JP4982081B2 - 高減衰エラストマー組成物およびそれによって得られた制震ダンパー - Google Patents

高減衰エラストマー組成物およびそれによって得られた制震ダンパー Download PDF

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Description

本発明は、高減衰エラストマー組成物およびそれによって得られた制震ダンパーに関するものであり、詳しくは、建築分野における制震や免震等の用途に好適な高減衰エラストマー組成物およびそれによって得られた制震ダンパーに関するものである。
建築分野における制震装置や免震装置は、地震や風等による振動、大型車の走行等による交通振動等から、建築物に対する振動を抑制する目的で使用される。そのため、制震装置や免震装置等に用いられる減衰材料には、建築物の剛性にあわせて小振幅から大振幅までの振動吸収性能が求められる。また、建築分野において安定した減衰性能を発揮するためには、建築物の外気雰囲気において安定した減衰性能が求められることになり、剛性の温度依存性が小さいことが望まれる。従来、このような用途に用いられる減衰材料としては、ガラス転移温度(Tg)の高いアクリル系ポリマーやエポキシ系ポリマー等からなる高分子材料、あるいはゴムやポリジエン系熱可塑性エラストマー(TPE)等に、ガラス転移温度(Tg)の高いポリマーや軟化点の高い粘着付与剤等を配合してなる高分子材料が用いられている。
上記高分子材料(減衰材料)により、大きな減衰性能を発現させる場合、主にtanδ(損失係数)ピークの存在するガラス転移温度(Tg)領域が用いられることになる。ところが、このガラス転移温度(Tg)領域は、ガラス状態からゴム状態へと急激な変化を起こす領域であるため、剛性の温度依存性が極めて大きいという難点がある。例えば、10℃の等価剛性と、30℃の等価剛性との比は、ほとんどの場合2倍以上となってしまう。そのため、上記のような高分子材料(減衰材料)を用いてなるダンパー等の制振装置は、環境温度によって性能の変化が著しいという難点がある。また、これらの温度依存性を改良するために、シリコーン系の材料を使用する例もみられるが、材料コストが大幅にアップするため、建築費用の負担増加に繋がるという難点がある。
これらの問題を解決するため、例えば、熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィン樹脂と、石油系樹脂またはテルペン系樹脂と、液状ポリマーとを含有する建築用振動減衰エラストマー組成物(特許文献1参照)や、芳香族ビニル系化合物を構成単量体とする重合体ブロック(a)、およびイソブチレンを構成単量体とする重合体ブロック(b)からなるブロック共重合体(A)であって、前記重合体ブロック(b)を末端に有するブロック共重合体(A)を含有する制振材組成物(特許文献2参照)が提案されている。
特開2004−35648号公報 国際公開第01/074964号公報
上記特許文献1に記載の建築用振動減衰エラストマー組成物は、基本的には、石油系樹脂またはテルペン系樹脂を用いることにより、tanδピークを高温側にシフトさせるとともに高減衰化し、さらに液状ポリマーを用いることにより、tanδピークを低温側にシフトさせて高減衰化するものと推察される。しかし、このものは、低温側のtanδを使用しているため、常温領域での温度依存性を小さくすることはできない。一方、上記特許文献2に記載の制振材組成物は、スチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)を主成分とし、石油系樹脂にてtanδピークを常温側にシフトさせているため、常温領域での剛性の温度依存性がやや大きいという難点もある。また、スチレン−イソブチレン−スチレンブロックポリマー(SIBS)を用いる場合には、スチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー(SIS)に比べて、コストが約2倍高くなるという難点もある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、常温領域での減衰性能に優れ、かつ、常温領域での剛性の温度依存性が小さい高減衰エラストマー組成物およびそれによって得られた制震ダンパーの提供をその目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は、下記の(A)および(B)とともに(C)および(D)を必須成分とする高減衰エラストマー組成物を第1の要旨とする。
(A)下記の(a1)〜(a4)からなる群から選ばれた少なくとも(a1)を含有するスチレン系熱可塑性エラストマーであって、上記(a1)の含有量がスチレン系熱可塑性エラストマー全体の65重量%以上で、かつ、スチレン系ジブロック成分の含有量がスチレン系熱可塑性エラストマー全体の50〜85重量%の範囲内である。
(a1)スチレン−イソプレンジブロック成分を含有するスチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー。
(a2)スチレン−エチレン・プロピレンジブロック成分を含有するスチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロックポリマー。
(a3)スチレン−ブタジエンジブロック成分を含有するスチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマー。
(a4)スチレン−エチレン・ブチレンジブロック成分を含有するスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロックポリマー。
(B)液状イソプレンゴム,液状ブタジエンゴム,液状スチレン−イソプレンゴム,液状スチレン−エチレン・プロピレンゴムおよび液状イソプレン−ブタジエンゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つの液状ポリマー。
(C)シリカ、表面処理シリカ、ハイスチレン樹脂およびポリスチレンからなる群から選ばれた少なくとも一つの補強性充填材。
(D)ロジン酸処理炭酸カルシウム、リグニン処理炭酸カルシウム、脂肪酸処理炭酸カルシウムおよび脂肪酸第四級アンモニウム塩処理炭酸カルシウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの減衰性充填材。
また、本発明は、上記高減衰エラストマー組成物を構成部材として用いてなる制震ダンパーであって、動的剪断特性評価(周波数3Hz、剪断歪み率200%)において、下記の式(α)および(β)の双方の特性を備えている制震ダンパーを第2の要旨とする。
Figure 0004982081
すなわち、本発明者らは、常温領域での減衰性能に優れ、かつ、常温領域での剛性の温度依存性が小さい高減衰エラストマー組成物を得るため、鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、ジブロック成分非含有のスチレン系熱可塑性エラストマーではなく、スチレン−イソプレンジブロック成分を含有するスチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマーを主成分とし、かつ、スチレン系ジブロック成分の含有量が全体の50〜85重量%の範囲内であるスチレン系熱可塑性エラストマーを選択した。このような特定のスチレン系熱可塑性エラストマーを用いると、高減衰で、剛性の温度依存性が小さいことを突き止めた。そして、この特定のスチレン系熱可塑性エラストマーとともに、液状イソプレンゴム、液状ブタジエンゴム、液状スチレン−イソプレンゴム、液状スチレン−エチレン・プロピレンゴム、および液状イソプレン−ブタジエンゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つの液状ポリマーを併用すると、所期の目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、上記特定の液状ポリマーは、一般に、ガラス転移温度(Tg)が低いため(通常、−55℃以下)、これを併用すると、剛性の温度依存性を低温側へシフトさせることができ、常温領域(通常、10〜30℃)での剛性の温度依存性が小さくなるとともに、常温領域での減衰定数(he)が大きくなり、減衰性能が向上するものと思われる。
このように、本発明の高減衰エラストマー組成物は、スチレン−イソプレンジブロック成分を含有するスチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマーを主成分とし、かつ、スチレン系ジブロック成分の含有量が全体の50〜85重量%の範囲内であるスチレン系熱可塑性エラストマーとともに、液状イソプレンゴム、液状ブタジエンゴム、液状スチレン−イソプレンゴム、液状スチレン−エチレン・プロピレンゴム、および液状イソプレン−ブタジエンゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つの液状ポリマーを併用している。そのため、剛性の温度依存性を低温側へシフトさせることができ、常温領域(通常、0〜30℃)での剛性の温度依存性が小さくなるとともに、常温領域での減衰定数(he)が大きくなり、減衰性能が向上するという効果が得られる。そして、減衰定数(he)が大きくなると、共振倍率(応答加速度/入力加速度)が大きく減少するため、例えば、地震等の入力に対する応答が小さくなる。そのため、本発明の高減衰エラストマー組成物は、建築用,土木用等の制震ダンパーとして、好適に用いることができる。また、従来、減衰性能はオイルや粘着付与剤等の低分子材料により調整していたため、コンパウンド粘度が低く、加工性が悪いという難点があった。本発明では、上記特定のスチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)のような高分子材料、もしくは減衰性充填により、減衰性能を調整することが可能であるため、コンパウンディングやロールシート加工が容易となる。なお、本発明の高減衰エラストマー組成物は、汎用性の高い材料を用いているため、従来のシリコーン系の材料を使用する場合に比べて、材料コストの削減を図ることもできる。
また、上記高減衰エラストマー組成物が、補強性充填材を含有すると、剛性を向上させる効果が得られる。
そして、上記高減衰エラストマー組成物が、減衰性充填材を含有すると、剛性の向上に寄与するとともに、上記補強性充填材を配合した場合に低下する減衰性能を補うこともできる。
また、上記減衰性充填材とともに補強性充填材を含有し、かつ、上記補強性充填材が、ハイスチレン樹脂またはポリスチレンであると、初期加振試験から3日間経過後の特性〔等価剪断弾性率(Ge)、等価減衰定数(Ce)、減衰定数(he)〕の低下率を低減することができる。その理由は、他の充填材に比べ、スチレン系熱可塑性エラストマーとの親和性が高いためと考えられる。
また、上記減衰性充填材が、ロジン酸処理炭酸カルシウム,リグニン処理炭酸カルシウムおよび脂肪酸第四級アンモニウム塩処理炭酸カルシウムからなる群から選ばれた少なくとも一つであると、剛性の温度依存性を良好に保ちつつ、減衰性能がさらに向上するという効果が得られる。
そして、上記高減衰エラストマー組成物が、天然アスファルトを含有すると、温度依存性を悪化させず、さらに減衰性能を向上させるという効果が得られる。
また、上記高減衰エラストマー組成物が、老化防止剤を含有すると、耐久性が向上するという効果が得られる。
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の高減衰エラストマー組成物は、特定のスチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)と、特定の液状ポリマー(B成分)と、特定の補強性充填材と、特定の減衰性充填材とを用いて得ることができる。
本発明においては、上記特定のスチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)が、下記の(a1)〜(a4)からなる群から選ばれた少なくとも(a1)を含有するスチレン系熱可塑性エラストマーであって、上記(a1)の含有量がスチレン系熱可塑性エラストマー全体の65重量%以上で、かつ、スチレン系ジブロック成分の含有量がスチレン系熱可塑性エラストマー全体の50〜85重量%の範囲内であり、これらが最大の特徴である。
(a1)スチレン−イソプレン(SI)ジブロック成分を含有するスチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー(SIS)。
(a2)スチレン−エチレン・プロピレン(SEP)ジブロック成分を含有するスチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロックポリマー(SEPS:SISの水素添加型)。
(a3)スチレン−ブタジエン(SB)ジブロック成分を含有するスチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマー(SBS)。
(a4)スチレン−エチレン・ブチレン(SEB)ジブロック成分を含有するスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロックポリマー(SEBS:SBSの水素添加型)。
上記特定のスチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)は、上記(a1)のみからなるものであっても、上記(a1)と、上記(a2)〜(a4)からなる群から選ばれた少なくとも一つとを併用したものであっても差し支えない。なお、上記(a1)とともに、上記(a2)〜(a4)からなる群から選ばれた少なくとも一つを併用した場合には、耐久性が向上するようになる。
上記特定のスチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)中における上記(a1)の含有量は、A成分全体の65重量%以上である必要があり、好ましくは80〜100重量%の範囲内である。すなわち、上記(a1)の含有量がA成分全体の65重量%未満であると、機械的物性等が悪くなるからである。
また、上記特定のスチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)は、スチレン系ジブロック成分の含有量がA成分全体の50〜85重量%の範囲内でなければならないが、好ましくは65〜80重量%の範囲内である。すなわち、スチレン系ジブロック成分の含有量が50重量%未満であると、減衰性能が劣り、逆にスチレン系ジブロック成分の含有量が85重量%を超えると、コールドフロー性が劣るからである。
ここで、上記スチレン系ジブロック成分とは、前述のSIジブロック成分、SEPジブロック成分、SBジブロック成分、SEBジブロック成分等を意味し、2種以上併用する場合は、それらの合計含有量を意味する。
上記SIS(a1)中のSIジブロック成分の含有量は、50〜78重量%の範囲内が好ましく、上記SEPS(a2)中のSEPジブロック成分の含有量は、50〜100重量%の範囲内が好ましく、上記SBS(a3)中のSBジブロック成分の含有量は、50〜80重量%の範囲内が好ましく、上記SEBS(a4)中のSEBジブロック成分の含有量は、50〜100重量%の範囲内が好ましい。
上記スチレン系ジブロック成分の数平均分子量(Mn)は、50,000〜200,000の範囲内が好ましく、特に好ましくは80,000〜120,000の範囲内である。なお、上記数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)に準じて、測定した値である。
上記スチレン系ジブロック成分は、ハードセグメント(ポリスチレン)と、ポリイソプレン,ポリエチレン・プロピレン,ポリエチレン・ブチレン,ポリブタジエン等のソフトセグメントとが、各1セットのみからなる成分であって、ソフトセグメントの一方の末端にのみ、ハードセグメント(ポリスチレン)が連結しており、ソフトセグメントの他方の末端には、ハードセグメント(ポリスチレン)が連結していない成分をいう。このように、スチレン系ジブロック成分は、ソフトセグメントの片末端が、ハードセグメント(ポリスチレン)により固定されておらず、非常に運動性が高く、滑り(粘性)が生じやすいため、高い減衰性能を発現することができる。本発明では、このスチレン系ジブロック成分の割合を、上記のように所定範囲に設定しているため、スチレン系ジブロック成分による減衰性能により、より高い減衰性能を発現することができる。
つぎに、上記特定のスチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)とともに用いられる、特定の液状ポリマー(B成分)としては、液状イソプレンゴム(液状IR),液状ブタジエンゴム(液状BR),液状スチレン−イソプレンゴム(液状SI),液状スチレン−エチレン・プロピレンゴム(液状SEP)および液状イソプレン−ブタジエンゴム(液状IR−BR)からなる群から選ばれた少なくとも一つが用いられる。このような特定の液状ポリマー(B成分)を併用すると、剛性の温度依存性を低温側へシフトさせることができ、常温領域(通常、0〜30℃)での剛性の温度依存性が小さくなるとともに、常温領域での減衰定数(he)が大きくなり、減衰性能が向上するという効果が得られる。
上記特定の液状ポリマー(B成分)は、ガラス転移温度(Tg)が−55℃以下のものが好ましく、特に好ましくは−60℃以下である。すなわち、上記特定の液状ポリマー(B成分)のガラス転移温度(Tg)が、−55℃よりも高いと、上記特定のスチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)のTgを充分に下げられず、温度依存性が悪くなる傾向がみられるからである。なお、上記ガラス転移温度(Tg)は、DSC測定法(示差走査熱量測定法)に準拠して求めた値である。
また、上記特定の液状ポリマー(B成分)は、静粘度が70〜1000Pa・s/38℃の範囲内のものが好ましく、特に好ましくは280〜950Pa・s/38℃の範囲内である。すなわち、上記特定の液状ポリマー(B成分)の静粘度が70Pa・s/38℃未満であると、コンパウンドの剛性が低下する傾向がみられ、逆に静粘度が1000Pa・s/38℃を超えると、分子量が高くなり、エントロピー弾性により、減衰性能が低下する傾向がみられるからである。なお、上記静粘度は、JIS K 7117に準拠し、B型粘度計を用いて、温度38℃で測定した値である。
また、上記特定の液状ポリマー(B成分)は、数平均分子量(Mn)が10,000〜70,000の範囲内が好ましく、特に好ましくは30,000〜50,000の範囲内である。すなわち、上記特定の液状ポリマー(B成分)の数平均分子量(Mn)が10,000未満であると、低粘度となり剛性が低下する傾向がみられ、逆に数平均分子量(Mn)が70,000を超えると、エントロピー弾性により、減衰性能が低下する傾向がみられるからである。なお、上記数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)に準じて、測定した値である。
上記特定の液状ポリマー(B成分)の配合量は、上記A成分100重量部(以下「部」と略す)に対して、5〜100部の範囲内が好ましく、特に好ましくは20〜60部の範囲内である。すなわち、B成分が5部未満であると、減衰性能への効果が劣る傾向がみられ、逆にB成分が100部を超えると、温度依存性が悪化し、コールドフロー性も劣る傾向がみられるからである。
上記補強性充填材としては、高減衰エラストマー組成物の補強性(剛性)を向上させ得るシリカ、表面処理シリカ、ハイスチレン樹脂、ポリスチレン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、等価剪断弾性率(Ge)、等価減衰定数(Ce)、減衰定数(he)の低下率を低減することができるという点から、ハイスチレン樹脂、ポリスチレンが好適に用いられる。また、耐久性が向上する点から、表面処理シリカが好適に用いられる。
上記シリカとしては、特に限定するものではなく、例えば、結晶性シリカ、無定形シリカ等があげられる。また、上記シリカの平均粒子径は、0.5〜10μmの範囲のものを用いることが好ましい。上記シリカの平均粒子径は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
また、上記表面処理シリカとしては、例えば、上記シリカの粒子表面を有機ケイ素化合物等により疎水性処理されたもの等があげられる。上記有機ケイ素化合物としては、例えば、ジメチルジクロロジシラザン、モノメチルトリクロロシラン、シリコーンオイル等があげられる。上記表面処理は、例えば、表面未処理のシリカと,そのシリカ粒子表面を充分に処理可能な量の有機ケイ素化合物とを混合することにより行われる。より具体的には、シリカ100部に対して有機ケイ素化合物(例えば、ジメチルジクロロジシラザン)を3〜20部の割合で混合することが好ましい。
上記補強性充填材の配合量は、上記A成分100部に対して、2〜165部の範囲内が好ましく、特に好ましくは5〜113部の範囲内である。すなわち、上記補強性充填材が2部未満では、剛性が小さくなり、逆に165部を超えると、伸び等の物性が低下する傾向がみられるからである。
また、上記減衰性充填材としては、剛性の温度依存性を良好に保ちつつ、減衰性能がさらに向上する点で、ロジン酸処理炭酸カルシウム、リグニン処理炭酸カルシウム、脂肪酸処理炭酸カルシウム、脂肪酸第四級アンモニウム塩処理炭酸カルシウムが用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる
上記減衰性充填材の配合量は、上記A成分100部に対して、2〜165部の範囲内が好ましく、特に好ましくは5〜113部の範囲内である。すなわち、上記減衰性充填材が2部未満では、減衰性能の向上効果が乏しく、逆に165部を超えると、伸び等の物性が低下する傾向がみられるからである。
本発明においては、上記補強性充填材と減衰性充填材との合計量は、前記A成分100部に対して50〜200部の範囲内が好ましく、特に好ましくは合計量で75〜150部の範囲内である。すなわち、上記補強性充填材と減衰性充填材との合計量が50部未満であると、減衰性能が低下する傾向がみられ、逆に合計量が200部を超えると、機械物性や加工性が悪化する傾向がみられるからである。上記補強性充填材および減衰性充填材のそれぞれの役割は、上記補強性充填材は、剛性を向上させる効果があり、減衰性充填材は、補強性充填材を配合した時に低下する減衰性を補う効果と、若干の剛性向上に貢献する。
また、上記のように、補強性充填材と減衰性充填材とを併用する場合、両者の重量混合比は、補強性充填材/減衰性充填材=1/5〜5/1の範囲内が好ましく、特に好ましくは補強性充填材/減衰性充填材=1/3〜3/1の範囲内である。すなわち、補強性充填材の重量混合比が1未満である(減衰性充填材の重量混合比が5を超える)と、剛性の向上効果が小さく、逆に補強性充填材の重量混合比が5を超える(減衰性充填材の重量混合比が1未満である)と、減衰性能が低下する傾向がみられるからである。
なお、本発明の高減衰エラストマー組成物には、上記A成分、B成分、補強性充填材および減衰性充填材に加えて、天然アスファルト、粘着付与剤、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、ジエン系ゴム等を、必要に応じて適宜配合しても差し支えない。
記天然アスファルトの配合量は、上記A成分100部に対して、1〜50部の範囲内が好ましく、特に好ましくは10〜30部の範囲内である。すなわち、上記天然アスファルトが1部未満では、減衰性能の向上効果に乏しく、逆に天然アスファルトが50部を超えると、温度依存性が悪くなる傾向がみられるからである。
また、上記粘着付与剤は、減衰性能や接着性の向上を目的として用いられるものであり、例えば、水添脂環族系炭化水素樹脂、クマロン樹脂、ロジン、ロジンエステル、テルペンフェノール樹脂、ケトン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等が好適に用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記可塑剤は、硬度の調整等を目的とするものであり、例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)等の合成可塑剤、パラフィン系オイル,アロマオイル等の鉱物油があげられる。
上記加硫剤としては、例えば、硫黄、有機過酸化物、アルキルフェノール樹脂等があげられる。上記加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系加硫促進剤、ベンゾチアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤等があげられる。
上記老化防止剤としては、例えば、芳香族第二級アミン系老化防止剤、特殊ワックス系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記老化防止剤の配合量は、上記A成分100部に対して、1〜20部の範囲内が好ましく、特に好ましくは4〜8部の範囲内である。すなわち、上記老化防止剤が1部未満では、劣化速度が速くなり、逆に老化防止剤が20部を超えると、ブルームが多くなり、接着性に悪影響を与える傾向がみられるからである。
上記ジエン系ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム(NR)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、ガラス転移点が低く、温度依存性を良くする効果が大きい点で、BRが好適に用いられる。
また、上記ジエン系ゴムの配合量は、上記A成分とB成分の合計量100部に対して、10〜100部の範囲内が好ましく、特に好ましくは20〜60部の範囲内である。このような範囲内でジエン系ゴムを併用すると、温度依存性を良くする点で好ましい。
本発明の高減衰エラストマー組成物は、例えば、上記A成分B成分、特定の補強性充填材、特定の減衰性充填材および必要に応じてその他の成分等を、ニーダー,プラネタリーミキサー,混合ロール,2軸スクリュー式攪拌機等を用いて混練することにより得ることができる。そして、この高減衰エラストマー組成物を、溶融温度以上に加熱して溶融させ、これを型枠内に流し込み、放冷して所定形状に成形することにより、高減衰エラストマー組成物の製品として用いることができる。
つぎに、本発明の高減衰エラストマー組成物を構成部材として用いてなる、本発明の制震ダンパーについて説明する。本発明の制震ダンパーは、建築用,土木用等の用途に好適に用いられる。
本発明の制震ダンパーは、動的剪断特性評価(周波数3Hz、剪断歪み率200%)において、下記の式(α)および(β)の双方の特性を備えているのであり、これらが最大の特徴である。すなわち、下記の式(α)において、he(減衰定数)が0.4未満であると、減衰性能が劣るからである。一方、下記の式(β)において、Ge10℃/Ge30℃が2を超えると、剛性の温度依存性が大きく、環境温度によるダンパー性能の変化が大きくなり、建築用等の制震ダンパーとしては不向きであるからである。
Figure 0004982081
なお、上記制震ダンパーの動的剪断特性評価は、例えば、図1に示すようなサンプルを用いて、つぎのようにして行われる。すなわち、ブラスト処理を施した金具2に、ゴム用2液接着剤を塗布した後、上記金具2間に、本発明の高減衰エラストマー組成物を挟み、乾燥を行う。これを所定時間(例えば、100℃で5分間)熱プレス成型して、試料1を作製する。そして、これを、矢印方向に加振させて、図2に示す荷重−歪みループ曲線に基づいて、動的剪断特性の評価を行う。すなわち、加振機と、入力信号発振機と、出力信号処理機を用いて、所定の条件における、加振の時間に対する剪断歪み値(δ)と、荷重値(Qd)の解析から、下記の数式(1)〜(4)に従い、等価剪断弾性率(Ge)、等価減衰定数(Ce)および減衰定数(he)を求める。なお、測定条件は、剪断歪み率:200%(試料厚みに対して200%)、周波数(f):3Hz、測定温度:10℃、20℃および30℃である。
Figure 0004982081
また、上記制震ダンパーは、上記動的剪断特性の評価に準じて測定したGe、Ceおよびheの低下率が、下記の式(a),(b)および(c)の特性を全て備えているものが好ましい。すなわち、上記動的剪断特性の評価に準じて、試料を作製し、これを、矢印方向に10サイクル加振させて、Ge、Ceおよびheをそれぞれ測定する(初期値)。なお、測定条件は、剪断歪み量:±10mm(試料厚みに対して200%)、周波数(f):3Hz、測定温度:20℃である。つぎに、上記加振後の試料を、3日後に再度同条件にて加振して、2波目を比較し、上記式(a)〜(c)に従って、低下率を測定する。このように、Ge、Ceおよびheの低下率が、いずれも10%以下であると、回復性の良好な材料といえる。
Figure 0004982081
本発明の高減衰エラストマー組成物は、上述のように、建築用,土木用等の制震ダンパーとして好適に用いられるが、これらに限定されるものではなく、建築用の制震壁等の制震装置や免震装置に用いられる他、家電用や電子機器用の制振ダンパー、制振材、衝撃吸収材、自動車用の制振材、衝撃吸収材等に用いることもできる。
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
〔SIS−a(A成分−a1)〕
日本ゼオン社製、クインタック3520〔ジブロック成分(SI)含量:78重量%〕
〔SIS−b(A成分−a1)〕
クレイトンポリマーズ社製、クレイトンD−1119〔ジブロック成分(SI)含量:66重量%〕
〔SIS−c(A成分−a1)〕
クレイトンポリマーズ社製、クレイトンD−1112〔ジブロック成分(SI)含量:40重量%〕
〔SEPS(A成分−a2)〕
クラレ社製、セプトン2063〔ジブロック成分(SEP)含量:66重量%〕
〔SBS(A成分−a3)〕
クレイトンポリマーズ社製、クレイトンD−1118〔ジブロック成分(SB)含量:80重量%〕
〔SEBS(A成分−a4)〕
クレイトンポリマーズ社製、クレイトンG−1726〔ジブロック成分(SEB)含量:70重量%〕
〔SEB(A成分−a4)〕
クレイトンポリマーズ社製、クレイトンG−1701〔ジブロック成分(SEB)含量:100重量%〕
〔液状SI(B成分)〕
クラレ社製、クラプレンLIR−310(Tg:−63℃、静粘度:950Pa・s/38℃、Mn:31000)
〔液状IR−BR(B成分)〕
クラレ社製、クラプレンLIR−390(Tg:−95℃、静粘度:300Pa・s/38℃、Mn:48000)
〔液状IR−a(B成分)〕
クラレ社製、クラプレンLIR−30(Tg:−63℃、静粘度:74Pa・s/38℃、Mn:29000)
〔液状IR−b(B成分)〕
クラレ社製、クラプレンLIR−50(Tg:−63℃、静粘度:480Pa・s/38℃、Mn:47000)
〔液状BR(B成分)〕
クラレ社製、クラプレンLIR−300(Tg:−95℃、静粘度:280Pa・s/38℃、Mn:45000)
〔液状SEP(B成分)〕
クラレ社製、クラプレンLIR−290(Tg:−59℃、静粘度:1000Pa・s/38℃、Mn:25000)
〔BR〕
旭化成社製、NF35R
〔EPDM〕
三井化学社製、EPT4010
〔シリカ〕
東ソー・シリカ社製、ニプシールER
〔表面処理シリカ〕
ジメチルシリコーンオイルにより表面処理したシリカ(東ソー・シリカ社製、ニプシールSS30P)
〔カーボンブラック〕
FEF級カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストSO)
〔ハイスチレン樹脂〕
JSR社製、JSR0061
〔ポリスチレン(低分子量タイプ)〕
三洋化成社製、ハイマーST95(重量平均分子量:4000)
〔天然アスファルト〕
荒川化学社製、ヂェコ
〔炭酸カルシウムa〕
脂肪酸処理炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、白艶華CC)
〔炭酸カルシウムb〕
ロジン酸処理炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、白艶華DD)
〔炭酸カルシウムc〕
リグニン処理炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、カルモス)
〔炭酸カルシウムd〕
脂肪酸第四級アンモニウム塩処理炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、白艶華U)
〔老化防止剤A〕
芳香族第二級アミン系老化防止剤(精工化学社製、オゾノン3C)
〔老化防止剤B〕
特殊ワックス系老化防止剤(大内新興化学工業社製、サンノック)
〔老化防止剤C〕
特殊ワックス系老化防止剤(精工化学社製、サンタイトS)
〔老化防止剤D〕
アミン−ケトン系老化防止剤(精工化学社製、ノンフレックスRD)
〔老化防止剤E〕
フェノール系老化防止剤(チバスペシャルティーケミカル社製、イルガノックス1010)
〔加工助剤〕
花王社製、ルーナックS30
〔実施例1〜28、参考例1,2、比較例1〜3〕
後記の表1〜表5に示す各成分を同表に示す割合で配合し、これらをニーダーで混練して、目的とするエラストマー組成物を調製した。
Figure 0004982081
Figure 0004982081
Figure 0004982081
Figure 0004982081
Figure 0004982081
このようにして得られた実施例、参考例および比較例のエラストマー組成物を用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表6〜表10に併せて示した。また、A成分中に占めるスチレン系ジブロック成分の割合を表中に記載した。なお、比較例1については、A成分中に占めるスチレン系ジブロック成分と、ゴム成分(EPDM)との合計量中に占める、両者の合計割合を、ジブロック成分等の割合として、表中に記載した。
〔コールドフロー性〕
各エラストマー組成物を80℃のオーブン中で3日間放置した後、形成保持しているかどうかを目視により観察した。コールドフロー性の評価は、形成保持しているものを○、少なくとも一部が流動しているものを×とした。
〔動的剪断特性〕
図1に示すようなサンプルを用いて、エラストマー組成物の動的剪断特性の評価を行った。すなわち、ブラスト処理を施した金具2(大きさ140mm×80mm、厚み9mm)に、ゴム用2液接着剤を塗布した後、上記金具2間にエラストマー組成物を挟み、乾燥を行った。これを100℃で5分間熱プレス成型して、試料(大きさ70mm×80mm、厚み5mm)1を作製した。そして、これを、矢印方向に加振させて、図2に示す荷重−歪みループ曲線に基づいて、動的剪断特性の評価を行った。すなわち、加振機(鷲宮製作所社製、DYNAMIC SERVO)と、入力信号発振機(横河電気社製、シンセサイズドファンクションゼネレータFC320)と、出力信号処理機(小野測器社製、ポータブルFFTアナライザーCF−3200)を用いて、所定の条件における、加振の時間に対する剪断歪み値(δ)と、荷重値(Qd)の解析から、下記の数式(1)〜(4)に従い、等価剪断弾性率(Ge)、等価減衰定数(Ce)および減衰定数(he)を求めた。なお、測定条件は、剪断歪み量:±10mm(試料厚みに対して200%)、周波数(f):3Hz、測定温度:10℃、20℃および30℃であった。これらの結果を後記の表5〜表8に併せて示した。
Figure 0004982081
〔Ge,Ce,heの低下率〕
上記動的剪断特性の評価に準じて、Ge、Ceおよびheの低下率を前述の式(a)〜(c)に従って算出した。すなわち、上記動的剪断特性の評価に準じて、試料を作製し、これを、矢印方向に10サイクル加振させて、Ge、Ceおよびheをそれぞれ測定した(初期値)。なお、測定条件は、剪断歪み量:±10mm(試料厚みに対して200%)、周波数(f):3Hz、測定温度:20℃であった。つぎに、上記加振後の試料を、3日後に再度同条件にて加振して、2波目を比較し、前述の式(a)〜(c)に従って、低下率を測定した。
〔熱老化評価〕
各エラストマー組成物を、ギアオーブンにより老化条件(80℃×168時間)で熱老化した。つぎに、剪断動的性能につき、アルファテクノロジー社製のRPA2000を用いて、温度30℃,周波数3Hz,剪断歪み100%の条件下、熱老化前後の材料の弾性率(G)および減衰定数(he)をそれぞれ測定し、熱老化前後の変化率を求めた。
〔総合評価〕
コールドフロー性が良好で、20℃の等価剪断弾性率(Ge)が0.05(N/mm2)以上、20℃の減衰定数(he)が0.4以上、Ge10℃/Ge30℃の比が2未満であって、臨界値付近にあるものを○、上記○のなかでも臨界値を遥かに超えるものを◎、20℃の等価剪断弾性率(Ge)が0.05(N/mm2)未満、20℃の減衰定数(he)が0.4未満で0.34以上のいずれか一つでも該当するものがあるものを△、コールド性が劣るか、もしくは20℃の減衰定数(he)が0.34未満のものを×として、剪断特性の総合評価を行った。
Figure 0004982081
Figure 0004982081
Figure 0004982081
Figure 0004982081
Figure 0004982081
上記結果から、実施例品はいずれも、高減衰、高剛性で、温度依存性が小さく、コールドフロー性も良好であった。特に、実施例1926品は、特定の減衰性充填材(炭酸カルシウムb〜d)を配合しているため、減衰定数(he)が高く(he≧0.5)、減衰性能がさらに向上した。また、減衰性充填材(ロジン酸処理炭酸カルシウム)とともに補強性充填材を含有し、かつ、上記補強性充填材が、ハイスチレン樹脂またはポリスチレンである実施例25,6品は、Ge、Ceおよびheの低下率がいずれも10%以下であった。また、実施例2728品は、表面処理シリカを用いているため、表面処理していない通常のシリカを用いた実施例18と対比すると、耐熱老化性(耐久性)が向上した。
これに対して、比較例1品は、液状ポリマーを用いていないため、減衰定数が低く、減衰性能が劣っていた。比較例2品は、スチレン系熱可塑性エラストマー全体に占めるジブロック成分の含有量が小さすぎるため、減衰定数が低く、減衰性能が劣っていた。比較例3品は、スチレン系熱可塑性エラストマー全体に占めるジブロック成分の含有量が大きすぎるため、コールドフロー性が劣っていた。
本発明の高減衰エラストマー組成物は、建築用,土木用等の制震ダンパーとして好適に用いられるが、これらに限定されるものではなく、建築用の制震壁等の制震装置や免震装置に用いられる他、家電用や電子機器用の制振ダンパー、制振材、衝撃吸収材、自動車用の制振材、衝撃吸収材等に用いることもできる。
動的剪断特性の評価方法を説明するための模式図である。 荷重−歪みループ曲線を示すグラフ図である。

Claims (9)

  1. 下記の(A)および(B)とともに(C)および(D)を必須成分とすることを特徴とする高減衰エラストマー組成物。
    (A)下記の(a1)〜(a4)からなる群から選ばれた少なくとも(a1)を含有するスチレン系熱可塑性エラストマーであって、上記(a1)の含有量がスチレン系熱可塑性エラストマー全体の65重量%以上で、かつ、スチレン系ジブロック成分の含有量がスチレン系熱可塑性エラストマー全体の50〜85重量%の範囲内である。
    (a1)スチレン−イソプレンジブロック成分を含有するスチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー。
    (a2)スチレン−エチレン・プロピレンジブロック成分を含有するスチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロックポリマー。
    (a3)スチレン−ブタジエンジブロック成分を含有するスチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマー。
    (a4)スチレン−エチレン・ブチレンジブロック成分を含有するスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロックポリマー。
    (B)液状イソプレンゴム,液状ブタジエンゴム,液状スチレン−イソプレンゴム,液状スチレン−エチレン・プロピレンゴムおよび液状イソプレン−ブタジエンゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つの液状ポリマー。
    (C)シリカ、表面処理シリカ、ハイスチレン樹脂およびポリスチレンからなる群から選ばれた少なくとも一つの補強性充填材。
    (D)ロジン酸処理炭酸カルシウム、リグニン処理炭酸カルシウム、脂肪酸処理炭酸カルシウムおよび脂肪酸第四級アンモニウム塩処理炭酸カルシウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの減衰性充填材。
  2. 上記(B)成分の配合量が、上記(A)成分100重量部に対して、5〜100重量部の範囲内である請求項1記載の高減衰エラストマー組成物。
  3. 上記(C)成分の配合量が上記(A)成分100重量部に対して2〜165重量部の範囲内、上記(D)成分の配合量が上記(A)成分100重量部に対して2〜165重量部の範囲内、かつ上記(C)成分および(D)成分の合計量が上記(A)成分100重量部に対して50〜200重量部の範囲内である請求項1または2記載の高減衰エラストマー組成物。
  4. 記補強性充填材が、ハイスチレン樹脂またはポリスチレンである請求項1〜3のいずれか一項に記載の高減衰エラストマー組成物。
  5. 天然アスファルトを含有し、天然アスファルトの配合量が上記(A)成分100重量部に対して1〜50重量部の範囲内である請求項1〜のいずれか一項に記載の高減衰エラストマー組成物。
  6. 老化防止剤を含有し、老化防止剤の配合量が上記(A)成分100重量部に対して1〜20重量部の範囲内である請求項1〜のいずれか一項に記載の高減衰エラストマー組成物。
  7. ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、および天然ゴム(NR)からなる群から選ばれた少なくとも一つのジエン系ゴムを含有し、上記ジエン系ゴムの配合量が上記(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して10〜100重量部の範囲内である請求項1〜6のいずれか一項に記載の高減衰エラストマー組成物。
  8. 請求項1〜のいずれか一項に記載の高減衰エラストマー組成物を構成部材として用いてなる制震ダンパーであって、動的剪断特性評価(周波数3Hz、剪断歪み率200%)において、下記の式(α)および(β)の双方の特性を備えていることを特徴とする制震ダンパー。
    Figure 0004982081
  9. 下記の式(a),(b)および(c)の特性を全て備えている請求項記載の制震ダンパー。
    Figure 0004982081
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