JP7197255B2 - 透明両面粘着シート及び粘着シート積層体 - Google Patents
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Description
しかし、かかる紫外線感応性を有する粘着シートは、長期間紫外線に曝されると粘着シート自身の劣化が進行し、分解物を生じて発泡や剥離を生ずる可能性がある。
また、画像表示装置構成部材の中には、紫外線劣化しやすい部材があるため、このような場合には、上記のような方法で2つの画像表示装置構成部材を貼着することはできない。
さらに、画像表示装置構成部材が紫外線吸収性をもつ場合は、当該部材を介して紫外線を照射しても粘着シートまで紫外線が十分に到達しないため、このような場合においても、上記のような方法で2つの画像表示装置構成部材を貼着することはできない。
本発明の実施形態の一例にかかる透明両面粘着シートは、(メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)、波長405nmの吸光係数が10mL/(g・cm)以上である光重合開始剤(C)及び紫外線吸収剤(D)を含有する粘着剤樹脂組成物(「本粘着剤組成物」と称する)からなる透明両面粘着シート(「本粘着シート」と称する)である。
本粘着シートのベースポリマーとしての(メタ)アクリル系重合体は、これを重合するために用いられるアクリルモノマーやメタクリルモノマーの種類、組成比率、さらには重合条件等によって、ガラス転移温度(Tg)等の特性を適宜調整することが可能である。
上記共重合性モノマーDは、共重合体の全モノマー成分中に0質量%以上70質量%以下含有するのが好ましく、中でも3質量%以上或いは65質量%以下、その中でも特に5質量%以上或いは60質量%以下の範囲で含有するのがさらに好ましい。
本粘着シートの好ましいベースポリマーの一例として、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなる(メタ)アクリル系共重合体(A1)を挙げることができる。
よって、本粘着シートのベースポリマーとしてアクリル系共重合体(A1)を使用すれば、未架橋状態であっても、室温(20℃)において粘着性を示し、且つ、50~90℃、より好ましくは60℃以上或いは80℃以下の温度に加熱すると軟化乃至流動化する性質を備えることができる。
この際、幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度とは、アクリル系共重合体(A1)の幹成分を組成するモノマー成分のみを共重合して得られるポリマーのガラス転移温度を指す。具体的には、当該共重合体各成分のホモポリマーから得られるポリマーのガラス転移温度と構成比率から、Foxの計算式によって算出される値を意味する。
なお、Foxの計算式とは、以下の式により求められる計算値であり、ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook,J.Brandrup,Interscience,1989〕に記載されている値を用いて求めることができる。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
[式中、Wiはモノマーiの重量分率、TgiはモノマーiのホモポリマーのTg(℃)を示す。]
但し、当該共重合体成分のガラス転移温度が同じ温度であったとしても、分子量を調整することにより粘弾性を調整することができる。例えば共重合体成分の分子量を小さくすることにより、より柔軟化させることができる。
また、上記アクリルモノマーやメタクリルモノマーと共重合可能な、スチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルキルビニルモノマー等の各種ビニルモノマーも適宜用いることができる。
アクリル系共重合体(A1)の幹成分が、疎水性モノマーのみから構成されると、湿熱白化する傾向が認められるため、親水性モノマーも幹成分に導入して湿熱白化を防止するのが好ましい。
また、疎水性のビニルモノマーとしては酢酸ビニル、スチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、アルキルビニルモノマーなどを挙げることができる。
アクリル系共重合体(A1)は、グラフト共重合体の枝成分として、マクロモノマーを導入し、マクロモノマー由来の繰り返し単位を含有することが好ましい。
マクロモノマーとは、末端の重合性官能基と高分子量骨格成分とを有する高分子単量体である。
具体的には、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、本粘着シートの加熱溶融温度(ホットメルト温度)に影響するため、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は30℃~120℃であるのが好ましく、中でも40℃以上或いは110℃以下、その中でも50℃以上或いは100℃以下であるのがさらに好ましい。
このようなガラス転移温度(Tg)であれば、分子量を調整することにより、優れた加工性や保管安定性を保持できると共に、50℃から80℃付近でホットメルトするように調整することができる。
マクロモノマーのガラス転移温度とは、当該マクロモノマー自体のガラス転移温度をさし、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる。
かかる観点から、マクロモノマーは、アクリル系共重合体(A1)中に5質量%~30質量%の割合で含有することが好ましく、中でも6質量%以上或いは25質量%以下、その中でも8質量%以上或いは20質量%以下であるのが好ましい。
また、マクロモノマーの数平均分子量は500以上8000未満であることが好ましく、中でも800以上或いは7500未満、その中でも1000以上或いは7000未満であるのが好ましい。
マクロモノマーは、一般に製造されているもの(例えば、東亜合成社製マクロモノマーなど)を適宜使用することができる。
前記マクロモノマーの高分子量骨格成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート、p-クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N、N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルニトリル、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマーや、スチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、アルキルビニルモノマー、アルキルビニルエステル、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル等の各種ビニルモノマーが挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
架橋剤(B)としては、例えば(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基、ビニル基、アミノ基、イミノ基、アミド基から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基を有する架橋剤を挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、上記架橋性官能基は、脱保護可能な保護基で保護されていてもよい。
湿熱白化を防止する観点からは、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A1)、すなわちグラフト共重合体の幹成分として、疎水性のアクリレートモノマーと、親水性のアクリレートモノマーとを含有するのが好ましく、さらには、架橋剤(B)として、水酸基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステルを用いるのが好ましい。
また、密着性や耐湿熱性、耐熱性等の効果を調整するために、架橋剤(B)と反応する、単官能又は多官能の(メタ)アクリル酸エステルを、更に加えてもよい。
本粘着シートに用いられる光重合開始剤(C)は、架橋剤(B)の架橋反応における反応開始助剤としての機能を果たすものであり、可視光線、例えば380nm~700nmの波長領域の光線の照射によって、ラジカルを発生させてベース樹脂の重合反応の起点となるものが好ましい。但し、可視光線の照射のみによってラジカルを発生させるものであってもよいし、また、可視光領域以外の波長領域の光線の照射によってもラジカルを発生させるものであってもよい。
本発明における吸光係数は、光重合開始剤を濃度1g/Lのメタノール溶液としたときの、光路長1cmにおける吸光度に相当する。
これらは、これらのうちの何れか一種またはその誘導体を用いてもよいし、又、これらのうちの二種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、波長405nmの吸光係数が10mL/(g・cm)未満の光重合開始剤と併用してもよい。
これらのうちの開裂型光重合開始剤は、光照射によってラジカルを発生する際に分解して別の化合物となり、一度励起されると反応開始剤としての機能をもたなくなる。このため、可視光線域に吸収波長をもつ光重合開始剤(C)として該分子内開裂型を用いると、水素引抜型を用いる場合に比べて、光線照射によって粘着シートを架橋した後、光線反応性の光重合性開始剤が本粘着剤組成物中に未反応残渣として残り、粘着シートの予期せぬ経時変化や架橋の促進を招く可能性が低いため好ましい。また、光重合性開始剤特有の着色についても、反応分解物となることで、可視光線域の吸収がなくなり、消色するものを適宜選択することができるため好ましい。
他方、水素引抜型の光重合開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線照射によるラジカル発生反応時に、開裂型光重合開始剤のような分解物を生じないので、反応終了後に揮発成分となりにくく、被着体へのダメージを低減させることができる。
さらに、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなるアクリル系共重合体との相性からは、光重合開始剤(C)として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどを用いるのが好ましい。
紫外線吸収剤(D)は、紫外線を吸収できる物質であればよく、目安としては、紫外線吸収剤(D)の添加によって、透明両面粘着シートの波長380nmにおける吸光度を0.3以上、中でも0.5以上、その中でも1以上とすることができる物質であるのが好ましい。
A380=-Log(T380/100)
A380:波長380nmにおける吸光度
T380;透明両面粘着シートの380nmにおける透過率(%)
中でも、紫外線吸収性の観点から、ベンゾトリアゾール構造、トリアジン構造及びベンゾフェノン構造からなる群より選択される1つ又は2つ以上の構造を有するものが好ましい。
また、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなるアクリル系共重合体との相性の観点からは、紫外線吸収剤(D)としてベンゾトリアゾール構造又はベンゾフェノン構造などを用いるのが好ましい。
本粘着シートは、上記以外の成分として、通常の粘着組成物に配合されている公知の成分を含有してもよい。例えば、粘着付与樹脂や、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、防錆剤、老化防止剤、吸湿剤、加水分解防止剤、増感剤、帯電防止剤、消泡剤、無機粒子などの各種の添加剤を適宜含有させることが可能である。
また、必要に応じて反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)を、必要に応じて適宜含有してもよい。
本粘着剤組成物の特に好ましい組成の一例として、(メタ)アクリル系共重合体(A)として、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなるアクリル系共重合体を含有し、架橋剤(B)として、2官能、3官能などの多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有し、光重合開始剤(C)として、開裂型光重合開始剤を含有し、紫外線吸収剤(D)として、ベンゾトリアゾール構造又はベンゾフェノン構造を有する紫外線吸収剤を含有する組成例を挙げることができる。但し、このように組成に限定されるものではない。
本粘着シートは、単一層からなるシートであっても、2層以上が積層してなる多層シートであってもよい。
本粘着シートを多層の粘着シートとする場合には、すなわち、中間層と最外層とを備えた積層構成の粘着シートを形成する場合には、その最外層を、本粘着剤組成物から形成することが好ましい。
中間層の厚みが、上記範囲であれば、積層体における粘着材層の厚みの寄与が大きくなりすぎず、柔軟すぎて裁断や取回しに係る作業性が劣るようになることがなく好ましい。
また、最外層が上記範囲であれば、凹凸や屈曲した面への追随性に劣ることがなく、被着体への接着力や濡れ性を維持することができて、好ましい。
本粘着シートの厚みについては、シート厚を薄くすることで、薄肉化要求に応えることができる一方、シート厚を薄くし過ぎると、たとえば被着面に凹凸部あった場合に充分に凹凸に追従できなかったり、十分な接着力を発揮できなかったりする可能性がある。
かかる観点から、本粘着シートの厚みは20~500μmであるのが好ましく、中でも25μm以上或いは350μm以下、その中でも50μm以上或いは250μm以下であるのが特に好ましい。
本粘着シートの紫外線透過率(JIS K7361-1)は、波長380nmにおいて50%以下であるのが好ましく、中でも30%以下、その中でも10%以下であるのがさらに好ましい。
本粘着シートは、そのまま単独で使用することも可能である。また、他の部材と積層して使用することも可能である。
例えば、本粘着シートの一側又は両側に離型フィルムを積層して粘着シート積層体(「本粘着シート積層体」と称する)を構成することが可能である。
かかる観点から、一方又は両方の離型フィルムが、波長410nm以下の光の光線透過率が40%以下であるのが好ましく、中でも30%以下、その中でも20%以下であるのがさらに好ましい。
離型フィルムの厚みは、厚すぎると裁断加工性に劣り、薄すぎるとハンドリング性に劣り、粘着シートに打痕がつき易くなる可能性がある。かかる観点から、離型フィルムの厚みは20μm以上300μm以下であるのが好ましく、中でも25μm以上或いは250μm以下、その中でも38μm以上或いは200μm以下であるのが好ましい。
両側に離型フィルムを積層した構成とする場合は、一方の離型フィルムと他方の離型フィルムの厚さや剥離力を異ならしめるのが好ましい。
本粘着シート積層体の少なくとも一方の面に、波長410nm以下の光の光線透過率が40%以下の表面保護フィルムを積層することで、本粘着シートが波長405nmの吸光係数が10mL/(g・cm)以上である光重合開始剤(C)を含有していても、可視光の照射により光重合が進むのを効果的に防ぐことができるからである。
かかる観点から、本粘着シート積層体の一方又は両方面に積層する表面保護フィルムは、波長410nm以下の光の光線透過率が40%以下であるのが好ましく、中でも30%以下、その中でも20%以下であるのがさらに好ましい。
上記表面保護フィルムは、帯電防止層やハードコート層、アンカー層など、必要に応じて他の層を有していてもよい。
また、2つの画像表示装置用構成部材を、本粘着シートを介して積層して画像表示装置構成用積層体(「本画像表示装置構成用積層体」と称する)を構成することも可能である。
上記タッチパネルは、保護パネルにタッチパネル機能を内在させた構造体や、画像表示パネルにタッチパネル機能を内在させた構造体も含む。
上記のような本粘着シート又は本画像表示装置構成用積層体を用いて、画像表示装置(「本画像表示装置」と称する)を構成することができる。
本画像表示装置としては、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー、プラズマディスプレイ及びマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)ディスプレイなどの画像表示装置を構成することができる。
本粘着シートは、紫外線吸収機能と、紫外領域以外の波長の光線、特に可視光線の照射で硬化する硬化性を備えている。このような本粘着シートの特性を利用して、例えば次のようにして、画像表示装置構成用積層体を作製することができる。
可視光領域の波長の光線を含む光は、紫外領域、すなわち波長380nm以下の波長の光を含んでいてもよいが、積層した画像表示装置構成部材が紫外線劣化しやすい部材である場合は、波長380nm以下の波長の光を実質含まない光線、すなわち可視光線を照射して、本粘着シートを光架橋させて硬化させる(二次貼着工程)ことが好ましい。
本粘着剤組成物をシート状に成形して本粘着シートを作製することができる。
本粘着剤樹脂組成物をシート状に成形する方法としては、現在公知の方法を任意に採用することができる。
また、本粘着剤樹脂組成物を、画像表示装置構成部材の上にシート状に製膜して、当該画像表示装置構成部材上に本粘着シートを積層するようにしてもよい。
本粘着シートが、自己粘着性(タック性)を備えていれば、本粘着シートを介して2つの画像表示装置構成部材を重ねるだけで一次貼着することができる。
さらに形状保持性に優れているから、事前に任意の形状に加工しておくことが可能であることから、離型フィルム上に成形した本粘着シートを、積層する画像表示装置構成部材の寸法に合わせて予めカットしておくこともできる。
この際のカット方法は、トムソン刃による打ち抜き、スーパーカッターやレーザーでのカットが一般的であり、離型フィルムを剥がし易いように表裏どちらか一方の離型フィルムを額縁状に残してハーフカットするのがより好ましい。
この際、本粘着シートの加熱手段としては、例えば各種の恒温槽や、ホットプレート、電磁加熱装置、加熱ロールなどを用いることができる。より効率的に貼合と加熱を行うためには、例えば電熱プレス機や、ダイアフラム方式のラミネータ、ロールラミネータなどが好ましく用いられる。
よって、本粘着シートの軟化温度は、50~100℃であるのが好ましく、中でも55℃以上或いは95℃以下、その中でも60℃以上或いは90℃以下であるのがさらに好ましい。
減圧環境下で積層体を加熱することのより、貼合後に本粘着シート内に気泡が混入したり、異物が混入したりするのを防ぐことができる。
二次貼着工程では、本粘着シートを介して2つの画像表示装置構成部材が積層してなる積層体に対して、少なくとも一方の画像表示装置構成用部材の外側から当該画像表示装置構成用部材を通して、可視光領域の波長の光線を含む光、好ましくは、波長380nm以下の波長の光を実質含まない光線、すなわち可視光線を本粘着シートに照射し、本粘着シートを光架橋させて硬化させる。
ここで、「365nm未満の波長の光を実質含まない」とは、365nm未満の波長の光の発光強度が1mW/cm2未満であるという意味である。
可視光線のみを出射する光源としては、例えば蛍光灯、LED、有機EL、無機ELなどを挙げることができる。
また、紫外領域の波長の光を透過しないフィルターを介して照射するようにしてもよい。例えば、紫外領域の波長の光も出射する高圧水銀ランプやメタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ等の発光灯や太陽光を光源に用いて、波長380nmの光線透過率が10%未満であって、且つ、波長405nmの光線透過率が60%以上であるフィルターを介して、可視光線を接着剤組成物に照射する方法を挙げることができる。
前記フィルターは、本粘着シート積層体を構成する離型フィルムや、本粘着シート積層体の表面に積層して用いる表面保護フィルムであってもよい。
なお、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、画像表示パネル、保護パネル等のように「パネル」と表現する場合、板体、シートおよびフィルムを包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、数平均分子量3000のポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(Tg80℃)15質量部、ブチルアクリレート81質量部、及び、アクリル酸4質量部からなる共重合体(A-1、質量平均分子量30万)1kgに対し、架橋剤(B)としてグリセリンジメタクリレート(日油社製、ブレンマーGMR)(B-1)100g、光重合開始剤(C)としてエザキュアKTO46(C-1)(Lanberti社製)を15g、紫外線吸収剤(D)として2,6-ジフェニル-4-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製、チヌビン1577)(D-1)を5g添加し、均一混合して、粘着剤組成物1を得た。
光重合開始剤(C-1)の405nmにおける吸光係数は7.4×101(mL/(g・cm))であった。
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、数平均分子量1400のポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(Tg55℃)10質量部、及び2-エチルヘキシルアクリレート(Tg:-70℃)90質量部がランダム共重合してなるアクリル系グラフト共重合体(A-2)(重量平均分子量:23万)1kgと、架橋剤(B)としてトリシクロデカンジメタクリレート(新中村化学社製、製品名:DCP)(B-2)50gと、光重合開始剤(C)としてイルガキュア369(C-2)(BASF社製)15g、紫外線吸収剤(D)として2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6--ジ-tert-ペンチルフェノール(城北化学社製、JF-80)(D-2)20gを均一混合し、粘着樹脂組成物2を作製した。
光重合開始剤(C-2)の405nmにおける吸光係数は1.6×102(mL/(g・cm))であった。
(メタ)アクリル系共重合体(A)として、2-エチルヘキシルアクリレート76質量部、酢酸ビニル20質量部、及び、アクリル酸4質量部からなる共重合体(A-3、質量平均分子量40万)1kgに対して、架橋剤(B)としてプロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学社製、ATM-4P)(B-3)200g、光重合開始剤(C)としてイルガキュア819(C-3)(BASF社製)7g、紫外線吸収剤(D)として2,2‘-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(ケミプロ化成社製、Kemisorb111)(D-3)10g添加して均一混合し、粘着剤組成物3を得た。
光重合開始剤(C-3)の405nmにおける吸光係数は9.0×102(mL/(g・cm))であった。
剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRV、厚さ100μm)上に、乾燥後の膜厚が20~30μmとなるように上記粘接着層用塗工液を塗工した後、80℃で5分乾燥させた。これを23℃で7日間養生して架橋剤を反応させ、粘着層用シート(β)を作成した。
さらに、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRQ、厚さ75μm)上にも同様に、粘着剤組成物4を乾燥後の膜厚が20~30μmとなるように上記粘接着層用塗工液を塗工した後、80℃で5分乾燥させた。これを23℃で7日間養生して架橋剤を反応させ、粘着層用シート(β’)を作成した。
剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(ダイアホイルMRV、厚さ100μm)の代わりに、紫外線吸収剤入りのPETフィルム(厚さ100μm)にシリコーン離型剤を塗布した離型フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして、粘着シート積層体4を作成した。
実施例1で作成した粘着シート積層体のポリエチレンテレフタレートフィルム(ダイアホイルMRV、厚さ100μm)の表面に、微粘着層(5μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(25μm)/紫外線吸収層(3μm)からなる表面保護フィルムの微粘着層面を積層し、離型フィルム/粘着シート/離型フィルム/表面保護フィルムの構成からなる粘着シート積層体5を作成した。
光重合開始剤として、エザキュアKTO46(C-1)の代わりに、エザキュアTZT(C-5)を15g添加した以外は、実施例1と同様にして、粘着シート積層体6を作成した。
光重合開始剤(C-5)の405nmにおける吸光係数は10(mL/(g・cm))未満であり、低すぎて測定不能であった。
紫外線吸収剤(D-2)を加えない以外は、実施例2と同様にして、粘着シート積層体7を作成した。
市販のアクリル系共重合体(A-4、質量平均分子量130万)からなる粘着剤溶液(綜研化学社製、SKダイン1882、固形分濃度約17%)1kgに対し、イソシアネート系架橋剤としてL-45(B-5)(綜研化学社製)を1.85g及びエポキシ系架橋剤としてE-5XM(B-6)(綜研化学社製)を0.5g、紫外線吸収剤(D)として紫外線吸収剤(D)として2,2‘-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(ケミプロ化成社製、Kemisorb111)(D-3)10g添加して均一混合し、粘着剤組成物7を作成した。
剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRQ、厚さ75μm)上にも同様に、乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布した後、80℃で5分乾燥し、厚さ50μmのシート状の粘着剤組成物7を得た。これらを積層して厚さ100μmとした後、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルMRQ、厚さ75μm)を被覆した。これを室温(23℃)で7日間養生して架橋剤を反応させ、粘着シート積層体8を作成した。
[光学特性]
実施例及び比較例で作製した粘着シート積層体の両側のPETフィルムを順次剥離し、粘着シートを2枚のソーダライムガラス(厚み0.5mm)で挟み込むように貼着し、オートクレーブ処理(70℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上貼着した。粘着シート積層体1、2、4、5,6、7については、UVカットフィルターを介した高圧水銀ランプを用いて、波長405nmの積算光量が3000mJ/cm2となるよう光照射し、光学特性評価用サンプルを作成した。
380nmにおける光線透過率が50%未満のものを、UV吸収性「○(good)」、50%以上のものをUV吸収性「×(poor)」と判定した。結果は表1に示す。
実施例及び比較例で作製した粘着シートについて、一方の離型フィルムを剥がし、裏打ちフィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製;商品名「コスモシャインA4300」、厚み100μm)をハンドローラーにてロール圧着した。これを10mm巾×100mm長の短冊状に裁断し、残る離型フィルムを剥がして露出した粘着面を、ソーダライムガラスにハンドローラーを用いてロール貼着した。オートクレーブ処理(70℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上貼着した後、粘着シート積層体1、2、4、5,6、7については、UVカットフィルターを介した高圧水銀ランプを用いて、波長405nmの積算光量が3000mJ/cm2、波長365nmの積算光量が5mJ/cm2以下となるよう可視光を照射し、粘着力測定サンプルを作成した。
58mm×110mm×厚さ0.8mmのガラスの周縁部(長辺側3mm、短辺側15mm)に、厚さ20μmの印刷を施し、開口部が52mm×80mmの印刷段差付きガラス板1を準備した。
また、58mm×110mm×厚さ0.8mmのガラスの周縁部(長辺側3mm、短辺側15mm)に、厚さ10μmの印刷を施し、開口部が52mm×80mmの印刷段差付きガラス板2を準備した。
粘着シート積層体の一方の離型フィルムを剥がし、54mm×82mm厚さ0.5mmのソーダライムガラスにロール貼合した。
次いで、残る離型フィルムを剥がし、印刷段差付きガラス板1及び2の印刷面に、粘着面の4辺が印刷段差にかかるようにして真空プレスを用いてプレス圧着した後(絶対圧5kPa、温度70℃、プレス圧0.04MPa)、オートクレーブ処理(70℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着した。粘着シート積層体1、2、4、5,6、7については、印刷を施したガラス側から、UVカットフィルターを介した高圧水銀ランプを用いて、波長405nmの積算光量が3000mJ/cm2となるよう光照射し、評価用サンプルを作成した。
実施例及び比較例で作成した粘着シートの片面の離型フィルムを剥がし、その露出面にCOPフィルム(日本ゼオン社製100μm)をハンドローラーにて貼着した。次に、前記粘着シートを50mm×80mmに切り出した後、残る離型フィルムを剥がして、厚さ0.5mmのソーダライムガラスにハンドローラーにて貼着し、オートクレーブ処理(温度80℃、気圧0.4MPa、30分)を施した。粘着シート積層体1、2、4、5、6、7については、COP面から、UVカットフィルターを介した高圧水銀ランプを用いて、波長405nmの積算光量が3000mJ/cm2となるよう光照射し、評価用サンプルを作成した。
粘着シート積層体の一方の離型フィルムを剥がし、150mm×200mm厚さ2mmのソーダライムガラスにロール貼合した。次いで、残る離型フィルムを剥がし、露出した粘着面に、150mm×200mm厚さ2mmのソーダライムガラスにロール貼合し、オートクレーブ処理(温度80℃、気圧0.4MPa、30分)を施した。
粘着シート積層体1、2、4、5、6、7については、高圧水銀ランプを用いて、波長405nmの積算光量が3000mJ/cm2となるよう光照射し、評価用サンプルを作成した。
2)上記SUSメッシュを100mLの酢酸エチルに24時間浸漬する。
3)SUSメッシュを取り出し、75℃で4時間半乾燥する。
4)乾燥後の重量(W2)を求め、下記式より粘着剤組成物のゲル分率を測定する。
ゲル分率(%)=100×(W2-W0)/W1
これに対し、比較例1は波長405nmの吸光係数が10mL/(g・cm)未満の光重合開始剤を用いたため、すなわち波長405nmの吸光係数が10mL/(g・cm)以上の光重合開始剤を用いていないため、光照射しても粘着材が硬化せず、2次貼着後の粘着力や貼合後の信頼性が得られなかった。
比較例2は、紫外線吸収剤(D)を含まず、紫外線吸収性能が得られなかった。このため、耐光性試験にて粘着シートの発泡がみられ、貼合信頼性に劣るものであった。
比較例3は、熱架橋により粘着材組成物を架橋した粘着シートである。光硬化性層を有さないため、貼合時の凹凸吸収性に劣るものであった。
Claims (12)
- (メタ)アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)、波長405nmの吸光係数が10mL/(g・cm)以上である光重合開始剤(C)及び紫外線吸収剤(D)を含有する粘着剤樹脂組成物から形成される層を少なくとも1層含む粘着シートであり、
前記粘着シートは、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなるアクリル系共重合体による物理的架橋構造を有するか、または、イソシアネート基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基を有する架橋剤の反応による架橋構造を有する、透明両面粘着シート。 - (メタ)アクリル系共重合体(A)が、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなるアクリル系共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の透明両面粘着シート。
- 紫外線吸収剤(D)がベンゾトリアゾール構造、トリアジン構造およびベンゾフェノン構造からなる群より1つ以上選択される構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の透明両面粘着シート。
- 光重合開始剤(C)100質量部に対して紫外線吸収剤(D)を25~400質量部の割合で含有することを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の透明両面粘着シート。
- (メタ)アクリル系共重合体(A)として、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなるアクリル系共重合体を含有し、架橋剤(B)として、多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有し、
光重合開始剤(C)として、開裂型光重合開始剤を含有し、紫外線吸収剤(D)として、ベンゾトリアゾール構造又はベンゾフェノン構造を有する紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の透明両面粘着シート。 - 光硬化前の状態であっても、室温(20℃)において粘着性を示し、且つ、50~100℃の温度に加熱すると軟化乃至流動化する性質を備えた、請求項1~5の何れかに記載の透明両面粘着シート。
- 請求項1~6の何れかに記載の粘着シートと、離型フィルムとを積層してなる構成を備えた粘着シート積層体。
- 少なくとも一方の離型フィルムが、波長410nm以下の光の光線透過率が40%以下であることを特徴とする、請求項7に記載の粘着シート積層体。
- 少なくとも一方の離型フィルムの表面に、波長410nm以下の光の光線透過率が40%以下である表面保護フィルムを積層してなる構成を備えた、請求項7に記載の粘着シート積層体。
- 2つの構成部材間を、請求項1~6の何れかに記載の透明両面粘着シートを介して積層してなる構成を備えた画像表示装置構成用積層体。
- 前記画像表示装置構成部材が、タッチセンサー、画像表示パネル、表面保護パネル及び偏光フィルムからなる群のうちの何れか或いは2種類以上の組み合わせからなる積層体であることを特徴とする請求項10に記載の画像表示装置構成用積層体。
- 請求項10又は11に記載の画像表示装置構成用積層体を用いて構成された画像表示装置。
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