JP7172410B2 - 化粧シート及び化粧板 - Google Patents

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本発明は、高温多湿下での耐久性に優れた化粧シート及び化粧板に関する。
化粧シートを基材の少なくとも一方の面に貼り合わせた化粧板は、建物外装材や浴室の壁材などの用途では、高温多湿に対する耐久性(耐湿熱性)が要求される。化粧シートに意匠を付与する絵柄層は、一般にはポリオレフィンやポリエステルなどの基材層に、バインダ樹脂と顔料を含むインキを印刷することで形成されている。
従来、絵柄層のバインダ樹脂として、硝化綿、セルロース、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステルなどが用いられている(例えば、特許文献1)。
絵柄層のバインダ樹脂として、耐湿熱性が要求される用途においては加水分解基を持たないアクリル樹脂を用いることができるが、化粧板を加工する際に、絵柄層に割れや白化が生じやすい問題があった。
特許第4737722号公報
本発明は上述の問題点に対して、耐湿熱性とともに加工性に優れた化粧シート及び化粧板を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る化粧シートは、ポリカーボネートジオール、ポリアルキレングリコールおよびポリイソシアネートを構成要素として含むウレタン樹脂をバインダ樹脂に用いた絵柄層が基材層に積層されているとともに、前記ウレタン樹脂の前記構成要素として、さらにネオペンチルグリコールを含んでいる
また、本発明の一態様に係る化粧板は、前述した化粧シートと、化粧シートが少なくとも一方の面に貼り合わされた基材と、を備えている。
本発明によれば、耐湿熱性とともに加工適性に優れた化粧シート及び化粧板を提供することができる。
本発明に係る化粧板を示す模式的な断面図である。
次に、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
[化粧シート及び化粧板の構成]
図1に示すように、本発明に係る実施形態(以下、本実施形態)の化粧シート10は、基材層11と、絵柄層12と、接着層13と、透明樹脂層14と、表面保護層15と、がこの順で積層されている。
また、本実施形態の化粧板20は、基材21の一方の面に、接着層22と、化粧シート10と、がこの順で積層されている。
[基材層]
基材層11は、ポリオレフィンないしポリエステルが好適に用いられ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの既存材料から任意に選択可能である。
基材層11は,絵柄層12との密着性を補うために、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等の表面処理を施してもよい。
[絵柄層]
絵柄層12は、ポリカーボネートジオール、ポリアルキレングリコール、ネオペンチルグリコール及びポリイソシアネートを構成要素として含むウレタン樹脂をバインダ樹脂に用いた絵柄インキを、基材層11に印刷することで形成されている。
ポリカーボネートジオールは、ウレタン原料として一般に用いられるポリオールであり、耐加水分解性に優れるポリウレタンを得ることができるが、建材用途では特に低温において柔軟性が不足する場合がある。このポリカーボネートジオールを絵柄層12に適用すると、建材加工時のシートの変形に追従できずに割れや白化が生じる場合がある。
ポリアルキレングリコールは、ポリエーテル構造を有し、ポリカーボネートに対し耐加水分解性に劣るが柔軟性に優れる。本実施形態では、ポリアルキレングリコールをポリカーボネートジオールと併用することで、基材層11への密着性と加工性を両立させている。
ポリアルキレングリコールの具体的な材料として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどがあるが、疎水性が大きいポリテトラメチレングリコールが、高温多湿に対する耐久性(耐湿熱性)の観点から好ましい。
ネオペンチルグリコールは、絵柄層12のウレタン樹脂に含まれることで耐湿熱性が向上する。
ウレタン樹脂は、公知技術であるポリオールとポリイソシアネートの付加重合反応により合成できる。ウレタン樹脂の末端は、通常は水酸基ないしアミンで封止されたイソシア基であり、末端を水酸基とする場合は、絵柄インキにイソシアネートなどの硬化剤を配合することで絵柄層を硬化させることができる。
そして、ポリカーボネートジオール及びポリアルキレングリコールは、市販の各種材料から分子量などの観点より適宜選択して用いることができる。また、ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートおよびその水添物などを用いることができる。
ウレタン樹脂の硬化に用いる硬化剤は特に限定されるものではく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートおよびその水添物、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその水添物などを含む市販の硬化剤から適宜選択して用いることができる。
絵柄層12は、バインダ樹脂以外の成分として顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、光安定剤など各種添加剤などを用いることができる。顔料としては、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等が挙げられる。絵柄層12を設ける方法は特に限定さるものではなく、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インキジェット印刷など通常の印刷方法を用いることができる。
絵柄層12を印刷形成した基材層11に透明樹脂層14を接合する方法は、特に限定されるものではなく、必要に応じて接着層13を介した熱ラミネート、押出ラミネート、ドライラミネート、サンドラミネートなどの各種ラミネート手法を用いることができる。
[接着層]
接着層13及び接着層22は、特に限定されるものではなく、ウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系などの樹脂材料から適宜選択しインキ化した材料を、グラビアコート、マイクログラビアコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコートなど通常の塗布方法を用いて形成される。
[透明樹脂層]
透明樹脂層14は特に限定されるものではないがポリオレフィンが好適に用いられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンや、各種αオレフィンコポリマ(プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの共重合体)が用いられる。この透明樹脂層14は、必要に応じて紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤を配合してもよい。また、透明樹脂層14の作製方法は特に限定されるものではなく、カレンダー成膜や押出成膜など通常の方法を用いることができる。
また、透明樹脂層14は意匠性を付与するために表面凹凸を設けてもよい。凹凸を設ける方法としては、例えば透明樹脂層14を押出成形した後に熱エンボス加工を施す方法、押出形成時に凹凸を設けた冷却ロールを用い押出し成形と同時にエンボス加工を施す方法がある。
[表面保護層]
表面保護層15は、化粧シート10に耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性などの機能を付与するために設けられ、材料としては特に限定されるものではないが、ウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系などの樹脂材料より適宜選択して用いられる。この表面保護層15は、必要に応じて、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤を配合してもよい。
表面保護層15の形成方法は、特に限定されるものではなく、前述の材料を塗液化したものをグラビアコート、マイクログラビアコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコートなど通常の方法で塗布した後、熱硬化、紫外線硬化など材料に適合した方法で硬化させることで形成される。
次に、化粧シート10を構成する層の厚さについて述べる。
基材層11は印刷作業性、コストなどを考慮して20μm~150μm、絵柄層は0.5~10μm、接着層13は1μm~20μm、透明樹脂層14は20μm~200μm、表面保護層15は3μm~20μmとすることが望ましく、化粧シート10の総厚は45μm~250μmの範囲内とすることが好適である。
[化粧シート及び化粧板の効果]
次に、本実施形態の化粧シート10の効果について述べる。
化粧シート10の絵柄層12は、ポリカーボネートジオールと、基材層11への密着性と加工性を両立させるポリアルキレングリコール及びポリイソシアネートを構成要素として含むウレタン樹脂をバインダ樹脂に用いた絵柄インキが基材層11に積層されている。このため、化粧シート10を加工する際には、絵柄層12に割れや白化が生じにくくなり、化粧シート10の加工性を良好とすることができる。
また、絵柄層12のウレタン樹脂の構成要素として、さらにネオペンチルグリコールを含むことで、化粧シート10の耐湿熱性を向上させることができる。
また、絵柄層12のウレタン樹脂の構成要素であるポリアルキレングリコールをポリテトラメチレングリコールとすることで、化粧シート10の耐湿熱性を向上させることができる。
また、基材層11がポリオレフィン、或いはポリエステルで形成されていることから、化粧シート10の廃棄時に燃焼してもダイオキシンが発生せず、環境負荷を抑制することができる。
また、絵柄層12に透明樹脂層14が積層されていることで、絵柄層12の耐磨耗性を確保することができるとともに、絵柄層12の模様を際立たせることができる。
さらに、透明樹脂層14に表面保護層15が積層されていることで、化粧シート10に耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性の機能を付与することができる。
一方、化粧シート10を基材21の一方の面に貼り合わせた化粧板20も、加工性、耐湿熱性が向上し、廃棄時に燃焼してもダイオキシンが発生しないので環境負荷を抑制することができ、絵柄層12の耐磨耗性を確保し、絵柄層12の模様を際立たせることができるとともに、衝撃力などの外力に対して絵柄層12の剥離を防止することができる。
次に、実施例及び比較例の化粧シートを示して本発明をさらに具体的に説明する。
<実施例1>
ポリオール成分としてポリカーボネートジオール、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールとしてポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ネオペンチルグリコール(NPG)及びポリイソシアネートを構成要素として含むウレタン樹脂を合成した。ここで、ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートを用い、公知の付加重合法により、数平均分子量が2×10の水酸基末端のウレタン樹脂を合成した。そして、このウレタン樹脂に銅フタロシアニン系顔料を(顔料/ウレタン樹脂)=20/80の質量比で分散させ、絵柄インキを調整した。このインキにイソシアネート硬化剤を添加し、隠蔽性のあるポリエチレン(PE)原反(厚さ70μm)を基材層11としてグラビア印刷することで絵柄層12を設けた(厚さ3μm)。そして、絵柄層12に、ドライラミネート用接着剤(厚さ2μm)を介して透明ホモポリプロピレン樹脂を押出しラミネートすることで透明樹脂層(厚さ80μm)を積層して実施例1の化粧シート10を形成した。
<実施例2>
実施例1において、基材層11をPE原反からポリブチレンテレフタレート(PBT)原反(厚さ70μm)に置き換えた点を除いては実施例1と同様の方法で、実施例2の化粧シート10を形成した。
<実施例3>
実施例1のウレタン樹脂合成において、ポリオール成分としてネオペンチルグリコール(NPG)を使用しない点を除いては実施例1と同様の方法で、実施例3の化粧シート10を形成した。
<実施例4>
実施例3のウレタン樹脂の合成において、ポリアルキレングリコールとしてポリプロピレングリコール(PPG)に置き換えた点を除いては実施例3と同様の方法で、実施例4の化粧シート10を形成した。
<比較例1>
実施例1のウレタン樹脂の合成において、ポリオール成分としてPTMGを使用しない点を除いては実施例1と同様の方法で、比較例1の化粧シート10を形成した。
<比較例2>
実施例1のウレタン樹脂合成において、ポリオール成分としてポリカーボネートジオールを使用しない点を除いては実施例1と同様の方法で、比較例2の化粧シート10を得た。
<評価判定>
上述した実施例1~4、比較例1、および参考例で得られた化粧シート10について、以下の方法で加工性と耐湿熱性を評価した。評価結果を表1に示す。
(a)加工性
建材用接着剤(ノーテープ工業、No5211)を用いアルミ板(厚み0.4mm)に化粧シートを貼り付けた試料を、環境温度5℃にて90°曲げ加工し、曲げ部分の外観を目視観察した。評価基準は、「○:絵柄層に割れが認められない」、「×:絵柄層に割れが認められる」とする。
(b)耐湿熱性
化粧シートの湿熱処理をHASTチャンバーで実施し(105℃100%RH,192時間)、その後、透明樹脂層と基材間のT字剥離強度を測定した(試料幅:25mm、引張り速度:5mm/sec)。評価基準は、「◎:剥離界面ができずに基材が破断」、「○:基材変形が生じながら剥離面生成」、「△:基材変形なく剥離面が生成」、「×:試料ハンドリング時に剥離が生じ測定不可」とする。
Figure 0007172410000001
表1からわかるように、実施例1~実施例2に示した化粧シート10は、絵柄層12のバインダ樹脂に、ポリカーボネートジオール、ポリアルキレングリコール、ネオペンチルグリコール(NPG)及びポリイソシアネートを構成要素として含むウレタン樹脂を用いることで、加工性と耐湿熱性に優れたものとなる。
また、絵柄層12のバインダ樹脂に、ポリカーボネートジオール、ポリアルキレングリコール、ネオペンチルグリコール(NPG)及びポリイソシアネートを構成要素として含むウレタン樹脂を用いた化粧シート10を、基材21の一方の面に貼り合わせた化粧板20も、加工性と耐湿熱性に優れたものとなる。
10 化粧シート
11 基材層
12 絵柄層
13 接着層
14 透明樹脂層
15 表面保護層
20 化粧板
21 基材
22 接着層

Claims (7)

  1. ポリカーボネートジオール、ポリアルキレングリコール及びポリイソシアネートを構成要素として含むウレタン樹脂をバインダ樹脂に用いた絵柄層が、基材層に積層されているとともに、前記ウレタン樹脂の前記構成要素として、さらにネオペンチルグリコールを含むことを特徴とする化粧シート。
  2. 前記ポリアルキレングリコールがポリテトラメチレングリコールであることを特徴とする請求項1記載の化粧シート。
  3. 前記基材層の樹脂成分がポリオレフィンであることを特徴とする請求項1又は2記載の化粧シート。
  4. 前記基材層の樹脂成分がポリエステルであることを特徴とする請求項1又は2記載の化粧シート。
  5. 前記絵柄層に透明樹脂層が積層されていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載の化粧シート。
  6. 前記透明樹脂層に表面保護層が積層されていることを特徴とする請求項5記載の化粧シート。
  7. 請求項1から請求項6の何れか1項に記載の化粧シートと、前記化粧シートが少なくとも一方の面に貼り合わされた基材と、を備えたことを特徴とする化粧板
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