JP7185522B2 - タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
低燃費性や破断強度、耐摩耗性等を向上させることを目的として、タイヤ用ゴム組成物に、芳香族ビニル化合物に基づく構成単位及び共役ジエン化合物に基づく構成単位を有し、共役ジエン部を水素添加した水添共重合体を配合することが知られている(特許文献1~3)。
しかしながら、かかる水添共重合体をゴム成分として用いると、ゴム組成物のムーニー粘度が高くなり、加工性に課題がある。
なお、特許文献4には、充填剤として白色充填剤、即ちシリカを用いたゴム組成物において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル脂肪酸エステル(エーテルエステル化合物)を配合することが開示されている。しかしながら、この文献は、シリカ配合のゴム組成物の帯電防止性能を付与するために当該脂肪酸エステルを配合するものであり、当該脂肪酸エステルを配合することにより加工性と耐摩耗性が改善されることは記載されていない。また、特許文献4において具体的に用いられているポリオキシアルキレンアルキルエーテル脂肪酸エステルはHLBが高いものであり、HLBが10以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテル脂肪酸エステルを用いることは記載されていない。
特開2017-145341号公報 WO2014/133097号 特開2018-95779号公報 特開平10-330539号公報
本発明の実施形態は、上記の点に鑑み、ゴム成分として水添共重合体を用いたゴム組成物において加工性を改善することを目的とする。
本発明の実施形態に係るタイヤ用ゴム組成物は、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、重量平均分子量が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体を含むゴム成分100質量部に対して、下記一般式(1)で表されるHLBが10以下のエーテルエステル化合物0.1~20質量部を含むものである。
Figure 0007185522000001
式中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~30の炭化水素基を表し、Rは炭素数2~4のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、(RO)の60質量%以上がオキシエチレン基からなる。
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤは、該タイヤ用ゴム組成物を用いて作製されたものである。
本発明の実施形態によれば、ゴム成分に水添共重合体を用いたものにおいて、上記エーテルエステル化合物を配合したことにより、加工性を改善することができる。
本実施形態に係るゴム組成物は、水添共重合体を含むゴム成分とともに、特定のエーテルエステル化合物を配合してなるものである。
[水添共重合体]
ゴム成分として用いる水添共重合体は、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、重量平均分子量(Mw)が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体である。
上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体を構成する芳香族ビニルとしては、特に限定されず、例えばスチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体を構成する共役ジエンとしては、特に限定されず、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体は、特に限定されないが、スチレン及び1,3-ブタジエンの共重合体(スチレンブタジエン共重合体)であることが好ましい。従って、水添共重合体としては、水添スチレンブタジエン共重合体であることが好ましい。水添共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、交互共重合体であってもよい。
上記水添共重合体は、例えば、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体を合成し、水素添加処理を行うことで合成することができる。芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の合成方法は、特に限定されないが、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法等を挙げることができ、特に溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。なお、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体は市販のものを使用することも可能である。
水素添加の方法は、特に限定されず、公知の方法、公知の条件で水素添加すればよい。通常は、20~150℃、0.1~10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で実施される。なお、水素添加率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力、反応時間等を変えることにより、任意に選定することができる。水添触媒として、通常は、元素周期表4~11族金属のいずれかを含む化合物を用いることができる。例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt原子を含む化合物を水添触媒として用いることができる。より具体的な水添触媒としては、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等のメタロセン系化合物;Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒;Ni、Co等の金属元素の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒;Ru、Rh等の有機金属化合物又は錯体;水素を吸蔵させたフラーレンやカーボンナノチューブ等を挙げることができる。
水添共重合体の水素添加率は80モル%以上であり、好ましくは80~95モル%であり、より好ましくは85~95モル%であり、さらに好ましくは90~95モル%である。水素添加率が80モル%以上であることにより、架橋の均質化による耐摩耗性の改善効果に優れる。ここで、水添共重合体の水素添加率は、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の共役ジエン部(共役ジエン化合物に基づく単位)に対して水素添加された割合であり、水素添加前の共役ジエン部全体を100モル%としたときの水素添加された共役ジエン部のモル比率である。水添共重合体の水素添加率は、H-NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から計算した値とする。
水添共重合体のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された重量平均分子量(Mw)は、30万以上であれば特に限定されないが、30万~200万であることが好ましく、30万~100万であることがより好ましく、30万~60万であることがさらに好ましい。ここで、水添共重合体の重量平均分子量は、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用い、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、測定温度を40℃、流量を1.0mL/分、濃度を1.0g/L、注入量を40μLとし、市販の標準ポリスチレンを用いてポリスチレン換算で算出した値とする。
[ゴム成分]
ゴム成分は、上記水添共重合体を含むものであり、水添共重合体単独でもよく、水添共重合体とともに他のジエン系ゴムが含まれてよい。
ゴム成分中の上記水添共重合体の含有割合は、70~100質量%であることが好ましい。すなわち、ゴム成分100質量部中に上記水添共重合体を70~100質量部含むことが好ましい。ゴム成分中の上記水添共重合体の含有割合は、80~100質量%であることがより好ましい。
水添共重合体と併用してもよい上記他のジエン系ゴムは、常温(23℃)において固形状である固形状ゴムであってもよく、常温(23℃)において液状である液状ゴムであってもよい。
固形状ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴムなどが挙げられる。これらの固形状ゴムは、いずれか1種単独で用いても、2種以上ブレンドして用いてもよい。
液状ゴムとしては、例えば、液状イソプレンゴム、液状ブタジエンゴム、液状スチレンブタジエンゴム、液状イソプレンブタジエンゴム、液状イソプレンスチレンゴム、液状イソプレンブタジエンスチレンゴム、液状イソブチレン、液状エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)が挙げられる。これらの液状ゴムは、カルボキシル化やメタクリレート化などによって変性されたものであってもよい。これらの液状ゴムは、いずれか1種単独で用いても、2種以上ブレンドして用いてもよい。
液状ゴムとしては市販されているものを利用することもでき、例えば、液状イソプレンゴムとしては、クラレ(株)製のLIR-30、LIR-50、LIR-310、LIR-390、LIR-410、UC-203、UC-102、LIR-290、LIR-700などが挙げられ、液状ブタジエンゴムとしては、同社製のLBR-307、LBR-305、LBR-352、液状スチレンブタジエンゴムとしては、同社製のL-SBR-820、L-SBR-841などが挙げられる。
液状ゴムの重量平均分子量は、特に限定されないが、1000~10万であることが好ましく、2000~5万でもよい。
液状ゴムの含有量(2種以上使用する場合は合計量)は、ゴム成分100質量部中、30質量部以下であることが好ましく、1~30質量部であることが好ましく、3~20質量部であることがより好ましい。
[エーテルエステル化合物]
本実施形態に係るゴム組成物には、ゴム成分としての上記水添共重合体とともに、下記一般式(1)で表されるHLBが10以下のエーテルエステル化合物(好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテル脂肪酸エステル)が配合される。水添共重合体は水添により極性が低下するために、HLBの低い界面活性剤が好適に用いられる。また、該エーテルエステル化合物は、ゴム組成物中で可塑化効果を示すため、ゴム組成物の混練時の粘度が低減すると考えられる。そのため、該エーテルエステル化合物を用いることにより、加工性の改善と耐摩耗性の向上を図ることができる。
Figure 0007185522000002
式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~30の炭化水素基を表し、Rは炭素数2~4のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、(RO)の60質量%以上がオキシエチレン基からなる。
及びRは、上記の通り、それぞれ独立に炭素数1~30の炭化水素基を表し、該炭化水素基の炭素数は、より好ましくは5~25であり、更に好ましくは8~22であり、10~20でもよい。また、該炭化水素基としては、直鎖又は分岐の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、例えばアルキル基又はアルケニル基であることが好ましい。一実施形態において、Rは、炭素数が1~25であるアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数が8~20であるアルキル基又はアルケニル基である。また、Rは、炭素数が8~25であるアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数が12~20であるアルキル基又はアルケニル基である。
は、上記の通り、炭素数2~4のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。Rのアルキレン基は直鎖状でも分岐状でもよい。ROで表されるオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基などが挙げられる。式(1)における(RO)は、炭素数2~4のアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)を付加重合させることにより得られるポリオキシアルキレン鎖である。アルキレンオキサイド等の重合形態は特に限定されず、単独重合体でも、ランダム共重合体でも、ブロック共重合体でもよい。
式(1)中の(RO)は、主としてオキシエチレン基からなることが好ましく、(RO)の60質量%以上がオキシエチレン基からなる。すなわち、(RO)で表されるポリオキシアルキレン鎖は、オキシエチレン基を60質量%以上含み、好ましくは80質量%以上含むことである(当該ポリオキシアルキレン鎖を構成する全オキシアルキレン基を100質量%とする)。更に好ましくは、前記ポリオキシアルキレン鎖は、オキシエチレン基を100質量%含むこと、即ち下記一般式(2)で示されるようにオキシエチレン基のみからなることである。
Figure 0007185522000003
式(2)中のR、R及びnは、式(1)のR、R及びnと同じである。
オキシアルキレン基の平均付加モル数を表すnは、エーテルエステル化合物のHLBが10以下になるように設定される数であり、R及びRの種類によっても異なるが、例えば1~20でもよく、2~15でもよく、3~10でもよい。
エーテルエステル化合物のHLB(親水親油バランス)は、上記の通り10以下であり、より好ましくは3~10であり、更に好ましくは4~8である。ここで、HLBは、下記のグリフィンの式により算出される値であり、値が大きいほど分子全体に占める親水部分の割合が多く、親水性が高いことを表す。
HLB=20×(親水部分の分子量)/(全体の分子量)
式中の親水部分の分子量とは、(RO)で表されるポリオキシアルキレン鎖の分子量である。
エーテルエステル化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.1~20質量部であることが好ましく、より好ましくは1~20質量部であり、更に好ましくは2~15質量部であり、3~10質量部でもよい。エーテルエステル化合物の配合量が多いほど、加工性及び耐摩耗性の改善効果が高くなるが、20質量部を超えて添加しても更なる効果の改善幅が小さいので、経済的な理由から20質量部以下であることが好ましい。
[補強性充填剤]
本実施形態に係るゴム組成物には、補強性充填剤としてシリカを配合してもよい。シリカを配合することにより、ウェットグリップ性能の向上効果を高めることができる。シリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカを用いてもよい。
シリカの含有量は、特に限定されず、ゴム成分100質量部に対して、10~150質量部でもよく、20~100質量部でもよく、30~80質量部でもよい。
補強性充填剤としては、シリカ単独でもよく、シリカとカーボンブラックを併用してもよい。カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば、SAF級(N100番台)、ISAF級(N200番台)、HAF級(N300番台)、FEF級(N500番台)(ともにASTMグレード)など公知の種々の品種を、いずれか1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。カーボンブラックの含有量は、特に限定されず、ゴム成分100質量部に対して、1~80質量部でもよく、1~50質量部でもよく、2~15質量部でもよい。本実施形態では、シリカを主たる補強性充填剤として用いることが好ましく、例えば補強性充填剤の50質量%以上がシリカであることが好ましく、より好ましくは補強性充填剤の70質量%以上がシリカである。
補強性充填剤としてシリカを用いる場合、シランカップリング剤を含有させることが好ましい。シランカップリング剤としては、スルフィドシランやメルカプトシランなどが挙げられる。シランカップリング剤の含有量は、特に限定されず、例えば、シリカ含有量に対して2~20質量%でもよい。
[その他の配合剤]
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分の他に、オイル、樹脂、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、ワックス、加工助剤、加硫剤、加硫促進剤など、タイヤ用ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの各種加硫促進剤を用いることができる。これらの中でも、本実施形態に係るゴム組成物には、グアニジン系加硫促進剤とジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤とを含有することが好ましい。グアニジン系加硫促進剤及びジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤とともに、スルフェンアミド系加硫促進剤を含有させてもよい。
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(D)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン(DT)などが挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、例えば、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBzDTC)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEDC)、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZnPDC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEPDC)、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaEDC)、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaBDC)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル(TeEDC)、ジメチルジチオカルバミン酸銅(CuMDC)、ジメチルジチオカルバミン酸鉄(FeMDC)などが挙げられる。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS),N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(OBS)、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DZ)が挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤とグアニジン系加硫促進剤の配合割合(グアニジン系加硫促進剤/ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤)は、質量比で、0.5~3.0であることが好ましい。
グアニジン系加硫促進剤の含有量は、特に限定されず、ゴム成分100質量部に対して、0.1~3質量部でもよく、0.2~2質量部でもよい。ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤の含有量は、特に限定されず、ゴム成分100質量部に対して、0.1~3質量部でもよく、0.2~2質量部でもよい。スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量は、特に限定されず、ゴム成分100質量部に対して、0.1~3質量部でもよく、0.2~2質量部でもよい。加硫促進剤の合計の含有量は、特に限定されず、ゴム成分100質量部に対して0.1~7質量部でもよく、0.5~5質量部でもよい。
加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1~10質量部でもよく、0.5~5質量部でもよい。
[ゴム組成物の調製、その他]
本実施形態に係るゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第一混合段階(ノンプロ練り工程)で、ゴム成分に対し、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階(プロ練り工程)で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合して未加硫のゴム組成物を調製することができる。
本実施形態に係るゴム組成物は、例えば乗用車用、トラックやバスの重荷重用など各種用途のタイヤに用いることができ、空気入りタイヤのトレッド部やサイドウォール部などのタイヤの各部位に適用することができる。好ましくは空気入りタイヤのトレッドに用いること、即ちタイヤトレッド用ゴム組成物である。
一実施形態に係る空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いてゴム用押し出し機などによりトレッドゴム等のタイヤ部材を作製し、他のタイヤ部材と組み合わせて未加硫タイヤ(グリーンタイヤ)を作製した後、例えば140~180℃で加硫成型することにより製造することができる。例えば、空気入りタイヤのトレッドゴムには、キャップゴムとベースゴムとの2層構造からなるものと、両者が一体の単層構造のものがあるが、接地面を構成するゴムに好ましく用いられる。すなわち、単層構造のものであれば、当該トレッドゴムが上記ゴム組成物からなり、2層構造のものであれば、キャップゴムが上記ゴム組成物からなることが好ましい。
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
水添共重合体についての測定方法は以下の通りである。
[重量平均分子量(Mw)の測定]
水添共重合体のMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算のMwを求めた。詳細には、測定装置として島津製作所製「LC-10A」を、カラムとしてPolymer Laboratories社製「PLgel-MIXED-C」を、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用い、溶媒としてTHFを用い、測定温度を40℃、流量を1.0mL/分、濃度を1.0g/L、注入量を40μLとし、市販の標準ポリスチレンを用いてポリスチレン換算で算出した。
[水素添加率の測定]
水添共重合体の共役ジエン部の水素添加率は、H-NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から算出した。
[結合スチレン量の測定]
水添共重合体の結合スチレン量は、H-NMRを用いて、スチレン単位に基づくプロトンと、ブタジエン単位(水素添加部を含む)に基づくプロトンとのスペクトル強度比から求めた。
[合成例1:水添共重合体1の合成]
窒素置換された耐熱反応容器に、シクロヘキサンを2.5L、テトラヒドロフラン(THF)を50g、n-ブチルリチウムを0.12g、スチレンを100g、1,3-ブタジエンを400g入れ、反応温度50℃で重合を行った。重合が完了した後にN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシランを1.7g加えて、1時間反応させた後、水素ガスを0.4MPa-ゲージの圧力で供給し、20分間撹拌した。次いで、水素ガス供給圧力を0.7MPa-ゲージ、反応温度を90℃とし、チタノセンジクロリドを主とした触媒を用いて目的の水素添加率となるまで反応させ、溶媒を除去することにより、水添共重合体1を得た。得られた水添共重合体1は、水添スチレンブタジエンゴムであり、Mwは35万、結合スチレン量は20質量%、ブタジエン部の水素添加率は90モル%であった。
[合成例2:水添共重合体2の合成]
水素添加を行う反応時間を変更し、水素添加率を変更した以外、合成例1と同様の方法によって水添共重合体2を得た。得られた水添共重合体2は、水添スチレンブタジエンゴムであり、Mwは35万、結合スチレン量は20質量%、ブタジエン部の水素添加率は80モル%であった。
[合成例3:エーテルエステル化合物1の合成]
ラウリルアルコール(東京化成工業(株)製)47g(0.25モル)に、水酸化カリウム触媒0.1gを加え、110~120℃で撹拌しながらエチレンオキサイド(東京化成工業(株)製)330g(7.5モル)を圧入し、付加反応を行った。反応物をフラスコに移し、触媒の水酸化カリウムをリン酸で中和した。中和物からリン酸塩を濾別してラウリルアルコールエチレンオキサイド30モル付加物336g(収率76質量%)を得た。得られたラウリルアルコールエチレンオキサイド30モル付加物200g(0.11モル)とオレイン酸(東京化成工業(株)製)34g(0.12モル)、および触媒としてジブチルチンオキサイド0.7gを計量し、窒素吹込み下で撹拌しながら225℃で脱水エステル化反応を行い、エーテルエステル化合物1を得た。得られた化合物は、式(2)においてR=C1225、R=C1733、n=30であり、HLB=15のエーテルエステル化合物である。
[合成例4:エーテルエステル化合物2の合成]
トリデシルアルコール(東京化成工業(株)製)30g(0.15モル)に、水酸化カリウム触媒0.1gを加え、110~120℃で撹拌しながらエチレンオキサイド(東京化成工業(株)製)46g(1.05モル)を圧入し、付加反応を行った。反応物をフラスコに移し、触媒の水酸化カリウムをリン酸で中和した。中和物からリン酸塩を濾別してトリデシルアルコールエチレンオキサイド7モル付加物64g(収率85質量%)を得た。得られたトリデシルアルコールエチレンオキサイド7モル付加物60g(0.12モル)とステアリン酸(東京化成工業(株)製)37g(0.13モル)、および触媒としてジブチルチンオキサイド0.7gを計量し、窒素吹込み下で撹拌しながら225℃で脱水エステル化反応を行い、エーテルエステル化合物2を得た。得られた化合物は、式(2)においてR=C1327、R=C1735、n=7であり、HLB=8のエーテルエステル化合物である。
[合成例5:エーテルエステル化合物3の合成]
ラウリルアルコール(東京化成工業(株)製)47g(0.25モル)に、水酸化カリウム触媒0.1gを加え、110~120℃で撹拌しながらエチレンオキサイド(東京化成工業(株)製)33g(1.5モル)を圧入し、付加反応を行った。反応物をフラスコに移し、触媒の水酸化カリウムをリン酸で中和した。中和物からリン酸塩を濾別してラウリルアルコールエチレンオキサイド6モル付加物150g(収率84質量%)を得た。得られたラウリルアルコールエチレンオキサイド6モル付加物135g(0.19モル)とオレイン酸(東京化成工業(株)製)56g(0.2モル)、および触媒としてジブチルチンオキサイド0.7gを計量し、窒素吹込み下で撹拌しながら225℃で脱水エステル化反応を行い、エーテルエステル化合物3を得た。得られた化合物は、式(2)においてR=C1225、R=C1733、n=6であり、HLB=7のエーテルエステル化合物である。
[合成例6:エーテルエステル化合物4の合成]
ラウリルアルコール(東京化成工業(株)製)47g(0.25モル)に、水酸化カリウム触媒0.1gを加え、110~120℃で撹拌しながらエチレンオキサイド(東京化成工業(株)製)33g(0.75モル)を圧入し、付加反応を行った。反応物をフラスコに移し、触媒の水酸化カリウムをリン酸で中和した。中和物からリン酸塩を濾別してラウリルアルコールエチレンオキサイド3モル付加物72g(収率90質量%)を得た。得られたラウリルアルコールエチレンオキサイド3モル付加物60g(0.19モル)とオレイン酸(東京化成工業(株)製)56g(0.2モル)、および触媒としてジブチルチンオキサイド0.7gを計量し、窒素吹込み下で撹拌しながら225℃で脱水エステル化反応を行い、エーテルエステル化合物4を得た。得られた化合物は、式(2)においてR=C1225、R=C1733、n=3であり、HLB=5のエーテルエステル化合物である。
[合成例7:エーテルエステル化合物5の合成]
オレイルアルコール(東京化成工業(株)製)54g(0.2モル)に、水酸化カリウム触媒0.1gを加え、110~120℃で撹拌しながらエチレンオキサイド(東京化成工業(株)製)26g(0.6モル)を圧入し、付加反応を行った。反応物をフラスコに移し、触媒の水酸化カリウムをリン酸で中和した。中和物からリン酸塩を濾別してオレイルアルコールエチレンオキサイド3モル付加物69g(収率90質量%)を得た。得られたオレイルアルコールエチレンオキサイド3モル付加物58g(0.15モル)とステアリン酸(東京化成工業(株)製)47g(0.165モル)、および触媒としてジブチルチンオキサイド0.7gを計量し、窒素吹込み下で撹拌しながら225℃で脱水エステル化反応を行い、エーテルエステル化合物5を得た。得られた化合物は、式(2)においてR=C1835、R=C1735、n=3であり、HLB=4のエーテルエステル化合物である。
[ゴム組成物の調製・評価]
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、硫黄及び加硫促進剤を除く成分を添加し混練し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
・水添SBR1:合成例1に従い作製した水添共重合体1
・水添SBR2:合成例2に従い作製した水添共重合体2
・シリカ:エボニックインダストリーズ社製「UltrasilVN3」
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
・シランカップリング剤:エボニックインダストリーズ社製「Si69」
・オイル:JXTGエネルギー(株)製「プロセスNC140」
・老化防止剤:大内新興化学(株)製「ノクラック6C」
・ワックス:日本精蝋(株)製「OZOACE0355」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華3号」
・化合物1(HLB15):合成例3に従い作製したエーテルエステル化合物1
・化合物2(HLB8):合成例4に従い作製したエーテルエステル化合物2
・化合物3(HLB7):合成例5に従い作製したエーテルエステル化合物3
・化合物4(HLB5):合成例6に従い作製したエーテルエステル化合物4
・化合物5(HLB4):合成例7に従い作製したエーテルエステル化合物5
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
・加硫促進剤1:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」、スルフェンアミド系
・加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製「ノクセラ-D」、グアニジン系
・加硫促進剤3:三新化学工業(株)製「サンセラーZBE」、ジチオカルバミン酸塩系
得られた各ゴム組成物について、加工性を評価するとともに、160℃×30分間加硫して試験片を作製して耐摩耗性を評価した。評価方法は次の通りである。
・加工性:JIS K6300に準拠して東洋精機(株)製ロータレスムーニー測定機を用い、未加硫ゴムを100℃で1分間予熱後、4分後のトルク値をムーニー単位で測定し、測定値の逆数について、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れることを意味する。
・耐摩耗性:JIS K6264に準拠し、岩本製作所(株)製のランボーン摩耗試験機を用いて、荷重29N、スリップ率20%、温度23℃の条件で摩耗減量を測定し、測定値の逆数について、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、摩耗減量が少なく耐摩耗性に優れる。
Figure 0007185522000004
結果は表1に示す通りである。ゴム成分として水添共重合体を用いた比較例1に対し、HLBの高いエーテルエステル化合物を添加した比較例2では、耐摩耗性が悪化するとともに加工性の改善効果も小さいものであった。これに対し、HLBが低いエーテルエステル化合物を添加した実施例1~7であると、加工性を改善することができ、また耐摩耗性を向上することができた。

Claims (2)

  1. 芳香族ビニル-共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、重量平均分子量が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体を含むゴム成分100質量部に対して、下記一般式(1)で表されるHLBが10以下のエーテルエステル化合物0.1~20質量部を含む、タイヤ用ゴム組成物。
    Figure 0007185522000005
    式中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~30の炭化水素基を表し、Rは炭素数2~4のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、(RO)の60質量%以上がオキシエチレン基からなる。
  2. 請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて作製された空気入りタイヤ。
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