもよい。また、基質は、生乳(原乳)、全脂乳、脱脂乳、ホエイなどの乳成分を含む液体を含んでもよい。生乳とは、例えば、牛乳等の獣乳である。また、基質は、脱脂乳成分を含む。脱脂乳成分とは、いわゆる無脂乳固形分であり、脱脂乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳などに由来する成分を意味している。そして、脱脂乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳などを適宜混合して使用することにより、無脂乳固形分の濃度を自由に調整できることとなる。基質には、全脂乳、脱脂乳、ホエイ等の他に、その加工品(例えば、全脂粉乳、全脂濃縮乳、脱脂粉乳、脱脂濃縮乳、練乳、ホエイ粉、クリーム等)も含まれ得る。基質は、クリームを含むことが好ましく、クリーム、脱脂濃縮乳及び水を含むことがより好ましい。
本発明の基質は、例えば、水分を基質の全量に対して10~92重量%含んでよい。基質がクリームである場合の水分は、基質の全量に対して30~90重量%であることが好ましく、45~85重量%であることがより好ましい。水分が上記範囲内であると、酵素を溶解しやすいため、好ましい。
クリームには、生クリーム及び人工的に調製した合成クリームが含まれる。
生クリームとは、生乳、牛乳又は特別牛乳から乳脂肪分以外のほとんどの成分を除去したものをいう。これは、日本国における乳及び乳製品の成分規格等に関する省令ではクリームと定義され、一般にフレッシュクリームと呼ばれることもあるが、本発明においては、人工的に調製したクリーム(以下、「合成クリーム」ともいう)との対比のために生クリームと称する。
本発明における合成クリームとは、油脂、タンパク質、乳化剤、水等を主原料として調製される食用クリームを意味する。
合成クリームの原料として用いられる油脂としては、例えば牛脂、ラード、乳脂、魚油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の動物性油脂;パーム油、パーム核油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、米油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、これらの分別油、水素添加油及びエステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。油脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。すなわち、合成クリームの原料として用いられる油脂は、植物油脂及び乳脂肪の組み合わせでもよく、その全量が植物油脂であってもよい。基質に合成クリームを用いる場合には、油脂は乳脂肪分を含む。
合成クリームにおける油脂の含有量は、合成クリームの全重量に対して、10~60重量%であってよい。油脂の含有量の下限値は、合成クリームの全重量に対して、15、20、25、30、35又は40重量%であってよい。油脂の含有量の上限値は、合成クリームの全重量に対して、55、50、47又は46重量%であってよい。
合成クリームの原料として用いられるタンパク質としては、一般に食用の合成クリームの製造に用いられるタンパク質であれば、いずれのタンパク質でも使用することができる。例えば、大豆タンパク質粉末などの植物タンパク質、牛乳、脱脂乳、クリームパウダー、バターミルクパウダー、脱脂粉乳、全脂粉乳、れん乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、濃縮ホエイ、乳タンパク濃縮物、ホエイタンパク濃縮物、ホエイタンパク質生成物、生クリームなどの乳タンパク質が挙げられる。これらは単独で、または2種以上のタンパク質を任意の割合で組み合わせて用いることもできる。合成クリームにおけるタンパク質の含有量は、合成クリームの全重量に対して、1~10重量%であってよく、2~5重量%であってよい。
合成クリームの原料として用いられる乳化剤としては、一般に食用の合成クリームの製造に用いられる乳化剤であれば、いずれの乳化剤でも使用することができる。例えば、高級脂肪酸モノグリセリド、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、ペンタグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノラウレート、テトラグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンジステアレート、ジグリセリンモノオレート、デカグリセリンモノオレート、デカグリセリンエルカ酸エステルなど)、有機酸(酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸など)モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル(例えば、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステルなど)、(植物、卵黄、分別、乳など)レシチン、酵素分解レシチン(例えば、酵素分解大豆レシチン、リゾレシチンなど)、カゼインナトリウムなどを挙げることができる。これらの群より単独、または2種以上の乳化剤を任意の割合で組み合わせて用いることもできる。解乳化剤は、乳化剤のうち解乳化機能を有するものを指し、当業者は上述のような公知の乳化剤から適宜選択して用いることができる。
合成クリームは、上述の他にも、原料として、例えば糖類、安定剤・増粘剤、タンパク溶融塩、解乳化剤及びpH調整剤を含むこともできる。
合成クリームの原料として用いられる糖類としては、一般に食用の合成クリームの製造に用いられる糖類であれば、いずれの糖類でも使用することができる。例えば、乳糖、ショ糖、水飴、澱粉、α化澱粉、澱粉水解物、液糖、砂糖、ぶどう糖、コーンシロップ、マンノース、マルトース、マルトトリオース、オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、パラチノースオリゴ糖、異性化液糖、ショ糖結合水飴、酵素糖化水飴、還元乳糖、還元澱粉糖化物、還元糖ポリデキストロース、澱粉加水分解物、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、オリゴ糖アルコール、ラフィノース、ラクチュロース、ステビア、アスパルテーム、キシロース、化工澱粉、デキストリン、麦芽糖、果糖、三温糖、和三盆糖、黒糖、メープルシロップ、蜂蜜、異性化液糖、果糖ぶどう糖液糖、還元水飴(糖アルコール)、トレハロース、ステビオサイド、カンゾウ抽出物、及びアスパルテームが挙げられる。糖類として、糖分を多く含む食品(果実、サツマイモなど)等の糖質を用いてもよい。これらの群より単独、または2種以上の糖類を任意の割合で組み合わせて用いることもできる。
合成クリームの原料として用いられる安定剤・増粘剤としては、一般に食用の合成クリームの製造に用いられる安定剤・増粘剤であれば、いずれの安定剤・増粘剤でも使用することができる。例えば、カラギーナン、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ガッティガム、ペクチン、ラーチガム、ローカストビーンガム、グアーガム、サイリウムシードガム、キンスシードガム、寒天、アルギン酸、ファーレセレラン、キサンタンガム、馬鈴薯澱粉、葛澱粉、タピオカデンプン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、大豆タンパク、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、結晶セルロース、アルギン酸ソーダ、α化澱粉、澱粉リン酸エステルナトリウム等が挙げられる。
合成クリームの原料として用いられるタンパク溶融塩としては、一般に食用の合成クリームの製造に用いられるタンパク溶融塩であれば、いずれのタンパク溶融塩でも使用することができる。例えば、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ウルトラポリリン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム等の各種リン酸塩、クエン酸、酒石酸等の有機酸のアルカリ金属塩類、および炭酸塩等の無機塩類が挙げられる。
合成クリームの原料として用いられるpH調整剤としては、一般に食用の合成クリームの製造に用いられるpH調整剤であれば、いずれのpH調整剤でも使用することができる。例えば、クエン酸、乳酸、酒石酸、リン酸、フィチン酸、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスコルビン酸、炭酸及び酢酸が挙げられる。これらの群より単独、または2種以上のpH調整剤を任意の割合で組み合わせて用いることもできる。
本発明の製造方法により製造される呈味剤は、乳食品添加用又は乳様食品添加用であることが好ましく、クリーム添加用であることがより好ましい。呈味剤を添加する乳食品は乳又は乳加工品を原材料とする食品を意味し、乳様食品は上記乳又は乳加工品の一部または全部に代えて別の原材料を用いた食品を意味する。乳食品又は乳様食品としては、例えば、生クリーム、合成クリーム、牛乳、発酵乳、乳飲料、乳酸菌飲料、ホワイトソース、クリームソース及びアイスクリーム等が挙げられる。呈味剤を添加するクリームとしては、合成クリームが好ましく、油脂の全量が植物油脂である合成クリームであることがより好ましい。本発明の製造方法により製造される呈味剤を添加した合成クリームは、生クリームと同等の風味を呈すため、生クリームの代用として用いることが可能である。生クリームの代用として用いる例としては、例えばコーヒー、茶等の飲料への添加、ホワイトソース等のソースへの使用が挙げられる。
本発明の基質は、後述する殺菌方法により殺菌してもよい。酵素処理工程及び発酵処理工程の前に基質を殺菌する工程を行うことで、酵素処理工程及び発酵処理工程において用いる酵素及び菌以外の菌等の影響を防ぐことができる。
本発明は、上記基質を酵素により処理する酵素処理工程を含む。また、本発明の酵素は、リパーゼを含む。
リパーゼとしては、胃液に存在するトリアシルグリセロールリパーゼのみならず、ヒト又は哺乳動物の体液やその組織、昆虫、植物、微生物等から分離された各種のリパーゼが使用される。微生物由来のリパーゼとしては、例えば、リゾプス(Rhizopus)属、ムコール(Mucor)属、リゾムコール(Rhizomucor)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、ペネシリウム(Penicillium)属、サーモマイセス (Thermomyces)属及びカンジダ(Candida)属等由来のリパーゼが挙げられる。動物由来のリパーゼとしては、例えば、パンクレアチン等由来のリパーゼが挙げられる。本発明においては、カンジダ由来のリパーゼ及びペネシリウム由来のリパーゼを使用することが好ましく、カンジダ・ルゴーサ(Candida Rugosa)由来のリパーゼ及びペネシリウム・ロックフォルティ(Penicillium Roqueforti)由来のリパーゼを使用することが特に好ましい。カンジダ・ルゴーサ由来のリパーゼとしては、例えば、リパーゼAY「アマノ」30SD(天野エンザイム株式会社製)等が挙げられ、ペネシリウム・ロックフォルティ由来のリパーゼとしては、例えば、リパーゼR「アマノ」(天野エンザイム株式会社製)等が挙げられる。
本発明の酵素は、リパーゼ以外の酵素を含んでもよい。リパーゼ以外の酵素としては、例えば、プロテアーゼ(プロティナーゼ及びペプチダーゼ)が挙げられる。プロテアーゼとしては、例えば、ペプシン、パンクレアチン、トリプシン、キモトリプシン、レンネット、パパイン、キモパパイン、ブロメライン、フィシン、アクチニジン、コラゲナーゼ、サチライシン及びズブチリシン等が挙げられる。また、プロテアーゼとして、例えば、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ及びアルカリ性プロテアーゼが挙げられる。
本発明の酵素は、リパーゼであることが好ましい。酵素としてリパーゼのみを使用することで、リパーゼ以外の酵素による風味への影響を防ぐことができる。例えば、リパーゼの他にプロテアーゼを使用する場合には、チーズ様の風味が加えられる傾向にあるが、呈味剤をクリームへの添加用とする場合には、チーズ様の風味を抑え、乳風味(乳脂肪感及びミルク感等)を強調させる方が好ましいため、リパーゼのみを使用することが好ましい。
リパーゼ処理により、酪酸及びラウリン酸等の脂肪酸が増加すると、脂肪酸による不良臭が強くなる。酢酸は少量であると良臭であるが、多量になると不良臭の原因となる。カプロン酸、カプリル酸及びカプリン酸等の脂肪酸は増加しても不良臭の原因とはならない。
酵素処理の詳細な処理条件は、使用するリパーゼ及び基質の種類等により適宜設定することができるが、例えば、15~60℃で1~96時間であってよく、18~50℃で2~84時間であってよい。リパーゼ処理により付与される呈味剤の脂肪酸による不良臭を低減させるための条件としては、20~45℃で3~72時間が好ましい。
使用するリパーゼの添加量は、使用するリパーゼ及び基質の種類等により適宜設定することができるが、例えば、基質1,000g当たりに10~30,000Uであってよく、50~20,000Uであってよく、100~10,000Uであってよい。
本発明は、乳酸菌により発酵させる発酵処理工程を含む。また、乳酸菌は、15~45℃の発酵において有機酸量(単位:mM)あたりのジアセチル量(単位:ppm)の比率が0.02以上であることを特徴とする乳酸菌(以下、「ジアセチル産生能の高い乳酸菌」ともいう)を含む。乳酸菌は、15~20℃の発酵において有機酸量(単位:mM)あたりのジアセチル量(単位:ppm)の比率が0.2以上であることを特徴とする乳酸菌であることが好ましい。リパーゼを含む酵素による酵素処理に加え、ジアセチル産生能の高い乳酸菌を含む乳酸菌による発酵処理工程を行うことで、リパーゼ処理により付与される呈味剤の脂肪酸による不良臭が低減される。
15~45℃の発酵において有機酸量(単位:mM)あたりのジアセチル量(単位:ppm)の比率が0.02以上であることを特徴とする乳酸菌とは、乳酸菌により発酵させる発酵処理工程を通して、香気物質(ジアセチル及び/又はアセトイン)を十分に産生し、有機酸(乳酸及び酢酸など)をあまり産生しない性状を有する乳酸菌のことである。
有機酸(乳酸及び酢酸など)は、例えば、HPLCによる定量、及び酵素法による定量法など、公知の乳酸及び酢酸の定量法で定量することができる。香気物質(ジアセチル及び/又はアセトイン)のうち、ジアセチル量は、ガスクロマトグラフィーによる定量法など、公知のジアセチル定量法により定量することができる。
本発明の乳酸菌が有する15~45℃での発酵における有機酸量(単位:mM)あたりのジアセチル量(単位:ppm)の比率は、下記式に従って算出することができる。
有機酸量あたりのジアセチル量の比率=
ジアセチル量(単位:ppm)/有機酸量(単位:mM)
より具体的には、以下のように用意した乳酸菌における比率を測定することができる。乳酸菌を適切な培地にて15~45℃で培養し、培養物の乳酸量と酢酸量をHPLCにより定量し、有機酸量とする。また、培養物のジアセチル量をガスクロマトグラフィーにより定量し、香気物質量とする。これらの値に基づき、上記の式により15~45℃での発酵における有機酸量あたりのジアセチル量の比率を算出できる。
本発明においては、15~45℃での発酵における有機酸量あたりのジアセチル量の比率は、0.02以上である。前記比率が0.02以上であると、本発明において十分な香気物質(ジアセチル及び/又はアセトイン)を得ることができる。15~45℃での発酵における有機酸量あたりのジアセチル量の比率は、0.02~10であってよく、0.05~9であってよい。15~45℃での発酵における有機酸量あたりのジアセチル量の比率は、0.2~10であることが好ましく、0.25~9であることがより好ましく、0.3~8であることがさらに好ましく、0.35~7であることが特に好ましい。上記比率が上記範囲内であると、有機酸(乳酸及び酢酸など)に由来する酸味が程よい程度に強くなく、香気物質(ジアセチル及び/又はアセトイン)に由来する発酵風味が豊富な、風味の良い呈味剤が得られる観点から、有利である。
本発明の別の好ましい態様においては、15℃での発酵において有機酸量あたりのジアセチル量の比率は、好ましくは0.2~1、より好ましくは0.25~0.9、さらに好ましくは0.3~0.8、特に好ましくは0.35~0.7、さらに特に好ましくは0.4~0.6である。上記比率が上記範囲内であると、有機酸(乳酸及び酢酸など)に由来する酸味が程よい程度に強くなく、香気物質(ジアセチル及び/又はアセトイン)に由来する発酵風味が豊富な、風味の良い呈味剤が得られる観点から、有利である。
15~45℃での発酵において有機酸量(単位:mM)あたりのジアセチル量(単位:ppm)の比率が0.02以上であることを特徴とする乳酸菌は、上記比率を満たす乳酸菌であれば、その種類及び菌株には制限がない。ここでいう乳酸菌とは、乳酸菌と分類されたものに限らず、ビフィズス菌など乳製品の発酵に使用実績のある細菌も包含する。また、本発明で使用できる乳酸菌は、乳製品の発酵に応用できるものであれば、特に制限はなく、例えば、ラクチス菌、クレモリス菌、ジアセチルラクチス菌、ブルガリア菌、カゼイ菌、ガセリ菌、ヘルベチカス菌、ビフィズス菌、サーモフィラス菌、ロイコノストック菌、ペディオコッカス菌などである。
また、本発明の乳酸菌を、KEGGなどで蓄積されている遺伝子配列の情報に基づき、ジアセチルの産生に関与する酵素の遺伝子の有無をもって、予め候補となる乳酸菌を選定することもできる。このようにして予め選定された乳酸菌は以下の通りである。Lactococcus lactis subsp. lactis、Lactococcus Lactissubsp. cremoris、 Streptococcus thermophilus、 Lactobacillus brevis、 Lactobacillus(L.) buchneri、 L. fermentum、 L. reuteri、 L.sakei、 L. casei、 L. paracasei、 L. johnsonii、 L. plantarum, L. rhamnosus、 L. salivarius, L. gasseri、 Pediococcuspentosaceus、 Pediococcus claussenii, Pediococcus sp. 、 Oenococcus oeni、 Leuconostoc mesenteriodes、 Leuconostoc(Leu.) citreum、 Leu. kimchii、 Leu. gasicomitatum, Leu. carnosum、 Leu. gelidum、 Leuconostoc sp.。本発明の乳酸菌は、ラクトバチルス・パラカゼイを含むことが好ましく、寄託番号NITE BP-02244で寄託されている、ラクトバチルス・パラカゼイ乳酸菌(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)OLL204220株を含むことがさらに好ましい。
ここで、この乳酸菌の寄託に関する情報は、以下の通りである。
Lactobacillus paracasei subsp. paracasei OLL204220株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センターに寄託されている。該寄託を特定する内容を下記する。
(1)寄託機関名:独立行政法人産業技術総合研究所 特許微生物寄託センター
(2)連絡先:〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8
(3)受託番号:NITE BP-02244
(4)識別のための表示: Lactobacillus paracasei subsp. paracasei OLL204220
(5)原寄託日:平成28年(2016年)4月25日
上記のLactobacillus paracasei subsp. paracasei OLL204220は、生乳より分離された。その科学的性質は、以下の通りである。培地(Difco Lactobacilli MRS Agar, BD)上のコロニー性状は、円形、白色、Smooth型、円錐状である。菌形態は、桿菌であり、グラム染色は陽性である。乳酸発酵形式は、通性ヘテロ乳酸発酵であり、好気的発育は+である。
本発明の乳酸菌は、15~45℃での発酵において有機酸量(単位:mM)あたりのジアセチル量(単位:ppm)の比率が0.02以上であることを特徴とする乳酸菌以外の乳酸菌を含んでもよい。ここでいう乳酸菌とは、乳酸菌と分類されたものに限らず、ビフィズス菌など乳製品の発酵に使用実績のある細菌も包含する。また、本発明で使用できる乳酸菌は、乳製品の発酵に応用できるものであれば、特に制限はなく、例えば、ラクチス菌、クレモリス菌、ジアセチルラクチス菌、ブルガリア菌、カゼイ菌、ガセリ菌、ヘルベチカス菌、ビフィズス菌、サーモフィラス菌、ロイコノストック菌、ペディオコッカス菌などである。
発酵処理の詳細な処理条件は、使用する乳酸菌及び基質の種類等により適宜設定することができるが、例えば、15~45℃で6~96時間であってよく、20~40℃で12~72時間であってよい。
使用する乳酸菌の添加量は、使用する乳酸菌及び基質の種類等により適宜設定することができるが、例えば、基質1,000g当たりに1×10~1×1012(cfu)であってよく、1×10~1×1012(cfu)であってよく、1×10~1×1011(cfu)であってよい。より早く発酵香を産生させるため、1×10~1×1011(cfu)であることが好ましい。
本発明において、酵素処理工程と発酵処理工程は、酵素処理工程を行った後に発酵処理工程を行ってもよく、発酵処理工程を行った後に酵素処理工程を行ってもよく、酵素処理工程と発酵処理工程を同時に行ってもよい。処理工程にかかる時間を短縮できるという観点から、酵素処理工程と発酵処理工程を同時に行うことが好ましい。酵素処理工程と発酵処理工程を同時に行う場合、酵素処理工程と発酵処理工程が重複する時間が存在していればよい。つまり、酵素処理工程を開始した後に発酵処理工程を開始してもよく、発酵処理工程を開始した後に酵素処理工程を開始してもよく、酵素処理工程と発酵処理工程を同時に開始してもよい。酵素処理工程と発酵処理工程を同時に開始する場合には、酵素及び乳酸菌を同時に添加すればよく、酵素及び乳酸菌の混合物を添加してもよい。
酵素処理工程と発酵処理工程の詳細な処理条件は、使用する酵素、乳酸菌及び基質の種類等により適宜設定することができるが、発酵処理工程を開始した後に酵素処理工程を開始する場合、発酵処理工程を15~45℃で6~96時間行い、酵素処理工程を15~60℃で1~96時間行うことがより好ましく、発酵処理工程を18~22℃で18~24時間行い、酵素処理工程を35℃~42℃で3~24時間行うことがより好ましく、発酵処理工程を18~22℃で18~24時間行い、酵素処理工程を40℃~42℃で3~24時間行うことがさらに好ましい。酵素処理工程と発酵処理工程を同時に行う場合には、15~45℃で6~96時間行うことが好ましく、20℃~45℃で24~96時間行うことがより好ましい。
酵素により処理する酵素処理工程、又は酵素処理工程及び乳酸菌により発酵させる発酵処理工程の前に均質化処理を行うことが好ましい。すなわち、酵素処理工程を開始した後に発酵処理工程を開始する場合には、酵素処理工程の前に均質化処理を行い、発酵処理工程を開始した後に酵素処理工程を開始する場合には、発酵処理工程の前、又は発酵処理工程の後かつ酵素処理工程の前に均質化処理を行い、酵素処理工程と発酵処理工程を同時に行う場合には、酵素処理工程と発酵処理工程を行う前に均質化処理を行うことが好ましい。上記タイミングで均質化処理を行うことで、反応時間(酵素処理工程及び発酵処理工程の合計時間)を短縮することができる。
均質化処理方法は、特に限定されないが、ホモゲナイザー、ホモミキサー及びエクストルーダー等の公知の装置等を用いて行うことができる。均質化処理の圧力は、例えば、0.5~3.0MPaであってもよく、1.5~2.0MPaであってもよい。
均質化処理を行った後に酵素処理工程と発酵処理工程を同時に行う場合、酵素処理工程及び発酵処理工程の処理条件は、例えば、15~45℃で6~48時間であってもよく、20~40℃で8~36時間であってもよく、20~35℃で10~24時間であってもよい。
本発明は、発酵処理を停止するため及び/又は酵素を失活させるための殺菌工程を含んでもよい。本発明の殺菌工程には、一般細菌等を完全に死滅又は軽減させることのほか、滅菌工程なども含まれる。殺菌方法の例は、直接加熱殺菌(インジェクション式、インフュージョン式)、間接加熱殺菌(プレート式、チューブラー式、シェル&チューブ式、表面掻き取り式)、内部加熱殺菌(通電式、マイクロ波式、高周波式、遠赤外線式)、過熱水蒸気殺菌、レトルト殺菌、紫外線殺菌、高圧殺菌、電解磁場殺菌、放射線殺菌、及び化学的殺菌を含めて、公知の方法である。対象(基質又は呈味剤)を一定時間で一定温度に保持することで、対象に含まれる一般細菌などを殺菌する場合、超高温殺菌(UHT)を行っても、高温短時間殺菌法(HTST)を行ってもよい。通常、殺菌工程の後には、その殺菌された対象を冷却する。超高温殺菌(UHT)は、例えば、110℃以上150℃以下(好ましくは120℃以上140℃以下、より好ましくは120℃以上130℃以下)で、1秒以上30秒以内(好ましくは1秒以上10秒以下、より好ましくは1秒以上5秒以下)に殺菌する処理である。高温短時間殺菌法(HTST)は、例えば、60℃以上100℃以下(好ましくは70℃以上100℃以下、より好ましくは72℃以上75℃以下)で、5秒以上5分以下(好ましくは5秒以上1分以下、より好ましくは10秒以上30秒以下)に殺菌するものである。なお、前記の殺菌法と同等以上の、所定の衛生度が保たれ、本発明の呈味剤の衛生度が保持される限りにおいて、殺菌温度及び/又は殺菌時間を適宜に調整できる。
本発明は、酵素処理工程及び発酵処理工程の後、さらに中和する工程を含んでもよい。中和する工程を行うことで、呈味剤の雑味が低減され、好ましい。呈味剤の雑味が低減される理由は、低級脂肪酸が減少するためであることが推測される。基質がクリームを含む場合、この工程により凝集が起こりにくくなり、好ましい。
中和の方法としては、例えば、中和剤を添加することでpHを中性(約7、例えば6.8~7.2)に調整する方法が挙げられる。中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
[実施例1]
呈味剤を以下の手順で製造した。
(1)生クリーム(株式会社明治製)484g(48.4重量%)、脱脂濃縮乳(株式会社明治製)100g(10重量%)及び水416mLを混合し、基質(乳脂肪分22.78重量%、無脂乳固形分5.54重量%)を調製した。
(2)調製した基質を、UHT殺菌機(岩井機械工業株式会社製)により、130℃で3秒間殺菌処理した。
(3)乳酸菌(ラクトバチルス・パラカゼイ乳酸菌 OLL204220株)5×109(cfu)及びリパーゼAY/R(リパーゼAY「アマノ」30SD及びリパーゼR「アマノ」の混合物、いずれも天野エンザイム株式会社製)3,210Uの混合物及び水を、殺菌処理した基質に添加し、乳脂肪分20.5重量%、無脂乳固形分5.5重量%としたミックスを25℃で65時間培養した。
(4)培養後、85℃に加温して殺菌処理した後、冷却し、15%水酸化ナトリウム水溶液を加えることによりpHが7付近になるように調整することで呈味剤を得た。
得られた呈味剤5%を添加した合成クリーム(油脂分35重量%、無脂乳固形分8.5重量%)を用いて官能評価試験をしたところ、リパーゼ処理のみ(乳酸菌による発酵工程なし)により製造した呈味剤と比較して、脂肪酸による不良臭が低減していることが確認された。
[実施例A]
(1)生クリーム(株式会社明治製)484g(48.4重量%)、脱脂濃縮乳(株式会社明治製)100g(10重量%)及び水416mLを混合し、基質(乳脂肪分22.78重量%、無脂乳固形分5.54重量%)を調製した。
(2)調製した基質を、UHT殺菌機(岩井機械工業株式会社製)により、130℃で3秒間殺菌処理した後、ホモゲナイザー(三和機械株式会社製)により均質化処理(均質化圧力1.6MPa)した。
(3)乳酸菌(ラクトバチルス・パラカゼイ乳酸菌 OLL204220株)5×10(cfu)及びリパーゼAY/R(リパーゼAY「アマノ」30SD及びリパーゼR「アマノ」の混合物、いずれも天野エンザイム株式会社製)3,210Uの混合物及び水を、殺菌処理した基質に添加し、乳脂肪分20.5重量%、無脂乳固形分5.5重量%としたミックスを25℃で24時間培養した。
(4)培養後、85℃に加温して殺菌処理した後、冷却することで呈味剤を得た。
[実施例B]
(1)生クリーム(株式会社明治製)484g(48.4重量%)、脱脂濃縮乳(株式会社明治製)100g(10重量%)及び水416mLを混合し、基質(乳脂肪分22.78重量%、無脂乳固形分5.54重量%)を調製した。
(2)調製した基質を、直接加熱殺菌機(テトラパック社製)により、130℃で4秒間殺菌処理した。
(3)乳酸菌(ラクトバチルス・パラカゼイ乳酸菌 OLL204220株)5×10(cfu)及びリパーゼAY/R(リパーゼAY「アマノ」30SD及びリパーゼR「アマノ」の混合物、いずれも天野エンザイム株式会社製)3,210Uの混合物及び水を、殺菌処理した基質に添加し、乳脂肪分20.5重量%、無脂乳固形分5.5重量%としたミックスを25℃で24時間培養した。
(4)培養後、85℃に加温して殺菌処理した後、冷却することで呈味剤を得た。
[実施例C]
(1)生クリーム(株式会社明治製)484g(48.4重量%)、脱脂濃縮乳(株式会社明治製)100g(10重量%)及び水416mLを混合し、基質(乳脂肪分22.78重量%、無脂乳固形分5.54重量%)を調製した。
(2)調製した基質を、バッチ殺菌により、90℃で15分間殺菌処理した後、ホモゲナイザー(三和機械株式会社製)により均質化処理(均質化圧力1.6MPa)した。
(3)乳酸菌(ラクトバチルス・パラカゼイ乳酸菌 OLL204220株)5×10(cfu)及びリパーゼAY/R(リパーゼAY「アマノ」30SD及びリパーゼR「アマノ」の混合物、いずれも天野エンザイム株式会社製)3,210Uの混合物及び水を、殺菌処理した基質に添加し、乳脂肪分20.5重量%、無脂乳固形分5.5重量%としたミックスを25℃で24時間培養した。
(4)培養後、85℃に加温して殺菌処理した後、冷却することで呈味剤を得た。
[実施例D]
(1)生クリーム(株式会社明治製)484g(48.4重量%)、脱脂濃縮乳(株式会社明治製)100g(10重量%)及び水416mLを混合し、基質(乳脂肪分22.78重量%、無脂乳固形分5.54重量%)を調製した。
(2)調製した基質を、ホモゲナイザー(三和機械株式会社製)により均質化処理(均質化圧力1.6MPa)した後、バッチ殺菌により、90℃で15分間殺菌処理した。
(3)乳酸菌(ラクトバチルス・パラカゼイ乳酸菌 OLL204220株)5×10(cfu)及びリパーゼAY/R(リパーゼAY「アマノ」30SD及びリパーゼR「アマノ」の混合物、いずれも天野エンザイム株式会社製)3,210Uの混合物及び水を、殺菌処理した基質に添加し、乳脂肪分20.5重量%、無脂乳固形分5.5重量%としたミックスを25℃で24時間培養した。
(4)培養後、85℃に加温して殺菌処理した後、冷却することで呈味剤を得た。
実施例A~Dの結果から、酵素により処理する酵素処理の前に均質化処理を行うことで、反応時間(酵素処理及び発酵処理の時間)を短縮できることが示された。
[実施例2]
実施例1と同様の手順で、様々な種類のリパーゼを用いて呈味剤を作製し、得られた呈味剤5%を添加した合成クリーム(油脂分35重量%、無脂乳固形分8.5重量%)を用いて官能試験により評価した。呈味剤の作製条件及び官能試験の結果を表1及び表2に示す。酵素の「R」はリパーゼR「アマノ」、「AY」はリパーゼAY「アマノ」30SDを示し、AY+RはリパーゼAY「アマノ」30SDとリパーゼR「アマノ」の併用を示す。乳酸菌は、ラクトバチルス・パラカゼイ乳酸菌 OLL204220株を使用した。また、基質における乳脂肪分と無脂乳固形分の割合を表1に記載のものとするための配合を表3に示す。
官能評価は専門パネラー5名により、以下の5段階の基準に基づいて行われた。
1点:脂肪酸の不良臭が強い。乳様風味は感じられない。
2点:脂肪酸の不良臭が強い。乳様風味はやや感じられる。
3点:脂肪酸の不良臭が感じられる。乳様風味が感じられる。
4点:脂肪酸の不良臭がほとんど感じられない。良好な乳様風味が感じられる。
5点:脂肪酸の不良臭が感じられない。良好な乳様風味が感じられる。
Figure 0007202830000001

Figure 0007202830000002

Figure 0007202830000003
使用するリパーゼの種類に関わらず、乳酸菌を併用しない場合には、脂肪酸による不良臭が強く感じられる呈味剤となることが示された(表1)。一方、乳酸菌を併用した場合には、脂肪酸による不良臭が減少し、ジアセチルに由来する良好な乳様風味が感じられる呈味剤となることが示された(表2)。
[実施例3]
実施例1の製造方法により製造した呈味剤及び他社市販品の香気成分を分析した。呈味剤1gに、9gの超純水を加え、マルチビーズショッカー(安井器械株式会社製)により3,000rpmで30秒間均質化し、均質液を得た。均質液200μLを20mLのバイアルビンに採取して密栓した後、60℃で40分間加温した。加温中にヘッドスペースに揮発した成分を固相マイクロファイバー(SUPELCO StableFlex DVB/Carboxene/PDMS)に捕集し,GC/MS分析に供した(n=2)。
GC/MSの分析条件は,以下の通りであった。
カラム:Agilent DB-WAX(内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm
昇温:40度(5分)-15度/分-250度(10分)
モード:トータルイオンクロマトグラム(TIC)測定
分析結果を表4に示す。
Figure 0007202830000004
実施例1の呈味剤は、他社の市販品A及びBと比較して酪酸の割合が顕著に低いことが確認された。実施例1の呈味剤は、不良臭の原因となる酪酸の割合が低いことにより、脂肪酸による不良臭が低減していることが示唆された。また、ジアセチルの割合は、他社の市販品A及びBと比較して顕著に高いことが確認された。実施例1においてジアセチル産生能の高い乳酸菌を使用しているため、ジアセチルの割合が高く、ジアセチルに由来する乳様風味が豊富であることが示唆された。
[実施例4]
実施例1で作製した呈味剤を3.5%添加した合成クリーム(油脂分35重量%、無脂乳固形分6重量%、乳化剤0.59重量%、クエン酸3Na 0.11重量%、油脂分はすべて植物油脂)、呈味剤を添加しない合成クリーム及び生クリーム(油脂分47重量%)を油脂分35重量%となるように水で希釈したクリームをそれぞれ用いて、チルドコーヒー(クリーム1.6重量%配合)を作製した。作製したチルドコーヒーに対し、パネラー70名による官能評価試験を行った。結果を図1に示す。なお、図中、「MTC」は実施例1の呈味剤を含む合成クリーム、「LV」は実施例1の呈味剤を含まない合成クリーム、「FC」は生クリームを希釈したクリームを示す。
実施例1の呈味剤を含む合成クリーム(MTC)は、いずれの評価項目についても対照品(LV及びFC)と同等以上であり、特に「ミルク感」・「後味に残るミルク感」・「総合評価」に関する評価が高い傾向にあることが確認された(図1)。実施例1の呈味剤は合成クリームにミルク感を付与することが可能であり、実施例1の呈味剤を含む合成クリームは、生クリームと代用として使用できることが示唆された。
[実施例5]
実施例1の呈味剤を3.5%添加した合成クリーム(油脂分35重量%、無脂乳固形分4重量%、乳化剤0.55重量%、クエン酸3Na 0.11重量%、油脂分はすべて植物油脂)を用いて、ホワイトソース(クリーム7.5重量%、牛乳80重量%、ホワイトソースの素 12.5重量%)を作製した。実施例1の呈味剤を3.5%添加した合成クリームを、生クリーム(油脂分47重量%)を油脂分35重量%となるように水で希釈したクリームに変更した以外は上記と同様にホワイトソースを作製した。作製したホワイトソースを-25℃の冷凍室で60分以上静置することにより冷凍した後、電子レンジにより500W5分で解凍した。
解凍したホワイトソースに対し、15名のパネラーによる官能評価試験を行った。結果を図2に示す。なお、図中、「MTC3.5%」は実施例1の呈味剤を含む合成クリームを使用したホワイトソース、「対象品」は生クリームを希釈したクリームを使用したホワイトソースを示す。
実施例1の呈味剤を含む合成クリーム(MTC3.5%)を使用したホワイトソースは、油脂分含有量が同じ生クリームと比較して、コクが強く、乳感や旨味も強いことが確認された(図2)。実施例1の呈味剤を合成クリームに添加することで、生クリームと同等以上のコク、乳感及び旨味が付与できることが示唆された。
[実施例6]
実施例1の呈味剤を3.5%添加した合成クリーム(油脂分35重量%、無脂乳固形分6重量%、乳化剤0.59重量%、クエン酸3Na 0.11重量%、油脂分はすべて植物油脂)を用いて、ホワイトソース(クリーム10.1重量%、牛乳30重量%、上白糖1.2重量%、加工でんぷん3重量%、バタールウ10重量%、グルタミンソーダ0.27重量%、食塩0.75重量%、ホワイトペッパー0.028重量%、水44.68重量%)を作製した。実施例1の呈味剤に代えて市販の呈味剤(曽田香料デイリッチCH、曽田香料株式会社製)を合成クリームに対して0.88%添加した以外は上記と同様にホワイトソースを作製した。作製したホワイトソースを急速冷凍機により-25℃60分で急速冷凍した後、電子レンジにより500W2分で解凍した。解凍したホワイトソースに対し、15名の専門パネラーによる官能評価試験を行った。結果を図3に示す。なお、図中、「MTC3.5%」は実施例1の呈味剤を含む合成クリームを使用したホワイトソース、「対象品」は市販の呈味剤を含む合成クリームを使用したホワイトソースを示す。
実施例1の呈味剤を含む合成クリーム(MTC3.5%)を使用したホワイトソースは、市販の呈味剤を含む合成クリームを使用したホワイトソースと比較して、フレッシュ感が特に強く、乳感も強いことが確認された(図3)。
[実施例7]
呈味剤を以下の手順で製造した。
(1)生クリーム(株式会社明治製)484g(48.4重量%)、脱脂濃縮乳(株式会社明治製)100g(10重量%)及び水416mLを混合し、基質(乳脂肪分22.78重量%、無脂乳固形分5.54重量%)を調製した。
(2)調製した基質を、UHT殺菌機(岩井機械工業株式会社製)により、130℃で3秒間殺菌処理した。
(3)乳酸菌(ラクトバチルス・パラカゼイ乳酸菌 OLL204220株)5×10(cfu)を殺菌処理した基質に添加し、20℃で22時間培養した。
(4)その後、リパーゼAY/R(リパーゼAY「アマノ」30SD及びリパーゼR「アマノ」の混合物、いずれも天野エンザイム株式会社製)4,000Uおよび水を添加し、乳脂肪分20.5重量%、無脂乳固形分5.5重量%としたミックスを36℃で22時間培養した。
(5)培養後、85℃に加温して殺菌処理した後、冷却し、15%水酸化ナトリウム水溶液を加えることによりpHが7付近になるように調整することで呈味剤を得た。
また、リパーゼAY/Rを添加した後の培養温度を36℃から41℃に変更した以外は上記と同様に呈味剤を得た。
各呈味剤5%を添加した合成クリーム(油脂分35重量%、無脂乳固形分8.5重量%)を用いて官能評価を行った。リパーゼを添加した後の培養温度を36℃として作製した呈味剤と、41℃として作製した呈味剤の風味を比較すると、いずれも良好な風味であったが、41℃の培養温度で作製した呈味剤の方がより優れた風味であった。

Claims (7)

  1. 乳脂肪分を5~85重量%及び無脂乳固形分を3~50重量%含む基質を、酵素により処理する酵素処理工程及び乳酸菌により発酵させる発酵処理工程を含む呈味剤の製造方法であって、
    乳酸菌が、15~45℃の発酵において有機酸量(単位:mM)あたりのジアセチル量(単位:ppm)の比率が0.02以上であることを特徴とする乳酸菌を含み、
    酵素がリパーゼのみである、方法。
  2. 乳酸菌が、ラクトバチルス・パラカゼイを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記リパーゼが、カンジダ・ルゴーサ由来のリパーゼ又はペネシリウム・ロックフォルティ由来のリパーゼである、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記リパーゼが、カンジダ・ルゴーサ由来のリパーゼ及びペネシリウム・ロックフォルティ由来のリパーゼである、請求項1又は2に記載の方法。
  5. 前記呈味剤における香気成分の総含有量に対する酪酸の含有量の割合が16質量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 呈味剤が乳食品添加用又は乳様食品添加用である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
  7. 発酵処理工程及び酵素処理工程後、中和する工程をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
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