JPH10251800A - 高炭素薄物熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents

高炭素薄物熱延鋼板及びその製造方法

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JPH10251800A
JPH10251800A JP5757497A JP5757497A JPH10251800A JP H10251800 A JPH10251800 A JP H10251800A JP 5757497 A JP5757497 A JP 5757497A JP 5757497 A JP5757497 A JP 5757497A JP H10251800 A JPH10251800 A JP H10251800A
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Japan
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less
steel sheet
rolling
hot
ceq
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JP5757497A
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English (en)
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Shinjiro Kaneko
真次郎 金子
Kazuhiro Seto
一洋 瀬戸
Takashi Sakata
坂田  敬
Takashi Obara
隆史 小原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高炭素鋼板において、冷間圧延とそれに引き
続く焼鈍を施すことなく熱間圧延のみによって、板厚1.
2 mm未満の軟質で均一な薄鋼板を製造する。 【解決手段】 仕上げ圧延を、圧延速度300 mpm 以上、
仕上げ圧延温度Ar3 変態点以上で潤滑を施しつつ行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、構造用鋼、工具
用鋼等に用いられる高炭素鋼又は高炭素合金鋼に関し、
特に1.2 mm未満という薄物の鋼板であって、冷間圧延及
びそれに引き続く焼鈍を施すことなしに製造することが
できるものを提案しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】高炭素鋼板は、JIS において「機械構造
用炭素鋼・合金鋼」に分類される鋼、及び「特殊用途
鋼」に分類される鋼のうち、工具鋼、中空鋼、ばね鋼、
快削鋼、軸受け鋼に分類される鋼の総称である。これら
の鋼は成分や、焼入れ,焼なましなどの熱処理により、
強度、硬さや靱性などの用途に応じた要求特性を調整す
る。
【0003】この高炭素鋼板の用途のなかには、鋸刃や
カッターなど板厚1.2 mm未満の薄鋼板として使用するも
のもある。従来、かかる板厚1.2 mm未満の高炭素鋼又は
高炭素合金鋼の薄鋼板を得るためには、高炭素鋼又は高
炭素合金鋼を熱間圧延により板厚1.2 mm以上の熱延鋼板
にしてから、球状化焼鈍を施した後、冷間圧延−焼鈍の
工程を所望の板厚に達するまで繰り返し行うことが必要
とされていて、製造工程が繁雑となるうえコストの面で
も不利となっていた。
【0004】そのため、従来から高炭素鋼板の製造工程
の簡略化を目的に、熱延板の球状化焼鈍工程の省略(特
開平3−122216号公報)や中間冷延圧下率の上昇
による冷延−焼鈍工程の簡略化(特開平3211135
号公報) などが試みられている。しかし、これらの技術
は、いずれも熱延後の冷間圧延−焼鈍の工程を前提とす
るものであって、冷間圧延−焼鈍の省略による製造工程
の更なる簡略化やコスト低減が達成されるものではな
い。
【0005】冷間圧延−焼鈍を省略することについて
は、これまでに提案されたことはなかった。それは、板
厚1.2 mm未満の高炭素鋼又は高炭素合金鋼を熱延のみで
製造しようとする場合、従来の熱延条件では当該薄板厚
を達成することだけでも工程上困難であるのに加えて、
以下の問題点を有するため、実用に供することのできる
鋼板は今まで得られなかったからである。
【0006】すなわち、仕上げ板厚が薄いために熱間圧
延中には先,尾端部を主とする長手方向の温度差が生
じ、これが直接鋼板の硬度等の材質を不均一にする他、
これに付随して、仕上げ圧延工程において圧延機中での
荷重変動が大きくなり安定操業を阻害され、また高炭素
鋼又は高炭素合金鋼はもともと変形抵抗が高いため、圧
延機に大きな負荷がかかってしまい、これが板厚寸法の
変動を招き、ひいては付加的な材質差をもたらす。
【0007】更に高炭素鋼又は高炭素合金鋼はその材質
が冷却条件に大きく依存するため、熱延後の冷却過程に
よっても、コイル全長で材質がばらつき、しかも仕上げ
圧延機と巻取り機間での拘束がないコイルの先,尾端部
では板形状の不良や冷却の不均一を生じる。加えて、過
冷却された部分では低温で生成する硬質相のために板割
れなどの不具合を生じ生産性を阻害してしまうなどの問
題もあった。
【0008】以上述べた問題点ばかりか、発明者らが今
回新たに見い出したところによれば、これらの諸因子を
注意深く回避したとしてもなお鋼板表面が異常に硬質に
なる現象を安定して回避することができず、結局、製品
として使用に耐えられないものになっていたのである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、高炭素鋼
又は高炭素合金鋼の熱延鋼板を製造しようとする場合に
生じる、上記の課題を有利に解決し、冷間圧延−焼鈍の
工程なしに、熱間圧延工程のみにより板厚が1.2 mm未満
である熱延鋼板を安定して得ることを目的とする。ま
た、冷延鋼板と同等に軟質であり、冷延により得られる
のと同等の材質均一性をも有する上記熱延鋼板を提案す
ることを他の目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】第1発明の高炭素薄物熱
延鋼板は、C:0.1 wt%を超え1.5 wt%以下、Si:0.1
〜2.2 wt%、Mn:0.1 〜1.7 wt%、P:0.05wt%以下及
びS:0.05wt%以下を含有し、残部は鉄及び不可避的不
純物の成分組成からなり、熱延ままでの鋼板表面の硬度
が、成分組成より次式(1) にて求められる炭素当量Ceq
に対し、Ceqが0.1 以上0.5 未満のときHv:180 以下、C
eq が0.5 以上1.0 未満のときHv:230 以下、Ceq が1.0
以上のときHv:280 以下であって、かつ鋼板表層部と
鋼板厚み方向中心部との硬度の差がHvで15%以下であ
る、板厚が1.2 mm未満であることを特徴とする。 (1) Ceq=C%+1/6 Mn%+ 1/24 Si%+ 1/40 Ni%+1/5 Cr%+Mo/4% 第2発明の高炭素薄物熱延鋼板は、C:0.1 wt%を超え
1.5 wt%以下、Si:0.1 〜2.2 wt%、Mn:0.1 〜1.7 wt
%、P:0.05wt%以下及びS:0.05wt%以下を含み、更
にCr:0.2 〜3.5 wt%、Ni:0.4 〜3.5 wt%、Mo:0.1
〜0.7 wt%及びB:0.0005〜0.003 wt%の1種又は2種
以上を含有し、残部は鉄及び不可避的不純物の成分組成
からなり、熱延ままでの鋼板表面の硬度が、成分組成よ
り次式(1) にて求められる炭素当量Ceq に対し、Ceq が
0.1 以上0.5 未満のときHv:180 以下、Ceq が0.5 以上
1.0 未満のときHv:230 以下、Ceq が1.0 以上のときH
v:280 以下であって、かつ鋼板表層部と鋼板厚み方向
中心部との硬度の差がHvで15%以下である、板厚が1.2
mm未満であることを特徴とする。 (1) Ceq=C%+1/6 Mn%+ 1/24 Si%+ 1/40 Ni%+1/5 Cr%+Mo/4% 第3発明の高炭素薄物熱延鋼板の製造方法は、C:0.1
wt%を超え1.5 wt%以下、Si:0.1 〜2.2 wt%、Mn:0.
1 〜1.7 wt%、P:0.05wt%以下及びS:0.05wt%以下
を含有し、残部は鉄及び不可避的不純物の成分組成から
なる鋼に、熱間の粗圧延及び仕上げ圧延を施して板厚が
1.2 mm未満である薄物熱延鋼板を製造するに当たり、上
記仕上げ圧延を、圧延速度300 mpm 以上、仕上げ圧延温
度Ar3 変態点以上で潤滑を施しつつ行うことを特徴とす
る。第4発明の高炭素薄物熱延鋼板の製造方法は、C:
0.1 wt%を超え1.5 wt%以下、Si:0.1 〜2.2 wt%、M
n:0.1 〜1.7 wt%、P:0.05wt%以下及びS:0.05wt
%以下を含み、更にCr:0.2 〜3.5 wt%、Ni:0.4 〜3.
5 wt%、Mo:0.1 〜0.7 wt%及びB:0.0005〜0.003 wt
%の1種又は2種以上を含有し、残部は鉄及び不可避的
不純物の成分組成からなる鋼に、熱間の粗圧延及び仕上
げ圧延を施して板厚が1.2 mm未満である薄物熱延鋼板を
製造するに当たり、上記仕上げ圧延を、圧延速度300 mp
m 以上、仕上げ圧延温度Ar3 変態点以上で潤滑を施しつ
つ行うことを特徴とする。第5発明の高炭素薄物熱延鋼
板の製造方法は、第3発明、第4発明において、粗圧延
を施してシートバーとした後、その尾端部を後続するシ
ートバーの先端部と順次に接合して、複数のシートバー
を連続的に仕上げ圧延に供することを特徴とする。第6
発明の高炭素薄物熱延鋼板の製造方法は、第3〜6発明
において、コイル巻取り後、球状化焼鈍を施すことを特
徴とする。なお、この発明において「熱延まま」とは、
球状化(軟化)焼鈍を行わない状態のことをいい、たと
えば表面酸化被膜を付したまま、という意味ではない。
【0011】
【発明の実施の形態】まず、この発明の鋼板を得るため
の製造手段を説明する、後述する所定の成分組成に溶製
した鋼を連続鋳造法又は造塊、分塊法によりスラブとす
る。このスラブを常法により粗圧延を施してシートバー
とした後、仕上げ圧延に供する。この仕上げ圧延の際に
は、圧延速度は300 m/min 以上として、仕上げ圧延温度
はAr3 変態点以上とし、かつ潤滑を施す条件で行うこと
が必須である。これは、以下の理由による。
【0012】圧延速度を300 m/min とすることによっ
て、熱延時間が短縮されかつ加工発熱効果が得られるこ
とで、1.2 mm未満のような薄物を熱間圧延する際でも温
度確保及び温度均一性を十分な程度に得ることができ、
軟質で均質な鋼板を安定して精度良く得ることができ
る。特に、圧延速度を500 m/min 以上とした場合、再結
晶が促進されるため表層部におけるせん断歪を緩和する
効果により、表層部と中心部のHvの差が10%以下となる
ことから圧延速度は500mpm以上が望ましい。また、仕上
げ温度をAr3 変態点以上とすることにより、仕上げ圧延
機中での変態を防止でき、加工組織が残存することに由
来する鋼板の硬質化及びそれに起因する板割れなどの問
題を回避することができる。
【0013】板厚方向の材質の均質化を確保するために
は、更に潤滑圧延を併用しなければならない。潤滑圧延
の効果については、以下の機構によるものと考えられ
る。薄物の熱延鋼板を製造しようとする場合、圧延時に
鋼板表層部には鋼板中央部に比べ大きな剪断変形が加わ
り変態が誘起されるため、鋼板表層付近で材質の不均一
な領域が生じてしまう。これが、他の不均一要因の対策
を十分講じてもなお鋼板の(特に板厚方向の)均質性に
限界を有する原因と考えられる。潤滑圧延の採用は、上
記の表層部の歪の集中を劇的に改善し、よって、従来法
による薄物では到底得ることのできなかった均質かつ軟
質な特性が得られるものと考えられる。また、薄鋼板で
は仕上げ圧延中の温度降下が大きいが、潤滑圧延による
上述の剪断歪の解消は実質的にAr3 変態点を低下させる
ため、Ar3 変態点以上の仕上げ温度の確保が容易となる
という効果も有する。
【0014】以上述べた仕上圧延速度、仕上圧延温度及
び潤滑圧延の限定により、熱延ままでの鋼板表面の硬度
が、成分組成より次式(1) にて求められる炭素当量Ceq
に対し、Ceq が0.1 以上0.5 未満のときHv:180 以下、
Ceq が0.5 以上1.0 未満のときHv:230 以下、Ceq が1.
0 以上のときHv:280 以下であって、かつ鋼板表層部と
鋼板厚み方向中心部との硬度の差がHvで15%以下であ
る、軟質で均質な薄鋼板が得られる。 (1) Ceq=C%+1/6 Mn%+ 1/24 Si%+ 1/40 Ni%+1/5 Cr%+Mo/4%
【0015】潤滑の程度については摩擦係数μが0.2 以
下となる程度であれば十分であるが、これよりμが高い
と目的の材質を得ることができない。潤滑手段は特に限
定はなく、油、油脂等を問わない。また、圧延速度を30
0 m/min 未満とした場合や仕上げ温度をAr3 変態点未満
とした場合も同様に均質性・軟質性を十分得ることがで
きない。なお、圧延速度が1000m/min を超えると、潤滑
下でも板厚方向材質の不均一さが増す傾向にあるため、
1000m/min 以下が望ましい。ここで、圧延速度は出側で
の値で代表される。また、仕上げ温度が900 ℃を超える
と、変態前γ粒が粗大化し変態が遅延するため、変態複
熱が抑制されることから冷却過程において過冷却による
硬質化や板割れ等の問題が生じるため、900 ℃以下が望
ましい。
【0016】なお、仕上げ圧延の最終スタンドにおける
圧下率を高くすることは、圧延中での板温の低下を抑制
し温度均一性を確保するのに有効である。具体的には、
10%以上の圧下が有利であるが、50%を超える圧下は効
果が飽和し設備負担も大きいため、50%以下が望まし
い。かかる仕上げ圧延により得べき熱延鋼板の板厚は、
この発明の目的でもあり、1.2 mm未満とする。
【0017】この発明の効果をさらに向上させるために
は、仕上げ圧延に際して、シートバーの尾端部を後続す
るシートバーの先端部と順次に接合して、複数のシート
バーを連続的に仕上げ圧延すする、いわゆる連続熱間圧
延を採用することがさらに有効である。
【0018】すなわち、連続熱間圧延により、最初の圧
延材の先端部及び最終の圧延材の尾端部以外には非定常
部がなくなり歩留まりが向上するという効果を有する。
加えて、この発明のように高速圧延・潤滑圧延を施すに
際し、連続熱間圧延を施さない場合には、圧延機への噛
み込みを阻害しないように先端部に未潤滑の領域が生じ
るうえ、スリップなどの操業上の問題を生じることがあ
るため、操業を安定させるためには連続熱間圧延が極め
て有効である。
【0019】また、連続熱間圧延を行うに際しては、粗
圧延を施したシートバーを一旦コイル状に巻取り、次い
で、このコイルを巻終わり端より払い出して先行材と接
合することが望ましい。すなわち、上記工程により、巻
取った状態に保持されている間にコイル内の温度が均一
化し、さらに粗圧延時の被圧延材の先端部が仕上げ圧延
時には尾端部と逆転することにより粗圧延完了時の温度
勾配が低減され、コイル全長にわたって温度の均一化を
図ることができる。なお、コイルの接合方法に関しては
特にこれを限定しない。
【0020】仕上げ圧延に引き続いてランアウトテーブ
ル上において20℃/s以上の冷却速度において、次式によ
り求められるT0に対して、T0−40℃〜T0+40℃の温度領
域まで冷却し、次いで5〜10℃/sの冷却速度で冷却する
ことが望ましい。 T0 =615 −58〔C%〕−7.4 〔Mn%〕+28〔Si%〕−
13〔Ni%〕+46.6〔Cr%〕+31.6〔Mo%〕+3000〔B
%〕−32〔Mn%〕〔C%〕+20〔Si%〕〔C%〕+5
〔Ni%〕〔C%〕−27〔Cr%〕〔C%〕+23〔Mo%〕
〔C%〕
【0021】20℃/s以上の急冷を行うのは、変態前のオ
ーステナイト粒を微細化し、変態を促進させるためであ
り、20℃/s未満では、その効果が小さい。この温度域よ
り低温まで急冷すると、ベイナイトやマルテンサイトな
どの硬質の脆い相が現出し、均一なパーライトが得られ
なくなるとともに板割れなどの不具合を生じ易くなる。
またこの温度域より高温で急冷を止めると、初析フェラ
イト又は初析セメンタイトの粗大化を招き、結果として
材質の不均一や脆化を生じてしまう可能性がある。また
上記温度域からの冷却速度を5〜10℃/sとすることによ
り、変態速度の速い温度域を通過させ、変態を促進させ
ることができる。ここで5℃/sより遅くするとやはり変
態粒の粗大化要因となり、また10℃/sより速くすると変
態が逆に過度に抑制される。
【0022】巻取り温度は500 ℃〜700 ℃が望ましい。
これより低い温度ではベイナイトやマルテンサイトなど
の硬質の脆い相が現出し巻取りが困難となる。これより
高い温度では炭化物が粗大化したり、脱炭を生じるなど
して材質を劣化させる。
【0023】以上の方法においてコイル全長全厚にわた
って均質な板厚1.2 mm未満の熱延鋼板を製造する。な
お、熱延板においてさらなる軟質化のために用いられる
球状化焼鈍の実施は、本願発明の効果を生かす上で有効
である。条件は常法でよく特にこれを限定しない。
【0024】以下にこの発明において、鋼の成分組成範
囲を限定する理由を説明する。Cは多いほど焼入れ後の
硬度が上昇し、耐摩耗性は低下する。その含有量は所望
の特性に応じて調整するが、0.1 wt%以下では焼入れ性
が低下し、1.5 wt%を超えると硬度も耐摩耗性も飽和す
る。Siは焼入れ性を向上させる成分であり、0.1 wt%よ
り少ないとその効果が小さく、2.2 wt%を超えるとその
効果が飽和するうえ表面性状や耐食性を劣化させる。Mn
は焼入れ性を向上させる成分であり、焼入れ後の耐摩耗
性の向上にも有効である。Mn量が0.1 wt%より少ないと
その効果が小さく、また、固溶Sが増大するため鋼の脆
化を招く。一方1.7 wt%を超えると焼入れ後の靱性が劣
化してしまう。
【0025】Pは焼入れ後の靱性を劣化させるうえに低
温で鋼を脆化させる成分であるため、0.05wt%に上限を
規定するが、少ないほど望ましい。Sは固溶状態で存在
すると焼入れ後の靱性を劣化させるうえ赤熱状態で鋼を
脆化させる成分であるため、0.05wt%に上限を規定する
が、少ないほど望ましい。
【0026】上記成分の他、必要に応じてCr、Ni、Mo及
びBの1種又は2種以上を焼入れ後の靱性を向上させる
目的で含有させることができる。Crは焼入れ性と焼入れ
後の耐摩耗性を向上させる成分であるが、0.2 wt%より
少ないとその効果が小さく、3.5 wt%を超えるとその効
果が飽和するうえCrの炭化物をつくり鋼を脆化させる。
Niは焼入れ後の靱性を向上させる成分であり、鋼の軟質
化にも効果がある。Ni量が0.4 wt%より少ないとその効
果が小さく、3.5 wt%を超えるとその効果が飽和してし
まう。Moは焼入れ後の靱性を向上させる成分であり、0.
1 wt%より少ないとその効果が小さく、0.7 wt%を超え
るとその効果が飽和してしまう。Bは焼入れ性及び焼入
れ後の靱性を向上させる成分であり、0.0005wt%より少
ないとその効果が小さく、0.003 wt%を超えるとその効
果が飽和するうえ靱性が劣化してしまう。
【0027】
【実施例】
(実施例1)表1に示す組成の鋼A〜Eについて、厚さ
40mmのシートバーから、表2に示す条件によって連続熱
間圧延により板厚1.0 mmの熱延鋼板を製造した。なお、
球状化焼鈍は施していない。得られた各鋼板について表
層部及び板厚中心部のビッカース硬度(Hv) を測定し、
さらにその差(ΔHv) を求めた。Hvの測定にあたって
は、表層部は研磨により平滑化した後に行い、中心部に
ついては鋼板断面を研磨により平滑化した後に行った。
試験荷重は1Kgf とした。この結果を表2に示す。ま
た、板厚中心部のビッカース硬度とFDT との関係を図1
に示す。すなわちこの発明によるものは十分軟質でかつ
均質である。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】(実施例2)表1に示す組成の鋼A〜Eに
ついて、厚さ40mmのシートバーから以下の熱間圧延−焼
鈍を施した板厚1.0 mmの鋼板を製造した。 1)(本発明法):実施例1の表2の条件により熱間圧
延した本発明鋼(鋼Aにおいてはμ=0.18のもの)に、
焼鈍温度700 ℃にて24hrの熱処理を施したもの。 2)(従来法1):実施例1の表2に記載の比較鋼のう
ち潤滑を施さなかったもの(μ>2.0 )に、焼鈍温度70
0 ℃にて24hrの熱処理を施すことにより製造したもの。 3)(従来法2):実施例1の表2に記載の比較鋼のう
ち潤滑を施さなかったものと同様の熱延条件により板厚
2.0 mmの熱延鋼板を製造した(仕上前段圧下率のみ変
更)。これに酸洗を施した後、焼鈍温度700 ℃にて20hr
の熱処理を施し、さらに板厚1.0 mmまで冷間圧延した
後、焼鈍温度700 ℃にて10hrの熱処理を施すことにより
製造したもの。 得られた各鋼板について板表層のビッカース硬度(Hv)
を測定したものを図2に示す。すなわちこの発明による
ものは従来の冷延−焼鈍工程を経るものに比べ軟質で加
工性に富む。
【0031】
【発明の効果】この発明によれば、熱間圧延−焼鈍後に
冷間圧延−焼鈍の工程を施すことなしに、板厚が1.2 mm
未満の高炭素鋼又は高炭素合金鋼の薄鋼板を提供するこ
とが可能となり、工程省略によるエネルギーの節約や生
産性の向上に大きな効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱延ままの鋼板の板厚中心部の硬度と仕上圧延
温度との関係を示したグラフである。
【図2】炭素当量と、この発明法及び従来法により製造
された板厚1.0 mmの鋼板の板表層部の硬度との関係を示
したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂田 敬 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 小原 隆史 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.1 wt%を超え1.5 wt%以下、 Si:0.1 〜2.2 wt%、 Mn:0.1 〜1.7 wt%、 P:0.05wt%以下及び S:0.05wt%以下 を含有し、残部は鉄及び不可避的不純物の成分組成から
    なり、熱延ままでの鋼板表面の硬度が、成分組成より次
    式(1) にて求められる炭素当量Ceq に対し、Ceqが0.1
    以上0.5 未満のときHv:180 以下、Ceq が0.5 以上1.0
    未満のときHv:230 以下、Ceq が1.0 以上のときHv:28
    0 以下であって、かつ鋼板表層部と鋼板厚み方向中心部
    との硬度の差がHvで15%以下である、板厚が1.2 mm未満
    の高炭素薄物熱延鋼板。 (1) Ceq=C%+1/6 Mn%+ 1/24 Si%+ 1/40 Ni%+1/5 Cr%+Mo/4%
  2. 【請求項2】C:0.1 wt%を超え1.5 wt%以下、 Si:0.1 〜2.2 wt%、 Mn:0.1 〜1.7 wt%、 P:0.05wt%以下及び S:0.05wt%以下 を含み、更に Cr:0.2 〜3.5 wt%、 Ni:0.4 〜3.5 wt%、 Mo:0.1 〜0.7 wt%及び B:0.0005〜0.003 wt% の1種又は2種以上を含有し、残部は鉄及び不可避的不
    純物の成分組成からなり、熱延ままでの鋼板表面の硬度
    が、成分組成より次式(1) にて求められる炭素当量Ceq
    に対し、Ceq が0.1 以上0.5 未満のときHv:180 以下、
    Ceq が0.5 以上1.0 未満のときHv:230 以下、Ceq が1.
    0 以上のときHv:280 以下であって、かつ鋼板表層部と
    鋼板厚み方向中心部との硬度の差がHvで15%以下であ
    る、板厚が1.2 mm未満の高炭素薄物熱延鋼板。 (1) Ceq=C%+1/6 Mn%+ 1/24 Si%+ 1/40 Ni%+1/5 Cr%+Mo/4%
  3. 【請求項3】C:0.1 wt%を超え1.5 wt%以下、 Si:0.1 〜2.2 wt%、 Mn:0.1 〜1.7 wt%、 P:0.05wt%以下及び S:0.05wt%以下 を含有し、残部は鉄及び不可避的不純物の成分組成から
    なる鋼に、熱間の粗圧延及び仕上げ圧延を施して板厚が
    1.2 mm未満である薄物熱延鋼板を製造するに当たり、 上記仕上げ圧延を、圧延速度300 mpm 以上、仕上げ圧延
    温度Ar3 変態点以上で潤滑を施しつつ行うことを特徴と
    する、高炭素薄物熱延鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】C:0.1 wt%を超え1.5 wt%以下、 Si:0.1 〜2.2 wt%、 Mn:0.1 〜1.7 wt%、 P:0.05wt%以下及び S:0.05wt%以下 を含み、更に Cr:0.2 〜3.5 wt%、 Ni:0.4 〜3.5 wt%、 Mo:0.1 〜0.7 wt%及び B:0.0005〜0.003 wt% の1種又は2種以上を含有し、残部は鉄及び不可避的不
    純物の成分組成からなる鋼に、熱間の粗圧延及び仕上げ
    圧延を施して板厚が1.2 mm未満である薄物熱延鋼板を製
    造するに当たり、 上記仕上げ圧延を、圧延速度300 mpm 以上、仕上げ圧延
    温度Ar3 変態点以上で潤滑を施しつつ行うことを特徴と
    する、高炭素薄物熱延鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 粗圧延を施してシートバーとした後、そ
    の尾端部を後続するシートバーの先端部と順次に接合し
    て、複数のシートバーを連続的に仕上げ圧延に供するこ
    とを特徴とする、請求項3又は4記載の高炭素薄物熱延
    鋼板の製造方法。
  6. 【請求項6】 コイル巻取り後、球状化焼鈍を施すこと
    を特徴とする、請求項3〜6のいずれか一に記載の高炭
    素薄物熱延鋼板の製造方法。
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