JP2019167305A - クエン酸第二鉄の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 良好な操作性により、クエン酸第二鉄を簡便に得る製造方法を提供する【解決手段】 クエン酸第二鉄を含有する水溶液と、該水溶液に含まれる水100質量部に対し、20〜200容量部の水溶性有機溶媒とを接触させた後に濾過を行うことを特徴とするクエン酸第二鉄の製造方法を提供する。上記水溶性有機溶媒が、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフランから選択される少なくとも1種であることが好ましい。【選択図】 なし

Description

本発明は、新規なクエン酸第二鉄の製造方法に関する。詳しくは、簡便な操作により不純物の除去が可能であり、医薬品原薬として好適に利用できる、高品質なクエン酸第二鉄を工業的に効率的に製造する方法に関する。
クエン酸第二鉄は、三価の鉄である第二鉄、クエン酸、及び、水からなり、C・xFe・yHOの分子式で示される化合物であり、上記x(第二鉄とクエン酸とのモル比率)、及び、y(第二鉄と水とのモル比率)は、共に一定の整数値を採らないとされている。このクエン酸第二鉄は、腎不全患者における高リン酸血症の治療薬として好適に利用できることが知られている(特許文献1又は2参照)。
ここで、クエン酸第二鉄は血中で溶解し、第二鉄イオンがリン酸塩と結合して生じるリン酸第二鉄化合物が消化管内で析出することによって、血中のリン酸塩が体内から除去されること、さらにクエン酸第二鉄由来のクエン酸は重炭酸塩へと変換されることによって腎不全患者の症状が改善することが知られている。
このようなクエン酸第二鉄の製造方法として、特許文献1及び2において、塩化第二鉄・六水和物と水酸化ナトリウム等の塩基とを反応させ、水酸化第二鉄を得、次いで水中で水酸化第二鉄とクエン酸とを反応させ、クエン酸第二鉄を含有する溶液を得、次いで遠心分離や濾過により、該溶液に含まれる不溶物を除去した後、得られた濾液をアセトン等の水溶性有機溶媒に滴下し、クエン酸第二鉄を固体として析出させて製造する方法が開示されている。
一方、特許文献3では、クエン酸第二鉄の製造において、上記クエン酸第二鉄を含有する溶液の濾過を、40〜60℃の比較的高い温度で実施することが開示されている。
特許第4964585号 特許第5944077号 国際公開第2016/162888号パンフレット
上記特許文献記載の製造方法によれば、比表面積が大きなクエン酸第二鉄を製造することができる。しかし、本発明者らの検討により、クエン酸第二鉄を含有する溶液中に含まれる不溶物の除去操作を、加圧濾過により実施した場合、濾過性が著しく悪いために、当該操作に長時間を要することが判明した。従って、工業規模の製造を行う上で、操作性、効率性の点でなお改善の余地があった。一方、特許文献3のように、上記不溶物の除去操作を40〜60℃の比較的高い温度で実施した場合においても、40℃未満で実施する場合と比較して濾過性に顕著な差異は無いばかりか、クエン酸第二鉄が熱に対して不安定であるために、当該操作中に得られるクエン酸第二鉄の純度が低下することが判明した。上記のとおり、クエン酸第二鉄を含有する溶液中に含まれる不要物の除去操作を良好な操作性で行うことが可能なクエン酸第二鉄の製造方法が望まれていた。
即ち、本願発明の目的は、簡便な操作により不純物の除去が可能であり、医薬品原薬として好適に利用できる、高品質なクエン酸第二鉄を工業的に効率的に製造する方法を提供することにある。
上記課題に対し本発明者らは、クエン酸第二鉄を含有する溶液中に含まれる不溶物の濾過方法について鋭意検討を行った。その結果、クエン酸第二鉄を含有する溶液に、一定量の水溶性有機溶媒を含有させることにより、上記不要物の濾過性が顕著に改善されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、クエン酸第二鉄を含有する水溶液と、該水溶液に含まれる水100質量部に対し、20〜200容量部の水溶性有機溶媒とを接触させた後に濾過を行うことを特徴とするクエン酸第二鉄の製造方法である。さらに、本発明は以下の態様を好適に採り得る。
1)前記クエン酸第二鉄が、水酸化第二鉄とクエン酸とを反応させて得られたものであること。
2)前記水溶性有機溶媒が、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフランから選択される少なくとも1種であること。
3)前記濾過を行った後のクエン酸第二鉄を含有する溶液と水溶性有機溶媒とを接触させてクエン酸第二鉄を析出させること。
本発明の製造方法によれば、良好な操作性で、高純度のクエン酸第二鉄を簡便に製造することができる。また、本発明により製造されるクエン酸第二鉄は、不溶性の不純物を含まず、好適に医薬品原薬として使用できる。
本発明は、クエン酸第二鉄を含有する水溶液に、水溶性有機溶媒を該水溶液に含まれる水100質量部に対し、20〜200容量部接触させた後に濾過を行うことを特徴とするクエン酸第二鉄の製造方法である。
(クエン酸第二鉄を含有する水溶液の調製)
本発明において、まず、クエン酸第二鉄を含有する溶液を調製する。当該溶液せしめるクエン酸第二鉄は、公知の方法により製造すれば良く、例えば、特許文献1〜3に記載の方法が挙げられる。具体的には、塩化第二鉄・六水和物を水に溶解させ、次いで、水酸化ナトリウム等の塩基により加水分解反応を行うことにより、水酸化第二鉄を製造できる。当該水酸化第二鉄とクエン酸とを、水中で加熱して反応させることで、クエン酸第二鉄が生成し、クエン酸第二鉄を含有する溶液を製造することができる。
上記製造方法の条件は、特に制限されないが、クエン酸の使用量は、塩化第二鉄1モルに対して、1モル以上5モル未満であることが好ましい。当該範囲のクエン酸を使用することで、クエン酸第二鉄を含む溶液中に、未反応の水酸化第二鉄や過剰なクエン酸が不溶物として含まれないため、クエン酸第二鉄を含む溶液の濾過速度をより高めることができる。さらに、クエン酸第二鉄の収率をより高めることができる。
また、水酸化第二鉄とクエン酸との反応に使用する水の量は、塩化第二鉄・六水和物100質量部に対して、50〜300容量部であることが好ましい。50容量部以上を使用することで、クエン酸第二鉄を含む溶液が適度な粘性を有するため、取り扱い易さや濾過速度の点で好ましい。一方、300容量部以下とすることで、クエン酸第二鉄の収率をより高めることができる。上記の中でも、操作性や収率がより優れる点から、60〜250容量部がより好ましく、70〜200容量部が最も好ましい。
また、上記の方法の他に合成・単離されたクエン酸第二鉄であって、当該クエン酸第二鉄中に不溶性の不純物を含む場合は、本発明によれば当該不溶性の不純物を除去できるため、単に、合成されたクエン酸第二鉄を、水或いはクエン酸水溶液に溶解させることにより、クエン酸第二鉄を含有する水溶液を調製し、本発明の方法に用いても良い。当該方法において、水やクエン酸の使用量はクエン酸第二鉄の溶解性を考慮して適宜決定すれば良いが、クエン酸を使用する場合、その使用量はクエン酸第二鉄1モルに対して、0.05〜1モルが好ましく、水はクエン酸第二鉄100質量部に対して、50〜300容量部であることが好ましい。また、クエン酸第二鉄を溶解させる温度や時間は、水やクエン酸の使用量により異なるため、適宜決定すれば良い。
(水溶性有機溶媒の接触)
本発明において、以上のようにして製造したクエン酸第二鉄を含有する水溶液と、該クエン酸第二鉄含有溶液に含まれる水100質量部に対し、20〜300容量部の水溶性有機溶媒とを接触させる。
本発明において、水溶性有機溶媒の使用量は、クエン酸第二鉄含有溶液に含まれる水100質量部に対して、20〜200容量部である。20容量部未満の場合、クエン酸第二鉄含有溶液中の濾過性の向上効果が低く、本発明の効果が得られない。一方、200容量部を超えて水溶性有機溶媒を使用する場合、生成したクエン酸第二鉄の一部が析出し、濾過操作において析出したクエン酸第二鉄が除去されるため、結果的にクエン酸第二鉄の収量が低下する。また、析出したクエン酸第二鉄により濾過膜の目詰まりが生じ、濾過性が低下する場合もある。上記の中でも、クエン酸第二鉄含有溶液の濾過性がより優れる点から、30〜175容量部がより好ましく、40〜150容量部が最も好ましい。なお、クエン酸第二鉄含有溶液に含まれる水の量は、カールフィッシャー等の方法により測定できる。或いは、クエン酸第二鉄含有溶液の調製に使用した水の量、及び、原料である水酸化第二鉄、或いは、クエン酸第二鉄、或いは/及び、クエン酸に含まれる水の量を合計した値を採用しても良い。
(水溶性有機溶媒の種類)
本発明で使用する水溶性有機溶媒としては、水と任意に混和する有機溶媒であり、具体的には25℃において水100質量部に対する溶解度が20質量部以上の有機溶媒である。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール等のケトン類;メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、2−ブタノール、t−ブタノール、アリルアルコール、テトラヒドロフリルアルコール、フルフリルアルコール、プロパギルアルコール等のアルコール類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロピドン、アセトアミド等の含窒素化合物等が挙げられる。何れの溶媒も、試薬や工業用等、特に制限されること無く使用できる。また、これらの溶媒は、単一であっても良く、複数であっても良い。中でも、より濾過性が向上する点、乾燥時の水溶性有機溶媒の低減効率の点から、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、2−ブタノール、t−ブタノール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンがより好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフランがさらに好ましく、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフランが最も好ましい。
(接触条件)
クエン酸第二鉄を含む水溶液と水溶性有機溶媒とを接触させる方法や設備等は、特に制限されず、公知の方法や設備を使用すれば良いが、クエン酸第二鉄を含む溶液と水溶性有機溶媒とを接触させる際は、発熱を伴うため、局所的に溶液温度が上昇することを防ぐために、クエン酸第二鉄を含む溶液を撹拌しながら水溶性有機溶媒を添加して行うことが好ましい。よって、接触させる設備は、温度計を取り付けることが好ましい。また、当該撹拌操作は、メカニカルスターラー、マグネティックスターラー等を用いて実施すれば良い。
水溶性有機溶媒を添加する際の温度は、クエン酸第二鉄の析出や分解を抑制できる点から、0〜40℃であることが好ましい。添加する時間は、特に制限されないが、溶液温度が上記範囲となるように、溶液温度を見ながら添加する時間を決定することが好ましい。さらに、水溶性有機溶媒を添加した後は、一定時間以上撹拌することが好ましい。なぜなら、水溶性有機溶媒の種類や添加する温度等によっては、添加後に一部のクエン酸第二鉄が析出する場合があるが、一定時間以上撹拌することで、析出したクエン酸第二鉄が再溶解するためである。該撹拌時間は、析出したクエン酸第二鉄が再溶解したことを目視等で確認して適宜決定すれば良いが、通常、10分以上撹拌すれば十分である。
(クエン酸第二鉄を含む溶液の濾過)
本発明において、上記のようにして水溶性有機溶媒と接触させた後、得られたクエン酸第二鉄含有溶液を濾過する。該濾過操作を行う設備等は、クエン酸第二鉄含有溶液に含まれる不溶物を濾別できる設備であれば良い。公知の設備の中から適宜決定すれば良いが、工業規模の製造では、加圧濾過機を使用することが一般的である。加圧濾過機を使用する場合、その材質は、ステンレス、ハステロイ、グラスライニング等、特に制限されない。加圧する気体も、空気や窒素、アルゴン等、特に制限されない。圧力は濾過速度の観点から0.03MPa以上が好ましく、0.05MPa以上がより好ましく、0.1MPa以上が最も好ましい。圧力の上限は、使用する濾過機の耐圧性により決定される。
該濾過操作において使用する濾過膜は、セルロース、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の材質のものを使用できる。また、濾過膜の細孔径は、クエン酸第二鉄含有溶液に含まれる不溶物のサイズを考慮すると、0.1〜10μmが好ましく、さらに濾過速度等を考慮すると、0.15〜5μmがより好ましく、0.2〜2.5μmが最も好ましい。濾過膜の直径は、製造スケールや濾過機のサイズによるため、一概に規定できないが、例えば、クエン酸第二鉄を含む溶液1kgの場合、50〜300mmであることが好ましい。なお、濾過膜は、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
また、上記濾過膜上に濾過助剤を敷き詰めて、濾過操作を実施しても良い。濾過助剤を使用することで、濾過膜の目詰まりを防止し、濾過操作の操作性をより高めることができる。濾過助剤は、特に制限されないが、珪藻土、シリカゲル、酸化アルミニウム、セルロース等が挙げられる。これらは2種以上を組み合わせても良い。濾過助剤の使用量は、濾過機や濾過膜のサイズによるため、一概に規定できないが、濾過助剤の層が0.5〜50cmとなる量であることが好ましい。
該濾過操作を実施する温度は、濾過操作時のクエン酸第二鉄の析出や分解を抑制できる点から0〜40℃が好ましい。中でも、クエン酸第二鉄含有溶液の取り扱い易さや製造されるクエン酸第二鉄の品質を考慮すると、10〜35℃がより好ましく、15〜30℃が最も好ましい。該濾過操作を実施する時間は、製造スケールや濾過機のサイズ等により決定されるため、一概に規定できないが、従来の方法と比較して、本発明の方法によれば濾過速度が約1.5〜10倍に向上する。工業規模の製造においては、このような濾過速度の向上は、製造効率に大きく反映される。
クエン酸第二鉄含有溶液の濾過後、濾過機や濾過膜等にクエン酸第二鉄含有溶液が残存する場合がある。それによるクエン酸第二鉄の収率低下を抑制できる点から、濾過後の濾過機や濾過膜は、水、水溶性有機溶媒、或いは、それらの混合物により洗浄することが好ましい。その使用量は、濾過機のサイズ等を考慮して適宜決定すれば良いが、通常、クエン酸第二鉄含有溶液100質量部に対して、0.01〜20容量部で十分である。
(濾別物)
以上のようにして、クエン酸第二鉄含有溶液を濾過することにより、該溶液に含まれる不溶物が濾別され、不溶物を含まない澄明なクエン酸第二鉄含有溶液を製造することができる。該濾過操作により濾別される不溶物は、微量の塵や埃等の大気由来の異物の他、主に黒色の固体である。濾別物の量は、原料である水酸化第二鉄やクエン酸第二鉄の合成条件、或いは、クエン酸第二鉄を含む溶液の調製条件によるが、例えば、塩化第二鉄・六水和物を使用して製造した水酸化第二鉄を原料として使用し、クエン酸第二鉄含有溶液を調製した場合、通常、塩化第二鉄・六水和物100質量部に対して、0.01〜0.5質量部である。本発明者らによって、該固体の構造解析を検討したところ、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)による分析で鉄を約33%含むことが分かった。一方、赤外分光法(IR)において、クエン酸第二鉄特有のスペクトルを示さなかったことから、上記固体はクエン酸第二鉄とは異なることが分かった。また、X線回折(XRD)において、上記固体は非晶質特有のハローパターンを示し、例えばアカガサイト(β酸化水酸化鉄)やマグネタイト(酸化鉄)等の鉄化合物が示すX線回折パターンとは異なったことから、上記固体は複雑な構造を有する鉄化合物と推察される。以上より、上記固体はクエン酸第二鉄とは異なる鉄化合物であり、クエン酸第二鉄に対して不純物となることから、該固体の除去操作は医薬品用途の高品質なクエン酸第二鉄を製造するためには必須であると考えられる。
(クエン酸第二鉄の製造)
以上のようにして製造された濾過後のクエン酸第二鉄含有溶液は、該溶液を減圧乾燥等により含まれる水や水溶性有機溶媒を除去することで、固体のクエン酸第二鉄とすることができる。或いは、クエン酸第二鉄含有溶液と水溶性有機溶媒とを混合することにより、クエン酸第二鉄を固体として析出させ、次いで、濾過、乾燥を行うことにより、クエン酸第二鉄とすることができる。これらの中でも、製造されるクエン酸第二鉄の比表面積が大きく、且つ、その純度が高い点から、水溶性有機溶媒と混合する方法がより好ましい。
当該水溶性有機溶媒と混合する方法において、使用する水溶性有機溶媒とは、水と任意に混和する有機溶媒であり、具体的には25℃において水100質量部に対する溶解度が20質量部以上の有機溶媒である。即ち、上記のクエン酸第二鉄を含む溶液と接触させる水溶性有機溶媒と同じである。ただし、当該接触に用いた水溶性有機溶媒と同じであっても良く、異なっても良い。さらに、2種以上を用いても良い。中でも、高純度、高比表面積のクエン酸第二鉄が得られる点、乾燥時の水溶性有機溶媒の低減効率の点から、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、2−ブタノール、t−ブタノール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンがより好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフランがさらに好ましく、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフランが最も好ましい。
水溶性有機溶媒の使用量は、クエン酸第二鉄を含む溶液と接触させるに用いた水溶性有機溶媒の量に関わらず、濾過後のクエン酸第二鉄含有溶液に含まれる水100質量部に対して、300〜4000容量部の範囲で適宜決定すれば良い。特に300容量部以上の場合、析出するクエン酸第二鉄の収率、固液分離性等の点で好ましく、4000容量部以下の場合、バッチ当たりの収量の点で好ましい。上記の中でも、クエン酸第二鉄の収率、固液分離性等を考慮すると、350〜4000容量部が好ましく、350〜3500容量部がより好ましく、350〜3000容量部が最も好ましい。
クエン酸第二鉄含有溶液と水溶性有機溶媒との混合条件は、クエン酸第二鉄が析出する条件であれば良く、適宜決定すれば良いが、クエン酸第二鉄の品質や収量等を考慮すると、−20〜50℃の範囲で行うことが好ましく、15分間〜50時間撹拌させることが好ましい。混合後、析出したクエン酸第二鉄は、減圧濾過、加圧濾過、遠心分離等の公知の方法により分離し、次いで、減圧乾燥や通気乾燥等の公知の方法により乾燥することで、クエン酸第二鉄を製造することができる。当該クエン酸第二鉄は、不溶性の不純物を含まず、さらに、純度や比表面積等の品質が良好であるため、好適に医薬品用途として利用できる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等制限されることはない。
(純度)
実施例、比較例のクエン酸第二鉄の純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。当該測定は、以下の条件で実施した。なお、当該条件によるHPLC分析では、クエン酸第二鉄中のクエン酸の保持時間は6.6分付近である。以下の実施例、比較例において、クエン酸第二鉄の純度は、上記条件で測定される全ピーク(鉄及び溶媒由来のピークを除く)の面積値の合計に対するクエン酸のピーク面積値の割合である。
装置:液体クロマトグラフ装置(Waters Corporation製)
検出器:紫外吸光光度計(Waters Corporation製)
測定波長:210nm
カラム:内径4.6mm、長さ250mmのステンレス管に、5μmの液体クロマ
トグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルが充填されたもの。
移動相:りん酸二水素ナトリウム12.0gを水2000mLに添加し溶解させた
後、りん酸を加えて、pH2.2に調整した混合液。
流量:毎分1.0mL
カラム温度:30℃付近の一定温度
測定時間:30分
(水分量)
製造例のクエン酸第二鉄を含有する溶液の水分量は、カールフィッシャー容量滴定法(KF)により測定した。当該測定は、以下の条件で実施した。なお、当該条件によるKF分析では、クエン酸第二鉄を含有する溶液の水分量は、溶液重量に対する溶液中の水重量の割合である。また、当該水分量は、以下の条件で3回測定した平均値を採用した。
装置:水分測定装置(三菱化学製)
測定方法:カールフィッシャー容量滴定法
滴定剤:SS−Z(三菱化学製)
溶剤:無水メタノール
試料量:約15mg
(比表面積)
実施例、比較例のクエン酸第二鉄の比表面積は、定容量式窒素吸着法により測定した。当該測定は、以下の条件で実施した。当該条件で窒素の分散圧が0.1〜0.3の範囲で各分散圧での窒素吸着量を測定し、分散圧と窒素吸着量からBET法により解析し、比表面積を算出した。
装置:比表面積測定装置(MicrotracBEL製)
測定方法:定容量式窒素吸着法
試料量:約100mg
前処理温度:40℃
前処理時間:1時間
製造例(クエン酸第二鉄を含有する溶液の調製)
以下の実施例、及び比較例に用いるクエン酸第二鉄を含有する溶液は、以下の方法により製造した。
攪拌翼、温度計を取り付けた5Lの四つ口フラスコに、塩化第二鉄六水和物400.0g(1480mmol)と水1600mLを加え攪拌した。次いで、水酸化ナトリウム177.6g(4440mmol)と水1600mLから調製した水溶液を0〜10℃で3時間かけて滴下した。次いで、0〜10℃で1時間撹拌した後、遠心分離により析出物を分離し、水100mLで分離された析出物を2回洗浄した。次いで、得られた析出物と水2000mLを加え、0〜10℃で1時間攪拌した。遠心分離により結晶を分離し、水100mLで結晶を2回洗浄し、水酸化第二鉄の湿体993.2gを得た。
攪拌翼、温度計を取り付けた5Lの四つ口フラスコに、クエン酸無水物369.6g(1924mmol)と水480mLを加え攪拌した。次いで、水酸化第二鉄の湿体993.2gを加え、20〜30℃で30分間撹拌した。さらに、80℃付近まで加温し、75〜85℃で2時間撹拌した。25℃付近まで冷却し、クエン酸第二鉄を含有する溶液1840.5gを得た。当該溶液の水分量を測定したところ、65.4%であった。
実施例1
攪拌翼、温度計を取り付けた500mLの四つ口フラスコに、製造例1で得られたクエン酸第二鉄を含有する溶液184.1g(塩化第二鉄六水和物40.0g(148mmol)スケール)を加え攪拌し、25℃付近に調温した。次いで、アセトン120mL(クエン酸第二鉄を含有する溶液に含まれる水の量は120gであったため、当該水100質量部に対して、100容量部)を5分間かけて加えた。その後、25℃付近で30分間撹拌した。直径47mm、細孔径1μmの濾紙を取り付けたステンレス鋼の加圧濾過機に、得られた溶液278.2gを充填した。窒素により、加圧濾過機を0.1MPaに加圧し、濾過を実施した。全量の溶液が濾過されるに要した時間は、6分40秒間であり、平均濾過速度は41.8g/分であった。濾液の重量は276.8gであり、30℃で15時間減圧乾燥した後の濾別物の重量は0.05gであった。次いで、水4mLを用いて、濾過機を2回洗浄し、洗浄液8.6gを得た。
攪拌翼、温度計を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、アセトン714mL(濾液に含まれる水の量は119gであったため、当該水100質量部に対して、600容量部)を加え、次いで、20〜30℃で30分間かけて得られた濾液及び洗浄液を滴下した。20〜30℃で1時間撹拌した後、遠心分離により析出物を分離し、アセトン40mLで結晶を2回洗浄した。得られた湿体を、30℃で15時間減圧乾燥し、クエン酸第二鉄35.2gを得た。得られたクエン酸第二鉄の窒素吸着法によるBET比表面積は29.6m/gであり、HPLC純度は98.25%であった。
実施例2〜6
加圧濾過の前に加えたアセトンの量、或いは、濾過助剤としてラヂオライトを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施した。条件と結果を表1に示した。
Figure 2019167305
実施例7
攪拌翼、温度計を取り付けた500mLの四つ口フラスコに、クエン酸無水物8.8g(46mmol)と水68mLを加え攪拌した。次いで、市販のクエン酸第二鉄40.0g(152.1mmol(分子量262.96として))を少しずつ加えた後、80℃付近まで加温し、75〜85℃で2時間撹拌した。25℃付近まで冷却し、クエン酸第二鉄を含有する溶液116.2gを得た。当該溶液の水分量を測定したところ、58.6%であった。次いで、アセトン68mL(クエン酸第二鉄を含有する溶液に含まれる水の量は68gであったため、当該水100質量部に対して、100容量部)を5分間かけて加えた。その後、25℃付近で30分間撹拌した。直径47mm、細孔径1μmの濾紙を取り付けたステンレス鋼の加圧濾過機に、得られた溶液169.4gを充填した。窒素により、加圧濾過機を0.1MPaに加圧し、濾過を実施した。全量の溶液が濾過されるに要した時間は、4分30秒間であり、平均濾過速度は37.6g/分であった。濾液の重量は168.8gであり、濾別物の重量は0.01gであった。次いで、水4mLを用いて、濾過機を2回洗浄し、洗浄液8.3gを得た。
攪拌翼、温度計を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、アセトン408mL(濾液に含まれる水の量は68gであったため、当該水100質量部に対して、600容量部)を加え、次いで、20〜30℃で30分間かけて得られた濾液及び洗浄液を滴下した。20〜30℃で1時間撹拌した後、遠心分離により析出物を分離し、アセトン40mLで結晶を2回洗浄した。得られた湿体を、30℃で15時間減圧乾燥し、クエン酸第二鉄34.8gを得た。得られたクエン酸第二鉄の窒素吸着法によるBET比表面積は78.4m/gであり、HPLC純度は99.33%であった。
比較例1〜2
加圧濾過の前にアセトンを加えなかった、或いは、加えたアセトンの量を変えたこと以外は、実施例1と同様にして実施した。条件と結果を表2に示した。
Figure 2019167305

Claims (4)

  1. クエン酸第二鉄を含有する水溶液と、該水溶液に含まれる水100質量部に対し、20〜200容量部の水溶性有機溶媒とを接触させた後に濾過を行うことを特徴とするクエン酸第二鉄の製造方法。
  2. 前記クエン酸第二鉄が、水酸化第二鉄とクエン酸とを反応させて得られたものである請求項1クエン酸第二鉄の製造方法。
  3. 前記水溶性有機溶媒が、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフランから選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載のクエン酸第二鉄の製造方法。
  4. 前記濾過を行った後のクエン酸第二鉄を含有する溶液と水溶性有機溶媒とを接触させてクエン酸第二鉄を析出させる請求項1〜3のいずれか一項に記載のクエン酸第二鉄の製造方法。
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JP2012162522A (ja) * 2011-01-18 2012-08-30 Japan Tobacco Inc β酸化水酸化鉄を実質的に含まないクエン酸第二鉄
JP2018500308A (ja) * 2014-12-17 2018-01-11 バイオフォア インディア ファーマシューティカルズ プライベート リミテッド 有機鉄化合物を合成するための改良された方法

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