JP7173911B2 - ヨウ化芳香族化合物の製造方法 - Google Patents

ヨウ化芳香族化合物の製造方法 Download PDF

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本発明は、ヨウ化芳香族化合物の製造方法に関する。
芳香環の所定の位置にヨウ素が導入された芳香族化合物のヨウ化物(ヨウ化芳香族化合物)は、例えば、医薬品中間体、農薬中間体、電子中間体材料等の用途で、広く利用されている。
従来においては、芳香族化合物のヨウ素化反応は、例えば、硫酸を用いた条件で行われていた(例えば、非特許文献1参照)。
Liebigs Ann. Chem., 634, 84 (1960)
しかしながら、このような方法では、反応基質として特定の芳香族化合物を用いた場合は、優れた選択性、収率で反応が進行するものの、他の多くの芳香族化合物(反応基質)では、満足のいく選択性、収率を達成することができない等の問題点があることを本発明者は見出していた。また、原料である芳香族化合物(反応基質)の種類によって、このような問題が顕著に発生していた。
本発明の目的は、ヨウ素の導入位置の位置選択性が高く、目的とするヨウ化化合物(ヨウ化芳香族化合物)を高い収率で得ることができるヨウ化芳香族化合物の製造方法を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のヨウ化芳香族化合物の製造方法は、多孔質物質としての平均細孔径が5.0Å以上9.0Å以下であるゼオライトの存在下、反応基質としての3-フェニルプロピルアセテートおよび3-フェニル-1-プロパノールよりなる群から選択される少なくとも1種である芳香族化合物と、下記式(2)、下記式(3)、下記式(4)および下記式(5)よりなる群から選択される1種または2種以上である特定ヨウ素化剤とを反応させることを特徴とする。
Figure 0007173911000001
Figure 0007173911000002
Figure 0007173911000003
Figure 0007173911000004
本発明のヨウ化芳香族化合物の製造方法では、前記反応基質に対する前記特定ヨウ素化剤の使用量(モル比)は、1.01以上1.50以下であることが好ましい。
本発明のヨウ化芳香族化合物の製造方法では、前記ゼオライト中におけるSiO/Al比(モル比)は、4以上90以下であることが好ましい。
本発明のヨウ化芳香族化合物の製造方法では、前記多孔質物質の使用量は、反応基質100質量部に対して15質量部以上150質量部以下であることが好ましい。
本発明のヨウ化芳香族化合物の製造方法では、反応温度が5℃以上80℃以下であることが好ましい。
本発明のヨウ化芳香族化合物の製造方法では、反応時間が1時間以上48時間以下であることが好ましい。
本発明によれば、ヨウ素の導入位置の位置選択性が高く、目的とするヨウ化芳香族化合物を高い収率で得ることができるヨウ化芳香族化合物の製造方法を提供することができる。特に、多孔質物質の存在下、反応基質としての1置換のベンゼン環を有する芳香族化合物と、式(1)で示される部分構造を含む環式構造を有するNヨウ化アミド化合物又はNヨウ化イミド化合物である特定ヨウ素化剤とを反応させる場合、選択的にp位の水素をヨウ素で置換することができる。
本発明の製造方法を用いて製造されるヨウ化芳香族化合物(好ましくは、p-モノヨウ化芳香族化合物)は、医薬品中間体、農薬中間体、電子材料中間体等の各種の用途での有用性が特に高い化合物である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[ヨウ化芳香族化合物の製造方法]
まず、本発明のヨウ化芳香族化合物の製造方法について説明する。
本発明のヨウ化芳香族化合物の製造方法は、多孔質物質の存在下、反応基質としての芳香族化合物と、下記式(1)で示される部分構造を含む環式構造を有するNヨウ化アミド化合物又はNヨウ化イミド化合物である特定ヨウ素化剤とを反応させるヨウ素化工程を有することを特徴とする。
Figure 0007173911000005
このような構成により、ヨウ素の導入位置の位置選択性が高く、目的とするヨウ化芳香族化合物を高い収率で得ることができるヨウ化芳香族化合物の製造方法を提供することができる。また、目的とするヨウ化芳香族化合物以外の化合物の生成を効果的に防止することができるため、後処理として精製処理を行う場合であっても、当該処理を容易に行うことができる。
特に、多様な反応基質(芳香族化合物)について、広く、上記のような優れた効果が得られる。また、従来の方法では、満足のいく結果が得られなかった反応基質(例えば、3-フェニルプロピルアセテート、3-フェニル-1-プロパノール、ベンジルアルコール、トルエン、ヨードベンゼン等)を含む所定の反応基質について、ヨウ素の導入位置のp位位置選択性が特に高く、目的とするヨウ化芳香族化合物の収率を特に優れたものとすることができる。
このような優れた効果は、多孔質物質と所定の化学構造を有する特定ヨウ素化剤とを組み合わせることにより得られるものであって、これらのうちの少なくとも一方を用いなかったり、他の物質で置換したりした場合には、満足のいく結果が得られない。
例えば、多孔質物質を用いなかった場合には、ヨウ素化反応がほとんど進行しない。
また、前記のような部分構造を有する特定ヨウ素化剤を用いず、他のヨウ素化剤を用いた場合には、ヨウ素化反応がほとんど進行しないか、ヨウ素の導入位置の選択性(p-選択性)が低下する。
また、多孔質物質の代わりに、硫酸を用いた場合には、通常、ヨウ素の導入位置の選択性(p-選択性)が著しく低下する。
また、前記のような部分構造を有する特定ヨウ素化剤を用いず、他のヨウ素化剤を用いた場合には、通常、反応基質の転化率やヨウ素の導入位置の選択性(p-選択性)が著しく低下する。なお、本明細書において、転化率とは、反応基質として用いた芳香族化合物の物質量をX[mol]、ヨウ素化工程での芳香族化合物の消費量(原料としての芳香族化合物の物質量とヨウ素化工程終了時に残存する芳香族化合物の物質量との差)をXA’[mol]としたとき、(XA’/X)×100で示される値のことをいう。
なお、ヨウ化芳香族化合物(特に、p-モノヨウ化芳香族化合物)は、医薬品中間体、農薬中間体、電子材料中間体等の各種の用途での有用性が特に高い化合物である。これに対し、同じハロゲン化芳香族化合物でも、塩化芳香族化合物、臭化芳香族化合物等は、ヨウ化芳香族化合物に比べ、カップリング反応における反応性が低いため、中間体としての用途における有用性が低い化合物である。
また、特定ヨウ素化剤の代わりに、当該特定ヨウ素化剤のヨウ素原子を他のハロゲン原子で置き換えたハロゲン化剤を用いた場合には、好適に反応が進行しない。より具体的には、特定ヨウ素化剤を用いた場合、イオン的な反応が好適に進行するのに対し、当該特定ヨウ素化剤のヨウ素原子を他のハロゲン原子で置き換えたハロゲン化剤を用いた場合には、ラジカル的な反応が進行してしまい、重合体や副生成物が生じやすい。
<ヨウ素化工程>
前述したように、ヨウ素化工程では、多孔質物質の存在下、反応基質としての芳香族化合物と、上記式(1)で示される部分構造を含む環式構造を有するNヨウ化アミド化合物又はNヨウ化イミド化合物である特定ヨウ素化剤とを反応させる。
[芳香族化合物(反応基質)]
反応基質としての芳香族化合物は、分子内に芳香環構造を有するものであればいかなるものであってもよく、無置換の芳香族化合物であってもよいし、芳香環に置換基が導入された化合物であってもよい。前記置換基は、1分子内に1個または複数個導入されていてもよい。前記置換基は、直鎖状構造、分岐鎖状構造、環状構造等いかなる構造のものであってもよい。また、前記置換基は、前記芳香環を構成する複数の原子を橋渡しする構造のものであってもよい。また、芳香族化合物は、分子内に複数個の芳香環構造を有するものであってもよい。このような場合、複数個の芳香環構造は、少なくとも1個の原子を介して結合していてもよいし、これらの芳香環構造同士が直接共有結合により結合していてもよい。
反応基質としての芳香族化合物が備える芳香環は、炭化水素環であってもよいし、複素環であってもよい。
反応基質としての芳香族化合物が備える芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、ペリレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、プリン環、ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、シンノリン環、プテリジン環、クロメン環、イソクロメン環、アクリジン環、キサンテン環、カルバゾール環等が挙げられる。
中でも、反応基質は、1置換のベンゼン環を有する芳香族化合物であるのが好ましい。
1置換のベンゼン環を有する芳香族化合物を反応基質とする場合は、ヨウ素の導入位置の選択性(p-選択性)、目的とするヨウ化芳香族化合物の収率をより高いものとすることができる。
すなわち、反応基質が1置換のベンゼン環を有するエステル化合物である場合、多孔質物質の空孔(細孔)内の水酸基との水素結合により、芳香族化合物が所定の向きで保持しやすくなるとともに、特定ヨウ素化剤と好適な位置関係をとることができると考えられ、ヨウ素の導入位置の選択性(p-選択性)、目的とするヨウ化芳香族化合物の収率をより高いものとすることができる。このような効果は、多孔質物質として、後に詳述するようなゼオライトを用いた場合に、より顕著に発揮される。
反応基質としての芳香族化合物の具体例としては、例えば、3-フェニルプロピルアセテート、3-フェニル-1-プロパノール、ベンジルアルコール、アニソール、フェノール、トルエン、アニリン、ビフェニル、ヨードベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン等が挙げられる。なお、反応基質としては、単一の芳香族化合物を用いてもよいし、複数種の芳香族化合物を組み合わせて用いてもよい。
[特定ヨウ素化剤]
特定ヨウ素化剤は、上記式(1)で示される部分構造を含む環式構造を有するNヨウ化アミド化合物又はNヨウ化イミド化合物である。特定ヨウ素化剤としては、単一の化合物を用いてもよいし、複数の化合物を用いてもよい。
上記式(1)で示される構造を含む部分構造としては、例えば、下記式(6)、下記式(7)等が挙げられる。
Figure 0007173911000006
Figure 0007173911000007
特定ヨウ素化剤が上記式(6)で示される部分構造を有するものであると、反応基質との反応性をより好適なものとすることができ、ヨウ素の導入位置の選択性(p-選択性)、目的とするヨウ化芳香族化合物の収率をより高いものとすることができる。また、このような好適な反応性を示す反応基質の範囲をより広いものとすることができる。
特に、上記式(6)で示される構造を含む部分構造としては、例えば、下記式(8)等が挙げられる。
Figure 0007173911000008
特定ヨウ素化剤が上記式(8)で示される部分構造を有するものであると、反応基質との反応性をさらに好適なものとすることができ、ヨウ素の導入位置の選択性(p-選択性)、目的とするヨウ化芳香族化合物の収率をさらに高いものとすることができる。また、このような好適な反応性を示す反応基質の範囲をさらに広いものとすることができる。
特定ヨウ素化剤中において、上記式(1)で示される部分構造を含む環構造は、特に限定されず、いかなる大きさであってもよいが、5員環以上7員環以下であるのが好ましく、5員環以上6員環以下であるのがより好ましく、5員環であるのがさらに好ましい。
これにより、多孔質物質の空孔(細孔)内において、より確実に、反応基質と好適な位置関係をとることができると考えられ、ヨウ素の導入位置の選択性(p-選択性)、目的とするヨウ化芳香族化合物の収率をより高いものとすることができる。また、このような好適な反応性を示す反応基質の範囲をより広いものとすることができる。このような効果は、多孔質物質として、後に詳述するようなゼオライトを用いた場合に、より顕著に発揮される。
特定ヨウ素化剤全体の分子構造は、特に限定されないが、特定ヨウ素化剤は、下記式(2)、下記式(3)、下記式(4)および下記式(5)よりなる群から選択される1種または2種以上であるのが好ましい。
Figure 0007173911000009
Figure 0007173911000010
Figure 0007173911000011
Figure 0007173911000012
これにより、多孔質物質の空孔(細孔)内において、さらに確実に、反応基質と好適な位置関係をとることができると考えられ、ヨウ素の導入位置の選択性(p-選択性)、目的とするヨウ化芳香族化合物の収率をさらに高いものとすることができる。また、このような好適な反応性を示す反応基質の範囲をさらに広いものとすることができる。このような効果は、多孔質物質として、後に詳述するようなゼオライトを用いた場合に、さらに顕著に発揮される。
また、上記式(2)、上記式(3)、上記式(4)、上記式(5)で示される化合物は、いずれも、分子状のヨウ素(I)のような昇華性がなく、低毒性であるため取り扱いが容易であるほか、強い求電子性により、温和な条件でヨウ素化反応を行うことができる。また、ヨウ素化反応の進行とともに生じる脱ヨウ素化した環式構造を有するアミド化合物又はイミド化合物は、多孔質物質の空孔(細孔)内への残留が少なく、反応後、水洗処理により容易に回収することができる。また、脱ヨウ素化した環式構造を有するアミド化合物又はイミド化合物を一塩化ヨウ素等にて、ヨウ素化することにより、環式構造を有するNヨウ化アミド化合物又はNヨウ化イミド化合物である特定ヨウ素化剤へと再生し、ヨウ素化剤としての再使用を容易に行うことができる。
反応基質に対する特定ヨウ素化剤の使用量(モル比)は、1.01以上1.50以下であるのが好ましく、1.02以上1.35以下であるのがより好ましく、1.03以上1.20以下であるのがさらに好ましい。
これにより、ヨウ素化工程での反応速度、ヨウ素化工程における選択率、目的とするヨウ化芳香族化合物の収率を、いずれも、より高いものとすることができる。また、必要以上に過剰の特定ヨウ素化剤を用いないため、省資源やコスト低減の観点からも有利であり、ヨウ素化工程後に精製処理を行う場合に、当該処理を容易に行うことができる。
[多孔質物質]
多孔質物質は、細孔を有するものであればよく、多孔質物質の平均細孔径は、特に限定されないが、5.0Å以上9.0Å以下であるのが好ましく、5.5Å以上6.8Å以下であるのがより好ましく、5.9Å以上6.5Å以下であるのがさらに好ましい。
これにより、多孔質物質の細孔内に、反応基質としての芳香族化合物および特定ヨウ素化剤が所定の向きで侵入しやすくなるとともに、より確実に反応基質と特定ヨウ素化剤とが好適な位置関係をとることができると考えられ、ヨウ素の導入位置の選択性(p-選択性)が向上するとともに、目的とするヨウ素化反応の反応速度をより高めることができる。このような効果は、特定ヨウ素化剤が、上記式(2)、上記式(3)、上記式(4)および上記式(5)よりなる群から選択される1種または2種以上である場合に、より顕著に発揮される。また、多孔質物質の劣化をより効果的に防止することができ、例えば、多孔質物質をより好適にリサイクルすることができる。
多孔質物質は、反応基質が侵入できる程度の細孔を有していればよく、例えば、ゼオライト、リン酸アルミニウム、結晶性シリカチタン、スメクタイト等の結晶性層状化合物等を用いることができるが、特に、ゼオライトであるのが好ましい。
ゼオライトは、反応基質が反応する場としての細孔を有するだけでなく、水素イオン(H)の供給源としても機能し、全体としての反応効率をより優れたものとすることができる。また、ゼオライトは、比較的安価で、容易かつ安定的に入手が可能な多孔質物質であるため、ヨウ化芳香族化合物の安定的な生産やヨウ化芳香族化合物の生産コストの低減の観点からも有利である。
ゼオライト中におけるSiO/Al比(モル比)は、4以上90以下であるのが好ましく、6以上70以下であるのがより好ましく、10以上45以下であるのがさらに好ましい。
これにより、細孔内の酸点が増加すると考えられ、反応速度をより高めることができる。
ゼオライトとしては、例えば、A型、L型、Y型、X型、β型、フェリエライト、MCM-22、ZSM-5、モルデナイト等、各種のものを用いることができるが、β型を用いるのが好ましい。
なお、ヨウ素化工程では、単一種の多孔質物質を用いてもよいし、複数種の多孔質物質を組み合わせて用いてもよい。
また、本工程で用いる反応基質100質量部に対する多孔質物質の使用量は、5質量部以上150質量部以下であるのが好ましく、10質量部以上100質量部以下であるのがより好ましく、15質量部以上70質量部以下であるのがさらに好ましい。
これにより、ヨウ素化反応をより好適に進行させ、反応基質の転化率をより高いものとしつつ、本工程終了後に、多孔質物質の細孔内に、目的とするヨウ化芳香族化合物が残存し、ヨウ化芳香族化合物の回収率が低下することをより効果的に防止することができる。また、ヨウ化芳香族化合物の回収が容易となる。
[溶媒]
ヨウ素化工程は、例えば、気相反応であってもよいが、液相反応であるのが好ましい。
これにより、ヨウ素化反応をより好適に進行させることができるとともに、安価でありふれた装置、設備を好適に用いることができ、かつ、反応条件を温和なものとすることができるため、ヨウ化芳香族化合物の製造コストの低減、安全性の向上等の観点からも好ましい。
本工程では、反応基質、特定ヨウ素化剤の少なくとも一部を溶解する溶媒を用いてもよい。
これにより、反応基質と特定ヨウ素化剤とをより好適に混合することができ、これらを多孔質物質の細孔内においてより好適に反応させることができる。
溶媒としては、各種の有機溶媒、無機溶媒等を用いることができ、例えば、酢酸等の酸性化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、メタノール等のアルコール化合物、無水酢酸等の酸無水物、N、N-ジメチルホルムアミド等のアミド化合物、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ジオキサン等のエーテル化合物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、酢酸、アセトニトリル、メタノールおよび無水酢酸よりなる群から選択される1種または2種以上を用いるのが好ましい。
これにより、ヨウ素の導入位置の選択性(p-選択性)、目的とするヨウ化芳香族化合物の収率をより高いものとすることができる。
また、無水酢酸等の酸無水物を用いると、例えば、反応基質が当該酸無水物に対応する酸成分のエステル構造を有する場合に、ヨウ素化工程でエステル分解等の副反応が進行することを好適に防止することができる。また、ヨウ素化工程でエステル分解した場合でも、酸無水物による再エステル化反応を好適に進行させることができ、目的とするヨウ化芳香族化合物の収率をより優れたものとすることができる。
また、無水酢酸等の酸無水物を用いると、例えば、反応基質が水酸基を有する化合物(アルコール化合物)である場合に、反応基質のヨウ素化反応とともに、エステル化反応を好適に進行させることができ、エステル構造を有するヨウ化芳香族化合物を好適に得ることができる。
本工程での溶媒の使用量は、多孔質物質、反応基質および特定ヨウ素化剤の合計量100質量部に対し、50質量部以上500質量部以下であるのが好ましく、80質量部以上400質量部以下であるのがより好ましく、100質量部以上300質量部以下であるのがさらに好ましい。
これにより、反応基質と特定ヨウ素化剤とをさらに好適に混合することができ、これらを多孔質物質の細孔内においてさらに好適に反応させることができる。
[その他の成分]
本工程では、上記以外の成分を用いてもよい。
このような成分としては、例えば、特定ヨウ素化剤以外のヨウ素化剤、反応触媒、無機酸、有機酸、無機塩、有機塩、ハロゲン化金属化合物等が挙げられる。ただし、特定ヨウ素化剤以外のヨウ素化剤の使用量は、モル当量換算で、特定ヨウ素化剤の使用量よりも少ないのが好ましく、より具体的には、特定ヨウ素化剤の使用量の10%以下であるのが好ましい。
[反応条件]
以下、ヨウ素化工程での詳細な反応条件について説明する。
本工程での反応温度は、特に限定されないが、5℃以上80℃以下であるのが好ましく、10℃以上75℃以下であるのがより好ましく、20℃以上60℃以下であるのがさらに好ましい。
これにより、反応基質や特定ヨウ素化剤等の変性、分解等を効果的に防止しつつ、反応原料のエネルギー状態を高めることができ、ヨウ素化反応をより好適に進行させることができる。
本工程での反応時間は、特に限定されないが、1時間以上48時間以下であるのが好ましく、2時間以上36時間以下であるのがより好ましく、5時間以上30時間以下であるのがさらに好ましい。
これにより、目的とするヨウ化芳香族化合物の収率をより優れたものとすることができるとともに、目的とするヨウ化芳香族化合物の生産性の向上の観点からも有利である。
<精製工程>
本発明のヨウ化芳香族化合物の製造方法は、前述した以外の工程を有してもよい。このような工程としては、ヨウ素化工程の後工程が挙げられる。ヨウ素化工程の後工程としては、例えば、反応生成物を含む混合物に対して精製処理を施す精製工程等が挙げられる。
精製工程としては、例えば、ろ過、デカンテーション等による多孔質物質の除去、エバポレーター等を用いた溶媒等の成分の留去、分液処理、再結晶、蒸留、各種クロマトグラフィー等による処理等が挙げられる。
好適な精製工程の例は、ヨウ素化工程後の反応生成物が溶解した組成物に抽出溶媒と場合により水を加えて振盪、分液処理し、抽出溶媒層を濃縮後、冷却することにより、目的とするヨウ化芳香族化合物(p-モノヨウ化芳香族化合物)を再結晶させる方法である。
抽出溶媒としては、n-ヘプタン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素等を用いることができる。
また、ヨウ素化工程後の組成物(反応生成物が溶解した組成物)を冷却することにより、目的とするヨウ化芳香族化合物(p-モノヨウ化芳香族化合物)を好適に析出させることができる。
すなわち、前述したように、本発明によれば、ヨウ素化工程で、目的としない副生成物の生成を抑制しつつ、目的とするヨウ化芳香族化合物(p-モノヨウ化芳香族化合物)を高い選択性でかつ高い転化率で合成することができるため、精製処理の前の段階でも、他の異性体等の含有率に比べて、目的とするヨウ化芳香族化合物(p-モノヨウ化芳香族化合物)の含有率が特に高い。
本発明では、目的とするヨウ化芳香族化合物(p-モノヨウ化芳香族化合物)を、他の異性体等や未反応成分から、比較的温和な条件で、容易かつ効率よく分離することができる。より具体的には、抽出溶媒層もしくはヨウ素化工程後の組成物(反応生成物が溶解した組成物)を冷却する際に、その冷却温度を極端に低くしなくても、目的とするヨウ化芳香族化合物を選択的に効率よく析出させることができる。
目的とするヨウ化芳香族化合物を析出させる際の冷却温度は、例えば、-25℃以上-1℃以下であるのが好ましく、-15℃以上-2℃以下であるのがより好ましく、-10℃以上-3℃以下であるのがさらに好ましい。
なお、目的とするヨウ化芳香族化合物を析出させる際、冷却とともに又は冷却に代えて、そのヨウ化芳香族化合物についての貧溶媒を用いてもよい。
また、ヨウ素化工程の後工程としては、例えば、ヨウ素化工程により得られた反応生成物としてのヨウ化芳香族化合物を原料とする他の化学反応工程を行ってもよい。このような他の化学反応工程は、ヨウ素化工程と連続的に行ってもよく、例えば、ヨウ素化工程と他の化学反応工程とを同一の反応容器内で行ってもよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の実施例中の処理、測定で、温度条件を示していないものについては、室温(23℃)で行った。
[ヨウ素化剤と反応性との関係の検討]
(実施例A1)
まず、下記式(2)で示される特定ヨウ素化剤、および、反応基質としての下記式(9)で示される3-フェニルプロピルアセテートを用意した。
Figure 0007173911000013
Figure 0007173911000014
次に、ナスフラスコに、前記反応基質、特定ヨウ素化剤、溶媒としての酢酸およびゼオライトを、所定の割合で入れ、25℃で30時間撹拌することにより、ヨウ素化反応を進行させた(ヨウ素化工程)。ここで、反応基質に対する特定ヨウ素化剤の使用量(モル比)は、1.10となるようにした。また、酢酸の使用量は、前記反応基質100質量部に対し、270質量部とし、ゼオライトの使用量は、前記反応基質100質量部に対し、28質量部とした。また、ゼオライト(多孔質物質)としては、平均細孔径が6Åで、SiO/Al比(モル比)が18であるH-β型のものを用いた。ヨウ素化工程後、ゼオライトをろ過分離し、ろ過液に水およびn-ヘキサンを加え分液処理した。ここで、反応基質に対する水の使用量は、前記反応基質100質量部に対し、370質量部、n-ヘキサンの使用量は370質量部とした。n-ヘキサン層を分液処理した後、-5℃で再結晶精製し、純度99%の3-(p-ヨードフェニル)-1-プロピルアセテートを取得した(精製工程)。
ヨウ素化工程終了直後に、ナスフラスコから混合物の一部を採取し、ガスクロマトグラフィーによる分析を行い、転化率、選択率(反応基質として用いた芳香族化合物の消費量(原料としての芳香族化合物の物質量とヨウ素化工程終了時に残存する芳香族化合物の物質量との差)をXA’[mol]、ヨウ素化工程終了時における全ヨウ化芳香族化合物の物質量(ただし、ヨウ素の導入位置は限定せず、o体、m体も含む)をX[mol]としたとき、(X/XA’)×100で示される値)、p-選択率(ヨウ素化工程終了時におけるp-モノヨウ化芳香族化合物の物質量をXPI[mol]、ヨウ素化工程終了時における全ヨウ化芳香族化合物の物質量(ただし、ヨウ素の導入位置は限定せず、o体、m体も含む)をX[mol]としたとき、(XPI/X)×100で示される値)、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率((XPI/XA’)×100で示される値)および収率(転化率と(XPI/XA’)との積で示される値)を評価した。
(実施例A2)
特定ヨウ素化剤を下記式(3)で示されるものに変更した以外は、前記実施例A1と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。
Figure 0007173911000015
(実施例A3)
特定ヨウ素化剤を下記式(4)で示されるものに変更し、反応時間を7時間に変更した以外は、前記実施例A1と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。
Figure 0007173911000016
(実施例A4)
特定ヨウ素化剤を下記式(5)で示されるものに変更し、反応温度を60℃、反応時間を2時間に変更した以外は、前記実施例A1と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。
Figure 0007173911000017
(実施例A5~A7)
反応温度、反応時間を表1に示すようにした以外は、前記実施例A1と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。
(比較例A1)
特定ヨウ素化剤の代わりに一塩化ヨウ素(ICl)を用い、反応時間を25時間に変更した以外は、前記実施例A1と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。
これらの実施例および比較例についてのヨウ素化工程の各種条件および評価結果を表1にまとめて示す。なお、表1中、上記式(2)で示される化合物を「DIH」、上記式(3)で示される化合物を「NIS」、上記式(4)で示される化合物を「NISac」、上記式(5)で示される化合物を「NIPht」と示した。
Figure 0007173911000018
表1から明らかなように、本発明では、高い転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率、収率で、目的とするヨウ化芳香族化合物(p-モノヨウ化芳香族化合物)を得ることができた。これに対し、比較例では、満足のいく結果が得られなかった。
[当量数と反応性との関係の検討]
(実施例B1)
まず、下記式(3)で示される特定ヨウ素化剤、および、反応基質としての下記式(9)で示される3-フェニルプロピルアセテートを用意した。
Figure 0007173911000019
Figure 0007173911000020
次に、ナスフラスコに、前記反応基質、特定ヨウ素化剤、溶媒としての酢酸およびゼオライトを、所定の割合で入れ、60℃で7時間撹拌することにより、ヨウ素化反応を進行させた(ヨウ素化工程)。ここで、反応基質に対する特定ヨウ素化剤の使用量(モル比)は、1.00となるようにした。また、酢酸の使用量は、前記反応基質100質量部に対し、270質量部とし、ゼオライトの使用量は、前記反応基質100質量部に対し、28質量部とした。また、ゼオライト(多孔質物質)としては、平均細孔径が6Åで、SiO/Al比(モル比)が18であるH-β型のものを用いた。
ヨウ素化工程終了直後に、ナスフラスコから混合物の一部を採取し、ガスクロマトグラフィーによる分析を行い、転化率、選択率(反応基質として用いた芳香族化合物の消費量(原料としての芳香族化合物の物質量とヨウ素化工程終了時に残存する芳香族化合物の物質量との差)をXA’[mol]、ヨウ素化工程終了時における全ヨウ化芳香族化合物の物質量(ただし、ヨウ素の導入位置は限定せず、o体、m体も含む)をX[mol]としたとき、(X/XA’)×100で示される値)、p-選択率(ヨウ素化工程終了時におけるp-モノヨウ化芳香族化合物の物質量をXPI[mol]、ヨウ素化工程終了時における全ヨウ化芳香族化合物の物質量(ただし、ヨウ素の導入位置は限定せず、o体、m体も含む)をX[mol]としたとき、(XPI/X)×100で示される値)、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率((XPI/XA’)×100で示される値)および収率(転化率と(XPI/XA’)との積で示される値)を評価した。
(実施例B2~B4)
特定ヨウ素化剤の使用量を表1に示すようにした以外は、前記実施例B1と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。
これらの実施例について、反応基質に対する特定ヨウ素化剤の使用量および評価結果を表2にまとめて示す。
Figure 0007173911000021
表2から明らかなように、本発明では、高い転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率、収率で、目的とするヨウ化芳香族化合物(p-モノヨウ化芳香族化合物)を得ることができた。特に、反応基質に対する特定ヨウ素化剤の使用量の割合が所定の範囲内の値であると、これらのバランスが特に優れていた。
[溶媒・反応基質の種類と反応性との関係の検討]
(実施例C1)
まず、下記式(2)で示される特定ヨウ素化剤、および、反応基質としての下記式(9)で示される3-フェニルプロピルアセテートを用意した。
Figure 0007173911000022
Figure 0007173911000023
次に、ナスフラスコに、前記反応基質、特定ヨウ素化剤、溶媒としての酢酸およびゼオライトを、所定の割合で入れ、60℃で7時間撹拌することにより、ヨウ素化反応を進行させた(ヨウ素化工程)。ここで、反応基質に対する特定ヨウ素化剤の使用量(モル比)は、1.10となるようにした。また、酢酸の使用量は、前記反応基質100質量部に対し、270質量部とし、ゼオライトの使用量は、前記反応基質100質量部に対し、28質量部とした。また、ゼオライト(多孔質物質)としては、平均細孔径が6Åで、SiO/Al比(モル比)が18であるH-β型のものを用いた。
ヨウ素化工程終了直後に、ナスフラスコから混合物の一部を採取し、ガスクロマトグラフィーによる分析を行い、転化率、選択率(反応基質として用いた芳香族化合物の消費量(原料としての芳香族化合物の物質量とヨウ素化工程終了時に残存する芳香族化合物の物質量との差)をXA’[mol]、ヨウ素化工程終了時における全ヨウ化芳香族化合物の物質量(ただし、ヨウ素の導入位置は限定せず、o体、m体も含む)をX[mol]としたとき、(X/XA’)×100で示される値)、p-選択率(ヨウ素化工程終了時におけるp-モノヨウ化芳香族化合物の物質量をXPI[mol]、ヨウ素化工程終了時における全ヨウ化芳香族化合物の物質量(ただし、ヨウ素の導入位置は限定せず、o体、m体も含む)をX[mol]としたとき、(XPI/X)×100で示される値)、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率((XPI/XA’)×100で示される値)および収率(転化率と(XPI/XA’)との積で示される値)を評価した。
(実施例C2、C3)
溶媒の種類を表1に示すようにした以外は、前記実施例C1と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。また、実施例C3については、OH体(エステルの加水分解物)を含む数値で評価した。
(実施例C4~C15)
反応基質の種類を表3に示すものに変更するとともに、溶媒の種類、反応温度、反応時間を表3に示すようにした(実施例C8では、さらに、反応基質に対する特定ヨウ素化剤の使用量を1.02モル当量となるようにした)以外は、前記実施例C1と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。
これらの実施例についてのヨウ素化工程の各種条件および評価結果を表3にまとめて示す。なお、表3中、上記式(9)で示される3-フェニルプロピルアセテートを「RS1」、下記式(10)で示される3-フェニル-1-プロパノールを「RS2」、下記式(11)で示されるベンジルアルコールを「RS3」、下記式(12)で示されるアニソールを「RS4」、下記式(13)で示されるトルエンを「RS5」、下記式(14)で示されるアニリンを「RS6」、下記式(15)で示されるヨードベンゼンを「RS7」、下記式(16)で示されるビフェニルを「RS8」、下記式(17)で示されるフェノールを「RS9」と示した。
Figure 0007173911000024
Figure 0007173911000025
Figure 0007173911000026
Figure 0007173911000027
Figure 0007173911000028
Figure 0007173911000029
Figure 0007173911000030
Figure 0007173911000031
Figure 0007173911000032
表3から明らかなように、本発明では、各種の反応基質において、いずれも、高い転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率、収率で、目的とするヨウ化芳香族化合物(p-モノヨウ化芳香族化合物)を得ることができた。特に、酢酸、アセトニトリルを用いた場合に、特に優れた結果が得られた。
[多孔質物質と反応性との関係の検討]
(実施例D1)
まず、下記式(2)で示される特定ヨウ素化剤、および、反応基質としての下記式(9)で示される3-フェニルプロピルアセテートを用意した。
Figure 0007173911000033
Figure 0007173911000034
次に、ナスフラスコに、前記反応基質、特定ヨウ素化剤、溶媒としての酢酸およびゼオライトを、所定の割合で入れ、60℃で7時間撹拌することにより、ヨウ素化反応を進行させた(ヨウ素化工程)。ここで、反応基質に対する特定ヨウ素化剤の使用量は、1.10モル当量となるようにした。また、酢酸の使用量は、前記反応基質100質量部に対し、540質量部とし、ゼオライトの使用量は、前記反応基質100質量部に対し、60質量部とした。また、ゼオライト(多孔質物質)としては、平均細孔径が6Åで、SiO/Al比(モル比)が18であるH-β型のものを用いた。
ヨウ素化工程終了直後に、ナスフラスコから混合物の一部を採取し、ガスクロマトグラフィーによる分析を行い、転化率、選択率(反応基質として用いた芳香族化合物の消費量(原料としての芳香族化合物の物質量とヨウ素化工程終了時に残存する芳香族化合物の物質量との差)をXA’[mol]、ヨウ素化工程終了時における全ヨウ化芳香族化合物の物質量(ただし、ヨウ素の導入位置は限定せず、o体、m体も含む)をX[mol]としたとき、(X/XA’)×100で示される値)、p-選択率(ヨウ素化工程終了時におけるp-モノヨウ化芳香族化合物の物質量をXPI[mol]、ヨウ素化工程終了時における全ヨウ化芳香族化合物の物質量(ただし、ヨウ素の導入位置は限定せず、o体、m体も含む)をX[mol]としたとき、(XPI/X)×100で示される値)、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率((XPI/XA’)×100で示される値)および収率(転化率と(XPI/XA’)との積で示される値)を評価した。
(実施例D2、D3)
ゼオライトとして、表4に示すように、SiO/Al比(モル比)の条件が異なるものを用いた以外は、前記実施例D1と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。
(実施例D4、D5)
ゼオライトとして、表4に示すような条件のH-ZSM-5を用いた以外は、前記実施例D1と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。
(実施例D6)
ゼオライトとして、表4に示すような条件のH-モルデナイトを用いた以外は、前記実施例D1と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。
(実施例D7、D8)
ゼオライトとして、表4に示すような条件のH-Y型のものを用いた以外は、前記実施例D1と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。
(実施例D9~D11)
ゼオライト(多孔質物質)の使用量を表4に示すように変更した以外は、前記実施例D1と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。
(比較例D1)
ゼオライト(多孔質物質)を用いず、反応温度、反応時間を表4に示すようにした以外は、前記実施例D1と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。
(比較例D2)
水素イオンの供給源としてゼオライト(多孔質物質)を用いず、その代わりに硫酸を用い、反応温度を表4に示すようにした以外は、前記実施例D1と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。本比較例での硫酸の使用量は、前記反応基質100質量部に対し、38質量部となるようにした。
(比較例D3)
ヨウ素化剤として上記式(3)で示される化合物を用い、反応時間を30時間に変更した以外は、前記比較例D2と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。
(比較例D4~D8)
反応基質の種類を表4に示すものに変更するとともに、溶媒の種類、反応温度、反応時間を表4に示すようにした以外は、前記比較例D2と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。
(比較例D9~D11)
ヨウ素化剤として一塩化ヨウ素(ICl)を用い、反応基質の種類を表4に示すものに変更するとともに、溶媒の種類、ゼオライトの使用量、反応時間を表4に示すようにした以外は、前記実施例D1と同様の処理を行い、ヨウ素化工程終了時における転化率、選択率、p-選択率、p-モノヨウ化芳香族化合物選択率および収率を評価した。
これらの実施例および比較例についてのヨウ素化工程の各種条件および評価結果を表4にまとめて示す。なお、表4中、上記式(2)で示される化合物を「DIH」、上記式(3)で示される化合物を「NIS」、上記式(9)で示される3-フェニルプロピルアセテートを「RS1」、上記式(10)で示される3-フェニル-1-プロパノールを「RS2」、上記式(11)で示されるベンジルアルコールを「RS3」上記式(12)で示されるアニソールを「RS4」、上記式(13)で示されるトルエンを「RS5」、上記式(14)で示されるアニリンを「RS6」、上記式(15)で示されるヨードベンゼンを「RS7」、上記式(16)で示されるビフェニルを「RS8」、上記式(17)で示されるフェノールを「RS9」と示した。
Figure 0007173911000035
表4から明らかなように、本発明の実施例では、高い転化率、高い選択率、高いp-選択率、高いp-モノヨウ化芳香族化合物選択率、高い収率で、目的とするヨウ化芳香族化合物(p-モノヨウ化芳香族化合物)を得ることができた。特に、好ましい条件の多孔質物質を用いた場合に、特に優れた結果が得られた。これに対し、比較例に示されるように、多孔質物質を用いなかった場合や、特定ヨウ素化剤を使用しなかった場合では、目的物の収率は低下した。
本発明のヨウ化芳香族化合物の製造方法は、多孔質物質の存在下、反応基質としての芳香族化合物と、上記式(1)で示される部分構造を含む環式構造を有するNヨウ化アミド化合物又はNヨウ化イミド化合物である特定ヨウ素化剤とを反応させるヨウ素化工程を有する。
本発明のヨウ化芳香族化合物の製造方法は、ヨウ素の導入位置の位置選択性が高く、目的とするヨウ化芳香族化合物を高い収率で得ることができるものであり、産業上の利用可能性を有する。
本発明において製造されるヨウ化芳香族化合物(p-モノヨウ化芳香族化合物)は、医薬品中間体、農薬中間体、電子材料中間体等の各種の用途での有用性が特に高い化合物である。

Claims (6)

  1. 多孔質物質としての平均細孔径が5.0Å以上9.0Å以下であるゼオライトの存在下、反応基質としての3-フェニルプロピルアセテートおよび3-フェニル-1-プロパノールよりなる群から選択される少なくとも1種である芳香族化合物と、下記式(2)、下記式(3)、下記式(4)および下記式(5)よりなる群から選択される1種または2種以上である特定ヨウ素化剤とを反応させることを特徴とするヨウ化芳香族化合物の製造方法。
    Figure 0007173911000036
    Figure 0007173911000037
    Figure 0007173911000038
    Figure 0007173911000039
  2. 前記反応基質に対する前記特定ヨウ素化剤の使用量(モル比)は、1.01以上1.50以下である請求項1に記載のヨウ化芳香族化合物の製造方法。
  3. 前記ゼオライト中におけるSiO/Al比(モル比)は、4以上90以下である請求項1または2に記載のヨウ化芳香族化合物の製造方法。
  4. 前記多孔質物質の使用量は、反応基質100質量部に対して15質量部以上150質量部以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載のヨウ化芳香族化合物の製造方法。
  5. 反応温度が5℃以上80℃以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載のヨウ化芳香族化合物の製造方法。
  6. 反応時間が1時間以上48時間以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載のヨウ化芳香族化合物の製造方法。
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