JP7183030B2 - クリーニング装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、小粒径のトナーは従来の弾性ブレードなどを用いたクリーニング装置では十分に除去しきれず、弾性ブレードと感光体の間をすり抜けるトナーが増加し、クリーニング不良が起こってしまう場合がある。そのため、特許文献1における画像形成装置では、現像剤を記録材に転写する転写部とクリーニングブレードの間に、転写されなかった残留トナーを除電する帯電器を配置している。
クリーニング枠体と、
一端が前記クリーニング枠体に取り付けられ、他端が自由端となるクリーニング部材であって、現像剤からなる現像剤像を担持し且つ回転可能な像担持体に当接し、前記像担持体から前記現像剤像が転写された後に前記像担持体に残留した前記現像剤を除去するクリーニング部材と、
一端が前記クリーニング枠体に取り付けられ、他端が前記クリーニング部材と前記像担持体の当接位置よりも前記像担持体の回転方向の上流側の位置で前記像担持体に当接するシート部材と、
を有するクリーニング装置であって、
前記現像剤の仕事関数W(D)及び前記シート部材の仕事関数W(S)が下記の式(A)を満たし、かつ、前記現像剤が無機微粒子を有し、前記無機微粒子のうちの少なくとも1種の平均一次粒径が50nm以上であることを特徴とする。
0≦W(D)-W(S)≦0.23 ・・・(A)
上記目的を達成するため、本発明のプロセスカートリッジは、
現像剤からなる現像剤像を担持し且つ回転可能な像担持体と、
クリーニング枠体と、
一端が前記クリーニング枠体に取り付けられ、他端が自由端となるクリーニング部材であって、前記像担持体に当接し、前記像担持体から前記現像剤像が転写された後に前記像担持体に残留した前記現像剤を除去するクリーニング部材と、
一端が前記クリーニング枠体に取り付けられ、他端が前記クリーニング部材と前記像担持体の当接位置よりも前記像担持体の回転方向の上流側の位置で前記像担持体に当接するシート部材と、
を有するプロセスカートリッジであって、
前記現像剤の仕事関数W(D)及び前記シート部材の仕事関数W(S)が下記の式(A)を満たし、かつ、前記現像剤が無機微粒子を有し、前記無機微粒子のうちの少なくとも1種の平均一次粒径が50nm以上であることを特徴とする。
0≦W(D)-W(S)≦0.23 ・・・(A)
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、
現像剤からなる現像剤像を担持し且つ回転可能な像担持体と、
前記像担持体に担持された前記現像剤像を記録材に転写する転写部材と、
クリーニング枠体と、
一端が前記クリーニング枠体に取り付けられ、他端が自由端となるクリーニング部材であって、前記像担持体に当接し、前記像担持体から前記現像剤像が転写された後に前記像担持体に残留した現像剤を除去するクリーニング部材と、
一端が前記クリーニング枠体に取り付けられ、他端が前記クリーニング部材と前記像担持体の当接位置よりも前記像担持体の回転方向の上流側の位置で前記像担持体に当接するシート部材と、
を有する画像形成装置であって、
前記現像剤の仕事関数W(D)及び前記シート部材の仕事関数W(S)が下記の式(A)を満たし、かつ、前記現像剤が無機微粒子を有し、前記無機微粒子のうちの少なくとも1種の平均一次粒径が50nm以上であることを特徴とする。
0≦W(D)-W(S)≦0.23 ・・・(A)
(実施形態)
<画像形成装置の全体概要>
図1を参照して、実施形態に用いる画像形成装置の画像形成プロセスを、画像形成装置が有する部材と共に説明する。画像形成装置が有する画像形成装置本体Aのシートカセット12から搬送ローラ(不図示)により紙等の記録材(シート)Pを搬送し、記録材Pの搬送と同期して、回転可能な像担持体である感光ドラム1を回転可能な帯電手段である帯電ローラ2により帯電する。その後、露光装置3により感光ドラム1を選択的な露光をして、感光ドラム1に静電潜像を形成する。感光ドラム1及び帯電ローラ2は回転体であり、感光ドラム1は矢印R1の方向に回転し、帯電ローラ2は矢印R2の方向に回転する。露光装置3から出射されたレーザーがポリゴンミラー17によって反射することにより、感光ドラム1の表面が主走査及び副走査方向に露光される。
次に、現像スリーブ6に現像バイアスを印加することによって、感光ドラム1にトナーが供給され、感光ドラム1上の潜像に応じたトナー像(現像剤像)が現像される。したがって、感光ドラム1は、トナーからなるトナー像を担持する。現像剤像は、転写部材としての転写ローラ10へのバイアス印加によって、搬送される記録材Pに転写される。記録材Pが定着装置11へ搬送されて、記録材Pにトナー像が定着し、排紙ローラ(不図示)によって画像形成装置上部の排紙部13に記録材Pが排出される。
感光ドラム1には転写終了後のトナー(転写残トナー)が残留する。感光ドラム1上のトナーは、弾性を有するクリーニング部材(クリーニングブレード)8によって除去される。除去されたトナーは、収容部である回収容器(収容容器)9に収容される。回収容器9に収容されたトナーが外部に漏れだすことを封止部材である回収シート部材(シート部材)14により防いでいる。
次に、プロセスカートリッジBの全体構成について図2を用いて説明する。プロセスカートリッジBは、感光ドラム1などを有する感光体ユニット21と、現像スリーブ6などを有する現像ユニット(現像装置)20とを有する。感光体ユニット21は、感光ドラム1上の残留した残留トナーを除去するクリーニング装置22と、感光ドラム1とを有する。クリーニング装置22は、帯電ローラ2と、クリーニング部材8と、回収容器9と、回収部材としての回収シート部材14と、回収容器9の枠体(クリーニング枠体)15とを有する。クリーニング部材8が感光ドラム1に当接することで、感光ドラム1の表面に残留したトナーが除去される。
感光体ユニット21には、不図示の軸受けを介して感光ドラム1が回転可能に取り付けられている。感光ドラム1は、不図示の駆動モータの駆動力を受けることで、画像形成動作に応じて図2の矢印R1の方向に回転駆動する。また、感光体ユニット21は、帯電ローラ2と、クリーニング部材8と、回収シート部材14と、回収容器9とを有する。帯電ローラ2、クリーニング部材8及び回収シート部材14のぞれぞれは、感光ドラム1に当接するように配置されている。
帯電ローラ2は、導電性のスポンジ状ゴム材料で形成され、不図示の付勢ばねに付勢さ
れて感光ドラム1の表面を転動する。帯電ローラ2に対して、帯電手段に含まれる不図示の帯電電源から交流電圧と直流電圧を重畳した帯電電圧を印加することにより、感光ドラム1の表面が均一な電位に帯電される。
クリーニング部材8を構成する金属支持体の厚みは例えば1.2mm~2.0mmであり、ポリウレタンゴムの硬度は例えば60°~80°(ウォーレス硬度)である。なお、ポリウレタンゴムとして、ポリウレタンゴムにおける感光ドラム1と当接する部分を硬化処理した先端硬化処理ブレードを用いることもできる。クリーニング部材8は、感光ドラム1から記録材Pにトナー像が転写された後に感光ドラム1上に残留したトナーを除去する。クリーニング部材8によって除去されたトナーは回収容器9内に収容される。クリーニング部材8の一端が枠体15に取り付けられた固定端であり、クリーニング部材8の他端が感光ドラム1に当接する自由端である。クリーニング部材8の他端(自由端)は、感光ドラム1の回転方向における下流側から上流側に沿って延び、感光ドラム1に当接している。すなわち、クリーニング部材8の一端(固定端)から他端(自由端)に向かって延びる方向が、クリーニング部材8の他端が当接する領域における感光ドラム1の回転方向とは逆方向である。
次に、回収シート部材14について説明する。図2に示すように、回収シート部材14は、感光ドラム1と、帯電ローラ2と、クリーニング部材8と、回収容器9とを有する感光体ユニット21の構成要素である。回収シート部材14は、クリーニング部材8に対して、感光ドラム1の回転方向の上流側に配置される。トナー像が記録材Pに転写された後に感光ドラム1上に残留したトナーがクリーニング部材8によって除去されると、除去されたトナーは回収容器9内に収容される。そして、回収シート部材14は、除去されたトナーを回収容器9に回収すると共に、回収容器9内に収容されたトナーが回収容器9の外部に漏れだすことを抑制している。
実施例1について説明する。実施例1では回収シート部材14として以下の材料を用いる。
材質:ポリフェニレンサルファイド(PPS)シート
厚み:38μm
仕事関数:5.80eV
ヤング率:3000 N/m2
ポアソン比:0.38
また、感光ドラム1に対する回収シート部材14の当接条件を以下に示す。回収シート部材14は、枠体15にレーザー溶着によって接着されている
侵入量:3.4[μm]
設定角:28.6[°]
撓み量δ:1.24[mm]
当接圧:8.72×10-4[N/mm]
図3に示すαを侵入量[mm]、βを設定角[°]と定義する。侵入量αは、感光ドラム1がない状態と仮定した場合における感光ドラム1の外形に対して回収シート部材14が侵入している量を表している。すなわち、感光ドラム1がない状態と仮定した場合における感光ドラム1の表面から回収シート部材14の自由端(先端)までの距離である。感光ドラム1がない状態と仮定した場合における回収シート部材14を回収シート部材14Aと示す。また、設定角βは、感光ドラム1がない状態と仮定した場合における感光ドラム1の外形と回収シート部材14Aが交わる交点における感光ドラム1上の接線S1と回収シート部材14Aとの間で形成される角度である。ここで、回収シート部材14Aの固定端から自由端に向かって回収シート部材14Aに沿って延びた直線S2に対して垂直方向に延びる、点Qを始点とした直線S3と、感光ドラム1の中心点(回転中心位置)Oとの間の距離をMとする。点Qは、回収シート部材14Aの自由端(先端)のエッジ部における任意の点であって、感光ドラム1の中心点O側に配置されている。また、点Qを始点とした直線S2に垂直方向の直線S3に対して回収容器9側の方向に45°の角度をなす点Qを始点とした直線S4と点Oとの間の距離をNとする。これら距離M及びNを計測し、以下の式1及び式2に当てはめることで侵入量α及び設定角βを算出することが可能である。ここで、rは感光ドラム1の半径[mm]を示す。
図4において、座面16に接着固定された回収シート部材14の自由端(先端)が感光ドラム1に当接することにより、回収シート部材14が撓んでいる。画像形成装置に用いられるような、ごく薄い回収シート部材14の感光ドラム1に対する長手方向の単位長さ(1mm)あたりの当接圧P[N]は、1.32×10-5以上1.74×10-2以下であることが好ましい。この当接圧P[N]の計算値は、片持ちばねにかかる荷重と撓みの一般式を用いて、下記の式(3)に後述する検討条件を当てはめて計算することで算出される。
ここで、回収シート部材14の撓み量をδ[mm]、回収シート部材14の固定端から感光ドラム1と回収シート部材14の自由端との当接ニップ(当接位置)までの距離(自由長)をL[mm]、回収シート部材14の厚さをh[mm]とする。また、Eは回収シート部材14のヤング率[N/mm2]、νは回収シート部材14のポアソン比である。
P=δEh3/{4L3(L-ν2)} ・・・(3)
なお、回収シート部材14のほぼ先端が感光ドラム1と接触している。このため、回収シート部材14の固定端から感光ドラム1と回収シート部材14の自由端との当接ニップまでの距離Lを、回収シート部材14の固定端から自由端までの距離で近似して用いている。また、回収シート部材14の撓み量δを、回収シート部材14の自由端における感光ドラム1との当接部分と、回収シート部材14Aの自由端における感光ドラム1の中心点O側のエッジ部との間の距離で近似して用いている。
感光ドラム1の半径=12[mm]、
距離M=1.69~3.06[mm]
距離N=5.31~6.30[mm]
侵入量δ=2.62~4.13[mm]
回収シート部材14の厚さh=10~100[μm]
回収シート部材14の自由長L=3.39~4.79[mm]
実施例1で用いるトナーは結着樹脂がスチレン系樹脂であり、離型剤がエステル化合物である。エステル化合物は、スチレン系樹脂に適度に作用してスチレン系樹脂を軟らかくする。エステル化合物のシャープメルト性が高いため、スチレン系樹脂と相溶せずに存在しているエステル化合物は定着領域で迅速に溶融する。さらにトナーの低温定着性能を向上するために、結晶性ポリエステルをトナー内に微分散している。結晶性が高いポリエステルをトナー内に均一に分散することでトナー粒子全体を迅速に可塑化することが可能になる。結晶性ポリエステルを微分散させるためには、エステル化合物の結晶核を多量にトナー粒子内部に形成することが重要である。そのためには、エステル化合物の結晶化度をある程度抑制することが必要である。エステル化合物の組成が分布を有することにより、単一組成のエステル化合物と比較し、エステル化合物の結晶化速度が低下し、結晶核を多量に生成しやすくなる。そのため、エステル化合物の組成が分布を有することが好ましい。
実施例1では、トナーの表面に形成する無機物として酸化ケイ素粒子及び酸化チタン粒子を用い、酸化ケイ素粒子及び酸化チタン粒子をトナーの表面に均一に付着させる。また、実施例1では、個数平均粒径が20nm程度であり、トナー重量の1.5%程度の酸化ケイ素粒子と、個数平均粒径が50nm程度であり、トナー重量の0.8%程度の酸化ケ
イ素粒子と、トナー重量の0.1%程度の酸化チタン粒子とを用いる。
実施例1で用いるトナーの仕事関数は6.03eVである。トナーの仕事関数の測定方法の詳細は後述する。なお、他の実施例におけるトナー表面に形成する無機物の種類、量、及びトナーの仕事関数については、実施例ごとに説明する。
比較例1における実施例1と異なる点は、トナー表面に形成する酸化ケイ素粒子の個数平均粒径を変更している点である。比較例1では、個数平均粒径が20nm程度であり、トナー重量の1.5%程度の酸化ケイ素粒子をトナーの表面に均一に付着させる。
比較例2における実施例1と異なる点は、トナー表面に形成する酸化ケイ素粒子の個数平均粒径を変更している点である。比較例2では、個数平均粒径が30nm程度であり、トナー重量の1.5%程度の酸化ケイ素粒子をトナーの表面に均一に付着させる。
比較例3における実施例1と異なる点は、回収シート部材14の材質、トナー母体の材質を変更している点である。比較例3における回収シート部材14及びトナーの材料を以下に示す。
・回収シート部材14
材質:PETシート(東レ社製:ルミラー(登録商標))
厚み:38[μm]
仕事関数:5.33[eV]
曲げ弾性率:2000[N/m2]
ポアソン比:0.21
また、感光ドラム1に対する回収シート部材14の当接条件を以下に示す。回収シート部材14は、枠体15にレーザー溶着によって接着されている。
侵入量:3.4[μm]
設定角:28.6[°]
撓み量δ:1.24[mm]
当接圧:5.20×10-4[N/mm]
・トナー
比較例3の磁性トナーは、結着樹脂がスチレン系樹脂であり、離型剤がエステル化合物である。比較例3における実施例1と異なる点は、結晶性ポリエステルを配合していない点である。実施例1と比較例3とでは、トナー母体に用いる材料が異なることからトナーの仕事関数が異なる。比較例1のトナーの仕事関数は5.65eVである。
また、比較例3では、トナー表面に形成する無機微粒子(外添剤)として酸化ケイ素粒子を用い、個数平均粒径が50nm程度であり、トナー重量の1.5%程度の酸化ケイ素粒子をトナーの表面に均一に付着させる。
比較例4における実施例1と異なる点は、回収シート部材14の材質を変更している点である。
・回収シート部材14
材質:PETシート(東レ社製:ルミラー(登録商標))
厚み:38[μm]
仕事関数:5.33[eV]
曲げ弾性率:2000 [N/m2]
ポアソン比:0.21
また、感光ドラム1に対する回収シート部材14の当接条件を以下に示す。回収シート部材14は、枠体15にレーザー溶着によって接着されている。
侵入量:3.4[μm]
設定角:28.6[°]
撓み量δ:1.24[mm]
当接圧:5.20×10-4[N/mm]
比較例5における実施例1と異なる点は、トナー母体の条件を比較例3と同じ条件に変更している点である。
実施例2における実施例1と異なる点は、回収シート部材14の材質を変更している点である。
・回収シート部材14
材質:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート(テフロン(登録商標))
厚み:50[μm]
仕事関数:6.0[eV]
曲げ弾性率:560 [N/m2]
ポアソン比:0.46
また、感光ドラム1に対する回収シート部材14の当接条件を以下に示す。回収シート部材14は、枠体15にレーザー溶着によって接着されている。
侵入量:3.4[μm]
設定角:28.6[°]
撓み量δ:1.24[mm]
当接圧:4.02×10-4[N/mm]
実施例3における実施例1と異なる点は、回収シート部材14を枠体15に接着する方法を変更している点である。
実施例3では枠体15に両面テープを張り、その上に回収シート部材14を設けることで枠体15に回収シート部材14を固定している。感光ドラム1に対する回収シート部材14の当接条件を以下に示す。
侵入量:4.9[μm]
設定角:37.3[°]
撓み量δ:2.24[mm]
当接圧:1.57×10-3[N/mm]
実施例4における実施例1と異なる点は、回収シート部材14の厚みを変更している点である。実施例4では、実施例4では、厚み60μmのPPSシートを枠体15にレーザー溶着で接着する。感光ドラム1に対する回収シート部材14の当接条件を以下に示す。
侵入量:3.4[μm]
設定角:28.7[°]
撓み量δ:1.24[mm]
当接圧:1.99×10-3[N/mm]
次に、本発明のポイントである回収シート部材14とトナーとの組み合わせについて述べる。本発明者らは、回収シート部材14とトナーとの仕事関数の大小関係が感光ドラム1に残留したトナーのクリーニング性能に大きく影響することを見出した。以下、評価方法と評価結果を詳述する。
・仕事関数測定
本発明において回収シート部材14とトナーの帯電系列上の位置関係に着目し、実験に使用した3種類の回収シート部材14と、2種類のトナーA、Bとを以下の測定方法により測定される仕事関数により評価した。仕事関数(Φ)は、その物質から電子を取り出すために必要なエネルギーであり。二つの部材の間で仕事関数の差が大きい場合、二つの部材の間の摩擦帯電で生じる電界は大きくなり、二つの部材の間で仕事関数の差が小さい場合は、二つの部材の間の摩擦帯電で生じる電界は小さくなる。
仕事関数は下記の測定方法により測定できる。仕事関数は、その物質から電子を取り出すためのエネルギー(eV)として数値化され、回収シート部材14及びトナーの帯電極性を評価しうるものである。
仕事関数(Φ)は、表面分析装置(理研計器社製AC‐2)を使用して測定される。表面分析装置において、重水素ランプを使用し、照射光量を適宜設定し、分光器により単色光を選択し、スポットサイズ4[mm]×4[mm]、エネルギー操作範囲3.4~6.2[eV]、測定時間10[sec/1ポイント]でサンプルに照射する。そして、サンプル表面から放出される光電子を検知し、表面分析装置に組み込まれた仕事関数計ソフトウェアを使用して演算処理することにより、仕事関数が測定される。仕事関数は、繰り返し精度(標準偏差)0.02[eV]で測定される。回収シート部材14とトナーの仕事関数の測定は、画像形成を行う前の状態で行った。また、回収シート部材14は表面のごみをエアブローにより排除してから測定した。なお、データ再現性を確保するため、画像形成を行った後、使用温度25℃、湿度55%RHの条件下で、24時間放置したものを測定サンプルとした。
表面分析装置において、単色光の励起エネルギーを低い方から高い方にスキャンすると、所定のエネルギー値[eV]から光量子放出が始まり、この所定のエネルギー値を仕事関数[eV]とする。図5に、表面分析装置を使用して得られる回収シート部材14の仕事関数のグラフの一例を示す。図5の円形のマークは測定結果を示し、円形のマークを近似線(破線)で結んでいる。図5の横軸はphoton energy[eV]であり、図5の縦軸はEmission Yield[cps0.5](単位光量子あたりの光電子収率の0.5乗)である。図5から一定の傾き[EmissionYield/photon energy]が得られる。図5の場合、仕事関数は、破線の屈曲点(B)における励起エネルギー[eV]で示される。図5においては、仕事関数は5.33[eV]である。
記録材P上の、クリーニング部材8をトナーがすりぬけたことに起因するスジ状の画像不良を検出することにより、クリーニング評価を行った。
本評価では、まずプロセスカートリッジBの現像ユニット20にトナーを充填する。そして、プロセスカートリッジBを23℃、50%RH環境下に24時間放置した後、複数の横線(感光ドラム1の軸線方向に沿った線)を有する、画像比率4%の画像を、A4サイズの記録材Pに連続的に200枚印字する。印字された200枚の記録材Pの全てについてスジ状の画像不良の有無を確認した。表1に本評価の結果を示す。また、クリーニング評価の評価基準を、以下に示す。
1:200枚の記録材Pの全てにスジ状の画像不良が発生していない。
2:1枚以上10枚未満の記録材Pにスジ状の画像不良が発生している。
3:10枚以上50枚未満の記録材Pにスジ状の画像不良が発生している。
4:50枚以上の記録材Pにスジ状の画像不良が発生している。
各実施例と各比較例とを対比することで本発明の優位性について述べる。まず、比較例1に対する本発明の優位性を説明する。本発明者らは鋭意検討の結果、50nm以上の個数平均粒径を有する酸化ケイ素粒子をトナーに外添することで、回収シート部材14による残留トナーの強ネガ化を効率よく抑制することができることを見出した。なお、残留トナーの強ネガ化とは、残留トナーが過剰に帯電することである。
ある。比較例1では酸化ケイ素粒子の個数平均粒径が20nmである。比較例1における酸化ケイ素粒子の個数平均粒径が実施例1における酸化ケイ素粒子の個数平均粒径よりも小さいため、比較例1では、残留トナーが密集した状態におけるトナー同士が凝集しやすい。そのため、比較例1では、トナー表面の一部分しか回収シート部材14と摺擦する機会がなく、強ネガ化を抑制する効果が不十分である。比較例2では酸化ケイ素粒子の個数平均粒径が30nmであり、比較例1と同様に強ネガ化を抑制する効果が不十分である。一方、実施例1では酸化ケイ素粒子の個数平均粒径が50nmあることでトナー同士の凝集が抑制され、トナー間に隙間が生じやすい。そのため、トナーが回収シート部材14と感光ドラム1との当接部で転動しやすくトナー表面と回収シート部材14とが摺擦する機会が増える。これにより実施例1では酸化ケイ素粒子の個数平均粒径が50nmであることで残留トナーの強ネガ化を抑制する効果が効率良く発揮されるため、スジ状の画像不良の発生が抑制される。
また、比較例4では、比較例3におけるトナーBをトナーAに変更している。比較例4における外添剤は比較例1と同じ条件で作成している。比較例4のクリーニング評価では、50枚以上の記録材Pにスジ状の画像不良が発生しており、比較例3と比較してさらにスジ状の画像不良が記録材Pに多く発生している。
本発明者らは鋭意検討の結果、トナーの仕事関数と回収シート部材14の仕事関数との差(仕事関数差)が、残留トナーの帯電量増加分に対して影響していることを見出した。
仕事関数の異なる樹脂材料を摺擦した場合、仕事関数が小さい材料から仕事関数が大きい材料の方にネガチャージ(負電荷)が移動する。これにより仕事関数が小さい材料はポジ(正)に帯電し、仕事関数が大きい材料はネガ(負)に帯電する。
上記の表1に示すように、比較例3の仕事関数差((トナーの仕事関数)-(回収シート部材14の仕事関数))は0.32eVである。また、比較例4の仕事関数差は0.7eVである。比較例3及び比較例4については、仕事関数差が大きい、回収シート部材14とトナーの組み合わせであるため残留トナーの強ネガ化が発生している。また、比較例4における回収シート部材14とトナーとの仕事関数差が、比較例3における回収シート部材14とトナーとの仕事関数差よりも大きいため、比較例4は、比較例3よりもスジ状の画像不良が多く発生している。一方、実施例1では回収シート部材14とトナーの組み合わせがPPSとトナーAであり、仕事関数差が0.23eVと小さい値であるため、残留トナーの強ネガ化が抑制される。したがって、実施例1のクリーニング評価では、スジ状の画像不良の発生が抑制されている。
実施例3では、実施例1と比較してさらにクリーニング評価の結果が良好であり、記録材Pにスジ状の画像不良が発生していない。これは、回収シート部材14を両面テープで枠体15に接着することで両面テープの厚み1mm分の回収シート部材14の感光ドラム1への当接圧が増加したことが要因である。つまり、回収シート部材14の感光ドラム1
に対する当接圧が増加することで回収シート部材14と感光ドラム1との当接ニップにおける残留トナーの層が均一化され、残留トナーと回収シート部材14との摺擦機会が増える。これにより、残留トナーの強ネガ化を抑制する効果がより促進する。
0≦W(D)-W(S)≦0.23 ・・・(A)
平均一次粒径は、一次粒子の個数平均粒径を示す。また、無機微粒子のうちの少なくとも1種の平均一次粒径が、50nm以上である。なお、この平均一次粒径の上限について、「残留トナーの強ネガ化抑制」の観点では特に設ける必要がないものの、200nm以下とすることが好ましい。その理由は、大きすぎる粒径の粒子はトナーに対する付着性が低くなる可能性がある為である。
本発明は、複写機、プリンタなどの画像形成装置及びこれに用いるプロセスカートリッジに適用することができる。
Claims (11)
- クリーニング枠体と、
一端が前記クリーニング枠体に取り付けられ、他端が自由端となるクリーニング部材であって、現像剤からなる現像剤像を担持し且つ回転可能な像担持体に当接し、前記像担持体から前記現像剤像が転写された後に前記像担持体に残留した前記現像剤を除去するクリーニング部材と、
一端が前記クリーニング枠体に取り付けられ、他端が前記クリーニング部材と前記像担持体の当接位置よりも前記像担持体の回転方向の上流側の位置で前記像担持体に当接するシート部材と、
を有するクリーニング装置であって、
前記現像剤の仕事関数W(D)及び前記シート部材の仕事関数W(S)が下記の式(A)を満たし、かつ、前記現像剤が無機微粒子を有し、前記無機微粒子のうちの少なくとも1種の平均一次粒径が50nm以上であることを特徴とするクリーニング装置。
0≦W(D)-W(S)≦0.23 ・・・(A) - 前記シート部材の他端が自由端であり、
前記シート部材の撓み量をδ、ヤング率をE、厚みをh、前記シート部材の一端から前記シート部材と前記像担持体との当接ニップまでの距離をL、前記シート部材のポアソン比をνとしたとき、下記の式(B)によって算出される前記シート部材の当接圧Pが1.32×10-5以上1.74×10-2以下であることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
P=δEh3/{4L3(1-ν2)} ・・・(B) - 前記シート部材の他端が自由端であり、
前記シート部材の一端から前記シート部材の他端に延びる方向が、前記シート部材の他端が当接する領域における前記像担持体の前記回転方向と同じ方向であることを特徴とする請求項1又は2に記載のクリーニング装置。 - 前記クリーニング部材の一端から前記クリーニング部材の他端に延びる方向が、前記クリーニング部材の他端が当接する領域における前記像担持体の前記回転方向とは逆方向であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のクリーニング装置。
- 前記シート部材の材料がポリフェニレンサルファイド(PPS)であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のクリーニング装置。
- 前記シート部材の材料がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のクリーニング装置。
- 前記シート部材の厚みが50μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載のクリーニング装置。
- 前記無機微粒子が酸化ケイ素粒子及び酸化チタン粒子を含むことを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載のクリーニング装置。
- 前記無機微粒子のうちの少なくとも1種の平均一次粒径が50nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載のクリーニング装置。
- 現像剤からなる現像剤像を担持し且つ回転可能な像担持体と、
クリーニング枠体と、
一端が前記クリーニング枠体に取り付けられ、他端が自由端となるクリーニング部材であって、前記像担持体に当接し、前記像担持体から前記現像剤像が転写された後に前記像担持体に残留した前記現像剤を除去するクリーニング部材と、
一端が前記クリーニング枠体に取り付けられ、他端が前記クリーニング部材と前記像担持体の当接位置よりも前記像担持体の回転方向の上流側の位置で前記像担持体に当接するシート部材と、
を有するプロセスカートリッジであって、
前記現像剤の仕事関数W(D)及び前記シート部材の仕事関数W(S)が下記の式(A)を満たし、かつ、前記現像剤が無機微粒子を有し、前記無機微粒子のうちの少なくとも1種の平均一次粒径が50nm以上であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
0≦W(D)-W(S)≦0.23 ・・・(A) - 現像剤からなる現像剤像を担持し且つ回転可能な像担持体と、
前記像担持体に担持された前記現像剤像を記録材に転写する転写部材と、
クリーニング枠体と、
一端が前記クリーニング枠体に取り付けられ、他端が自由端となるクリーニング部材であって、前記像担持体に当接し、前記像担持体から前記現像剤像が転写された後に前記像担持体に残留した現像剤を除去するクリーニング部材と、
一端が前記クリーニング枠体に取り付けられ、他端が前記クリーニング部材と前記像担持体の当接位置よりも前記像担持体の回転方向の上流側の位置で前記像担持体に当接するシート部材と、
を有する画像形成装置であって、
前記現像剤の仕事関数W(D)及び前記シート部材の仕事関数W(S)が下記の式(A)を満たし、かつ、前記現像剤が無機微粒子を有し、前記無機微粒子のうちの少なくとも1種の平均一次粒径が50nm以上であることを特徴とする画像形成装置。
0≦W(D)-W(S)≦0.23 ・・・(A)
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