JP2017095683A - 強化剤含有樹脂組成物、及びそれからなる成形体 - Google Patents

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雅資 井川
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Abstract

【課題】本発明の課題は、結晶性でありながら高い透明性を有し、且つ0℃以下での耐衝撃性に優れる強化剤含有樹脂組成物、及び該強化剤含有樹脂組成物からなる成形体を提供することにある。
【解決手段】フッ化ビニリデン系樹脂(X)30〜80質量%及び下記ポリマー(Y)20〜70質量%を含有する樹脂組成物100質量部に対して、強化剤を5〜50質量部配合した、強化剤含有樹脂組成物;ポリマー(Y):フッ化ビニリデン系樹脂(X)と相溶なドメイン(y1)及び、フッ化ビニリデン系樹脂(X)と非相溶なドメイン(y2)を有するコポリマー。
【選択図】 なし

Description

本発明は、強化剤含有樹脂組成物及びそれからなる成形体に関する。
フッ素樹脂は、耐候性、難燃性、耐熱性、防汚性、平滑性、耐薬品性等の優れた特性を示し、屋外環境に晒される物品の材料として好まれる。
フッ化ビニリデン系樹脂、中でもポリフッ化ビニリデン(以下「PVDF」と記す。)は融点と分解温度の差が大きく、成形加工に適した熱可塑性樹脂である。しかし、PVDFの結晶が可視光の波長より大きく成長すると、可視光の一部を散乱するために透明性を損なう。そのため透明材料への適用が困難であった。
一方で、ポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるアクリル系樹脂は、フッ化ビニリデン系樹脂に相溶する非晶性樹脂である。透明性と耐候性に優れ、屋外環境に晒される物品の材料として好まれる。しかし耐熱性や低吸水性、柔軟性、耐衝撃性等に劣るため、用途が制限されることがあった。
フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂の相溶性を利用し、ポリマーブレンドにより各々の長所を取りいれる研究は数多くなされてきた。
例えば、特許文献1では、アクリル系樹脂のミクロ相分離構造を利用して、フッ化ビニリデン系樹脂の結晶を微細化し、結晶性でありながら高い透明性を発揮する樹脂組成物を実現している。融解エンタルピーの比較から、フッ化ビニリデン系樹脂単独に匹敵する割合で結晶化が進行したことが明示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、0℃以下での耐衝撃性能は必ずしも充分ではなく、使用用途が限定されることがあった。
耐衝撃性能を向上させる手法として、強化剤を配合する方法が一般的に知られている。例えば、特許文献2では、フッ化ビニリデン系樹脂組成物の−40℃での機械的性質を改良するために、強化剤としてゴム状重合体を配合した例が示されている。
しかしながら、特許文献2は低温での耐衝撃性能を向上させた例であって、透明性と0℃以下での耐衝撃性を両立する樹脂組成物を提供するものではない。
国際公開第2015/146752号公報 特開平7−033939号公報
本発明の課題は、結晶性でありながら高い透明性を有し、且つ0℃以下での耐衝撃性に優れる強化剤含有樹脂組成物、及び該強化剤含有樹脂組成物からなる成形体を提供することにある。
即ち、本発明は以下の特徴を有する。
[1] フッ化ビニリデン系樹脂(X)30〜80質量%及び下記ポリマー(Y)20〜70質量%を含有する樹脂組成物100質量部に対して、強化剤を5〜50質量部配合した、強化剤含有樹脂組成物;
ポリマー(Y):フッ化ビニリデン系樹脂(X)と相溶なドメイン(y1)及び、フッ化ビニリデン系樹脂(X)と非相溶なドメイン(y2)を有するコポリマー。
[2] 前記強化剤が、シリコーン系、ブタジエン系、アクリル系から選ばれるゴム又はこれらの複合ゴムと、一種類以上のビニル系単量体とのグラフト共重合体である、[1]の強化剤含有樹脂組成物。
[3] 前記ポリマー(Y)の分子量分布(PDI)が3.0〜10.0である、[1]又は[2]の強化剤含有樹脂組成物。
[4] 前記ポリマー(Y)がマクロモノマー単位を含有する、[1]〜[3]のいずれかの強化剤含有樹脂組成物。
[5] [1]〜[4]のいずれかの強化剤含有樹脂組成物からなる成形体。
本発明の強化剤含有樹脂組成物は、結晶性と透明性を両立し、且つ0℃以下での耐衝撃性に優れる成形体を与える。
本発明の成形体は、結晶性と透明性を両立し、且つ0℃以下での耐衝撃性に優れる。
<フッ化ビニリデン系樹脂(X)>
フッ化ビニリデン系樹脂(X)としては、例えば、フッ化ビニリデン単位70質量%以上を含むコポリマー、又は、フッ化ビニリデンのホモポリマー(PVDF)が挙げられる。フッ化ビニリデン系樹脂(X)は、フッ化ビニリデン単位の含有率が高いほど結晶性が良好となり、好ましい。
以下「フッ化ビニリデン系樹脂(X)」を、単に「樹脂(X)」と記す場合もある。
樹脂(X)がコポリマーである場合の、フッ化ビニリデンと共重合させる単量体としては、例えば、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンが挙げられる。
樹脂(X)の重合方法としては、懸濁重合、乳化重合等、公知の重合法が挙げられる。重合方法により、得られる樹脂(X)の結晶化度や力学的性質が異なる。
樹脂(X)としては、融点と分解温度の差が大きく、成形加工に適することから、PVDFが好ましい。
また、本発明においては、樹脂(X)として、高い結晶融点を有するものが好ましい。尚、本発明において結晶融点は、JIS−K7121、3.(2)に記載の方法に準拠して測定したときの融解ピーク温度を意味する。
樹脂(X)の結晶融点は150℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましい。また、結晶融点の上限は、PVDFの結晶融点に等しい170℃が好ましい。
樹脂(X)の質量平均分子量は、成形加工に適した溶融粘度を得るために10万〜100万が好ましく、15万〜80万がより好ましく、30万〜60万が更に好ましい。また、樹脂(X)の質量平均分子量が大きいほど、強化材を配合した時の成形体の耐衝撃性上昇倍率が向上する。
ここで、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。例えば、テトラヒドロフラン等の溶媒を溶離液とし、ポリメチルメタクリレート換算分子量として求めることができる。
樹脂(X)の市販品としては、例えば、アルケマ(株)製のKynar710、Kynar720、Kynar740、Kynar760;(株)クレハ製のKF#850;ソルベイスペシャリティポリマーズ(株)製のSolef1006、Solef1008、Solef1015、Solef6008、Solef6010、Solef6012が挙げられる。
樹脂(X)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<ポリマー(Y)>
本発明のポリマー(Y)は、フッ化ビニリデン系樹脂(X)に相溶なドメイン(y1)、及び、フッ化ビニリデン系樹脂(X)と非相溶なドメイン(y2)を有するコポリマーである。
本発明で「化合物Aと化合物Bが相溶である」とは、化合物A及び化合物Bをブレンドして成形して得られた成形体にて、化合物Aと化合物Bのどちらにも由来しない単一のガラス転移温度(Tg)が観測されることをいう。
また、「化合物Aと化合物Bが非相溶である」とは、化合物A及び化合物Bをブレンドした成形体にて、化合物Aと化合物Bに由来するTgのみが観測されることをいう。
本発明で「ドメイン」とは、相分離構造を構成する一つの相のことを指す。異種ポリマーをブレンドした成形体が相分離構造をとる場合、各ドメインに由来するTgが観測される。
但し、異なるドメインに由来するそれぞれのTgが近い場合、非相溶にも関わらずあたかも単一のTgを示すかのように観測されることがあるので、ブレンド比を変える等して確かめる必要がある。
ポリマー(Y)としては、例えば、マクロモノマー共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体、それらの混合物が挙げられる。生産性の点から、マクロモノマーを用いた重合で得られるマクロモノマー共重合体が好ましい。
本発明において、マクロモノマーとは、重合可能な官能基を持つ高分子化合物をいう。
マクロモノマーの合成方法としては、二重結合導入率や合成の容易さの点から、触媒連鎖移動重合(CCTP)法が好ましい。
ポリマー(Y)がマクロモノマー共重合体である場合、ドメイン(y1)又はドメイン(y2)は、マクロモノマー単位を含有する。特に、後述するドメイン(y1)のドメインサイズやポリマー(Y)の相分離構造を簡便に調製できる点で、ドメイン(y1)がマクロモノマー単位を含有することが好ましい。
ポリマー(Y)は単独で成形したときに相分離するものが好ましい。
ポリマー(Y)とフッ化ビニリデン系樹脂(X)とをブレンドしたときに、フッ化ビニリデン系樹脂(X)は、ドメイン(y1)とのみ相溶し、冷却したときにドメイン(y1)近傍で結晶化が進行する。
ポリマー(Y)の成形体の相分離構造は、ドメインサイズが小さいほど好ましい。ドメインサイズが小さいほど、樹脂(X)の結晶の微細化が起こりやすく、結晶性と透明性が簡便に両立しうる。更に、相のドメイン間の屈折率差による光学性能の低下も起こりにくくなる。
各ドメインのサイズは500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。ドメインサイズが500nm以下であれば、可視光域の波長が散乱しにくく、高い透明性が得られる。各ドメインのサイズの下限は、20nm程度である。
尚、各ドメインのサイズとは、海島構造の場合は島相の長軸方向の長さ、共連続構造ないしラメラ構造の場合はドメイン間の界面とその最寄りの界面との最短距離を指す。ドメインのサイズは、成形体から厚さ20〜200nmの観察片を作成し、透過型電子顕微鏡にて観察し、任意の5個のドメインについて測定した平均値をいう。
ポリマー(Y)単独で成形した成形体の相分離構造としては、例えば、海島構造、シリンダー構造、共連続構造、ラメラ構造が挙げられる。成形体の諸物性は、フッ化ビニリデン系樹脂(X)とブレンドした後の相分離構造に左右される。
ポリマー(Y)の質量平均分子量は、4万〜100万が好ましい。成形体としたときの力学強度を保つには質量平均分子量が高い方が好ましいが、質量平均分子量が高すぎると流動性が低下し、成形性の低下を招く。力学強度と成形性を両立する点から、5万〜75万がより好ましく、5万〜50万が更に好ましい。
ポリマー(Y)の分子量分布(PDI)は3.0〜10.0である。PDIが3.0以上であれば、低分子量体を含むため成形に好適な流動性を確保しやすい。平均分子量と流動性の両立の点から、PDIは3.2以上が好ましく、3.5以上がより好ましい。
PDIが10.0以下であれば、成形体の品質が安定しやすくなる。PDIは7.0以下が好ましく、6.5以下がより好ましい。
分子量分布の調整方法としては、重合条件による方法以外に、PDIが3.0未満のブロックポリマーをあらかじめ合成した後、分子量の異なるポリマーを追加することによりPDIを3.0以上に調整する方法も挙げられる。
ポリマー(Y)は、ポリマー(Y)100質量%に対して、ドメイン(y1)を構成するポリマーを1〜50質量%含有することが好ましい。ドメイン(y1)を構成するポリマーを1〜50質量%含有することで、ポリマー(Y)はフッ化ビニリデン系樹脂(X)と部分相溶しやすくなる。
樹脂(X)の結晶化がドメイン(y1)近傍で進行するので、相分離構造の空間的制約から、樹脂(X)の結晶が微細化しやすい。
ポリマー(Y)中、ドメイン(y1)を構成するポリマーの含有率が1質量%以上であれば、樹脂(X)とポリマー(Y)とが部分相溶しやすくなる。
また、ポリマー(Y)中、ドメイン(y1)を構成するポリマーの含有率が50質量%以下であれば、樹脂(X)とポリマー(Y)をブレンドして成形した成形体において、樹脂(X)とドメイン(y1)からなる相が、島又は共連続な相分離構造をとり、樹脂(X)の結晶が微細化しやすい。
ポリマー(Y)は、ポリマー(Y)100質量%に対して、ドメイン(y2)を構成するポリマーを50〜99質量%含有することが好ましい。ドメイン(y2)を構成するポリマーを50〜99質量%含有することで、フッ化ビニリデン系樹脂(X)をブレンドした後も相分離構造をとることができる。
ポリマー(Y)中のドメイン(y2)を構成するポリマーが50質量%以上であれば、樹脂(X)とポリマー(Y)をブレンドした際に、樹脂(X)とドメイン(y1)からなる相が、島又は共連続な相分離構造をとり、樹脂(X)の結晶が微細化しやすい。また、ドメイン(y2)を構成するポリマーが99質量%以下であれば、樹脂(X)とポリマー(Y)とが部分相溶しやすくなる。
本発明において、各ドメインの含有率とは、各ドメインを構成するポリマーの質量から算出する。
ポリマー(Y)の、ドメイン(y1)を構成するポリマー及びドメイン(y2)を構成するポリマーの含有率の合計は100質量%である。
ドメイン(y1)は、フッ化ビニリデン系樹脂(X)と相溶なポリマー、又は樹脂(X)と相溶なポリマー及び非相溶なポリマーからなる。
ドメイン(y1)としては、例えば、樹脂(X)と相溶なポリマーをドメイン(y1)100質量%中、60〜100質量%含有するものが挙げられる。樹脂(X)との相溶性を充分に確保する点で、樹脂(X)と相溶なポリマーの含有率は、70〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%が更に好ましく、100質量%が最も好ましい。
樹脂(X)と相溶なポリマーを構成する単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、ビニルメチルケトンが挙げられる。
尚、本願において「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」を示す。
これら単量体の単位を含有するポリマーは、樹脂(X)と良好に相溶するため、ドメイン(y1)を構成するポリマーとして好適である。この中でも、相溶性の点からメチルメタクリレート単位を含有するポリマーが好ましい。
ドメイン(y1)は、前記単量体の単位の1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
樹脂(X)と非相溶なポリマーを構成する単量体としては、例えば、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有単量体;酪酸ビニル等のカルボン酸系ビニル単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;マレイン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸等の単量体が挙げられる。
中でも、耐候性を損ないにくい観点からアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、液体で単量体の取扱いが容易な点から、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。
例えば、ドメイン(y1)がマクロモノマー単位を含有する場合、相溶性の点から、マクロモノマー単位はメチルメタクリレートの単位を含有することが好ましい。
また、ポリマー(Y)がブロックポリマーの場合、ドメイン(y1)はメチルメタクリレート単位を含有することが好ましい。
樹脂(X)とポリマー(Y)をブレンドしたときに、樹脂(X)の結晶化を促す点で、ドメイン(y1)を構成するポリマーの分子量は小さい方が好ましい。ドメイン(y1)を構成するポリマーの質量平均分子量は5,000〜40,000が好ましい。
ドメイン(y1)を構成するポリマーの分子量が低すぎると、ドメイン(y1)とドメイン(y2)の相溶性が増し、相分離しなくなる虞がある。また、ドメイン(y1)を構成するポリマーの分子量が高すぎると、ドメイン(y1)と樹脂(X)の絡み合いが大きくなり、樹脂(X)の結晶化を阻害する虞がある。
相分離構造を形成する観点から、上限値は37,000以下がより好ましく、34,000以下が更に好ましい。
下限値は10,000以上がより好ましく、17,000以上が更に好ましい。
ドメイン(y1)とドメイン(y2)からポリマー(Y)を形成する方法としては、簡便な工程でポリマー(Y)を形成できる点から、下記のA又はBの方法が挙げられる。
A:樹脂(X)と相溶なポリマーを構成する単量体単位を含有するマクロモノマーを、ドメイン(y1)を構成する単量体として用いる。
B:樹脂(X)と非相溶な単量体単位を含有するマクロモノマーを、ドメイン(y2)を構成する単量体として用いる。
マクロモノマーを用い、マクロモノマーの分子量を制御することにより、ドメイン(y1)又はドメイン(y2)のサイズやポリマー(Y)の相分離構造を簡便に調製することができる。
また、マクロモノマーを用いる手法は、ポリマー(Y)のPDIを簡便に大きく広げることも可能であり、ポリマー(Y)の設計の点からも好適である。
ドメイン(y1)を構成する単量体としてマクロモノマーを用いる場合、マクロモノマーの質量平均分子量は40,000以下が好ましい。マクロモノマーの質量平均分子量が40,000以下であれば、樹脂(X)とポリマー(Y)をブレンドしたときに、樹脂(X)の結晶化が速やかに進行する。
マクロモノマーの質量平均分子量は5,000以上が好ましい。マクロモノマーの質量平均分子量が5,000以上であれば、ポリマー(Y)にマクロモノマーを導入する工程が短く、生産性を損なわない。
ドメイン(y1)を構成する単量体としてマクロモノマーを用いる場合、マクロモノマーはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、ビニルメチルケトンのいずれかを主たる原料として重合してなるものが好ましい。
ここで主たる原料とは、マクロモノマー100質量%中、60質量%以上含まれるものを指す。樹脂(X)との相溶性の点から、メチルメタクリレートを主たる原料として重合してなるものが好ましい。
ドメイン(y2)は、フッ化ビニリデン系樹脂(X)と相溶なポリマー及び樹脂(X)と非相溶なポリマー、又は樹脂(X)と非相溶なポリマーからなる。
ドメイン(y2)としては、例えば、ドメイン(y2)を構成するポリマー100質量%中、樹脂(X)と非相溶なポリマーを40〜100質量%含有するものが挙げられる。樹脂(X)との非相溶性を充分に確保する点で、樹脂(X)と非相溶なポリマーの含有率は、50〜100質量%が好ましく、55〜100質量%がより好ましい。
ドメイン(y2)を構成するポリマーとしては、例えば、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有単量体;酪酸ビニル等のカルボン酸系ビニル単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;マレイン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸等の単量体の単位からなるポリマーが挙げられる。
中でも、耐候性を損ないにくい観点からアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、液体で単量体の取扱いが容易な点から、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。
ドメイン(y2)を構成する樹脂(X)と非相溶なポリマーは、前記単量体の単位の1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
ドメイン(y2)は樹脂(X)と相溶なポリマーを含有してもよいが、ドメイン(y1)とドメイン(y2)は相分離する必要がある。そのため、樹脂(X)と相溶なポリマーの量は少ないほど好ましく、ドメイン(y2)を構成するポリマー100質量%中、樹脂(X)と相溶なポリマーの割合は、0〜60質量%が好ましく、0〜50質量%がより好ましく、0〜45質量%が更に好ましい。
ドメイン(y2)に含有されるフッ化ビニリデン系樹脂(X)と相溶なポリマーとしては、例えば、ドメイン(y1)においてフッ化ビニリデン系樹脂(X)と相溶なポリマーとして例示したものと同様のものが挙げられる。
ドメイン(y2)を構成する単量体の単位は、目的に応じて選定することができる。例えば、樹脂(X)及びポリマー(Y)を含有する本願の樹脂組成物に柔軟性を付与したい場合には、n−ブチルアクリレートのようにポリマーのTgが低いビニル単量体の単位を選定することができる。また、樹脂組成物に耐熱性を付与したい場合には、α−メチルスチレンのようにポリマーのTgが高いビニル単量体の単位を選定することができる。
ドメイン(y2)が樹脂(X)と相溶なポリマーを含有する場合、ドメイン(y2)は樹脂(X)と非相溶なポリマーを形成する単量体と、樹脂(X)と相溶なポリマーを形成する単量体とのランダムコポリマーであることが好ましい。
ドメイン(y2)を構成する単量体としては、例えば、樹脂(X)と非相溶なポリマーを形成する単量体としてn−ブチルアクリレート、樹脂(X)と相溶なポリマーを形成する単量体としてメチルメタクリレートが挙げられる。
<ポリマー(Y)の製造方法>
ポリマー(Y)は、上述したように、ドメイン(y1)及びドメイン(y2)を有する。
ポリマー(Y)の製造方法としては、例えば、原子移動ラジカル重合(ATRP)等のリビングラジカル重合、アニオン重合、マクロモノマーを用いた重合等、公知の方法が使用できる。この中でも、重合速度や工程数等の生産性に優れる点から、マクロモノマーを用いる重合方法が好ましく、環境適合性の点から、マクロモノマーを用いる懸濁重合がより好ましい。
マクロモノマーは、市販品を用いてもよく、公知の方法で単量体から製造してもよい。マクロモノマーの製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法、α−ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法、重合性基を化学的に結合させる方法、熱分解による方法が挙げられる。
以下、一例としてドメイン(y1)を構成する単量体としてマクロモノマーを用いた懸濁重合によりポリマー(Y)を得る方法を詳述するが、他の方法によりポリマー(Y)を得ても、本発明を逸脱するものではない。
ドメイン(y1)を構成する単量体としてマクロモノマーと、ドメイン(y2)を構成する単量体とを混合し、得られた混合物にラジカル重合開始剤を添加して重合を行ない、ポリマー(Y)を得る。
ドメイン(y1)を構成する単量体とドメイン(y2)を構成する単量体とを混合する際には、加温することが好ましい。加熱温度が30℃以上であれば、ドメイン(y1)を構成するマクロモノマーがドメイン(y2)を構成する単量体に溶解しやすくなり、加熱温度が90℃以下であれば、単量体混合物の揮発を抑制できる。
加熱温度の下限は35℃以上がより好ましい。加熱温度の上限は75℃以下がより好ましい。
混合時間は、例えば10分〜1時間である。
ポリマー(Y)の製造においてラジカル重合開始剤を使用する際、ラジカル重合開始剤の添加は、単量体を全て混合された後に行なうことが好ましい。単量体が混合されたとは、単量体が充分に分散された状態をいう。
ラジカル重合開始剤を添加する際の単量体の混合物の温度は、0℃以上が好ましい。ラジカル重合開始剤を添加する際の温度が0℃以上であれば、ラジカル重合開始剤の単量体への溶解性が良好となる。また、ラジカル重合開始剤を添加する際の単量体の混合物の温度は、ラジカル重合開始剤固有の10時間半減期温度より15℃以上低い温度が好ましい。ラジカル重合開始剤を添加する際の温度が、ラジカル重合開始剤固有の10時間半減期温度より15℃以上低ければ、安定して重合することができる。
ラジカル重合開始剤を添加する際の温度は、例えばラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN,10時間半減期温度67℃)を用いる場合、30〜50℃である。尚、市販のラジカル重合開始剤では、10時間半減期温度は専ら30℃以上であり、「10時間半減期温度より15℃以上低い」ことと「0℃以上」が矛盾することはない。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)が挙げられる。
これらの中では、入手しやすさの点で、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)が好ましい。
ラジカル重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤の添加量は、重合発熱制御の点で、単量体の合計100質量部に対して、0.0001〜10質量部が好ましい。
懸濁重合での重合温度は50〜120℃である。
以上のような製造方法で得たポリマー(Y)は、水から濾取した後に乾燥することでビーズとして容易に取り扱うことができる。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、フッ化ビニリデン系樹脂(X)30〜80質量%、及び、ポリマー(Y)20〜70質量%を含有する。但し、樹脂組成物が含有するポリマーを100質量%とする。
樹脂組成物中の樹脂(X)の含有率が30質量%以上であれば、樹脂(X)が結晶化しやすい。また、樹脂(X)の含有率が80質量%以下であれば、樹脂組成物を用いて成形した成形体は透明性に優れる。
ここで、透明性に優れるとは、下記のC又はDの意味である。
C:樹脂組成物を成形して厚さ3mmの板としたときに、ヘーズが0〜30%となる。
D:厚さ200μmのフィルムとしたときに、ヘーズが0〜10%となる。
また、結晶性と透明性が共に高い成形体の製造に用いる点で、フッ化ビニリデン系樹脂(X)の含有率は35〜75質量%が好ましく、38〜55質量%がより好ましい。
樹脂組成物中のポリマー(Y)の含有率が20質量%以上であれば、樹脂組成物を成形したときに、透明性に優れる。また、ポリマー(Y)の含有率が70質量%以下であれば、樹脂(X)が結晶化する。
高い結晶性と高い透明性を両立する成形体の製造に用いる点で、ポリマー(Y)の含有率は35〜65質量%が好ましく、45〜62質量%がより好ましい。
樹脂組成物の結晶性は、示差走査熱量分析にて観測される結晶融解エンタルピーの値で判断できる。尚、本発明における樹脂組成物の結晶融解エンタルピーはJIS−K7121、3.(2)に記載の方法に準拠して前処理を施し、その後10℃/分で昇温したときに観測される融解ピークの面積から算出される。
本発明に用いる樹脂組成物の結晶性は、示差走査熱量計により測定した結晶融解エンタルピーが14〜35J/gであることが好ましく、16〜35J/gであることがより好ましい。
相溶する組合せの複数のポリマーからなる組成物では、樹脂組成物の結晶融解エンタルピーは、結晶性樹脂単独での結晶融解エンタルピーに、組成物に含まれる結晶性樹脂の質量分率を乗じた理論値よりも低い値を示すことが大半である。これは相溶するポリマー鎖が結晶性樹脂の結晶化を妨げることによる。
しかし、樹脂(X)とポリマー(Y)を含有する樹脂組成物が示す結晶融解エンタルピーは、驚くべきことに、フッ化ビニリデン系樹脂(X)単独での結晶融解エンタルピーに、樹脂組成物中のフッ化ビニリデン系樹脂(X)の質量分率を乗じた値と同等である。ここで同等とは、結晶融解エンタルピーの値が計算値から10%以上変化しないことを指す。
通常、結晶性を示すポリマーを用いた成形体は結晶サイズが可視光よりも大きいため不透明であるが、樹脂(X)とポリマー(Y)を含有する樹脂組成物を用いた場合、結晶微細化の効果により、透明性と結晶性を具有する成形体が得られる。
<強化剤>
本発明の強化剤は、シリコーン系、ブタジエン系、アクリル系から選ばれるゴム又はこれらの複合ゴムと、一種類以上のビニル系単量体とのグラフト共重合体である。
本明細書においてゴムとは、室温以下で弾性体としてふるまう架橋構造を有する重合体である。ゴムのTgは10℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましい。
本発明では、樹脂組成物へのゴムの分散性を向上させる必要から、ゴムに対して一種類以上のビニル系単量体をグラフト重合して得られたグラフト共重合体を、強化剤として用いる。
グラフト共重合体は、強化剤として樹脂組成物の耐衝撃性を向上させる点から、グラフト共重合体100質量%中、ゴムの含有率が40〜95質量%を占めることが好ましい。
強化剤としての性能と、樹脂組成物への分散性の点から、グラフト共重合体100質量%中、ゴムの含有率は50〜93質量%がより好ましく、60〜90質量%が更に好ましい。
グラフト共重合体の質量平均粒子径は、300〜2000nmが好ましい。ここで質量平均粒子径は、ラテックスの状態のグラフト共重合体を測定試料とし、キャピラリー式粒度分布計によって測定した値である。
粒子径が300nm以上であれば、耐衝撃性向上効果が充分に発揮される。粒子径が2000nm以下であれば、強化剤含有樹脂組成物の外観を損ないにくい。
グラフト共重合体の質量平均粒子径は、300〜1000nmがより好ましい。
強化剤は重合して用意してもよく、市販のものを利用してもよい。重合する場合は、粒子径制御及び多段重合が可能な点から乳化重合が好ましい。
市販で入手可能な強化剤としては、ブタジエンゴム、アクリルゴム、ブタジエン/アクリル複合ゴムを含むものとしては、例えば、三菱レイヨン(株)製のメタブレンCタイプ(C233A等)、Wタイプ(W450A等);(株)カネカ製のカネエースBシリーズ(B−561等)、FMシリーズ(FM−40等)、Mシリーズ(M−701等);ダウ・ケミカル(株)製のパラロイドEXLシリーズ(EXL−2314等)、BTAシリーズ(BTA−730等);UMGABS(株)製のMux−IRが挙げられる。
シリコーン/アクリル複合ゴムを含むものとしては、例えば、三菱レイヨン(株)製のメタブレンSタイプ(S2001等)が挙げられる。
ゴムのTgが低く、低温でも耐衝撃性が発現しやすい点から、シリコーンゴム又はシリコーン/アクリル複合ゴムを含む強化剤(メタブレンSタイプ等)が好ましい。また、屈折率差が樹脂組成物と近く、透明性を発揮しやすい点から、アクリルゴム又はブタジエン/アクリル複合ゴムを含む強化剤(メタブレンWタイプ等)が好ましい。
<強化剤含有樹脂組成物>
本発明の強化剤含有樹脂組成物は、フッ化ビニリデン系樹脂(X)とポリマー(Y)を含有する樹脂組成物に対して、強化剤を配合したものである。
強化剤含有樹脂組成物は、樹脂組成物が脆化する0℃以下でも耐衝撃性が向上する。ここで耐衝撃性は、強化剤含有樹脂組成物を成形して得た試験片を用いて、JIS−K7111−2を参照して測定した、ノッチ付きシャルピー衝撃強さで比較した。
樹脂組成物と強化剤含有樹脂組成物で、−3℃におけるノッチ付きシャルピー衝撃強さを比較した場合、強化剤含有樹脂組成物のシャルピー衝撃強さが、樹脂組成物の3倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、7倍以上であることが更に好ましい。
樹脂組成物100質量部に対する強化剤の配合量は、5〜50質量部である。配合量が5質量部以上であれば、耐衝撃性が充分に向上する。また、配合量が50質量部以下であれば、樹脂組成物の結晶化度を損なわない。耐衝撃性と結晶化度の両立の点から、配合量は10〜45質量部が好ましい。
強化剤含有樹脂組成物は、得られる成形体の光学性能や機械特性を損なわない範囲で、種々の添加剤を配合することができる。添加剤の量は少ないほど好ましく、添加剤の配合量は強化剤含有樹脂組成物100質量部に対して0〜20質量部が好ましく、0〜10質量部がより好ましく、0〜5質量部が更に好ましい。
添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、合成シリカやシリコーン樹脂粉末等のブロッキング防止剤、流動性改質剤、可塑剤、抗菌剤、防カビ剤、ブルーイング剤、帯電防止剤が挙げられる。
上記の必須成分及び所望により任意成分を所定量配合し、ロール、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機等の通常の混練機で混練して、強化剤含有樹脂組成物を調製することができる。
<成形体>
本発明の成形体は、強化剤含有樹脂組成物を成形したものである。
強化剤含有樹脂組成物の成形方法としては、例えば、射出成形、カレンダー成形、ブロー成形、押出成形、プレス成形、熱成形、溶融紡糸が挙げられる。
強化剤含有樹脂組成物を用いて得られる成形体としては、例えば、フィルム、シート、射出成形体、中空成形体、パイプ、角棒、異形品、熱成形体、繊維が挙げられる。
本発明の強化剤含有樹脂組成物を用いる場合、成形方法によらず結晶微細化の効果で透明性を得やすいが、透明性が高いほど厚いフィルムやシート等の透明材料への適用範囲が広がる。
高い透明性とは、例えば、100μm厚の成形体の場合、JIS−K7361−1に準拠して全光線透過率を測定した場合に、85〜100%のものを指す。全光線透過率は、89%以上が好ましく、91%以上がより好ましい。
また、100μm厚の成形体の場合、JIS−K7136に準拠して測定したヘーズ値は0〜10%が好ましく、0〜8%がより好ましく、0〜6%が更に好ましい。
−3℃で測定したノッチ付きシャルピー衝撃強さは、3〜60kJ/mが好ましく、7〜60kJ/mがより好ましく、12〜60kJ/mが更に好ましい。
−3℃で測定したノッチ付きシャルピー衝撃強さが3kJ/m以上であれば、充分高いといえる。
尚、シャルピー衝撃強さは高いほど好ましいが、60kJ/mを超える場合には、完全破壊(破断)しない、即ち、部分破壊やヒンジ破壊となる場合が殆どである。部分破壊やヒンジ破壊するものは、完全破壊するサンプルに比べて耐衝撃性能が優れるが、優劣をシャルピー衝撃強さの値で単純比較することはできない。
本発明の成形体の結晶化度は、成形体に含まれるフッ化ビニリデン系樹脂(X)のうち、結晶として存在する割合を結晶融解エンタルピーの測定値から算出する。樹脂(X)の結晶融解エンタルピーの理想値(100%結晶化したと仮定したときの結晶融解エンタルピー値;PVDFでは104.6J/g)を用い、結晶融解エンタルピーの実測値と、成形体に含まれる樹脂(X)の質量分率に基づいて計算できる。例えば、樹脂(X)としてPVDFを用いた場合には、以下に示す式となる。
結晶化度=((結晶融解エンタルピー)/(PVDFの質量分率))÷104.6×100
結晶融解エンタルピーの値は配合する強化剤の量にも左右されるが、結晶化度は強化剤の量の因子を排除して求めることができる。
結晶化度が低いと、成形体を加温したときなどに結晶化度が上昇し、成形体の物性が変化する虞がある。そのため、本発明の成形体の結晶化度は高いほど良い。本発明の成形体の結晶化度は35〜55%が好ましく、38〜55%がより好ましく、41〜55%が更に好ましい。フッ化ビニリデン系樹脂の結晶化度は最大でも50%程度であり、測定による誤差を含んでも55%を超えることはない。
成形体は、更に熱可塑性樹脂と積層して、積層体としてもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂;ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体);AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体);ポリ塩化ビニル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリオレフィン系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂;6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、12−ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン樹脂;セルロースアセテート、ニトロセルロース等のセルロース誘導体;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂;上述の熱可塑性樹脂から選ばれる2種以上の共重合体、混合物、複合体;が挙げられる。
熱可塑性樹脂には、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、難燃剤等を配合してもよい。
熱可塑性樹脂層の厚さは、適宜決めればよく、1〜500μm程度が好ましい。
積層体を得る方法としては、例えば、共押出法、塗布、熱ラミネーション、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ホットメルトラミネーションが挙げられる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、実施例中の「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を示す。
[評価方法]
実施例、比較例における各評価は、以下の方法により実施した。
(1)分子量及び分子量分布
質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製、商品名:HLC−8220)を使用し、以下の条件にて測定した。
カラム:TSK GUARD COLUMN SUPER HZ−L(4.6×35mm)と2本のTSK−GEL SUPER HZM−N(6.0×150mm)を直列に接続
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流速:0.6mL/分
尚、Mw及びMnは、Polymer Laboratories製のピークトップ分子量が1,590、10,290、55,600及び141,500である4種のポリメチルメタクリレートを用いて作成した検量線を使用して求めた。
(2)結晶融解エンタルピー、結晶化度
示差走査熱量測定装置((株)日立ハイテクサイエンス製、商品名:DSC6200)を用い、JIS−K7121に準拠して、成形体の結晶融解エンタルピーを測定した。
測定サンプルは成形体を細かく切り出して準備した。JIS−K7121、3.(2)に準拠し、200℃まで昇温して10分間維持した後、10℃/分で30℃まで降温し、再度10℃/分で200℃まで昇温する過程で観測された結晶融解ピークの面積から、結晶融解エンタルピーを求めた。
結晶化度は、成形体に含まれるフッ化ビニリデン系樹脂(X)のうち、結晶として存在する割合を結晶融解エンタルピーの測定値から算出した。
樹脂(X)の結晶融解エンタルピーの理想値(100%結晶化したと仮定したときの結晶融解エンタルピー値;PVDFでは104.6J/g)を用い、結晶融解エンタルピーの実測値と、成形体に含まれる樹脂(X)の質量分率に基づいて計算した。樹脂(X)としてPVDFを用いた場合には、以下に示す式となる。
結晶化度=((結晶融解エンタルピー)/(PVDFの質量分率))÷104.6×100
(3)シャルピー衝撃強さ
恒温恒湿槽(エスペック(株)製、商品名:MC811)にて−3℃で4時間冷却した試験片を、シャルピー衝撃試験機(東洋精機製作所製、商品名IMPACT TESTER)を用いて試験し、シャルピー衝撃強さを測定した。
JIS−K7111−2に準拠して、Vノッチ付きの試験片で、エッジワイズにて5回ずつ測定し、その平均値をシャルピー衝撃強さとした。
(4)面衝撃値
恒温槽付きの高速パンクチャー試験機((株)島津製作所製、商品名:ハイドロショットHTM−1)を用いて、直径12.7mmのストライカを200mmの高さから0.5m/sで100mm×100mmの試験片に当て、0℃でのパンクチャー衝撃強度を測定した。5回ずつ測定し、その平均値を面衝撃値とした。
尚、積層体で面衝撃を測定する場合は、ストライカは熱可塑性樹脂層側から落下させた。
(5)透過率、ヘーズ
ヘーズメーター(日本電色工業(株)製、商品名:NDH2000)を用い、JIS−K7361−1及びJIS−K7136に準拠して、全光線透過率(TT)及びヘーズ(Hz)を測定した。
(6)透明性
黒色の文字を印刷した白色台紙の上に4mm厚の成形体を静置し、蛍光灯下で成形体を通して台紙の文字を見たときに、文字が透けて見える場合を「○」、文字が透けて見えない場合を「×」とした。
<製造例1>
[分散剤]
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた容量1200Lの反応容器内に、17%水酸化カリウム水溶液61.6部、メチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルM、以下同様)19.1部及び脱イオン水19.3部を仕込んだ。次いで、反応装置内の液を室温にて撹拌し、発熱ピークを確認した後、更に4時間撹拌した。この後、反応装置内の反応液を室温まで冷却してカリウムメタクリレート水溶液を得た。
次いで、撹拌機、冷却管及び温度計を備えた容量1050Lの反応容器内に、脱イオン水900部、2−(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸ナトリウム(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルSEM−Na)60部、上記のカリウムメタクリレート水溶液10部及びメチルメタクリレート12部を入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、50℃に昇温した。その中に、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(和光純薬工業(株)製、商品名:V−50)0.08部を添加し、更に60℃に昇温した。昇温後、滴下ポンプを利用してメチルメタクレートを0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。反応溶液を60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分10%の分散剤を得た。
<製造例2>
[マクロモノマー]
(コバルト錯体の合成)
撹拌装置を備えた合成装置中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬(株)製、和光特級)2.00g(8.03mmol)及びジフェニルグリオキシム(東京化成(株)製、EPグレード)3.86g(16.1mmol)及び、予め窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル100mlを入れ、室温で2時間攪拌した。
次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(東京化成(株)製、EPグレード)20mlを加え、更に6時間攪拌した。得られたものを濾過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し、20℃において12時間真空乾燥し、茶褐色固体のコバルト錯体5.02g(7.93mmol、収率99%)を得た。
(マクロモノマーの合成)
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた三口セパラブルフラスコに、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び製造例1で製造した分散剤(固形分10%)0.02部を入れて撹拌して、均一な水溶液とした。次に、メチルメタクリレート(MMA)95部、メチルアクリレート(MA)(三菱化学(株)製)5部、上記方法で製造したコバルト錯体0.0032部及び重合開始剤としてパーオクタO(日油(株)製1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、商品名)0.1部を加え、水性分散液とした。
次いで、フラスコ内を充分に窒素置換し、水性分散液を80℃に昇温してから6時間保持した後に95℃に昇温して1時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、マクロモノマーの水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、40℃で12時間乾燥して、マクロモノマーを得た。
GPCで分析したところ、マクロモノマーのMwは31500、Mnは14000、PDIは2.3であった。
結果を表1に示す。
<製造例3>
[ポリマー(Y)]
脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び製造例1で製造した分散剤0.02部を混合して分散剤の水溶液を調製した。
冷却管付セパラブルフラスコに、フッ化ビニリデン系樹脂(X)が相溶するドメイン(y1)を形成する単量体として、製造例2で合成したマクロモノマーを40部、フッ化ビニリデン系樹脂(X)が非相溶なドメイン(y2)を形成する単量体としてメチルメタクリレート24部、n−ブチルアクリレート(BA)(三菱化学(株)製)36部及び1−オクタンチオール0.1部を混合し、攪拌しながら50℃に加温して原料シラップを得た。
原料シラップを40℃以下に冷却した後、原料シラップにAMBN(大塚化学(株)製2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、商品名)0.3部を溶解させ、シラップを得た。
次いで、シラップに分散剤の水溶液を加えた後、窒素バブリングによりセパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素置換しながら、攪拌回転数を上げてシラップ分散液を得た。
シラップ分散液を75℃に昇温し、重合発熱ピークが出るまでセパラブルフラスコの外温を保持した。重合発熱ピークが出た後、シラップ分散液が75℃になったところで、シラップ分散液を85℃に昇温し、30分保持して重合を完結させ、懸濁液を得た。
懸濁液を40℃以下に冷却した後に、懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、40℃で16時間乾燥してポリマー(Y)を得た。ポリマー(Y)のMwは252000、Mnは40500、PDIは6.2であった。
結果を表2に示す。
<製造例4>
[熱可塑性樹脂]
攪拌機を備えた容器に脱イオン水10.8部を仕込んだ後、MMA0.3部、BA4.5部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート(1,3BD)0.2部、及びアリルメタクリレート(AMA)0.05部からなる単量体成分と、クメンハイドロパーオキサイド(CHP)0.025部とを投入し、室温下で攪拌混合した。
次いで、攪拌しながら、乳化剤(東邦化学工業(株)製、商品名:フォスファノールRS610NA)1.3部を投入し、攪拌を20分間継続して乳化液を調製した。
冷却器付き重合容器内に、脱イオン水139.2部を投入し、75℃に昇温した。
次いで、脱イオン水5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20部、硫酸第一鉄0.0001部及びエチレンジアミン四酢酸0.0003部を加えた溶液を、投入した。
次いで、窒素下で攪拌しながら、調製した乳化液を8分間に亘って重合容器内に滴下した後、15分間反応を継続させ、重合の第一段目を完結した。
次いで、MMA9.6部、BA14.4部、1,3BD1.0部、及びAMA0.25部からなる単量体成分を、CHP0.016部と共に、90分間に亘って重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、重合の二段目を完結した。
次いで、MMA6部、MA4部及びAMA0.075部からなる単量体成分を、CHP0.0125部と共に、45分間に亘って重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、重合の3段目を完結した。
次いで、MMA57部、MA3部、1−オクタンチオール0.264部及びt−ブチルハイドロパーオキサイド0.075部からなる単量体成分を、140分間に亘って重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、重合体(A)のラテックスを得た。
得られた重合体(A)のラテックスを、濾材としてSUS製のメッシュ(平均目開き:62μm)を取り付けた振動型濾過装置を用いて濾過した後、酢酸カルシウム3.5%を含む水溶液中で塩析させ、水洗して回収した後、乾燥し、粉体状の重合体(A)を得た。
重合体(A)75部と、MMA/MA共重合体((MMA/MA=99/1(wt))、Mw:10万、Tg:105℃)25部、紫外線吸収剤(BASFジャパン(株)製、商品名:チヌビン234)1.4部、光安定剤((株)ADEKA製、商品名:アデカスタブLA−57)0.3部、フェノール系酸化防止剤(BASFジャパン(株)製、商品名:イルガノックス1076)0.1部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。
得られた混合物を200〜240℃に加熱したベント式2軸押出機(東芝機械(株)製、商品名:TEM−35B)に供給、混練して熱可塑性樹脂のペレットを得た。
<実施例1>
[強化剤含有樹脂組成物の作製]
フッ化ビニリデン系樹脂(X)としてPVDF(アルケマ(株)製、商品名:kynar720)40部と、製造例3で作製したポリマー(Y)60部と、強化剤としてシリコーン/アクリル複合ゴムのグラフト共重合体(三菱レイヨン(株)製、商品名:メタブレン S2001)25部を60℃で一晩予備乾燥させた。
先ず、樹脂(X)と強化剤をドライブレンドした後、φ30mm二軸混練押出機(Werner&Pfleiderer社製)により最高温度220℃で押出し、ペレット状の混練物を得た。この混練物とポリマー(Y)をドライブレンドし、再度φ30mm二軸混練押出機で混練してペレット状の強化剤含有樹脂組成物を得た。
尚、用いたPVDFは、フッ化ビニリデン単位からなるホモポリマーであり、結晶融点は169℃であり、Mwは257,000であった。
[試験片の作製]
ペレット状の強化剤含有樹脂組成物を用いて、射出成型機(東芝機械製、商品名:IS100)にて機台温度220℃、金型温度40℃で成形し、ノッチ付きのシャルピー試験片を得た。
得られた試験片を用いて、シャルピー衝撃試験(−3℃)を実施し、強化剤を用いていないときの値に対する上昇倍率を求めた。また、融解エンタルピーの測定と結晶化度の算出、及び透明性の評価を行なった。
結果を表3に示す。
尚、表3に記載した強化剤の詳細は以下の通りである。
S2001:シリコーン/アクリル複合ゴムの強化剤(三菱レイヨン(株)製、商品名:メタブレンS2001)
S2100:シリコーン/アクリル複合ゴムの強化剤(三菱レイヨン(株)製、商品名:メタブレンS2100)
W450:アクリルゴムの強化剤(三菱レイヨン(株)製、商品名:メタブレンW450A)
MuxIR:ブタジエン/アクリル複合ゴムの強化剤(UMGABS(株)製、商品名:Mux−IR)
<実施例2〜6、比較例1〜2、参考例1〜3>
樹脂(X)、ポリマー(Y)、強化剤を表3に記載のとおり用い、ペレット作製時にこれら三成分を一括で混練した以外は、実施例1と同様にして強化剤含有樹脂組成物、及び成形体を得た。結果を表3に示す。
尚、実施例6と参考例3では、フッ化ビニリデン系樹脂(X)としてPVDF(アルケマ(株)製、商品名:kynar740)を用いた。用いたPVDFは、フッ化ビニリデン単位からなるホモポリマーであり、結晶融点は169℃であり、Mwは461,000であった。
<実施例7>
[フィルムの作製]
実施例1で得た強化剤含有樹脂組成物のペレットを60℃で一晩予備乾燥させた後、300mm幅のTダイが搭載されたφ40mmノンベントスクリュー型押出機を用いてシリンダー温度160〜175℃、Tダイ温度200℃とし、30℃の冷却ロール一本を備えた引き取り機を用いて厚さ100μmのフィルムを得た。
フィルムの面衝撃試験結果、光学試験結果、示差走査熱量分析結果を表4に示す。
<比較例3>
参考例1で得たペレットを用いた以外は、実施例7と同様にして厚さ100μmのフィルムを得た。結果を表4に示す。
<実施例8>
[積層体の作製]
製造例4で得た熱可塑性樹脂のペレットをシリンダー温度230〜250℃のφ40mm単軸押出機に供給し、実施例1で得た強化剤含有樹脂組成物のペレットをシリンダー温度150〜180℃のφ30mm単軸押出機に供給し、個別に溶融可塑化した。
そして、260℃に加熱したマルチマニホールドダイを用いて、強化剤含有樹脂組成物層の厚さが50μm、熱可塑性樹脂層の厚さが50μmの、総膜厚100μmの2層フィルムを得た。
その際、冷却ロールの温度を80℃とし、熱可塑性樹脂層が冷却ロールに接するようにして2層フィルムを得た。フィルムの面衝撃試験結果を表5に示す。
<比較例4>
参考例1で得たペレットを用いて熱可塑性樹脂と積層した以外は、実施例8と同様にして、樹脂組成物層の厚さが50μm、熱可塑性樹脂層の厚さが50μmの、総膜厚100μmの2層フィルムを得た。結果を表5に示す。
実施例1〜4と参考例1から明らかなように、強化剤含有樹脂組成物からなる成形体は、結晶化度が高く、透明性を有し、且つ0℃以下での耐衝撃性が高い。−3℃における強化剤の配合による耐衝撃性の上昇倍率は3〜10倍と高く、容易に想像できない程度に飛躍的に上昇したことがわかる。結晶微細化による効果と、強化剤の配合による効果の相乗により、0℃以下での耐衝撃性が飛躍的に上昇したものと推測する。
比較例1と参考例2より、フッ化ビニリデン系樹脂(X)に強化剤を配合した場合には、強化剤の配合による耐衝撃性の上昇倍率は2倍程度であり、しかも結晶サイズが大きいために不透明である。
実施例3と実施例5、及び比較例2より、強化剤の配合量を増やすほど、−3℃のシャルピー衝撃強さの上昇倍率は高くなるが、強化剤の配合量が多すぎると、強化剤含有樹脂組成物からなる成形体の結晶化度が大きく低下する。結晶化度が低いほど、成形体を加温した際などに結晶化度の上昇に伴う物性の変化を招くため、実用上好ましくない。
実施例6と参考例3より、フッ化ビニリデン系樹脂(X)にMwが461,000のPVDFを用いた場合には、Mwが257,000のPVDFを用いた実施例1と比べて−3℃における強化剤の配合による耐衝撃性の上昇倍率が向上した。結晶微細化の効果と、強化剤の配合による相乗効果に加え、PVDFの絡み合い点が増えた効果も加わったためと推測する。
実施例7と比較例3から明らかなように、強化剤含有樹脂組成物から成形した厚さ100μmのフィルムは、強化剤を含まない場合に対して0℃での面衝撃に優れ、透明性及び結晶化度は同等であることがわかる。即ち、透明性、結晶性及び低温での耐衝撃性を兼ね備える。
また、実施例8と比較例4から明らかなように、積層体として成形した場合にも、強化剤の配合の有無により0℃での面衝撃性に差がでるため、基材を補強する層としての利用にも適する。
本発明の強化剤含有樹脂組成物からなる成形体は、意匠用フィルム、農業用フィルム、車載用フィルム、外装用フィルム、建築内装用フィルム、包装材料等のフィルム;光学シート等のシート材;自動車用部材、家電用部材、医療用部材、建築部材として好適である。

Claims (5)

  1. フッ化ビニリデン系樹脂(X)30〜80質量%及び下記ポリマー(Y)20〜70質量%を含有する樹脂組成物100質量部に対して、強化剤を5〜50質量部配合した、強化剤含有樹脂組成物;
    ポリマー(Y):フッ化ビニリデン系樹脂(X)と相溶なドメイン(y1)及び、フッ化ビニリデン系樹脂(X)と非相溶なドメイン(y2)を有するコポリマー。
  2. 前記強化剤が、シリコーン系、ブタジエン系、アクリル系から選ばれるゴム又はこれらの複合ゴムと、一種類以上のビニル系単量体とのグラフト共重合体である、請求項1に記載の強化剤含有樹脂組成物。
  3. 前記ポリマー(Y)の分子量分布(PDI)が3.0〜10.0である、請求項1又は2に記載の強化剤含有樹脂組成物。
  4. 前記ポリマー(Y)がマクロモノマー単位を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の強化剤含有樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の強化剤含有樹脂組成物からなる成形体。
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