JP7182496B2 - ノズル及びノズルとストッパーの構造体 - Google Patents
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Description
なお,本明細書では「連続鋳造用ノズル」を単に「ノズル」という。
このような嵌合領域への介在物付着防止対策として,例えば特許文献1には,ストッパーとの接触部を境界としてその上下各々の溶鋼接触面にポーラス耐火物を設け,各々のポーラス耐火物から独立してアルゴンガスを吹出し可能としたタンディッシュ底部のストッパー受けノズルが開示されている。
ただし,ポーラス耐火物からアルゴンガスを吹出す場合,溶鋼中のガスの気泡径が大きくなりすぎる,流量が過多になって制御が困難となる,ガス吐出面積が大きいので吐出するガス量が吐出面によって不均一になって一部に介在物の付着が生じ易くなる等の問題が生じることがある。
例えば,特許文献2には,鋳型内溶鋼への不活性ガスの流入を抑制しつつ,不活性ガスの吹き込みを注入孔(ノズルの内孔)に近い位置から行うことを可能とし,不活性ガスによる介在物除去後の溶鋼再汚染のチャンスをより一層低減する目的で,ガス吹き込み孔を,上ノズル上端面の,注入孔中心を中心とした円周上に複数個設置し,ガス吹き込み孔の断面積合計A(m2)と,上ノズル内の不活性ガスが流れる流路の容積Vg(m3)との関係を特定の範囲にした,連続鋳造用の上ノズルが開示されている。
破壊し難い貫通孔式のノズルを提供することを目的に,特許文献3には,ガスプールと連通するノズル本体を貫通する貫通孔を,立体的な非直線状に設けたノズルが開示されている。
前記特許文献3のように,ガス吐出口ないしはガス流通経路としての貫通孔を応力が集中し難いような構造にしても,依然,ノズルの破壊を生じる危険性がある。
一方,前記特許文献4のように,嵌合領域に耐食性や難付着性に優れる特異な耐火物を部分的に配置する場合,一般的にそれら耐火物は,耐熱衝撃性を高めているノズル本体を構成する本体用耐火物よりも熱膨張性が大きくまた弾性率も高い。このような特異な耐火物を本体用耐火物に接して設置すると,本体用耐火物を押し割る危険性も高まる。
またさらには,ストッパーとの嵌合領域にノズル本体を構成する本体用耐火物よりも熱膨張性が大きい耐火物を設置する場合に,ノズル本体の不規則な破壊を防止することのできるノズル及びノズルとストッパーの構造体を提供することにある。
1.
溶鋼の連続鋳造において溶鋼の流量を制御するストッパーの下方に位置して前記ストッパーと嵌合するノズルであって,前記ストッパーとの接触部を含む嵌合領域に,前記嵌合領域用の耐火物から成る層(以下「嵌合領域用耐火物層」という。)を備えており,
前記嵌合領域用耐火物層は,ノズル本体を構成する,前記嵌合領域用の耐火物以外の耐火物(以下「本体用耐火物」という。)とは異なる材質の耐火物から成り,
溶鋼に接する面における前記嵌合領域用耐火物層と前記本体用耐火物との境界部の少なくとも一にガス吐出口を備えている,ノズル。
2.
前記ガス吐出口は,複数個の貫通孔又はスリットである,前記1に記載のノズル。
3.
前記貫通孔の径は2mm以下,前記スリットの幅は1mm以下である,前記2に記載のノズル。
4.
前記嵌合領域用の耐火物は,炭素含有量が5質量%以下(ゼロを含む)の耐火物(以下「カーボンレス耐火物」という。)である,前記1から前記3のいずれか一項に記載のノズル。
5.
前記カーボンレス耐火物は,ZrO2含有量が75質量%以上,炭素含有量が5質量%以下(ゼロを含む)であり,残部が主として酸化物から成る,前記4に記載のノズル。
6.
前記カーボンレス耐火物は,スピネル(Al2O3・MgO)含有量が75質量%以上,炭素含有量が5質量%以下(ゼロを含む)であり,残部が主として酸化物から成る,前記4に記載のノズル。
7.
前記本体用耐火物は,アルミナ質,アルミナ-シリカ質,スピネル質,ジルコン質又はマグネシア質から選択する耐火性原料を主たる構成物とする耐火物である,前記1から前記6のいずれか一項に記載のノズル。
8.
前記1から前記7のいずれか一項に記載のノズルとストッパーとを備えるノズルとストッパーの構造体であって,
前記ストッパーは,前記ノズルとの接触部より下方にガス吐出口を備えており,前記ストッパーのガス吐出口は一若しくは複数個の貫通孔又はスリットである,ノズルとストッパーの構造体。
9.
前記ストッパーの貫通孔の径は2mm以下,スリットの幅は1mm以下である,前記8に記載のノズルとストッパーの構造体。
10.
前記ストッパーの,前記ノズルとの接触部を含む嵌合領域の少なくとも一部に,前記嵌合領域用耐火物層を備えている,前記8又は前記9に記載の,ノズルとストッパーの構造体。
11.
前記1から前記7のいずれか一項に記載のノズルとストッパーとを備えるノズルとストッパーの構造体であって,前記ストッパーの,前記ノズルとの接触部を含む嵌合領域の少なくとも一部に,前記嵌合領域用耐火物層を備えている,ノズルとストッパーの構造体。
また,嵌合領域用耐火物層として本体用耐火物よりも熱膨張性が大きい耐火物を設置する場合に,ノズル本体の不規則な破壊を防止し,又は破壊の拡大を防止することができる。
さらに嵌合部用耐火物層としてカーボンレス耐火物を適用することにより,嵌合領域への溶鋼内介在物の付着を防止することができ,溶鋼の流量等制御機能の長時間の維持を可能にすることができる。
また嵌合領域では,予熱時や溶鋼通過開始時又はガスの吐出(冷却)による熱的な変化も大きく,ノズルやストッパー内部には熱的応力が生じる。
ただし,これら境界部は,高いレベルではないものの,応力緩和機能を有する。
(1)同一材質であるが連続性を遮断する断層を有する形態,例えば,事前に成形体を作製しておいて,その成形体に接するように坏土を装填して一体的な成形体を作製する形態,又は複数の成形体を単に接触させた状態で一体的に固定する形態。
(2)異なる材質を組み合わせる形態,例えば,事前に一方の材質で成形体を作製しておいて,その成形体に接するように他の材質の坏土を装填して一体的な成形体を作製する形態,又は異なる複数の材質からなる各成形体を単に接触させた状態で一体的に固定する形態。
(3)同一材質又は異なる材質を組み合わせるが,その間にモルタル等のさらに異なる材質の層を備える形態。
ここで,これら構造的に境界部を有する複数の耐火物部品(成形体)は,同一又は異種の耐火物とすることができる。
他方,このような空隙は,耐火物組織内の諸応力を吸収ないし緩和する機能を有する。
なお,ガス吐出口からのガス吐出に伴う冷却効果により,耐火物の温度上昇を抑制して耐火物(特にノズルの内孔側又は上端側)の熱膨張に起因する応力を低下させる,二次的な効果も期待できる。
そしてガス吐出口8Aはこれら境界部9のいずれか一方又は両方において,溶鋼と接する面に設置することができる。
また例えば図2に示すように,ノズル2の上端部全体を嵌合部用耐火物層5Aとする場合は,ノズル2の嵌合領域下側の内孔4横方向(ノズル縦方向中心軸に対し概ね垂直な方向)に存在する境界部9の溶鋼と接する面に,ガス吐出口8Aを設置することができる。
なお,図1及び図2に示すノズル2においてガスは,ガス導入孔6から導入され,ガスプール7を経由してガス吐出口8から溶鋼内へ吐出される。
複数個の貫通孔の場合,境界部の全周にできるだけ均一な応力緩和機能を得る観点から,境界部の大きさにもよるが,概ね8箇所以上であることが好ましい。
非金属介在物の付着性は,耐火物の組成によっても様々な挙動が生じてその複合的な結果として表れる現象であるが,溶鋼に接する耐火物中の炭素含有量にも依存する。炭素が溶鋼中に高い速度で溶出して耐火物組織が粗になることが主たる原因である。
本発明者らは,試験室及び実操業において,この嵌合領域に設置する耐火物の炭素含有量を5質量%以下(ゼロを含む)のカーボンレス耐火物にすることで,難付着性が顕著に向上することを知見した。
このカーボンレス耐火物は,アルミナ質,アルミナ-シリカ質でもよいが,本発明者らは試験室及び実操業において,ZrO2含有量が75質量%以上,又はスピネル(Al2O3・MgO)含有量が75質量%以上で,残部が主としてアルミナ等の酸化物から成る材料がより好ましいことを知見した。
そこで,「嵌合領域用耐火物層」にこれらカーボンレス耐火物を適用する場合には本発明を適用することが好適である。
なお,ノズルの嵌合領域とストッパーの嵌合領域とで,適用するカーボンレス耐火物(嵌合領域用耐火物層)は同一材質である必要はない。例えば,ノズルの嵌合領域にカーボンレス耐火物(嵌合領域用耐火物層)として「ZrO2含有量が75質量%以上,炭素含有量が5質量%以下(ゼロを含む)であり,残部が主として酸化物から成る」材質を適用し,ストッパーの嵌合領域にカーボンレス耐火物(嵌合領域用耐火物層)として「スピネル(Al2O3・MgO)含有量が75質量%以上,炭素含有量が5質量%以下(ゼロを含む)であり,残部が主として酸化物から成る」材質を適用することもできる。
なお,図3~5に示すストッパー1においてガスは,ストッパーの内孔3へ導入され,その内孔3を経由してガス吐出口8Bから溶鋼内へ吐出される。
また,嵌合領域用の耐火物と本体用耐火物と間にモルタルを配置し,その中に貫通孔を配置してもよい。
図6(A)は,複数個の貫通孔8Aの内孔4側が嵌合領域用耐火物層5Aに接し,複数個の貫通孔8Aの間に本体用耐火物2Aを配置した例である。
図6(B)は,複数個の貫通孔8Aのノズル外周側が本体用耐火物2Aに接し,複数個の貫通孔8Aの間に嵌合領域用耐火物層5Aを配置した例である。
図6(C)は,ガス吐出口8Aをほぼ連続した環状のスリットとした例である。なお,「ほぼ連続した環状」としたのは,本体用耐火物2Aと嵌合領域用耐火物層5Aとの間(境界部)に部分的に接合箇所が必要なためである。
図6(D)は,複数個の貫通孔8Aをモルタル10内に配置した例である。
図7(A)は,一の貫通孔8Bを配置した例である、
図7(B)は,複数個の貫通孔8Bのストッパー中心側が本体用耐火物1Aに接し,複数個の貫通孔8Bの間に嵌合領域用耐火物層5Bを配置した例である。
図7(C)は,複数個の貫通孔8Bのストッパー外周側が嵌合領域用耐火物層5Bに接し,複数個の貫通孔8Bの間に本体用耐火物1Aを配置した例である。
図7(D)は,ガス吐出口8Bをほぼ連続した環状のスリットとした例である。「ほぼ連続した環状」とした理由は前述のとおりである。
図7(E)は,複数個の貫通孔8Bをモルタル10内に配置した例である。
嵌合領域用耐火物層(カーボンレス耐火物)と本体用耐火物との境界部に複数個の貫通孔を設けた場合の応力緩和効果について,これまでの知見に基づき有限要素法により簡易的に計算を行った結果を表1に示す。
表1において,成形方法の「一体」は異なる耐火物の坏土を同時一体的に成形して連続的な組織構造である場合,「分割」はそれぞれ別個に成形したものを空目地で固定する場合を指す。また,最大発生応力指数は比較例1の最大発生応力を100として指数化したもので,この最大発生応力指数が小さいほど応力緩和機能に優れるということである、
図8に,異なる耐火物ごとのアルミナ付着量を示している。これは試験室及び実操業での複数の知見をまとめたものである。
なお,試料No.2,7,10は炭素を含有していない。
図8では,黒鉛を主とする炭素含有量25質量%のアルミナ質(「AG材質」ともいう。)を1とするアルミナ付着量指数で,各試料のアルミナ付着量を示している。
図8より,いずれのカーボンレス耐火物もアルミナ付着量が低下することがわかる。すなわち,炭素含有量が5質量%以下で顕著なアルミナ付着量低減効果が認められる。
また,ジルコニア(ZrO2)系材質,スピネル系材質ではジルコニア又はスピネルの含有量が約75質量%以上で顕著なアルミナ付着量低減効果が認められるが,約80質量%以上でより顕著な効果が得られることがわかる。
1A ストッパーの本体用耐火物
2 ノズル
2A ノズルの本体用耐火物(嵌合領域用の耐火物以外の耐火物)
3 ストッパーの内孔
4 ノズルの内孔
5A,5B 嵌合領域用耐火物(カーボンレス耐火物)
6 ガス導入孔
7 ガスプール
8A,8B ガス吐出口(貫通孔又はスリット)
9 嵌合領域用耐火物(カーボンレス耐火物)と本体用耐火物との境界部
10 モルタル
Claims (11)
- 溶鋼の連続鋳造において溶鋼の流量を制御するストッパーの下方に位置して前記ストッパーと嵌合する連続鋳造用ノズル(以下単に「ノズル」という。)であって,前記ストッパーとの接触部を含む嵌合領域に,前記嵌合領域用の耐火物から成る層(以下「嵌合領域用耐火物層」という。)を備えており,
前記嵌合領域用耐火物層は,ノズル本体を構成する,前記嵌合領域用の耐火物以外の耐火物(以下「本体用耐火物」という。)とは異なる材質の耐火物から成り,
溶鋼に接する面における前記嵌合領域用耐火物層と前記本体用耐火物との境界部の少なくとも一にガス吐出口を備えている,ノズル。 - 前記ガス吐出口は,複数個の貫通孔又はスリットである,請求項1に記載のノズル。
- 前記貫通孔の径は2mm以下,前記スリットの幅は1mm以下である,請求項2に記載のノズル。
- 前記嵌合領域用の耐火物は,炭素含有量が5質量%以下(ゼロを含む)の耐火物(以下「カーボンレス耐火物」という。)である,請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のノズル。
- 前記カーボンレス耐火物は,ZrO2含有量が75質量%以上,炭素含有量が5質量%以下(ゼロを含む)であり,残部が主として酸化物から成る,請求項4に記載のノズル。
- 前記カーボンレス耐火物は,スピネル(Al2O3・MgO)含有量が75質量%以上,炭素含有量が5質量%以下(ゼロを含む)であり,残部が主として酸化物から成る,請求項4に記載のノズル。
- 前記本体用耐火物は,アルミナ質,アルミナ-シリカ質,スピネル質,ジルコン質又はマグネシア質から選択する耐火性原料を主たる構成物とする耐火物である,請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のノズル。
- 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のノズルとストッパーとを備えるノズルとストッパーの構造体であって,
前記ストッパーは,前記ノズルとの接触部より下方にガス吐出口を備えており,前記ストッパーのガス吐出口は一若しくは複数個の貫通孔又はスリットである,ノズルとストッパーの構造体。 - 前記ストッパーの貫通孔の径は2mm以下,スリットの幅は1mm以下である,請求項8に記載のノズルとストッパーの構造体。
- 前記ストッパーの,前記ノズルとの接触部を含む嵌合領域の少なくとも一部に,前記嵌合領域用耐火物層を備えている,請求項8又は請求項9に記載の,ノズルとストッパーの構造体。
- 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のノズルとストッパーとを備えるノズルとストッパーの構造体であって,前記ストッパーの,前記ノズルとの接触部を含む嵌合領域の少なくとも一部に,前記嵌合領域用耐火物層を備えている,ノズルとストッパーの構造体。
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