以下、本開示による車両制御方法及び車両制御装置を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
まず、実施の形態1の車両制御方法及び車両制御装置について説明する。
実施の形態1における車両制御方法及び車両制御装置は、自動運転モードを選択すると、地図上に生成した目標走行経路に沿って走行するように車両の駆動や制動や舵角を自動制御する自動運転車両に適用したものである。
図1は実施の形態1の車両制御方法を実行する車両制御装置としての自動運転制御システムAを示しており、以下、図1に基づいて全体システムについて説明する。
自動運転制御システムAは、車載センサ1と、地図データ記憶部2と、自動運転制御ユニット4と、アクチュエータ5と、表示デバイス6と、入力デバイス7と、を備える。
車載センサ1は、カメラ11と、レーダー12と、GPS13と、車載データ通信器14と、を有する。また、車載センサ1により取得したセンサ情報は、自動運転制御ユニット4へ出力される。
車載センサ1は、上述のカメラ11、レーダー12等以外にも自車WVの車両状態に関するセンサ情報を出力するセンサを含む。なお、自車WVは自動運転制御システムAを搭載した車両であり、制御対象の車両を指す。また、車両状態としては、走行速度、加速度、舵角などの車両自体の運動状態の他、ステアリング操作、アクセル操作、ブレーキ操作等の操作状態を含む。
カメラ11は、自動運転で求められる機能として、車線や先行車や歩行者等の自車WVの周囲情報を画像データにより取得する機能を実現する周囲認識センサである。このカメラ11は、自車WVの水平方向の全周囲を撮影可能に、自車WVの前方認識カメラ、後方認識カメラ、右方認識カメラ、左方認識カメラ等を組み合わせることにより構成される。
カメラ11の画像から、自車WVの走行路上の物体・車線・自車WVの走行路外物体(道路構造物、先行車、後続車、対向車、周囲車両、歩行者、自転車、二輪車)・自車走行路(道路白線、道路境界、停止線、横断歩道・道路標識(制限速度))等を検知できる。
レーダー12は、自動運転で求められる機能として、自車周囲の物体の存在を検知する機能と、自車周囲の物体までの距離を検知する機能とを実現する測距センサである。ここで、「レーダー12」とは、電波を用いたレーダーと、光を用いたライダーと、超音波を用いたソナーと、を含む総称をいう。レーダー12としては、例えば、レーザーレーダー、ミリ波レーダー、超音波レーダー、レーザーレンジファインダー等を用いることができる。このレーダー12は、例えば、自車WVの前方レーダー、後方レーダー、右方レーダー、左方レーダー等を組み合わせることにより構成される。
レーダー12も、自車WVの水平方向の全周囲の物体を検出可能である。すなわち、レーダー12により、自車WVの走行路上物体・自車WVの走行路外物体(道路構造物、先行車、後続車、対向車、周囲車両、歩行者、自転車、二輪車)等の位置が検知されると共に、各物体までの距離が検知される。なお、視野角が不足すれば、適宜追加しても良い。以上のように、カメラ11及びレーダー12は、自車WVの周囲に存在する他車TVを検出する検出装置として機能する。
GPS13は、GNSSアンテナ13aを有し、衛星通信を利用することで停車中及び走行中の自車位置(緯度・経度)を検知する自車位置センサである。なお、「GNSS」は「Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム」の略称であり、「GPS」は「Global Positioning System:グローバル・ポジショニング・システム」の略称である。
車載データ通信器14は、外部データ通信器10との間で送受信アンテナ3a,14aを介して無線通信を行うことで、自車WVで取得することができない情報を外部から取得する外部データセンサである。
外部データ通信器10は、例えば、自車WVの周囲を走行する他車TVに搭載されたデータ通信器の場合、自車WVと他車TVとの間で車車間通信を行う。この車車間通信により、他車TVが保有する様々な情報のうち、自車WV(図6等参照)で必要な情報を車載データ通信器14からのリクエストにより取得することができる。
外部データ通信器10は、例えば、インフラに設けられたデータ通信器の場合、自車WVとインフラの間でインフラ通信を行う。このインフラ通信により、インフラが保有する様々な情報のうち、自車WVで必要な情報を車載データ通信器14からのリクエストにより取得することができる。例えば、地図データ記憶部2に保存されている地図データでは不足する情報や地図データから変更された情報がある場合、不足情報や変更情報を補うことができる。また、自車WVが走行を予定している目標走行経路上での渋滞情報や走行規制情報等の交通情報を取得することもできる。
地図データ記憶部2は、緯度経度と地図情報が対応付けられた、いわゆる電子地図データが格納された車載メモリにより構成される。地図データ記憶部2に格納された地図データは、少なくとも複数車線を有する道路で各車線の認識ができるレベルの精度を持つ、高精度地図データである。この高精度地図データを用いることにより、自動運転において複数車線の中で自車WVがどの車線を走るかという線状の目標走行経路を生成することができる。そして、GPS13にて検知される自車位置を自車位置情報として認識すると、自車位置を中心とする高精度地図データが自動運転制御ユニット4へと送られる。
高精度地図データには、各地点に対応づけられた道路情報を有し、道路情報は、ノードと、ノード間を接続するリンクにより定義される。道路情報は、道路の位置及び領域により道路を特定する情報と、道路ごとの道路種別、道路ごとの車線幅、道路の形状情報とを含む。道路情報は、各道路リンクの識別情報ごとに、交差点の位置、交差点の進入方向、交差点の種別その他の交差点に関する情報を対応づけて記憶されている。道路情報は、各道路リンクの識別情報ごとに、道路種別、車線幅、道路形状、直進の可否、進行の優先関係、追い越しの可否(隣接レーン進入の可否)、制限速度、標識、その他の道路に関する情報を対応付けて記憶されている。
自動運転制御ユニット4は、車載センサ1や地図データ記憶部2からの入力情報を統合処理し、目標走行経路と目標車速プロファイル(加速プロファイルや減速プロファイルを含む。)等を生成する機能を有する。すなわち、現在地から目的地までの走行車線レベルによる目標走行経路を、地図データ記憶部2からの高精度地図データや所定の経路検索手法等に基づいて生成すると共に、目標走行経路に沿った目標車速プロファイル等を生成する。さらに、目標走行経路に沿う自車WVの停車中及び走行中、車載センサ1によるセンシング結果により自動運転を維持できないと判断されると、目標走行経路や目標車速プロファイル等を逐次修正する。
自動運転制御ユニット4は、目標走行経路が生成されると、自車WVが目標走行経路に沿って走行するように駆動指令値、制動指令値、舵角指令値を演算し、演算した指令値をアクチュエータ5に出力する。具体的には、駆動指令値の演算結果を駆動アクチュエータ51へ出力し、制動指令値の演算結果を制動アクチュエータ52へ出力し、舵角指令値の演算結果を舵角アクチュエータ53へ出力する。
アクチュエータ5は、自車WVを目標走行経路に沿って走行及び停止させる制御アクチュエータであり、駆動アクチュエータ51と、制動アクチュエータ52と、舵角アクチュエータ53と、を有する。
駆動アクチュエータ51は、自動運転制御ユニット4から駆動指令値を入力し、駆動輪へ出力する駆動力を制御するアクチュエータである。駆動アクチュエータ51としては、例えば、エンジン車の場合にエンジンを用い、ハイブリッド車の場合にエンジンとモータジェネレータ(力行)を用い、電気自動車の場合にモータジェネレータ(力行)を用いる。
制動アクチュエータ52は、自動運転制御ユニット4から制動指令値を入力し、駆動輪へ出力する制動力を制御するアクチュエータである。制動アクチュエータ52としては、例えば、油圧ブースタや電動ブースタやブレーキ液圧アクチュエータやブレーキモータアクチュエータやモータジェネレータ(回生)等を用いる。
舵角アクチュエータ53は、自動運転制御ユニット4から舵角指令値を入力し、操舵輪の転舵角を制御するアクチュエータである。なお、舵角アクチュエータ53としては、ステアリングシステムの操舵力伝達系に設けられる転舵モータ等を用いる。
表示デバイス6は、自動運転による停車中及び走行中に、自車WVが地図上で何処を移動しているか等を画面表示し、運転手や同乗者等の乗員に自車位置視覚情報を提供するデバイスである。この表示デバイス6は、自動運転制御ユニット4により生成された目標走行経路情報や自車位置情報や目的地情報等を入力し、表示画面に、地図と道路と目標走行経路(自車WVの走行経路)と自車位置と目的地等を視認しやすく表示する。
入力デバイス7は、運転手の操作により種々の入力を行うデバイスであり、例えば、表示デバイス6のタッチパネル機能を用いてもよいし、他のダイヤルやスイッチ等を用いてもよい。なお、運転手による入力としては、目的地に関する情報の入力や、自動運転時の定速走行、追従走行等の設定の入力等を行う。
次に、自動運転制御ユニット4に含まれる車線不定道路走行制御部40について説明する。
ここで、まず、車線不定道路走行制御部40により走行を制御する車線不定道路LURについて説明する。そして、このような車線不定道路LURの一例として、図3A等に料金所TGの出口から、それぞれ車線を有する第1道路RO1及び第2道路RO2に至る区間に設けられた車線不定道路LURを示す。なお、車線不定道路LURとは、複数の車線の幅を有しながら車線を区切る区画線が示されていない道路を言う。
この車線不定道路LURは、複数のゲートga1~ga6を有した料金所TGの出口を始端btとし、料金所TGの接続道路である第1道路RO1及び第2道路RO2を終端etとする。また、第1道路RO1及び第2道路RO2は、それぞれ、2車線の道路であり、かつ、異なる第1の目的地PD1及び第2の目的地PD2に繋がっている。なお、接続道路の数や、各接続道路の車線数は、これに限定されない。
このような、車線不定道路LURを走行する場合、自車WVの目標走行経路TR0に対し、他車TVが合流したり交差したりする場合がある。図3Aは、その一例を示しており、ゲートga6から第1道路RO1に向かって生成された自車WVの目標走行経路TR0に対し、第1の他車TV1と第3の他車TV3が交差し、第2の他車TV2が合流する例を示す。
なお、以下の説明において、1又は複数の他車TVにおいて特定のものを指さない場合は、単にTVと表記し、特定のものを指す場合には、図面の表記に一致するようにTVの符号の後ろに数字を表記して他のものと区別する。また、点線により示す目標走行経路TR1~TR3は、第1~第3の他車TV1~TV3の目標走行経路を示す。これらの第1~第3の他車TV1~TV3の目標走行経路TR1~TR3は、自動運転制御によるものとは限らず、単に手動運転による目的地への経路を含む。
以下に、車線不定道路LURの走行時の制御である車線不定道路走行制御の処理の流れを図2A、図2Bのフローチャートに基づいて説明する。この車線不定道路走行制御は、自動運転制御ユニット4が、車線不定道路LURを走行すると判定して制御を開始する。
この制御開始後の最初のステップS101では、自車WVの周囲の他車TVの位置と速度とを読み込む。すなわち、図3Aに示す例では、第1~第3の他車TV1~TV3の位置と速度とを読み込む。なお、これら位置と速度との検出は、カメラ11及びレーダー12により行い、自車WVとの相対位置と相対速度として検出する。そして、自車WVの位置と速度とに基づいて、他車TVの地図上の位置や速度を求めることができる。
図2Aに示す次のステップS102では、各他車TV1~TV3の位置を目標走行経路TR0の上に投影させて一次元化する。すなわち、車線不定道路LURに沿う方向で車線不定道路LURの始端btから終端etとの間に設定する1本の基準線として目標走行経路TR0を用いる。そして、各他車TV1~TV3の位置から基準線としての目標走行経路TR0に対して直角に投影する。この投影した他車TV1~TV3の目標走行経路TR0の上の投影位置p1、p2、p3からさらに速度に基づく値(例えば、所定時間内の移動距離)を加算した位置を、各他車TVの制御用位置p1a、p2a、p3aとする。また、自車WVについても、目標走行経路TR0上の位置から、速度分を加算した制御用位置opaを目標走行経路TR0上に設定する。
なお、各他車TVの投影は、図3Aに示すように、目標走行経路TR0に対して直交方向へ行う。また、図3Aでは、第1~第3の他車TV1~TV3の目標走行経路TR1~TR3を点線により図示しているが、本実施の形態1では、これらの目標走行経路TR1~TR3は、自車WVでは検出しないものとする。さらに、図3Aでは、一次元化を明示するために、目標走行経路TR0上の投影位置p1~p3、制御用位置p1a,p2a,p3aと自車位置op及び自車WVの制御用位置opaを、図において左右方向の直線L0の上に表記する。本実施の形態1では、他車TVを投影させる基準線として自車WVの目標走行経路TR0を用いるが、図示する直線L0等を用いてもよい。
図2Aに示す次のステップS103では、目標走行経路TR0の上において、自車WVの制御用位置opaの前方に、他車TVが存在するか否か判定する。なお、この判定には、他車TVの制御用位置p1a,p2a,p3aを用い、かつ、存在する場合は、これを前方制御対象他車FVとする。そして、前方制御対象他車FVが存在する場合(肯定)は、ステップS104に進み、前方制御対象他車FVが存在しない場合(否定)は、ステップS107に進む。
前方制御対象他車FVが存在する場合に進むステップS104では、前方制御対象他車FVのうちで最も自車WVに近いもの(以下、直近という)を最終的な前方制御対象他車FVとして設定する。すなわち、ステップS103において肯定判定して前方制御対象他車FVが複数存在する場合、基準線としての目標走行経路TR0の上で、自車WVに最も近いものを、制御対象の前方制御対象他車FVとする。また、ステップS103において肯定判定した場合に、前方制御対象他車FVが1台しか存在しない場合は、それを前方制御対象他車FVとする。このようにして特定した前方制御対象他車FVの基準線としての目標走行経路TR0の上の位置を制御用位置(図3Aでは制御用位置P1a)とする。
ステップS104に続くステップS105では、ステップS104で設定した前方制御対象他車FVを除外するか否かの判定を行う。具体的には、前方制御対象他車FVの目標走行経路TR0からの横方向距離Ldが、所定の横方向距離閾値Ldlim以上、かつ速度が所定の速度閾値Vlim以下であるか否か判定する。そして、前方制御対象他車FVの横方向距離Ldが所定の横方向距離閾値Ldlim以上、かつ速度が所定の速度閾値Vlim以下の場合(肯定)は、前方制御対象他車FVとして除外するためにステップS108に進む。なお、横方向距離Ldは、目標走行経路TR0に対して路面に沿う垂直方向の距離である。
つまり、車線不定道路走行制御は、車線不定道路LURにおいて他車TVとの接触を避けるための制御である。このため、目標走行経路TR0からの横方向距離Ldが横方向距離閾値Ldlim以上離れ、かつ、速度が速度閾値Vlim以下の他車TVは、接触の可能性が極めて低く追い越しても問題が無いとして、接触回避するための制御対象から除外する。
逆に言うと、制御対象となる前方制御対象他車FVは、目標走行経路TR0からの横方向距離Ldが横方向距離閾値Ldlim未満であり、かつ、速度が速度閾値Vlim以上で走行する他車TVである。
さらに、横方向距離閾値Ldlim及び速度閾値Vlimは、それぞれ、一定値を用いてもよいが、本実施の形態1では、それぞれ、複数段階に分けて設定している。すなわち、横方向距離Ldが相対的に近い場合は、速度に関わらず除外しないか、あるいは、速度閾値Vlimとして相対的に低い値を用いる。一方、横方向距離Ldが相対的に遠くなるほど、速度閾値Vlimとして想定的に高い値を用いる。
ここで、本実施の形態1では、横方向距離Ldとして、何車線分の距離であるかを用いる。具体的には、図5に示すように、横方向距離Ldがnamin未満(naminは、例えば1.5車線程度の値)と目標走行経路TR0に近い場合は、接触の可能性が高いため速度vaに関わらず除外しない。
次に、横方向距離Ld≧naminの場合、つまり、ある程度目標走行経路TR0から離れた場合、相対的に接触の可能性が低下するため、他車TVの速度vaに基づいて、除外するか否かを判定する。すなわち、速度va≦vamin(vaminは、例えば10km/h程度の値)の低速であれば除外し、va>vaminの場合は、除外しない。
横方向距離Ld≧nalim1が、目標走行経路TR0からさらに離れた場合(nalim1は、例えば、3車線程度の値)、接触の可能性がさらに低くなるため、除外の判定を行うための速度vaもさらに高く設定する。すなわち、速度va≦valim1(valimは、例えば、15km/h程度の値)であれば除外し、va>valim1の場合は除外しない。
そして、横方向距離Ld≧nalim2が、目標走行経路TR0から、かなり離れた場合(nalim2は、4.5車線程度の値)は、接触の可能性がさらに低くなるため、除外を判定する速度vaを、さらに高い値に設定する。すなわち、速度va≦valim2(例えば、valim2は、20km/h程度の値)であれば除外し、va>valim2の場合は除外しない。
図2Aに戻り、ステップS108では、ステップS104で選択した前方制御対象他車FVを除外した後、ステップS103に進み、ステップS103からの前方制御対象他車FVを選択するための処理を、再度実行する。
ステップS104にて選択した前方制御対象他車FVを除外しない場合に進むステップS106では、選択した前方制御対象他車FVの目標走行経路TR0の上の位置を、最終的な制御対象の前方制御対象他車FVの位置(前方制御対象位置)とする。例えば、図3Aに示す例では、第1の他車TV1の制御用位置P1aを、前方制御対象位置とする。
また、前方制御対象他車FVが存在しない場合に進むステップS107では、目標走行経路TR0の上で、車線不定道路LURの終端etから自車WVの制御用位置opaまでの間で、任意の位置を前方制御対象他車FVの位置、すなわち、前方制御対象位置とする。この場合、終端etを前方制御対象他車FVの位置としてもよいし、あるいは、目標走行経路TR0の上で、自車WVから前方に予め設定した距離だけ離れた位置を前方制御対象位置としてもよい。
図2Aに示す処理に続く図2Bに示すフローチャートのステップS109~S111では、検出した自車WVの周囲の他車TVの中から制御対象となる後方制御対象他車RVを特定する処理を行う。
ステップS109では、基準線としての目標走行経路TR0の上の自車WVの後方に、制御の対象となる他車TVである後方制御対象他車RVが存在するか否か判定する。すなわち、ステップS102において目標走行経路TR0の上の他車TVの制御用位置(p1~p3a等)が自車WVの制御用位置opan後方に存在する場合、後方制御対象他車RVが存在する(肯定)として、ステップS110に進む。また、後方制御対象他車RVが存在しない場合は、ステップS111に進む。
ステップS110では、目標走行経路TR0の上で、自車WVに最も近いものを、最終的な制御対象の後方制御対象他車RVとし、その後方制御対象他車RVの目標走行経路TR0の上の位置を制御用位置(図2ではp2a)とする。また、ステップS108において後方制御対象他車RVが存在しない場合に進むステップS111では、目標走行経路TR0の上で、車線不定道路LURの始端btから自車WVの制御用位置opaまでの間で、任意の位置を後方制御対象位置とする。この場合、始端btを後方制御対象位置としてもよいし、あるいは、目標走行経路TR0の上で、自車WVから後方に予め設定した距離だけ離れた位置を後方制御対象位置としてもよい。
ステップS112では、目標走行経路TR0の上において、前方制御対象位置(前方制御対象他車FVの制御用位置)と後方制御対象位置(後方制御対象他車RVの制御用位置)との間の任意の点を制御目標位置tpとする。ここで、本実施の形態1では、前方制御対象位置と後方制御対象位置との間の中央位置を制御目標位置tpとする。具体的には、図3Aに示す例では、第1の他車TV1の制御用位置P1aと、第2の他車TV2の制御用位置p2aとの中央位置を制御目標位置tpとする。
次のステップS113では、制御目標位置tpに基づいて自車WVを制御する。ここで、図3Aに示す例では、制御目標位置tpに向けて自車WVを前進させる。すなわち、自車WVを目標走行経路TR0に沿って走行させる自動走行制御を実行するにあたり、所定の制御サイクル後に、前方制御対象位置と後方制御対象位置との中央位置に自車WVを配置するように、走行速度(加減速)を制御する。
ステップS113の処理後に進むステップS114では、車線不定道路LURの終端etに到達したか否か判定する。そして、終端etに達した場合(肯定)は、車線不定道路走行制御を終了(正常終了)する。一方、終端etに到達していない場合は、ステップS115に進む。
ステップS115では、自車WVの停止状態が所定の停車時間閾値Tlimを超えて継続したか判定する。そして、停車時間閾値Tlimを超えて停車状態が継続した場合は、車線不定道路走行制御を中止する(異常終了)。この場合、何らかの警告を発し、運転者に手動運転の実行を促す。一方、自車WVの停止状態が停車時間閾値Tlimを超えない場合(否定)は、ステップS101に戻る。
次に、実施の形態1の作用を説明する。
図3A~図3Dは、自車WVがゲートga6を通過した後に第1道路RO1に向かって走行する場合の時間経過に伴う変化を示している。車線不定道路LURを走行する場合、車線不定道路走行制御部40は、予め、ゲートga6と第1道路RO1とを結ぶ目標走行経路TR0を生成し、自車WVが目標走行経路TR0に沿って走行するよう制御する。
さらに、車線不定道路走行制御部40は、周囲の他車TVの位置及び速度を読み込み(S101)、目標走行経路TR0の上に投影して一次元化し、さらに、速度分の値を加算する(S102)。この図3Aの例では、周囲の他車TVとして、第1~第3の他車TV1~TV3を検出し、それぞれ、目標走行経路TR0に投影させた位置が投影位置p1、p2、p3であり、それに各速度に応じた値を加算した位置が制御用位置p1a、p2a、p3aである。同時に、自車WVについても自車位置opに速度に応じた値を加算した位置を自車WVの制御用位置opaとする。
なお、図3Aに示す例では、自車WVと第1の他車TV1と第3の他車TV3とが、同程度の速度で走行し、第2の他車TV2は、自車WV及び両他車TV1、TV3よりも高い速度で走行している。また、第1の他車TV1と第3の他車TV3とは、第2道路RO2に向かって走行しており、自車WV及び第2の他車TV2は、第1道路RO1に向かって走行している。そして、本実施の形態1では、車線不定道路走行制御部40では、各他車TVの目標走行経路TR1、TR2、TR3は検出していないが、車車間通信等によりこれを取得することは可能である。
次に、車線不定道路走行制御部40は、目標走行経路TR0の上の各制御用位置p1a、p2a、p3aに基づき、前方の直近の第1の他車TV1の制御用位置p1aと、後方の直近の第2の他車TV2の制御用位置p2aの間の中央位置を制御目標位置tpとする。そして、自車WVを、制御目標位置tpに配置させるよう速度(駆動、制動)を制御する。この制御は、ステップS103、S104、S105、S106、S109、S110、S112、S113の処理を順に行ったことに基づく。このように、自車WVと他車TVとの位置を一次元化して自車WVの速度を制御するため、例えば、二次元平面上で操舵などと併せて制御する場合と比較して、制御の単純化を図ることができる。これにより、車線不定道路走行制御部40の計算能力容量や計算量を抑えることができる。
図3Bは、図3Aに示した状態から、所定時間後の状態を示している。この時点では、後方制御対象他車RVとしての第2の他車TV2の速度が高いことから、第2の他車TV2の制御用位置p2aが自車WVの制御用位置opaに近付く。このため、前方制御対象他車FVとしての第1の他車TV1の制御用位置p1aと、後方制御対象他車RVとしての第2の他車TV2の制御用位置p2aとの間の中央位置である制御目標位置tpが、図3Aの時点と比較して自車WVから前方に離れる。
したがって、車線不定道路走行制御部40は、自車WVに加速を指示する。これにより、第2の他車TV2に対して、その前方に自車WVが存在していることを示し、かつ、第2の他車TV2との車間を確保して、自車WVが第2の他車TVと接触するのを確実に回避することができる。
次に、図3Bの状況から自車WVの加速を行ったことにより、第2の他車TV2が自車WVの存在に気付いて減速を行った場合を図3Cに基づいて説明する。この図3Cの例では、第2の他車TV2が減速を行い、制御用位置p2aは、自車WVを追い越さずに自車WVの制御用位置opaの後方位置で制御用位置opaとの間隔が狭まる。このため、制御目標位置tpは、制御用位置p2aから遠ざかるように自車WVのさらに前方とし、車線不定道路走行制御部40は、自車WVをさらに加速させる。したがって、自車WVを第2の他車TV2の前方に確実に配置させ、両者の接触を確実に回避することができる。
次に、図3Bの状況で第2の他車TV2が速度を落とさなかった場合を、図3Dに基づいて説明する。この図3Dは、第2の他車TV2の速度が自車WVの速度よりも高く、第2の他車TV2が自車WVに接近して、第2の他車TV2の制御用位置p2aが、自車WVの制御用位置opaを追い越した例を示す。
この場合、第2の他車TV2が前方制御対象他車FVとなり、第3の他車TV3が後方制御対象他車RVとなる。したがって、制御目標位置tpが第2の他車TV2の制御用位置p2aと、第3の他車TV3の制御用位置p3aとの間の中央位置となる。このため、車線不定道路走行制御部40は、自車WVを減速させる制御を行い、第2の他車TV2に対して進路を譲る意図を示すとともに、両者の接触を確実に回避することができる。
次に、図3Aの状況では検出されずに制御対象ではなかった第4の他車TV4が、ある時点から検出されて制御対象となった場合について説明する。すなわち、図4Aでは検出されなかった点線により表記する第4の他車TV4が、図4Bに示す時点で検出されて制御対象車となった場合を説明する。
この第4の他車TV4は、料金所TGにおいて、ゲートga1あるいはゲートga2を通過した後、第2道路RO2に進むもので、第4の他車TV4の目標走行経路TR4は、自車WVの目標走行経路TR0と交差する。
そして、この第4の他車TV4は、図4Aに示す時点では、例えば、他車TVの陰になって検出されなかったり、目標走行経路TR0からの横方向距離Ldが横方向距離閾値Ldlimよりも遠く制御から除外されたりして、制御対象となっていない。
この図4Aに示す状況は、第4の他車TV4以外は、図3Bに示す状況と同一であり、車線不定道路走行制御部40は、第1の他車TV1を前方制御対象他車FVとし、第2の他車TV2を後方制御対象他車RVとする。したがって、車線不定道路走行制御部40は、第1の他車TV1と第2の他車TV2との間の位置を制御目標位置tpとして自車WVの走行制御を行う。
その後、第4の他車TV4を検出した図4Bに示す時点では、第4の他車TV4の制御用位置p4aが自車WVの制御用位置opaの前方の直近の位置となるため、第4の他車TV4を前方制御対象他車FVとして制御を行う。
したがって、車線不定道路走行制御部40は、目標走行経路TR0の上において第4の他車TV4の制御用位置p4aと第2の他車TV2の制御用位置p2aとの間の中央位置を制御目標位置tpとする。この制御目標位置tpは自車WVの制御用位置opaの後方位置となるため、車線不定道路走行制御部40は、自車WVを減速させ、第4の他車TV4に対して道を譲る意図を示すとともに、第4の他車TV4との接触を確実に回避することができる。
次に、車線不定道路LURの混雑時の制御を図4Cに基づいて説明する。
すなわち、図4Cは、車線不定道路LURにおいて混雑が生じ、他車TVが低速で走行している状態を示している。また、この時、車線不定道路走行制御部40は、第1~第7の他車TV1~TV7を検出しているものとする。なお、第1~第7の他車TV1~TV7以外の他車TVは、第1~第7の他車TV1~TV7の陰となって検出されていなものとする。
この図4Cに示す状況では、第1~第5の他車TV1~TV5が、S103において前方制御対象車有りと判定される対象となるが、一部は、横方向距離Ldと速度とに基づいて除外される。具体的には、第1の他車TV1及び第2の他車TV2は、目標走行経路TR0からの横方向距離Ld1がnamin以下と近いため、制御対象とする。第3の他車TV2は、横方向距離Ldが、naminよりも大きく、速度v3が速度閾値vamin以下であるため制御対象から除外する。第4の他車TV4は、横方向距離Ldがnaim1よりも離れており、速度v4が速度閾値vaminよりも低いため、制御対象から除外する。第5の他車TV5は、横方向距離Ldがnaim1よりも離れており、速度v5が速度閾値vaminよりも低いため、制御対象から除外する。
また、第6の他車TV6と第7の他車TV7は、その制御用位置p6a、p7aが自車WVの制御用位置opaよりも後方であるため、ステップS109の後方制御対象車ありとの判定に含まれる。
したがって、図4Cに示す例では、車線不定道路走行制御部40は、第1の他車TV1、第2の他車TV2、第6の他車TV6、第7の他車TV7を制御対象とする。そして、第2の他車TV2を前方の直近の前方制御対象他車FVとし、その制御用位置p2aを、前方制御対象位置とする。また、第6の他車TV6を後方の直近の後方制御対象他車RVとし、その制御用位置p6aを、後方制御対象位置とする。
よって、車線不定道路走行制御部40は、前方制御対象位置としての制御用位置p2aと後方制御対象位置としての制御用位置p6aとの間の中央位置を制御目標位置tpとして自車WVの走行を制御する。これにより、その後、点線aWVにより示す位置まで円滑に走行することができる。
このように、本実施の形態1では、横方向距離Ldが近い他車TVに対して適切な制御を行われなくなる不具合が生じることを抑制できる。
すなわち、第4の他車TV4や第5の他車TV5を前方制御対象他車FVとした場合、第4の他車TV4や第5の他車TV5と接触する可能性が低いにも関わらず、これらと車間を保つように、自車WVを低車速に制御することになる。この場合、後続の他車TV6、TV7等に対して、低速走行の意図が伝わらず、違和感を与えたり、車両の円滑な流れを阻害したりするおそれがある。
それに対し、実施の形態1では、第4の他車TV4や第5の他車TV5を前方制御対象他車FVから除外するため、上記のように、これらと車間を保つように、自車WVを低車速に制御することがなくなる。よって、後続の他車TV6、TV7等に違和感を与えたり、車両の円滑な流れを阻害したりすることがない。
次に、図4Cにおいて自車WVが点線aWVに示す位置の近傍まで走行した後に、渋滞が生じ停止した場合について、図4Dに基づいて説明する。
図4Dにおいて、前方制御対象他車FVとしての第1の他車TV1と、後方制御対象他車RVとしての第2の他車TV2とが停止した場合、制御目標位置tpも移動せず、車線不定道路走行制御部40は、自車WVを停止させる制御を行う。
そして、この停車状態が停車時間閾値Tlimを超えて継続した場合、制御を中止して運転者に手動運転を促した後、自動運転制御を中止する(ステップS115において肯定判定)。したがって、自車WVの運転手は、目標走行経路TR0から外れるなど臨機応変に運転して周囲の他車TVを避けるとともに他車TVと適切な車間を保ちながら、自車WVを走行させることができる。
以下に、実施の形態1の効果を列挙する。
(1)実施の形態1の車両制御方法は、
自車WVを地図上に生成した目標走行経路TR0に沿って走行させる自動運転制御を実行する自動運転制御ユニット4を用いた車両制御方法であって、
自車WVが、複数の車線の幅を有しながら車線を区切る区画線が示されていない車線不定道路LURを走行する時に、
自車WVの周囲の他車TVの位置を検出するカメラ11、レーダー12を含む車両検出装置から他車TVの位置を入力し、
入力した他車TVの位置(p1~p3等)を、車線不定道路LURに沿う方向で車線不定道路LURの始端btと終端etとの間に設定した1本の基準線(目標走行経路TR0)上に向けて投影した位置に基づいて他車TVの制御用位置(p1a~p3a等)を設定し、
基準線(目標走行経路TR0)の上で、自車WVの直前の他車TV(前方制御対象他車FV)の制御用位置と、自車WVの直後の他車TV(後方制御対象他車RV)の制御用位置との間に位置するように、目標走行経路TR0の上に制御目標位置tpを設定し、
制御目標位置tpに基づいて自車WVの走行を制御することを特徴とする。
したがって、他車TVとの交差や合流が生じる車線不定道路LURにおいて、単一の自車WVを目標走行経路TR0に沿って走行させる制御を継続しつつ、前方の他車TVと後方の他車TVとの車間を確保して円滑に走行することができる。このように、単一の自車WVの制御により実行できるため、道路側のインフラが不要となり、かつ、車両側のインフラからの指令を受信して制御するコントローラが不要となる。しかも、自車WVを目標走行経路TR0に沿って走行させ、転舵による他車TVの回避なども行わないため、自動運転制御ユニット4における計算能力容量や計算量を抑えることができる。そして、自車WVと、前方の他車TV及び後方の他車TVとの車間を確保できるため、これらとの接触は確実に回避できる。
(2)実施の形態1の車両制御方法は、
目標走行経路TR0を、基準線としたことを特徴とする。
したがって、予め地図上に生成して自車WVが走行する目標走行経路TR0を基準線とすることにより、別途、基準線を地図上に設定する場合と比較して、計算能力や計算量を抑えることができる。
(3)実施の形態1の車両制御方法は、
車両検出装置は、他車TVの位置に加え、他車TVの速度を検出し、他車TVの制御用位置(p1a~p3a等)は、基準線(目標走行経路TR0)の上に他車TVを投影した投影位置(p1~p3等)から速度に応じて移動させた位置とすることを特徴とする。
したがって、単に基準線の上に投影した他車TVの位置(投影位置p1~p3等)を制御用位置として制御する場合と比較して、所定時間が経過した後の位置に対応して自車WVの位置を制御できる。これにより、前後の他車TVとの車間をより確実に確保できるとともに、自車WVの急加速や急減速の発生を抑え、円滑な走行制御を行うことができる。加えて、他車TVの速度に応じて自車WVの速度を制御することにより、周囲の他車TVに対して、自車WVの位置や加速意図、減速意図などを示すことができ、車線不定道路LURにおける、より円滑な走行制御を実現できる。
(4)実施の形態1の車両制御方法は、
他車TVの目標走行経路TR0からの横方向距離Ldと速度vaとに基づいて、自車WVと他車TVとの接触の可能性を判定し、接触の可能性が低い他車TVは、自車WVの周囲の他車TVから除外することを特徴とする。
したがって、自車WVの周囲の複数の他車TVにおいて、接触の可能性が低い他車TVに対応して自車WVの位置を制御し、接触の可能性が高い他車TVに違和感を与えるような制御を実行することを抑制して、円滑な走行制御を行うことができる。
(5)実施の形態1の車両制御方法は、
自動運転制御ユニット4の車線不定道路走行制御部40には、目標走行経路TR0からの他車TVの横方向距離Ldに関連付けて、横方向距離Ldが近い程低い値とした速度閾値(追越許可速度)Vlimが設定されている。そして、横方向距離Ldが所定以上で、速度vaが速度閾値(追越許可速度)Vlim以下の他車TVを、接触の可能性が低い他車TVとして自車WVの周囲の他車TVから除外することを特徴とする。
したがって、横方向距離Ldと速度vaとにより、接触の可能性を判定することで、車線不定道路走行制御部40を含む自動運転制御ユニット4の計算能力や計算量を抑えることができる。また、横方向距離Ldが遠く接触の可能性が低い他車TVを制御対象とすることにより、自車WVに近い他車TVに対して違和感を与えたり、円滑な車両の流れを阻害したりする不具合を抑制できる。
(6)実施の形態1の車両制御方法は、
自車WVの停車状態が所定の停車時間閾値Tlimを超えて続いた場合は、自動運転制御を中止することを特徴とする。
車線不定道路LURにおいて自車WV及び他車TVが停止状態となった場合、停止状態を続けるか否か、あるいは、経路変更の必要性判断等の高度な判断が必要になる。そこで、このような場合は、自動運転制御を中止して、運転を運転手に譲り渡すことで、自動運転制御の実行を継続する場合と比較して、車線不定道路LURにおける臨機応変なスムーズな走行が可能となる。
(7)実施の形態1の車両制御方法は、
基準線(目標走行経路TR0)の上において自車WVの前方に他車TVが存在しない場合、目標走行経路TR0の上で、自車WVの位置と車線不定道路LURの終端etとの間の任意の点を自車WVの直前の他車TV(前方制御対象他車FV)の位置とする。
したがって、自車WVの前方に他車TVが存在しない場合でも、自車WVの後方の他車TVと接触しないように、円滑に自車WVの走行制御を行うことができる。
(8)実施の形態1の車両制御方法は、
基準線(目標走行経路TR0)の上において自車WVの後方に他車TVが存在しない場合、目標走行経路TR0の上で、自車WVの位置と車線不定道路LURの始端btとの間の任意の点を自車WVの直後の他車TV(後方制御対象他車RV)の位置とする。
したがって、自車WVの後方に他車TVが存在しない場合でも、自車WVの前方の他車TVと接触しないように、円滑に自車WVの走行制御を行うことができる。
(9)実施の形態1の車両制御装置は、
自車WVを地図上に生成した目標走行経路TR0に沿って走行させる自動運転制御を実行する自動運転制御ユニット4と、自車WVの周囲の他車TVの位置を検出するカメラ11、レーダー12を含む車両検出装置とを備えた車両制御装置であって、
自動運転制御ユニット4は、
自車WVが、複数の車線の幅を有しながら車線を区切る区画線が示されていない車線不定道路LURの走行時に、
車両検出装置から自車WVの周囲の他車TVの位置を入力するステップS101の処理と、
入力した他車TVの位置(p1~p3等)を、車線不定道路LURに沿う方向で車線不定道路LURの始端btと終端etとの間に設定した1本の基準線(目標走行経路TR0)上に向けて投影した位置に基づいて他車TVの制御用位置(p1a~p3a等)を設定するステップS102の処理と、
目標走行経路TR0の上で、自車WVの直前に制御用位置を有する他車TV(前方制御対象他車FV)と、自車WVの直後に制御用位置を有する他車TV(後方制御対象他車RV)と、の間に制御目標位置tpを設定するステップS112の処理と、
制御目標位置tpに基づいて自車WVの走行を制御するステップS113の処理と、
を実行することを特徴とする車両制御装置。
したがって、他車TVとの交差や合流が生じる車線不定道路LURにおいて、単一の自車WVを目標走行経路TR0に沿って走行させる制御を継続しつつ、前方の他車TVと後方の他車TVとの車間を確保して円滑に走行することができる。このように、単一の自車WVの制御により実行できるため、道路側のインフラが不要になり、かつ、車両側のインフラからの指令を受信して制御するコントローラが不要となる。しかも、自車WVを目標走行経路TR0に沿って走行させ、転舵による他車TVの回避なども行わないため、自動運転制御ユニット4における計算能力容量や計算量を抑えることができる。そして、自車WVと、前方の他車TV及び後方の他車TVとの車間を確保できるため、これらとの接触は確実に回避できる。
以下に、他の実施の形態の車両制御方法及び車両制御装置について説明する。なお、他の実施の形態の車両制御方法及び車両制御装置について説明するのにあたり、相互に共通する構成要素には共通する符号を付けて説明を省略する。
実施の形態2について説明する。
実施の形態2は、検出した周囲の他車TVのそれぞれについて、接触の可能性の高さを示すポテンシャル関数ptfを求め、このポテンシャル関数ptfに基づいて、自車WVの直前、直後の他車TVとの間の制御目標位置tpを決めるようにした例である。
このポテンシャル関数ptfは、下記の式1によりポテンシャル値pを求める関数である。
ここで、図6に示すように、lは、目標走行経路TR0において、車線不定道路LURの始端btからの距離、vは対象となる他車TVの速度、sは目標走行経路TR0からの横方向距離Ldの値である。
すなわち、ポテンシャル関数ptfは、基準線としての目標走行経路TR0の上における算出対象の車両(他車TV)の位置(制御用位置pna)の近傍に頂点を有する正規分布曲線状の山状を成す。そして、目標走行経路TR0に対する横方向距離Ldの値sが小さい程山が高く、かつ、速度vが高い程、山が高くなるとともに幅が広がる。つまり、目標走行経路TR0に対して横方向距離Ldが近い程、接触の可能性が高いためポテンシャル値pが高くなり、また、速度vが高い程、目標走行経路TR0に沿う方向での接触の可能性が高いためポテンシャル値pが高い値の範囲の幅が広くなる。
さらに、ポテンシャル値pには、車線不定道路LURの始端btで最も高く、終端etで最も低くなる傾きの初期値Pi0が付与されている。すなわち、後述するように、車線不定道路走行制御部40は、自車WVをポテンシャル値pが低い方向に導くもので、このような初期値pi0を与えることで、自車WVを車線不定道路LURの始端btから終端etに誘導することができる。
次に、図7のフローチャートに基づいて、実施の形態2における車線不定道路走行制御の処理の流れを説明する。
最初のステップS201では、自車WVの周囲の他車TVの位置と速度とを読み込む。そして、続くステップS202では、周囲の他車TVの位置と速度とに基づいてポテンシャル関数ptfをそれぞれ求める。例えば、実施の形態1で説明した図3Aと同様の状態において算出したポテンシャル関数ptfを図8Aに示す。
図示のように、第1の他車TV1のポテンシャル関数ptf1は、自車WVの前方のL1の位置で、最大値となる正規分布曲線状となる。また、第2の他車TV2のポテンシャル関数ptf2は、自車WVの後方のL2の位置で、最大値となる正規分布曲線状となる。なお、第2の他車TV2は、第1の他車TV1よりも速度が高いため、ポテンシャル関数ptf2は、ポテンシャル関数ptf1よりも高く幅広の山状となる。また、第3の他車TV3のポテンシャル関数ptf3は、自車WVの後方のL3の位置で、最大値となる正規分布曲線状となる。
次のステップS203では、各他車TVのポテンシャル関数ptf1、ptf2、ptf3と、初期値pi0とを合成した合成ポテンシャル関数Cptfを算出する。
次のステップS204では、合成ポテンシャル関数Cptfにおいて、自車WVの制御用位置opaから下り勾配を辿って最も低い値(極小値minV)の位置を制御目標位置tpとする。
したがって、図8Aに示す例の場合は、合成ポテンシャル関数Cptfの第1の山M1と第2の山M2との間の極小値minVの位置を制御目標位置tpとする。つまり、第1の山M1の頂点が第1の他車TV1の制御用位置に対応し、第2の山M2の頂点が第2の他車TV2の制御用位置に対応する。そして、両山M1、M2の間の極小値minV、すなわち、接触の可能性が最も低い位置に基づいて、目標走行経路TR0の上に制御目標位置tpを設定する。
そして、次のステップS205では、制御目標位置tpに基づいて自車WVを制御する。さらに、ステップS205の処理後に進むステップS206では、車線不定道路LURの終端etに到達したか否か判定する。そして、終端etに達した場合(肯定)は、車線不定道路走行制御を終了(正常終了)する。一方、終端etに到達していない場合は、ステップS207に進む。
ステップS207では、自車WVの停止状態が所定の停車時間閾値Tlimを超えて継続したか判定する。そして、停車時間閾値Tlimを超えて停車状態が継続した場合は、車線不定道路走行制御を中止する(異常終了)。この場合、何らかの警告を発し、運転者に手動運転の実行を促す。一方、自車WVの停止状態が停車時間閾値Tlimを超えない場合(否定)は、ステップS201に戻る。
次に、実施の形態3の作用を、図8Aに示す状態からの変化に基づいて説明する。
図8Bは、図8Aに示す状況から時間が経過して、第1の他車TV1が第2道路RO2に向けて走行して自車WVの目標走行経路TR0との交差を開始し、かつ、第2の他車TV2が自車WVの後方に近付いた状態を示す。
この場合、第1の他車TV1の目標走行経路TR0との横方向距離Ldが小さくなることから第1の他車TV1のポテンシャル関数ptf1の山の高さが図8Aに示す状態よりも高くなる。同時に、第2の他車TV2が自車WVに接近することで、第2の他車TV2のポテンシャル関数ptf2の山の位置が自車WVに接近する。
そこで、合成ポテンシャル関数Cptfにおいて第1の山M1と第2の山M2との間であって、第1の他車TV1の制御用位置p1aと第3の他車TV2の制御用位置p2aとの間の極小値minVの位置は、図8Aとは逆に第2の他車TV2に近い位置となる。したがって、自車WVに対して、第1の他車TV1との接触回避を優先させて速度を低下させる制御を行う。
図8Cは、図8Bに示す状況からさらに時間が経過し、第1の他車TV1が目標走行経路TR0との交差をほぼ終了し、かつ、第2の他車TV2は速度を低下させること無く走行し、自車WVを追い越す寸前で自車WVと並んだ状態を示している。
このとき、第1の他車TV1は、目標走行経路TR0と交差して横方向距離Ldが近くなることから第1の他車TV1のポテンシャル関数ptf1の山の高さは図8Bに示す状態と大差が無く、かつ、山の位置が終端etに近付く。同時に、第2の他車TV2が自車WVに並び、かつ、第2の他車TV2の速度が自車WVの速度よりも高いことから、第2の他車TV2の制御用位置p2aが自車WVの制御用位置opaを追い越す。これにより、ポテンシャル関数ptf2の山の頂点(制御用位置)が自車WVの位置を追い越す。また、第3の他車TV3は、自車WVと同様の速度で走行しているため、第3の他車TV3のポテンシャル関数ptf3の山は、高さ及び幅が変わらずに自車WVと共に車線不定道路LURの終端etに近付く。
このような場合、第2の他車TV2が前方制御対象他車FVとなり、第3の他車TV3が後方制御対象他車RVとなる。そこで、合成ポテンシャル関数Cptfでは、第1の山M1と第2の山M2との間であって、第2の他車TV2の制御用位置p2aと第3の他車TV3の制御用位置p3aとの間の極小値minVの位置Lminが、自車WVの後方の位置の制御目標位置tpとなる。よって、車線不定道路走行制御部40は、自車WVを減速させ、第2の他車TV2に対して進路を譲る制御を行う。
図8Dは、図8Bに示す状況からさらに時間が経過し、図8Cに示す状況と同様に第1の他車TV1が目標走行経路との交差をほぼ終了し、一方、第2の他車TV2は速度を低下させて自車WVに進路を譲ろうと減速しつつ自車WVと並んだ状態を示している。
このとき、第1の他車TV1は、目標走行経路TR0と交差して横方向距離Ldが小さくなることから第1の他車TV1のポテンシャル関数ptf1の山の高さは図8Bに示す状態と同様であり、かつ、山の位置が車線不定道路LURの終端etに近付く。一方、第2の他車TV2は、速度を低下したことから、その制御用位置p2aが自車WVの制御用位置opaよりも後方に位置する。したがって、第2の他車TV2のポテンシャル関数ptf2の山の高さが低くなるとともに、幅が狭くなる。なお、第3の他車TV3のポテンシャル関数ptf3は、図8Cに示した例と同様に、山の高さ及び幅が変わらずに自車WVと共に車線不定道路LURの終端etに近付く。
このような場合、第1の他車TV1が前方制御対象他車FVとなり、第2の他車TV2が後方制御対象他車RVとなる。そして、合成ポテンシャル関数Cptfでは、第1の山M1と第2の山M2との間であって、第1の他車TV1と第2の他車TV2との間の極小値minVの位置を制御目標位置tpとする。
よって、車線不定道路走行制御部40は、自車WVを、第1の他車TV1と第2の他車TV2との間で、第2の他車TV2から離れるように加速させつつ、第1の他車TV1との車間を確保するよう速度を制御する。
次に、図8Eに基づいて目標走行経路TR0からの横方向距離Ldが遠く離れた他車TVへの対応を説明する。
図8Eでは、第2の他車TV2の目標走行経路TR0からの横方向距離Ldが大きい場合を示している。なお、第1の他車TV1は、第2道路RO2に向かっており、自車WVの目標走行経路TR0と交差し、第3の他車TV3は、自車WVの後方に位置して第2道路RO2に向かっているものとする。
この場合、第2の他車TV2は、目標走行経路TR0からの横方向距離Ldが大きく、ポテンシャル関数ptf2の値は、極めて小さな値となるため、山を有さず、計算上無視をする。すなわち、ステップS202のポテンシャル関数ptfの算出において、予め設定した閾値以下のポテンシャル関数ptfの値は、無いものとして除外する。この場合、ポテンシャル関数ptf2の値が極めて小さな値となることから、制御上で傾斜として認識できるか否かにより、傾斜(山)として認識できない場合に、無視するようにしてもよい。
したがって、合成ポテンシャル関数Cptfでは、極小値minVの位置Lminは、第1の他車TV1のポテンシャル関数ptf1により生じる山M1と、第3の他車TV3のポテンシャル関数ptf3により生じる山M2との間の位置となる。よって、車線不定道路走行制御部40は、自車WVを、第1の他車TV1と第3の他車TV3との間の中央位置の近傍を制御目標位置tpとし、第1の他車TV1と第3の他車TV3との接触を避けるように速度を制御する。
以上説明した、実施の形態2の車両制御方法は、実施の形態1で説明した(1)~(4)、(6)、(9)の効果に加え、以下の効果を有する。
(2-1)実施の形態2の車両制御方法は、
周囲の他車TV毎に、横方向距離Ldと速度vに基づいて接触の可能性を示すポテンシャル関数ptfを算出し、
各他車TVのポテンシャル関数ptfを合成して合成ポテンシャル関数Cptfを算出し、
目標走行経路TR0において自車WVの直前の他車TVと自車WVの直後の他車TVとの間で、合成ポテンシャル関数Cptfが極小値minVの位置を制御目標位置tpとすることを特徴とする。
したがって、自車WVを、目標走行経路TR0において、直前の他車TVと直後の他車TVとに対して、最も接触の可能性が低い位置に走行するよう制御することができる。
(2-2)実施の形態2の車両制御方法は、
ポテンシャル関数ptfの値(ポテンシャル値p)が、所定以下の他車TVを、接触の可能性が低い他車TVとして、自車WVの周囲の前記他車から除外することを特徴とする。
したがって、自車WVの周囲の他車TVに対して、接触の可能性が低い他車TVに対応して自車WVの位置を制御することによる違和感を与えることを抑制して、円滑な走行制御を行うことができる。そして、このように接触の可能性が低い他車TVを除外するにあたり、ポテンシャル関数ptfに基づいて行うことにより、接触の可能性が低い他車TVを高精度で除外することができる。
以上、本開示の車両制御方法及び車両制御装置を実施の形態に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態に限られず、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
例えば、実施の形態では、車線不定道路LURとして、料金所TGの出口を例示したが、複数の車線分の幅を有し、車線を区画する線を有しない道路であれば、料金所TGの出口に限定されるものではない。また、実施の形態では、他車TVを投影させる基準線として自車WVの目標走行経路TR0を用いたが、図示する直線L0等の他の線を用いてもよい。この基準線は、要は、車線不定道路LURの進行方向に沿う方向を向いて、車線不定道路LURの始端と終端との間に設定されていればよく、直線LO等のように車線不定道路LURの外に位置していてもよい。加えて、車線不定道路LURの始端と終端との間であれば、例えば、始端の直後から終端の直前までというように、始端と終端との全域に亘っていなくてもよい。さらに、基準線への他車の位置の投影方向は、一定の方向であればよく、基準線に対して直角に限定されるものではない。
また、実施の形態では、他車TVの位置及び速度を検出して制御用位置(p1a等)を設定する例を示したが、これに限定されず、少なくとも他車TVの位置を検出してこれを目標走行経路TR0などの基準線の上に投影させて一次元化してもよい。この場合も、自車WVを目標走行経路TR0に沿って走行させつつ、直近の前方の他車TVと直近の後方の他車TVとの車間を確保するよう制御することができる。