JP2020105387A - タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】低発熱性能と耐摩耗性の悪化を抑えながらウェットグリップ性能を向上する。【解決手段】実施形態に係るタイヤ用ゴム組成物は、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、重量平均分子量が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体を含むゴム成分100質量部に対して、部分水添ポリスチレン樹脂1〜50質量部を含むものである。また、実施形態に係る空気入りタイヤは、該タイヤ用ゴム組成物を用いて作製されたものである。【選択図】なし

Description

本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
低燃費性や破断強度、耐摩耗性等を向上させることを目的として、タイヤ用ゴム組成物に、芳香族ビニル化合物に基づく構成単位及び共役ジエン化合物に基づく構成単位を有し、共役ジエン部を水素添加した水添共重合体を配合することが知られている(特許文献1〜3)。
また、特許文献4には、かかる水添共重合体とともに軟化点が60〜120℃の樹脂を配合することにより、ウェットグリップ性を向上できることが開示されている。
しかしながら、ゴム成分として水添共重合体を用いたゴム組成物に樹脂を配合すると、水添共重合体と樹脂との相溶性が低いために、低発熱性能と耐摩耗性が低下することがある。
なお、特許文献5には、ウェットグリップ性能を改善するために、分岐共役ジエン共重合体又はその水添体を配合することが記載されている。しかしながら、部分水添ポリスチレン樹脂を配合することは記載されていない。
特開2017−145341号公報 WO2014/133097号 特開2018−95779号公報 WO2016/039008号 特開2017−209710号公報
本発明の実施形態は、上記の点に鑑み、低発熱性能と耐摩耗性の悪化を抑えながらウェットグリップ性能を向上することができるタイヤ用ゴム組成物を提供することを目的とする。
本発明の実施形態に係るタイヤ用ゴム組成物は、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、重量平均分子量が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体を含むゴム成分100質量部に対して、部分水添ポリスチレン樹脂1〜50質量部を含むものである。本発明の実施形態に係る空気入りタイヤは、該タイヤ用ゴム組成物を用いて作製されたものである。
本発明の実施形態によれば、ゴム成分に水添共重合体を用いたものにおいて、部分水添ポリスチレン樹脂を配合したことにより、低発熱性能と耐摩耗性を維持ないし向上しながら、ウェットグリップ性能を向上することができる。
本実施形態に係るゴム組成物は、水添共重合体を含むゴム成分とともに、部分水添ポリスチレン樹脂を配合してなるものである。
[水添共重合体]
ゴム成分として用いる水添共重合体は、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、重量平均分子量(Mw)が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体である。
上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を構成する芳香族ビニルとしては、特に限定されず、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を構成する共役ジエンとしては、特に限定されず、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体は、特に限定されないが、スチレン及び1,3−ブタジエンの共重合体(スチレンブタジエン共重合体)であることが好ましい。従って、水添共重合体としては、水添スチレンブタジエン共重合体であることが好ましい。水添共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、交互共重合体であってもよい。
上記水添共重合体は、例えば、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を合成し、水素添加処理を行うことで合成することができる。芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の合成方法は、特に限定されないが、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法等を挙げることができ、特に溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体は市販のものを使用することも可能である。
水素添加の方法は、特に限定されず、公知の方法、公知の条件で水素添加すればよい。通常は、20〜150℃、0.1〜10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で実施される。なお、水素添加率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力、反応時間等を変えることにより、任意に選定することができる。水添触媒として、通常は、元素周期表4〜11族金属のいずれかを含む化合物を用いることができる。例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt原子を含む化合物を水添触媒として用いることができる。より具体的な水添触媒としては、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等のメタロセン系化合物;Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒;Ni、Co等の金属元素の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒;Ru、Rh等の有機金属化合物又は錯体;水素を吸蔵させたフラーレンやカーボンナノチューブ等を挙げることができる。
水添共重合体の水素添加率は80モル%以上であり、好ましくは80〜95モル%であり、より好ましくは85〜95モル%であり、さらに好ましくは90〜95モル%である。水素添加率が80モル%以上であることにより、架橋の均質化による耐摩耗性の改善効果に優れる。ここで、水添共重合体の水素添加率は、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の共役ジエン部(共役ジエン化合物に基づくユニット)に対して水素添加された割合であり、水素添加前の共役ジエン部全体を100モル%としたときの水素添加された共役ジエン部のモル比率である。水添共重合体の水素添加率は、H−NMRを測定して得られたスペクトルの共役ジエン部における不飽和結合部のスペクトル減少率から計算した値とする。
水添共重合体のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された重量平均分子量(Mw)は、30万以上であれば特に限定されないが、30万〜200万であることが好ましく、30万〜100万であることがより好ましく、30万〜60万であることがさらに好ましい。ここで、水添共重合体の重量平均分子量は、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用い、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、測定温度を40℃、流量を1.0mL/分、濃度を1.0g/L、注入量を40μLとし、市販の標準ポリスチレンを用いてポリスチレン換算で算出した値とする。
[ゴム成分]
ゴム成分は、上記水添共重合体を含むものであり、水添共重合体単独でもよく、水添共重合体とともに他のジエン系ゴムが含まれてよい。他のジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴムなどが挙げられる。これらのジエン系ゴムは、いずれか1種単独で、又は2種以上ブレンドして用いることができる。
ゴム成分中の上記水添共重合体の含有割合は、70〜100質量%であることが好ましい。すなわち、ゴム成分100質量部中に上記水添共重合体を70〜100質量部含むことが好ましい。ゴム成分中の上記水添共重合体の含有割合は、80〜100質量%であることがより好ましい。
[部分水添ポリスチレン樹脂]
本実施形態では、上記水添共重合体とともに配合する樹脂として、部分水添ポリスチレン樹脂を用いる。部分水添ポリスチレン樹脂は上記水添共重合体との相溶性がよいと考えられ、そのため、耐摩耗性及び低発熱性能の悪化を抑え又はこれらの性能を向上させつつ、ウェットグリップ性能を向上させることができる。
部分水添ポリスチレン樹脂は、ポリスチレン樹脂を部分的に水素添加(即ち、水素化)したものである。該ポリスチレン樹脂としては、モノマーとして実質的にスチレンのみを用いた重合体が用いられ、より好ましくはスチレンの単独重合体を用いることである。ここで、実質的にスチレンのみを用いた重合体としては、モノマーの90質量%以上がスチレンである重合体が挙げられる。
部分的な水素添加とは、ポリスチレン樹脂の全てのスチレンユニットを水素添加するのではなく、未水添のスチレンユニットを残しながら、一部のスチレンユニットを水素添加することである。そのため、部分水添ポリスチレン樹脂は、当該部分水添ポリスチレン樹脂を構成する単量体単位として、ベンゼン環を持つ未水添のスチレンユニットとともに、ベンゼン環が水素添加された水添スチレンユニットとを含む。ここで、水添スチレンユニットとしては、ベンゼン環が完全に水素添加されてシクロヘキシル環となったものでもよく、芳香環が部分的に水素添加されたもの(例えば、シクロヘキセン環等)でもよく、両者が混在してもよい。
なお、ポリスチレン樹脂を部分的に水素添加する方法は、特に限定されず、例えば、特開昭63−43910号公報に記載のポリスチレン樹脂を水素化する方法を用いて、その反応時間及び/又は反応温度を調整することにより、水素添加率の異なる部分水添ポリスチレン樹脂を得ることができる。
部分水添ポリスチレン樹脂の水素添加率は、10〜90モル%であることが好ましく、より好ましくは35〜80モル%であり、更に好ましくは40〜80モル%である。ここで、部分水添ポリスチレン樹脂の水素添加率は、水素化反応前後のポリスチレン樹脂についてUVスペクトル測定を行い、芳香環由来の260nmの吸収スペクトルの積分値の減少度により算出される値である。
部分水添ポリスチレン樹脂の分子量は、特に限定されないが、数平均分子量(Mn)が400〜5000であることが好ましく、より好ましくは500〜3000であり、800〜2000でもよい。このような分子量の小さい部分水添ポリスチレン樹脂を用いることにより、ウェットグリップ性能の向上効果をより一層高めることができる。ここで、部分水添ポリスチレン樹脂の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定され、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用い、溶媒としてTHFを用い、測定温度を40℃、流量を1.0mL/分、濃度を1.0g/L、注入量を40μLとし、市販の標準ポリスチレンを用いてポリスチレン換算で算出した値とする。
部分水添ポリスチレン樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜45質量部であり、更に好ましくは5〜40質量部であり、10〜30質量部でもよい。部分水添ポリスチレン樹脂の含有量が多いほどウェットグリップ性能の向上効果を高めることができる。また、部分水添ポリスチレン樹脂の含有量が50質量部以下であることにより、低発熱性能の悪化を抑えることができる。
[補強性充填剤]
本実施形態に係るゴム組成物には、補強性充填剤としてシリカを配合してもよい。シリカを配合することにより、ウェットグリップ性能と低発熱性能のバランスをより向上することができる。シリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカを用いてもよい。
シリカの含有量は、特に限定されず、ゴム成分100質量部に対して、10〜150質量部でもよく、20〜100質量部でもよく、30〜80質量部でもよい。
補強性充填剤としては、シリカ単独でもよく、シリカとカーボンブラックを併用してもよい。カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば、SAF級(N100番台)、ISAF級(N200番台)、HAF級(N300番台)、FEF級(N500番台)(ともにASTMグレード)など公知の種々の品種を、いずれか1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。カーボンブラックの含有量は、特に限定されず、ゴム成分100質量部に対して、1〜80質量部でもよく、1〜50質量部でもよく、2〜15質量部でもよい。本実施形態では、シリカを主たる補強性充填剤として用いることが好ましく、例えば補強性充填剤の50質量%以上がシリカであることが好ましく、より好ましくは補強性充填剤の70質量%以上がシリカである。
補強性充填剤としてシリカを用いる場合、シランカップリング剤を含有させることが好ましい。シランカップリング剤としては、スルフィドシランやメルカプトシランなどが挙げられる。シランカップリング剤の含有量は、特に限定されず、例えば、シリカ含有量に対して2〜20質量%でもよい。
[その他の配合剤]
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分の他に、オイル、可塑剤、液状ゴム、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、ワックス、加工助剤、加硫剤、加硫促進剤など、タイヤ用ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの各種加硫促進剤を用いることができる。これらの中でも、本実施形態に係るゴム組成物には、グアニジン系加硫促進剤とジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤とを含有することが好ましい。これにより、架橋点が少ない水添共重合体の加硫速度の低下を抑えながら、ウェットグリップ性能の向上効果を高めることができる。グアニジン系加硫促進剤及びジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤とともに、スルフェンアミド系加硫促進剤を含有させてもよい。
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3−ジフェニルグアニジン(D)、1,3−ジ−o−トリルグアニジン(DT)などが挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、例えば、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBzDTC)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEDC)、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZnPDC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEPDC)、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaEDC)、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaBDC)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル(TeEDC)、ジメチルジチオカルバミン酸銅(CuMDC)、ジメチルジチオカルバミン酸鉄(FeMDC)などが挙げられる。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS),N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(OBS)、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DZ)が挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤とグアニジン系加硫促進剤の配合割合(グアニジン系加硫促進剤/ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤)は、質量比で、0.5〜3.0であることが好ましい。
グアニジン系加硫促進剤の含有量は、特に限定されず、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜3質量部でもよく、0.2〜2質量部でもよい。ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤の含有量は、特に限定されず、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜3質量部でもよく、0.2〜2質量部でもよい。スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量は、特に限定されず、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜3質量部でもよく、0.2〜2質量部でもよい。加硫促進剤の合計の含有量は、特に限定されず、ゴム成分100質量部に対して0.1〜7質量部でもよく、0.5〜5質量部でもよい。
加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部でもよく、0.5〜5質量部でもよい。
[ゴム組成物の調製、その他]
本実施形態に係るゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第一混合段階(ノンプロ練り工程)で、ゴム成分に対し、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階(プロ練り工程)で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合して未加硫のゴム組成物を調製することができる。
本実施形態に係るゴム組成物は、例えば乗用車用、トラックやバスの重荷重用など各種用途のタイヤに用いることができ、空気入りタイヤのトレッド部やサイドウォール部などのタイヤの各部位に適用することができる。好ましくは空気入りタイヤのトレッドに用いること、即ちタイヤトレッド用ゴム組成物である。
一実施形態に係る空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いてゴム用押し出し機などによりトレッドゴム等のタイヤ部材を作製し、他のタイヤ部材と組み合わせて未加硫タイヤ(グリーンタイヤ)を作製した後、例えば140〜180℃で加硫成型することにより製造することができる。例えば、空気入りタイヤのトレッドゴムには、キャップゴムとベースゴムとの2層構造からなるものと、両者が一体の単層構造のものがあるが、接地面を構成するゴムに好ましく用いられる。すなわち、単層構造のものであれば、当該トレッドゴムが上記ゴム組成物からなり、2層構造のものであれば、キャップゴムが上記ゴム組成物からなることが好ましい。
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
水添共重合体及び部分水添ポリスチレン樹脂についての測定方法は以下の通りである。
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の測定]
水添共重合体のMw及び部分水添ポリスチレン樹脂のMnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算のMw及びMnを求めた。詳細には、測定装置として島津製作所製「LC−10A」を、カラムとしてPolymer Laboratories社製「PLgel−MIXED−C」を、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用い、溶媒としてTHFを用い、測定温度を40℃、流量を1.0mL/分、濃度を1.0g/L、注入量を40μLとし、市販の標準ポリスチレンを用いてポリスチレン換算で算出した。
[水添共重合体の水素添加率の測定]
水添共重合体の共役ジエン部の水素添加率は、H−NMRを測定して得られたスペクトルの共役ジエン部における不飽和結合部のスペクトル減少率から算出した。
[水添共重合体の結合スチレン量の測定]
水添共重合体の結合スチレン量は、H−NMRを用いて、スチレンユニットに基づくプロトンと、ブタジエンユニット(水素添加部を含む)に基づくプロトンとのスペクトル強度比から求めた。
[部分水添ポリスチレン樹脂の水素添加率の測定]
部分水添ポリスチレン樹脂の水素添加率は、UVスペクトル測定により得られたスペクトルの芳香環由来のスペクトル減少率から算出した。詳細には、水素化反応前後のポリスチレン樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に同一モル量溶解させ、UVスペクトル測定を行い、芳香環由来の260nmの吸収スペクトルの積分値の減少度により、下記式から算出した。
水素添加率(モル%)=[(A−B)/A]×100
A=反応前ポリスチレン樹脂の260nmの吸収スペクトル積分値
B=水添ポリスチレン樹脂の260nmの吸収スペクトル積分値。
水添共重合体及び部分水添ポリスチレン樹脂の合成方法は以下の通りである。
[合成例1:水添共重合体1の合成]
窒素置換された耐熱反応容器に、シクロヘキサンを2.5L、テトラヒドロフラン(THF)を50g、n−ブチルリチウムを0.12g、スチレンを100g、1,3−ブタジエンを400g入れ、反応温度50℃で重合を行った。重合が完了した後にN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシランを1.7g加えて、1時間反応させた後、水素ガスを0.4MPa−ゲージの圧力で供給し、20分間撹拌した。次いで、水素ガス供給圧力を0.7MPa−ゲージ、反応温度を90℃とし、チタノセンジクロリドを主とした触媒を用いて目的の水素添加率となるまで反応させ、溶媒を除去することにより、水添共重合体1を得た。得られた水添共重合体1は、水添スチレンブタジエンゴムであり、Mwは35万、結合スチレン量は20質量%、ブタジエン部の水素添加率は90モル%であった。
[合成例2:水添共重合体2の合成]
水素添加を行う反応時間を変更し、水素添加率を変更した以外、合成例1と同様の方法によって水添共重合体2を得た。得られた水添共重合体2は、水添スチレンブタジエンゴムであり、Mwは35万、結合スチレン量は20質量%、ブタジエン部の水素添加率は80モル%であった。
[合成例3:部分水添ポリスチレン樹脂1の合成]
特開昭63−43910号公報に記載の方法に準拠して合成した。詳細には、撹拌翼つきの5Lステンレス製オートクレーブに、ポリスチレン(ヤスハラケミカル(株)製「YSレジンSX100」、Mn=1200)300g、シクロヘキサン2L、5%ルテニウムカーボン(エヌ・イー ケムキャット株式会社製「Ru/C,typeB(Ru5%)(wetted with water)」)100g、イソプロピルアルコール150gを加え、窒素置換した。撹拌しながら150℃まで昇温し、水素ガスを4.4MPaの圧力で導入し、10時間水素化反応を行った。水素化反応終了後、室温まで冷却し、遠心分離及び濾過を行い、無色透明となった溶液をメチルアルコール中に注いで析出させた後、メチルアルコールで洗浄し、減圧乾燥により乾燥して、部分水添ポリスチレン樹脂1を得た。水素添加率は45モル%、収率は97質量%、Mnは1250であった。
[合成例4:部分水添ポリスチレン樹脂2の合成]
合成例3において、反応時間を20時間に変更した以外は同一条件で水素化反応を行うことにより、部分水添ポリスチレン樹脂2を得た。水素添加率は60モル%、収率は95質量%、Mnは1250であった。
[合成例5:部分水添ポリスチレン樹脂3の合成]
合成例4において、温度150℃で20時間水素化反応を行った後、160℃まで昇温して更に10時間水素化反応を行い、その他は合成例4と同様にして、部分水添ポリスチレン樹脂3を得た。水素添加率は80モル%、収率は92質量%、Mnは1260であった。
[ゴム組成物の調製・評価]
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、硫黄及び加硫促進剤を除く成分を添加し混練し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
・水添SBR1:合成例1に従い作製した水添共重合体1
・水添SBR2:合成例2に従い作製した水添共重合体2
・SBR:ランクセス株式会社製「VSL5025−0HM」
・変性SBR:JSR(株)製「HPR350」
・水添ポリスチレン1:合成例3に従い作製した部分水添ポリスチレン樹脂1
・水添ポリスチレン2:合成例4に従い作製した部分水添ポリスチレン樹脂2
・水添ポリスチレン3:合成例5に従い作製した部分水添ポリスチレン樹脂3
・非水添スチレン樹脂:ヤスハラケミカル(株)製「YSレジンSX100」
・シリカ:エボニックインダストリーズ社製「UltrasilVN3」
・シランカップリング剤:エボニックインダストリーズ社製「Si69」
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
・オイル:JXTGエネルギー(株)製「プロセスNC140」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛2種」
・老化防止剤:住友化学(株)製「アンチゲン6C」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・ワックス:日本精蝋(株)製「OZOACE0355」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「5%油入微粉末硫黄」
・加硫促進剤1:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」、スルフェンアミド系
・加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製「ノクセラ−D」、グアニジン系
・加硫促進剤3:三新化学工業(株)製「サンセラーZBE」、ジチオカルバミン酸塩系
得られた各ゴム組成物を160℃×30分間加硫して試験片を作製し、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、及び転がり抵抗を評価した。評価方法は次の通りである。
・ウェットグリップ性能:東洋精機(株)製の粘弾性試験機を使用し、周波数10Hz、静歪10%、動歪1%、温度0℃で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れる。
・耐摩耗性:JIS K6264に準拠し、岩本製作所(株)製のランボーン摩耗試験機を用いて、荷重40N、スリップ率30%の条件で摩耗減量を測定し、測定値の逆数について、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、摩耗減量が少なく耐摩耗性に優れる。
・転がり抵抗:東洋精機(株)製の粘弾性試験機を使用し、周波数10Hz、静歪10%、動歪1%、温度60℃で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が小さいほど、発熱しにくく、転がり抵抗が小さいこと(即ち、低発熱性能(低燃費性)に優れること)を表す。
Figure 2020105387
結果は表1に示す通りである。ゴム成分として水添共重合体を用いた比較例1に対し、汎用のスチレン樹脂を添加した比較例2では、ウェットグリップ性能はやや改善されたが、低発熱性能(転がり抵抗)が悪化した。比較例3,4では、部分水添ポリスチレン樹脂を配合したが、ゴム成分として水添共重合体を用いていないため、水添共重合体を用いた比較例1に比べると、ウェットグリップ性能は向上したものの、低発熱性能が悪化し、耐摩耗性の改良効果も得られなかった。
これに対し、ゴム成分としての水添共重合体とともに、部分水添ポリスチレン樹脂を配合した実施例1〜6であると、比較例1に対して、低発熱性能を悪化させることなく、むしろ向上させながら、ウェットグリップ性能を向上させることができ、耐摩耗性も改良されていた。

Claims (4)

  1. 芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、重量平均分子量が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体を含むゴム成分100質量部に対して、部分水添ポリスチレン樹脂1〜50質量部を含む、タイヤ用ゴム組成物。
  2. 前記部分水添ポリスチレン樹脂の水素添加率が10〜90モル%である、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  3. 更に、シリカを前記ゴム成分100質量部に対して10〜150質量部含む、請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて作製された空気入りタイヤ。
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