JP7181054B2 - グラフト共重合体の製造方法、及び成形体の製造方法。 - Google Patents

グラフト共重合体の製造方法、及び成形体の製造方法。 Download PDF

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Description

本発明は、アクリル系ゴムに塩化ビニルをグラフト重合させたグラフト共重合体の製造方法、及び該製造方法で得られたグラフト重合体を用いた成形体の製造方法に関する。
アクリル系ゴムに塩化ビニルをグラフト重合させたグラフト共重合体を用いることで、成形体の耐衝撃性や軟質性を高めることができる。一方、透明性物品に用いる場合、グラフト重合体は、平均粒子径を小さくして透明性を高めるためにエマルジョン重合で製造されることが好まれている。例えば、特許文献1及び2には、グラフトベースを乳化重合(エマルジョン重合とも称される。)で重合した後、該グラフトベースにグラフト部を構成するモノマーを乳化重合でグラフトさせることで塩化ビニルグラフト重合体を製造することが提案されている。
特表2016-506984号公報 特表2016-510074号公報
しかしながら、本願の発明者らは、引用文献1及び2のようにグラフトベースのエマルジョン重合時に開始剤として水溶性過酸化物を用いた場合、グラフト共重合体ラテックスの機械的安定性が低下することを見出した。
本発明は、上述した問題を解決するため、グラフト共重合体を用いた成形体の透明性を高めるとともに、グラフト共重合体ラテックスの機械的安定性を向上させたグラフト共重合体の製造方法、及び成形体の製造方法を提供する。
本発明は、アルキルアクリレート80質量%以上100質量%以下、アルキルメタクリレート0質量%以上20質量%以下、及び他のビニルモノマー0質量%以上4質量%以下を含むゴム部用ビニルモノマー100質量部と、多官能性モノマー0.1質量部以上5質量部以下を乳化重合してアクリル系ゴムを得る第1の工程と、第1の工程で得られたアクリル系ゴム3質量部以上80質量部以下に、塩化ビニルモノマー80質量%以上100質量%以下、及び他のビニルモノマー0質量%以上20質量%以下を含むグラフト部用ビニルモノマー20質量部以上97質量部以下を乳化重合でグラフト重合させて、100質量部のグラフト共重合体を得る第2の工程を含むグラフト共重合体の製造方法であって、前記グラフト共重合体の平均粒子径が100nm以下であり、前記第1の工程で使用される重合開始剤が、油溶性パーオキサイド系開始剤であることを特徴とするグラフト共重合体の製造方法に関する。
前記グラフト共重合体において、ゴム部のガラス転移温度が30℃以下であり、グラフト部のガラス転移温度が30℃を超えることが好ましい。
前記アクリル系ゴムは、複数の層を有し、内側の層はアルキルアクリレート由来の構成単位からなり、外側の層はアルキルメタクリレート由来の構成単位からなることが好ましい。
前記第1の工程及び前記第2の工程のうちの少なくとも一方の工程において使用される乳化剤がアルケニルコハク酸塩であることが好ましい。
本発明は、また、前記のグラフト共重合体の製造方法で得られたグラフト共重合体を用いて成形体を得る成形体の製造方法に関する。
本発明のグラフト共重合体の製造方法によれば、グラフト共重合体ラテックスの機械的安定性、具体的にはマーロン安定性を向上させつつ、成形体の透明性を向上し得るグラフト共重合体を得ることができる。また、該製造方法で得られたグラフト重合体を用いることで、透明性が高い成形体を高い生産性で製造することができる。
図1は、実施例1及び比較例1のグラフト共重合体の動的粘弾性を示すグラフである。
本願の発明者らは、乳化重合で得られたアクリル系ゴムに乳化重合で塩化ビニルモノマーをグラフトさせてグラフト共重合体を作製するに際し、アクリル系ゴムの乳化重合に水溶性過酸化物等の水溶性開始剤を用いると、グラフト共重合体ラテックスの機械的安定性が低下するが、アクリル系ゴムの乳化重合時に油溶性パーオキサイド系開始剤を用いることで、グラフト共重合体ラテックスの機械的安定性が向上することを見出した。これは、アクリル系ゴムの乳化重合時に水溶性過酸化物等の水溶性開始剤を用いると、得られたアクリル系ゴム粒子が親水化しやすいことから、該アクリル系ゴムに塩化ビニルモノマーを乳化重合でグラフトした場合、塩化ビニルモノマーがアクリル系ゴム粒子に含浸しやすくなり、アクリル系ゴム粒子に対する塩化ビニルモノマーの被覆率が低下し、それゆえ、グラフト共重合体ラテックスの機械的安定性が低下すると推測される。一方、アクリル系ゴムの乳化重合時に油溶性パーオキサイド系開始剤を用いると、得られたアクリル系ゴム粒子が親水化しないことから、該アクリル系ゴムに塩化ビニルモノマーを乳化重合でグラフトした場合、塩化ビニルモノマーがアクリル系ゴム粒子に含浸しにくく、アクリル系ゴム粒子に対する塩化ビニルモノマーの被覆率が高くなり、それゆえ、グラフト共重合体ラテックスの機械的安定性が向上すると推測される。
(第1の工程)
第1の工程では、アルキルアクリレート80質量%以上を含むゴム部用ビニルモノマー100質量部と、多官能性モノマー0.1質量部以上5質量部以下を乳化重合してアクリル系ゴム(ゴム部)を得る。
前記アルキルアクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、重合性に優れ、安価であり、Tgが低い重合体を与える等の点から、炭素数が1以上22以下のアルキル基を有するアルキルアクリレートを用いることができる。前記アルキルは、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。炭素数が1以上22以下のアルキル基を有するアルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、クミルアクリレート、n-ヘプチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-メチルヘプチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ノニルアクリレート、2-メチルオクチルアクリレート、2-エチルヘプチルアクリレート、n-デシルアクリレート、2-メチルノニルアクリレート、2-エチルオクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート等が挙げられる。製造安定性の点から、アルキル基の炭素数が1以上12以下のものが好ましく、アルキル基の炭素数が1以上8以下のものがより好ましい。これらは単独または2種以上を組合せて使用することができる。
ゴム部用ビニルモノマーは、グラフト共重合体を用いた成形体の耐衝撃性や軟質性、引張破断時の伸びを向上させる観点から、アルキルアクリレートを85質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましく、95質量%以上含むことがさらに好ましく、100質量%からなることが特に好ましい。
ゴム部用ビニルモノマーは、透明性やラテックスの機械的安定性の観点から、アルキルメタクリレートを0質量%以上20質量%以下含んでもよく、15質量%以下含んでもよく、10質量%以下含んでもよく、5質量%以下含んでもよい。
前記アルキルメタクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、重合性に優れ、安価であり、Tgが低い重合体を与える等の点から、炭素数が1以上22以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを用いることができる。前記アルキルは、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。炭素数が1以上22以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-ヘプチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-メチルヘプチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-ノニルメタクリレート、2-メチルオクチルメタクリレート、2-エチルヘプチルメタクリレート、n-デシルメタクリレート、2-メチルノニルメタクリレート、2-エチルオクチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート等が挙げられる。製造安定性の点から、アルキル基の炭素数が1以上12以下のものが好ましく、アルキル基の炭素数が1以上8以下のものがより好ましい。これらは単独または2種以上を組合わせて使用することができる。
ゴム部用ビニルモノマーは、アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレート以外の他のビニルモノマーを0質量%以上4質量%以下含んでもよい。ここで、他のビニルモノマーは、後述する多官能性モノマーは含まない。他のビニルモノマーとしては、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル誘導体、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル誘導体、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸及びその塩、アクリル酸β-ヒドロキシエチル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリルアミド、N-メチロ-ルアクリルアミド等のアクリル酸誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カルシウム等のメタクリル酸及びその塩、メタクリルアミド、メタクリル酸β-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸誘導体、無水マレイン酸、N-アルキルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイン酸誘導体等が挙げられる。これらは1種を単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、透明性の点より、芳香族ビニル誘導体が好ましい。
前記多官能性モノマーとしては、架橋剤及び/又はグラフト交叉剤として通常使用されるものでよい。例えば、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレンジメタクリレート、モノエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチルロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等を使用することができる。これらの多官能性モノマーは、1種を単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
ゴム部用ビニルモノマー100質量部に対して、多官能性モノマーを0.1質量部以上5質量部用いることで、グラフト共重合体を用いた成形体の耐衝撃性、軟質性や透明性を良好にすることができる。
第1の工程の乳化重合では、重合開始剤として油溶性パーオキサイド系開始剤を用いる。油溶性パーオキサイド系開始剤としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの油溶性パーオキサイド系開始剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。中でも、クメンハイドロパーオキサイド及びパラメンタンハイドロパーオキサイドからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
前記乳化重合は、重合開始剤として油溶性パーオキサイド系開始剤を用いること以外は、特に限定されず、一般的な乳化重合方法と同じ方法で行うことができる。乳化重合は、例えば、水性媒体中で、ゴム部用ビニルモノマー及び多官能性モノマーを、乳化剤存在下で油溶性パーオキサイド系開始剤を用いて乳化重合することができる。ゴム部用ビニルモノマー及び多官能性モノマーは、一括添加、多段添加、連続添加のいずれの方法で添加してもよく、それらを適宜に組み合わせても良い。
乳化剤は特に限定されるものではないが、例えばアニオン性界面活性剤を用いることができる。前記アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルケニルコハク酸塩、ロジン酸塩、ポリオキシエチレンラウリル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩等が挙げられる。塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。中でも、グラフト共重合体との相溶性が高く、グラフト共重合体を用いた成形体の透明性を高める観点から、アルケニルコハク酸塩であることが好ましい。アルケニルコハク酸塩としては、例えば、炭素数8以上22以下のアルケニル基を有するものが好ましく、炭素数10以上18以下のアルケニル基を有するものがより好ましい。また、塩としては、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩等の金属塩が挙げられ、カリウム塩が好ましく、モノ塩又はジ塩でもよく、ジ塩が好ましい。
本発明において、前記ゴム部は、複数の層を有し、内側の層はアルキルアクリレート由来の構成単位からなり、外側の層はアルキルメタクリレート由来の構成単位からなることが好ましい。この場合、アルキルアクリレートを乳化重合してアルキルアクリレート由来の構成単位からなる内側の層を得た後、アルキルメタクリレートを乳化重合することでアルキルメタクリレート由来の構成単位からなる外側の層を得ることができる。複数の層のいずれの層も重合開始剤として油溶性パーオキサイド系開始剤を用いて乳化重合で作製する。
前記ゴム部のラテックスにおいて、ゴム部の平均粒子径は、透明性及び耐衝撃性の観点から、10nm以上100nm未満であることが好ましく、15nm以上90nm以下であることがより好ましく、20nm以上80nm以下であることがさらに好ましい。本発明において、ゴム部のラテックス中のゴム部の平均粒子径は、体積基準の平均粒子径であり、例えば、動的光散乱法を用いた粒子径分布測定装置(日機装株式会社製「Nanotrac Wave」)を用いて測定することができる。
前記ゴム部のラテックスにおいて、ゴム部の濃度は、すなわち固形分の濃度は、特に限定されないが、例えば、仕込み量を増やす観点から、25質量%以上50質量%以下であることが好ましく、28質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。
(第2の工程)
第2の工程では、第1の工程で得られたアクリル系ゴム3質量部以上80質量部以下に、塩化ビニルモノマー80質量%以上を含むグラフト部用ビニルモノマー20質量部以上97質量部以下を乳化重合でグラフトさせて、100質量部のグラフト共重合体を得る。
本発明において、グラフト共重合体を用いた成形体を軟質分野に用いる場合は、好ましくは、前記グラフト共重合体は、グラフト共重合体を100質量部とした場合、前記アクリル系ゴム30質量部以上80質量部以下に、グラフト部用ビニルモノマー20質量部以上70質量部以下を乳化重合でグラフト重合させてなるものであり、より好ましくは、前記アクリル系ゴム40質量部以上70質量部以下に、グラフト部用ビニルモノマー30質量部以上60質量部以下を乳化重合でグラフト重合させてなるものである。
本発明において、グラフト共重合体を用いた成形体を硬質分野に用いる場合は、好ましくは、前記グラフト共重合体は、グラフト共重合体を100質量部とした場合、前記アクリル系ゴム3質量部以上30質量部未満に、グラフト部用ビニルモノマー70質量部超え97質量部以下を乳化重合でグラフト重合させてなるものであり、より好ましくは、前記アクリル系ゴム5質量部以上29.9質量部以下に、グラフト部用ビニルモノマー70.1質量部以上95質量部以下を乳化重合でグラフト重合させてなるものである。
グラフト部用ビニルモノマーは、グラフト共重合体を用いた成形体の成形性を向上させる観点から、塩化ビニルを85質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましく、95質量%以上含むことがさらに好ましく、100質量%からなることが特に好ましい。
グラフト部用ビニルモノマーは、透明性、ラテックスの機械的安定性の観点から、塩化ビニルモノマーに加えて、他のビニルモノマーを0質量%以上20質量%以下含んでもよく、15質量%以下含んでもよく、10質量%以下含んでもよく、5質量%以下含んでもよい。他のビニルモノマーとしては、ゴム部用ビニルモノマーに用いるものとして列挙したアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート及び他のビニルモノマーを適宜用いることができる。
前記乳化重合は、ゴム部(具体的には、ゴム部のラテックス)の存在下で行うこと以外は、特に限定されず、一般的な乳化重合方法と同じ方法で行うことができる。乳化重合は、例えば、水性媒体中で、グラフト部用ビニルモノマーを、乳化剤存在下で重合開始剤を用いて乳化重合することができる。グラフト部用ビニルモノマーは、一括添加、多段添加、連続添加のいずれの方法で添加してもよく、それらを適宜に組み合わせても良い。
重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ系開始剤、ぺルオキソ二硫酸塩(過硫酸塩とも称される。)、過酸化水素水等を用いることができる。有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等が挙げられる。アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。ぺルオキソ二硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独又は二種以上組み合わせて用いることができる。
重合開始剤は、必要に応じて、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート等の還元剤と併用することができる。前記還元剤は、単独又は二種以上組み合わせて用いることができる。
有機過酸化物は、酸化還元系触媒及び還元剤とともに、レドックス型重合開始剤して用いることができる。上記酸化還元系触媒としては、遷移金属塩とキレート剤とを併用することで生成された遷移金属錯体を用いることができる。遷移金属塩としては、例えば、硫酸第一鉄(II)、硫酸銅(II)、塩化銅等が挙げられ、キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA・2Na)、酒石酸、アンモニア等が挙げられる。遷移金属塩として硫酸第一鉄(II)を用い、キレート剤としてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA・2Na)を用いた場合、Fe-EDTAが生成されて酸化還元系触媒として機能する。
乳化剤としては、ゴム部の乳化重合に用いる乳化剤として列挙したものを適宜用いることができる。乳化剤としては、グラフト共重合体との相溶性が高く、グラフト共重合体を用いた成形体の透明性を高める観点から、アルケニルコハク酸塩を用いることが好ましい。アルケニルコハク酸塩としては、例えば、炭素数8以上22以下のアルケニル基を有するものが好ましく、炭素数10以上18以下のアルケニル基を有するものがより好ましい。また、塩としては、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩等の金属塩が挙げられ、カリウム塩が好ましく、モノ塩又はジ塩でもよく、ジ塩が好ましい。
第1の工程及び第2の工程を含むグラフト共重合体の製造工程において、重合安定性、及びラテックスの機械的安定性の観点から、ゴム部用ビニルモノマー及びグラフト部用ビニルモノマーの合計質量を100質量部とした場合、すなわち、グラフト共重合体100質量部に対して、乳化剤を合計で0.3質量部以上8.0質量部以下添加することが好ましく、0.5質量部以上6.0質量部以下添加することがより好ましく、1.0質量部以上4.0質量部以下添加することがさらに好ましい。乳化剤が4.0質量部以下であると、透明性がより良好になる。また、乳化剤が1.0質量部以上であると、機械的安定性がより良好になる。第1の工程において、重合開始剤として油溶性パーオキサイド系開始剤を用いることで、乳化剤の量を低減しても、機械的安定性が向上し、また、乳化剤の量を低減することで透明性が高まる。
第1の工程では、例えば、重合安定性の観点から、ゴム部用ビニルモノマー100質量部に対し、乳化剤を0.3質量部以上8.0質量部以下添加することが好ましく、0.5質量部以上6.0質量部以下添加することがより好ましく、1.0質量部以上4.0質量部以下添加することがさらに好ましい。第2の工程では、例えば、重合安定性やラテックスの機械的安定性の観点からグラフト部用ビニルモノマー100質量部に対し、乳化剤を0.3質量部以上8.0質量部以下添加することが好ましく、0.5質量部以上6.0質量部以下添加することがより好ましく、1.0質量部以上4.0質量部以下添加することがさらに好ましい。なお、乳化剤は、必要に応じて、第2の工程後に、グラフト重合体ラテックス中に添加してもよい。
上記のようにして得られたグラフト共重合体ラテックスにおいて、グラフト共重合体の平均粒子径は100nm以下であり、透明性に優れる成形体を得ることができる。耐衝撃性及び透明性に優れる観点から、グラフト共重合体の平均粒子径は、好ましくは15nm以上100nm以下であり、より好ましくは20nm以上95nm以下であり、さらに好ましくは25nm以上90nm以下である。前記グラフト共重合体ラテックス中のグラフト共重合体の平均粒子径は、体積基準の平均粒子径であり、例えば、動的光散乱法を用いた粒子径分布測定装置(日機装株式会社製「Nanotrac Wave」)を用いて測定することができる。
前記グラフト共重合体ラテックスにおいて、固形分の濃度は、特に限定されないが、例えば、25質量%以上50質量%以下であることが好ましく、28質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。
前記グラフト共重合体ラテックスは、機械的安定性に優れる観点から、JIS K 6392に準じてマーロン試験機で試験を行った際、グラフト共重合体ラテックス中の固形物に対する凝集物の質量の割合、すなわち凝集率が30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることがさらにより好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
前記グラフト共重合体ラテックスに、酸及び塩からなる群から選ばれる一種以上の凝固剤を添加して凝固し、例えば40℃以上110℃以下の温度で熱処理し、洗浄脱水し、乾燥し、所定のサイズの篩をかけることで、粉末状のグラフト共重合体を得ることができる。また、パウダースプレー乾燥等も利用することができる。
前記グラフト共重合体は、ゴム部のガラス転移温度が30℃以下であり、グラフト部のガラス転移温度が30℃を超えることが好ましい。ゴム部に対するグラフト部の被覆率が高く、機械的安定性が良好になる。より好ましくは、ゴム部のガラス転移温度が30℃以下であり、グラフト部のガラス転移温度が50℃以上である。本発明において、ゴム部及びグラフト部のガラス転移温度は、周波数1HZ、歪0.05%、昇温速度4℃/minで動的粘弾性を測定することで求めることができる。
(成形体の製造方法)
上記で得られたグラフト共重合体を用いて成形体を得ることができる。前記グラフト共重合体に必要に応じて、可塑剤、安定剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、充填剤、希釈剤等の各種添加剤を配合して樹脂組成物として用いてもよい。
前記樹脂組成物は、特に限定されないが、例えば、カレンダー成形法、射出成形法、押出成形法等のいずれかの方法により成形して成形体を得ることができる。
前記成形体は、透明性に優れる観点から、厚みが5mmの場合、JIS K 6714に準拠して測定したヘイズ(Haze)が50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、20%以下であることがさらにより好ましく、10%以下であることが特に好ましい。可塑剤を用いることなく、透明で軟質性に優れる成形体、または透明で耐衝撃性に優れる成形体を得ることができる。
前記成形体は、軟質用途に好適に用いる観点から、厚みが1mmの場合、JIS K 6251に準拠して測定した引張弾性率が5MPa以上500MPa以下であることが好ましく、より好ましくは10MPa以上300MPa以下であり、さらに好ましくは15MPa以上100MPa以下である。軟質用途の成形体としては、例えば、カレンダー成形法、射出成形法、押出成形法等により得られる軟質フィルム、シート、板、各種成形体が挙げられ、具体的には、医療用バッグ、チューブ、自動車内装用のフィルム・シート、文具用のデスクマット、筆記具用軟質材、電線被覆材、床材、各種封止材等が代表例として挙げられる。
前記成形体は、硬質用途に好適に用いる観点から、厚みが1mmの場合、JIS K 6251に準拠して測定した引張弾性率が500MPa超え2500MPa以下であることが好ましく、より好ましくは550MPa以上2300MPa以下であり、さらに好ましくは600MPa以上2100MPa以下である。硬質用途の成形体としては、例えば、カレンダー成形法、射出成形法、押出成形法等により得られる硬質フィルム、シート、板、各種成形体が挙げられ、具体的には、印刷用フィルム・シート、自動車内装用フィルム・シート、食品・医薬品用フィルム、シート、容器、建築用フィルム、シート、板、屋根材、壁材、窓枠材、樋材、各種管材・管材継手等が代表例として挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、下記において、特に指摘がない場合、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
まず、各種測定方法及び評価方法を説明する。
(平均粒子径及び粒子径分布)
動的光散乱法を用いた粒子径分布測定装置(日機装株式会社製「Nanotrac Wave-EX150」)を用いて体積基準にて平均粒子径及び粒子径分布を測定した。
(ガラス転移温度)
ゴム部及びグラフト部のガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社「DVA-200」)にて、周波数1HZ、歪0.05%、昇温速度4℃/minで動的粘弾性を測定することで求めた。
(機械的安定性試験)
JIS K 6392に従い、マーロン試験機でエマルジョン100gを用いて、荷重7kg、回転数1000rpm、50℃で予熱2分間の後、20分間試験を行なった。試験後の凝集物の質量を秤り、仕込みエマルション中の固形分の質量に対する割合(質量%)、すなわち凝集率(質量%)で示した。凝集率に基づいて、機械的安定性を下記の基準で評価した。
○:凝集率が30質量%以下であり、機械的安定性が良好である。
×:凝集率が30質量%を超えており、機械的安定性が不良である。
(物性測定用試験片の作成)
塩化ビニル系グラフト共重合体100部、錫系安定剤(日東化成株式会社製「TVS# 1360」)1.0部、加工性改良剤(株式会社カネカ製「カネエースPA-20」)1.0部、滑剤(エメリーオレオケミカルズジャパン株式会社製「Loxiol GH-4」)0.5部、滑剤(エメリーオレオケミカルズジャパン株式会社製「Loxiol G-70S」)0.4部を攪拌しながら110℃まで加熱し、室温まで冷却しコンパウンドを得た(トータル102.9部)。得られたコンパウンドを2本ロール(日本ロール製造株式会社製「8インチミキシングロール」)を用いて160℃にて5分間混練りしてシートを作製した。その後、熱プレス機(神籐金属工業所製、37トンプレス)を用いて175℃にて100kgf/cm2の圧力で15分間加圧して、透明性測定用試験板(30mm×40mm×厚さ5mm)、及び引張試験用試験片(JIS K 6251-1号形)(厚さ1mm)をそれぞれ作製した。
(ヘイズ(濁度)の測定)
透明性用試験板(5mm)のヘイズ(濁度)をJIS K 6714 に準拠して測定した。ヘイズの値に基づいて、透明性を下記の5段階で評価した。評価が1の場合、透明性が不良であることを意味する。
5:ヘイズが10以下
4:ヘイズが10超え20以下
3:ヘイズが20超え30以下
2:ヘイズが30超え50以下
1:ヘイズが50超え
(引張弾性率の測定)
引張試験用試験片(厚み1mm)を用いて、JIS K 6251に準拠して引張試験を行い、引張弾性率を測定した。
(実施例1)
<ゴム部の重合>
水230部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム1.6部を攪拌機つき重合容器に仕込み、窒素置換の後60℃に昇温し、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0094部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA・2Na)0.0156部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.5部を添加し、その後ブチルアクリレート(BA)90部、メチルメタクリレート(MMA)10部、アリルメタクリレート1.2部及びパラメンタンハイドロパーオキサイド0.23部の混合液を300分かけて連続添加し、添加終了30分後にパラメンタンハイドロパーオキサイド0.23部を添加し、さらに30分間後重合の後、重合転化率99%、固形分濃度30%、平均粒子径33nmのアクリル系ゴム(ゴム部)を含むゴム部ラテックス(R-1)を得た。
<グラフト部の重合>
ついで、前記ゴム部ラテックス(R-1)167部(固形分50部)、水230部(ゴム部ラテックスからの持ち込み水を含む、以下同様)、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0012部、EDTA・2Na0.0021部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.054部を、攪拌機付き重合容器に仕込んだ。脱酸した後、塩化ビニルモノマー67部を仕込み、65℃に昇温し、過酸化水素が0.03部になるように過酸化水素の水溶液(0.06%)を135分間にわたり連続的に添加した。また、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが0.3部になるようにジオクチルスルホコハク酸ナトリウムの水溶液(2%)を135分間にわたり連続的に追加した。内圧が0.3MPaまで低下したところで反応を停止した。重合転化率は75%であった。未反応の塩化ビニルを除去し、平均粒子径が49nm、ゴム部のガラス転移温度が10℃、グラフト部のガラス転移温度が82℃の塩化ビニル系グラフト共重合体を含む塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-1)を得た。重合転化率に基づいて算出したところ、塩化ビニル系グラフト共重合体100部において、塩化ビニルの含有量は50部であった。すわなち、実施例1の塩化ビニル系グラフト共重合体は、ゴム部50部及びグラフト部50部からなるものであった。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-1)にさらに、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを3.5部後添加し、塩化ビニル系グラフト共重合体100部に対するジオクチルスルホコハク酸ナトリウム量の合計添加量が4.8部になるように調製した塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-1)を得た。塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-1)にて機械的安定性を評価した。
<後処理>
得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-1)を塩化カルシウムで凝固させ、熱処理、脱水処理及び乾燥処理に供し、粉末状の塩化ビニル系グラフト共重合体(P-1)を得、各種物性評価を行った。
(実施例2)
<ゴム部及びグラフト部の重合>
実施例1と同様にしてゴム部及びグラフト部の重合を行い、塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-1)を得た。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-1)にさらに、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを1.9部後添加し、塩化ビニル系グラフト共重合体100部に対するジオクチルスルホコハク酸ナトリウム量の合計添加量が3.2部になるように調製した塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-2)を得た。塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-2)にて機械的安定性を評価した。
<後処理>
得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-2)を塩化カルシウムで凝固させ、熱処理、脱水処理及び乾燥処理に供し、粉末状の塩化ビニル系グラフト共重合体(P-2)を得、各種物性評価を行った。
(実施例3)
<ゴム部の重合>
水230部、アルケニルコハク酸ジカリウム(アルケニル基の炭素数16-18、花王ケミカル製、商品名「ラテムルASK」、以下において、単に「ASK」とも記す。)3.2部を攪拌機つき重合容器に仕込み、窒素置換の後60℃に昇温し、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0094部、EDTA・2Na0.0156部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.5部を添加し、その後ブチルアクリレート90部、アリルメタクリレート1.08部及びパラメンタンハイドロパーオキサイド0.207部の混合液を270分かけて連続添加し、添加終了30分後にメチルメタクリレート10部及びパラメンタンハイドロパーオキサイド0.02部の混合液を30分かけて連続添加し、60分間後重合の後、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.23部を添加し、さらに30分間後重合の後、重合転化率99%、固形分濃度30%、平均粒子径55nmのアクリル系ゴムを含むゴム部ラテックス(R-3)を得た。得られたゴム部ラテックス(R-3)中において、ゴム部100部は、ブチルアクリレート90部からなる内側の層、メチルメタクリレート10部からなる外側の層で形成されている。
<グラフト部の重合>
ついで、前記ゴム部ラテックス(R-3)222部(固形分66.5部)、水230部、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0012部、EDTA・2Na0.0021部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.054部を、攪拌機付き重合容器に仕込んだ。脱酸した後、塩化ビニルモノマー45部を仕込み、65℃に昇温し、t-ブチルハイドロパーオキサイドが0.04部になるようにt-ブチルハイドロパーオキサイドの水溶液(0.3%)を150分間にわたり連続的に添加した。内圧が0.3MPaまで低下したところで反応を停止した。重合転化率が75%であった。未反応の塩化ビニルを除去し、平均粒子径が71nm、ゴム部のガラス転移温度が0℃、グラフト部のガラス転移温度が80℃の塩化ビニル系グラフト共重合体を含む塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-3)を得た。重合転化率に基づいて算出したところ、塩化ビニル系グラフト共重合体100部において、塩化ビニルの含有量は33.5部であった。すわなち、実施例3の塩化ビニル系グラフト共重合体は、ゴム部66.5部及びグラフト部33.5部からなるものであった。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-3)において、塩化ビニル系グラフト共重合体100部に対するアルケニルコハク酸ジカリウム(ASK)の合計添加量は2.1部であった。該塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-3)にて機械的安定性を評価した。
(後処理)
得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-3)を塩化カルシウムで凝固させ、熱処理、脱水処理及び乾燥処理に供し、粉末状の塩化ビニル系グラフト共重合体(P-3)を得、各種物性評価を行った。
(実施例4)
<ゴム部及びグラフト部の重合>
実施例3と同様にしてゴム部及びグラフト部の重合を行い、塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-3)を得た。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-3)にさらに、アルケニルコハク酸ジカリウム(ASK)2.0部を後添加し、塩化ビニル系グラフト共重合体100部に対するアルケニルコハク酸ジカリウム(ASK)の合計添加量が4.1部になるように調製した塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-4)を得た。塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-4)にて機械的安定性を評価した。
<後処理>
得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-4)を塩化カルシウムで凝固させ、熱処理、脱水処理及び乾燥処理に供し、粉末状の塩化ビニル系グラフト共重合体(P-4)を得、各種物性評価を行った。
(実施例5)
<ゴム部の重合>
水230部、アルケニルコハク酸ジカリウム(ASK)3.2部を攪拌機つき重合容器に仕込み、窒素置換の後60℃に昇温し、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0094部、EDTA・2Na0.0156部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.5部を添加し、その後ブチルアクリレート100部、アリルメタクリレート1.2部及びパラメンタンハイドロパーオキサイド0.23部の混合液を300分かけて連続添加し30分間後重合の後、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.23部を添加し、さらに30分間後重合の後、重合転化率99%、固形分濃度30%、平均粒子径55nmのアクリル系ゴムを含むゴム部ラテックス(R-5)を得た。
<グラフト部の重合>
ついで、前記ゴム部ラテックス(R-5)206部(固形分61.8部)、水230部、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0012部、EDTA・2Na0.0021部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.054部を、攪拌機付き重合容器に仕込んだ。脱酸した後、塩化ビニルモノマー51部を仕込み、65℃に昇温し、t-ブチルハイドロパーオキサイドが0.04部になるようにt-ブチルハイドロパーオキサイドの水溶液(0.3%)を150分間にわたり連続的に添加した。内圧が0.3MPaまで低下したところで反応を停止した。重合転化率が75%であった。未反応の塩化ビニルを除去し、平均粒子径が61nm、ゴム部のガラス転移温度が-10℃、グラフト部のガラス転移温度が78℃の塩化ビニル系グラフト共重合体を含む塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-5)を得た。重合転化率に基づいて算出したところ、塩化ビニル系グラフト共重合体100部において、塩化ビニルの含有量は38.2部であった。すわなち、実施例5の塩化ビニル系グラフト共重合体は、ゴム部61.2部及びグラフト部38.2部からなるものであった。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-5)にさらに、アルケニルコハク酸ジカリウム(ASK)1.3部を後添加し、塩化ビニル系グラフト共重合体100部に対するアルケニルコハク酸ジカリウム(ASK)の合計添加量が3.3部になるように調製した塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-5)を得た。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-5)にて機械的安定性を評価した。
<後処理>
得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-5)を塩化カルシウムで凝固させ、熱処理、脱水処理及び乾燥処理に供し、粉末状の塩化ビニル系グラフト共重合体(P-5)を得、各種物性評価を行った。
(実施例6)
<ゴム部及びグラフト部の重合>
実施例5と同様にしてゴム部及びグラフト部の重合を行い、塩化ビニル系グラフト共重体ラテックス(G-5)を得た。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-5)にさらに、アルケニルコハク酸ジカリウム(ASK)2.0部を後添加し、塩化ビニル系グラフト共重合体100部に対するアルケニルコハク酸ジカリウム(ASK)の合計添加量が4.0部になるように調製した塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-6)を得た。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-6)にて機械的安定性を評価した。
<後処理>
得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-6)を塩化カルシウムで凝固させ、熱処理、脱水処理及び乾燥処理に供し、粉末状の塩化ビニル系グラフト共重合体(P-6)を得、各種物性評価を行った。
(実施例7)
<ゴム部の重合>
水230部、アルケニルコハク酸ジカリウム(ASK)3.6部を攪拌機つき重合容器に仕込み、窒素置換の後60℃に昇温し、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0094部、EDTA・2Na0.0156部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.5部を添加し、その後ブチルアクリレート90部、メチルメタクリレート10部、アリルメタクリレート1.2部及びパラメンタンハイドロパーオキサイド0.23部の混合液を300分かけて連続添加し30分間後重合の後、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.23部を添加し、さらに30分間後重合の後、重合転化率99%、固形分濃度30%、平均粒子径56nmのアクリル系ゴムを含むゴム部ラテックス(R-7)を得た。
<グラフト部の重合>
ついで、前記ゴム部ラテックス(R-7)212部(固形分63.5部)、水230部、アルケニルコハク酸ジカリウム(ASK)1.6部、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0012部、EDTA・2Na0.0021部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.054部を、攪拌機付き重合容器に仕込んだ。脱酸した後、塩化ビニルモノマー49部を仕込み、65℃に昇温し、t-ブチルハイドロパーオキサイドが0.04部になるようにt-ブチルハイドロパーオキサイドの水溶液(0.3%)を150分間にわたり連続的に添加した。内圧が0.3MPaまで低下したところで反応を停止した。重合転化率が75%であった。未反応の塩化ビニルを除去し、平均粒子径が60nm、ゴム部のガラス転移温度が10℃、グラフト部のガラス転移温度が80℃の塩化ビニル系グラフト共重合体を含む塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-7)を得た。重合転化率に基づいて算出したところ、塩化ビニル系グラフト共重合体100部において、塩化ビニルの含有量は36.5部であった。すわなち、実施例7の塩化ビニル系グラフト共重合体は、ゴム部63.5部及びグラフト部36.5部からなるものであった。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-7)にさらに、アルケニルコハク酸ジカリウム(ASK)0.4部を後添加し、塩化ビニル系グラフト共重合体100部に対するアルケニルコハク酸ジカリウム(ASK)の合計添加量が4.3部になるように調製した塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-7)を得た。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-7)にて機械的安定性を評価した。
<後処理>
得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-7)を塩化カルシウムで凝固させ、熱処理、脱水処理及び乾燥処理に供し、粉末状の塩化ビニル系グラフト共重合体(P-7)を得、各種物性評価を行った。
(実施例8)
<ゴム部の重合>
実施例7で使用する乳化剤をアルケニルコハク酸ジカリウム(アルケニル基の炭素数12-14、花王ケミカル製、商品名「ラテムルDSK」、以下において、単にDSKとも記す。)6.5部に変更した以外は、実施例7と同様にして、重合転化率99%、固形分濃度30%、平均粒子径56nmのアクリル系ゴムを含むゴム部ラテックス(R-8)を得た。
(グラフト部の重合)
ついで、前記ゴム部ラテックス(R-8)219部(固形分65.7部)を用い、乳化剤を添加しない以外は実施例7と同様にしてグラフト部の重合を行い、平均粒子径が60nm、ゴム部のガラス転移温度が10℃、グラフト部のガラス転移温度が80℃の塩化ビニル系グラフト共重合体を含む塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-8)を得た。重合転化率が75%であった。重合転化率に基づいて算出したところ、塩化ビニル系グラフト共重合体100部において、塩化ビニルの含有量は34.3部であった。すわなち、実施例8の塩化ビニル系グラフト共重合体は、ゴム部65.7部及びグラフト部34.3部からなるものであった。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-8)にさらに、アルケニルコハク酸ジカリウム(DSK)0.7部を後添加し、塩化ビニル系グラフト共重合体100部に対するアルケニルコハク酸ジカリウム(DSK)の合計添加量が5.0部になるように調製した塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-8)を得た。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-8)にて機械的安定性を評価した。
(後処理)
得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(M-8)を塩化カルシウムで凝固させ、熱処理、脱水処理及び乾燥処理に供し、粉末状の塩化ビニル系グラフト共重合体(P-8)を得、各種物性評価を行った。
(実施例9)
<ゴム部の重合>
水230部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム1.3部を攪拌機つき重合容器に仕込み、窒素置換の後60℃に昇温し、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0094部、EDTA・2Na0.0156部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.5部を添加し、その後ブチルアクリレート90部、メチルメタクリレート10部、アリルメタクリレート1.2部及びクメンハイドロパーオキサイド0.20部の混合液を300分かけて連続添加し、添加終了30分後にクメンハイドロパーオキサイド0.20部を添加し、さらに30分間後重合の後、重合転化率99%、固形分濃度が30%、平均粒子径40nmのアクリル系ゴムを含むゴム部ラテックス(R-9)を得た。
<グラフト部の重合>
ついで、前記ゴム部ラテックス(R-9)95部(固形分28.6部)、水230部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0012部、EDTA・2Na0.0021部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.054部を、攪拌機付き重合容器に仕込んだ。脱酸した後、塩化ビニルモノマー95部を仕込み、65℃に昇温し、過酸化水素が0.03部になるように過酸化水素の水溶液(0.06%)を135分間にわたり連続的に添加した。また、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが0.3部になるようにジオクチルスルホコハク酸ナトリウムの水溶液(2%)を135分間にわたり連続的に追加した。内圧が0.3MPaまで低下したところで反応を停止した。重合転化率が75%であった。未反応の塩化ビニルを除去し、平均粒子径が60nm、ゴム部のガラス転移温度が10℃、グラフト部のガラス転移温度が82℃の塩化ビニル系グラフト共重合体を含む塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-9)を得た。重合転化率に基づいて算出したところ、塩化ビニル系グラフト共重合体100部において、塩化ビニルの含有量は71.4部であった。すわなち、実施例9の塩化ビニル系グラフト共重合体は、ゴム部28.6部及びグラフト部71.4部からなるものであった。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-9)において、塩化ビニル系グラフト共重合体100部に対するジオクチルスルホコハク酸ナトリウムの合計添加量は1.8部であった。該塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-9)にて機械的安定性を評価した。
<後処理>
得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(G-9)を塩化カルシウムで凝固させ、熱処理、脱水処理及び乾燥処理に供し、粉末状の塩化ビニル系グラフト共重合体(P-9)を得、各種物性評価を行った。
(比較例1)
<ゴム部の重合>
水230部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム5.5部、炭酸ナトリウム0.1部を攪拌機付き重合容器に仕込み、窒素置換の後80℃に昇温し、過硫酸カリウム0.01部を添加し、その後ブチルアクリレート90部、メチルメタクリレート10部、アリルメタクリレート1.2部の混合液を300分かけて連続添加し、さらに60分間後重合の後、重合転化率99%、固形分濃度が30%、平均粒子径39nmのアクリル系ゴムを含むゴム部ラテックス(比R-1)を得た。
<グラフト部の重合>
ついで、前記ゴム部ラテックス(比R-1)193部(固形分58部)、水230部、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0012部、EDTA・2Na0.0021部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.054部を、攪拌機付き重合容器に仕込んだ。脱酸した後、塩化ビニルモノマー56部を仕込み、65℃に昇温し、過酸化水素が0.03部になるように過酸化水素の水溶液(0.06%)を135分間にわたり連続的に添加した。内圧が0.3MPaまで低下したところで反応を停止した。重合転化率が 75%であった。未反応の塩化ビニルを除去し、平均粒子径が64nmの塩化ビニル系グラフト共重合体を含む塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比G-1)を得た。重合転化率に基づいて算出したところ、塩化ビニル系グラフト共重合体100部において、塩化ビニルの含有量は42部であった。すわなち、比較例1の塩化ビニル系グラフト共重合体は、ゴム部58部及びグラフト部42部からなるものであった。塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比G-1)において、塩化ビニル系グラフト共重合体のガラス転移温度は22℃であり、ゴム部及びグラフト部のそれぞれのガラス転移温度は観察されなかった。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比G-1)において、塩化ビニル系グラフト共重合体100部に対するジオクチルスルホコハク酸ナトリウムの合計添加量は3.2部であった。該塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比G-1)にて機械的安定性を評価した。
<後処理>
得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比G-1)を塩化カルシウムで凝固させ、熱処理、脱水処理及び乾燥処理に供し、粉末状の塩化ビニル系グラフト共重合体(比P-1)を得、各種物性評価を行った。
(比較例2)
(ゴム部及びグラフト部の重合)
比較例1と同様にしてゴム部及びグラフト部の重合を行い、塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比G-1)を得た。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比G-1)にさらに、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム2.3部を後添加し、塩化ビニル系グラフト共重合体100部に対するジオクチルスルホコハク酸ナトリウムの合計添加量が5.5部になるように調製した塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比M-2)を得た。該塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比M-2)にて機械的安定性を評価した。
(後処理)
得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比M-2)を塩化カルシウムで凝固させ、熱処理、脱水処理及び乾燥処理に供し、粉末状の塩化ビニル系グラフト共重合体(比P-2)を得、各種物性評価を行った。
(比較例3)
<ゴム部の重合>
水230部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム5.5部、炭酸ナトリウム0.1部を攪拌機付き重合容器に仕込み、窒素置換の後80℃に昇温し、過硫酸カリウム0.01部を添加し、その後ブチルアクリレート90部、アリルメタクリレート1.08部の混合液を270分かけて連続添加し、添加終了30分後にメチルメタクリレート10部を30分かけて連続添加し、60分間後重合の後、重合転化率が99%、固形分濃度が30%、平均粒子径49nmのアクリル系ゴムを含むゴム部ラテックス(比R-3)を得た。得られたゴム部ラテックス(比R-3)中において、ゴム部100部は、ブチルアクリレート90部からなる内側の層、メチルメタクリレート10部からなる外側の層で形成されている。
<グラフト部の重合>
ついで、前記ゴム部ラテックス(比R-3)181部(固形分54.4部)、水230部、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0012部、EDTA・2Na0.0021部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウム0.054部を、攪拌機付き重合容器に仕込んだ。脱酸した後、塩化ビニルモノマー61部を仕込み、65℃に昇温し、過酸化水素が0.03部になるように過酸化水素の水溶液(0.06%)を135分間にわたり連続的に添加した。内圧が0.3MPaまで低下したところで反応を停止した。重合転化率が75%であった。未反応の塩化ビニルを除去し、平均粒子径が70nmの塩化ビニル系グラフト共重合体を含む塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比G-3)を得た。重合転化率に基づいて算出したところ、塩化ビニル系グラフト共重合体100部において、塩化ビニルの含有量は45.6部であった。すわなち、実施例8の塩化ビニル系グラフト共重合体は、ゴム部54.4部及びグラフト部45.6部からなるものであった。塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比G-3)において、塩化ビニル系グラフト共重合体のガラス転移温度は22℃であり、ゴム部及びグラフト部のそれぞれのガラス転移温度は観察されなかった。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比G-3)において、塩化ビニル系グラフト共重合体100部に対するジオクチルスルホコハク酸ナトリウムの合計添加量は3.0部であった。該塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比G-3)にて機械的安定性を評価した。
<後処理>
得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比G-3)を塩化カルシウムで凝固させ、熱処理、脱水処理及び乾燥処理に供し、粉末状の塩化ビニル系グラフト共重合体(比P-3)を得、各種物性評価を行った。
(比較例4)
<ゴム部の重合>
乳化剤をジオクチルスルホコハク酸ナトリウム4.5部に変更した以外は、比較例3と同様にして重合転化率99%、固形分濃度が30%、平均粒子径56nmのアクリル系ゴムを含むゴム部ラテックス(比R-4)を得た。
<グラフト部の重合>
ついで、前記ゴム部ラテックス(比R-4)194部(固形分58.2部)、グラフト部の乳化剤をジオクチルスルホコハク酸ナトリウム4.3部にした以外は比較例3と同様にし、重合転化率が75%、平均粒子径が60nmの塩化ビニル系グラフト共重合体を含む塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比G-4)を得た。塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比G-4)において、塩化ビニル系グラフト共重合体のガラス転移温度は22℃であり、ゴム部及びグラフト部のそれぞれのガラス転移温度は観察されなかった。重合転化率に基づいて算出したところ、塩化ビニル系グラフト共重合体100部において、塩化ビニルの含有量は41.8部であった。すわなち、比較例1の塩化ビニル系グラフト共重合体は、ゴム部58.2部及びグラフト部41.8部からなるものであった。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比G-4)において、塩化ビニル系グラフト共重合体100部に対するジオクチルスルホコハク酸ナトリウムの合計添加量は6.9部であった。該塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比G-4)にて機械的安定性を評価した。
<後処理>
得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックス(比G-4)を塩化カルシウムで凝固させ、熱処理、脱水処理及び乾燥処理に供し、粉末状の塩化ビニル系グラフト共重合体(比P-4)を得、各種物性評価を行った。
実施例及び比較例で得られた粉末状の塩化ビニル系グラフト共重合体を用いて行った透明性及び柔軟性の評価結果を下記表1に示した。また、実施例及び比較例で得られた塩化ビニル系グラフト共重合体ラテックスを用いて行った機械的安定性の評価結果を下記表1に示した。下記表1には、乳化重合の条件等を併せて示した。なお、下記表1において、乳化剤の量は、塩化ビニル系グラフト共重合体100質量部に対するものである。
Figure 0007181054000001
上記表1のデータから分かるように、乳化重合で重合したゴム部及びグラフト部で構成され、平均粒子径が100nm以下のグラフト共重合体を得る際、ゴム部の乳化重合に油溶性パーオキサイド系開始剤を用いた実施例1~9では、グラフト共重合体ラテックスの機械的安定性が良好であるとともに、グラフト共重合体を用いた成形体の透明性も高かった。実施例1、7及び8の対比から分かるように、乳化剤としてアルケニルコハク酸塩を用いた場合、透明性がより向上する。実施例1~6の対比から分かるように、ゴム部が複数の層を有し、内側の層がアルキルアクリレート由来の構成単位からなり、外側の層はアルキルメタクリレート由来の構成単位からなる場合、機械的安定性がより向上する。グラフト共重合体100質量部におけるゴム部の含有量が30質量部以上である実施例1~8では、引張弾性率が500MPa以下であり、軟質用途に好適に用いることができる。グラフト共重合体100質量部におけるゴム部の含有量が30質量部未満である実施例9では、引張弾性率が500MPaを超えており、硬質用途に好適に用いることができる。
一方、ゴム部の乳化重合に水溶性重合開始剤を用いた比較例1~4では、グラフト共重合体の機械的安定性と透明性を両立することができなかった。具体的には、乳化剤の合計添加量が同等である実施例2と比較例1を対比すると、透明性は同等であるものの、比較例1の凝集率は30%を超えており、機械的安定性が悪かった。乳化剤の合計添加量を増やして凝集率を下げて実施例2と同等のレベルにした比較例2では、ヘイズが50を超えており、透明性が悪かった。また、乳化剤の合計添加量を下げて透明性を高めた比較例3では、凝集率は30%を超えており、機械的安定性が悪かった。また、乳化剤の合計添加量を増やして機械的安定性を高めた比較例4では、ヘイズが50を超えており、透明性が悪かった。
図1に、実施例1及び比較例1のグラフト共重合体の周波数1HZ、歪0.05%、昇温速度4℃/minで測定した動的粘弾性の結果を示した。図1から分かるように、実施例1の場合、低温側のゴム部に由来するガラス転移温度、及び高温側のグラフト部に由来するガラス転移温度の二つのピークが観察されるのに対し、比較例1の場合、グラフト共重合体由来の1つのピークしか観察されなかった。これは、実施例において、グラフト部によるゴム部の被覆率が高いことを意味する。

Claims (6)

  1. アルキルアクリレート80質量%以上100質量%以下、アルキルメタクリレート0質量%以上20質量%以下、及び他のビニルモノマー0質量%以上4質量%以下を含むゴム部用ビニルモノマー100質量部と、多官能性モノマー0.1質量部以上5質量部以下を乳化重合してアクリル系ゴムを得る第1の工程と、
    第1の工程で得られたアクリル系ゴム3質量部以上80質量部以下に、塩化ビニルモノマー80質量%以上100質量%以下、及び他のビニルモノマー0質量%以上20質量%以下を含むグラフト部用ビニルモノマー20質量部以上97質量部以下を乳化重合でグラフト重合させて、100質量部のグラフト共重合体を得る第2の工程を含むグラフト共重合体の製造方法であって、
    前記グラフト共重合体の平均粒子径が100nm以下であり、
    前記第1の工程及び前記第2の工程において使用される乳化剤が、アニオン性界面活性剤であり、
    前記第1の工程で使用される重合開始剤が、油溶性パーオキサイド系開始剤である、ことを特徴とするグラフト共重合体の製造方法。
  2. 前記油溶性パーオキサイド系開始剤は、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、及びt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートからなる群から選ばれる1つ以上である、請求項1に記載のグラフト共重合体の製造方法。
  3. 前記グラフト共重合体において、ゴム部のガラス転移温度が30℃以下であり、グラフト部のガラス転移温度が30℃を超える、請求項1又は2に記載のグラフト共重合体の製造方法。
  4. 前記アクリル系ゴムは、複数の層を有し、内側の層はアルキルアクリレート由来の構成単位からなり、外側の層はアルキルメタクリレート由来の構成単位からなる、請求項1~3のいずれかに記載のグラフト共重合体の製造方法。
  5. 前記第1の工程及び前記第2の工程において使用される乳化剤がアルキルスルホコハク酸塩及びアルケニルコハク酸塩からなる群から選ばれる一つ以上である、請求項1~のいずれかに記載のグラフト共重合体の製造方法。
  6. 請求項1~のいずれかに記載のグラフト共重合体の製造方法で得られたグラフト共重合体を用いて成形体を得る、成形体の製造方法。
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