JP7190304B2 - 制震ダンパー - Google Patents
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Description
また、上記粘弾性体に対しては、台風や大地震後に発生する中小地震による長周期の断続的な繰り返し振動(特に高層ビルにおいて観測される低~中歪みの長周期振動)や、直下型地震のように短周期の振動に対する減衰特性を、安定して維持することへの要求も高くなってきている。
このような要求を満たすことを目標とし、従来、上記粘弾性体のポリマーには、主として、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)が用いられている(例えば特許文献1および2参照)。
しかしながら、それと同時に、上記のようなガラス転移点を示す粘弾性体は、ポリマーの分子運動がしにくい状態となるため、減衰特性が低くなる。
ここで、例えば分子量の小さなポリマーを使用すると、分子運動がしやすい状態となるため、減衰特性は高くなる。しかしながら、分子量の小さなポリマーを使用すると、ポリマー同士の絡み合いが小さくなるため、粘弾性体の変形後の回復性が悪化するといった問題も生じる。
[1]下記の(A)および(B)成分をポリマーとし、かつスチレン-ブタジエンジブロック成分量が65重量%以上のスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)を主たるポリマーとするゴム組成物からなる粘弾性体を構成部材とする制振ダンパーであって、剪断歪み率200%,周波数0.33Hz,温度20℃の条件下における上記粘弾性体の剪断弾性率が0.05N/mm2以上である制振ダンパー。
(A)分子量分布において、分子量6万以上9万未満の領域にメインピークのピークトップを有するスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)。
(B)分子量分布において、分子量9万以上33万以下の領域にメインピークのピークトップを有する、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)およびスチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)の少なくとも一方。
[2]上記ゴム組成物における(A)成分と(B)成分の混合割合が、重量比で、(A):(B)=95:5~50:50の範囲である、[1]に記載の制振ダンパー。
[3]上記(A)成分のジブロック成分量が70重量%以上であり、上記(B)成分のジブロック成分量が10重量%以上70重量%未満である、[1]または[2]に記載の制振ダンパー。
[4]上記ゴム組成物におけるスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体の混合割合が、重量比で、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体:スチレン-イソプレン-スチレン共重合体=95:5~50:50の範囲である、[1]~[3]のいずれかに記載の制振ダンパー。
[5]更に、シリカ、炭酸カルシウム、カーボンブラック、炭素繊維およびカーボンナノチューブからなる群から選ばれた少なくとも一つのフィラーを、上記ゴム組成物に含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の制振ダンパー。
[6]更に、表面処理シリカを上記ゴム組成物に含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の制振ダンパー。
[7]上記表面処理シリカが、疎水化処理されたシリカである、[6]に記載の制振ダンパー。
[8]上記ゴム組成物からなる粘弾性体とともに、摩擦材を構成部材とする、[1]~[7]のいずれかに記載の制振ダンパー。
(A)分子量分布において、分子量6万以上9万未満の領域にメインピークのピークトップを有するスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)。
(B)分子量分布において、分子量9万以上33万以下の領域にメインピークのピークトップを有する、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)およびスチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)の少なくとも一方。
上記(A)成分には、分子量分布において、分子量6万以上9万未満の領域にメインピークのピークトップを有するSBSが用いられる。そして、減衰性向上の観点から、上記(A)成分には、分子量6.5万~8.5万の領域にメインピークのピークトップを有するSBSが好ましく、より好ましくは分子量7万~8万の領域にメインピークのピークトップを有するSBSである。
また、上記(A)成分には、減衰性向上の観点から、分子量分布において、分子量9万以上30万以下の領域にサブピークのピークトップを有するSBSが好ましく、より好ましくは分子量13万以上20万以下の領域にサブピークのピークトップを有するSBSが用いられる。
また、上記(B)成分には、分子量分布において、分子量9万以上33万以下の領域にメインピークのピークトップを有する、SBSおよびSISの少なくとも一方が用いられる。すなわち、上記のような分子量分布を示す、SBS単独、SIS単独、SBSとSISが併用されたもの、のいずれかが用いられる。そして、回復性向上の観点から、上記(B)成分には、分子量9.5万~25万の領域にメインピークのピークトップを有するものが好ましく、より好ましくは分子量10万~20万未満の領域にメインピークのピークトップを有するものである。
また、上記(B)成分には、回復性向上の観点から、分子量分布において、分子量20万以上45万以下の領域にサブピークのピークトップを有するものが好ましく、より好ましくは分子量25万以上40万以下の領域にサブピークのピークトップを有するものが用いられる。
なお、上記(A)および(B)成分の分子量分布は、標準ポリスチレン分子量換算により、高速液体クロマトグラフ(Waters社製、「ACQUITY APCシステム」)に、カラム:ACQUITY APC XT 450を1本、ACQUITY APC XT 200を1本、ACQUITY APC XT 45を2本の計4本を直列にして用いることにより測定される。そして、「メインピーク」とは、分子量分布において最も検出強度の高いピークのことを言い、「サブピーク」とは、メインピークの次に検出強度の高いピークのことを言う。
なお、上記ジブロック成分量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された値である。
なお、上記スチレン量は、核磁気共鳴装置(NMR)によって測定された値である。
なかでも、表面処理シリカを含有することが、高減衰特性の観点から好ましい。
特に、上記疎水化処理されたシリカのなかでも、トリメチルシラン(トリメチルシリル化剤)により表面処理されたシリカが、高減衰特性の観点から好ましい。
また、上記炭酸カルシウムとしては、ロジン酸処理炭酸カルシウム、リグニン処理炭酸カルシウム、脂肪酸第四級アンモニウム塩処理炭酸カルシウム等を用いることが、剛性の温度依存性を良好に保ちつつ、減衰特性がさらに向上する観点から、より好ましい。
このような液状ポリマーを併用すると、剛性の温度依存性を低温側へシフトさせることができ、常温領域(通常、0~30℃)での剛性の温度依存性が小さくなるとともに、常温領域での減衰定数(he)が大きくなり、減衰特性が向上するという効果が得られるため、好ましい。なかでも、液状スチレン-イソプレンゴム(液状SI)を選択すると、更なる減衰特性の向上効果を得ることができる。
なお、上記液状ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(Waters社製、「ACQUITY APCシステム」)に、カラム:ACQUITY APC XT 450を1本、ACQUITY APC XT 200を1本、ACQUITY APC XT 45を2本の計4本を直列にして用いることにより測定される。
等価剛性:Ke(N/mm)=Qd/δ …(α)
剪断弾性率:Ge(N/mm2)=Ke÷S/D …(β)
図2は、上記制震ダンパーの断面図の一例であり、(I)は図1のA-A'断面図、(II)は図1のB-B'断面図である。図2では、上記制震ダンパーにおける粘弾性体2と摩擦材3とが単層構造のものが示されている。
図3は、上記制震ダンパーの断面図の他の例であり、(I)は図1のA-A'断面図、(II)は図1のB-B'断面図である。図3では、上記制震ダンパーにおける粘弾性体2と摩擦材3とが二層構造のものが示されている。
とりわけ、橋梁やビルといった大型建造物に使用される制震ダンパーとして、より優れた機能を発揮することができる。
クレイトンポリマー社製、D1118(分子量分布における第1ピーク(メインピークのピークトップ):7.9万,第2ピーク(サブピークのピークトップ):16万、スチレン-ブタジエンジブロック成分量:78重量%、スチレン量:33重量%)
JSR社製、TR2601(分子量分布における第1ピーク(メインピークのピークトップ):10万,第2ピーク(サブピークのピークトップ):35万、スチレン-ブタジエンジブロック成分量:15重量%、スチレン量:30重量%)
JSR社製、TR2000(重量平均分子量(Mw):9万、スチレン-イソプレンジブロック成分量:0重量%、スチレン量:40重量%)
日本ゼオン社製、クインタック3520(分子量分布における第1ピーク(メインピークのピークトップ):13万,第2ピーク(サブピークのピークトップ):33万、スチレン-イソプレンジブロック成分量:78重量%、スチレン量:15重量%)
脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、白艶華CC)
トリメチルシリル化剤で表面処理されたシリカ(日本アエロジル社製、アエロジルRX200)
東海カーボン社製、シーストS
クラレ社製、LIR-310(ガラス転移点(Tg):-63℃、静粘度:1400Pa・s/38℃、重量平均分子量(Mw):3万2000)
後記の表2に示す各成分を同表に示す割合で配合し、これらをニーダーで混練して、目的とするゴム組成物を調製した。
図5に示すようなサンプルを用いて、ゴム組成物の動的剪断特性の評価を行った。すなわち、ブラスト処理を施した二枚の金具22(大きさ140mm×80mm、厚み9mm)の所定箇所(試料21の接着箇所)に、ゴム用2液接着剤を塗布した後、上記金具22間に、実施例または比較例のゴム組成物を挟み、乾燥を行った。これを100℃で10分間熱プレス成型して、試料(大きさ70mm×80mm、厚み5mm)21を作製した。そして、このサンプルを、矢印方向に加振させて、図6に示す荷重-歪みループ曲線に基づいて、動的剪断特性の評価を行った。すなわち、上記サンプルに対し、加振機(鷲宮製作所社製、DYNAMIC SERVO)と、入力信号発振機(横河電気社製、シンセサイズドファンクションゼネレータFC320)と、出力信号処理機(小野測器社製、ポータブルFFTアナライザーCF-3200)を用いて、大地震時の2波目を想定した加振(剪断歪み率:200%(試料厚みに対して200%)、周波数(f):0.33Hz、測定温度:20℃)を付与し、その加振の時間に対する剪断歪み値(δ)と荷重値(Qd)の解析から、下記の式(1)~(4)に従い、等価剛性(Ke)、等価減衰係数(Ce)を求めるとともに、その値から、剪断弾性率(Ge)、減衰定数(he)を求めた。なお、下記の式において、ω=2πf、W=Keδ2/2、ΔWは荷重-歪みループ面積、
Sは試料の面積、Dは試料の厚みを示す。
等価剛性:Ke(N/mm)=Qd/δ …(1)
等価減衰係数:Ce(kN・s/m)=ΔW/πωδ2 …(2)
減衰定数:he=ΔW/4πW …(3)
剪断弾性率:Ge(N/mm2)=Ke÷S/D …(4)
上記のようにして作製したサンプル(図5参照)に対し、上記測定方法に準じ、測定温度が0℃のときの剪断弾性率「Ge(0℃)」と、測定温度が40℃のときの剪断弾性率「Ge(40℃)」の値を測定し、「(Ge(0℃)/Ge(40℃))×100」の値を計算して、温度依存性(%)の評価を行った。
上記のようにして作製したサンプル(図5参照)に対し、測定温度20℃の温度下で、下記の表1に示す周波数および歪みの条件の振動を、番号「1」~「14」の順に、15分ごと連続して加えた。そして、上記測定方法に準じ、番号「4」のときの剪断弾性率「Ge「4」」と、番号「14」のときの剪断弾性率「Ge「14」」とを測定し、「Ge「14」/Ge「4」」の値を計算して、回復性の評価を行った。
上記測定結果より、減衰定数(he)の値が0.45よりも大きく、かつ温度依存性評価における「Ge(0℃)/Ge(40℃)」の値が1.5以下、かつ回復性評価における「(Ge(0℃)/Ge(40℃))×100」の値が80%以上のものを、「○」と評価した。また、減衰定数(he)の値が0.4~0.45で、かつ、回復性、温度依存性は上記の領域に入るものを「△」と評価した。そして、上記「○」および「△」のいずれにも該当しなかったものを「×」と評価した。
すなわち、比較例1の試料は、SBSを主たるポリマーとしているものの、低分子量SBSしか用いられておらず、回復性に劣る結果となった。比較例2の試料は、SBSを主たるポリマーとしているものの、高分子量SBSしか用いられておらず、減衰特性に劣る結果となった。また、比較例3の試料は、ブロック共重合体として低分子量SISしか用いられておらず、回復性と温度依存性に劣る結果となった。また、比較例4の試料は、ブロック共重合体として高分子量SISしか用いられておらず、温度依存性に劣る結果となった。
一方、比較例5の試料は、二種類のブロック共重合体の併用がなされているが、低分子量SISと高分子量SBSの組合せであるため、回復性と温度依存性に劣る結果となった。
また、本発明の制振ダンパーの構成部材である粘弾性体を備えた、建築用の制震壁等の制震装置や免震装置、家電用や電子機器用の制振材や衝撃吸収材、自動車用の制振材や衝撃吸収材等も、本発明の制振ダンパーとして利用することが可能である。
2 粘弾性体
3 摩擦材
4,5 金属板
6 ボルト
7,8 パネル
9 柱
10 梁
11 土台
Claims (8)
- 下記の(A)および(B)成分をポリマーとし、かつスチレン-ブタジエンジブロック成分量が65重量%以上のスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体を主たるポリマーとするゴム組成物からなる粘弾性体を構成部材とする制振ダンパーであって、上記ゴム組成物における(A)成分と(B)成分の混合割合が、重量比で、(A):(B)=95:5~50:50の範囲であり、剪断歪み率200%,周波数0.33Hz,温度20℃の条件下における上記粘弾性体の剪断弾性率が0.05N/mm2以上であることを特徴とする制振ダンパー。
(A)分子量分布において、分子量6万以上9万未満の領域にメインピークのピークトップを有するスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)。
(B)分子量分布において、分子量9万以上33万以下の領域にメインピークのピークトップを有する、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)およびスチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)の少なくとも一方。 - 上記ゴム組成物における(A)成分と(B)成分の混合割合が、重量比で、(A):(B)=90:10~60:40の範囲である、請求項1記載の制振ダンパー。
- 上記(A)成分のジブロック成分量が70重量%以上であり、上記(B)成分のジブロック成分量が10重量%以上70重量%未満である、請求項1または2記載の制振ダンパー。
- 上記ゴム組成物におけるスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体の混合割合が、重量比で、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体:スチレン-イソプレン-スチレン共重合体=95:5~50:50の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の制振ダンパー。
- 更に、シリカ、炭酸カルシウム、カーボンブラック、炭素繊維およびカーボンナノチューブからなる群から選ばれた少なくとも一つのフィラーを、上記ゴム組成物に含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の制振ダンパー。
- 更に、表面処理シリカを上記ゴム組成物に含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の制振ダンパー。
- 上記表面処理シリカが、疎水化処理されたシリカである、請求項6記載の制振ダンパー。
- 上記ゴム組成物からなる粘弾性体とともに、摩擦材を構成部材とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の制振ダンパー。
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