JP7185289B2 - 電磁波シールド用スプレー塗布剤 - Google Patents
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下記特許文献1には、ポリマーおよび樹脂の結合剤を含まず、ナノ銀粒子および接着促進剤を含む導電性インクが開示されている。
また、スパッタリングによりシールド層を3層5μm厚に形成する場合は、約1時間かかるなど時間がかかり、さらにはコストもかかるものであった。
例えば、下記特許文献2には、(a)フェノキシ樹脂、ビニリデン樹脂などの熱可塑性樹脂および/またはエポキシ樹脂、アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂と、(b)溶媒または2-フェノキシエチルアクリレートなどの反応性希釈剤と、(c)銀粒子などの導電性粒子と、を含むEMI(電磁妨害;Electro Magnetic Interference)遮蔽組成物が開示され、また、このEMI遮蔽組成物を用い、スプレーコーティング機または分散/噴出機で、基材上に配した機能モジュールを封止する封止材をコーティングすることが開示されている。
電磁波シールド用スプレー塗布剤(以下、本塗布剤ともいう。)は、平均粒径30nm以上250nm以下の銀粒子(A)を溶剤(E)に分散させたスラリー状のマスターバッチと、熱硬化性樹脂(B)と、硬化剤(C)と、を含むものである。
マスターバッチは、銀粒子(A)を溶剤(E)に予め分散させ、スラリー状にしたものである。
本塗布剤は、マスターバッチを用いることにより、銀粒子(A)が塗布剤中で沈降しにくく、撹拌しなくても銀粒子(A)が長時間に渡り適度に分散されたものになる。
本塗布剤において、マスターバッチは、市販の銀スラリーを用いてもよく、また、下記に示すように、銀乾粉(F)を溶剤(E)に分散させたものを用いてもよい。
本塗布剤において、銀粒子(A)は、導電性粒子として電磁波を遮蔽するために配合するものであり、平均粒径30nm以上250nm以下の範囲内の粒子を用いる。この範囲内の粒子を用いることにより、本塗布剤中において銀粒子が沈降しにくくなる。このような観点から、銀粒子(A)の平均粒径は、好ましくは30nm以上250nm以下、特に好ましくは40nm以上250nm以下、さらに好ましくは100nm以上150nm以下の範囲内である。
溶剤(E)は、マスターバッチを作製するための溶媒となり、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル(EPH)、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ブチルカルビトール(BC)などを用いることができる。これらを2種以上混合してもよい。また、マスターバッチを作製した後、塗布剤の粘度を調整するために溶剤(E)をさらに配合することもできる。
溶剤(E)としては、具体的には、東邦化学工業製エチレングリコールモノフェニルエーテル(品名:ハイソルブEPH)を用いることができる。
分散剤(D)は、銀粒子(A)を分散させるために配合するものであり、アクリル酸系、ステアリン酸系などの分散剤を用いることができる。
具体的には、エス・エヌ・エフ製アクリル酸系分散剤(品名:フロスパースシリーズ、アマイドAP-1)などを用いることができる。
銀乾粉(F)は、平均粒径30nm以上250nm以下の範囲内の粒子を用いる。銀乾粉(F)の平均粒径は、30nm以上250nm以下の範囲内であり、好ましくは40nm以上250nm以下の範囲内であり、さらに好ましくは100nm以上150nm以下の範囲内である。さらに銀乾粉(F)を配合することにより、シールド効果を高めることができる。
マスターバッチは、銀粒子(A)及び溶剤(E)を適宜割合で配合して作製することができる。必要に応じて分散剤(D)や銀乾粉(F)を配合してもよい。
例えば、銀粒子(A)100質量部に対し、溶剤(E)1質量部~30質量部、好ましくは1質量部~27.5質量部、より好ましくは1質量部~25質量部の割合で配合する。
分散剤(D)を配合する場合は、銀粒子(A)100質量部に対し、分散剤(D)0.1質量部~10質量部、好ましくは0.1質量部~7.5質量部、より好ましくは0.1質量部~5質量部の割合で配合する。
銀乾粉(F)を配合する場合は、銀粒子(A)100質量部に対し、銀乾粉(F)0.1質量部~50質量部、好ましくは0.1質量部~40質量部、より好ましくは0.1質量部~30質量部の割合で配合する。
<熱硬化性樹脂(B)>
熱硬化性樹脂(B)は、塗布剤を硬化させるために配合するものであり、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂を用いるのが好ましい。
エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、シロキサン系エポキシ樹脂などを用いることができ、これらを2種以上混合してもよい。これらのなかでも、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
エポキシ当量は、特に限定するものではないが、50g/eq~200g/eqの範囲内が好ましい。
本塗布剤において、硬化剤(C)は、熱硬化性樹脂(B)を硬化させるために配合するものであり、配合した熱硬化性樹脂(B)に適合するものを用いることができる。
熱硬化性樹脂(B)として、例えば、エポキシ樹脂を用いる場合は、硬化剤(C)として、フェノール系硬化剤、脂肪族アミン・芳香族アミンなどのアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤などを用いることができる。
芳香族アミンとしては、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4-アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエートなどの芳香族ポリアミンなどを用いることができる。
本塗布剤において、種々の添加剤(G)を配合することができる。添加剤(G)としては、例えば、シランカップリング剤、硬化促進剤、消泡剤などを配合することができる。
具体的には、信越化学製エポキシ系シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)(品名:KBM403)、信越化学製メタクリル系シランカップリング剤(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)(品名:KBM503)などを用いることができる。
具体的には、四国化成工業製2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(品名:キュアゾール2P4MHZ-PW)などを用いることができる。
具体的には、旭化成ワッカーシリコーン製シリコーン系消泡剤(品名:WACKER AF98/1000)などを用いることができる。
本塗布剤は、粘度が10mPa・sを超え10,000mPa・s以下の範囲内である。粘度が10mPa・s以下であると銀粒子(A)が沈降しやすくなり、粘度が10,000mPa・sを超えるとスプレーにより塗布しにくくなる。
この観点から、本塗布剤の粘度は、10mPa・s以上10,000mPa・s以下が好ましく、100mPa・s以上2,000mPa・s以下がより好ましく、100mPa・s以上1,000mPa・s以下がさらに好ましい。
本塗布剤の粘度は、溶剤(E)の配合割合を変えることにより調整することができる。
なお、本発明の粘度は25℃におけるものである。
本塗布剤は、マスターバッチに、熱硬化性樹脂(B)及び硬化剤(C)を適宜割合で配合することができる。必要に応じて、添加剤(G)を配合してもよい。
例えば、マスターバッチ100質量部に対し、熱硬化性樹脂(B)0.1質量部~30質量部、硬化剤(C)0.1質量部~30質量部の割合で配合する。
好ましくは、マスターバッチ100質量部に対し、熱硬化性樹脂(B)0.5質量部~25質量部、硬化剤(C)0.5質量部~25質量部の割合で配合し、より好ましくは、マスターバッチ100質量部に対し、熱硬化性樹脂(B)1質量部~20質量部、硬化剤(C)1質量部~20質量部の割合で配合し、さらに好ましくは、マスターバッチ100質量部に対し、熱硬化性樹脂(B)1質量部~15質量部、硬化剤(C)1質量部~15質量部の割合で配合することができる。
本塗布剤は、例えば、まず、銀粒子(A)及び溶剤(E)、必要に応じて分散剤(D)や銀乾粉(F)を適宜割合で配合し、撹拌混合してスラリー状のマスターバッチを作製する。次に、このマスターバッチに熱硬化性樹脂(B)及び硬化剤(C)、必要に応じて添加剤(G)を適宜割合で配合し、撹拌混合して本塗布剤を製造することができる。
この後、溶剤(E)をさらに配合して、本塗布剤の粘度が10mPa・sを超え10,000mPa・s以下の範囲内になるように調整するのが好ましい。
本塗布剤は、電子部品などにスプレー(噴霧)塗布し、電子部品などの外面に電磁波シールド層を形成することができる。
本塗布剤は、例えば、従来公知のスプレーコーティング機などで電子部品に塗布することができる。また、本塗布剤をエアゾール缶などに充填して塗布してもよい。
電磁波シールド層は、特に限定するものではないが、厚さを5μm~30μm、特に5μm~20μm、さらに5μm~10μmに形成するのが好ましい。
本塗布剤を電子部品に塗布する場合は、個々の電子部品に塗布した後に基板上に実装してもよく、また、電子部品を基板上に実装した後にそれらをまとめて塗布してもよい。
このシールド効果は、ASTM D4935に準拠して測定することができる。
<原料>
1.銀粒子(A)
A-1:球状100nm銀フィラー「メタロー テクノロジーズ ユーエスエイ(Metalor Technologies USA)製P620-24」
A-2:球状200nm銀フィラー「メタロー テクノロジーズ ユーエスエイ(Metalor Technologies USA)製P620-7」
A-3:球状40nm銀スラリー「DOWA製DF-SNM-004」
A-4:球状130nm銀スラリー「DOWA製DF-SNM-007」
なお、上記各数値は平均粒径であり、走査型電子顕微鏡(SEM)観察し、50個を測定して平均値を算出したものである。
B-1:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂「DIC製N665-EXP」
B-2:ビスフェノールF型エポキシ樹脂「新日鉄住金化学製YDF8170」
B-3:ビスフェノールF型エポキシ樹脂「DIC製835LV」
B-4:ビスフェノールA型エポキシ樹脂「DIC製850CPR」
B-5:アミノフェノール型エポキシ樹脂「三菱ケミカル製630」
C-1:フェノール系硬化剤「群栄化学工業製PSM4324」
C-2:アミン系硬化剤「日本化薬製HDAA」
C-3:アミン系硬化剤「アルベマール(ALBEMARLE Co.,Ltd.)製エタキュア100」
C-4:酸無水物系硬化剤「三菱ケミカル製YH307」
D-1:アクリル酸系分散剤「エス・エヌ・エフ製フロスパース」
D-2:ステアリン酸系分散剤「三菱ケミカル製アマイドAP-1」
E-1:エチレングリコールモノフェニルエーテル(EPH)
E-2:ブチルカルビトールアセテート(BCA)
E-3:ブチルカルビトール(BC)
<シランカップリング剤>
G-1:エポキシ系シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)「信越化学製KBM403」
G-2:メタクリル系シランカップリング剤(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)「信越化学製KBM503」
まず、下記表1に示す配合割合になるように銀粒子(A)、分散剤(D)、溶剤(E)を配合し、三本ローラミルを用いて混合して、スラリー状のマスターバッチを作製した。次に、このマスターバッチに、下記表1に示す配合割合になるように熱硬化性樹脂(B)、硬化剤(C)、溶剤(E)、添加剤(G)を配合し、三本ローラミルを用いて混合して、各電磁波シールド用スプレー塗布剤を作製した。
実施例及び比較例の各電磁波シールド用スプレー塗布剤の粘度は、東京計器社製回転粘度計TVE-22Hを用いて、10rpmで25℃における粘度(mPa・s)を測定した。測定した各電磁波シールド用スプレー塗布剤の粘度を下記表1に示す。
沈降試験は、試験管に実施例及び比較例の各電磁波シールド用スプレー塗布剤を30ml投入し、常温で放置し、1時間毎に目視で確認し、底部に銀粒子が沈降してないかを64時間後まで確認した。
シールド効果は、ASTM D4935に準拠して測定した。
より具体的には、精密ディスペンス装置(ノードソンアシムテック社製「スペクトラムIIディスペンサ」型番S2-920P)にディスペンス・バブル(ノードソンアシムテック社製「ディスペンスジェット」型番DJ-2200)を装着し、実施例及び比較例の各電磁波シールド用スプレー塗布剤を5mm角のポリイミド基板(厚さ1mm)上に塗布し、200℃で20分間加熱して電磁波シールド用スプレー塗布剤を硬化させた。
電磁波シールド用スプレー塗布剤を硬化させた各ポリイミド基板を、キーコム社製「同軸管タイプ シールド効果測定システム(500MHz~18Ghz)」にて測定した。その結果を上記表1に示す。
強度は、ASTM D3359-97に準拠して測定した。
より具体的には、精密ディスペンス装置(ノードソンアシムテック社製「スペクトラムIIディスペンサ」型番S2-920P)にディスペンス・バブル(ノードソンアシムテック社製「ディスペンスジェット」型番DJ-2200)を装着し、実施例及び比較例の各電磁波シールド用スプレー塗布剤を50mm角のCu基板(厚さ0.1mm)上に塗布し、200℃で20分間加熱して電磁波シールド用スプレー塗布剤を硬化させた。
電磁波シールド用スプレー塗布剤を硬化させた各Cu基板に対してプレッシャークッカー試験を行った。
沈降試験は、24時間以上経ても銀粒子の沈降が確認できない場合を可(○)と判定し、24時間未満で銀粒子の沈降が確認されたものを不可(×)と判定した。
シールド効果は、37dB以上を可(○)と判定し、37dB未満を不可(×)と判定した。
強度は、5B以上を可(○)と判定し、4B以下を不可(×)と判定した。
それらの結果を上記表1に示す。
実施例1~9の塗布剤は、沈降試験、シールド効果、強度(密着性)のいずれもが良好な結果であった。
一方、比較例1,2の塗布剤は、沈降試験の結果は不可であった。
また、実施例3~8は銀乾粉を溶剤に添加してスラリー化したものであるが、このようにしてもいずれの試験において良好な結果が得られた。
2 ステンレス層
3 銅層
4 ステンレス層
Claims (9)
- 平均粒径30nm以上250nm以下の銀粒子(A)を、溶剤(E)に分散させたスラリー状のマスターバッチと、エポキシ樹脂(B)と、硬化剤(C)と、を含み、
導電性粒子として平均粒径30nm以上250nm以下の粒子のみを含む、電磁波シールド用スプレー塗布剤。 - 前記スプレー塗布剤の粘度が10mPa・sを超え10,000mPa・s以下である請求項1に記載の電磁波シールド用スプレー塗布剤。
- 前記マスターバッチがさらに分散剤(D)を含む、請求項1又は2に記載の電磁波シールド用スプレー塗布剤。
- 前記マスターバッチが前記銀粒子(A)100質量部に対して前記分散剤(D)を0.1~10質量部含む、請求項3に記載の電磁波シールド用スプレー塗布剤。
- 前記マスターバッチに用いた前記銀粒子(A)の平均粒径よりも大きな平均粒径の銀乾粉(F)をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の電磁波シールド用スプレー塗布剤。
- 前記銀乾粉(F)が球状粉又は鱗片状粉である、請求項5に記載の電磁波シールド用スプレー塗布剤。
- 前記硬化剤(C)がフェノール樹脂系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤のいずれかである、請求項1~6のいずれかに記載の電磁波シールド用スプレー塗布剤。
- 前記塗布剤はさらに添加剤(G)を含み、該添加剤(G)がシランカップリング剤である、請求項1~7のいずれかに記載の電磁波シールド用スプレー塗布剤。
- 前記溶剤(E)がエチレングリコールモノフェニルエーテル、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールのいずれかである、請求項1~8のいずれかに記載の電磁波シールド用スプレー塗布剤。
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