JP2004035648A - 建築用振動減衰エラストマー組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】温度および振動に依存しない剛性と、減衰性とを高い水準でバランスよく両立し安定した制振効果を有し、かつ、振動吸収用構造物を容易に製造できる、建築用振動減衰エラストマー組成物の提供。
【解決手段】金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、下記条件(1)〜(4)を特定の範囲に限定した建築用振動減衰エラストマー組成物。
(1)Geq(X℃、200%)/Geq(30℃、200%)
ここで、Xは、10、20および40である。
(2)Geq(20℃、200%)
(3)Heq(20℃、200%)
(4)Geq(20℃、50%)/Geq(30℃、200%)
【選択図】なし
【解決手段】金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、下記条件(1)〜(4)を特定の範囲に限定した建築用振動減衰エラストマー組成物。
(1)Geq(X℃、200%)/Geq(30℃、200%)
ここで、Xは、10、20および40である。
(2)Geq(20℃、200%)
(3)Heq(20℃、200%)
(4)Geq(20℃、50%)/Geq(30℃、200%)
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動吸収用構造物(建築用制振デバイスおよび建築用振動吸収デバイスを含む)に用いられる建築用振動減衰エラストマー組成物に関し、詳しくは、四季を通じて、微震から強震に至るまで安定した制振効果を発揮する、振動吸収用構造物等の梁部等に応力が集中しない、該構造物に用いられる建築用振動減衰エラストマー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築分野における制振装置、免震装置等の振動吸収用構造物には、地震による震動のような大きな揺れを減衰させるばかりでなく、風等による震動のような小さな揺れに対しても高い減衰性が要求されるが、振動吸収用構造物に用いられる振動減衰ゴム材料は、歪みに対する剛性の依存性が大きく、特に低振幅時に剛性が高くなるという問題がある。
【0003】
この問題を解決するため、低分子量ポリマーとポリノルボルネンゴムを含有し、等価減衰定数、動的せん断弾性係数および複素弾性率を特定の範囲に限定した建築物振動減衰用粘弾性体が、本出願人により特開2001−200103号公報に記載されている。また、ヒステリシスカーブ内の面積、モジュラスおよび複素弾性率を特定の範囲に限定した、金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられるゴム組成物が、本出願人により特開2001−200104号公報に記載されている。
【0004】
これらの粘弾性体およびエラストマー組成物は、上記問題を解決し、温度および振動に依存せず、剛性と減衰性とをバランスよく両立しているものの、昨今の技術革新、製造工程の簡素化、コストダウン等により、より高性能でより容易に振動吸収用構造物を製造できる振動減衰材料が望まれている。
【0005】
また、振動減衰材料として、ゴムアスファルト材料、ホットメルト材料等も利用されているが、これらの材料は、成形性が良好で減衰性が大きいものの、弾性率(剛性)の温度依存性が大きいため、外気温度により制振効果が大幅に劣るという問題がある。
【0006】
一方、建築用振動吸収構造物は、例えば、建築物の上下階の柱と梁を結ぶ筋交い(ブレース)や建築物の上階の柱と下階の柱の間に挿入され、低、中、高層建築物に利用されている。このような建築用振動吸収構造物として、近年、ゴム等の振動減衰材料と、鋼板等の金属板とを交互に積層した積層体を組み込んだ振動吸収用構造物、例えば、ブレースダンパー(粘弾性ダンパー)が検討されている。
【0007】
しかし、振動吸収用構造物に用いられる振動減衰材料として、従来の高減衰ゴム材料を使用すると、ゴムのせん断弾性率が高いため、例えばブレースダンパーの場合、ブレースダンパーの剛性が高くなり、地震による振動のように大きな振動エネルギーが建築物に入ると、ブレースダンパーの建築物への取付け部(梁部等)に応力が集中して取付け部が座屈しやすいという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、温度および振動に依存しない剛性と、減衰性とを高い水準でバランスよく両立し安定した制振効果を有し、かつ、振動吸収用構造物を容易に製造できる、建築用振動減衰エラストマー組成物を提供することを目的とする。
また、温度および振動に依存しない剛性と、温度および振動に依存しない減衰性とを高い水準でバランスよく両立しより安定した制振効果を有し、かつ、振動吸収用構造物を容易に製造できる、建築用振動減衰エラストマー組成物を提供することを目的とする。
さらに、振動吸収用構造物に用いられる振動減衰材料として使用しても、振動吸収用構造物の建築物への取付け部(梁部等)に応力が集中しない建築用振動減衰エラストマー組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討を進めた結果、等価せん断弾性係数、等価減衰定数等を特定の範囲に限定することにより、さらには、等価せん断弾性係数の温度依存性および歪み依存性を特定の範囲に限定することにより、ホットメルト系の組成物においても、温度の高低および振動の強さに依存することなく、剛性と減衰性とを高い水準でバランスよく両立し安定した制振効果を発揮できることを知見し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、I)金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、0.5Hz、ラップシェアせん断試験における下記(1)〜(4)の条件を満たす建築用振動減衰エラストマー組成物を提供する。
(1)30℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、10℃、20℃および40℃での200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geq(以下「等価せん断弾性係数Geqの変動比」という場合がある。)が、0.60〜3.50
(2)20℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、0.04〜0.19MPa
(3)20℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、0.30以上
(4)20℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、20℃、50%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、1.30〜2.60
【0011】
本発明は、II)さらに、0.5Hz、ラップシェアせん断試験における下記(5)および(6)の条件を満たす、I)に記載のエラストマー組成物を提供する。
(5)30℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqに対する、10℃、20℃および40℃での200%せん断歪み時の等価減衰定数Heq(以下「等価減衰定数Heqの変動比」という場合がある。)が、0.70〜1.60
(6)20℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqに対する、20℃、50%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、0.60〜1.30
【0012】
本発明は、III)前記条件(1)が、下記条件(1−1)および(1−3)、または、(1−2)および(1−3)である、I)またはII)に記載のエラストマー組成物を提供する。
(1−1)30℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、10℃での200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、1.40〜3.50、
(1−2)30℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、20℃での200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、1.00〜1.40、
(1−3)30℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、40℃での200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、0.60〜1.00。
【0013】
本発明は、IV)前記条件(5)が、下記条件(5−1)および(5−3)、または、(5−2)および(5−3)である、II)またはIII)に記載のエラストマー組成物を提供する。
(5−1)30℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqに対する、10℃での200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、1.10〜1.60、
(5−2)30℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqに対する、20℃での200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、1.00〜1.45、
(5−3)30℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqに対する、40℃での200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、0.70〜1.00。
【0014】
また、本発明者等は、熱可塑性エラストマー等の組成物に含有する成分の種類、性質、特徴等を限定し、配合量を特定することにより、温度の高低および振動の強さに依存することなく、該組成物が剛性と減衰性とを高い水準でバランスよく両立し安定した制振効果を発揮できることを知見し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明は、V)熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィン樹脂と、石油系樹脂またはテルペン系樹脂と、液状ポリマーとを含有するエラストマー組成物であって、
金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、下記(7)〜(11)の条件を満たす建築用振動減衰エラストマー組成物を提供する。
(7)前記熱可塑性エラストマーが、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン(水添率100%)、ポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む)、水素添加ポリブタジエン(水素添加1,2−ポリブタジエンを含む、水添率100%)およびポリイソブチレンからなる群より選択される1種以上のブロック体と、ポリスチレンブロックとの共重合体;または;該共重合体の混合物であり、かつ、前記熱可塑性エラストマーのガラス転移温度(Tg)が−65〜−35℃、数平均分子量が50000〜500000、スチレン含有量が40質量%以下、
(8)前記ポリオレフィン樹脂がポリプロピレンまたはポリエチレンであり、かつ、前記ポリオレフィン樹脂の数平均分子量が1000〜100000、軟化点が100〜160℃
(9)前記石油系樹脂が芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂であり、かつ、前記石油系樹脂の軟化点が100〜150℃;あるいは;前記テルペン系樹脂がジテルペンの重合体またはそのフェノール変性もしくは芳香族変性体であり、かつ、前記テルペン系樹脂の軟化点が100〜150℃
(10)前記液状ポリマーが、ポリイソプレン;ポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む);ポリイソブチレン;水素添加ポリイソプレン(水添率80%以上、ヨウ素価60g/100g以下);ポリイソプレンとポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む)の共重合体;ポリイソプレンとポリスチレンの共重合体;または;水素添加ポリイソプレン(水添率80%以上、ヨウ素価60g/100g以下)とポリスチレンの共重合体であり、かつ、前記液状ポリマーの数平均分子量が50000以下、
(11)前記エラストマー組成物における、前記熱可塑性エラストマーの含量が10〜60質量%、前記ポリオレフィン樹脂の含量が20〜50質量%、前記石油系樹脂または前記テルペン系樹脂の含量が10〜30質量%および前記液状ポリマーの含量が10〜40質量%
【0016】
さらに、本発明は、VI)熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィン樹脂と、石油系樹脂またはテルペン系樹脂と、液状ポリマーとを含有するエラストマー組成物であって、
金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、下記(7)〜(11)の条件を満たす、I)〜IV)のいずれかに記載のエラストマー組成物を提供する。
(7)前記熱可塑性エラストマーが、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン(水添率100%)、ポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む)、水素添加ポリブタジエン(水素添加1,2−ポリブタジエンを含む、水添率100%)およびポリイソブチレンからなる群より選択される1種以上のブロック体と、ポリスチレンブロックとの共重合体;または;該共重合体の混合物であり、かつ、前記熱可塑性エラストマーのガラス転移温度(Tg)が−65〜−35℃、数平均分子量が50000〜500000、スチレン含有量が40質量%以下、
(8)前記ポリオレフィン樹脂がポリプロピレンまたはポリエチレンであり、かつ、前記ポリオレフィン樹脂の数平均分子量が1000〜100000、軟化点が100〜160℃
(9)前記石油系樹脂が芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂であり、かつ、前記石油系樹脂の軟化点が100〜150℃;あるいは;前記テルペン系樹脂がジテルペンの重合体またはそのフェノール変性もしくは芳香族変性体であり、かつ、前記テルペン系樹脂の軟化点が100〜150℃
(10)前記液状ポリマーが、ポリイソプレン;ポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む);ポリイソブチレン;水素添加ポリイソプレン(水添率80%以上、ヨウ素価60g/100g以下);ポリイソプレンとポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む)の共重合体;ポリイソプレンとポリスチレンの共重合体;または;水素添加ポリイソプレン(水添率80%以上、ヨウ素価60g/100g以下)とポリスチレンの共重合体であり、かつ、前記液状ポリマーの数平均分子量が50000以下、
(11)前記エラストマー組成物における、前記熱可塑性エラストマーの含量が10〜60質量%、前記ポリオレフィン樹脂の含量が20〜50質量%、前記石油系樹脂または前記テルペン系樹脂の含量が10〜30質量%および前記液状ポリマーの含量が10〜40質量%
【0017】
また、本発明は、振動吸収用構造物に用いた場合に、振動吸収用構造物に大きな力(変形)が加わっても、振動吸収用構造物の建築物への取付け部(以下「梁部等」という。)に応力が集中しない、前記I)〜VI)に記載の建築用振動減衰エラストマー組成物を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、2軸せん断試験機によるラップシェアせん断試験により建築用振動減衰エラストマー組成物の物性を規定しているのは、該試験はJISに規定されていないが、日本ゴム協会標準規格(SRIS 3501(防振ゴム用ゴム材料の動的性質試験法))に定められており、制振材等の分野において、制振材組成物等の試験に通常用いられる試験方法であって、地震波を受けたときに近いせん断歪みを材料に与えて評価できるという利点を有するためである。
なお、本発明で用いる各種パラメータは制振材の評価に通常用いられるものである。
また、本発明において、該ラップシェア試験せん断試験の振動数を0.5Hzとしているのは、地震波の固有振動数をシミュレートできるためである。
【0019】
以下、X℃、せん断歪みY%の条件下における等価せん断弾性係数Geqおよび等価減衰定数Heqを、それぞれ「Geq(X℃、Y%)」および「Heq(X℃、Y%)」と表す。例えば、20℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数GeqをGeq(20℃、200%)と表示する。
本発明でいう「剛性」は、主にせん断方向の剛性であり、「ねじり剛性」ともいう。
【0020】
本発明の第1態様は、金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、2軸せん断試験機による0.5Hz、ラップシェアせん断試験における下記(1)〜(4)の条件を満たす建築用振動減衰エラストマー組成物である。
(1)30℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、10℃、20℃および40℃での200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、0.60〜3.50
(2)20℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、0.04〜0.19MPa
(3)20℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、0.30以上
(4)20℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、20℃、50%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、1.30〜2.60
【0021】
まず、条件(2)の2軸せん断試験機による0.5Hz、ラップシェアせん断試験における20℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geq(20℃、200%)について説明する。
該Geq(20℃、200%)を0.04〜0.19MPaとすることにより、エラストマー組成物の剛性(弾性)を下げることができ減衰性も高くなり制振効果に優れる。また、振動吸収用構造物に剛性が低い該エラストマー組成物を用いれば、大きな力(以下「大変形」という。)が加わってもせん断変形に対して柔らかい物質として振るまうため梁部等への応力の集中を避けることができる。Geq(20℃、200%)は、上記範囲であればよいが、より制振効果を高める点で、好ましくは0.04〜0.17、特に好ましくは0.05〜0.15MPaである。
【0022】
条件(1)の2軸せん断試験機による等価せん断弾性係数Geqの変動比は、各温度における剛性の温度依存性を表すものであり、この値が1に近づくほど剛性の温度依存性に優れることを示す。この変動比が上記範囲内であれば、各温度における剛性の差異が小さく、エラストマー組成物が低温から高温まで安定した制振効果、すなわち四季を通じて安定した制振効果を発揮できる。また、振動吸収用構造物に剛性が低い該エラストマー組成物を用いれば、大きな力が加わっても温度によらず、せん断変形に対して柔らかい物質として振るまうため梁部等への応力の集中を避けることができる。
上記等価せん断弾性係数Geqの変動比は、上記範囲であればよいが、温度依存性が小さく、四季を通じてより安定した制振効果を発揮する点で、好ましくは0.75〜2.20、特に好ましくは0.80〜2.10である。
【0023】
以下「30℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geq(30℃、200%)に対する、X℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geq(X℃、200%)」を「Geq(X℃、200%)/Geq(30℃、200%)」とする。なお、建築分野においては、特に10〜40℃の温度範囲での剛性の温度依存性が小さいことが求められるため、Xは10、20または40である。
条件(1−1)Geq(10℃、200%)/Geq(30℃、200%)および条件(1−2)Geq(20℃、200%)/Geq(30℃、200%)は低温時における剛性の温度依存性を表し、条件(1−3)Geq(40℃、200%)/Geq(30℃、200%)は高温時における剛性の温度依存性を表す。
条件(1−1)Geq(10℃、200%)/Geq(30℃、200%)は1.40〜3.50であり、好ましくは1.40〜2.20であり、特に好ましくは1.40〜2.10である。条件(1−2)Geq(20℃、200%)/Geq(30℃、200%)は1.00〜1.40であり、好ましくは1.00〜1.35であり、特に好ましくは1.00〜1.30である。条件(1−3)Geq(40℃、200%)/Geq(30℃、200%)は0.60〜1.00であり、好ましくは0.75〜1.00であり、特に好ましくは0.80〜1.00である。
【0024】
本発明においては、上記条件(1)を満たせば後述する効果を有するが、上記条件(1−1)〜条件(1−3)を満たすのがより好ましい。
条件(1−1)または条件(1−2)で低温時における温度依存性、条件(1−3)で高温時における温度依存性を評価することができる。すなわち、条件(1)は、条件(1−1)および条件(1−3)、または、条件(1−2)および条件(1−3)で評価するのが好ましい。一般的に剛性は温度が低くなると大きくなるため、より低温での依存性が判断できる条件(1−1)および条件(1−3)が特に好ましい。
【0025】
本発明では、条件(2)においてGeqを20℃で規定しているのに対し、条件(1)では30℃でのGeqを基準にしている。これは、建築分野では剛性の低温時温度依存性がより重要となるため、低温時の変動比に関する条件((1−1)および(1−2))を多くして評価した方が好ましいと判断したものである。
【0026】
条件(4)は2軸せん断試験機による、20℃、0.5Hz、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geq(20℃、200%)に対する、20℃、0.5Hz、50%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geq(20℃、50%)(以下「Geq(20℃、50%)/Geq(20℃、200%)」とする。)が、1.30〜2.60である。
上記Geq(20℃、50%)/Geq(20℃、200%)は、エラストマー組成物の等価せん断弾性係数の歪み依存性を表し、この値が1に近づくほど剛性の歪み依存性に優れることを示す。このGeq(20℃、50%)/Geq(20℃、200%)が上記範囲であれば、エラストマー組成物の剛性の歪み依存性が小さく、地震による強震だけでなく、風等による微震(小変形)に対しても、剛性が小さくなり、小変形時における減衰効果を損なうことがなく、安定した制振効果を発揮する。また、振動吸収用構造物に剛性が低い該エラストマー組成物を用いれば、振動の大きさによらず、せん断変形に対して柔らかい物質として振るまうため梁部等への応力の集中を避けることができる。
上記Geq(20℃、50%)/Geq(20℃、200%)は、上記範囲であればよいが、風等による微震から地震による強震に至るまでより安定した制振効果を発揮できる点で、好ましくは1.30〜2.40、特に好ましくは1.30〜2.00である。
【0027】
条件(3)は、2軸せん断試験機による、20℃、0.5Hz、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heq(20℃、200%)が、0.30以上である。Heq(20℃、200%)は、20℃、0.5Hzで200%繰り返し加振させた際の、エラストマー組成物にかかる応力と、応力増加期の歪み、応力減少期の歪みを測定しこれより履歴曲線を得て面積比により算出する。詳しくは後述する。
これは、エラストマー組成物に働いた応力に対する、エラストマー組成物の、変形、発熱等によるエネルギー損失(ロス)の比に相当する。
【0028】
Heq(20℃、200%)が上記範囲であれば、地震等により建築物に大きな変形が加わった場合、エラストマー組成物によるエネルギーロスが十分に大きく、減衰性が大きくなり、振動吸収性が高く制振効果に優れる。また、振動吸収用構造物に該エラストマー組成物を用いれば、大きな力が加わっても振動エネルギーを熱エネルギーに変換する優れた減衰性を持つため梁部等への応力の集中を避けることができる。
上記Heq(20℃、200%)は、上記範囲であればよいが、振動吸収性、制振効果をより高めるため、一方、0.90超であると材料の発熱が過度に大きくなるため、好ましくは0.40〜0.90、特に好ましくは0.40〜0.70である。
【0029】
上記(1)〜(4)の条件は、相互にトレードオフすることなく、これらの条件を満たすことにより、本発明の第1態様のエラストマー組成物は、温度依存性および歪み依存性が小さく、温度および振動に依存しない低剛性と共に、高減衰性を有し、かつ、該低剛性と該高減衰性とを高い水準でバランスよく両立し安定した制振効果を発揮する。
また、本発明の第1態様のエラストマー組成物を、振動吸収用構造物に用いると、振動吸収用構造物に力が加わっても、温度および振動に依存することなく、梁部等に応力が集中せず、該梁部等が座屈しない。
すなわち、本発明の第1態様のエラストマー組成物は、四季を通じて、風等による微震から地震等による強震に至るまで安定した制振効果を発揮する、振動吸収用構造物等の梁部等に応力が集中しない、該構造物に用いることができる建築用振動減衰エラストマー組成物である。
【0030】
本発明の第2態様は、上記(1)〜(4)の条件の他に、さらに、2軸せん断試験機による、0.5Hz、ラップシェアせん断試験における下記(5)および(6)の条件を満たす、金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、建築用振動減衰エラストマー組成物である。
(5)30℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqに対する、10℃、20℃および40℃での200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、0.70〜1.60
(6)20℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqに対する、20℃、50%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、0.60〜1.30
【0031】
条件(5)の2軸せん断試験機による等価減衰定数Heqの変動比は、各温度における減衰(エネルギー損失)の温度依存性を表すものであり、この値が1に近づくほど減衰性の温度依存性に優れることを示す。この変動比が上記範囲内であれば、各温度における減衰(エネルギー損失)の差異が小さく、エラストマー組成物が低温から高温まで安定した振動吸収性、すなわち四季を通じて安定した振動吸収性を有し、制振効果に優れる。また、振動吸収用構造物に該エラストマー組成物を用いれば、大きな力が加わっても温度によらず、優れた減衰性を持つため梁部等への応力の集中を避けることができる。
上記等価減衰定数Heqの変動比は、上記範囲であればよいが、温度依存性が小さく、四季を通じてより安定した振動吸収性、制振効果を有する点で、好ましくは0.75〜1.55、特に好ましくは0.80〜1.50である。
【0032】
等価減衰定数Heqの変動比の表示を「Heq(X℃、200%)/Heq(30℃、200%)」とする。なお、建築分野においては、特に10〜40℃の温度範囲での減衰性の温度依存性が小さいことが求められるため、Xは10、20または40である。
条件(5−1)Heq(10℃、200%)/Heq(30℃、200%)および条件(5−2)Heq(20℃、200%)/Heq(30℃、200%)は低温時における減衰性の温度依存性を表し、条件(5−3)Heq(40℃、200%)/Heq(30℃、200%)は高温時における減衰性の温度依存性を表す。
条件(5−1)Heq(10℃、200%)/Heq(30℃、200%)は1.10〜1.60であり、好ましくは1.10〜1.55であり、特に好ましくは1.20〜1.50である。条件(5−2)Heq(20℃、200%)/Heq(30℃、200%)は1.00〜1.45であり、好ましくは1.00〜1.40であり、特に好ましくは1.00〜1.35である。条件(5−3)Heq(40℃、200%)/Heq(30℃、200%)は0.70〜1.00であり、好ましくは0.75〜1.00であり、特に好ましくは0.80〜1.00である。
【0033】
本発明においては、上記条件(5)を満たせば後述する効果を有するが、上記条件(5−1)〜条件(5−3)を満たすのがより好ましい。
条件(5−1)または条件(5−2)で低温時における減衰性の温度依存性、条件(5−3)で高温時における温度依存性を評価することができる。すなわち、条件(5)は、条件(5−1)および条件(5−3)、または、条件(5−2)および条件(5−3)評価するのが好ましい。一般的に減衰性は温度が低くなると大きくなるため、より低温での依存性が判断できる条件(5−1)および条件(5−3)が特に好ましい。
【0034】
本発明では、条件(3)においてHeqを20℃で規定しているのに対し、条件(5)では30℃でのHeqを基準にしているのは、条件(1)と同様であり、低温時の変動比に関する条件((5−1)および(5−2))を多くした方が好ましいと判断したものである。
【0035】
(6)は2軸せん断試験機による、20℃、0.5Hz、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heq(20℃、200%)に対する、20℃、0.5Hz、50%せん断歪み時の等価減衰定数Heq(20℃、50%)(以下「Heq(20℃、50%)/Heq(20℃、200%)」とする。)が、0.60〜1.30である。
上記Heq(20℃、50%)/Heq(20℃、200%)は、エラストマー組成物の等価減衰定数の歪み依存性を表し、この値が1に近づくほど剛性の歪み依存性に優れることを示す。このHeq(20℃、50%)/Heq(20℃、200%)が上記範囲であれば、エラストマー組成物の減衰性(エネルギー損失)の歪み依存性が低く、地震による強震だけでなく、風等による微震に対しても、減衰性が高く、安定した制振効果を発揮する。また、振動吸収用構造物に該エラストマー組成物を用いれば、振動の大きさによらず、優れた減衰性を持つため梁部等への応力の集中を避けることができる。
上記Heq(20℃、50%)/Heq(20℃、200%)は、上記範囲であればよいが、風等による微震から地震による強震に至るまでより安定した制振効果を発揮する点で、好ましくは0.65〜1.00、特に好ましくは0.70〜1.00である。
【0036】
上記(5)および(6)の条件をさらに満たすことにより、本発明の第2態様のエラストマー組成物は、温度依存性および歪み依存性が小さく、温度および振動に依存しない低剛性と共に、温度依存性および歪み依存性が小さく、温度および振動に依存しない高減衰性を有し、かつ、該低剛性と該高減衰性とを高い水準でバランスよく両立し、より安定した制振効果を発揮する。
なお、上記(1)〜(6)の条件は、相互にトレードオフすることない。
また、本発明の第2態様のエラストマー組成物を、振動吸収用構造物に用いると、振動吸収用構造物に力が加わっても、温度および振動の強さに依存することなく、梁部等に応力が集中せず、該梁部等が座屈しない。
すなわち、本発明の第2態様のエラストマー組成物は、四季を通じて、風等による微震から地震等による強震に至るまで、より安定した制振効果を発揮する、振動吸収用構造物等の梁部等に応力が集中しない、該構造物に用いることができる建築用振動減衰エラストマー組成物である。
【0037】
2軸せん断試験機による、0.5Hz、ラップシェアせん断試験における、本発明で規定する各パラメータは、通常用いられる方法(例えば、上記SRIS 3501等)で求めることができる。
【0038】
本発明の第1および第2態様のエラストマー組成物は、金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物(建築用制振デバイスおよび建築用振動吸収デバイスを含む)、例えば、建築用ダンパー、ブレースダンパー、建築用アイソレーター等の制振材料として好適に用いられる。
本発明の建築用振動減衰エラストマー組成物が用いられる建築用ダンパーは、そのせん断変形時のエネルギーロスをダンピング効果とし良好に利用し得る形状であればよく、形状は特に限定されない。好ましくは、本発明の建築用振動減衰エラストマー組成物を長尺のシート状にし、鋼板等の金属板と多層に貼り合わせて構成する。本発明の建築用ダンパーは好ましくは、重力方向に対し斜方向となるよう設置され、例えば建築物の柱と梁とに張設される。
本発明において建築用アイソレータは、鋼板等の金属板と、本発明の建築用振動減衰エラストマー組成物からなる粘弾性シートを交互に積層した構造を採るのが好ましく、その形状は限定されないが、円形、方形、あるいは多角形としてもよい。建築用アイソレータは、軸方向が重力方向であるよう設置されるのが好ましく、例えば、剛性建築物と基礎土台との間に設置される。
【0039】
本発明の建築用振動減衰エラストマー組成物は、温度依存性および歪み依存性が小さく、温度および振動に依存しない低剛性と共に、温度依存性および歪み依存性が小さく、温度および振動に依存しない高減衰性を有し、かつ、該低剛性と該高減衰性とを高い水準でバランスよく両立し安定した制振効果を発揮する。
そのため、本発明の建築用振動減衰エラストマー組成物を、建築用ダンパー、建築用アイソレータの粘弾性シートとして用いると、建築用ダンパー、建築用アイソレータも同様の該低剛性と該高減衰性とを有し、安定した制振効果を発揮する。
さらに、本発明のエラストマー組成物を、金属板との積層体として用いる振動吸収用構造物、例えば、ブレースダンパーや柱間に設置される制振機に使用されるゴムシートとして用いると、振動吸収用構造物の剛性を低くすることができ、振動吸収用構造物と建築物との接合部に応力が集中することを避けられる。このため、本発明のエラストマー組成物を利用した振動吸収用構造物は接合部が座屈しにくい。
【0040】
本発明の第3態様は、熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィン樹脂と、石油系樹脂またはテルペン系樹脂と、液状ポリマーとを含有するエラストマー組成物であって、
金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、上記(7)〜(11)の条件を満たす建築用振動減衰エラストマー組成物である。
以下、条件(7)〜(11)を説明する。
【0041】
条件(7)は、前記熱可塑性エラストマーが、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン(水添率100%)、ポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む)、水素添加ポリブタジエン(水素添加1,2−ポリブタジエンを含む、水添率100%)およびポリイソブチレンからなる群より選択される1種以上のブロック体と、ポリスチレンブロックとの共重合体;または;該共重合体の混合物であり、かつ、前記熱可塑性エラストマーのガラス転移温度(Tg)が−65〜−35℃、数平均分子量が50000〜500000、スチレン含有量が40質量%以下である。
【0042】
熱可塑性エラストマーを構成する、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエンの水添率は100%である。水添率100%であると、建築用振動減衰エラストマー組成物にした時の耐熱老化性、耐候性に優れる。
本発明においては、ポリブタジエンは、1,2−ポリブタジエンを含み、1,4−ポリブタジエンおよび/または1,2−ポリブタジエンを意味する。また、同様に水素添加ポリブタジエンは、水素添加1,2−ポリブタジエンおよびポリエチレンを含み、水素添加1,4−ポリブタジエン、水素添加1,2−ポリブタジエンおよびポリエチレンからなる群より選択される1種以上を意味する。
【0043】
ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン、ポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む)、水素添加ポリブタジエン(水素添加1,2−ポリブタジエンを含む)およびポリイソブチレンからなる群より選択される1種以上のブロック体と、ポリスチレンブロックとの共重合体は、一般にスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)といわれる。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエンブロック共重合体(ポリスチレン−ポリエチレンブロック共重合体を含む)、ポリスチレン−ポリイソブチレンブロック共重合体、ポリスチレン−水素添加ポリイソプレンブロック共重合体、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−水素添加ポリイソプレンブロック共重合体、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体(水素添加SBS)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SIS)、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体(SBS)、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−水素添加ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(ポリスチレン−(ポリエチレン−ポリプロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体(SEPS)を含む)、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリイソプレン−ポリスチレン共重合体等を挙げることができる。
【0044】
上記例示した共重合体の構成ポリマーであるポリブタジエン、水素添加ポリブタジエンは上記したように構造の異なるポリマー(例えば1,2−および1,4−ポリブタジエン)を含むため、上記例示した共重合体も同様にこのような構造の異なるポリマーを含んだものとなる。
具体的には、例えば、ポリスチレン−ポリエチレン−水素添加ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合(SEEPS)、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−水素添加1,2−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体(SEBS)等を挙げることができる。
また、スチレン系熱可塑性エラストマーを構成する上記ポリマーの結合様式は、特に制限されない。例えば、ポリブタジエンの場合には、1,2−ポリブタジエンまたは1,4−ポリブタジエンが規則的に結合してブロック体を形成していてもよく、1,2−ポリブタジエンと1,4−ポリブタジエンがランダムに結合してブロック体を形成していてもよい。
【0045】
これらのなかでも、加工性、金属との粘着性、他の配合剤との相溶性、強度に優れる点で、ポリスチレン−水素添加ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SEPS)が好ましい。これらの共重合体は1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
熱可塑性エラストマーを用いることにより、エラストマー組成物としたときに、加工性および金属との粘着性がよく、後述する他の配合剤との相溶性に優れる。
特に、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることにより、流動性を確保しつつ、スチレンブロックが擬似架橋点として働くため、エラストマー組成物の減衰性が大きくなり、破断特性にも優れる。
【0046】
また、該スチレン系熱可塑性エラストマーは、そのガラス転移温度(Tg)が−65〜−35℃、数平均分子量が50000〜500000、スチレン含有量が40質量%以下である。
スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることにより、上記の効果を有するが、その物性を限定することにより、さらに以下の効果を有する。
Tgが上記範囲内であれば、エラストマー組成物としたときの加工性に優れ、好ましくは−60〜−40℃である。
数平均分子量が上記範囲内であれば、熱可塑性エラストマーの粘性が低く、エラストマー組成物としたときの加工性に優れ、好ましくは50000〜300000であり、特に好ましくは70000〜200000である。
【0047】
スチレン含有量が上記範囲であれば、ハードセグメント部分(スチレンブロック)が少なく、他の配合剤との相溶性に優れ、好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%である。
スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量(結合スチレン量)は、JIS K6383−1995(合成ゴムSBRの試験方法)に記載の試験方法に準拠して求めることができる。
【0048】
スチレン系熱可塑性エラストマーは、通常用いられる条件でブロック体とし、2種以上のブロック体を共重合して得ることができ、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーは、通常用いられる条件でブロック体とした後必要に応じて水素化(水素添加)し、2種以上のブロック体を共重合してスチレン系熱可塑性エラストマーとしてもよく、または、各ブロック体を共重合した後、通常用いられる条件で水素化(水素添加)してスチレン系熱可塑性エラストマーとしてもよい。スチレン系熱可塑性エラストマーは、市販品を用いることもでき、例えば、クラレ社製のセプトン(登録商標)系(SEPSシリーズ、SEBS(ランダムコポリマー)シリーズ、SEEPS(ランダムコポリマー)シリーズ)等が挙げられ、より具体的には、SEPS2063(クラレ社製、スチレン量13質量%、水添率100%)等が挙げられる。
【0049】
条件(8)は、ポリオレフィン樹脂がポリプロピレンまたはポリエチレンであり、かつ、前記ポリオレフィン樹脂の数平均分子量が1000〜100000、軟化点が100〜160℃である。
ポリオレフィン樹脂に、ポリプロピレンまたはポリエチレンを用いると、上記熱可塑性エラストマーとの相溶性が向上し、エラストマー組成物としたときに、剛性の温度依存性が改善される。
ポリオレフィン樹脂は、数平均分子量および軟化点が上記範囲内であれば、エラストマー組成物としたときの加工性に優れる。数平均分子量は、好ましくは3000〜50000、特に好ましくは5000〜10000であり、軟化点は、好ましくは100〜150℃、特に好ましくは105〜145℃である。
ポリオレフィン樹脂は、通常の製造方法で製造してもよく、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、サンアタックR(アタクチックポリプロピレン、千葉ファインケミカル社製)等が挙げられる。
なお、本発明で用いる樹脂等の軟化点は、JIS K 6220−1995に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定することができる。
【0050】
条件(9)は、石油系樹脂が芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂であり、かつ、石油系樹脂の軟化点が100〜150℃;あるいは;テルペン系樹脂がジテルペンの重合体またはそのフェノール変性もしくは芳香族変性体であり、かつ、テルペン系樹脂の軟化点が100〜150℃である。
石油系樹脂を用いることにより、エラストマー組成物としたときの粘着性および高減衰性能を発現できる。
石油系樹脂は、芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂であり、例えば、C5 系石油樹脂(脂肪族系石油樹脂)、C9 系石油樹脂(芳香族系石油樹脂)、C5 C9 共重合石油樹脂が挙げられ、減衰性と剛性の温度依存性とのバランスが良好となる点でC5 C9 共重合石油樹脂が好ましい。
該石油樹脂の軟化点が上記範囲内であれば、エラストマー組成物としたときの加工性に優れる。軟化点は、好ましくは110〜150℃、特に好ましくは115〜145℃である。
該石油樹脂は、市販品を用いることができ、例えば、クイントン1325(ジシクロペンタジエン−シクロペンタジエン共重合物、日本ゼオン社製)、ハイレジン♯120(C5 系脂肪族不飽和炭化水素とC9 系芳香族不飽和炭化水素の共重合体、東邦化学工業社製)等が挙げられる。
【0051】
本発明の組成物では、石油系樹脂の替わりに、同様の効果が得られるテルペン系樹脂を用いることもでき、テルペン系樹脂としてジテルペンの重合体またはそのフェノール変性もしくは芳香族変性体が挙げられ、減衰性と剛性の温度依存性とのバランスが良好となる点で芳香族変成テルペン樹脂が好ましい。
また、これらの重合体を用いることにより、エラストマー組成物としたときの粘着性にも優れる。
該重合体の軟化点が上記範囲内であれば、エラストマー組成物としたときの加工性に優れる。軟化点は、好ましくは110〜150℃、特に好ましくは115〜145℃である。
これらの重合体は、市販品を用いることもでき、例えば、YSレジン−TO−125(ヤスハラケミカル社製、芳香族変成テルペン)等が挙げられる。
【0052】
条件(10)は、前記液状ポリマーが、ポリイソプレン;ポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む);ポリイソブチレン;水素添加ポリイソプレン(水添率80%以上、ヨウ素価60g/100g以下);ポリイソプレンとポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む)の共重合体;ポリイソプレンとポリスチレンの共重合体;または;水素添加ポリイソプレン(水添率80%以上、ヨウ素価60g/100g以下)とポリスチレンの共重合体であり、かつ、前記液状ポリマーの数平均分子量が50000以下である。
該液状ポリマーは、スチレン系熱可塑性エラストマーのソフトセグメント部との相溶性に優れているため、液状ポリマーを用いることにより、エラストマー組成物としたときに可塑剤として機能する点で優れる。
数平均分子量が上記範囲内であれば、エラストマー組成物としたときの加工性に優れ、好ましくは5000〜40000、特に好ましくは10000〜35000である。
これらの液状ポリマーは、市販品を用いることもでき、例えば、クラプレンLIR各種(クラレ社製)、日石HV−100(日本石油化学社製、ポリイソブチレン)等が挙げられる。
【0053】
ヨウ素価は、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエン等の水素添加ジエン系ポリマー中に残留しているジエン成分に由来する二重結合量の目安(不飽和度)として用いられ、該水素添加ポリイソプレン等100gに吸収されるヨウ素のグラム数である。また、不飽和度として水素化率(水添率)も用いられ、ヨウ素価と水添率は一般に相関関係を有する。ヨウ素価は、好ましくは60g/100g以下、特に好ましくは40g/100g以下である。
水添率は、好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上である。
ヨウ素価および水添率が、上記範囲であれば、熱可塑性エラストマーとの相溶性がよく、かつ、耐熱性と耐候性に優れた特性を発揮することができる。
【0054】
条件(11)は、エラストマー組成物における、熱可塑性エラストマーの含量が10〜60質量%、ポリオレフィンの含量が20〜50質量%、石油系樹脂またはテルペン系樹脂の含量が10〜30質量%および液状ポリマーの含量が10〜40質量%である。
上記含量で配合したエラストマー組成物は、各成分のバランスがよく、温度および振動に依存しない剛性と、温度および振動に依存しない減衰性とを高い水準でバランスよく両立し安定した制振効果を発揮することができる。また、該特性を有するため、振動吸収用構造物に該エラストマー組成物を用いれば、温度の高低および振動の強さに依存することなく、梁部等に応力が集中せず、該梁部等が座屈しない。
【0055】
さらに、上記エラストマー組成物は、従来の高減衰ゴムよりも減衰性が大きく低剛性であり、かつ、従来のゴムアスファルトよりも剛性の温度依存性が小さいため、振動吸収用構造物に好適である。
さらにまた、該エラストマー組成物はホットメルト型であり、該組成物を用いれば振動吸収用構造物を容易に製造できる。
すなわち、本発明の第3態様のエラストマー組成物は、四季を通じて、風等による微震から地震等による強震に至るまで安定した制振効果を発揮する、振動吸収用構造物等の梁部等に応力が集中しない、該構造物に用いることができ、容易に製造できる建築用振動減衰エラストマー組成物である。
【0056】
本発明の第3態様のエラストマー組成物は、上記成分の他に、本発明の目的を損わない範囲で、他のポリマー、カーボンブラック、クレー等の充填剤、パラフィン系オイル等(プロセスオイル等)の軟化剤、加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤、可塑剤、加工助剤、顔料、染料、粘着付与剤、架橋剤、架橋促進剤、加硫助剤、酸化防止剤、光沢剤、難燃剤、発泡剤、発泡助剤、オゾン劣化防止剤、ブロッキング防止剤、耐候剤、耐熱剤、分散剤、相溶化剤、界面活性剤、帯電防止剤、滑剤等を配合することができる。
【0057】
本発明のエラストマー組成物には、酸化防止剤を含有するのが好ましい。酸化防止剤としては、通常使用されるものを用いることができ、例えば、サノールLS675(三共社製)等が挙げられる。
【0058】
本発明の第3態様のエラストマー組成物の製造方法としては、特に限定はなく従来公知の方法、例えば、上記条件(7)〜(10)の各成分を条件(11)の含有量で、先ずバンバリーミキサー等で混練し、ついで、混練ロール機等にて適宜添加剤を加え、混練する方法が挙げられる。
該エラストマー組成物の用途、および、該エラストマー組成物を用いた振動吸収用構造物の特性は、第1および第2態様で述べたのと同様である。
【0059】
本発明の第4態様のエラストマー組成物は、熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィン樹脂と、石油系樹脂またはテルペン系樹脂と、液状ポリマーとを含有するエラストマー組成物であって、金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、上記(7)〜(11)の条件を満たし、かつ、上記条件(1)〜(4)または(1)〜(6)の条件を満たす熱可塑性エラストマー組成物である。
上記条件(7)〜(10)の成分を条件(11)の含有率で含有するエラストマー組成物であれば、0.5Hz、ラップシェアせん断試験における上記(1)〜(6)の条件を満たし、本発明の効果を奏する。
該エラストマー組成物の用途、および、該エラストマー組成物を用いた振動吸収用構造物の特性は、第1〜3態様で述べたのと同様である。
【0060】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これに限定されない。
【0061】
<実施例1〜4および比較例1>
下記第1表に示す配合(質量%)で混合し、組成物を調製した。得られた組成物について、下記の方法により下記諸物性について測定した。結果を第2表に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
<ラップシェアせん断試験>
2枚の鋼板の間に、得られた各組成物を挿入した。ついで、該組成物を溶融温度以上に加熱して溶融し、この組成物(大きさ25mm×25mm、厚み4.8mm)を上記鋼板内面に接着させ、評価用試料を作製した。そして、この評価用試料について、加振機(サギノミヤ社製)、入力信号発振機、出力信号処理機を用いて、所定の条件で測定した。
【0064】
<(2)等価せん断弾性係数Geq>
得られた各エラストマー組成物を用いて、上記試験法で2軸剪断試験機による0.5Hz、20℃、200%歪み時のせん断弾性係数Geq(20℃、200%)を測定した。
温度は、エラストマー組成物の温度(試料温度)であり、試料温度を調整する方法は、試験機に装備された恒温槽による。すなわち、試料中への熱電対を埋め込んだ状態で試験体をセットし、試料温度をモニタしながら、設定温度に達した時点で試験を開始した。また、本発明では、エラストマー組成物の厚さ(試料厚さ)を「t=5mm」として測定した。
<(1)等価せん断弾性係数の変動比>
上記(2)と同様にして、10、20、30および40℃における等価せん断弾性係数を測定し、30℃における等価せん断弾性係数に対する、各温度における等価せん断弾性係数を求めた。
<(4)等価せん断弾性係数の歪み依存性>
上記(2)と同様にして、50%歪み時における等価せん断弾性係数を測定し、200%歪み時における等価せん断弾性係数に対する、50%歪み時における等価せん断弾性係数Geq(20℃、50%)/Geq(30℃、200%)を求めた。
【0065】
<(3)等価減衰定数Heq>
図1を参照して説明する。図1は、応力−歪み履歴曲線を示す図である。
20℃、0.5Hzで、繰り返し加振(20%、50%、100%、200%、300%および400%)させた際の、エラストマー組成物にかかる応力と、応力増加期の歪み、応力減少期の歪みを測定しこれより履歴曲線を得た。
【0066】
履歴曲線に囲まれた面積ΔWを算出した。
履歴曲線の最大応力値(Qmax )を与える点A(Xmax ,Qmax )から下ろした垂線と履歴曲線の最小応力値(Qmin )を与える点Bから歪みの大きさを与える軸と平行な直線との交点を点Cとする。
履歴曲線の最大応力値(A点)と最小応力値(B点)を結んだ直線ABと、履歴曲線の最大応力値を与える点Aから下ろした垂線ACと履歴曲線の最小応力値を与える点Bから歪みの大きさを与える軸と平行な直線BCとで囲まれた三角形ABCの面積Wを算出した。
等価減衰定数Heq(20℃、200%)は、下記式[1]により求めた。
【数1】
【0067】
<(5)等価減衰定数の変動比>
上記(3)と同様にして、10、20、30および40℃における等価減衰定数を求め、30℃における等価減衰定数に対する、各温度における等価減衰定数を求めた。
<(6)等価減衰定数の歪み依存性>
上記(3)と同様にして、50%歪み時における等価減衰定数を算出し、200%歪み時における等価減衰定数に対する、50%歪み時における等価減衰定数Heq(20℃、50%)/Heq(20℃、200%)を求めた。
【0068】
【表2】
【0069】
実施例1〜4の組成物は、すべての条件((1)〜(6))を満たしており、温度および振動に依存しない低剛性と、温度および振動に依存しない高減衰性とを高い水準でバランスよく両立し安定した制振効果を発揮する建築用振動減衰エラストマー組成物である。また、実施例1〜4の組成物を振動吸収用構造物に用いると、振動吸収用構造物に力が加わっても、温度の高低および振動の強さに依存することなく、梁部等に応力が集中せず、該梁部等が座屈しない。
【0070】
これに対し、比較例1は、従来の高減衰エラストマー組成物を用いた測定結果であり、条件(2)Geq(20℃、200%)および条件(3)Heq(20℃、200%)が本発明の範囲外であって、剛性が高く、特に、減衰性が小さく制振効果が得られない。
【0071】
<実施例5、6および比較例2、3>
下記第3表に示す配合(質量%)で混合し、エラストマー組成物を調製した。得られたエラストマー組成物について、上記の方法により上記諸物性について測定した(2軸剪断試験機による0.5Hz、100%歪み時におけるラップシェア試験を行った)。なお、0.5Hz、100%歪み時における各パラメータと、0.5Hz、200%歪み時における各パラメータとの対応は、以下に示すとおりである。
Geq(X、100%)/Geq(30℃、100%)は、上記条件(1)の範囲内であるが、Xによっては高い値をとる傾向がある。Geq(20℃、100%)は、Geq(20℃、200%)より高い値をとる傾向があるが上記条件(2)の範囲内である。Heq(20℃、100%)は、上記条件(3)の範囲内である。Geq(20℃、50%)/Geq(20℃、100%)は、上記条件(4)より小さい値をとる。Heq(X、100%)/Heq(30℃、100%)は、上記条件(5)の範囲内である。Heq(20℃、50%)/Heq(20℃、100%)は、上記条件(6)の範囲内である。
結果を第4表に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
また、各エラストマー組成物の評価として、破断強度(TB )と破断伸び(EB )を、JIS K6386−1995(防振ゴム材料)、JIS K6251−1993(加硫ゴムの引張り試験方法)に準拠して測定した。結果を第4表に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
実施例5および6は、本発明の第3態様の条件(7)〜(11)を満たしており、また、上記特性(1)〜(6)も満たす。
比較例2は、ポリオレフィン樹脂の含有量が少なく、等価せん断弾性係数Geqを満たさず、また破断強度が非常に弱い。比較例3は、ポリオレフィン樹脂の含有量が少なく、また、テルペン系樹脂の含有量が多く、等価せん断弾性係数の変動比が大きい。したがって、低温時において、剛性が高く制振効果が期待できず、該エラストマー組成物を含む振動吸収用構造物における梁部等への応力の集中を避けることができない。
【0076】
実施例および比較例において、エラストマー組成物中の配合成分は、以下のものを用いた。
NR:天然ゴム、STR20、TEC BEE HANG社製
BR:ポリブタジエンゴム、日本ゼオン社製
NSX:ポリノルボルネン、NSX15AR、日本ゼオン社製、60質量%油展品
SIS:クインタック3421、日本ゼオン社製
SEPS:セプトンSEPS2063、クラレ社製
ポリオレフィン:サンアタックR、千葉ファインケミカル社製
テルペン樹脂:YS−TO−125、ヤスハラケミカル社製
L−IR:液状IR、LIR−290、クラレ社製、数平均分子量20000
PB:ポリイソブチレン、日石HV−100、日本石油化学社製
老化防止剤:ノクラック6C、大内新興化学社
CB:カーボンブラック、SAF級、東海カーボン社製
亜鉛華:亜鉛華3号、正同化学社製
硫黄:粉末イオウ、軽井沢精練所製
ステアリン酸:LUNAC YA、花王社製
老化防止剤:オゾノン6C、精工化学社製
酸化防止剤:サノールLS765、三共社製
石油樹脂:ハイレジン♯120、東邦化学工業社製
オイル:アロマオイル、出光興産社製
【0077】
【発明の効果】
本発明により、温度および振動に依存しない剛性と、減衰性とを高い水準でバランスよく両立し安定した制振効果を有し、かつ、振動吸収用構造物を容易に製造できる、建築用振動減衰エラストマー組成物を提供できる。
また、温度および振動に依存しない剛性と、温度および振動に依存しない減衰性とを高い水準でバランスよく両立しより安定した制振効果を有し、かつ、振動吸収用構造物を容易に製造できる、建築用振動減衰エラストマー組成物を提供できる。
【0078】
さらに、振動吸収用構造物に用いられる振動減衰材料として使用しても、振動吸収用構造物の建築物への取付け部(梁等)に応力が集中しない建築用振動減衰エラストマー組成物を提供できる。
さらにまた、従来の高減衰ゴムおよびゴムアスファルトよりも減衰性が大きく、かつ、従来の高減衰ゴムよりも剛性の温度依存性が小さい建築用振動減衰エラストマー組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、応力−歪み履歴曲線を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動吸収用構造物(建築用制振デバイスおよび建築用振動吸収デバイスを含む)に用いられる建築用振動減衰エラストマー組成物に関し、詳しくは、四季を通じて、微震から強震に至るまで安定した制振効果を発揮する、振動吸収用構造物等の梁部等に応力が集中しない、該構造物に用いられる建築用振動減衰エラストマー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築分野における制振装置、免震装置等の振動吸収用構造物には、地震による震動のような大きな揺れを減衰させるばかりでなく、風等による震動のような小さな揺れに対しても高い減衰性が要求されるが、振動吸収用構造物に用いられる振動減衰ゴム材料は、歪みに対する剛性の依存性が大きく、特に低振幅時に剛性が高くなるという問題がある。
【0003】
この問題を解決するため、低分子量ポリマーとポリノルボルネンゴムを含有し、等価減衰定数、動的せん断弾性係数および複素弾性率を特定の範囲に限定した建築物振動減衰用粘弾性体が、本出願人により特開2001−200103号公報に記載されている。また、ヒステリシスカーブ内の面積、モジュラスおよび複素弾性率を特定の範囲に限定した、金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられるゴム組成物が、本出願人により特開2001−200104号公報に記載されている。
【0004】
これらの粘弾性体およびエラストマー組成物は、上記問題を解決し、温度および振動に依存せず、剛性と減衰性とをバランスよく両立しているものの、昨今の技術革新、製造工程の簡素化、コストダウン等により、より高性能でより容易に振動吸収用構造物を製造できる振動減衰材料が望まれている。
【0005】
また、振動減衰材料として、ゴムアスファルト材料、ホットメルト材料等も利用されているが、これらの材料は、成形性が良好で減衰性が大きいものの、弾性率(剛性)の温度依存性が大きいため、外気温度により制振効果が大幅に劣るという問題がある。
【0006】
一方、建築用振動吸収構造物は、例えば、建築物の上下階の柱と梁を結ぶ筋交い(ブレース)や建築物の上階の柱と下階の柱の間に挿入され、低、中、高層建築物に利用されている。このような建築用振動吸収構造物として、近年、ゴム等の振動減衰材料と、鋼板等の金属板とを交互に積層した積層体を組み込んだ振動吸収用構造物、例えば、ブレースダンパー(粘弾性ダンパー)が検討されている。
【0007】
しかし、振動吸収用構造物に用いられる振動減衰材料として、従来の高減衰ゴム材料を使用すると、ゴムのせん断弾性率が高いため、例えばブレースダンパーの場合、ブレースダンパーの剛性が高くなり、地震による振動のように大きな振動エネルギーが建築物に入ると、ブレースダンパーの建築物への取付け部(梁部等)に応力が集中して取付け部が座屈しやすいという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、温度および振動に依存しない剛性と、減衰性とを高い水準でバランスよく両立し安定した制振効果を有し、かつ、振動吸収用構造物を容易に製造できる、建築用振動減衰エラストマー組成物を提供することを目的とする。
また、温度および振動に依存しない剛性と、温度および振動に依存しない減衰性とを高い水準でバランスよく両立しより安定した制振効果を有し、かつ、振動吸収用構造物を容易に製造できる、建築用振動減衰エラストマー組成物を提供することを目的とする。
さらに、振動吸収用構造物に用いられる振動減衰材料として使用しても、振動吸収用構造物の建築物への取付け部(梁部等)に応力が集中しない建築用振動減衰エラストマー組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討を進めた結果、等価せん断弾性係数、等価減衰定数等を特定の範囲に限定することにより、さらには、等価せん断弾性係数の温度依存性および歪み依存性を特定の範囲に限定することにより、ホットメルト系の組成物においても、温度の高低および振動の強さに依存することなく、剛性と減衰性とを高い水準でバランスよく両立し安定した制振効果を発揮できることを知見し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、I)金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、0.5Hz、ラップシェアせん断試験における下記(1)〜(4)の条件を満たす建築用振動減衰エラストマー組成物を提供する。
(1)30℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、10℃、20℃および40℃での200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geq(以下「等価せん断弾性係数Geqの変動比」という場合がある。)が、0.60〜3.50
(2)20℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、0.04〜0.19MPa
(3)20℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、0.30以上
(4)20℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、20℃、50%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、1.30〜2.60
【0011】
本発明は、II)さらに、0.5Hz、ラップシェアせん断試験における下記(5)および(6)の条件を満たす、I)に記載のエラストマー組成物を提供する。
(5)30℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqに対する、10℃、20℃および40℃での200%せん断歪み時の等価減衰定数Heq(以下「等価減衰定数Heqの変動比」という場合がある。)が、0.70〜1.60
(6)20℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqに対する、20℃、50%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、0.60〜1.30
【0012】
本発明は、III)前記条件(1)が、下記条件(1−1)および(1−3)、または、(1−2)および(1−3)である、I)またはII)に記載のエラストマー組成物を提供する。
(1−1)30℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、10℃での200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、1.40〜3.50、
(1−2)30℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、20℃での200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、1.00〜1.40、
(1−3)30℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、40℃での200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、0.60〜1.00。
【0013】
本発明は、IV)前記条件(5)が、下記条件(5−1)および(5−3)、または、(5−2)および(5−3)である、II)またはIII)に記載のエラストマー組成物を提供する。
(5−1)30℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqに対する、10℃での200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、1.10〜1.60、
(5−2)30℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqに対する、20℃での200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、1.00〜1.45、
(5−3)30℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqに対する、40℃での200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、0.70〜1.00。
【0014】
また、本発明者等は、熱可塑性エラストマー等の組成物に含有する成分の種類、性質、特徴等を限定し、配合量を特定することにより、温度の高低および振動の強さに依存することなく、該組成物が剛性と減衰性とを高い水準でバランスよく両立し安定した制振効果を発揮できることを知見し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明は、V)熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィン樹脂と、石油系樹脂またはテルペン系樹脂と、液状ポリマーとを含有するエラストマー組成物であって、
金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、下記(7)〜(11)の条件を満たす建築用振動減衰エラストマー組成物を提供する。
(7)前記熱可塑性エラストマーが、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン(水添率100%)、ポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む)、水素添加ポリブタジエン(水素添加1,2−ポリブタジエンを含む、水添率100%)およびポリイソブチレンからなる群より選択される1種以上のブロック体と、ポリスチレンブロックとの共重合体;または;該共重合体の混合物であり、かつ、前記熱可塑性エラストマーのガラス転移温度(Tg)が−65〜−35℃、数平均分子量が50000〜500000、スチレン含有量が40質量%以下、
(8)前記ポリオレフィン樹脂がポリプロピレンまたはポリエチレンであり、かつ、前記ポリオレフィン樹脂の数平均分子量が1000〜100000、軟化点が100〜160℃
(9)前記石油系樹脂が芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂であり、かつ、前記石油系樹脂の軟化点が100〜150℃;あるいは;前記テルペン系樹脂がジテルペンの重合体またはそのフェノール変性もしくは芳香族変性体であり、かつ、前記テルペン系樹脂の軟化点が100〜150℃
(10)前記液状ポリマーが、ポリイソプレン;ポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む);ポリイソブチレン;水素添加ポリイソプレン(水添率80%以上、ヨウ素価60g/100g以下);ポリイソプレンとポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む)の共重合体;ポリイソプレンとポリスチレンの共重合体;または;水素添加ポリイソプレン(水添率80%以上、ヨウ素価60g/100g以下)とポリスチレンの共重合体であり、かつ、前記液状ポリマーの数平均分子量が50000以下、
(11)前記エラストマー組成物における、前記熱可塑性エラストマーの含量が10〜60質量%、前記ポリオレフィン樹脂の含量が20〜50質量%、前記石油系樹脂または前記テルペン系樹脂の含量が10〜30質量%および前記液状ポリマーの含量が10〜40質量%
【0016】
さらに、本発明は、VI)熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィン樹脂と、石油系樹脂またはテルペン系樹脂と、液状ポリマーとを含有するエラストマー組成物であって、
金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、下記(7)〜(11)の条件を満たす、I)〜IV)のいずれかに記載のエラストマー組成物を提供する。
(7)前記熱可塑性エラストマーが、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン(水添率100%)、ポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む)、水素添加ポリブタジエン(水素添加1,2−ポリブタジエンを含む、水添率100%)およびポリイソブチレンからなる群より選択される1種以上のブロック体と、ポリスチレンブロックとの共重合体;または;該共重合体の混合物であり、かつ、前記熱可塑性エラストマーのガラス転移温度(Tg)が−65〜−35℃、数平均分子量が50000〜500000、スチレン含有量が40質量%以下、
(8)前記ポリオレフィン樹脂がポリプロピレンまたはポリエチレンであり、かつ、前記ポリオレフィン樹脂の数平均分子量が1000〜100000、軟化点が100〜160℃
(9)前記石油系樹脂が芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂であり、かつ、前記石油系樹脂の軟化点が100〜150℃;あるいは;前記テルペン系樹脂がジテルペンの重合体またはそのフェノール変性もしくは芳香族変性体であり、かつ、前記テルペン系樹脂の軟化点が100〜150℃
(10)前記液状ポリマーが、ポリイソプレン;ポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む);ポリイソブチレン;水素添加ポリイソプレン(水添率80%以上、ヨウ素価60g/100g以下);ポリイソプレンとポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む)の共重合体;ポリイソプレンとポリスチレンの共重合体;または;水素添加ポリイソプレン(水添率80%以上、ヨウ素価60g/100g以下)とポリスチレンの共重合体であり、かつ、前記液状ポリマーの数平均分子量が50000以下、
(11)前記エラストマー組成物における、前記熱可塑性エラストマーの含量が10〜60質量%、前記ポリオレフィン樹脂の含量が20〜50質量%、前記石油系樹脂または前記テルペン系樹脂の含量が10〜30質量%および前記液状ポリマーの含量が10〜40質量%
【0017】
また、本発明は、振動吸収用構造物に用いた場合に、振動吸収用構造物に大きな力(変形)が加わっても、振動吸収用構造物の建築物への取付け部(以下「梁部等」という。)に応力が集中しない、前記I)〜VI)に記載の建築用振動減衰エラストマー組成物を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、2軸せん断試験機によるラップシェアせん断試験により建築用振動減衰エラストマー組成物の物性を規定しているのは、該試験はJISに規定されていないが、日本ゴム協会標準規格(SRIS 3501(防振ゴム用ゴム材料の動的性質試験法))に定められており、制振材等の分野において、制振材組成物等の試験に通常用いられる試験方法であって、地震波を受けたときに近いせん断歪みを材料に与えて評価できるという利点を有するためである。
なお、本発明で用いる各種パラメータは制振材の評価に通常用いられるものである。
また、本発明において、該ラップシェア試験せん断試験の振動数を0.5Hzとしているのは、地震波の固有振動数をシミュレートできるためである。
【0019】
以下、X℃、せん断歪みY%の条件下における等価せん断弾性係数Geqおよび等価減衰定数Heqを、それぞれ「Geq(X℃、Y%)」および「Heq(X℃、Y%)」と表す。例えば、20℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数GeqをGeq(20℃、200%)と表示する。
本発明でいう「剛性」は、主にせん断方向の剛性であり、「ねじり剛性」ともいう。
【0020】
本発明の第1態様は、金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、2軸せん断試験機による0.5Hz、ラップシェアせん断試験における下記(1)〜(4)の条件を満たす建築用振動減衰エラストマー組成物である。
(1)30℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、10℃、20℃および40℃での200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、0.60〜3.50
(2)20℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、0.04〜0.19MPa
(3)20℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、0.30以上
(4)20℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、20℃、50%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、1.30〜2.60
【0021】
まず、条件(2)の2軸せん断試験機による0.5Hz、ラップシェアせん断試験における20℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geq(20℃、200%)について説明する。
該Geq(20℃、200%)を0.04〜0.19MPaとすることにより、エラストマー組成物の剛性(弾性)を下げることができ減衰性も高くなり制振効果に優れる。また、振動吸収用構造物に剛性が低い該エラストマー組成物を用いれば、大きな力(以下「大変形」という。)が加わってもせん断変形に対して柔らかい物質として振るまうため梁部等への応力の集中を避けることができる。Geq(20℃、200%)は、上記範囲であればよいが、より制振効果を高める点で、好ましくは0.04〜0.17、特に好ましくは0.05〜0.15MPaである。
【0022】
条件(1)の2軸せん断試験機による等価せん断弾性係数Geqの変動比は、各温度における剛性の温度依存性を表すものであり、この値が1に近づくほど剛性の温度依存性に優れることを示す。この変動比が上記範囲内であれば、各温度における剛性の差異が小さく、エラストマー組成物が低温から高温まで安定した制振効果、すなわち四季を通じて安定した制振効果を発揮できる。また、振動吸収用構造物に剛性が低い該エラストマー組成物を用いれば、大きな力が加わっても温度によらず、せん断変形に対して柔らかい物質として振るまうため梁部等への応力の集中を避けることができる。
上記等価せん断弾性係数Geqの変動比は、上記範囲であればよいが、温度依存性が小さく、四季を通じてより安定した制振効果を発揮する点で、好ましくは0.75〜2.20、特に好ましくは0.80〜2.10である。
【0023】
以下「30℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geq(30℃、200%)に対する、X℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geq(X℃、200%)」を「Geq(X℃、200%)/Geq(30℃、200%)」とする。なお、建築分野においては、特に10〜40℃の温度範囲での剛性の温度依存性が小さいことが求められるため、Xは10、20または40である。
条件(1−1)Geq(10℃、200%)/Geq(30℃、200%)および条件(1−2)Geq(20℃、200%)/Geq(30℃、200%)は低温時における剛性の温度依存性を表し、条件(1−3)Geq(40℃、200%)/Geq(30℃、200%)は高温時における剛性の温度依存性を表す。
条件(1−1)Geq(10℃、200%)/Geq(30℃、200%)は1.40〜3.50であり、好ましくは1.40〜2.20であり、特に好ましくは1.40〜2.10である。条件(1−2)Geq(20℃、200%)/Geq(30℃、200%)は1.00〜1.40であり、好ましくは1.00〜1.35であり、特に好ましくは1.00〜1.30である。条件(1−3)Geq(40℃、200%)/Geq(30℃、200%)は0.60〜1.00であり、好ましくは0.75〜1.00であり、特に好ましくは0.80〜1.00である。
【0024】
本発明においては、上記条件(1)を満たせば後述する効果を有するが、上記条件(1−1)〜条件(1−3)を満たすのがより好ましい。
条件(1−1)または条件(1−2)で低温時における温度依存性、条件(1−3)で高温時における温度依存性を評価することができる。すなわち、条件(1)は、条件(1−1)および条件(1−3)、または、条件(1−2)および条件(1−3)で評価するのが好ましい。一般的に剛性は温度が低くなると大きくなるため、より低温での依存性が判断できる条件(1−1)および条件(1−3)が特に好ましい。
【0025】
本発明では、条件(2)においてGeqを20℃で規定しているのに対し、条件(1)では30℃でのGeqを基準にしている。これは、建築分野では剛性の低温時温度依存性がより重要となるため、低温時の変動比に関する条件((1−1)および(1−2))を多くして評価した方が好ましいと判断したものである。
【0026】
条件(4)は2軸せん断試験機による、20℃、0.5Hz、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geq(20℃、200%)に対する、20℃、0.5Hz、50%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geq(20℃、50%)(以下「Geq(20℃、50%)/Geq(20℃、200%)」とする。)が、1.30〜2.60である。
上記Geq(20℃、50%)/Geq(20℃、200%)は、エラストマー組成物の等価せん断弾性係数の歪み依存性を表し、この値が1に近づくほど剛性の歪み依存性に優れることを示す。このGeq(20℃、50%)/Geq(20℃、200%)が上記範囲であれば、エラストマー組成物の剛性の歪み依存性が小さく、地震による強震だけでなく、風等による微震(小変形)に対しても、剛性が小さくなり、小変形時における減衰効果を損なうことがなく、安定した制振効果を発揮する。また、振動吸収用構造物に剛性が低い該エラストマー組成物を用いれば、振動の大きさによらず、せん断変形に対して柔らかい物質として振るまうため梁部等への応力の集中を避けることができる。
上記Geq(20℃、50%)/Geq(20℃、200%)は、上記範囲であればよいが、風等による微震から地震による強震に至るまでより安定した制振効果を発揮できる点で、好ましくは1.30〜2.40、特に好ましくは1.30〜2.00である。
【0027】
条件(3)は、2軸せん断試験機による、20℃、0.5Hz、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heq(20℃、200%)が、0.30以上である。Heq(20℃、200%)は、20℃、0.5Hzで200%繰り返し加振させた際の、エラストマー組成物にかかる応力と、応力増加期の歪み、応力減少期の歪みを測定しこれより履歴曲線を得て面積比により算出する。詳しくは後述する。
これは、エラストマー組成物に働いた応力に対する、エラストマー組成物の、変形、発熱等によるエネルギー損失(ロス)の比に相当する。
【0028】
Heq(20℃、200%)が上記範囲であれば、地震等により建築物に大きな変形が加わった場合、エラストマー組成物によるエネルギーロスが十分に大きく、減衰性が大きくなり、振動吸収性が高く制振効果に優れる。また、振動吸収用構造物に該エラストマー組成物を用いれば、大きな力が加わっても振動エネルギーを熱エネルギーに変換する優れた減衰性を持つため梁部等への応力の集中を避けることができる。
上記Heq(20℃、200%)は、上記範囲であればよいが、振動吸収性、制振効果をより高めるため、一方、0.90超であると材料の発熱が過度に大きくなるため、好ましくは0.40〜0.90、特に好ましくは0.40〜0.70である。
【0029】
上記(1)〜(4)の条件は、相互にトレードオフすることなく、これらの条件を満たすことにより、本発明の第1態様のエラストマー組成物は、温度依存性および歪み依存性が小さく、温度および振動に依存しない低剛性と共に、高減衰性を有し、かつ、該低剛性と該高減衰性とを高い水準でバランスよく両立し安定した制振効果を発揮する。
また、本発明の第1態様のエラストマー組成物を、振動吸収用構造物に用いると、振動吸収用構造物に力が加わっても、温度および振動に依存することなく、梁部等に応力が集中せず、該梁部等が座屈しない。
すなわち、本発明の第1態様のエラストマー組成物は、四季を通じて、風等による微震から地震等による強震に至るまで安定した制振効果を発揮する、振動吸収用構造物等の梁部等に応力が集中しない、該構造物に用いることができる建築用振動減衰エラストマー組成物である。
【0030】
本発明の第2態様は、上記(1)〜(4)の条件の他に、さらに、2軸せん断試験機による、0.5Hz、ラップシェアせん断試験における下記(5)および(6)の条件を満たす、金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、建築用振動減衰エラストマー組成物である。
(5)30℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqに対する、10℃、20℃および40℃での200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、0.70〜1.60
(6)20℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqに対する、20℃、50%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、0.60〜1.30
【0031】
条件(5)の2軸せん断試験機による等価減衰定数Heqの変動比は、各温度における減衰(エネルギー損失)の温度依存性を表すものであり、この値が1に近づくほど減衰性の温度依存性に優れることを示す。この変動比が上記範囲内であれば、各温度における減衰(エネルギー損失)の差異が小さく、エラストマー組成物が低温から高温まで安定した振動吸収性、すなわち四季を通じて安定した振動吸収性を有し、制振効果に優れる。また、振動吸収用構造物に該エラストマー組成物を用いれば、大きな力が加わっても温度によらず、優れた減衰性を持つため梁部等への応力の集中を避けることができる。
上記等価減衰定数Heqの変動比は、上記範囲であればよいが、温度依存性が小さく、四季を通じてより安定した振動吸収性、制振効果を有する点で、好ましくは0.75〜1.55、特に好ましくは0.80〜1.50である。
【0032】
等価減衰定数Heqの変動比の表示を「Heq(X℃、200%)/Heq(30℃、200%)」とする。なお、建築分野においては、特に10〜40℃の温度範囲での減衰性の温度依存性が小さいことが求められるため、Xは10、20または40である。
条件(5−1)Heq(10℃、200%)/Heq(30℃、200%)および条件(5−2)Heq(20℃、200%)/Heq(30℃、200%)は低温時における減衰性の温度依存性を表し、条件(5−3)Heq(40℃、200%)/Heq(30℃、200%)は高温時における減衰性の温度依存性を表す。
条件(5−1)Heq(10℃、200%)/Heq(30℃、200%)は1.10〜1.60であり、好ましくは1.10〜1.55であり、特に好ましくは1.20〜1.50である。条件(5−2)Heq(20℃、200%)/Heq(30℃、200%)は1.00〜1.45であり、好ましくは1.00〜1.40であり、特に好ましくは1.00〜1.35である。条件(5−3)Heq(40℃、200%)/Heq(30℃、200%)は0.70〜1.00であり、好ましくは0.75〜1.00であり、特に好ましくは0.80〜1.00である。
【0033】
本発明においては、上記条件(5)を満たせば後述する効果を有するが、上記条件(5−1)〜条件(5−3)を満たすのがより好ましい。
条件(5−1)または条件(5−2)で低温時における減衰性の温度依存性、条件(5−3)で高温時における温度依存性を評価することができる。すなわち、条件(5)は、条件(5−1)および条件(5−3)、または、条件(5−2)および条件(5−3)評価するのが好ましい。一般的に減衰性は温度が低くなると大きくなるため、より低温での依存性が判断できる条件(5−1)および条件(5−3)が特に好ましい。
【0034】
本発明では、条件(3)においてHeqを20℃で規定しているのに対し、条件(5)では30℃でのHeqを基準にしているのは、条件(1)と同様であり、低温時の変動比に関する条件((5−1)および(5−2))を多くした方が好ましいと判断したものである。
【0035】
(6)は2軸せん断試験機による、20℃、0.5Hz、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heq(20℃、200%)に対する、20℃、0.5Hz、50%せん断歪み時の等価減衰定数Heq(20℃、50%)(以下「Heq(20℃、50%)/Heq(20℃、200%)」とする。)が、0.60〜1.30である。
上記Heq(20℃、50%)/Heq(20℃、200%)は、エラストマー組成物の等価減衰定数の歪み依存性を表し、この値が1に近づくほど剛性の歪み依存性に優れることを示す。このHeq(20℃、50%)/Heq(20℃、200%)が上記範囲であれば、エラストマー組成物の減衰性(エネルギー損失)の歪み依存性が低く、地震による強震だけでなく、風等による微震に対しても、減衰性が高く、安定した制振効果を発揮する。また、振動吸収用構造物に該エラストマー組成物を用いれば、振動の大きさによらず、優れた減衰性を持つため梁部等への応力の集中を避けることができる。
上記Heq(20℃、50%)/Heq(20℃、200%)は、上記範囲であればよいが、風等による微震から地震による強震に至るまでより安定した制振効果を発揮する点で、好ましくは0.65〜1.00、特に好ましくは0.70〜1.00である。
【0036】
上記(5)および(6)の条件をさらに満たすことにより、本発明の第2態様のエラストマー組成物は、温度依存性および歪み依存性が小さく、温度および振動に依存しない低剛性と共に、温度依存性および歪み依存性が小さく、温度および振動に依存しない高減衰性を有し、かつ、該低剛性と該高減衰性とを高い水準でバランスよく両立し、より安定した制振効果を発揮する。
なお、上記(1)〜(6)の条件は、相互にトレードオフすることない。
また、本発明の第2態様のエラストマー組成物を、振動吸収用構造物に用いると、振動吸収用構造物に力が加わっても、温度および振動の強さに依存することなく、梁部等に応力が集中せず、該梁部等が座屈しない。
すなわち、本発明の第2態様のエラストマー組成物は、四季を通じて、風等による微震から地震等による強震に至るまで、より安定した制振効果を発揮する、振動吸収用構造物等の梁部等に応力が集中しない、該構造物に用いることができる建築用振動減衰エラストマー組成物である。
【0037】
2軸せん断試験機による、0.5Hz、ラップシェアせん断試験における、本発明で規定する各パラメータは、通常用いられる方法(例えば、上記SRIS 3501等)で求めることができる。
【0038】
本発明の第1および第2態様のエラストマー組成物は、金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物(建築用制振デバイスおよび建築用振動吸収デバイスを含む)、例えば、建築用ダンパー、ブレースダンパー、建築用アイソレーター等の制振材料として好適に用いられる。
本発明の建築用振動減衰エラストマー組成物が用いられる建築用ダンパーは、そのせん断変形時のエネルギーロスをダンピング効果とし良好に利用し得る形状であればよく、形状は特に限定されない。好ましくは、本発明の建築用振動減衰エラストマー組成物を長尺のシート状にし、鋼板等の金属板と多層に貼り合わせて構成する。本発明の建築用ダンパーは好ましくは、重力方向に対し斜方向となるよう設置され、例えば建築物の柱と梁とに張設される。
本発明において建築用アイソレータは、鋼板等の金属板と、本発明の建築用振動減衰エラストマー組成物からなる粘弾性シートを交互に積層した構造を採るのが好ましく、その形状は限定されないが、円形、方形、あるいは多角形としてもよい。建築用アイソレータは、軸方向が重力方向であるよう設置されるのが好ましく、例えば、剛性建築物と基礎土台との間に設置される。
【0039】
本発明の建築用振動減衰エラストマー組成物は、温度依存性および歪み依存性が小さく、温度および振動に依存しない低剛性と共に、温度依存性および歪み依存性が小さく、温度および振動に依存しない高減衰性を有し、かつ、該低剛性と該高減衰性とを高い水準でバランスよく両立し安定した制振効果を発揮する。
そのため、本発明の建築用振動減衰エラストマー組成物を、建築用ダンパー、建築用アイソレータの粘弾性シートとして用いると、建築用ダンパー、建築用アイソレータも同様の該低剛性と該高減衰性とを有し、安定した制振効果を発揮する。
さらに、本発明のエラストマー組成物を、金属板との積層体として用いる振動吸収用構造物、例えば、ブレースダンパーや柱間に設置される制振機に使用されるゴムシートとして用いると、振動吸収用構造物の剛性を低くすることができ、振動吸収用構造物と建築物との接合部に応力が集中することを避けられる。このため、本発明のエラストマー組成物を利用した振動吸収用構造物は接合部が座屈しにくい。
【0040】
本発明の第3態様は、熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィン樹脂と、石油系樹脂またはテルペン系樹脂と、液状ポリマーとを含有するエラストマー組成物であって、
金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、上記(7)〜(11)の条件を満たす建築用振動減衰エラストマー組成物である。
以下、条件(7)〜(11)を説明する。
【0041】
条件(7)は、前記熱可塑性エラストマーが、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン(水添率100%)、ポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む)、水素添加ポリブタジエン(水素添加1,2−ポリブタジエンを含む、水添率100%)およびポリイソブチレンからなる群より選択される1種以上のブロック体と、ポリスチレンブロックとの共重合体;または;該共重合体の混合物であり、かつ、前記熱可塑性エラストマーのガラス転移温度(Tg)が−65〜−35℃、数平均分子量が50000〜500000、スチレン含有量が40質量%以下である。
【0042】
熱可塑性エラストマーを構成する、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエンの水添率は100%である。水添率100%であると、建築用振動減衰エラストマー組成物にした時の耐熱老化性、耐候性に優れる。
本発明においては、ポリブタジエンは、1,2−ポリブタジエンを含み、1,4−ポリブタジエンおよび/または1,2−ポリブタジエンを意味する。また、同様に水素添加ポリブタジエンは、水素添加1,2−ポリブタジエンおよびポリエチレンを含み、水素添加1,4−ポリブタジエン、水素添加1,2−ポリブタジエンおよびポリエチレンからなる群より選択される1種以上を意味する。
【0043】
ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン、ポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む)、水素添加ポリブタジエン(水素添加1,2−ポリブタジエンを含む)およびポリイソブチレンからなる群より選択される1種以上のブロック体と、ポリスチレンブロックとの共重合体は、一般にスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)といわれる。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエンブロック共重合体(ポリスチレン−ポリエチレンブロック共重合体を含む)、ポリスチレン−ポリイソブチレンブロック共重合体、ポリスチレン−水素添加ポリイソプレンブロック共重合体、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−水素添加ポリイソプレンブロック共重合体、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体(水素添加SBS)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SIS)、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体(SBS)、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−水素添加ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(ポリスチレン−(ポリエチレン−ポリプロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体(SEPS)を含む)、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリイソプレン−ポリスチレン共重合体等を挙げることができる。
【0044】
上記例示した共重合体の構成ポリマーであるポリブタジエン、水素添加ポリブタジエンは上記したように構造の異なるポリマー(例えば1,2−および1,4−ポリブタジエン)を含むため、上記例示した共重合体も同様にこのような構造の異なるポリマーを含んだものとなる。
具体的には、例えば、ポリスチレン−ポリエチレン−水素添加ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合(SEEPS)、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−水素添加1,2−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体(SEBS)等を挙げることができる。
また、スチレン系熱可塑性エラストマーを構成する上記ポリマーの結合様式は、特に制限されない。例えば、ポリブタジエンの場合には、1,2−ポリブタジエンまたは1,4−ポリブタジエンが規則的に結合してブロック体を形成していてもよく、1,2−ポリブタジエンと1,4−ポリブタジエンがランダムに結合してブロック体を形成していてもよい。
【0045】
これらのなかでも、加工性、金属との粘着性、他の配合剤との相溶性、強度に優れる点で、ポリスチレン−水素添加ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SEPS)が好ましい。これらの共重合体は1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
熱可塑性エラストマーを用いることにより、エラストマー組成物としたときに、加工性および金属との粘着性がよく、後述する他の配合剤との相溶性に優れる。
特に、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることにより、流動性を確保しつつ、スチレンブロックが擬似架橋点として働くため、エラストマー組成物の減衰性が大きくなり、破断特性にも優れる。
【0046】
また、該スチレン系熱可塑性エラストマーは、そのガラス転移温度(Tg)が−65〜−35℃、数平均分子量が50000〜500000、スチレン含有量が40質量%以下である。
スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることにより、上記の効果を有するが、その物性を限定することにより、さらに以下の効果を有する。
Tgが上記範囲内であれば、エラストマー組成物としたときの加工性に優れ、好ましくは−60〜−40℃である。
数平均分子量が上記範囲内であれば、熱可塑性エラストマーの粘性が低く、エラストマー組成物としたときの加工性に優れ、好ましくは50000〜300000であり、特に好ましくは70000〜200000である。
【0047】
スチレン含有量が上記範囲であれば、ハードセグメント部分(スチレンブロック)が少なく、他の配合剤との相溶性に優れ、好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%である。
スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量(結合スチレン量)は、JIS K6383−1995(合成ゴムSBRの試験方法)に記載の試験方法に準拠して求めることができる。
【0048】
スチレン系熱可塑性エラストマーは、通常用いられる条件でブロック体とし、2種以上のブロック体を共重合して得ることができ、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーは、通常用いられる条件でブロック体とした後必要に応じて水素化(水素添加)し、2種以上のブロック体を共重合してスチレン系熱可塑性エラストマーとしてもよく、または、各ブロック体を共重合した後、通常用いられる条件で水素化(水素添加)してスチレン系熱可塑性エラストマーとしてもよい。スチレン系熱可塑性エラストマーは、市販品を用いることもでき、例えば、クラレ社製のセプトン(登録商標)系(SEPSシリーズ、SEBS(ランダムコポリマー)シリーズ、SEEPS(ランダムコポリマー)シリーズ)等が挙げられ、より具体的には、SEPS2063(クラレ社製、スチレン量13質量%、水添率100%)等が挙げられる。
【0049】
条件(8)は、ポリオレフィン樹脂がポリプロピレンまたはポリエチレンであり、かつ、前記ポリオレフィン樹脂の数平均分子量が1000〜100000、軟化点が100〜160℃である。
ポリオレフィン樹脂に、ポリプロピレンまたはポリエチレンを用いると、上記熱可塑性エラストマーとの相溶性が向上し、エラストマー組成物としたときに、剛性の温度依存性が改善される。
ポリオレフィン樹脂は、数平均分子量および軟化点が上記範囲内であれば、エラストマー組成物としたときの加工性に優れる。数平均分子量は、好ましくは3000〜50000、特に好ましくは5000〜10000であり、軟化点は、好ましくは100〜150℃、特に好ましくは105〜145℃である。
ポリオレフィン樹脂は、通常の製造方法で製造してもよく、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、サンアタックR(アタクチックポリプロピレン、千葉ファインケミカル社製)等が挙げられる。
なお、本発明で用いる樹脂等の軟化点は、JIS K 6220−1995に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定することができる。
【0050】
条件(9)は、石油系樹脂が芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂であり、かつ、石油系樹脂の軟化点が100〜150℃;あるいは;テルペン系樹脂がジテルペンの重合体またはそのフェノール変性もしくは芳香族変性体であり、かつ、テルペン系樹脂の軟化点が100〜150℃である。
石油系樹脂を用いることにより、エラストマー組成物としたときの粘着性および高減衰性能を発現できる。
石油系樹脂は、芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂であり、例えば、C5 系石油樹脂(脂肪族系石油樹脂)、C9 系石油樹脂(芳香族系石油樹脂)、C5 C9 共重合石油樹脂が挙げられ、減衰性と剛性の温度依存性とのバランスが良好となる点でC5 C9 共重合石油樹脂が好ましい。
該石油樹脂の軟化点が上記範囲内であれば、エラストマー組成物としたときの加工性に優れる。軟化点は、好ましくは110〜150℃、特に好ましくは115〜145℃である。
該石油樹脂は、市販品を用いることができ、例えば、クイントン1325(ジシクロペンタジエン−シクロペンタジエン共重合物、日本ゼオン社製)、ハイレジン♯120(C5 系脂肪族不飽和炭化水素とC9 系芳香族不飽和炭化水素の共重合体、東邦化学工業社製)等が挙げられる。
【0051】
本発明の組成物では、石油系樹脂の替わりに、同様の効果が得られるテルペン系樹脂を用いることもでき、テルペン系樹脂としてジテルペンの重合体またはそのフェノール変性もしくは芳香族変性体が挙げられ、減衰性と剛性の温度依存性とのバランスが良好となる点で芳香族変成テルペン樹脂が好ましい。
また、これらの重合体を用いることにより、エラストマー組成物としたときの粘着性にも優れる。
該重合体の軟化点が上記範囲内であれば、エラストマー組成物としたときの加工性に優れる。軟化点は、好ましくは110〜150℃、特に好ましくは115〜145℃である。
これらの重合体は、市販品を用いることもでき、例えば、YSレジン−TO−125(ヤスハラケミカル社製、芳香族変成テルペン)等が挙げられる。
【0052】
条件(10)は、前記液状ポリマーが、ポリイソプレン;ポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む);ポリイソブチレン;水素添加ポリイソプレン(水添率80%以上、ヨウ素価60g/100g以下);ポリイソプレンとポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む)の共重合体;ポリイソプレンとポリスチレンの共重合体;または;水素添加ポリイソプレン(水添率80%以上、ヨウ素価60g/100g以下)とポリスチレンの共重合体であり、かつ、前記液状ポリマーの数平均分子量が50000以下である。
該液状ポリマーは、スチレン系熱可塑性エラストマーのソフトセグメント部との相溶性に優れているため、液状ポリマーを用いることにより、エラストマー組成物としたときに可塑剤として機能する点で優れる。
数平均分子量が上記範囲内であれば、エラストマー組成物としたときの加工性に優れ、好ましくは5000〜40000、特に好ましくは10000〜35000である。
これらの液状ポリマーは、市販品を用いることもでき、例えば、クラプレンLIR各種(クラレ社製)、日石HV−100(日本石油化学社製、ポリイソブチレン)等が挙げられる。
【0053】
ヨウ素価は、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエン等の水素添加ジエン系ポリマー中に残留しているジエン成分に由来する二重結合量の目安(不飽和度)として用いられ、該水素添加ポリイソプレン等100gに吸収されるヨウ素のグラム数である。また、不飽和度として水素化率(水添率)も用いられ、ヨウ素価と水添率は一般に相関関係を有する。ヨウ素価は、好ましくは60g/100g以下、特に好ましくは40g/100g以下である。
水添率は、好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上である。
ヨウ素価および水添率が、上記範囲であれば、熱可塑性エラストマーとの相溶性がよく、かつ、耐熱性と耐候性に優れた特性を発揮することができる。
【0054】
条件(11)は、エラストマー組成物における、熱可塑性エラストマーの含量が10〜60質量%、ポリオレフィンの含量が20〜50質量%、石油系樹脂またはテルペン系樹脂の含量が10〜30質量%および液状ポリマーの含量が10〜40質量%である。
上記含量で配合したエラストマー組成物は、各成分のバランスがよく、温度および振動に依存しない剛性と、温度および振動に依存しない減衰性とを高い水準でバランスよく両立し安定した制振効果を発揮することができる。また、該特性を有するため、振動吸収用構造物に該エラストマー組成物を用いれば、温度の高低および振動の強さに依存することなく、梁部等に応力が集中せず、該梁部等が座屈しない。
【0055】
さらに、上記エラストマー組成物は、従来の高減衰ゴムよりも減衰性が大きく低剛性であり、かつ、従来のゴムアスファルトよりも剛性の温度依存性が小さいため、振動吸収用構造物に好適である。
さらにまた、該エラストマー組成物はホットメルト型であり、該組成物を用いれば振動吸収用構造物を容易に製造できる。
すなわち、本発明の第3態様のエラストマー組成物は、四季を通じて、風等による微震から地震等による強震に至るまで安定した制振効果を発揮する、振動吸収用構造物等の梁部等に応力が集中しない、該構造物に用いることができ、容易に製造できる建築用振動減衰エラストマー組成物である。
【0056】
本発明の第3態様のエラストマー組成物は、上記成分の他に、本発明の目的を損わない範囲で、他のポリマー、カーボンブラック、クレー等の充填剤、パラフィン系オイル等(プロセスオイル等)の軟化剤、加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤、可塑剤、加工助剤、顔料、染料、粘着付与剤、架橋剤、架橋促進剤、加硫助剤、酸化防止剤、光沢剤、難燃剤、発泡剤、発泡助剤、オゾン劣化防止剤、ブロッキング防止剤、耐候剤、耐熱剤、分散剤、相溶化剤、界面活性剤、帯電防止剤、滑剤等を配合することができる。
【0057】
本発明のエラストマー組成物には、酸化防止剤を含有するのが好ましい。酸化防止剤としては、通常使用されるものを用いることができ、例えば、サノールLS675(三共社製)等が挙げられる。
【0058】
本発明の第3態様のエラストマー組成物の製造方法としては、特に限定はなく従来公知の方法、例えば、上記条件(7)〜(10)の各成分を条件(11)の含有量で、先ずバンバリーミキサー等で混練し、ついで、混練ロール機等にて適宜添加剤を加え、混練する方法が挙げられる。
該エラストマー組成物の用途、および、該エラストマー組成物を用いた振動吸収用構造物の特性は、第1および第2態様で述べたのと同様である。
【0059】
本発明の第4態様のエラストマー組成物は、熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィン樹脂と、石油系樹脂またはテルペン系樹脂と、液状ポリマーとを含有するエラストマー組成物であって、金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、上記(7)〜(11)の条件を満たし、かつ、上記条件(1)〜(4)または(1)〜(6)の条件を満たす熱可塑性エラストマー組成物である。
上記条件(7)〜(10)の成分を条件(11)の含有率で含有するエラストマー組成物であれば、0.5Hz、ラップシェアせん断試験における上記(1)〜(6)の条件を満たし、本発明の効果を奏する。
該エラストマー組成物の用途、および、該エラストマー組成物を用いた振動吸収用構造物の特性は、第1〜3態様で述べたのと同様である。
【0060】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これに限定されない。
【0061】
<実施例1〜4および比較例1>
下記第1表に示す配合(質量%)で混合し、組成物を調製した。得られた組成物について、下記の方法により下記諸物性について測定した。結果を第2表に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
<ラップシェアせん断試験>
2枚の鋼板の間に、得られた各組成物を挿入した。ついで、該組成物を溶融温度以上に加熱して溶融し、この組成物(大きさ25mm×25mm、厚み4.8mm)を上記鋼板内面に接着させ、評価用試料を作製した。そして、この評価用試料について、加振機(サギノミヤ社製)、入力信号発振機、出力信号処理機を用いて、所定の条件で測定した。
【0064】
<(2)等価せん断弾性係数Geq>
得られた各エラストマー組成物を用いて、上記試験法で2軸剪断試験機による0.5Hz、20℃、200%歪み時のせん断弾性係数Geq(20℃、200%)を測定した。
温度は、エラストマー組成物の温度(試料温度)であり、試料温度を調整する方法は、試験機に装備された恒温槽による。すなわち、試料中への熱電対を埋め込んだ状態で試験体をセットし、試料温度をモニタしながら、設定温度に達した時点で試験を開始した。また、本発明では、エラストマー組成物の厚さ(試料厚さ)を「t=5mm」として測定した。
<(1)等価せん断弾性係数の変動比>
上記(2)と同様にして、10、20、30および40℃における等価せん断弾性係数を測定し、30℃における等価せん断弾性係数に対する、各温度における等価せん断弾性係数を求めた。
<(4)等価せん断弾性係数の歪み依存性>
上記(2)と同様にして、50%歪み時における等価せん断弾性係数を測定し、200%歪み時における等価せん断弾性係数に対する、50%歪み時における等価せん断弾性係数Geq(20℃、50%)/Geq(30℃、200%)を求めた。
【0065】
<(3)等価減衰定数Heq>
図1を参照して説明する。図1は、応力−歪み履歴曲線を示す図である。
20℃、0.5Hzで、繰り返し加振(20%、50%、100%、200%、300%および400%)させた際の、エラストマー組成物にかかる応力と、応力増加期の歪み、応力減少期の歪みを測定しこれより履歴曲線を得た。
【0066】
履歴曲線に囲まれた面積ΔWを算出した。
履歴曲線の最大応力値(Qmax )を与える点A(Xmax ,Qmax )から下ろした垂線と履歴曲線の最小応力値(Qmin )を与える点Bから歪みの大きさを与える軸と平行な直線との交点を点Cとする。
履歴曲線の最大応力値(A点)と最小応力値(B点)を結んだ直線ABと、履歴曲線の最大応力値を与える点Aから下ろした垂線ACと履歴曲線の最小応力値を与える点Bから歪みの大きさを与える軸と平行な直線BCとで囲まれた三角形ABCの面積Wを算出した。
等価減衰定数Heq(20℃、200%)は、下記式[1]により求めた。
【数1】
【0067】
<(5)等価減衰定数の変動比>
上記(3)と同様にして、10、20、30および40℃における等価減衰定数を求め、30℃における等価減衰定数に対する、各温度における等価減衰定数を求めた。
<(6)等価減衰定数の歪み依存性>
上記(3)と同様にして、50%歪み時における等価減衰定数を算出し、200%歪み時における等価減衰定数に対する、50%歪み時における等価減衰定数Heq(20℃、50%)/Heq(20℃、200%)を求めた。
【0068】
【表2】
【0069】
実施例1〜4の組成物は、すべての条件((1)〜(6))を満たしており、温度および振動に依存しない低剛性と、温度および振動に依存しない高減衰性とを高い水準でバランスよく両立し安定した制振効果を発揮する建築用振動減衰エラストマー組成物である。また、実施例1〜4の組成物を振動吸収用構造物に用いると、振動吸収用構造物に力が加わっても、温度の高低および振動の強さに依存することなく、梁部等に応力が集中せず、該梁部等が座屈しない。
【0070】
これに対し、比較例1は、従来の高減衰エラストマー組成物を用いた測定結果であり、条件(2)Geq(20℃、200%)および条件(3)Heq(20℃、200%)が本発明の範囲外であって、剛性が高く、特に、減衰性が小さく制振効果が得られない。
【0071】
<実施例5、6および比較例2、3>
下記第3表に示す配合(質量%)で混合し、エラストマー組成物を調製した。得られたエラストマー組成物について、上記の方法により上記諸物性について測定した(2軸剪断試験機による0.5Hz、100%歪み時におけるラップシェア試験を行った)。なお、0.5Hz、100%歪み時における各パラメータと、0.5Hz、200%歪み時における各パラメータとの対応は、以下に示すとおりである。
Geq(X、100%)/Geq(30℃、100%)は、上記条件(1)の範囲内であるが、Xによっては高い値をとる傾向がある。Geq(20℃、100%)は、Geq(20℃、200%)より高い値をとる傾向があるが上記条件(2)の範囲内である。Heq(20℃、100%)は、上記条件(3)の範囲内である。Geq(20℃、50%)/Geq(20℃、100%)は、上記条件(4)より小さい値をとる。Heq(X、100%)/Heq(30℃、100%)は、上記条件(5)の範囲内である。Heq(20℃、50%)/Heq(20℃、100%)は、上記条件(6)の範囲内である。
結果を第4表に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
また、各エラストマー組成物の評価として、破断強度(TB )と破断伸び(EB )を、JIS K6386−1995(防振ゴム材料)、JIS K6251−1993(加硫ゴムの引張り試験方法)に準拠して測定した。結果を第4表に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
実施例5および6は、本発明の第3態様の条件(7)〜(11)を満たしており、また、上記特性(1)〜(6)も満たす。
比較例2は、ポリオレフィン樹脂の含有量が少なく、等価せん断弾性係数Geqを満たさず、また破断強度が非常に弱い。比較例3は、ポリオレフィン樹脂の含有量が少なく、また、テルペン系樹脂の含有量が多く、等価せん断弾性係数の変動比が大きい。したがって、低温時において、剛性が高く制振効果が期待できず、該エラストマー組成物を含む振動吸収用構造物における梁部等への応力の集中を避けることができない。
【0076】
実施例および比較例において、エラストマー組成物中の配合成分は、以下のものを用いた。
NR:天然ゴム、STR20、TEC BEE HANG社製
BR:ポリブタジエンゴム、日本ゼオン社製
NSX:ポリノルボルネン、NSX15AR、日本ゼオン社製、60質量%油展品
SIS:クインタック3421、日本ゼオン社製
SEPS:セプトンSEPS2063、クラレ社製
ポリオレフィン:サンアタックR、千葉ファインケミカル社製
テルペン樹脂:YS−TO−125、ヤスハラケミカル社製
L−IR:液状IR、LIR−290、クラレ社製、数平均分子量20000
PB:ポリイソブチレン、日石HV−100、日本石油化学社製
老化防止剤:ノクラック6C、大内新興化学社
CB:カーボンブラック、SAF級、東海カーボン社製
亜鉛華:亜鉛華3号、正同化学社製
硫黄:粉末イオウ、軽井沢精練所製
ステアリン酸:LUNAC YA、花王社製
老化防止剤:オゾノン6C、精工化学社製
酸化防止剤:サノールLS765、三共社製
石油樹脂:ハイレジン♯120、東邦化学工業社製
オイル:アロマオイル、出光興産社製
【0077】
【発明の効果】
本発明により、温度および振動に依存しない剛性と、減衰性とを高い水準でバランスよく両立し安定した制振効果を有し、かつ、振動吸収用構造物を容易に製造できる、建築用振動減衰エラストマー組成物を提供できる。
また、温度および振動に依存しない剛性と、温度および振動に依存しない減衰性とを高い水準でバランスよく両立しより安定した制振効果を有し、かつ、振動吸収用構造物を容易に製造できる、建築用振動減衰エラストマー組成物を提供できる。
【0078】
さらに、振動吸収用構造物に用いられる振動減衰材料として使用しても、振動吸収用構造物の建築物への取付け部(梁等)に応力が集中しない建築用振動減衰エラストマー組成物を提供できる。
さらにまた、従来の高減衰ゴムおよびゴムアスファルトよりも減衰性が大きく、かつ、従来の高減衰ゴムよりも剛性の温度依存性が小さい建築用振動減衰エラストマー組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、応力−歪み履歴曲線を示す図である。
Claims (3)
- 金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、0.5Hz、ラップシェアせん断試験における下記(1)〜(4)の条件を満たす建築用振動減衰エラストマー組成物;
(1)30℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、10℃、20℃および40℃での200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、0.60〜3.50、
(2)20℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、0.04〜0.19MPa、
(3)20℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、0.30以上、
(4)20℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、20℃、50%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、1.30〜2.60。 - 熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィン樹脂と、石油系樹脂またはテルペン系樹脂と、液状ポリマーとを含有するエラストマー組成物であって、
金属板と積層され、積層方向と直交する方向の応力を吸収するための振動吸収用構造物を構成するために用いられる、下記(7)〜(11)の条件を満たす建築用振動減衰エラストマー組成物;
(7)前記熱可塑性エラストマーが、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン(水添率100%)、ポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む)、水素添加ポリブタジエン(水素添加1,2−ポリブタジエンを含む、水添率100%)およびポリイソブチレンからなる群より選択される1種以上のブロック体と、ポリスチレンブロックとの共重合体;または;該共重合体の混合物であり、かつ、前記熱可塑性エラストマーのガラス転移温度(Tg)が−65〜−35℃、数平均分子量が50000〜500000、スチレン含有量が40質量%以下、
(8)前記ポリオレフィン樹脂がポリプロピレンまたはポリエチレンであり、かつ、前記ポリオレフィン樹脂の数平均分子量が1000〜100000、軟化点が100〜160℃、
(9)前記石油系樹脂が芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂であり、かつ、前記石油系樹脂の軟化点が100〜150℃;あるいは;前記テルペン系樹脂がジテルペンの重合体またはそのフェノール変性もしくは芳香族変性体であり、かつ、前記テルペン系樹脂の軟化点が100〜150℃、
(10)前記液状ポリマーが、ポリイソプレン;ポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む);ポリイソブチレン;水素添加ポリイソプレン(水添率80%以上、ヨウ素価60g/100g以下);ポリイソプレンとポリブタジエン(1,2−ポリブタジエンを含む)の共重合体;ポリイソプレンとポリスチレンの共重合体;または;水素添加ポリイソプレン(水添率80%以上、ヨウ素価60g/100g以下)とポリスチレンの共重合体であり、かつ、前記液状ポリマーの数平均分子量が50000以下、
(11)前記エラストマー組成物における、前記熱可塑性エラストマーの含量が10〜60質量%、前記ポリオレフィン樹脂の含量が20〜50質量%、前記石油系樹脂または前記テルペン系樹脂の含量が10〜30質量%および前記液状ポリマーの含量が10〜40質量%。 - 0.5Hz、ラップシェアせん断試験における下記(1)〜(4)の条件を満たす、請求項2に記載のエラストマー組成物;
(1)30℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、10℃、20℃および40℃での200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、0.60〜3.50、
(2)20℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、0.04〜0.19MPa、
(3)20℃、200%せん断歪み時の等価減衰定数Heqが、0.30以上、
(4)20℃、200%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqに対する、20℃、50%せん断歪み時の等価せん断弾性係数Geqが、1.30〜2.60。
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