JP6402843B1 - 鋼板 - Google Patents

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Abstract

本発明の一態様に係る鋼板は、所定の化学組成を有し、下記式(1)で求められる指標Qが0.00以上であり、下記式(2)で求められる炭素当量Ceq(%)が0.800%未満であり、室温における表層部硬度に対する表層部硬度と板厚中央部硬度との差の割合が15.0%以下であるとともに室温における表層部硬度がビッカース硬さで400以上であり、板厚が40mm以上である。
Q=0.18−1.3(logT)+0.75(2.7×[C]+[Mn]+0.45×[Ni]+0.8×[Cr]+2×[Mo]) ・・・ (1)
Ceq(%)=[C]+[Mn]/6+[Si]/24+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/4 ・・・ (2)

Description

本発明は、耐摩耗性に優れた鋼板(耐摩耗鋼板)に関する。
本願は、2017年6月21日に、日本に出願された特願2017−121641号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
建設機械、産業機械などの用途には、過酷な摩耗環境下でも、長期間に亘って使用できる耐摩耗鋼板が求められており、板厚の増加による摩耗代確保の観点からも、耐摩耗性の向上が要求されている。一般に、鋼板の耐摩耗性を向上させるためには、鋼板の硬度を高めることが必要である。特に板厚が40mm以上の厚手の耐摩耗鋼板では、鋼板の表面近傍における硬度(以下、「表層部硬度」という場合がある。表層部とは、板厚方向で鋼板の表面から1mm〜5mmの領域である。)のみならず、硬度が得難い板厚方向の中央部における硬度(以下、「板厚中央部硬度」という場合がある。中央部とは、板厚方向で鋼板の表面から板厚Tの1/2(つまり、T/2)離れた位置(つまり、板厚の中央)から±5mm(合計10mm厚み)の領域である。)の確保が課題である。
耐摩耗鋼板は、局所的に室温より高い温度に曝され、厳しい環境で使用される場合もあることから、室温より高い温度域(例えば150〜300℃程度の温度域)でも硬度の低下が少ない(高温硬度に優れる)ことが要求される場合がある。室温より高い温度域における硬度(以下、「高温硬度」という場合がある。)を確保するために、Siの含有量を増加させた鋼板が提案されている(例えば、特許文献1〜3、参照)。
日本国特開平8−41535号公報 日本国特開2001−49387号公報 日本国特開2002−235144号公報
たとえば、特許文献1では、Siの含有量を0.40〜1.50質量%(以下、「質量%」を単に「%」と記す。)とし、Nbを含有する鋼板が提案されている。しかし、特許文献1では、鋼板の板厚が40mm以下であり、板厚中央部硬度については記載されておらず、鋼板の厚肉化による摩耗代の確保という観点では検討されていない。
特許文献2では、局所的に室温より高い温度に曝される過酷な摩耗環境を想定し、鋼の高温硬度を確保するために、0.5%超〜1.2%のSiを含有し、V炭化物による析出強化を利用する鋼が提案されている。しかし、多量のVを含有する鋼は鋳片割れを生じやすく、製造性の低下が懸念される。
特許文献3では、鋼板の高温硬度を確保するために、1.00〜1.50%のSiを含有する鋼板が提案されている。特許文献3では、鋼板の板厚中央部硬度の確保も考慮されているが、表層部硬度と板厚中央部硬度との差(以下、「表層部と板厚中央部との硬度差」、又は単に「硬度差」という場合がある。)については記載されておらず、鋼板の厚肉化による摩耗代の確保という観点では検討されていない。
耐摩耗鋼板の使用環境や使用形態を考慮すると、室温のみならず150〜300℃程度の高温環境下でも、高い硬度の維持や、板厚方向の中央部(板厚中央部)での十分な硬度が要求される場合がある。合金成分の含有量の増加により、板厚中央部の硬度を容易に確保できるが、溶接性が低下するため、炭素当量の上限を設ける必要がある。高温環境下で鋼板の硬度を確保するためには、1.00%超のSi添加が有効とされている。しかし、本発明者らは、1.00%超のSiを含有する鋼板において、表層部硬度と板厚中央部硬度との差が顕著に大きくなるという、鋼板の耐摩耗性にとって好ましくない傾向があることを見出した。
これまで、1.00%超のSiを含有する鋼板と硬度差との関係についての報告はなく、室温での硬度差を小さくするための検討は十分になされていなかった。本発明は、このような実情に鑑み、室温のみならず、高温環境下でも高い硬度を維持することが可能であり、特に板厚が40mm以上の鋼板において、炭素当量を0.800%未満とし、室温における表層部硬度と板厚中央部硬度との差が表層部硬度の15.0%以下となる、耐摩耗性に優れた鋼板を提供することを目的とする。
1.00%超〜2.00%のSiを含有する鋼は、室温及び高温での硬度を確保できる点で、耐摩耗性には有利である。一方、本発明者らの検討により、1.00%超のSiを含有し、板厚が40mm以上の鋼板では、室温で、表層部硬度と板厚中央部硬度との差が生じやすいことがわかった。これは、鋼板の板厚方向の中央部では、表面及び表層部に比べて冷却速度が低下し、マルテンサイト組織の形成が不十分になることが原因であるが、Siの含有量の増加の影響は、必ずしも明確ではない。
本発明者らは、さらに検討を重ねた結果、板厚が40mm以上で、1.00%超のSiを含有する鋼板において、室温での表層部硬度と板厚中央部硬度との差を小さくするための指標Qを導出した。指標Qは、合金元素の焼入れ性と、板厚とを考慮した下記式(1)によって求められる。ただし、下記式(1)では、1.00%超のSiを含有する鋼板の表層部硬度と板厚中央部硬度との差を小さくするために必要とされる、Si以外の合金元素(C、Mn、Ni、Cr、Mo)に着目しているので、Si量を考慮してない。なお、以下では、室温における硬度を「室温硬度」という場合がある。また、以下では、単に「硬度」という場合は、室温における硬度を示し、室温とは22±5℃(17〜27℃)を示す。
本発明に係る鋼板は、板厚が40mm以上であり、溶接による残留応力などの影響を受けると水素による遅れ割れが懸念されることから、下記式(2)によって求められる炭素当量Ceq(%)を0.800%未満としている。下記式(1)で求められる指標Qを0.00以上とすることで、室温における表層部と板厚中央部との硬度差が、表層部硬度の15.0%以下となり、硬度差が小さく、且つ炭素当量が低く、板厚が40mm以上であり、且つ耐摩耗性に優れた鋼板を得ることができる。なお、板厚T、各元素Xの含有量[X]を無次元の数値として下記式(1)に代入し、求められた指標Qの単位は無次元である。また、下記式(2)により求められる炭素当量Ceqの単位は「%」である。
Q=0.18−1.3(logT)+0.75(2.7×[C]+[Mn]+0.45×[Ni]+0.8×[Cr]+2×[Mo]) ・・・ (1)
Ceq(%)=[C]+[Mn]/6+[Si]/24+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/4 ・・・ (2)
ここで、上記式(1)の指標Qは、板厚T(mm)の数値及び各元素Xの質量%での含有量[X]の数値を代入して計算し、元素Xを含有しない場合は0を代入する。上記式(2)の炭素当量Ceq(%)は、各元素Xの質量%での含有量[X]の数値を代入して計算し、元素Xを含有しない場合は0を代入する。
本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1] 本発明の一態様に係る鋼板は、質量%で、
C:0.20〜0.35%、
Si:1.00%超〜2.00%、
Mn:0.60〜2.00%、
Cr:0.10〜2.00%、
Mo:0.05〜1.00%、
Al:0.010〜0.100%、
N:0.0020〜0.0100%、
B:0.0003〜0.0020%、
P:0.0200%以下、
S:0.0100%未満、
Cu:0〜0.500%、
Ni:0〜1.00%、
Nb:0〜0.050%、
V:0〜0.120%、
Ti:0〜0.025%、
Ca:0〜0.050%、
Mg:0〜0.050%、
REM:0〜0.100%、及び
残部:Fe及び不純物であり、
下記式(1)で求められる指標Qが0.00以上であり、
下記式(2)で求められる炭素当量Ceq(%)が0.800%未満である化学組成を有し、
室温における表層部硬度に対する表層部硬度と板厚中央部硬度との差の割合が15.0%以下であるとともに室温における表層部硬度がビッカース硬さで400以上であり、
板厚Tが40mm以上である。
Q=0.18−1.3(logT)+0.75(2.7×[C]+[Mn]+0.45×[Ni]+0.8×[Cr]+2×[Mo]) ・・・ (1)
Ceq(%)=[C]+[Mn]/6+[Si]/24+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/4 ・・・ (2)
前記式(1)の指標Qは、板厚T(mm)の数値及び各元素Xの質量%での含有量[X]の数値を代入して計算し、元素Xを含有しない場合は0を代入する。前記式(2)の炭素当量Ceq(%)は、各元素Xの質量%での含有量[X]の数値を代入して計算し、元素Xを含有しない場合は0を代入する。
[2] 上記[1]に記載の鋼板では、前記指標Qが0.04以上であり、
前記割合が13.0%以下であってもよい。
[3] 上記[1]又は[2]に記載の鋼板では、質量%で、
Ni:0.05〜1.00%である化学組成を有してもよい。
[4] 上記[1]〜[3]のいずれか一態様に記載の鋼板では、質量%で、
Mn:0.63〜2.00%である化学組成を有してもよい。
本発明の上記態様によれば、室温のみならず、高温環境下でも高い硬度を維持することが可能であり、特に板厚が40mm以上の鋼板において、炭素当量Ceq(%)が0.800%未満であり、室温における表層部硬度と板厚中央部硬度との差が表層部硬度の15.0%以下となる、耐摩耗性に優れた鋼板を提供することができる。本発明に係る鋼板は、温度が150〜300℃程度となる過酷な環境下であっても、長期間に亘って使用することができるなど、産業上の貢献が極めて顕著である。
鋼板の表面硬度と基準硬度との差の温度変化を説明する図である。 鋼板の板厚方向の硬度分布を説明する図である。 鋼板の硬度差割合ΔHv/Hvsと指標Qとの関係を説明する図である。
鋼板のSi含有量と硬度の温度変化との関係について、図1を参照しつつ説明する。図1は、鋼板の表面硬度と基準硬度との差の温度変化を説明する図である。C含有量を一定とし、Si含有量を変化させた板厚40mmの鋼板に焼入れ処理を施し、室温から400℃までの、鋼板の表面におけるビッカース硬さ(表面硬度)HV5を測定した結果を図1に示す。図1の縦軸は、各鋼の各温度におけるビッカース硬さ(表面硬度)HV5と、Si含有量が0.25%である鋼板の室温でのビッカース硬さ(基準硬度)HV5との差である。なお、ビッカース硬さHV5は、鋼板の表面から深さ5mmの位置から試料を切り出し、JIS Z 2252‐1991に準拠し、試験力を49.03N(5kgf)とし、高温ビッカース硬さ試験によって測定した。基準硬度の測定は、温度の制御以外の条件を上記の高温ビッカース硬さ試験と同一にして行った。
図1から、Si含有量の増加によって室温硬度及び高温硬度が増加し、かつ、高温環境下での硬度低下(表面硬度と基準硬度との差)も小さくなることが分かる。このように、1.00%超〜2.00%のSiを含有する鋼板は、室温及び高温での硬度を確保できる点で、耐摩耗性に優れていることがわかる。
次に、1.00%超のSiを含有する鋼板(板厚40mm)の焼入れ後の板厚方向における硬度分布(ビッカース硬さ)を図2に示す。ビッカース硬さHV5はJIS Z 2244:2009に準拠し、試験力を49.03N(5kgf)として室温で測定した。図2に示すように、板厚中央部硬度は表層部硬度に比べて低下している。さらに、ビッカース硬さ試験の結果から、表層部硬度Hvs(板厚方向で鋼板の表面から1mm〜5mmの範囲で測定したビッカース硬さの平均値)及び板厚中央部硬度Hvc(板厚方向で鋼板の中央部から±5mm(合計10mm厚み)の範囲で測定したビッカース硬さの平均値)を求め、室温における板厚中央部硬度と表層部硬度との差(硬度差)ΔHvを算出した。すなわち、ΔHvは下記式(a)で表される。
ΔHv=Hvs−Hvc ・・・ (a)
上記ビッカース硬さ試験の結果を表1に示す。表1から、Si含有量の増加とともにΔHvが増大することがわかる。このように、本発明者らは、Si含有量が多い厚手の鋼板では、室温における表層部硬度と板厚中央部硬度との差が生じやすくなるという知見を得た。
Figure 0006402843
そこで、本発明者らは、1.00%超のSiを含有する、板厚が40mm以上の鋼板の、室温における表層部と板厚中央部との硬度差を小さくする方法について検討を行った。本発明者らは、合金元素の焼入れ性と板厚とを考慮して、鋼板の硬度差を小さくするために検討を重ねた。
鋼板の硬度を確保するためには、熱間圧延において、昇温時にオーステナイトへの変態が終了するAc点以上の温度に鋼板を再加熱した後、水冷などを行う(焼入れ)ことが通常行われている。このとき、鋼板の表層部は冷却速度が速く、十分な硬度が確保できる。一方、鋼板の板厚中央部では、冷却速度が表層部に比べて低下するため、マルテンサイトの生成が不十分になり、硬度が低下する。
上記のように鋼板の板厚中央部では、冷却速度が低下する。そのため、鋼板の板厚中央部において十分な硬度を確保するためには、合金元素の含有量を増加して、焼入れ性を高めることが必要である。しかし、合金元素の含有量を一定量とした場合、板厚によっては焼入れ性が不足したり、不必要な量の合金元素を含有させることでコストが増加したり、また、溶接性を損なうなどの問題が生じる。したがって、合金元素の含有量を適正な範囲に制御するためには、板厚中央部の冷却速度が板厚の影響を受けることを考慮する必要がある。
本発明者らは、1.00%超のSiを含有する、板厚40mm以上の種々の鋼材の硬度差割合ΔHv/Hvsに及ぼす、焼入れ性を有する合金元素の含有量と板厚との関係を整理し、下記式(1)に示す指標Qを導出した。ここで、硬度差割合ΔHv/Hvs(%)とは、室温における表層部硬度と板厚中央部硬度との差を表層部硬度で除して求めた割合を百分率で表している。なお、硬度差割合ΔHv/Hvs(%)は、下記式(b)で表される。下記式(b)において、Hvsは表層部硬度(板厚方向で鋼板の表面から1mm〜5mmの範囲で測定したビッカース硬さの平均値)であり、Hvcは板厚中央部硬度(鋼板の板厚方向の中央部から±5mm(合計10mm厚み)の範囲で測定したビッカース硬さの平均値)である。
ΔHv/Hvs(%)=100×(Hvs−Hvc)/Hvs ・・・ (b)
従来、1.00%超のSiを含有する鋼では、冷却速度が遅くなると焼入れ性が低下すると考えられていた。しかし、本発明者らは、1.00%超のSiを含有する鋼に、Si以外の合金元素(C、Mn、Ni、Cr、Mo)を含有させて焼入れ性を確保すれば、冷却速度が低下してもSiが焼入れ性の向上に寄与することを見出した。下記式(1)は、板厚中央部硬度を上昇させるために、Si以外の合金元素(C、Mn、Ni、Cr、Mo)を含有させて焼入れ性を確保する必要があるという本発明者らの知見に基づいており、指標QにはSi含有量の項が含まれない。
Q=0.18−1.3(logT)+0.75(2.7×[C]+[Mn]+0.45×[Ni]+0.8×[Cr]+2×[Mo]) ・・・ (1)
ここで、上記式(1)の指標Qは、板厚T(mm)の数値及び各元素Xの質量%での含有量[X]の数値を代入して計算し、元素Xを含有しない場合は0を代入する。すなわち、上記式(1)では、板厚T、各元素の含有量[X]を無次元の数値として、指標Qを計算する。なお、上記式(1)のlogは、底が10である対数、すなわち常用対数である。
図3に、硬度差割合ΔHv/Hvs(%)と指標Qとの関係を示す。図3から、厚手の鋼板を長寿命化できる基準として、硬度差割合ΔHv/Hvs(%)を、表層部硬度Hvsの15.0%以下に設定する場合、Q≧0.00とする必要があることがわかった。また、硬度差割合ΔHv/Hvs(%)を表層部硬度Hvsの13.0%以下に設定する場合、Q≧0.04とする必要があることが分かった。
さらに、本実施形態に係る鋼板は、板厚が40mm以上であるため、溶接による残留応力影響下での水素脆化割れが懸念されることから、下記式(2)により表される炭素当量Ceq(%)を0.800%未満としている。なお、下記式(2)は、鋼板の溶接性を考慮する必要があるため、Si含有量の項が含まれる。
Ceq(%)=[C]+[Mn]/6+[Si]/24+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/4 ・・・ (2)
上記式(2)の炭素当量Ceq(%)は、各元素Xの質量%での含有量[X]の数値を代入して計算し、元素Xを含有しない場合は0を代入する。上記式(2)により求められる炭素当量Ceqの単位は「%」である。
上記式(1)の指標Qを0.00以上とすることで、室温における鋼板の表層部と板厚中央部との硬度差ΔHvが表層部硬度Hvsの15.0%以下となり、硬度差が小さく、炭素当量が0.800%未満であり、板厚が40mm以上であり、かつ耐摩耗性に優れた鋼板を得ることができる。
以下、本実施形態に係る鋼板について詳細に説明する。まず、本実施形態に係る鋼板の化学組成について説明する。なお、特に断りのない限り、化学組成に関する%は質量%を意味する。
<C:0.20〜0.35%>
Cは、硬度の向上に有効な元素であり、鋼板の硬度を確保するためにC含有量を0.20%以上とする。好ましくはC含有量を0.22%以上、より好ましくは0.24%以上とする。一方、C含有量が0.35%を超えると、硬度の上昇によって耐水素脆化感受性が高まり、水素脆化による割れの発生が懸念されるため、C含有量を0.35%以下とする。好ましくはC含有量を0.32%以下、より好ましくは0.30%以下とする。
<Si:1.00%超〜2.00%>
Siは脱酸剤であり、また、鋼板の硬度の向上にも有効な元素である。本実施形態では、Siは高温環境下で鋼板の硬度を維持するために極めて重要な元素である。Si含有の効果を得るために、Si含有量を1.00%超とする。好ましくはSi含有量を1.10%以上、より好ましくは1.20%以上または1.30%以上とする。一方、Si含有量が2.00%を超えると、鋼板の靱性を阻害する場合があるため、Si含有量を2.00%以下とする。好ましくはSi含有量を1.90%以下、より好ましくは1.80%以下とする。
<Mn:0.60〜2.00%>
Mnは、焼入れ性を高め、硬度を向上させる元素であり、鋼板の硬度を確保するために、0.60%以上を含有させることが必要である。好ましくはMn含有量を0.70%以上、より好ましくは0.80%以上とする。一方、Mnを過剰に含有させると、靭性が低下し、また、セメンタイトの形成を促進し、結果的に鋼板の高温硬度の低下を生じることがある。そのため、Mn含有量を2.00%以下とする。好ましくはMn含有量を1.50%以下または1.35%以下、より好ましくは1.20%以下または1.00%以下とする。
<Cr:0.10〜2.00%>
Crは、焼入れ性を高め、鋼板の靭性及び硬度を向上させる元素である。鋼板の靱性及び硬度を確保するため、Cr含有量を0.10%以上とする。好ましくはCr含有量を0.50%以上、より好ましくは0.80%以上とする。一方、Cr含有量が2.00%を超えると鋼板の靱性が低下するため、Cr含有量を2.00%以下とする。好ましくはCr含有量を1.70%以下、より好ましくは1.50%以下とする。
<Mo:0.05〜1.00%>
Moも、焼入れ性を高め、鋼板の硬度を向上させる元素である。また、Moは、高温環境下でも鋼板の硬度を維持するために有効な元素である。そのため、Mo含有量を0.05%以上とする。好ましくはMo含有量を0.10%以上、より好ましくは0.20%以上とする。一方、Mo含有量が1.00%を超えると鋼板の靱性が低下するため、Mo含有量を1.00%以下とする。好ましくはMo含有量を0.60%以下、より好ましくは0.40%以下とする。
<Al:0.010〜0.100%>
Alは、脱酸剤として有効な元素である。また、AlはNとAlNを形成し、結晶粒を微細化させて、鋼板の靱性を向上させる。そのため、Al含有量を0.010%以上とする。好ましくはAl含有量を0.020%以上、より好ましくは0.030%以上とする。一方、Alを過剰に含有させると、鋼板の靭性の低下を生じるため、Al含有量を0.100%以下とする。好ましくはAl含有量を0.080%以下、より好ましくは0.070%以下とする。
<N:0.0020〜0.0100%>
Nは、AlやTiと窒化物を形成し、結晶粒を微細化させて、鋼板の靱性を向上させる元素である。そのため、N含有量を0.0020%以上とする。好ましくはN含有量を0.0030%以上、より好ましくは0.0040%以上とする。一方、Nを過剰に含有する場合は、粗大な窒化物が生成し、鋼板の靭性を低下させるため、N含有量を0.0100%以下とする。好ましくはN含有量を0.0080%以下、より好ましくは0.0060%以下とする。
<B:0.0003〜0.0020%>
Bは、鋼の焼入れ性を顕著に高め、特に鋼板の板厚中央部の硬度の向上に有効な元素である。そのため、B含有量を0.0003%以上とする。好ましくはB含有量を0.0005%以上、より好ましくは0.0007%以上、より一層好ましくは0.0010%以上とする。一方、Bを過剰に含有する場合は、硼化物を形成し、焼入れ性が低下し、鋼板の硬度を確保できなくなるため、B含有量を0.0020%以下とする。好ましくはB含有量を0.0018%以下、より好ましくは0.0016%以下とする。
<P:0.0200%以下>
Pは不純物であり、鋼板の靱性や加工性を低下させるため、P含有量を0.0200%以下に制限する。好ましくはP含有量を0.0150%以下、より好ましくは0.0100%以下とする。P含有量の下限は0%とすることが好ましいが、製造コストの観点から、P含有量は0.0001%以上であってもよい。
<S:0.0100%未満>
SもPと同様、不純物であり、鋼板の靱性を低下させることから、S含有量を0.0100%未満に制限する。好ましくはS含有量を0.0070%以下、より好ましくは0.0050%以下、より一層好ましくは0.0030%以下とする。S含有量の下限は0%が好ましいが、製造コストの観点から、S含有量は0.0001%以上であってもよい。
本実施形態に係る鋼板では、鋼板の硬度や靱性などの機械的性質を向上させる目的で、Cu、Ni、Nb、V、及びTiの1種又は2種以上を選択的に含有させることができる。これらの成分の含有量の下限は、0%である。
<Cu:0〜0.500%>
Cuは、微細な析出物を形成し、鋼板の強度の向上に寄与する元素であり、0.001%以上を含有させてもよい。より好ましくはCu含有量を0.050%以上、より一層好ましくは0.100%以上とする。一方、Cuを過剰に含有させると、鋼板の耐摩耗性を劣化させるため、Cu含有量の上限は0.500%以下とする。より好ましくはCu含有量を0.450%以下、より一層好ましくは0.400%以下とする。
<Ni:0〜1.00%>
Niは、鋼の焼入れ性を高めて、鋼板の硬度の向上に寄与する元素であり、0.05%以上を含有させてもよい。より好ましくはNi含有量を0.10%以上、より一層好ましくは0.20%以上とする。一方、Niは高価な合金元素であるため、コストの観点から、Ni含有量は1.00%以下とする。より好ましくはNi含有量を0.70%以下、より一層好ましくは0.50%以下とする。
<Nb:0〜0.050%>
Nbは、窒化物の形成や再結晶の抑制によって、結晶粒の細粒化に寄与する元素であり、鋼板の靱性を向上させるために、0.005%以上を含有させてもよい。より好ましくはNb含有量を0.007%以上、より一層好ましくは0.010%以上とする。一方、Nbを過剰に含有させると、鋼板の靭性を低下させることがあるため、Nb含有量は0.050%以下とする。より好ましくはNb含有量を0.030%以下、より一層好ましくは0.020%以下とする。
<V:0〜0.120%>
Vは、鋼板の硬度の向上に寄与する元素であり、0.010%以上を含有させてもよい。より好ましくはV含有量を0.020%以上、より一層好ましくは0.040%以上とする。一方、Vを過剰に含有させると、鋳片の割れが生じて製造性を損なう場合があるため、V含有量は0.120%以下とする。より好ましくはV含有量を0.100%以下、より一層好ましくは0.070%以下とする。
<Ti:0〜0.025%>
Tiは、TiNを形成し、結晶粒を微細化させて、鋼板の靱性を向上させる元素であり、0.005%以上を含有させてもよい。より好ましくはTi含有量を0.007%以上、より一層好ましくは0.010%以上とする。一方、Tiを過剰に含有させると、鋼板の靭性を低下させることがあるため、Ti含有量は0.025%以下とする。より好ましくはTi含有量を0.020%以下、より一層好ましくは0.015%以下とする。
鋼中の介在物の形態等を制御するために、Ca、Mg、REMの1種又は2種以上を選択的に含有させることができる。これらの成分の含有量の下限は、0%である。
<Ca:0〜0.050%>
<Mg:0〜0.050%>
<REM:0〜0.100%>
Ca、Mg、REMは、何れもSと結合して硫化物を形成し、熱間圧延によって延伸しにくい介在物を形成する元素であり、主に鋼板の靱性の改善に寄与する。一方、Ca、Mg、REMを過剰に含有させると、これらの元素がOとともに粗大な酸化物を形成し、鋼板の靭性が低下する場合がある。このため、Ca含有量、Mg含有量はそれぞれ、0.050%以下、REM含有量は0.100%以下とする。より好ましくはCa含有量、Mg含有量、REM含有量をそれぞれ、0.020%以下、より一層好ましくは0.010%以下または0.005%以下とする。一方、鋼板の靱性向上効果を得るためには、Ca含有量、Mg含有量はそれぞれ、0.0005%以上、REM含有量は0.001%以上とすることが好ましい。より好ましくはCa含有量、Mg含有量をそれぞれ、0.0007%以上、REM含有量を0.002%以上とする。
なお、REM(希土類金属元素)は、Sc、Y及びランタノイドからなる合計17元素を意味する。REMの含有量とは、これらの17元素の合計含有量を意味する。
本実施形態に係る鋼板の化学組成の残部は、Fe及び不純物である。ここで、不純物とは、鋼板を工業的に製造する際に、鉱石やスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本実施形態に係る鋼板の特性に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。ただし、本実施形態に係る鋼板においては、不純物のうち、P及びSについては、上述のように、上限を規定する必要がある。
さらに、鋼中の不純物として、O、Sb、Sn、及びAsが1種又は2種以上が混入する場合がある。これら不純物が混入しても、耐摩耗鋼の通常の混入レベル(含有量の範囲)であれば、特に問題はない。そのため、下記の耐摩耗鋼の通常の混入レベルに、これらの含有量を制限する。これら不純物の含有量の下限は、0%である。
<O:0.006%以下>
Oは、鋼中に不純物として混入する場合があるが、粗大な酸化物を形成する元素であるため、O含有量は少ない方が好ましい。特に、O含有量が0.006%を超えると、鋼中に粗大な酸化物を形成し、鋼板の耐摩耗性が劣化するため、O含有量は0.006%以下とする。好ましくはO含有量を0.005%以下、より一層好ましくは0.004%以下とする。
<Sb:0.01%以下>
Sbは、鋼原料としてスクラップから混入する元素である。特に、Sbを過剰に含有させると、鋼板の耐摩耗性が劣化するため、Sb含有量を0.01%以下とする。好ましくはSb含有量を0.007%以下、0.005%以下とする。
<Sn:0.01%以下>
Snは、Sbと同様に、鋼原料としてスクラップから混入する元素である。特に、Snを過剰に含有させると、鋼板の耐摩耗性が劣化するため、Sn含有量を0.01%以下とする。好ましくはSn含有量を0.007%以下、0.005%以下とする。
<As:0.01%以下>
Asは、Sb、Snと同様に、鋼原料としてスクラップから混入する元素である。特に、Asを過剰に含有させると、鋼板の耐摩耗性が劣化するため、As含有量を0.01%以下とする。好ましくはAs含有量を0.007%以下、0.005%以下とする。
本実施形態に係る鋼板は、室温における鋼板の表層部と板厚中央部との硬度差が小さく、表層部硬度に対する硬度差の割合が15.0%以下となるように、下記式(1)で求められる指標Qを0.00以上とする。指標Qは、板厚T(mm)の数値、各元素Xの質量%での含有量[X]の数値を無次元の数値として代入して計算し、元素Xを含有しない場合、[X]は0とする。鋼板の表層部と板厚中央部との硬度差を小さくするために、指標Qは、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.04以上、更に好ましくは0.05以上、より一層好ましくは0.10以上とする。指標Qの上限は特に規定しないが、指標Qを大きくすると、炭素等量Ceq(%)も大きくなるので、自ずと制限される。炭素等量Ceq(%)を0.800%未満にして溶接性を確保するために、指標Qは1.10以下が好ましい。より好ましくは指標Qを0.80以下または0.50以下、より一層好ましくは0.30以下または0.20以下とする。
Q=0.18−1.3(logT)+0.75(2.7×[C]+[Mn]+0.45×[Ni]+0.8×[Cr]+2×[Mo]) ・・・ (1)
本実施形態に係る鋼板は、溶接割れを抑制し、鋼板の溶接性を確保するために、炭素当量Ceq(%)を0.800%未満とする。炭素等量Ceq(%)も、各元素の質量%での含有量[X]の数値を代入して計算し、元素Xを含有しない場合、[X]は0とする。炭素等量Ceq(%)の下限は特に規定しないが、炭素等量Ceq(%)を小さくすると指標Qも小さくなるので、自ずと制限される。指標Qを0.00以上にして硬度差を小さくするために、炭素等量Ceq(%)は0.507%以上が好ましい。鋼板の耐摩耗性を高めるために、より好ましくは炭素等量Ceq(%)を0.600%以上、より一層好ましくは0.650%以上とする。さらにより一層好ましくは炭素等量Ceq(%)を0.700%以上とする。鋼板の溶接性の向上のため、炭素等量Ceq(%)を0.785%以下、0.770%以下または0.760%以下としてもよい。
Ceq(%)=[C]+[Mn]/6+[Si]/24+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/4 ・・・ (2)
本実施形態に係る鋼板は、室温における表層部硬度と板厚中央部硬度との差(硬度差)が小さく、表層部硬度に対する表層部硬度と板厚中央部硬度との差の割合が15.0%以下となり、長期間に亘って優れた耐摩耗性を発揮することができる。硬度差割合ΔHv/Hvs(%)は小さいほど好ましいが、0%未満または1.0%未満にすることは困難である。このため、その下限を0%または1.0%としてもよい。合金元素の含有量の増加に伴うコストの上昇を考慮すると、硬度差割合ΔHv/Hvs(%)は3.0%以上であってもよい。表層部硬度及び板厚中央部硬度は、室温におけるビッカース硬さHV5であり、JIS Z 2244:2009に準拠して測定する。表層部硬度は、鋼板の圧延方向及び板厚方向に平行な断面を測定面とし、鋼板の板厚方向で表面から1mm〜5mmの範囲で測定したビッカース硬さHV5の平均値である。鋼板の表層部硬度の測定では、当該範囲において、少なくとも1mm毎に5点、合計25点におけるビッカース硬さを測定する。板厚中央部硬度は、前記測定面において、鋼板の板厚方向の中央部から±5mm(合計10mm厚み)の範囲で測定したビッカース硬さHV5の平均値である。鋼板の中央部硬度の測定では、前記範囲において、少なくとも1mm毎に5点、合計55点におけるビッカース硬さを測定する。
本実施形態に係る鋼板は、室温での前記表層部硬度Hvsがビッカース硬さ(HV5)で400以上である。前記表層部硬度Hvsがビッカース硬さ(HV5)で400未満であると、鋼板の表層部の強度が不十分であるため、建設機械、産業機械などの用途に用いることができない。耐摩耗性の向上のため、室温での前記表層部硬度Hvsをビッカース硬さ(Hv5)で、440以上、460以上、480以上または500以上としてもよい。
なお、本実施形態に係る鋼板は、表層部から板厚中央部まで非常に高い硬さを示しており、引張強さも非常に高い。必要に応じて、室温での引張強さ(TS)を1000MPa以上、1200MPa以上、1350MPa以上または1500MPa以上としてもよい。前記引張強さの上限を特に定める必要はないが、2300MPa以下としてもよい。なお、引張強さは、全厚試験片(つまり、板状試験片)または鋼板表面から板厚Tの1/4離れた位置(T/4)から丸棒試験片を採取し、JIS Z 2241:2011に準拠して測定する。
本実施形態に係る鋼板は、熱間圧延によって製造される鋼板であり、板厚が40mm以上、好ましくは42mm以上または50mm以上、より好ましくは60mm以上または80mm以上の鋼板である。板厚の上限は特に規定せず、用途によっては150mmであってもよい。鋼板の板厚方向の特性の均質化を考慮して、板厚を100mm以下としてもよい。
本実施形態に係る鋼板の製造方法について説明する。本実施形態において、上記の化学組成を有する鋼片は、転炉・電気炉等の通常の精錬プロセスで溶製した後、連続鋳造法あるいは造塊−分塊法等の公知の方法で製造することができ、特に制限はない。
本実施形態では、鋳造して得られた鋼片を熱間圧延し、そのまま水冷するか、又は空冷した後、再加熱して焼入れて、鋼板を製造する。ただし、鋼板は焼入れままとし、焼戻しなどの熱処理を施さないものとする。
鋼を溶製し、鋳造した後、そのまま熱間圧延を行ってもよいが、鋼片を、一旦、室温まで冷却し、Ac点以上の温度に再加熱して、熱間圧延を行ってもよい。Ac点は、昇温によって鋼の組織がオーステナイトになる(オーステナイト変態が完了する)温度である。熱間圧延の加熱温度は、変形抵抗を低下させるために、好ましくは900℃以上、より好ましくは1000℃以上とする。一方、熱間圧延の加熱温度が高過ぎると、組織が粗大になり、鋼板の低温靭性が低下する場合があるため、1250℃以下が好ましい。より好ましくは加熱温度を1200℃以下、より一層好ましくは1150℃以下とする。
熱間圧延は、降温によってフェライト変態が開始する温度であるAr点以上で終了することが好ましい。Ac点及びAr点は、鋼片から試験片を採取し、加熱時及び冷却時の熱膨張挙動から求めることができる。熱間圧延後直ちに250℃以下の温度まで焼入れるか、または、熱間圧延後空冷された鋼板をAc点以上の温度に再加熱し、250℃以下の温度まで焼入れる。
以下、本発明に係る鋼板の実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。しかし本発明は、もとより下記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
表2に示す化学組成を有する鋼を溶製し、鋳造後に熱間圧延を行って表3に示す板厚の鋼板とし、室温まで空冷した。その後、表3に示す焼入れ温度まで昇温後、焼入れを行って、板厚が40mm以上の鋼板を製造した。得られた鋼板から試験片を採取し、鋼板の圧延方向及び板厚方向に平行な断面を試験面として、表層部及び板厚中央部のビッカース硬さをJIS Z 2244:2009に準拠し、室温で、試験力を49.03N(5kgf)として測定した。表層部のビッカース硬さ(表層部硬度)Hvsは、鋼板の板厚方向で表面から1mm〜5mmの範囲(表層部)で、1mm毎に5点、合計25点におけるビッカース硬さを測定し、これらの平均値(算術平均)から得た。板厚中央部のビッカース硬さ(板厚中央部硬度)Hvcは、鋼板の板厚方向の中央部から±5mm(合計10mm厚み)の範囲で、1mm毎に5点、合計55点におけるビッカース硬さを測定し、これらの平均値(算術平均)から得た。このようにして得られた表層部硬度Hvs及び板厚中央部硬度Hvcの値を用いて、室温における鋼板の表層部と中央部の硬度差を示す硬度差割合△Hv/Hvs(%)を得た。なお、硬度差割合ΔHv/Hvs(%)は、下記式(b)で表される。
△Hv/Hvs(%)=100×(Hvs−Hvc)/Hvs ・・・ (b)
また、鋼板から試料を切り出し、JIS Z 2252−1991に準拠し、400℃にて、試験力を9.807N(1kgf)として高温ビッカース硬さ試験を行った。これにより、鋼板の前記表層部の高温硬度(HV1)を得た。なお、表層部の高温硬度の測定は、温度の制御及び試験力以外の条件を上記の表層部ビッカース硬さ試験(室温)と同一にして行った。さらに、鋼板の表面から板厚Tの1/4離れた位置(T/4)から、圧延方向に平行な方向のフルサイズのVノッチシャルピー試験片を切り出し、JIS Z 2242:2005に準拠して、0℃のシャルピー吸収エネルギー(vE)を測定した。
各評価項目の判断基準は次の通りである。表層部硬度Hvs(HV5)、板厚中央部硬度Hvc(HV5)はいずれも、耐摩耗性の観点から400以上、切断加工性の観点から600以下を良好と判断した。表層部の高温硬度(HV5)は、高温での耐摩耗性の観点から300以上を良好と判断した。0℃のシャルピー吸収エネルギーは15J以上を良好と判断した。
結果を表3に示す。No.1〜18は、指標Qおよび炭素当量Ceq(%)を含む化学組成、板厚Tの各パラメータが本発明の範囲内であり、表層部と中央部の硬度差割合△Hv/Hvsも15.0%以下である。これらの鋼は、何れも、表層部硬度Hvs、板厚中央部硬度Hvc、表層部の高温硬度、及び0℃のシャルピー吸収エネルギーに優れた鋼板である。
Figure 0006402843
Figure 0006402843
一方、表3のNo.101〜115は比較例であり、Q値を含む化学組成が本発明の範囲外である。No.101〜103は、板厚との関係でQ値が低くなり、硬度差割合△Hv/Hvs(%)が15.0%を超えた例である。
No.106はSi含有量が不足し、表層部の高温硬度が低下した例である。一方、No.107はSi含有量が多く、靱性が低下した例である。
No.104、108及び114、は、それぞれC含有量、Mn含有量及びB含有量が不足し、表層部硬度Hvs、板厚中央部硬度Hvc、及び表層部の高温硬度が低下した例である。
Cr含有量が不足しているNo.110は、表層部硬度Hvs、板厚中央部硬度Hvc、及び表層部の高温硬度に加えて靭性も低下した例である。
Mo含有量が不足しているNo.112は、板厚中央部硬度Hvc、表層部の高温硬度、及び靭性が低下した例である。
No.105はC含有量が多く、表層部硬度Hvsが過剰に高くなった例である。
Mn含有量が多いNo.109、Cr含有量が多いNo.111、Mo含有量が多いNo.113は、靭性が低下した例である。
B含有量が過剰であるNo.115は表層部硬度Hvs、板厚中央部硬度Hvc、及び表層部の高温硬度が低下した例である。
なお、すべての実施例において、O含有量は0.006%以下であり、且つ、Sb含有量、Sn含有量、及びAs含有量はすべて0.01%以下であった。
このように、化学組成及びQ値の何れか1つ以上が本発明の範囲外である比較例No.101〜115は、硬度差割合△Hv/Hvs、表層部硬度Hvs、板厚中央部硬度Hvc、表層部の高温硬度、靱性の少なくとも一つが、良好と判断される評価基準に達しなかった。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.20〜0.35%、
    Si:1.00%超〜2.00%、
    Mn:0.60〜2.00%、
    Cr:0.10〜2.00%、
    Mo:0.05〜1.00%、
    Al:0.010〜0.100%、
    N:0.0020〜0.0100%、
    B:0.0003〜0.0020%、
    P:0.0200%以下、
    S:0.0100%未満、
    Cu:0〜0.500%、
    Ni:0〜1.00%、
    Nb:0〜0.050%、
    V:0〜0.120%、
    Ti:0〜0.025%、
    Ca:0〜0.050%、
    Mg:0〜0.050%、
    REM:0〜0.100%、及び
    残部:Fe及び不純物であり、
    下記式(1)で求められる指標Qが0.00以上であり、
    下記式(2)で求められる炭素当量Ceq(%)が0.800%未満である化学組成を有し、
    室温における表層部硬度に対する表層部硬度と板厚中央部硬度との差の割合が15.0%以下であるとともに室温における表層部硬度がビッカース硬さで400以上であり、
    板厚Tが40mm以上である鋼板。
    Q=0.18−1.3(logT)+0.75(2.7×[C]+[Mn]+0.45×[Ni]+0.8×[Cr]+2×[Mo]) ・・・ (1)
    Ceq(%)=[C]+[Mn]/6+[Si]/24+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/4 ・・・ (2)
    前記式(1)の指標Qは、板厚T(mm)の数値及び各元素Xの質量%での含有量[X]の数値を代入して計算し、元素Xを含有しない場合は0を代入する。前記式(2)の炭素当量Ceq(%)は、各元素Xの質量%での含有量[X]の数値を代入して計算し、元素Xを含有しない場合は0を代入する。
  2. 前記指標Qが0.04以上であり、
    前記割合が13.0%以下である請求項1に記載の鋼板。
  3. 質量%で、
    Ni:0.05〜1.00%
    である化学組成を有する請求項1又は請求項2に記載の鋼板。
  4. 質量%で、
    Mn:0.63〜2.00%
    である化学組成を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の鋼板。
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