以下、図1から図10を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、各図において一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、各部の大きさ、形状、厚みなどを適宜誇張して表現する場合がある。
<第1実施形態>
まず図1~図8を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、扉用錠装置1の外観図であり、図1(a)が正面図であり、同図(b)がハンドル2が突出した状態の側面図であり、同図(c)が背面図である。また図2は、扉用錠装置1の主に動作制御に係る構成を示すブロック図であり、図3は、扉用錠装置1の主要な構成を示す分解斜視図であり、図4は、駆動手段33について説明する図であり、同図(a)は駆動手段33部分を示す側面図であり、同図(b)は、駆動手段33の電気パーツ部分を示す回路概要図である。
図1および図2に示すように、本実施形態の扉用錠装置(ハンドルロック)1は、扉(例えば、自動販売機の開閉扉)に取り付けられ、外部から送信される解除信号を受信して電動で当該扉の施解錠を行う装置(電子錠または電気錠)であり、ハンドル2と、ハンドルケース3と、内ケースボルト5と、付勢手段7と、シリンダー錠8と、カム部10と、カンヌキ15と、スライダー20と、制御手段31と、駆動手段と32と、通信手段32と、不図示の記憶手段などを有する。なお以下の説明において、電子式(の)扉用錠装置、または電子錠と記載した場合には、電気式(の)扉用錠装置、または電気錠と読み替えることも可能である。
図1に示すようにハンドルケース3は、ハンドル2の一部を収容可能な扉用錠装置1の筐体であり、扉にねじなどで固定される。ハンドルケース3は、正面視(同図(a))においては略角丸矩形状であり、台座部3aと、筺体部3bとを有する。台座部3aは、例えば自動販売機などの機器本体にねじ等により固定される部分である。ハンドルケース3の筺体部3bの側面下方には、切欠き3cが設けられている。すなわち筺体部3bは側面下方において、他の領域と比較して肉薄部となっている。このため、ハンドルケース3の下方にバール等を差し込んでハンドルケース3を取り外そうとした場合、外力に対する強度の弱い肉薄部のみが破壊される。これにより、ハンドルケース3全体が破壊されることを防ぐことができ、ハンドルケース3全体の取り外しまたは内ケースボルト5の引き抜きを防止できる。つまり、ハンドルケース3の破壊による扉用錠装置1の解錠を防止できる。
図1(b)、図3に示すように、ハンドルケース3の筐体部3bには筒体部の内ケースボルト5(図1(b)では破線で示す)が内装されている。内ケースボルト5は、ハンドルケース3との係止及び係止解除が可能であり、ハンドルケース3との係止が解除された状態ではハンドルケース3に対して回転自在となる。
図1および図3に示すようにハンドル2は、側面視において略T字形状を呈するように筒体部4とその前方に設けられた把持部6を有し、扉の開閉操作および扉の施解錠操作を行う。筒体部4は、内ケースボルト5に内包される筒体部であり、ハンドルケース3内に前後方向(図1(b)の左右方向)への摺動が可能に収納される。筒体部4は、内ケースボルト5およびハンドルケース3との係止及び係止解除が可能であり、内ケースボルト5との係止が解除された状態では内ケースボルト5およびハンドルケース3に対して前後方向に摺動自在となる。また、筒体部4に非常時解錠用のシリンダー錠8が収容され装着(固定)されている。把持部6は、筒体部4の前方(図1(b)の左方向)端部に、例えば筒体部4と一体的に設けられる。筒体部4と、内ケースボルト5およびハンドルケース3との係止が解除されると、内ケースボルト5はハンドルケース3に対して前後方向には移動不可であるが、シリンダー錠8の内筒8b(の軸)を中心として回動は可能となる。
図1(b)に示すように付勢手段7は、ハンドル2をハンドルケース3から外方向に突出するように常時付勢する。詳細には、付勢手段7は例えば、内ケースボルト5の後端部と筒体部4の後端部との間に介装され筒体部4を前方に押出すように付勢する弾性部材(例えば、コイルバネ)7である。
筒体部4と、内ケースボルト5およびハンドルケース3との係止が解除されると、筒体部4は、内ケースボルト5に対して前後方向に摺動自在となり、筒体部4はコイルバネ7によって、前方に押されてハンドルケース3(内ケースボルト5)から突出する。つまり、ハンドル2は、ハンドルケース3から前方に突出(ポップアップ)し、回動可能となる。
また、図1(c)に示すようにハンドルケース3の後端にはレバー11が設けられる。レバー11は、内ケースボルト5が前方に離脱ことを防止するとともに、内ケースボルト5の回転方向を決定する。レバー11の組み込み方向(表裏)を変えることにより、内ケースボルト5の回転方向(時計回り/反時計回り)が変化する。
また、レバー11の更に後端側には不図示のロックカムが設けられる。ロックカムは扉(例えば、自動販売機等の扉)の扉ロック機構(不図示)を駆動させる。扉ロック機構の図示は省略するが、扉の内部に上下(天地)方向に移動可能に設けられたスライドバーと、スライドバーに設けられた穴部と、筐体(例えば、自動販売機等の筐体)に設けられ、穴部と係合可能なフックなどを有する。ロックカムはスライドバーと係合するように構成され、ポップアップしたハンドル2の回動により内ケースボルト5を介してロックカムが回動し、それによってスライドバーが上下に移動する。スライドバーの上下によりフックが穴部と係合/離脱し、筐体と扉とが施錠/解錠される。
図2を参照して、扉用錠装置1は、上述の構成に加え、電源供給手段30と、制御手段31と、通信手段32と、駆動手段33と、スライダー検出スイッチ34と、ハンドル検出スイッチ35と、タイマ36などを有する。
電源供給手段30は、例えば電気配線やコンセント等を介して扉用錠装置1の駆動電力を供給する手段であるが、電池であってもよい。制御手段31は、各種処理や動作制御を行うためのCPU、及びCPUが実行する制御プログラムを格納するとともに、CPUによるプログラム実行時の作業領域を提供するメモリ(RAM、ROM、ハードディスクドライブ等の記憶装置)等を備え、通信手段32が受信した解除信号に基づき、駆動手段33を制御し、扉用錠装置1の解錠及び施錠などの動作制御を行う手段である。
通信手段32は、外部の機器(例えば、携帯端末など)と通信を行い、当該外部の機器から扉用錠装置1の解除信号を受信する手段である。通信手段32はアンテナ等を含み、例えば、外部の携帯端末(例えば、スマートフォンなど)の情報通信端末との間で近距離無線通信を行う手段である。近距離無線通信は、例えば、Bluetooth(登録商標)の拡張仕様であるBLE(Bluetooth Low Energy(登録商標)規格を用いる通信などであるが、これに限らず、一般的なBluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などに代表される無線LAN、赤外線通信、NFC(Near Field Communication)、WiMAX(登録商標)等の規格の通信を行う手段であってもよい。また扉用錠装置1は、通信手段32を介して外部の機器に所定の情報を送信することもできる。
駆動手段33は、例えば、図3および図4に示すようにモータ37、各種ギヤ38、スライダー検出スイッチ34、ハンドル検出スイッチ35等を含むモータユニットである。モータ37はスライダー20を筒体部4の内部方向へ押し込むように移動させる。スライダー検出スイッチ34は、スライダー20と接触可能に構成され、スライダー20の移動に伴ってON/OFFが切り替わる。また、ハンドル検出スイッチ35はハンドル2(把持部6)の背面側に設けられた凸部6aと接触可能であり、ハンドル2の移動に伴ってON/OFFが切り替わる。駆動手段(モータユニット)33に接続するコネクタ39は、例えば、第1ピンP1と第2ピンP2がそれぞれモータ37の第1端子および第2端子に接続し、第3ピンP3と第4ピンP4がハンドル検出スイッチ35に接続し、第5ピンP5と第6ピンP6がスライダー検出スイッチ34に接続する(図4(b))。
また、タイマ36は、例えば、解除信号を受信し、当該解除信号の認証後にハンドル検出スイッチ35が「ON」になるまでの経過時間を計測する。
本実施形態の扉用錠装置1は、ハンドル2(筒体部4)と、ハンドルケース3およびこれに収納される内ケースボルト5との状態が、係止状態と、係止解除状態と、係止解除待機状態とに変化する。係止状態とは、ハンドル2(筒体部4)がハンドルケース3(内ケースボルト5)から突出(ポップアップ)することが規制された状態であり、係止解除状態とは、ハンドル2(筒体部4)がハンドルケース3(内ケースボルト5)から突出(ポップアップ)することが可能となった状態および突出(ポップアップ)した状態であり、係止解除待機状態とは、ハンドル2(筒体部4)とハンドルケース3(内ケースボルト5)の係止解除が待機されている状態(詳細は後述する)である。
詳細は後述するが、係止解除待機状態は、モータ37の駆動力によりスライダー20がカンヌキ15を押し込もうとしているが、モータ37は駆動力がかかったままスライダー20およびカンヌキ15と共に停止しており、ハンドル2はハンドルケース3からポップアップしない状態である。係止解除待機状態において、操作者によって所定の時間内にハンドル2を筒体部4の後方に押し込むことで係止解除状態となり、ハンドル2はポップアップする。
図5は、ハンドル2およびその筒体部4に収納されるシリンダー錠8と、内ケースボルト5を示す図であり、同図(a)がハンドル2の正面図であり、同図(b)が同図(a)のa-a線断面図であり、同図(c)が内ケースボルト5とハンドル2の左側面図であり、同図(d)が同図(c)のb-b線断面図である。また、同図(e)がシリンダー錠8、カム部10およびスライダー20を筒体部4の後端部(同図(b)の右方向)からみた図であり、同図(f)が同図(e)の右側面図であり、同図(g)が同図(e)の左側面図である。なお、同図に置いてモータユニット33は図示を省略している。
同図(a)、同図(b)、同図(f)および同図(g)に示すように、ハンドル2の筒体部4にはシリンダー錠8とシリンダーリング9が装着される。シリンダーリング9はその中央部に係合孔(ここでは不図示)を有しており、シリンダー錠8の内筒8b後方の軸部をシリンダーリング9の係合孔に挿通してシリンダー錠8をシリンダーリングにねじ込み、その後丸ナットNでねじ込むことでハンドル2に組み込まれる。
シリンダーリング9の後端部にはカム部10が設けられる(同図(e))。またハンドル2にはカム部10と隣接してカンヌキ15が設けられる(同図(d)~同図(g))。カンヌキ15は、ハンドル2の筒体部4と内ケースボルト5を係止し、また係止を解除する。具体的には、同図(c)および同図(d)に示すように筒体部4と内ケースボルト5には、それぞれ貫通孔4a、5aが設けられている。扉用錠装置1が施錠された状態にて、貫通孔4a、5aにはいずれも、カンヌキ15が貫通する。これにより、筒体部4と内ケースボルト5とが係合される。なお、貫通孔4a、5aはいずれも、その前後方向の長さ(同図(c)の左右方向の長さ)がカンヌキ15の前後方向の長さ(幅、同図(c)の左右方向の長さ)より大きく設けられ、カンヌキ15は貫通孔4a、5aに貫通した状態で、ハンドル2の前後方向の移動に伴って、前後方向(同図(c)の左右方向)に僅かに移動可能に構成されている。
また、同図(c)に示すように筒体部4には、ガイドピン40が設けられ、内ケースボルト5にはガイドピン40が摺動可能な長孔5bが設けられる。これにより筒体部4(ハンドル2)は、長孔5bの長さの範囲内で内ケースボルト5に対して前後(同図(c)は左右)方向に摺動自在となる。
更に、同図(d)~同図(g)を参照して、カンヌキ15は、シリンダー錠8の直径方向の端部(この例では下端部)がスライダー20の端部(この例では上端部)と当接可能に構成されている。スライダー20はこの例では上下方向に移動可能に構成され、上方向に移動した場合にカンヌキ15を筒体部4の内部(上方向)に押し込む。また、カンヌキ15は他方の端部(この例では上端部)に当接するカンヌキ付勢手段(例えば、コイルバネ)25によって、スライダー20の押し込み方向とは逆方向の筒体部4の外周に向かって(この例では下方向に)に常時付勢されている。
図6から図8を参照して、本実施形態の扉用錠装置1の施解錠の動作について説明する。図6(a)~同図(j)は、扉用錠装置1の動作を示す図であり、それぞれの下図が正面図、上図が下図のc-c線断面図である。図7は、図5(c)の破線丸印部分の拡大図であり、図7(a)が係止状態の図であり、図7(b)が係止解除待機状態の図であり、図7(c)および同図(d)が係止解除待機状態から係止解除状態に遷移する途中の図である。また図8は、駆動手段(モータユニット33)の状態を示す状態遷移表である。
図6(a)は扉用錠装置1の施錠状態を示す。この場合、ハンドル2の筒体部4はハンドルケース3の筐体部3b(内ケースボルト5)内に収容される。そして、カンヌキ15の下端部(図6では右端部)は筒体部4の貫通孔4aおよび、内ケースボルト5の貫通孔5aから突出し(図5(c)、図7(a))、カンヌキ15が筒体部4と、内ケースボルト5とを係止している。また、内ケースボルト5とレバー11とはハンドルケース3の筐体部3bを前後方向から挟み込む形でネジ止めされており、内ケースボルト5はハンドルケース3に対して回動はできるが前後方向への移動ができない。これにより、ハンドル2(筒体部4)と、内ケースボルト5およびハンドルケース3とは係止状態にある。
係止状態では、筒体部4がコイルバネ7によって、前方(図7の左方)に付勢力Faで付勢され(図1(B)参照)、図7(a)に示すようにカンヌキ15の前方端部15sは内ケースボルト5の貫通孔5aの前方端部壁5asと当接する。そして付勢力Faの垂直抗力に応じて、カンヌキ15の前方端部15sと、貫通孔5aの前方端部壁5asとの間に摩擦力Fdが生じている。また、カンヌキ15は上端部(図7の上方)に当接するカンヌキ付勢手段25(図5(d)~同図(g)参照)によって、筒体部4の外周に向かって(図7の例では下方向に)付勢力Fbで常時付勢されている。
また図8(1)に示すように、施錠状態ではコネクタ39の第1ピンP1および第2ピンP2のいずれも「Low」が入力されることで、モータ37の第1端子および第2端子のいずれも「Low」が入力され、スライダー20は停止している。なお、モータ37に「Low」が入力された場合、モータ37の回転は停止する。また、ハンドル検出スイッチ35およびスライダー検出スイッチ34のいずれも、スイッチが押し込まれた状態(「ON」)である。
扉用錠装置1が解錠信号を受信し制御手段31が認証すると、制御手段31はモータ37の駆動手段33に解錠命令を送信する。これにより駆動手段33はモータ37の第1端子に「High」、第2端子に「Low」を入力して正転(CW:出力軸側から見て時計方向の回転)を指示する(図8(2))。モータ37が正転すると、図6(b)に示すように、スライダー20が筒体部4の内側方向(図6左方向)に移動する。これによりスライダー20の先端部にはカンヌキ15の端部が直接的に接触(当接)し、スライダー20が移動してカンヌキ15を筒体部4の内側に押し込もうとする。ここで、本実施形態では、モータ37の駆動によるスライダー20の押し込み力Fcは、カンヌキ付勢手段25の付勢力Fbより大きい力に設定されている。なおモータ37の正転によってスライダー20が移動を開始するとスライダー検出スイッチ34の押し込みが解除され、スライダー検出スイッチ34は「OFF」となる。
スライダー20が予め設定された最大量(例えば、5mm)、筒体部4の内側方向(図6の左方向)に移動した場合には、カンヌキ15の下端部(図6では右端部)は内ケースボルト5の貫通孔5aよりも内側(図6では左方向)に没入する。
しかしながら、本実施形態では、モータ37の正転によりスライダー20を押し込もうとしている状態(図6(b))においては、図7(b)に示すように、ハンドル2を付勢力Faで前方へ押し出そうとしているコイルバネ7の垂直抗力によって、カンヌキ15の前方端部15sと、貫通孔5aの前方端部壁5asとの間に摩擦力Fdが生じている。
また本実施形態では、この摩擦力Fdとカンヌキ付勢手段25の付勢力(押し込み力)Fbとの合力が、モータ37の駆動によるスライダー20の押し込み力Fcより大きくなるように設定されている(Fb+Fd>Fc)。従って、カンヌキ15の下端部(図7では下端部、図6では右端部)は内ケースボルト5の貫通孔5aよりも内側に没入せず、ハンドル2はハンドルケース3からポップアップしない状態となっている。本実施形態ではこの状態を係止解除待機状態という。係止解除待機状態は、図8(3)に示すように、第1端子(第1ピンP1)に「High」、第2端子(第2ピンP2)に「Low」が入力されているが、カンヌキ15が動かないためモータ37の回転が強制的に停止されている状態である。
そして、図6(c)に示すように、係止解除待機状態において所定時間(例えば、10秒以内)に操作者がハンドル2を筒体部4の後方側(図6では左方向、図6では上方向)に押し込み、図7(c)に示すようにその力Fa´がコイルバネ7の付勢力Faと釣り合うと、筒体部4、すなわちカンヌキ15も後方側(図6左方向)に移動し、カンヌキ15の前方端部15sと、貫通孔5aの前方端部壁5asが離間して両者の間の摩擦力Fdが消失する。
つまり、カンヌキ15に掛かる力はカンヌキ付勢手段25の付勢力Fbと、モータ37の駆動によるスライダー20の押し込み力Fcとなる。そしてカンヌキ付勢手段25の付勢力Fbよりモータ37の駆動によるスライダー20の押し込み力Fcが大きく設定されているため、モータ37によってスライダー20が移動してカンヌキ15を図6上方(図7左方)に押し込み(図7(d))、カンヌキ15と貫通孔4a、5aの係止が解除される。
これにより、筒体部4と内ケースボルト5との係止が解除され、ハンドル2とハンドルケース3の係止も解除される。内ケースボルト5は内周面に前後方向に沿って設けられた長孔5bを有し(図3(c)参照)、筒体部4は、長孔5bに係合する例えば突起状のガイドピン40を有しているため、カンヌキ15がこれらの係止を解除し、操作者がハンドル2の押し込みを解除すると、筒体部4はガイドピン40が長孔5bに係合したままこれにガイドされ、内ケースボルト5に対して前後方向に摺動自在となり、筒体部4はコイルバネ7によって、前方に押されてハンドルケース3(内ケースボルト5)から突出する。つまり、図6(d)に示すようにハンドル2は、ハンドルケース3からポップアップし、係止解除状態となる。
ハンドル2のポップアップにより凸部6aとハンドル検出スイッチ35が非接触となり、当該ハンドル検出スイッチ35が「OFF」となる。
このように、本実施形態において係止解除状態となるのは、解除信号の認証(図8(1))の後の係止解除待機状態において所定時間が経過する前に(例えば、モータ37の正転開始(図8(2))から10秒以内に)、操作者がハンドル2を筒体部4の後方側に押し込んだ場合に限られる。
つまり、タイマ36は、解錠信号の認証後、係止解除待機状態においてハンドル検出スイッチ35が「OFF」になるまで時間を監視する。
そして解錠信号の認証後、例えば、モータ37の正転開始(図8(2))から所定時間内にハンドル2のポップアップによりハンドル検出スイッチ35が「OFF」になった場合(図6(d)、図8(4)で判定が「Y」の場合)は、制御手段31は、駆動手段33に停止命令を送信する。これにより駆動手段33はモータ37の第1端子および第2端子のいずれにも「High」を入力してモータ37の逆転を停止する(ブレーキをかける)(図8(10))。
係止解除状態では、内ケースボルト5の長孔5bと筒体部4のガイドピン40は係合しているため、筒体部4は、周方向の回転についてはハンドルケース3に対して内ケースボルト5と一体的に回転可能となる。内ケースボルト5は、ハンドルケース3に対して前後方向には移動不可であるが、シリンダー錠8の内筒8b(の軸)を中心として回動は可能となっている。つまり、筒体部4およびハンドル2は、内ケースボルト5およびハンドルケース3に対して前後(図では左右)方向に摺動自在となり、ハンドルケース3に対しては、内ケースボルト5と一体となって回転自在となる。
なお、筒体部4に没入したカンヌキ15は、カンヌキ付勢手段25の付勢力で筒体部4の外周方向に付勢されているが、筒体部4が内ケースボルト5から突出することで内ケースボルト5の貫通孔5aの外側には、筒体部4の内壁が存在することとなり、カンヌキ15は外側に突出できず、筒体部4に収納された状態が維持される。
つまりこの状態は、ハンドル2はハンドルケース3からポップアップし、且つ回転可能となっている状態である。そして、ポップアップしたハンドル2を所定方向に回転させると、筒体部4と、これに係合された内ケースボルト5とが回転し、内ケースボルト5の後端に取り付けられているレバー11およびロックカムが回転し、扉ロック機構を駆動させて扉が解錠される。
その後、制御手段31は、駆動手段33に通電停止命令を送信する。駆動手段33は、モータ37の第1端子および第2端子のいずれにも「Low」を入力してモータ37への通電を停止する(図8(11))。これにより扉用錠装置1は施錠状態に戻る(図8(1))。
一方、解除信号の認証(図8(1))の後の係止解除待機状態において所定時間内(例えば、モータ37の正転開始(図8(2))から所定時間内)に操作者によってハンドル2が押し込まれなかった場合は、ハンドル検出スイッチ35が「ON」のままとなる。つまり、例えば、モータ37の正転開始(図8(2))から所定時間が経過した後にハンドル検出スイッチ35が「ON」のままの場合(図8(4)で判定が「N」の場合)には、制御手段31はエラーと判定し(記憶手段(不図示)に設けられたエラーフラグに「1」をセットし)(図8(5))、駆動手段33に停止命令を送信してモータ37の正転を停止させる(ブレーキをかける)(図8(6))。
つまり、例えば、モータ37の正転開始(図8(2))から所定時間が経過した後は、モータ37の正転停止によってスライダー20は押し込まれず、カンヌキ15は内ケースボルト5の貫通孔5aと係合したままとなる。従って、操作者がハンドル2を押し込んでも、ハンドル2はポップアップせず、施錠状態(ハンドル2とハンドルケース3の係止状態)に戻る。
ハンドル2がポップアップせずにモータ37が正転を停止した場合も(図8(6))、制御手段31は、駆動手段33に施錠命令を送信する。これにより駆動手段33はモータ37の第1端子に「Low」、第2端子に「High」を入力して、モータ37を逆転(CCW:出力軸側から見て反時計方向に回転)させる(図8(7))。モータ37の逆転により、スライダー20は、押し込み方向と逆方向に移動し、施錠状態の位置に戻る。
なお、タイマ36は、例えば、制御手段31による施錠命令(図8(7))の開始からスライダー検出スイッチ34が「ON」になるまで時間を監視する。そして、所定時間の経過前に(例えば、施錠命令(図8(7))の開始から3秒以内に)スライダー検出スイッチ34が「ON」になった場合(図8(8)の判定で「Y」の場合)には、スライダー20が正常動作した(スライダー20が正常に施錠状態の位置に復帰した)として、図8(10)に示すように、制御手段31は、駆動手段33に停止命令を送信する。これにより駆動手段33はモータ37の第1端子および第2端子のいずれにも「High」を入力してモータ37の逆転を停止する(ブレーキをかける)。その後、制御手段31は、駆動手段33に通電停止命令を送信する。これにより駆動手段33はモータ37の第1端子および第2端子のいずれにも「Low」を入力してモータ37への通電を停止する(図8(11)。これにより扉用錠装置1は施錠状態に戻る(図8(1))。
一方、例えば、制御手段31による施錠命令(図8(7))の開始から所定時間内にスライダー検出スイッチ34が「ON」にならない(「OFF」のままである)場合(図8(8)の判定で「N」の場合)、制御手段31はスライダー20が何らかの問題で正常な施錠位置まで戻らないと判定し、エラーと判定する(エラーフラグに「1」をセットする)(図8(9))。
そして、図8(10)に示すように、制御手段31は、駆動手段33に停止命令を送信する。これにより駆動手段33はモータ37の第1端子および第2端子のいずれにも「High」を入力してモータ37の逆転を停止する(ブレーキをかける)。その後、制御手段31は、駆動手段33に通電停止命令を送信する。駆動手段33は、モータ37の第1端子および第2端子のいずれにも「Low」を入力してモータ37への通電を停止する(図8(11))。これにより扉用錠装置1は施錠状態に戻る(図8(1))。
なお、エラーフラグは図8(1)の施錠状態に戻るとクリア(「0」がセット)される。
扉用錠装置1の施錠時には操作者が扉を閉めて、ハンドル2を逆方向に回転させて元に戻し、図6(f)に示すように付勢手段(コイルバネ)7の付勢力に抗してハンドル2を後方に押し込む。これにより、筒体部4の貫通孔4aと内ケースボルト5の貫通孔5aの位置がカンヌキ15の位置で重畳すると、コイルバネ25の付勢力によって自動的にカンヌキ15が筒体部4の外周方向に突出し、下端部が貫通孔4a、5aに挿通されて係合する。これにより、再び筒体部4は、内ケースボルト5およびハンドルケース3に係止され(係止状態となり)、扉用錠装置1が施錠される。
図6(g)~同図(j)は非常時の解錠方法を示している。本実施形態の扉用錠装置1は、解錠信号の受信により電子的(電気的)に解錠されるものであるが、停電などの非常時においては筒体部4に収容されたシリンダー錠8により手動で解錠できる。
シリンダー錠8は、ここでは一例としてシリンダーの回転をピン形状のドライバピン及びタンブラーで制御するピンタンブラー錠である。ピンタンブラー錠は、既知のものと同様であるので図示および詳細な説明は省略するが、外筒8cと内筒8bで構成され(図5(b)参照)、内部には2つの筒を横断する複数のドライバピンとタンブラーの組が設置されており、シリンダーの回転をドライバピン及びタンブラーで制御する。
シリンダー錠8の鍵穴8aにキーを差し込んでいない時にはドライバピンがばねに押されて外筒8cと内筒8bの境目に渡って位置するために外筒8cに対して内筒8bが回らない状態となる。一方、キーを差し込んだ場合には、キーの凹凸の山がタンブラーを持ち上げ、内筒8bと外筒8cの境目がドライバピンとタンブラーの境目と一致する(シェアラインが一致する)ため、内筒8bが自由に回転する。
同図(g)は同図(a)と同様の施錠状態(ハンドル2とハンドルケース3の係止状態)である。
そして、同図(h)は、シリンダー錠8の鍵穴8aに正しいキーを挿入して所定方向(例えば、時計回りの方向)に回転させた状態である。キーが回転するとシリンダー錠8の内筒8bが軸を中心に回転する(図5(b))。
これに伴いシリンダー錠8の後部で内筒8bと係合しているカム部10が、例えば時計回りの方向に回転する。図5(e)に示すようにカム部10はカンヌキ15と係合しているため、をカム部10の回転によってカンヌキ15は図示の状態では左方向に移動し、筒体部4に没入する。カンヌキ15が筒体部4に没入すると、上記の正常時の動作と同様に筒体部4と内ケースボルト5との係止が解除される。この場合、カム部10の回転によりカンヌキ15を移動させるので、カンヌキ15と内ケースボルト5との摩擦力Fdとカンヌキ付勢手段25の付勢力(押し込み力)Fbとの合力よりも大きな力をカンヌキ15に与えることができ、筒体部4に没入させることができる。
なお、カム部10の回転によってカンヌキ15が筒体部4に没入させた場合には、ハンドル2とハンドルケース3との係止解除待機状態を経ずに、係止解除状態となる。つまり、ハンドル2の押し込みをすることなく、ハンドル2はハンドルケース3からポップアップする(図8(i))。
ハンドル2がポップアップした後は、正常動作の場合と同様である。すなわち、筒体部4はハンドル2に固定されており、内ケースボルト5は、ハンドルケース3に対して前後方向には移動不可であるが、シリンダー錠8の内筒8bの軸を中心として回動は可能となっている。つまり、カンヌキ15によって筒体部4と内ケースボルト5との係止が解除されると、ハンドル2とハンドルケース3の係止も解除される。そして、筒体部4およびハンドル2は、内ケースボルト5およびハンドルケース3に対して前後(図では左右)方向に摺動自在となり、ハンドルケース3に対しては、内ケースボルト5と一体となって回転自在となる。
カム部10が回転した同図(i)の状態ではキーを抜くことができないため、同図(j)に示すように、キーを例えば反時計回りに回転させて、内筒8bを元の位置に戻し、キーを鍵穴8aから抜く。なお、施錠時の動作は正常動作の場合(同図(f)と同様である。
以上、本実施形態によれば、扉用錠装置1のハンドル2の内部(筒体部4内部)にシリンダー錠8を装着している。従って、従来の非電子式の扉用錠装置を本実施形態の電子式扉用錠装置に交換する場合であっても交換作業を容易に行なうことができ、また、その範囲も最小限に抑えることができる。
具体的には、例えば現在普及している自動販売機などの扉用錠装置においては、ハンドル内の、あるいは外付けのシリンダー錠を備えず、ハンドル、内ケースボルトおよびハンドルケースを有して、ポップアップしたハンドルの回動により内ケースボルトを介してロックカムを回動させて扉ロック機構を駆動する構成や、ハンドルの内部にシリンダー錠を備えた構造(例えば、特許文献1参照)や、ハンドルの外部にシリンダー錠を備える構成(例えば、特許文献2参照)が知られている。
しかしながら、既に設置されている扉用錠装置を、ハンドルの外部にシリンダー錠を備える電子式扉用錠装置に交換する場合には、その作業において制約が多い。具体的には、交換対象の(既設置の)扉用錠装置が、シリンダー錠をハンドル内に内蔵した扉用錠装置外付けで非常解錠用のシリンダー錠の取付を行わなければならず、交換が不可能、あるいは交換作業が複雑かつ広範囲に及ぶ場合がある。
また、既設置の扉用錠装置が外付けのシリンダー錠を有する構成であっても、ハンドルとシリンダー錠の位置関係が、交換する電子式扉用錠装置と異なる場合には、やはり交換が不可能、あるいは交換作業が複雑かつ広範囲に及ぶ場合がある。
さらに、既設置の扉用錠装置がシリンダー錠を有しない場合はそもそも、交換することができない。
これに対し、本実施形態の扉用錠装置1であれば、上記の交換作業が容易且つ最小限の範囲で行なうことができ、交換需要に柔軟に対応することができる。
また、非常時においてシリンダー錠8を利用して解錠する場合、キーの回転に伴ってシリンダー錠8の後端部に設けたカム部10を略直接的に回転させることができる。従って、シリンダー錠8の内筒8bの回転をプレートを介して扉用錠装置に伝達する従来技術と比較してキー(物理キー)の回転に係る力を低減でき、より解錠が容易になる。
さらに、シリンダー錠8の内筒8bの回転を伝達する場合に薄く長いプレートを介在させると、当該プレートには負担が掛かりやすく、変形が生じた場合等にはシリンダー錠による非常解錠ができない恐れもある。しかしながら、本実施形態によればこのようなプレートが不要となるので、このような不具合を回避できる。
<第2実施形態>
図9および図10を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図9は第2実施形態の扉用錠装置1の主要構成を示す分解斜視図である。また、図10は、第2実施形態に係るハンドル2およびその筒体部4に収納されるシリンダー錠8と、内ケースボルト5を示す図であり、同図(a)がハンドル2の正面図であり、同図(b)が同図(a)のd-d線断面図であり、同図(c)が内ケースボルト5とハンドル2の左側面図であり、同図(d)が同図(c)のe-e線断面図である。また、同図(e)がシリンダー錠8、カム部60およびスライダー20を筒体部4の後端部(同図(b)の右方向)からみた図であり、同図(f)が同図(e)の右側面図であり、同図(g)が同図(e)の左側面図である。なお、同図に置いてモータユニット33は図示を省略している。
上記の第1実施形態ではカンヌキ15が1本である例を説明したが、複数本でもよい。
図9および図10では一例として、2本のカンヌキ55(カンヌキ55A,55B)を有する例を示している。この場合、2本のカンヌキ55(カンヌキ55A,55B)は、同一形状のものをシリンダー錠8の内筒8b(の軸)を中心として点対象となるように配置する。筒体部4と内ケースボルト5の貫通孔4a、5aはカンヌキ55A,55Bに対応して、これらの下端部および上端部が挿通可能な位置に設けられる。
また、カム部60の羽根状部10aは、図10(d)~同図(f)に示すように、略円形のものをシリンダー錠8の内筒8b(の軸)を中心として点対象となるように配置する。羽根状部60aにはそれぞれ、カンヌキ55A,55Bが係合する。これ以外の構成は、第1実施形態と同様である。つまり第2実施形態の扉用錠装置1は2本のカンヌキ55A、55Bを有するが、これを移動させるスライダー20は、第1実施形態と同様に1本でよい。
扉用錠装置1の施解錠の動作は、第1実施形態と同様である。すなわち、施錠状態(ハンドル2とハンドルケース3の係止状態)において解錠信号を受信し、認証後にモータ37が駆動して1本のスライダー20を筒体部4の内側方向に押し込む。これによりスライダー20と当接する1本のカンヌキ55Aが筒体部4の内部に押し込まれる。カンヌキ55Aは一方の羽根状部60aと係合しており、カンヌキ55Aの移動(押し込み)に伴いカム部60が例えば、反時計回りに回動する。これにより他方の羽根状部60aが回動し、これに係合する他方のカンヌキ55Bが筒体部4の内部に引き込まれる。このようにカム部60の回動に伴ってカンヌキ55A,55Bが上下に移動可能となるように、本実施形態では円形状の羽根状部60aを上下から挟むように常時当接して挟持する形状としている。
両方のカンヌキ55Bが筒体部4の内部に没入すると、係止解除待機状態となり、解錠信号の受信から所定時間内にハンドル2を押し込むことで係止解除状態となりハンドル2がハンドルケース3からポップアップする。
第2実施形態ではカンヌキ55を複数本設けているので、扉用錠装置1の不正解錠を防ぎ、安全性を高めることができる。加えて、駆動手段33およびスライダー20が動作させるカンヌキ55は1本のみでよいため、(動作させるカンヌキ55が増加することによる)扉用錠装置1の施解錠の制御が複雑になることも回避できる。
尚、本発明の扉用錠装置1は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、本発明の扉用錠装置1は、自動販売機の扉を施解錠するものに限らず、金庫や倉庫等の扉を施解錠するものであってもよい。
また、タイマ36が監視する時間について、上記の時間は一例であり、これに限らない。
また、通信手段32は、携帯電話網や衛星通信を利用するものであってもよいし、無線通信に限らず有線通信であってもよい。
駆動手段33は、モータユニットに限らず、モータ37の代替手段である既知の駆動源(例えば、ソレノイドなど)を用いたユニットであってもよい。
また、シリンダー錠8がピンタンブラー錠の場合を例に説明したが、これに限らず、例えば、ディスクタンブラー錠やレバータンブラー錠などであってもよい。
また、通信手段32は、解錠信号の受信に加えて、扉用錠装置1における作業者の施錠、解錠などの情報や、扉用錠装置1の状態などを外部の装置(例えば、情報通信端末等)に送信するようにしてもよい。