JP5330460B2 - 高減衰組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、振動エネルギーの伝達を緩和したり吸収したりする高減衰部材のもとになる高減衰組成物に関するものである。
例えばビルや橋梁等の建築物、産業機械、航空機、自動車、鉄道車両、コンピュータやその周辺機器類、家庭用電気機器類、さらには自動車用タイヤ等の幅広い分野において高減衰部材が用いられる。前記高減衰部材を用いることで、振動エネルギーの伝達を緩和したり吸収したりする、すなわち免震、制震、制振、防振等をすることができる。
前記高減衰部材は、天然ゴム等をベースポリマとして含む高減衰組成物によって形成される。前記高減衰組成物には、振動が加えられた際のヒステリシスロスを大きくして前記振動のエネルギーを効率よく速やかに減衰する性能、すなわち減衰性能を高めるために、カーボンブラック、シリカ等の無機充填剤、あるいはロジン、石油樹脂等の粘着性付与剤等を配合するのが一般的である(例えば特許文献1〜3等参照)。
しかし、これら従来の高減衰組成物では高減衰部材の減衰性能を十分に高めることはできない。高減衰部材の減衰性能を現状よりもさらに高めるためには、無機充填剤や粘着性付与剤等の配合割合をさらに増加させること等が考えられる。
ところが、多量の無機充填剤や粘着性付与剤を配合した高減衰組成物は加工性が低下して、所望の立体形状を有する高減衰部材を製造するために前記高減衰組成物を混練したり、前記立体形状に成形加工したりするのが容易でないという問題がある。
特に工場レベルで高減衰部材を量産する場合、前記加工性の低さは高減衰部材の生産性を大きく低下させ、生産に要するエネルギーを増大させ、さらには生産コストを高騰させる原因となるため望ましくない。
そこで、加工性を低下させずに減衰性能を向上するため、特許文献4では、極性側鎖を有するベースポリマに、2以上の極性基を有する減衰性付与剤等を配合することが検討されている。
しかし前記極性側鎖を有するもの等の、分子中に極性基を有するベースポリマは、一般にガラス転移温度Tgが室温(3〜35℃)付近に存在することから、前記ベースポリマを含む高減衰組成物を用いて形成した高減衰部材は、最も一般的な使用温度域である前記室温付近において、特に剛性等の特性の温度依存性が大きくなる傾向がある。
特許文献5では、極性側鎖を有しないベースポリマに、シリカと、2以上の極性基を有する減衰性付与剤等とを配合することが検討されている。かかる構成によれば、シリカを併用することで良好な減衰性能を維持しながら、ベースポリマとして極性基を有しないものを用いることで、室温付近での特性の温度依存性を小さくすることができる。
しかし、現状よりも減衰性能をさらに向上するために、前記減衰性付与剤の配合割合を増加させた場合には、前記減衰性付与剤が高減衰部材の表面にブルームしやすくなるという問題がある。
特許文献6では、減衰性付与剤として特定の軟化点を有するロジン誘導体を用いることで、さらに減衰性能を向上することが検討されている。
しかし、現状よりもさらに減衰性能を向上するためにロジン誘導体の配合割合を増加させた場合には、粘着性が高くなりすぎて高減衰組成物の加工性が低下するという問題を生じる。
特開2003−2014号公報 特開2007−63425号公報 特開平7−41603号公報 特開2000−44813号公報 特開2009−138053号公報 特開2010−189604号公報
前記特許文献1〜6に記載の高減衰組成物によれば、前記のように種々の問題を生じるおそれはあるものの、各成分の配合割合等を適度に調整することで、ある程度の高い減衰性能と良好な加工性とを両立することは可能である。
しかし、前記従来の高減衰組成物を用いて形成した高減衰部材は、いずれも大きな変形が加えられたあとの弾性率が低下する、いわゆるマリンス効果(Mullins’ effect)を生じ易くなり、高減衰部材としての所期の性能を十分に発揮させることができないため、様々な問題を生じる場合がある。
例えば建築物の免震、制震を担う制震用ダンパ等が大変形して弾性率が低下すると、地震のエネルギーが建築物に伝わるのを確実に防止できなくなるおそれがある。そのため、かかる弾性率の低下を織り込んだ上で所期の性能を確保するために、制震用ダンパ等の製品としての設計が複雑になるという問題がある。
本発明の目的は、高い減衰性能を有する上、大変形が加えられたあとの弾性率の低下が小さい高減衰部材を製造しうる、新規な高減衰組成物を提供することにある。
本発明は、ベースポリマとしての、天然ゴム、イソプレンゴム、およびブタジエンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴム100質量部に、3質量部以上、50質量部以下の、酸価が155mgKOH/g以上であるロジン誘導体、100質量部以上、180質量部以下のシリカ、0.1質量部以上、10質量部以下のイミダゾール系化合物、および0.1質量部以上、20質量部以下のヒンダードフェノール系化合物を配合したことを特徴とする高減衰組成物である。
発明者の検討によると、ロジン誘導体、シリカ、イミダゾール系化合物、およびヒンダードフェノール系化合物を併用することにより、前記各成分の配合割合を増加させることなく、したがって高減衰組成物の加工性を低下させたりブルーム等の問題を生じたりすることなしに、前記高減衰組成物を用いて形成される高減衰部材の減衰性能を現状よりもさらに向上することができる。
またロジン誘導体として、酸価が155mgKOH/g以上であるものを選択して用いることにより、後述する実施例、比較例の結果からも明らかなように、大変形が加えられたあとの弾性率の低下を抑制することもできる。そのため、例えば制震用ダンパ等であれば、所期の性能を確保するための製品としての設計を簡略化することができる。
また、ロジン誘導体、シリカ、イミダゾール系化合物、およびヒンダードフェノール系化合物として、それぞれ種類が異なるものを、前記所定の範囲内で配合割合を調整して配合することにより、高減衰部材の減衰性能設計の自由度を向上できるため、高減衰部材の設計に減衰性能を織り込む際に有利である。
ベースポリマとしては、ロジン誘導体、シリカ、イミダゾール系化合物、およびヒンダードフェノール系化合物を配合することで高い減衰性能を発揮しうる種々のベースポリマのうち、天然ゴム、イソプレンゴム、およびブタジエンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴムが用いられる
これらのゴムは、極性基を有さず室温付近での剛性等の特性の温度依存性が小さいため、減衰性能の温度依存性を小さくして、広い温度範囲で安定した減衰性能を発揮しうる高減衰部材を形成できる
前記本発明の高減衰組成物を形成材料として用いて、高減衰部材としての建築物の制震用ダンパを形成した場合には、地震の発生により大変形しても弾性率が大きく低下しないため、前記地震のエネルギーが建築物に伝わるのを確実に防止することができる。またそのため、所期の性能を確保するための、制震用ダンパの設計を簡略化することもできる。
本発明によれば、高い減衰性能を有する上、大変形が加えられたあとの弾性率の低下が小さい高減衰部材を製造しうる、新規な高減衰組成物を提供することができる。
本発明の実施例、比較例の高減衰組成物からなる高減衰部材の減衰性能を評価するために作製する、前記高減衰部材のモデルとしての試験体を分解して示す分解斜視図である。 同図(a)(b)は、前記試験体を変位させて変位量と荷重との関係を求めるための試験機の概略を説明する図である。 前記試験機を用いて試験体を変位させて求められる、変位量と荷重との関係を示すヒステリシスループの一例を示すグラフである。
本発明は、ベースポリマとしての、天然ゴム、イソプレンゴム、およびブタジエンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴム100質量部に、3質量部以上、50質量部以下の、酸価が155mgKOH/g以上であるロジン誘導体、100質量部以上、180質量部以下のシリカ、0.1質量部以上、10質量部以下のイミダゾール系化合物、および0.1質量部以上、20質量部以下のヒンダードフェノール系化合物を配合したことを特徴とする高減衰組成物である。
(ベースポリマ)
ベースポリマとしては、ロジン誘導体、シリカ、イミダゾール系化合物、およびヒンダードフェノール系化合物を配合することで高い減衰性能を発揮しうる種々のベースポリマのうち、天然ゴム、イソプレンゴム、およびブタジエンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴムが用いられる
これらのゴムは、極性基を有さず室温付近での剛性等の特性の温度依存性が小さいため、減衰性能の温度依存性を小さくして広い温度範囲で安定した減衰性能を示す高減衰部材を形成できる
ゴムは2種以上を併用してもよいが、高減衰組成物の組成を簡略化して前記高減衰組成物、ならびに高減衰部材の生産性を向上し、さらには生産コストを低減することを考慮すると、いずれか1種を単独で用いるのが好ましい。
(ロジン誘導体)
ロジン誘導体としては、例えばロジンと多価アルコール(グリセリン等)とのエステルやロジン変性マレイン酸樹脂等の、構成成分としてロジンを含む樹脂であって、粘着性付与剤として機能して高減衰部材の減衰性能を向上する効果を有する種々の誘導体の中から、酸価が155mgKOH/g以上であるものを選択して用いる。これにより、大変形が加えられたあとの弾性率の低下を抑制することができる。大変形を加えると一旦、シリカやイミダゾール化合物と、ロジン誘導体との弱い結合が離れるが、酸価が前記範囲内であるロジン誘導体は相互作用が多い分、すぐに再結合して弾性率が回復し易いためであると考えられる。
なおロジン誘導体の酸価は、大変形が加えられたあとの弾性率の低下をさらに抑制することを考慮すると、前記範囲内でも160mgKOH/g以上、特に220mgKOH以上であるのが好ましい。またロジン誘導体の酸価は、高すぎると極性が高くなりすぎてベースポリマに馴染みにくくなるため、前記範囲内でも330mgKOH/g以下、特に300mgKOH/g以下であるのが好ましい。
またロジン誘導体は、軟化点が80℃以上であるのが好ましく、140℃以下であるのが好ましい。
軟化点が前記範囲未満では、高減衰部材の減衰性能を向上する効果が十分に得られないおそれがある。一方、前記範囲を超える場合には加工性が低下して、高減衰組成物を調製するために各成分を混練したり、高減衰部材を製造するために前記高減衰組成物を混練したり、あるいは任意の形状に成形加工したりするのが容易でなくなるおそれがある。
なお軟化点は、日本工業規格JIS K2207−1996「石油アスファルト」所載の軟化点試験方法(環球法)によって測定した値でもって表すこととする。
前記ロジン誘導体としては、例えば、いずれも荒川化学工業(株)製のパインクリスタル(登録商標)シリーズのうちKR−85(酸価:165〜175mgKOH/g、軟化点:80〜87℃)、KR−612(酸価:160〜175mgKOH/g、軟化点:80〜90℃)、KR−614(酸価:170〜180mgKOH/g、軟化点:84〜94℃)、KE−604(酸価:230〜245mgKOH/g、軟化点:122〜134℃)等の1種または2種以上が挙げられる。
特に酸価と軟化点とを考慮すると、前記の中でもKR−612、KE−604が好ましい。
ロジン誘導体の配合割合は、ベースポリマ100質量部あたり3質量部以上、50質量部以下である必要がある。
配合割合が3質量部未満では、ロジン誘導体を配合することによる、高減衰部材の減衰性能を向上する効果が得られない。また50質量部を超える場合にはロジン誘導体による粘着性が増大して加工性が低下し、高減衰組成物を調製するために各成分を混練したり、高減衰部材を製造するために前記高減衰組成物を混練したり、あるいは任意の形状に成形加工したりできなくなる。
なおロジン誘導体の配合割合は、高減衰部材の減衰性能をより一層向上することを考慮すると、前記範囲内でも10質量部以上であるのが好ましい。また大変形が加えられたあとの弾性率の低下をできるだけ小さくすることを考慮すると、前記範囲内でも20質量部以下であるのが好ましい。
(シリカ)
シリカとしては、その製法によって分類される湿式法シリカ、乾式法シリカのいずれを用いてもよい。またシリカとしては、充填剤として機能して高減衰部材の減衰性能を向上する効果を向上することを考慮すると、BET比表面積が100m/g以上、特に200m/g以上であるものを用いるのが好ましく、400m/g以下、特に250m/g以下であるものを用いるのが好ましい。
BET比表面積は、例えば柴田化学器械工業(株)製の迅速表面積測定装置SA−1000等を使用して、吸着気体として窒素ガスを用いる気相吸着法で測定した値でもって表すこととする。
前記シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)製のNipsil(登録商標)KQ、VN3、AQ、ER等の1種または2種以上が挙げられる。
シリカの配合割合は、ベースポリマ100質量部あたり100質量部以上、180質量部以下である必要がある。
配合割合が100質量部未満では、シリカを配合することによる、高減衰部材の減衰性能を向上する効果が得られない。また180質量部を超える場合には、前記特定のロジン誘導体を配合することによる、大変形が加えられたあとの弾性率の低下を小さくする効果が得られない。
また180質量部を超える場合には、高減衰組成物の加工性が低下して、所望の立体形状を有する高減衰部材を、特に工場レベルで大量に生産するのが難しくなる場合もある。また試作レベルで少数の高減衰部材を形成することは可能であるが、形成した高減衰部材は硬く、かつ変形し難いため、特に大変形時に破壊されやすいという問題を乗じる場合もある。
なおシリカの配合割合は、高減衰部材の減衰性能をより一層向上することを考慮すると、前記範囲内でも135質量部以上であるのが好ましい。また大変形が加えられたあとの弾性率の低下をできるだけ小さくすることを考慮すると、前記範囲内でも150質量部以下であるのが好ましい。
(イミダゾール系化合物)
イミダゾール系化合物としては、分子中にイミダゾール環を有する種々の化合物のうち、シリカ、ロジン誘導体、およびヒンダードフェノール系化合物を含む高減衰組成物からなる高減衰部材の減衰性能を向上する機能を有する種々のイミダゾール系化合物が挙げられる。
前記イミダゾール系化合物としては、例えばイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−イミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等の1種または2種以上が挙げられる。
特に高減衰部材の減衰性能を向上する効果の点でイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾールが好ましく、中でもイミダゾールが最も好ましい。
イミダゾール系化合物の配合割合は、ベースポリマ100質量部あたり0.1質量部以上、10質量部以下である必要がある。
配合割合が0.1質量部未満では、高減衰部材の減衰性能を向上する効果が得られない。また10質量部を超える場合には焼けを生じやすくなって加工性が低下し、高減衰組成物を調製するために各成分を混練したり、高減衰部材を製造するために前記高減衰組成物を混練したり、あるいは任意の形状に成形加工したりできなくなる。
なおイミダゾール系化合物の配合割合は、高減衰組成物の良好な加工性を維持しつつ、高減衰部材の減衰性能をより一層向上することを考慮すると、前記範囲内でも0.3質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。
(ヒンダードフェノール系化合物)
ヒンダードフェノール系化合物としては、分子中の水酸基がシリカ表面の水酸基と相互作用することによって、前記シリカの、ベースポリマを始めとする有機系の各成分に対する親和性、相溶性を向上させて、高減衰部材の減衰性能をさらに向上させる働きをする種々のヒンダードフェノール系化合物がいずれも使用可能である。
前記ヒンダードフェノール系化合物としては、前記水酸基を2つ以上有する種々のヒンダードフェノール系化合物、特にビスフェノール系防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、チオビスフェノール系老化防止剤、ヒドロキノン系老化防止剤等の老化防止剤の1種または2種以上が好ましい。
前記のうちビスフェノール系老化防止剤としては、例えば1,1−ビス(3−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)]−p−クレゾール、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[2−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルプロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物等の1種または2種以上が挙げられる。
ポリフェノール系老化防止剤としては、例えばテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
チオビスフェノール系老化防止剤としては、例えば4,4−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4′−チオビス(6−tert−ブチル−o−クレゾール)等の1種または2種以上が挙げられる。
さらにヒドロキノン系老化防止剤としては、例えば2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルアミルヒドロキノン等の1種または2種以上が挙げられる。
ヒンダードフェノール系化合物の配合割合は、ベースポリマ100質量部あたり0.1質量部以上、20質量部以下である必要がある。
配合割合が0.1質量部未満では、高減衰部材の減衰性能を向上する効果が得られない。また20質量部を超える場合には、過剰のヒンダードフェノール系化合物が、先に説明したように高減衰部材の表面にブルームしやすくなるという問題がある。
なおヒンダードフェノール系化合物の配合割合は、高減衰部材の減衰性能をより一層向上することを考慮すると、前記範囲内でも1質量部以上、特に2.5質量部以上であるのが好ましい。
(その他)
本発明の高減衰組成物には、さらに加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等の、脱蛋白天然ゴムを加硫させるための加硫系の添加剤や、シラン化合物、軟化剤、粘着性付与剤、ヒンダードフェノール系以外の他の老化防止剤等の各種添加剤を、適宜の割合で配合してもよい。
このうちシラン化合物としては、式(a):
Figure 0005330460
〔式中、R、R、R、およびRのうちの少なくとも1つはアルコキシ基を示す。ただしR、R、R、およびRが同時にアルコキシ基であることはなく、他はアルキル基またはアリール基を示す。〕
で表され、シランカップリング剤やシリル化剤等の、シリカの分散剤として機能しうる種々のシラン化合物が挙げられる。
特にヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のアルコキシシランが好ましい。
前記シラン化合物としては、例えば信越化学工業(株)製のKBE−103(フェニルトリエトキシシラン)等が挙げられる。
シラン化合物の配合割合は特に限定されないが、シリカ100質量部あたり5質量部以上であるのが好ましく、25質量部以下であるのが好ましい。
軟化剤としては、クマロンインデン樹脂、液状ゴム等の1種または2種以上が挙げられる。
このうちクマロンインデン樹脂としては、主にクマロンとインデンの重合物からなり、平均分子量1000以下程度の比較的低分子量であって、軟化剤として機能しうる種々のクマロンインデン樹脂が挙げられる。
前記クマロンインデン樹脂としては、例えば日塗化学(株)製のニットレジン(登録商標)クマロンG−90〔平均分子量:770、軟化点:90℃、酸価:1.0KOHmg/g以下、水酸基価:25KOHmg/g、臭素価9g/100g〕、G−100N〔平均分子量:730、軟化点:100℃、酸価:1.0KOHmg/g以下、水酸基価:25KOHmg/g、臭素価11g/100g〕、V−120〔平均分子量:960、軟化点:120℃、酸価:1.0KOHmg/g以下、水酸基価:30KOHmg/g、臭素価6g/100g〕、V−120S〔平均分子量:950、軟化点:120℃、酸価:1.0KOHmg/g以下、水酸基価:30KOHmg/g、臭素価7g/100g〕等の1種または2種以上が挙げられる。
クマロンインデン樹脂の配合割合は特に限定されないが、脱蛋白天然ゴム100質量部あたり5質量部以上であるのが好ましく、50質量部以下であるのが好ましい。
また液状ゴムとしては、室温(3〜35℃)で液状を呈する種々のゴムが挙げられる。前記液状ゴムとしては、例えば液状ポリイソプレンゴム、液状ニトリルゴム(液状NBR)、液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR)等の1種または2種以上が挙げられる。
このうち液状ポリイソプレンゴムが好ましい。前記液状ポリイソプレンゴムとしては、例えば(株)クラレ製のクラプレン(登録商標)LIR−50等が挙げられる。
液状ポリイソプレンゴムの配合割合は特に限定されないが、脱蛋白天然ゴム100質量部あたり5質量部以上であるのが好ましく、80質量部以下であるのが好ましい。
粘着性付与剤としては、例えば石油樹脂等が挙げられる。また石油樹脂としては、例えば丸善石油化学(株)製のマルカレッツ(登録商標)M890A〔ジシクロペンタジエン系石油樹脂、軟化点:105℃〕等が好ましい。
前記石油樹脂の配合割合は特に限定されないが、脱蛋白天然ゴム100質量部あたり3質量部以上であるのが好ましく、50質量部以下であるのが好ましい。
老化防止剤としては、例えばベンズイミダゾール系、キノン系、ポリフェノール系、アミン系等の各種老化防止剤の1種または2種以上が挙げられる。特にベンズイミダゾール系老化防止剤とキノン系老化防止剤を併用するのが好ましい。
このうちベンズイミダゾール系老化防止剤としては、例えば大内新興化学工業(株)製のノクラック(登録商標)MB〔2−メルカプトベンズイミダゾール〕等が挙げられる。またキノン系老化防止剤としては、例えば丸石化学品(株)製のアンチゲンFR〔芳香族ケトン−アミン縮合物〕等が挙げられる。
両老化防止剤の配合割合は特に限定されないが、ベンズイミダゾール系老化防止剤は、脱蛋白天然ゴム100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。またキノン系労防止剤は、脱蛋白天然ゴム100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。
加硫剤としては、例えば硫黄や含硫黄有機化合物等が挙げられる。特に硫黄が好ましい。
加硫促進剤としては、例えばスルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤等が挙げられる。加硫促進剤は、種類によって加硫促進のメカニズムが異なるため前記両者を併用するのが好ましい。
このうちスルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)NS〔N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド〕等が挙げられる。またチウラム系加硫促進剤としては、例えば大内新興化学工業(株)製のノクセラーTBT〔テトラブチルチウラムジスルフィド〕等が挙げられる。
加硫促進助剤としては例えば亜鉛華、ステアリン酸等が挙げられる。通常は両者を加硫促進助剤として併用するのが好ましい。
前記加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤の配合割合は、高減衰部材の用途等によって異なる減衰性能やゴム硬さ等の特性に応じて適宜調整すればよい。
本発明の高減衰組成物は、前記の各成分を任意の混練機を用いて混練して調製され、前記高減衰組成物を所望の立体形状に成形加工するとともに脱蛋白天然ゴムを加硫することで、所定の減衰性能を有する高減衰部材が製造される。
本発明の高減衰組成物を用いて製造できる高減衰部材としては、例えばビル等の建築物の基礎に組み込まれる免震用ダンパ、建築物の構造中に組み込まれる制震(制振)用ダンパ、吊橋や斜張橋等のケーブルの制振部材、産業機械や航空機、自動車、鉄道車両等の防振部材、コンピュータやその周辺機器類、あるいは家庭用電気機器類等の防振部材、さらには自動車用タイヤのトレッド等が挙げられる。
本発明によれば、前記シリカ、ロジン誘導体、イミダゾール系化合物、およびヒンダードフェノール系化合物の種類とその組み合わせおよび配合割合を前記範囲内で調整することにより、前記それぞれの用途に適した優れた減衰性能を有する高減衰部材を得ることができる。
特に本発明の高減衰組成物を用いて建築物の構造中に組み込まれる制震用ダンパを形成した場合には、前記制震用ダンパが振動の減衰性能に優れるとともに、大変形が加えられたあとの弾性率の低下が小さいため、所期の性能を確保するための製品としての設計を簡略化できる上、1つの建築物中に組み込む制震用ダンパの数量を減らすことができる。
以下の実施例、比較例における高減衰組成物の調製、および試験を、特記した以外は温度20℃、相対湿度55%の環境下で実施した。
〈実施例1〉
ベースポリマとしての天然ゴム〔SMR(Standard Malaysian Rubber)−CV60〕100質量部に、
* シリカ〔東ソー・シリカ(株)製のNipsil(ニップシール)KQ〕135質量部、
* ロジン誘導体〔変性ロジン誘導体、酸価:230〜245mgKOH/g、軟化点:122〜134℃、荒川化学工業(株)製のパインクリスタル(登録商標)KE−604〕10質量部、
* イミダゾール系化合物としてのイミダゾール〔日本合成化学工業(株)製〕2.5質量部、および
* ヒンダードフェノール系化合物としての4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)〔大内新興化学工業(株)製のノクラック(登録商標)NS−30〕2.5質量部
と、下記表1に示す各成分とを配合し、密閉式混練機を用いて混練して高減衰組成物を調製した。
Figure 0005330460
表1中の各成分は下記のとおり。
フェニルトリエトキシシラン:信越化学工業(株)製のKBE−103
ジシクロペンタジエン系石油樹脂:軟化点105℃、丸善石油化学(株)製のマルカレッツ(登録商標)M890A
クマロン樹脂:軟化点90℃、日塗化学(株)製のエスクロン(登録商標)G-90
ベンズイミダゾール系老化防止剤:2−メルカプトベンズイミダゾール、大内新興化学工業(株)製のノクラックMB
キノン系老化防止剤:丸石化学品(株)製のアンチゲンFR
5%オイル処理粉末硫黄:加硫剤、鶴見化学工業(株)製
スルフェンアミド系加硫促進剤:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)NS
チウラム系加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーTBT−N
酸化亜鉛2種:三井金属鉱業(株)製
ステアリン酸:日油(株)製の「つばき」
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラック(登録商標)G
液状ポリイソプレンゴム:軟化剤、(株)クラレ製のLIR50
〈実施例2〉
ロジン誘導体として、酸価が160〜175mgKOH/g、軟化点が80〜90℃である変性ロジン誘導体〔荒川化学工業(株)製のパインクリスタル(登録商標)KE−612〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
〈実施例3〉
ロジン誘導体として、酸価が185〜210mgKOH/g、軟化点が155〜165℃であるロジン変性特殊合成樹脂〔ハリマ化成(株)製の商品名ハリマックAS−5〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
〈比較例1〉
ロジン誘導体として、酸価が32〜38mgKOH/g、軟化点が130〜140℃であるロジン変性マレイン酸樹脂〔ハリマ化成(株)製の商品名ハリマック135GN〕を同量配合するとともに、イミダゾール系化合物、およびヒンダードフェノール系化合物を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
〈比較例2〉
ロジン誘導体として、酸価が32〜38mgKOH/g、軟化点が130〜140℃であるロジン変性マレイン酸樹脂〔ハリマ化成(株)製の商品名ハリマック135GN〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
〈比較例3〉
ロジン誘導体に代えて、酸価が140mgKOH/g以下、軟化点が130〜140℃であるマレイン酸樹脂〔荒川化学工業(株)製のマルキード(登録商標)No.32〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
〈比較例4〉
ロジン誘導体として、酸価が120〜150mgKOH/g、軟化点が120〜135℃であるロジン変性特殊合成樹脂〔ハリマ化成(株)製の商品名ハリエスターMSR−4〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
〈減衰特性試験〉
(試験体の作製)
実施例、比較例で調製した高減衰組成物をシート状に押出成形したのち打ち抜いて、図1に示すように円板1(厚み5mm×直径25mm)を作製し、前記円板1の表裏両面に、それぞれ加硫接着剤を介して厚み6mm×縦44mm×横44mmの矩形平板状の鋼板2を重ねて積層方向に加圧しながら150℃に加熱して円板1を形成する高減衰組成物を加硫させるとともに、前記円板1を2枚の鋼板2と加硫接着させて、高減衰部材のモデルとしての減衰特性評価用の試験体3を作製した。
(変位試験)
図2(a)に示すように前記試験体3を2個用意し、前記2個の試験体3を、一方の鋼板2を介して1枚の中央固定治具4にボルトで固定するとともに、それぞれの試験体3の他方の鋼板2に、1枚ずつの左右固定治具5をボルトで固定した。そして中央固定治具4を、図示しない試験機の上側の固定アーム6に、ジョイント7を介してボルトで固定し、かつ2枚の左右固定治具5を、前記試験機の下側の可動盤8に、ジョイント9を介してボルトで固定した。
次にこの状態で、可動盤8を図中に白抜きの矢印で示すように固定アーム6の方向に押し上げるように変位させて、試験体3のうち円板1を、図2(b)に示すように前記試験体3の積層方向と直交方向に歪み変形させた状態とし、次いでこの状態から、可動盤8を図中に白抜きの矢印で示すように固定アーム6の方向と反対方向に引き下げるように変位させて、前記図2(a)に示す状態に戻す操作を1サイクルとして、前記試験体3のうち円板1を繰り返し歪み変形、すなわち振動させた際の、前記試験体3の積層方向と直交方向への円板1の変位量(mm)と荷重(N)との関係を示すヒステリシスループH(図3参照)を求めた。
測定は、前記操作を3サイクル行って3回目の値を求めた。また最大変位量は、円板1を挟む2枚の鋼板2の、前記積層方向と直交方向のずれ量が、前記円板1の厚みの100%となるように設定した。
次いで、前記測定により求めた図3に示すヒステリシスループHのうち最大変位点と最小変位点とを結ぶ、図中に太線の実線で示す直線Lの傾きKeq(N/mm)を求め、前記傾きKeq(N/mm)と、円板1の厚みT(mm)と、円板1の断面積A(mm)とから、式(1):
Figure 0005330460
により等価せん断弾性率Geq(N/mm)を求めた。そして、比較例1における等価せん断弾性率Geq(N/mm)を100としたときの、各実施例、比較例の等価せん断弾性率Geq(N/mm)の相対値を求めた。
また図3中に斜線を付して示した、ヒステリシスループHの全表面積で表される吸収エネルギー量ΔWと、同図中に網線を付して示した、前記直線Lと、グラフの横軸と、直線LとヒステリシスループHとの交点から前記横軸におろした垂線Lとで囲まれた領域の表面積で表される弾性歪みエネルギーWとから、式(2):
Figure 0005330460
により等価減衰定数Heqを求めた。等価減衰定数Heqが大きいほど、試験体3は減衰性能に優れていると判定できる。
そこで、比較例1における等価減衰定数Heqを100としたときの、各実施例、比較例の等価減衰定数Heqの相対値を求め、前記相対値が105以上のものを良好、105未満のものを不良と評価した。
〈大変形後の弾性率測定〉
最大変位量を、円板1を挟む2枚の鋼板2の、前記積層方向と直交方向のずれ量が、前記円板1の厚みの300%となるように設定したこと以外は前記と同様にして前記円板1を1回大変形させたのち、前記と同様にして、ずれ量が100%のときのせん断弾性率Geq′(N/mm)を求めた。
そして式(3):
Figure 0005330460
により、大変形後の弾性率の保持率(%)を求めた。保持率が大きいほど、試験体3は大変形が加えられたあとの弾性率の低下が小さいと判定できる。
そこで、比較例1における保持率を100としたときの、各実施例、比較例の保持率の相対値を求め、前記相対値が100以上のものを良好、100未満のものを不良と評価した。
以上の結果を表2に示す。
Figure 0005330460
表2の比較例1〜4の結果より、シリカ、ロジン誘導体、イミダゾール系化合物、およびヒンダードフェノール系化合物の4種を併用することで、高減衰部材の減衰性能を向上できるものの、前記ロジン誘導体の酸価が155mgKOH/g未満では、大変形が加えられたあとの弾性率の低下が大きくなることが判った。
これに対し実施例1〜3の結果より、前記ロジン誘導体として酸価が155mgKOH/g以上であるものを選択して用いることにより、高減衰部材の良好な減衰性能を維持しつつ、大変形が加えられたあとの弾性率の低下を小さくできることが判った。
また前記ロジン誘導体としては、酸価が、前記範囲内でも160mgKOH/g以上であるもの、特に220mgKOH/g以上であるものを用いるのが好ましいことも判った。
また、軟化点が140℃を超えるロジン誘導体を用いた実施例3は、前記軟化点が140℃以下であるロジン誘導体を用いた実施例1、2に比べて高減衰組成物を調製するために各成分を混練するのに長時間を要した。このことから、ロジン誘導体の軟化点は140℃以下であるのが好ましいことも判った。
〈実施例4〜7、比較例5〉
ロジン誘導体〔変性ロジン誘導体、酸価:230〜245mgKOH/g、軟化点:122〜134℃、荒川化学工業(株)製のパインクリスタル(登録商標)KE−604〕の配合割合を2質量部(比較例5)、3質量部(実施例4)、20質量部(実施例5)、30質量部(実施例6)、および50質量部(実施例7)としたこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
〈比較例6〉
前記ロジン誘導体の配合割合を55質量部としたところ、粘着性が強すぎて、各成分の混合物を混練して高減衰組成物を調製することができなかった。
そこで比較例6を除く各実施例、比較例の高減衰組成物について前記各試験を行って特性を評価した。結果を、実施例1の結果と併せて表3に示す。
Figure 0005330460
表3の比較例5の結果より、酸価が155mgKOH/g以上であるロジン誘導体を含む前記4種の併用系であっても、前記ロジン誘導体の配合割合が3質量部未満では、高減衰部材の減衰性能を向上できないことが判った。また比較例6の結果より、前記ロジン誘導体の配合割合が50質量部を超える場合には、高減衰組成物の加工性が低下することが判った。
これに対し実施例1、4〜7の結果より、前記ロジン誘導体の配合割合を3質量部以上、50質量部以下とすることにより、高減衰組成物の良好な加工性を維持しながら、高減衰部材の減衰性能を向上できることが判った。
また前記ロジン誘導体の配合割合は、高減衰部材の減衰性能をより一層向上するためには、前記範囲内でも10質量部以上であるのが好ましいこと、大変形が加えられたあとの弾性率の低下をできるだけ小さくするためには、前記範囲内でも20質量部以下であるのが好ましいことも判った。
〈実施例8〜10、比較例7、8〉
シリカの配合割合を80質量部(比較例7)、100質量部(実施例8)、150質量部(実施例9)、180質量部(実施例10)、および190質量部(比較例8)としたこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
前記各実施例、比較例の高減衰組成物について前記各試験を行って特性を評価した。結果を、実施例1の結果と併せて表4に示す。
Figure 0005330460
表4の比較例7の結果より、前記4種の併用系であっても、シリカの配合割合が100質量部未満では、高減衰部材の減衰性能を向上できないことが判った。また比較例8の結果より、シリカの配合割合が180質量部を超える場合には、大変形が加えられた後の弾性率の低下が大きくなることが判った。
これに対し実施例1、8〜10の結果より、シリカの配合割合を100質量部以上、180質量部以下とすることにより、高減衰部材の減衰性能を向上するとともに、大変形が加えられたあとの弾性率の低下を小さくできることが判った。
またシリカの配合割合は、高減衰部材の減衰性能をより一層向上するためには、前記範囲内でも135質量部以上であるのが好ましいこと、大変形が加えられたあとの弾性率の低下をできるだけ小さくするためには、前記範囲内でも150質量部以下であるのが好ましいことも判った。
〈実施例11〜14、比較例9〉
イミダゾール系化合物の配合割合を0.05質量部(比較例9)、0.3質量部(実施例11)、1質量部(実施例12)、5質量部(実施例13)、および10質量部(実施例14)としたこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
〈比較例10〉
前記イミダゾール系化合物の配合割合を13質量部としたところ、混練時に焼けが発生したため、高減衰組成物を調製することができなかった。
そこで比較例10を除く各実施例、比較例の高減衰組成物について前記各試験を行って特性を評価した。結果を、実施例1の結果と併せて表5に示す。
Figure 0005330460
表5の比較例9の結果より、前記4種の併用系であっても、イミダゾール系化合物の配合割合が0.1質量部未満では、高減衰部材の減衰性能を向上できないことが判った。また比較例10の結果より、イミダゾール系化合物の配合割合が10質量部を超える場合には、高減衰組成物の加工性が低下することが判った。
これに対し実施例1、11〜14の結果より、イミダゾール系化合物の配合割合を0.1質量部以上、10質量部以下とすることにより、高減衰組成物の良好な加工性を維持しながら、高減衰部材の減衰性能を向上できることが判った。
またイミダゾール系化合物の配合割合は、高減衰部材の減衰性能をより一層向上するためには、前記範囲内でも0.3質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましいことも判った。
〈実施例15〜18、比較例11、12〉
ヒンダードフェノール系化合物の配合割合を0.05質量部(比較例11)、0.3質量部(実施例15)、1質量部(実施例16)、10質量部(実施例17)、20質量部(実施例18)、および23質量部(比較例12)としたこと以外は実施例1と同様にして高減衰組成物を調製した。
前記各実施例、比較例の高減衰組成物について前記各試験を行って特性を評価した。結果を、実施例1の結果と併せて表6に示す。
Figure 0005330460
表6の比較例11の結果より、前記4種の併用系であっても、ヒンダードフェノール系化合物の配合割合が0.1質量部未満では、高減衰部材の減衰性能を向上できないことが判った。またヒンダードフェノール系化合物の配合割合が20質量部を超える比較例12は、表の特性上は問題ないものの、ブルームが発生することが確認された。
これに対し実施例1、15〜18の結果より、ヒンダードフェノール系化合物の配合割合を0.1質量部以上、20質量部以下とすることにより、ブルーム等を生じることなしに、高減衰部材の減衰性能を向上できることが判った。
またヒンダードフェノール系化合物の配合割合は、高減衰部材の減衰性能をより一層向上するためには、前記範囲内でも1質量部以上、特に2.5質量部以上であるのが好ましいことも判った。
1 円板
2 鋼板
3 試験体
4 中央固定治具
5 左右固定治具
6 固定アーム
7 ジョイント
8 可動盤
9 ジョイント
H ヒステリシスループ
Keq 傾き
直線
垂線
W エネルギー
ΔW 吸収エネルギー量

Claims (2)

  1. ベースポリマとしての、天然ゴム、イソプレンゴム、およびブタジエンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴム100質量部に、3質量部以上、50質量部以下の、酸価が155mgKOH/g以上であるロジン誘導体、100質量部以上、180質量部以下のシリカ、0.1質量部以上、10質量部以下のイミダゾール系化合物、および0.1質量部以上、20質量部以下のヒンダードフェノール系化合物を配合したことを特徴とする高減衰組成物。
  2. 建築物の制震用ダンパの形成材料として用いる請求項に記載の高減衰組成物。
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