JP7175235B2 - クエン酸第二鉄水和物の製造方法 - Google Patents
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Description
1)前記減圧乾燥の乾燥温度が5~50℃の範囲で行うこと。
2)前記水溶性有機溶媒が、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、2-ブタノール、t-ブタノール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンから選択される少なくとも1種であること。
3)前記クエン酸第二鉄水和物の湿体100g(100質量部)当たり、前記水溶性有機溶媒を0.3g(0.3質量部)を超え70.0g(70.0質量部)以下の範囲で含有すること。
4)クエン酸第二鉄水和物を、水及び水溶性有機溶媒を含む溶媒と接触させて、クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たり、水を40~56.2g(40~56.2質量部)含有するクエン酸第二鉄水和物の湿体を得、次いで該湿体を0.1~20kPaの範囲で減圧乾燥させること。
水の含有量=湿体中の水分量/{(湿体の質量)-(湿体中の水分量)-(水溶性有機溶媒量)}×100
本発明の製造方法におけるクエン酸第二鉄水和物としては特に制限されることなく、試薬や食品添加物用途として市販されているもの、或いは、公知の方法により製造したものを使用することができる。公知の製造方法の一例としては、特許文献1及び2に記載された方法が挙げられる。具体的には、まず、塩化第二鉄・六水和物を水に溶解させ、次いで、水酸化ナトリウムにより加水分解することによりフェリハイドライト等の水酸化第二鉄を得る。得られた水酸化第二鉄とクエン酸とを水中で反応させ、クエン酸第二鉄水和物を生成する。当該クエン酸第二鉄を含む溶液を、有機溶媒を用いてクエン酸第二鉄水和物を析出させた後、固液分離及び必要に応じて水溶性有機溶媒による分離後の固体の洗浄することによりクエン酸第二鉄水和物の湿体を製造することができる。
本発明の製造方法では、クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たり、水を40~150g(40~150質量部)含有するクエン酸第二鉄水和物の湿体を減圧乾燥する。ここで、クエン酸第二鉄水和物の湿体中に含有する水は、湿体に含有する水分(所謂、自由水)の他に、クエン酸第二鉄に水和する水分(所謂、結合水)が含まれるが、上記水の含有量は、自由水と結合水を合わせた含有量を示す。前記のとおり、湿体中の水の含有量は、カールフィッシャー法により測定できる。また、湿体中のクエン酸第二鉄無水物換算量は、湿体の全重量、水分量、水溶性有機溶媒量を測定し、全重量から水分量と水溶性有機溶媒量を差し引くことにより算出した値を示す。
水の含有量=湿体中の水分量/{(湿体の質量)-(湿体中の水分量)-(水溶性有機溶媒量)}×100
本発明において、湿体中に含まれる水溶性有機溶媒としては、水と任意に混和する有機溶媒であり、具体的には25℃において水100質量部に対する溶解度が20質量部以上の有機溶媒である。上記湿体の製造において、クエン酸第二鉄水和物を含む懸濁液を得る際に使用する水溶性有機溶媒、或いは、固液分離後の洗浄溶媒として水溶性有機溶媒を使用すれば、結果的に湿体中にそれらの溶媒が含有される。水溶性有機溶媒を具体的に例示すると、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール等のケトン類;メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、2-ブタノール、t-ブタノール、アリルアルコール、テトラヒドロフリルアルコール、フルフリルアルコール、プロパギルアルコール等のアルコール類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロピドン、アセトアミド等の含窒素化合物等が挙げられる。何れの溶媒も、試薬や工業用等、特に制限されること無く使用できる。また、これらの溶媒は、単一であっても良く、複数であっても良い。中でも、高純度、高比表面積のクエン酸第二鉄水和物が得られる点、乾燥時の水溶性有機溶媒の低減効率の点から、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、2-ブタノール、t-ブタノール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンがより好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフランがさらに好ましく、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフランが最も好ましい。なお、例えばトルエン等の炭化水素類やクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等の非水溶性有機溶媒は、クエン酸第二鉄水和物に含まれても構わないが、乾燥をより簡便とするためには含まれないことが好ましい。
本発明の製造方法では、上記クエン酸第二鉄水和物の湿体を減圧乾燥する。減圧乾燥における減圧度は、乾燥装置の能力等を勘案して適宜決定すればよいが、乾燥に要する時間また、クエン酸第二鉄水和物の乾燥時の比表面積の低下をより抑制できる点から、減圧度を0.1~20kPaの範囲とすることが好ましく、1~10kPaの範囲で行うことがより好ましく、1~5kPaの範囲で行うことがさらに好ましい。
また、減圧乾燥させる際の乾燥温度としては、5~50℃が好ましく、中でも水溶性有機溶媒の低減効率やクエン酸第二鉄の安定性を考慮すると、10~40℃がより好ましく、15~30℃が最も好ましい。この範囲であれば、乾燥の途中で乾燥状態によって乾燥温度を適宜変更しても良い。
以上のようにして、水溶性有機溶媒が高度に低減されたクエン酸第二鉄水和物の乾燥体を得ることができる。当該クエン酸第二鉄水和物の乾燥体100g(100質量部)当たりに含まれる水溶性有機溶媒の量を0.5g(0.5質量部)以下に低減することができる。本発明は水溶性有機溶媒の低減効果が非常に高いため、水溶性有機溶媒の含有量がより好ましくは0.25g(0.25質量部)以下、さらに好ましくは0.1g(0.1質量部)以下、最も好ましくは0.05g(0.05質量部)以下のクエン酸第二鉄水和物を製造することができる。当該含有量の下限値は0g(0質量部)が望まれるが、実施例に記載の含有量の測定方法における検出限界は0.005g(0.005質量部)(50ppm)程度である。また、本発明のクエン酸第二鉄水和物は、従来の方法で得られる0.5g(0.5質量部)以下の水溶性有機溶媒を含むクエン酸第二鉄水和物と比較して、その純度及び比表面積が高く、好適に医薬品用途して利用できる。
クエン酸第二鉄水和物の水溶性有機溶媒の含有量は以下の条件にて測定した。
装置:ガスクロマトグラフ装置(Agilent Technologies, I
nc.製)
検出器:水素炎イオン化検出器(Agilent Technologies, I
nc.製)
カラム:内径0.53mm、長さ30mのフューズドシリカ管の内面にガスクロマト
グラフィー用ポリエチレングリコールを厚さ1μmで被覆されたもの。
カラム温度:注入後50℃6分、その後毎分40℃で220℃まで昇温し、220℃
で5分間維持する。
カラム圧力:3psi
注入温度:250℃
検出器温度:250℃
キャリヤーガス:ヘリウム
スプリット:1/10
ヘッドスペース加熱温度:90℃
ヘッドスペース加熱時間:30分間
クエン酸第二鉄水和物の水溶性有機溶媒の含有量は、上記条件で測定される水溶性有機溶媒のピーク面積値から、検量線法によりクエン酸第二鉄の質量に対する水溶性有機溶媒の質量の割合である。
クエン酸第二鉄水和物の水分量は、下記条件で測定した。
装置:水分測定装置(三菱化学製)
測定方法:カールフィッシャー滴定容量法
滴定剤:SS-Z(三菱化学製)
溶剤:無水メタノール
試料量:約15mg
水分量は、上記条件にて3回測定した平均値を採用した。
クエン酸第二鉄水和物の純度は以下の条件にて測定した。
装置:液体クロマトグラフ装置(Waters Corporation製)
検出器:紫外吸光光度計(Waters Corporation製)
測定波長:210nm
カラム:内径4.6mm、長さ250mmのステンレス管に、5μmの液体クロマ
トグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルが充填されたもの。
移動相:りん酸二水素ナトリウム12.0gを水2000mLに添加し溶解させた
後、りん酸を加えて、pH2.2に調整した混合液。
流量:毎分1.0mL
カラム温度:30℃付近の一定温度
測定時間:30分
クエン酸第二鉄水和物の純度は、上記条件で測定される全ピーク(鉄及び溶媒由来のピークを除く)の面積値の合計に対するクエン酸のピーク面積値の割合である。
クエン酸第二鉄水和物の比表面積は以下の条件にて測定した。
装置:比表面積測定装置(MicrotracBEL製)
測定方法:定容量式窒素吸着法
試料量:約100mg
前処理温度:40℃
前処理時間:1時間
クエン酸第二水和物の比表面積は、上記条件で窒素の分圧が0.1~0.3の範囲で各分圧での窒素吸着量を測定し、分圧と窒素吸着量からBET法により解析し算出した。
攪拌翼、温度計を取り付けた5Lの四つ口フラスコに、塩化鉄六水和物400.0gと水1600mLを加え攪拌した。次いで、水酸化ナトリウム177.6gと水1600mLから調製した水溶液を0~10℃で3時間かけて滴下した。次いで、0~10℃で1時間撹拌した後、遠心分離により析出物を分離し、水100mLで分離後の析出物を2回洗浄した。次いで、得られた析出物に水2000mLを加え、0~10℃で1時間攪拌した。遠心分離により析出を分離し、水100mLで分離後の析出物を2回洗浄した。さらに、得られた析出物に水2000mLを加え、0~10℃で1時間攪拌した。遠心分離により析出物を分離し、水100mLで分離後の析出物を2回洗浄した。
換算水分量=水分量/(100-アセトンの含有量-水分量)×100
ガラスシャーレ皿に、上記クエン酸第二鉄水和物を入れ、棚式乾燥機で温度:30℃、減圧度:約2kPaにて5時間減圧乾燥した。減圧乾燥後、クエン酸第二鉄水和物(乾燥体)中のアセトンの含有量はクエン酸第二鉄水和物(乾燥体)100g(100質量部)当たり0.5g(0.5質量部)であった。また、クエン酸第二鉄水和物(乾燥体)の水分は20.8%(20.8質量部)であり、純度は98.47%であり、比表面積は52.2m2/gであった。
表1に示すクエン酸第二鉄水和物の湿体を使用し、表1に示す条件で減圧乾燥を行った以外は、実施例1と同様に実施した。得られたクエン酸第二鉄水和物の乾燥体の分析結果を表2に示した。
クエン酸無水物を184.8gを用いた以外は製造例1と同様の条件でクエン酸第二鉄水和物の湿体を製造した。得られたクエン酸第二鉄水和物の湿体中のアセトンの含有量は湿体100g(100質量部)当たり44.3g(44.3質量部)、水分量は15.9g(15.9質量部)であった。クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たりの水の含有量(換算水分量)は、39.9g(39.9質量部)であった。
製造例2で製造したクエン酸第二鉄水和物の湿体を、水及びアセトンを含有する溶媒に分散させた後、固液分離し、湿体100g当たりのアセトンの含有量を48.9g(48.9質量部)、水分量を18.4g(18.4質量部)に調整した。クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たりの水の含有量(換算水分量)は、56.3g(56.3質量部)であった。
製造例2で製造したクエン酸第二鉄水和物の湿体を、水及びアセトンを含有する溶媒に分散させた後、固液分離し、湿体100g当たりのアセトンの含有量を46.3g(46.3質量部)、水分量を12.5g(12.5質量部)に調整した。クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たりの水の含有量(換算水分量)は、30.3g(30.3質量部)であった。
クエン酸無水物を369.6gを用いた以外は製造例1と同様の条件でクエン酸第二鉄水和物の湿体を製造した。得られたクエン酸第二鉄水和物の湿体中のアセトンの含有量は湿体100g(100質量部)当たり47.9g(47.9質量部)、水分量は16.0g(16.0質量部)であった。クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たりの水の含有量(換算水分量)は、44.3g(44.3質量部)であった。
製造例3で製造したクエン酸第二鉄水和物の湿体を、水及びアセトンを含有する溶媒に分散させた後、固液分離し、湿体100g当たりのアセトンの含有量を47.5g(47.5質量部)、水分量を18.8g(18.8質量部)に調整した。クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たりの水の含有量(換算水分量)は、55.8g(55.8質量部)であった。
製造例3で製造したクエン酸第二鉄水和物の湿体を、水及びアセトンを含有する溶媒に分散させた後、固液分離し、湿体100g当たりのアセトンの含有量を40.2g(40.2質量部)、水分量を13.0g(13.0質量部)に調整した。クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たりの水の含有量(換算水分量)は、27.8g(27.8質量部)であった。
Claims (5)
- 水、及び水溶性有機溶媒を含有するクエン酸第二鉄水和物の湿体より、クエン酸第二鉄水和物を得る製造方法であって、
クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たり、水を40~56.2g(40~56.2質量部)含有するクエン酸第二鉄水和物の湿体を、0.1~20kPaの範囲で減圧乾燥することを特徴とするクエン酸第二鉄水和物の製造方法。 - 前記減圧乾燥の乾燥温度が5~50℃の範囲で行う請求項1記載のクエン酸第二鉄水和物の製造方法。
- 前記水溶性有機溶媒が、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、2-ブタノール、t-ブタノール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンから選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のクエン酸第二鉄水和物の製造方法。
- 前記クエン酸第二鉄水和物の湿体100g(100質量部)当たり、前記水溶性有機溶媒を0.3g(0.3質量部)を超え70.0g(70.0質量部)以下の範囲で含有する請求項1~3のいずれか一項に記載のクエン酸第二鉄水和物の製造方法。
- クエン酸第二鉄水和物を、水及び水溶性有機溶媒を含む溶媒と接触させて、クエン酸第二鉄無水物100g(100質量部)当たり、水を40~56.2g(40~56.2質量部)含有するクエン酸第二鉄水和物の湿体を得、次いで該湿体を、0.1~20kPaの範囲で減圧乾燥させる1~4のいずれか一項に記載のクエン酸第二鉄水和物の製造方法。
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