JP7182496B2 - ノズル及びノズルとストッパーの構造体 - Google Patents

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Description

本発明は,溶鋼の連続鋳造において,主としてタンディッシュから鋳型に溶鋼を排出する際の流量制御を行うストッパーに嵌合する連続鋳造用ノズル(具体的には浸漬ノズル,タンディッシュノズル等)及び連続鋳造用ノズルとストッパーの構造体に関する。
なお,本明細書では「連続鋳造用ノズル」を単に「ノズル」という。
溶鋼の連続鋳造において,ストッパーとノズルとの接触部を含む嵌合領域には,アルミナ等の介在物が付着して,流量制御が困難になることがある。
このような嵌合領域への介在物付着防止対策として,例えば特許文献1には,ストッパーとの接触部を境界としてその上下各々の溶鋼接触面にポーラス耐火物を設け,各々のポーラス耐火物から独立してアルゴンガスを吹出し可能としたタンディッシュ底部のストッパー受けノズルが開示されている。
ただし,ポーラス耐火物からアルゴンガスを吹出す場合,溶鋼中のガスの気泡径が大きくなりすぎる,流量が過多になって制御が困難となる,ガス吐出面積が大きいので吐出するガス量が吐出面によって不均一になって一部に介在物の付着が生じ易くなる等の問題が生じることがある。
このようなポーラス耐火物以外の吐出口からアルゴンガスを吐出する形態がある。
例えば,特許文献2には,鋳型内溶鋼への不活性ガスの流入を抑制しつつ,不活性ガスの吹き込みを注入孔(ノズルの内孔)に近い位置から行うことを可能とし,不活性ガスによる介在物除去後の溶鋼再汚染のチャンスをより一層低減する目的で,ガス吹き込み孔を,上ノズル上端面の,注入孔中心を中心とした円周上に複数個設置し,ガス吹き込み孔の断面積合計A(m)と,上ノズル内の不活性ガスが流れる流路の容積Vg(m)との関係を特定の範囲にした,連続鋳造用の上ノズルが開示されている。
このような貫通孔式のノズルはポーラス耐火物よりも緻密な組織の耐火物で構成しているので,ポーラス式のノズルと比較して耐食性や耐摩耗性には優れるものの,耐熱衝撃性に劣る傾向がある。さらに,貫通孔の部分は構造体の中では「欠陥」でもあり,熱的又は機械的な応力が集中して破壊の起点になりやすいという欠点をも有している。特に,溶鋼の排出開始若しくは停止又は流量制御をノズルの内孔上端へのストッパーの嵌合操作で行う場合には,ノズルに直接衝撃や圧縮等を加える等の,当該ストッパーの操作自体が機械的外力となって,貫通孔式のノズルを破壊する危険性が高くなる。
破壊し難い貫通孔式のノズルを提供することを目的に,特許文献3には,ガスプールと連通するノズル本体を貫通する貫通孔を,立体的な非直線状に設けたノズルが開示されている。
一方,特許文献4には,溶鋼中の介在物によって起こる上部ノズル付近の閉塞を防止することを目的として,溶鋼が縮流する部分に接する上部ノズル上端部およびストッパーヘッドの上部ノズルに接する部分に閉塞抑制効果が著しい耐火材を配設すること,さらに前記耐火材はC元素を含有しない高Al含有量又は高MgO含有量とすることが開示されている。
特開平6-297118号公報 特開特開2017-64778号公報 特開2013-184199号公報 特開平9-314292号公報
貫通孔又はスリットであるガス吐出口は,前述のように耐火物の一体的な組織中においては欠陥でもあって,その欠陥に機械的応力又は熱的応力が集中する等,破壊の起点にもなる。しかも破壊は不規則な方向,場所に発生することになる。ノズル及びストッパーの嵌合領域で破壊が生じると,ガス吐出の流量や分布を制御できなくなることに加え,溶鋼の流量制御及び停止機能が損なわれ,正常な鋳造が維持できなる等の重大な問題を惹き起こす虞がある。
前記特許文献3のように,ガス吐出口ないしはガス流通経路としての貫通孔を応力が集中し難いような構造にしても,依然,ノズルの破壊を生じる危険性がある。
一方,前記特許文献4のように,嵌合領域に耐食性や難付着性に優れる特異な耐火物を部分的に配置する場合,一般的にそれら耐火物は,耐熱衝撃性を高めているノズル本体を構成する本体用耐火物よりも熱膨張性が大きくまた弾性率も高い。このような特異な耐火物を本体用耐火物に接して設置すると,本体用耐火物を押し割る危険性も高まる。
本発明が解決しようとする課題は,ガス吐出機能を備えるノズル又はストッパーにおいて,ガス吐出口又はそれに連通するガス通過経路を起点とする不規則な破壊を防止する,又は破壊が発生してもその拡大を防止することのできるノズル及びノズルとストッパーとの構造体を提供することにある。
またさらには,ストッパーとの嵌合領域にノズル本体を構成する本体用耐火物よりも熱膨張性が大きい耐火物を設置する場合に,ノズル本体の不規則な破壊を防止することのできるノズル及びノズルとストッパーの構造体を提供することにある。
本発明は,次の1~11に記載のノズル及びノズルとストッパーの構造体である。
1.
溶鋼の連続鋳造において溶鋼の流量を制御するストッパーの下方に位置して前記ストッパーと嵌合するノズルであって,前記ストッパーとの接触部を含む嵌合領域に,前記嵌合領域用の耐火物から成る層(以下「嵌合領域用耐火物層」という。)を備えており,
前記嵌合領域用耐火物層は,ノズル本体を構成する,前記嵌合領域用の耐火物以外の耐火物(以下「本体用耐火物」という。)とは異なる材質の耐火物から成り,
溶鋼に接する面における前記嵌合領域用耐火物層と前記本体用耐火物との境界部の少なくとも一にガス吐出口を備えている,ノズル。
2.
前記ガス吐出口は,複数個の貫通孔又はスリットである,前記1に記載のノズル。
3.
前記貫通孔の径は2mm以下,前記スリットの幅は1mm以下である,前記2に記載のノズル。
4.
前記嵌合領域用の耐火物は,炭素含有量が5質量%以下(ゼロを含む)の耐火物(以下「カーボンレス耐火物」という。)である,前記1から前記3のいずれか一項に記載のノズル。
5.
前記カーボンレス耐火物は,ZrO含有量が75質量%以上,炭素含有量が5質量%以下(ゼロを含む)であり,残部が主として酸化物から成る,前記4に記載のノズル。
6.
前記カーボンレス耐火物は,スピネル(Al・MgO)含有量が75質量%以上,炭素含有量が5質量%以下(ゼロを含む)であり,残部が主として酸化物から成る,前記4に記載のノズル。
7.
前記本体用耐火物は,アルミナ質,アルミナ-シリカ質,スピネル質,ジルコン質又はマグネシア質から選択する耐火性原料を主たる構成物とする耐火物である,前記1から前記6のいずれか一項に記載のノズル。
8.
前記1から前記7のいずれか一項に記載のノズルとストッパーとを備えるノズルとストッパーの構造体であって,
前記ストッパーは,前記ノズルとの接触部より下方にガス吐出口を備えており,前記ストッパーのガス吐出口は一若しくは複数個の貫通孔又はスリットである,ノズルとストッパーの構造体。
9.
前記ストッパーの貫通孔の径は2mm以下,スリットの幅は1mm以下である,前記8に記載のノズルとストッパーの構造体。
10.
前記ストッパーの,前記ノズルとの接触部を含む嵌合領域の少なくとも一部に,前記嵌合領域用耐火物層を備えている,前記8又は前記9に記載の,ノズルとストッパーの構造体。
11.
前記1から前記7のいずれか一項に記載のノズルとストッパーとを備えるノズルとストッパーの構造体であって,前記ストッパーの,前記ノズルとの接触部を含む嵌合領域の少なくとも一部に,前記嵌合領域用耐火物層を備えている,ノズルとストッパーの構造体。
ここで,「溶鋼の連続鋳造において溶鋼の流量を制御するストッパーの下方に位置して前記ストッパーと嵌合するノズル」とは,典型的には,タンディッシュ底部に設置され,その下方に注湯用の他のノズルを連結する構造のタンディッシュノズル若しくは上部ノズルと呼ばれるノズル,又は前記タンディッシュノズル若しくは上部ノズルと同様にタンディッシュ内に装着されるが,それより下方まで,典型的なものは鋳型まで延在し鋳型内に浸漬する浸漬ノズルを指す。
本発明により,ガス吐出機能を備えるノズル又はストッパーにおいて,ガス吐出口又はそれに連通するガス通過経路を起点とするノズルの不規則な破壊を防止し,又は破壊の拡大を防止することができる。
また,嵌合領域用耐火物層として本体用耐火物よりも熱膨張性が大きい耐火物を設置する場合に,ノズル本体の不規則な破壊を防止し,又は破壊の拡大を防止することができる。
さらに嵌合部用耐火物層としてカーボンレス耐火物を適用することにより,嵌合領域への溶鋼内介在物の付着を防止することができ,溶鋼の流量等制御機能の長時間の維持を可能にすることができる。
本発明の,ガス吐出口を備えたノズルの例で,ストッパーとの嵌合状態と共に示す,軸(縦)方向断面図。 本発明の,ガス吐出口を備えたノズルの他の例で,ストッパーとの嵌合状態と共に示す,軸(縦)方向断面図。 図1に示すノズルとストッパーの構造体において,さらにストッパー先端に貫通孔であるガス吐出口を1箇所備えた例。 図1に示すノズルとストッパーの構造体において,さらにストッパー先端に複数個の貫通孔又はスリットであるガス吐出口を備えた例。 図2に示すノズルとストッパーにおいて,さらにストッパー側の嵌合領域に嵌合領域用耐火物層を設置した例。 本発明の,ガス吐出口を備えたノズルのガス吐出口の配置例を示す,上方視の平面図(イメージ)。 本発明の,ガス吐出口を備えたストッパーのガス吐出口の配置例を示す,下方視の平面図(イメージ)。 異なる耐火物ごとのアルミナ付着量を示す例。 貫通孔の径5mm,2mm,スリットの幅1mmでの水モデル実験による通気特性を示す例。 貫通孔の径5mm,2mm,スリットの幅1mmでの水モデル実験による気泡径分布を示す例。
本発明を実施するための形態を述べる。
ストッパーとノズルとの接触部を含む領域である嵌合領域(例えば図1参照)では,ストッパーの昇降動作や溶鋼流通時のストッパーの振動等により,ストッパーとノズルとの間には衝突等が生じ,さらにはガスがガス吐出口から吐出されて溶鋼内に吹き出す際にはガスによる振動が生じることでもノズルやストッパー内部には機械的応力が生じる。
また嵌合領域では,予熱時や溶鋼通過開始時又はガスの吐出(冷却)による熱的な変化も大きく,ノズルやストッパー内部には熱的応力が生じる。
一方で,ノズルやストッパーを構成する耐火物の連続性を遮断するような境界を備えた部分(境界部)には,応力が集中して破壊の起点となり易い。
ただし,これら境界部は,高いレベルではないものの,応力緩和機能を有する。
従来一般的に,このような境界部は概ね次のような形態となっている。
(1)同一材質であるが連続性を遮断する断層を有する形態,例えば,事前に成形体を作製しておいて,その成形体に接するように坏土を装填して一体的な成形体を作製する形態,又は複数の成形体を単に接触させた状態で一体的に固定する形態。
(2)異なる材質を組み合わせる形態,例えば,事前に一方の材質で成形体を作製しておいて,その成形体に接するように他の材質の坏土を装填して一体的な成形体を作製する形態,又は異なる複数の材質からなる各成形体を単に接触させた状態で一体的に固定する形態。
(3)同一材質又は異なる材質を組み合わせるが,その間にモルタル等のさらに異なる材質の層を備える形態。
ここで,これら構造的に境界部を有する複数の耐火物部品(成形体)は,同一又は異種の耐火物とすることができる。
一方,ガス吐出口ないしはそれに連通するガス通過経路は,耐火物組織中では空隙すなわち欠陥であって,この欠陥部分にも応力が集中して破壊の起点となり易い。
他方,このような空隙は,耐火物組織内の諸応力を吸収ないし緩和する機能を有する。
以上のような考察に基づき本発明では,このようなさらなる破壊の起点となるガス吐出口を,溶鋼流量制御に重要なノズルとストッパーの嵌合領域又は嵌合領域と一体/連続的な組織を有する領域内には存在させずに,前述の境界部に配置することとした。すなわち本発明では,低レベルではあるものの応力緩和機能を有する境界部に,さらなる応力緩和機能を備える空隙としてのガス吐出口を重畳的に備えることで,破壊の発生又は破壊の拡大をさらに抑制又は防止することができる。
なお,ガス吐出口からのガス吐出に伴う冷却効果により,耐火物の温度上昇を抑制して耐火物(特にノズルの内孔側又は上端側)の熱膨張に起因する応力を低下させる,二次的な効果も期待できる。
本発明において境界部は,例えば図1に示すようなノズル2において,その内孔4の上端部付近に円筒状の嵌合領域用耐火物層5Aを設置する場合,この嵌合領域用耐火物層5Aの外周側,及びノズル2の嵌合領域下側の内孔4横方向(ノズル縦方向中心軸に対し概ね垂直な方向)に存在する。
そしてガス吐出口8Aはこれら境界部9のいずれか一方又は両方において,溶鋼と接する面に設置することができる。
また例えば図2に示すように,ノズル2の上端部全体を嵌合部用耐火物層5Aとする場合は,ノズル2の嵌合領域下側の内孔4横方向(ノズル縦方向中心軸に対し概ね垂直な方向)に存在する境界部9の溶鋼と接する面に,ガス吐出口8Aを設置することができる。
なお,図1及び図2に示すノズル2においてガスは,ガス導入孔6から導入され,ガスプール7を経由してガス吐出口8から溶鋼内へ吐出される。
本発明においてガス吐出口は,複数個の貫通孔又はスリットとすることができる。応力緩和機能は貫通孔の数,大きさ,スリットの大きさ(幅)等によりやや異なるが,ガス量とのバランス等の,個別の操業条件に応じて決定すればよい。
複数個の貫通孔の場合,境界部の全周にできるだけ均一な応力緩和機能を得る観点から,境界部の大きさにもよるが,概ね8箇所以上であることが好ましい。
ここで本発明者らの知見では,溶鋼容器内又は鋳型内における介在物浮上効果等に及ぼすガスの溶鋼中の気泡径の最適化等の観点から,貫通孔の径は2mm以下,スリットの幅は1mm以下であることが好ましい。その理由は,ガスの吐出量制御がより高精度で行えること,及び溶鋼内介在物を浮上し易く鋼の欠陥を生じ難い小径の気泡(概ね3mm未満)の割合が多いこと等による。図9及び図10にこれらの水モデル実験結果を示している。
ところで,ガスを溶鋼内に吐出してもノズル又はストッパーにアルミナを主とする溶鋼内介在物(非金属介在物)が付着することがあるが,このような非金属介在物の付着が溶鋼の流量制御に最も大きく影響を及ぼすのは,前述の嵌合領域である。
そこで本発明では,この嵌合領域に,非金属介在物に対して難付着性を有する,炭素含有量が5質量%以下(ゼロを含む)の耐火物(カーボンレス耐火物)を設置することができる。
非金属介在物の付着性は,耐火物の組成によっても様々な挙動が生じてその複合的な結果として表れる現象であるが,溶鋼に接する耐火物中の炭素含有量にも依存する。炭素が溶鋼中に高い速度で溶出して耐火物組織が粗になることが主たる原因である。
本発明者らは,試験室及び実操業において,この嵌合領域に設置する耐火物の炭素含有量を5質量%以下(ゼロを含む)のカーボンレス耐火物にすることで,難付着性が顕著に向上することを知見した。
このカーボンレス耐火物は,アルミナ質,アルミナ-シリカ質でもよいが,本発明者らは試験室及び実操業において,ZrO含有量が75質量%以上,又はスピネル(Al・MgO)含有量が75質量%以上で,残部が主としてアルミナ等の酸化物から成る材料がより好ましいことを知見した。
一方,ノズル本体を構成する本体用耐火物(図1~5において符号2A)は,アルミナ質,アルミナ-シリカ質,スピネル質,ジルコン質又はマグネシア質から選択する耐火性原料を主たる構成物とする耐火物とすることができる。ノズル,特に長尺となる浸漬ノズルには高い耐熱衝撃性が必要である。そこで,本発明においても一般的な本体用耐火物と同様,炭素成分を約12~約30質量%程度含有する材料を使用することができる。
なお,前記カーボンレス耐火物の熱膨張(1500℃において約1.0~約1.4%)はこのような本体用耐火物の熱膨張(炭素含有量約25質量%のアルミナ質の場合,1500℃において約0.5~約0.6%)よりも大きいので,このカーボンレス耐火物を本体用耐火物の内側,又は上部に設置した際は,特にこれらを一体的又は連続構造とした場合には,カーボンレス耐火物が本体用耐火物を押し割ることが多い。
そこで,「嵌合領域用耐火物層」にこれらカーボンレス耐火物を適用する場合には本発明を適用することが好適である。
ストッパーの嵌合領域の少なくとも一部にも,前記カーボンレス耐火物(嵌合領域用耐火物層)(図5において符号5B)を備えることで,嵌合領域における非金属介在物の難付着性機能を高める,又は鋳型内での介在物浮上効果を高めることができる。
なお,ノズルの嵌合領域とストッパーの嵌合領域とで,適用するカーボンレス耐火物(嵌合領域用耐火物層)は同一材質である必要はない。例えば,ノズルの嵌合領域にカーボンレス耐火物(嵌合領域用耐火物層)として「ZrO含有量が75質量%以上,炭素含有量が5質量%以下(ゼロを含む)であり,残部が主として酸化物から成る」材質を適用し,ストッパーの嵌合領域にカーボンレス耐火物(嵌合領域用耐火物層)として「スピネル(Al・MgO)含有量が75質量%以上,炭素含有量が5質量%以下(ゼロを含む)であり,残部が主として酸化物から成る」材質を適用することもできる。
本発明においては,例えば図3~5に示すようにストッパー1にもガス吐出口8Bを備えることができる。このストッパー1におけるガス吐出口8Bは,ノズル2との接触部より下方に設けられ,一若しくは複数個の貫通孔又はスリットとすることができる。ストッパーにおいても,貫通孔の径は2mm以下,スリットの幅は1mm以下であることが好ましい。
なお,図3~5に示すストッパー1においてガスは,ストッパーの内孔3へ導入され,その内孔3を経由してガス吐出口8Bから溶鋼内へ吐出される。
ノズル又はストッパーにおいて,ガス吐出口としての複数の貫通孔の間は,前述の嵌合領域用の耐火物,本体用耐火物のいずれを配置してもよい。言い換えると,貫通孔のいずれかは嵌合領域用の耐火物及び本体用耐火物に接するが,嵌合領域用の耐火物内,本体用耐火物内のいずれかの中に埋めてもまたそれらの中間でもよい。
また,嵌合領域用の耐火物と本体用耐火物と間にモルタルを配置し,その中に貫通孔を配置してもよい。
図6にノズルにおけるガス吐出口8Aの配置例を示している。
図6(A)は,複数個の貫通孔8Aの内孔4側が嵌合領域用耐火物層5Aに接し,複数個の貫通孔8Aの間に本体用耐火物2Aを配置した例である。
図6(B)は,複数個の貫通孔8Aのノズル外周側が本体用耐火物2Aに接し,複数個の貫通孔8Aの間に嵌合領域用耐火物層5Aを配置した例である。
図6(C)は,ガス吐出口8Aをほぼ連続した環状のスリットとした例である。なお,「ほぼ連続した環状」としたのは,本体用耐火物2Aと嵌合領域用耐火物層5Aとの間(境界部)に部分的に接合箇所が必要なためである。
図6(D)は,複数個の貫通孔8Aをモルタル10内に配置した例である。
図7にストッパーにおけるガス吐出口8Bの配置例を示している。
図7(A)は,一の貫通孔8Bを配置した例である、
図7(B)は,複数個の貫通孔8Bのストッパー中心側が本体用耐火物1Aに接し,複数個の貫通孔8Bの間に嵌合領域用耐火物層5Bを配置した例である。
図7(C)は,複数個の貫通孔8Bのストッパー外周側が嵌合領域用耐火物層5Bに接し,複数個の貫通孔8Bの間に本体用耐火物1Aを配置した例である。
図7(D)は,ガス吐出口8Bをほぼ連続した環状のスリットとした例である。「ほぼ連続した環状」とした理由は前述のとおりである。
図7(E)は,複数個の貫通孔8Bをモルタル10内に配置した例である。
<実施例A>
嵌合領域用耐火物層(カーボンレス耐火物)と本体用耐火物との境界部に複数個の貫通孔を設けた場合の応力緩和効果について,これまでの知見に基づき有限要素法により簡易的に計算を行った結果を表1に示す。
表1において,成形方法の「一体」は異なる耐火物の坏土を同時一体的に成形して連続的な組織構造である場合,「分割」はそれぞれ別個に成形したものを空目地で固定する場合を指す。また,最大発生応力指数は比較例1の最大発生応力を100として指数化したもので,この最大発生応力指数が小さいほど応力緩和機能に優れるということである、
Figure 0007182496000001
成形方法が「一体」である比較例1と実施例1を比較すると,貫通孔を設けた実施例1の方が応力緩和機能に優れることがわかる。また,成形方法が「分割」である比較例2と実施例2を比較すると,貫通孔を設けた実施例2の方が応力緩和機能に優れることがわかる。
<実施例B>
図8に,異なる耐火物ごとのアルミナ付着量を示している。これは試験室及び実操業での複数の知見をまとめたものである。
なお,試料No.2,7,10は炭素を含有していない。
図8では,黒鉛を主とする炭素含有量25質量%のアルミナ質(「AG材質」ともいう。)を1とするアルミナ付着量指数で,各試料のアルミナ付着量を示している。
図8より,いずれのカーボンレス耐火物もアルミナ付着量が低下することがわかる。すなわち,炭素含有量が5質量%以下で顕著なアルミナ付着量低減効果が認められる。
また,ジルコニア(ZrO)系材質,スピネル系材質ではジルコニア又はスピネルの含有量が約75質量%以上で顕著なアルミナ付着量低減効果が認められるが,約80質量%以上でより顕著な効果が得られることがわかる。
1 ストッパー
1A ストッパーの本体用耐火物
2 ノズル
2A ノズルの本体用耐火物(嵌合領域用の耐火物以外の耐火物)
3 ストッパーの内孔
4 ノズルの内孔
5A,5B 嵌合領域用耐火物(カーボンレス耐火物)
6 ガス導入孔
7 ガスプール
8A,8B ガス吐出口(貫通孔又はスリット)
9 嵌合領域用耐火物(カーボンレス耐火物)と本体用耐火物との境界部
10 モルタル

Claims (11)

  1. 溶鋼の連続鋳造において溶鋼の流量を制御するストッパーの下方に位置して前記ストッパーと嵌合する連続鋳造用ノズル(以下単に「ノズル」という。)であって,前記ストッパーとの接触部を含む嵌合領域に,前記嵌合領域用の耐火物から成る層(以下「嵌合領域用耐火物層」という。)を備えており,
    前記嵌合領域用耐火物層は,ノズル本体を構成する,前記嵌合領域用の耐火物以外の耐火物(以下「本体用耐火物」という。)とは異なる材質の耐火物から成り,
    溶鋼に接する面における前記嵌合領域用耐火物層と前記本体用耐火物との境界部の少なくとも一にガス吐出口を備えている,ノズル。
  2. 前記ガス吐出口は,複数個の貫通孔又はスリットである,請求項1に記載のノズル。
  3. 前記貫通孔の径は2mm以下,前記スリットの幅は1mm以下である,請求項2に記載のノズル。
  4. 前記嵌合領域用の耐火物は,炭素含有量が5質量%以下(ゼロを含む)の耐火物(以下「カーボンレス耐火物」という。)である,請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のノズル。
  5. 前記カーボンレス耐火物は,ZrO含有量が75質量%以上,炭素含有量が5質量%以下(ゼロを含む)であり,残部が主として酸化物から成る,請求項4に記載のノズル。
  6. 前記カーボンレス耐火物は,スピネル(Al・MgO)含有量が75質量%以上,炭素含有量が5質量%以下(ゼロを含む)であり,残部が主として酸化物から成る,請求項4に記載のノズル。
  7. 前記本体用耐火物は,アルミナ質,アルミナ-シリカ質,スピネル質,ジルコン質又はマグネシア質から選択する耐火性原料を主たる構成物とする耐火物である,請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のノズル。
  8. 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のノズルとストッパーとを備えるノズルとストッパーの構造体であって,
    前記ストッパーは,前記ノズルとの接触部より下方にガス吐出口を備えており,前記ストッパーのガス吐出口は一若しくは複数個の貫通孔又はスリットである,ノズルとストッパーの構造体。
  9. 前記ストッパーの貫通孔の径は2mm以下,スリットの幅は1mm以下である,請求項8に記載のノズルとストッパーの構造体。
  10. 前記ストッパーの,前記ノズルとの接触部を含む嵌合領域の少なくとも一部に,前記嵌合領域用耐火物層を備えている,請求項8又は請求項9に記載の,ノズルとストッパーの構造体。
  11. 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のノズルとストッパーとを備えるノズルとストッパーの構造体であって,前記ストッパーの,前記ノズルとの接触部を含む嵌合領域の少なくとも一部に,前記嵌合領域用耐火物層を備えている,ノズルとストッパーの構造体。
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