JP7186141B2 - フレキシブルプリント基板用銅箔 - Google Patents
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Description
FPCは銅箔と樹脂とを積層したCopper Clad Laminate(銅張積層体、以下CCLと称する)をエッチングすることで配線を形成し、その上をカバーレイと呼ばれる樹脂層によって被覆したものである。
通常、FPC用銅箔には表面に粗化粒子と称される微細な金属粒子を形成させる粗化処理が施され、さらに耐熱性や耐薬品性、接着性を付与するために各種表面処理が施される。そして、この銅箔を、フィルム状の絶縁性樹脂基材と加圧ラミネートする工法や、絶縁性樹脂基材を銅箔に塗布後、乾燥又は高温処理する工法等により、CCLが形成され、最後に銅箔部分をエッチングして回路形成してFPCが製造される。
そこで、最終圧下率を高くしなくとも、圧延銅箔の折り曲げ性を向上させる方策として、Copper方位の結晶方位密度を10以上とし、Brass方位の結晶方位密度を20以上とする技術が開発されている(特許文献1)。
そして、特許文献1記載の技術のように、Copper方位の結晶方位密度を高くすると、再結晶集合組織においてCube方位が発達し、再結晶粒径が大きくなるため、CCLの折り曲げ性が低下することが判明した。
また、Brass方位の結晶方位密度が高いと、再結晶集合組織においてBrass方位からなる集合組織が発達する。Brass方位は歪をためやすい方位であり、折り曲げ時に歪が解放されてクラックが発生し易く、CCLの折り曲げ性に劣る。
Copper方位とBrass方位はそれぞれ、{112}<111>、{110}<112>で定義される。
本発明のフレキシブルプリント基板用銅箔は、表面粗さSaが0.2μm未満であるとよい。
本発明のフレキシブルプリント基板用銅箔は、厚さが12μm以下であるとよい。
本発明に係る銅箔は、99.9質量%以上のCuと、添加元素として0.0005~0.0220質量%のPを含有し、残部不可避的不純物からなる。Cuが99.96質量%以上であると好ましい。
添加元素としてPを含有すると、Copper方位の結晶方位密度を10未満にすることができる。
銅箔のCopper方位の結晶方位密度が10未満である。上述のように、CCLの折り曲げ性を向上させるには、再結晶後のCube方位の発達を抑制する、つまり圧延組織の段階でCopper方位の存在割合を抑制する必要がある。
Copper方位の結晶方位密度が10以上になると、再結晶後にCube方位が発達し、再結晶粒径が大きくなってCCLの折り曲げ性が低下する。
銅箔のBrass方位の結晶方位密度が20未満である。Brass方位は歪をためやすく、Brass方位の結晶方位密度が20以上であると、折り曲げ時に歪が解放されてクラックが発生し易く、CCLの折り曲げ性が低下する。
表面粗さSaはISO25178で規定される。
ここで、焼鈍のうち最後に行うものを最終焼鈍と呼び、最終焼鈍前後の冷間圧延をそれぞれ最終焼鈍前冷間圧延、最終焼鈍後冷間圧延と呼ぶ。
最終焼鈍後冷間圧延の圧下率(最終圧下率)は95%以上が好ましく、更に好ましくは、99%以上である。圧下率が95%以下であると、銅箔に蓄積するひずみが不均一であるため、圧延組織が不均一となる。また、圧下率が95%以上であるとCopper方位の成長が抑制されるからである。
圧下率(R)は、圧延前の箔厚さをT0、圧延後の箔厚さT1とし、圧下率R={(T0-T1)/T0}×100で表される。
ここで、最終焼鈍の熱処理温度としては、「再結晶」域の温度とする。最終焼鈍の熱処理温度を「回復」状態の温度とすると、最終焼鈍後冷間圧延によってBrass方位が発達してしまう。「回復」状態よりも高温となるよう、最終焼鈍の熱処理温度を「粒成長」状態の温度とすると、最終焼鈍後冷間圧延によってCopper方位が発達してしまう。このため、最終焼鈍の熱処理温度を「再結晶」域となるように設定する。
まず、最終焼鈍前冷間圧延後で最終焼鈍前の銅条を、25、100、150℃、200~260℃まで10℃刻み、280,300,350,380、400℃まで温度を変化させ、30分間、窒素雰囲気下で熱処理を行ったときの抗張力(N/mm2)をJISZ2241に準拠してそれぞれ測定する。
次に、図1に示すように、熱処理温度をX軸、抗張力をY軸としたグラフに測定データをプロットする。低温側(25℃)から高温側へ向かい、隣接するプロット間で抗張力が10MPa/10℃以上に急激に低下する点を変曲点1とする。変曲点1から高温側へ向かい、隣接するプロット間で抗張力が10MPa/10℃未満になった点を変曲点2とする。変曲点2から高温側へ向かい、隣接するプロット間で抗張力が5%以上に低下した点を変曲点3とする。
変曲点2より低温を「回復域」、変曲点2以上かつ変曲点3未満の温度を「再結晶域」、変曲点3以上の高温を「粒成長域」とする。
例えば、銅箔の表面に、粗化処理、防錆処理、耐熱処理、またはこれらの組み合わせによる表面処理を施してもよい。
無酸素銅(JIS-H3100C1020)に対し、表1に記載の元素を添加したインゴットを作製した。このインゴットを900℃前後で熱間圧延、冷間圧延が加えられた後に、焼鈍を加えて表面の酸化スケール除去のための面削を行った。その後に、多段式の冷間圧延機により圧延銅条の厚みが2.0mmになるまで最終焼鈍前冷間圧延した。その後、上記した方法で決定した最終焼鈍の熱処理温度(図1の再結晶域の最低温度である変曲点2の温度)で、窒素雰囲気下で30分間の最終焼鈍を行った。その後、最終銅箔厚みである12μmまで圧下率99.4%で最終焼鈍後冷間圧延を行った。
1.導電率
上記最終冷間圧延後の各銅箔サンプルについて、JIS H 0505に基づいて4端子法により、20℃の導電率(%IACS)を測定した。
導電率が80%IACSより大きければ導電性が良好である。
2.銅箔の表面粗さSa
上記最終冷間圧延後の各銅箔サンプルについて、表面粗さSaをISO25178に従って測定した。
各実施例及び比較例の銅箔の表面粗さSaは0.1であった。
3.結晶方位密度(Copper方位及びBrass方位)
上述のようにして測定した。
上記最終冷間圧延後の各銅箔サンプルからフレキシブルプリント配線板を作製し、折り曲げ試験して耐折り曲げ特性を評価した。
フレキシブルプリント配線板は下記の様に作製した。ポリイミド樹脂フィルム(株式会社カネカ製FRS-142#SW;厚み25um)の両面にそれぞれ銅箔サンプルを積層し、真空熱プレスで360℃で5分間加熱して銅張積層板を作製した。この銅張積層版の片側の銅箔を全面エッチングで除去し、他の側の銅箔には、MD(圧延平行方向)に平行となるようにL(ライン)/S(スペース)=300μm/300μmの回路を8本形成してフレキシブルプリント配線板とした。
折り曲げ回数は、破断した直前までの180°密着曲げの回数とした。
又、折り曲げ試験は、各銅箔サンプルにつき、フレキシブルプリント配線板を5枚作製してn=5で行い、各試験での折り曲げ回数の平均値を採用した。折り曲げ回数が5回以上であれば良好である。
Pの含有量が0.0005質量%(5質量ppm)未満である比較例3の場合、Copper方位の結晶方位密度が10以上となり、耐折り曲げ特性が劣った。
最終焼鈍温度を「回復」状態よりも高温な「粒成長」状態の温度とした比較例4,5の場合、最終冷間圧延によってCopper方位が発達し、その結晶方位密度が10以上となり、耐折り曲げ特性が劣った。
Claims (4)
- 99.9質量%以上のCuと、添加元素として0.0005~0.0220質量%のPを含有し、残部不可避的不純物からなる圧延銅箔であって、
Copper方位の結晶方位密度が10未満であり、Brass方位の結晶方位密度が20未満であるフレキシブルプリント基板用銅箔。 - JIS-H3100(C1100)に規格するタフピッチ銅又はJIS-H3100(C1020)の無酸素銅に、添加元素として0.0005~0.0220質量%のPを含有してなる請求項1に記載のフレキシブルプリント基板用銅箔。
- 表面粗さSaが0.2μm未満である請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント基板用銅箔。
- 厚さが12μm以下である請求項1~3のいずれか一項に記載のフレキシブルプリント基板用銅箔。
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