JP7180147B2 - 耐食性耐摩耗鋼板 - Google Patents
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Description
H≧235+706[C](1-0.3[C]2)・・・ (1)
C:0.10%以上、0.35%以下、
Si:1.00%超、2.00%以下、
Mn:0.10%以上、2.00%以下、
P:0.0200%以下、
S:0.0100%以下、
Cr:0.05%超、2.00%以下、
Al:0.010%以上、0.100%以下、
N:0.0020%以上、0.0100%以下、
B:0.0003%以上、0.0030%以下
を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、下記式(1)を満足する、耐食性耐摩耗鋼板。
H≧235+706[C](1-0.3[C]2)・・・ (1)
式中、Hは前記耐食性耐摩耗鋼板の表層部硬度(HV)を表し、[C]は前記Cの含有量(質量%)を表す。
[2]さらに、質量%で、
Mo:1.00%以下、
W:1.00%以下、
Ni:1.00%以下、
Cu:1.00%以下、
Sn:0.20%以下、
Sb:0.20%以下
の1種または2種以上を含有する、上記[1]に記載の耐食性耐摩耗鋼板。
[3]さらに、質量%で、
Ti:0.025%以下、
V:0.200%以下、
Nb:0.050%以下
の1種または2種以上を含有する、上記[1]または[2]に記載の耐食性耐摩耗鋼板。
[4]さらに、質量%で、
Ca:0.050%以下、
Mg:0.050%以下、
REM:0.100%以下
の1種または2種以上を含有する、上記[1]~[3]の何れか1項に記載の耐食性耐摩耗鋼板。
以下、本発明の実施形態に係る耐食性耐摩耗鋼板について詳細に説明する。まず、化学組成について説明する。なお、特に断りのない限り、%は質量%を意味する。
Cは、硬度の確保に有効な元素であり、C含有量を0.10%以上とする。C含有量は、好ましくは0.12%以上、より好ましくは0.15%以上とする。一方、C含有量が0.35%を超えると、硬度の上昇によって靱性劣化するため、0.35%以下とする。C含有量は、好ましくは0.30%以下、より好ましくは0.28%以下とする。
Siは、硬度の向上に有効な元素であり、耐食性の確保にも極めて重要な元素であるため、Si含有量を1.00%超とする。Si含有量は、好ましくは1.05%以上、より好ましくは1.08%以上とする。一方、Si含有量が2.00%を超えると、靱性を阻害するため、2.00%以下とする。Si含有量は、好ましくは1.80%以下、より好ましくは1.50%以下とする。
Mnは、焼入れ性を高め、硬度、靭性を向上させる元素であり、Mn含有量を0.10%以上とすることが必要である。好ましくはMn含有量を0.20%以上、より好ましくは0.50%以上とする。一方、Mnを過剰に含有させると、靭性が低下し、また、セメンタイトの形成を促進し、結果的に耐食性低下を生じやすくなるため、Mn含有量を2.00%以下とする。好ましくはMn含有量を1.80%以下、より好ましくは1.60%以下とする。
Pは不純物であり、靱性や加工性を低下させるため、P含有量を0.0200%以下とする。好ましくはP含有量を0.0150%以下、より好ましくは0.0100%以下とする。P含有量の下限は0%が好ましいが、製造コストの観点から、P含有量は0.0001%以上であってもよい。
Sも不純物であり、靱性を低下させることから、S含有量を0.0100%以下とする。好ましくはS含有量を0.0070%以下、より好ましくは0.0050%以下、より一層好ましくは0.0030%以下とする。S含有量の下限は0%が好ましいが、製造コストの観点から、S含有量は0.0001%以上であってもよい。
Crは焼入れ性を高め、硬度を向上させる元素であり、耐食性にも有効な元素であり、0.05%超を含有させることが必要である。好ましくはCr含有量を0.20%以上、より好ましくは0.50%以上とする。一方、Crを過剰に含有させると、靱性が低下するため、Cr含有量を2.00%以下とする。好ましくはCr含有量を1.70%以下、より好ましくは1.50%以下とする。
Alは、脱酸剤として有効な元素である。また、AlはNとAlNを形成し、結晶粒を微細化させて、靱性を向上させるため、Al含有量を0.010%以上とする。好ましくはAl含有量を0.020%以上、より好ましくは0.030%以上とする。一方、Alを過剰に含有させると靭性の低下を生じるため、Al含有量を0.100%以下とする。好ましくはAl含有量を0.080%以下、より好ましくは0.070%以下とする。
Nは、AlやTiと窒化物を形成し、結晶粒を微細化させて、靱性を向上させる元素であるため、N含有量を0.0020%以上とする。好ましくはN含有量を0.0030%以上、より好ましくは0.0040%以上とする。一方、Nを過剰に含有する場合は、粗大な窒化物が生成し、靭性を低下させるため、N含有量を0.0100%以下とする。好ましくはN含有量を0.0080%以下、より好ましくは0.0060%以下とする。
Bは、鋼の焼入れ性を顕著に高め、硬度、靭性の向上に有効な元素であり、B含有量を0.0003%以上とする。好ましくはB含有量を0.0005%以上、より好ましくは0.0007%以上とする。より一層好ましくは0.0010%以上とする。一方、Bを過剰に含有する場合は硼化物を形成し、焼入れ性が低下し、硬度を確保できなくなるため、B含有量を0.0030%以下とする。好ましくはB含有量を0.0028%以下、より好ましくは0.0026%以下とする。
<W:1.00%以下>
Mo、Wは、耐食性を向上させ、硬度を向上させる元素である。Mo、Wの含有量は0%でもよいが、効果を得るために0.05%以上とすることが好ましい。一方、Mo、Wの含有量が1.00%を超えると靱性が低下するため、1.00%以下とする。好ましくはMo、Wの含有量を0.80%以下、より好ましくは0.60%以下とする。
Niは、鋼の焼入れ性を高めて、硬度の向上に寄与する元素であり、耐食性を向上させる元素でもある。Niの含有量は0%でもよいが、効果を得るために、0.03%以上を含有させてもよい。より好ましくはNi含有量を0.10%以上、より一層好ましくは0.20%以上とする。一方、Niは高価な合金元素であるため、コストの観点から、Ni含有量は1.00%以下とする。より好ましくはNi含有量を0.95%以下、より一層好ましくは0.90%以下とする。
Cuは、鋼の焼入れ性を高める元素であり、耐食性を向上させる元素でもある。Cuの含有量は0%でもよいが、効果を得るために、0.03%以上を含有させてもよい。より好ましくはCu含有量を0.10%以上、より一層好ましくは0.20%以上とする。一方、Cuは熱間加工性や溶接性を低下させるため、Cu含有量は1.00%以下とする。より好ましくはCu含有量を0.95%以下、より一層好ましくは0.90%以下とする。
<Sb:0.20%以下>
Sn、Sbは、耐食性を高める元素である。Sn、Sbの含有量は0%でもよいが、効果を得るために、0.01%以上を含有させてもよい。一方、Sn、Sbを過剰に含有させた場合には靱性を低下させるため、Sn、Sbの含有量は各々0.20%以下とする。耐食性および靭性のバランスを考慮すると、Sn、Sbの含有量は、0.15%以下が好ましい。
Tiは、TiNを形成し、結晶粒を微細化させて、靱性を向上させる元素である。Tiの含有量は0%でもよいが、効果を得るために、0.005%以上を含有させてもよい。より好ましくはTi含有量を0.007%以上、より一層好ましくは0.010%以上とする。一方、Tiを過剰に含有させると靭性を低下させることがあるため、Ti含有量は0.025%以下とする。より好ましくは0.020%以下、より一層好ましくは0.015%以下とする。
Vは、硬度の向上に寄与する元素である。Vの含有量は0%でもよいが、効果を得るために、0.010%以上を含有させてもよい。より好ましくはV含有量を0.020%以上、より一層好ましくは0.040%以上とする。一方、Vを過剰に含有させると、靭性を低下させることがあるため、V含有量は0.200%以下とする。より好ましくはV含有量を0.180%以下、より一層好ましくは0.160%以下とする。
Nbは、窒化物の形成や再結晶の抑制によって結晶粒の細粒化に寄与する元素であるNbの含有量は0%でもよいが、靱性を向上させるために、0.005%以上を含有させてもよい。より好ましくはNb含有量を0.007%以上、より一層好ましくは0.010%以上とする。一方、Nbを過剰に含有させると靭性を低下させることがあるため、Nb含有量は0.050%以下とする。より好ましくはNb含有量を0.030%以下、より一層好ましくは0.020%以下とする。
<Mg:0.050%以下>
<REM:0.100%以下>
Ca、Mg、REMは、いずれもSと結合して硫化物を形成し、熱間圧延によって延伸しにくい介在物を形成する元素であり、主に靱性の改善に寄与する。Ca、Mg、REMの含有量は0%でもよいが、効果を得るためには、Ca含有量、Mg含有量は0.0005%以上、REM含有量は0.001%以上が好ましい。より好ましくはCa含有量、Mg含有量を0.0007%以上、REM含有量を0.002%以上とする。一方、Ca、Mg、REMを過剰に含有させると、粗大な酸化物を形成して靭性を低下させることがあるため、Ca含有量、Mg含有量は0.050%以下、REM含有量は0.100%以下とする。より好ましくはCa含有量、Mg含有量、REM含有量を0.020%以下、より一層好ましくは0.010%以下とする。
本実施形態に係る耐食性耐摩耗鋼板では、表層部硬度H(HV)とC含有量(質量%)とが下記式(1)を満足することが必要である。
H≧235+706[C](1-0.3[C]2)・・・ (1)
上記式(1)の右辺は、炭化物を形成せずにマルテンサイトの硬さ向上に寄与するCの効果を示すものであり、[C]はC含有量である。より詳しく説明すると、鋼板中に含まれるCが耐食性の確保に有効な他の元素、例えばCr等と炭化物を形成して析出すると、当該他の元素の固溶量が減少して鋼板の耐食性が低下する。したがって、鋼板の耐食性を向上させるとともに耐摩耗性を確保するためには、このような炭化物の形成が抑制されたマルテンサイトを主体とする組織を形成することが極めて重要となる。さらに言えば、当該炭化物の形成を抑制することで、マルテンサイトの硬さ向上に寄与するCの量を増やすことができるため、鋼板中のC含有量に見合った耐摩耗性を達成することが可能となる。
本実施形態に係る耐食性耐摩耗鋼板の製造方法について説明する。本実施形態において、上記の化学成分を有する鋼片は転炉・電気炉等の通常の精錬プロセスで溶製した後、連続鋳造法あるいは造塊-分塊法等の公知の方法で製造することができ、特に制限はない。
表層部硬度Hは、得られた鋼板から試験片を採取し、板厚断面を試験面として、室温における表層部のビッカース硬さをJIS Z 2244:2009に準拠して測定することにより決定した。より具体的には、表層部硬度Hは、鋼板の表面から板厚方向に1mm~3mmの範囲内で荷重を5kgfとして無作為に10点のビッカース硬さを測定し、それらの平均値を算出することによって決定した。表層部硬度Hは、耐摩耗性の観点から425HV以上を良好と判断した。
靭性は、鋼板の板厚方向で、表面から板厚の1/4位置からフルサイズのVノッチシャルピー試験片を切り出し、JIS Z 2242:2005に準拠して0℃のシャルピー吸収エネルギー(vE0)を測定することにより評価した。具体的には、0℃のシャルピー吸収エネルギーが15J以上である場合を靭性に優れるとして評価した。
耐食性評価のために長さ100mm、幅60mm、厚み5mmの試験片を作製し、試験片の表面にSa2.5(ISO 8501-1)以上になるようにブラスト処理を施した。これら試験片を用いて温度40℃、相対湿度98%に保持した試験槽内で耐食性評価を実施した。具体的には、人工海水を含有させた珪砂を試験片上に積載させた状態で試験槽内に1週間保持し、次に、試験片表面に付着した珪砂をスクレイパーで軽く除去した状態で試験槽内に1週間保持する工程を1サイクルとした。このサイクルを6サイクル実施後、さびをスクレイパーで除去し、クエン酸アンモニウムで除さびした。その後、試験前と試験後とでの重量変化を腐食量とした。それぞれの腐食量は炭素鋼(表2の例201)を100として相対量で評価し、80未満の場合を耐食性が良好であると判断した。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.10%以上、0.35%以下、
Si:1.00%超、2.00%以下、
Mn:0.10%以上、2.00%以下、
P:0.0200%以下、
S:0.0100%以下、
Cr:0.05%超、2.00%以下、
Al:0.010%以上、0.100%以下、
N:0.0020%以上、0.0100%以下、
B:0.0003%以上、0.0030%以下
を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、下記式(1)を満足する、耐食性耐摩耗鋼板。
H≧235+706[C](1-0.3[C]2)・・・ (1)
式中、Hは前記耐食性耐摩耗鋼板の表層部硬度(HV)を表し、[C]は前記Cの含有量(質量%)を表す。 - さらに、質量%で、
Mo:1.00%以下、
W:1.00%以下、
Ni:1.00%以下、
Cu:1.00%以下、
Sn:0.20%以下、
Sb:0.20%以下
の1種または2種以上を含有する、請求項1に記載の耐食性耐摩耗鋼板。 - さらに、質量%で、
Ti:0.025%以下、
V:0.200%以下、
Nb:0.050%以下
の1種または2種以上を含有する、請求項2に記載の耐食性耐摩耗鋼板。 - 質量%で、
Al:0.010%以上、0.080%以下、
さらに、質量%で、
Ca:0.050%以下、
Mg:0.050%以下、
REM:0.100%以下
の1種または2種以上を含有する、請求項2または3に記載の耐食性耐摩耗鋼板。
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