JP7331438B2 - 化粧シート - Google Patents
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Description
建材用途の化粧シートは、特に高温多湿になり得る建物外装材や浴室の壁材等に用いる場合に高温多湿に対する耐久性(耐湿熱性)が要求される。しかしながら、ポリエステル系ウレタン樹脂による接着剤層は、加水分解による接着剤劣化が生じ易く耐湿熱性が十分でない。このため、建物外装や浴室等では端部から化粧シート内部に水分が浸入し、層間剥離を起こすといった問題が生じてしまう。また、耐湿熱性が要求される用途において、接着剤層には、加水分解を起こす官能基のないアクリル樹脂を用いることもできるが、この場合、接着剤層は硬く脆い層となり、化粧シートを加工する際にワレ等が生じ、白化や水分の浸入等の問題が生じてしまう。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る化粧シート10は、基材層11と、絵柄インキ層12と、接着剤層13と、アンカーコート層14と、透明樹脂層15と、がこの順で積層されている。具体的には、化粧シート10は、基材層11と、基材層11の表面11a側に設けられた絵柄インキ層12と、絵柄インキ層12の表面12a側に設けられた接着剤層13と、接着剤層13の表面13a側に設けられたアンカーコート層14と、アンカーコート層14の表面14a側、すなわち透明樹脂層15の裏面15b側に設けられた透明樹脂層15とを備える。さらに、化粧シート10は、基材層11の裏面11b側にプライマー層16が設けられている。化粧シート10の厚さは40μm以上300μm以下が好ましい。
基材層11の材料としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、特に制限はなく、従来の化粧シートで基材に使用されている熱可塑性樹脂と同様のものを使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂等、或いはこれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。
絵柄インキ層12は、化粧シート10に絵柄による意匠性を付与するための層である。絵柄インキ層12は、印刷インキやコーティング剤等を用いて形成される。印刷インキ等としては、特に制限はなく、従来の化粧シートで絵柄インキ層に使用されている印刷インキ等と同様のものを使用できる。例えば、アクリル系インキを用いることができる。アクリル系インキとしては、例えば、アクリルポリオール系ビヒクルにイソシアネート硬化剤を配合してなる2液硬化型ウレタン樹脂をバインダ樹脂に用いたインキを使用することができる。また、絵柄インキ層12には、その他の樹脂成分を必要に応じ添加してもよい。絵柄インキ層12のバインダ樹脂以外の成分としては、例えば、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、光安定剤など各種添加剤などを用いることができる。顔料としては、例えば、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等が挙げられる。
接着剤層13は、基材層11(下台)と透明樹脂層15(上台)とを接着させるための層である。本実施形態において、絵柄インキ層12を積層した基材層11と透明樹脂層15とは、接着剤層13を介して接合されていれば良く、接合手法は、熱ラミネート、押出ラミネート、ドライラミネート、サンドラミネートなどの各種ラミネート手法を用いることができる。ここで、本実施形態による化粧シート10の諸性能を考慮すると、接合手法はドライラミネート手法が好ましい。このため、接着剤層13は、ドライラミネート接着剤を用いたドライラミネート接着剤層であることが好ましい。また、接着剤層13は、例えば、グラビアコート、マイクログラビアコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコートなど通常の塗布方法を用いて形成される。
ポリアルキレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを用いることができ、疎水性が大きいポリテトラメチレングリコールが高温多湿に対する耐久性(耐湿熱性)の観点から好ましい。
本実施形態のポリカプロラクトンポリオール及びポリアルキレングリコールは、例えば、市販の各種材料から分子量や官能機数(一分子あたりの水酸基数)などの観点より適宜選択して用いることができる。
0.1<X/Y<10 …………(式2)
Z/(X+Y+Z+N)<0.5…(式3)
アンカーコート層14は、絵柄インキ層12と接着剤層13との密着性を向上させることにより、基材層11と透明樹脂層15との密着性を向上させるための層である。例えば本実施形態では、上述のように接着剤層13を形成するドライラミネート接着剤として、ポリオールとポリイソシアネートとの付加重合反応により合成されたウレタン樹脂を用いる。この場合、アンカーコート層14は、接着剤層13を形成するウレタン樹脂に合わせた樹脂設計とすることが望ましい。例えば、本実施形態においてアンカーコート層14には、特定の構成要素、即ちアクリルポリオール及びポリイソシアネートを少なくとも含むアクリルウレタン樹脂を用いることができる。これにより、アンカーコート層14は、ラミネート後に架橋効果を奏し、外装用途等における高温の使用条件下でも接着強度を失わずに十分な耐剥離性を維持でき、さらに加工密着性を向上させることができる。アクリルウレタン樹脂としては、例えば、ガラス転移温度が100℃のアクリル系樹脂を主鎖とするアンカー剤を使用できる。アクリル系樹脂(アクリルポリオール)は、密着性及び耐熱性の観点から、ガラス転移温度が95℃~105℃のものが好ましい。ガラス転移温度が低すぎる場合、耐熱性が劣り、温水に浸漬されることで、空隙が発生し、絵柄インキ層12と接着剤層13との密着力が低下する。
透明樹脂層15は、化粧シート10の耐候性を向上させるための層である。透明樹脂層15は、透明アクリル樹脂を用いて形成される。透明アクリル樹脂としては、特に制限はなく、従来の化粧シートで透明アクリル樹脂層に使用されている透明アクリル樹脂と同様のものを使用できる。例えば、透明アクリル樹脂フィルムを用いることができる。特に、熱による光沢変化(耐熱性)の観点から、透明樹脂層15は、アクリル系樹脂とフッ素樹脂とが共押出し法にて積層されての最表層側にフッ素樹脂が配置された透明フッ素アクリル共押出しフィルムが好ましい。
プライマー層16は、化粧シート10を所定の基板(不図示)に貼り合わせて化粧部材を形成する際に、基板への接着に用いられる接着剤と化粧シート10との密着性を向上させるために、必要に応じて施される層である。例えば、基板が木質系材料で形成されている場合には、接着剤として、酢酸ビニルエマルジョン系、2液硬化型ウレタン系等の接着剤が使用されるため、プライマー層16は、これらの接着剤に合わせた樹脂設計とすることが望ましい。例えば、プライマー層16には、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系等を採用することができる。特に、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの配合による2液硬化型ウレタン系のプライマー剤等が好ましい。また、これらの材料にシリカや硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機質粉末を添加してプライマー層16を形成すると、巻取保存時のブロッキングの防止や、投錨効果による接着力の向上に有効である。
凹凸模様25は、化粧シート10の表面に立体的な意匠感を付与するためのものである。凹凸模様25としては、任意の凹凸形状を用いることができる。例えば、木目導管状、石目状、布目状、抽象柄状、和紙状、スウェード状、皮革状、梨地状、砂目状、ヘアーライン状、平行直線群、或いはこれらの組み合わせ等を用いることができる。また、凹凸模様25の形成方法としては、例えば、基材層11の表面11aに対する透明樹脂層15の積層前、積層後又は積層と同時に行われる、ダブリングエンボス法、押出ラミネート同時エンボス法等を採用することができる。
また、接着剤層13のウレタン樹脂の構成要素であるポリアルキレングリコールをポリテトラメチレングリコールとすることで、化粧シート10の耐湿熱性をさらに向上させることができる。
また、透明樹脂層15は、アクリル系樹脂とフッ素樹脂とが共押出し法にて積層されて最表層部に前記フッ素樹脂が配置されていることで、化粧シート10の耐熱性を向上し、熱による光沢変化を抑制することができる。
<実施例1>
ポリオールとして、ポリカプロラクトンポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールを用い、ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートを用いて、公知の付加重合法により、数平均分子量(Mn)が1.0×105の水酸基末端のウレタン樹脂を合成した。当該ウレタン樹脂に硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体)を適量配合し、ドライラミネート接着剤を調整した。
接着剤層13のウレタン樹脂におけるポリオール成分としてネオペンチルグリコールを使用しない点を除いて、実施例1と同様の方法で実施例2の化粧シートを作製した。
<実施例3>
接着剤層13のウレタン樹脂におけるポリオール成分としてポリテトラメチレングリコールをポリプロピレングリコールに置き換えた点を除いては、実施例1と同様の方法で実施例3の化粧シートを作製した。
<実施例4>
接着剤層13のウレタン樹脂におけるポリイソシアネート成分としてイソホロンジイソシアネートをキシリレンジイソシアネートに置き換えた点を除いては、実施例1と同様の方法で実施例4の化粧シートを作製した。
接着剤層13のウレタン樹脂におけるポリオール成分にポリカプロラクトンポリオールを含まない点を除いては、実施例1と同様の方法で比較例1の化粧シートを作製した。
<比較例2>
接着剤層13のウレタン樹脂におけるポリオール成分にポリアルキレングリコールを含まない点を除いては、実施例1と同様の方法で比較例2の化粧シートを作製した。
<比較例3>
アンカーコート層を設けない点を除いては、実施例1と同様の方法で比較例3の化粧シートを作製した。
上記実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、以下の方法で耐湿熱性と加工性とを評価した。評価結果を表1に示す。
化粧シート10の湿熱処理をHASTチャンバーで実施し(105℃100%RH,192時間)、その後、透明樹脂層15と基材層11間のT字剥離強度を測定した(試料幅:25mm、引張り速度:5mm/sec)。
評価基準
◎:剥離界面ができずに基材が破断
〇:基材変形が生じながら剥離面生成
△:基材変形なく剥離面が生成
×:試料ハンドリング時に剥離が生じ測定不可
なお、本実施例では、評価が「△」以上であれば合格とした。
建材用接着剤(ノーテープ工業、No5211)を用いアルミ板(厚み0.4mm)に化粧シートを貼り付けた試料を、環境温度5℃にて90°曲げ加工し、曲げ部分の外観を目視観察した。
評価基準
○:絵柄インキ層12に割れが認められない(合格)
×:絵柄インキ層12に割れが認められる(不合格)
また、比較例2の化粧シート10は、接着剤層13のウレタン樹脂に柔軟性に優れたポリアルキレングリコールが含有されていない。このため、比較例2の化粧シート10は、曲げ加工時において絵柄インキ層12に割れが認められ、加工性の評価結果が不合格であった。
また、比較例3の化粧シート10は、高温でも十分な耐剥離性を維持可能なアンカーコート層14が形成されていないため、試料ハンドリング時に剥離が生じて耐湿熱性が不合格であった。さらに、アンカーコート層14が形成されていない比較例3の化粧シート10は、加工性の評価結果も不合格であった。
さらに、実施例1の化粧シート10は、接着剤層13に用いるウレタン樹脂の構成要素にネオペンチルグリコールを含有し、且つポリイソシアネートをイソホロンジイソシアネートとしたことで、耐湿熱性の評価が特に優れた結果となった。
また、実施例1~4の化粧シート10は、接着剤層13に用いるウレタン樹脂の構成要素にポリアルキレングリコールを含有し、且つアンカーコート層14に用いるウレタン樹脂の構成要素にアクリルポリオール及びポリイソシアネートを含有していることから、加工性の評価結果が全て合格となった。
11 基材層
11a、12a、13a、 14a 表面
11b、15b 裏面
13 接着剤層
14 アンカーコート層
15 透明樹脂層
16 プライマー層
25 凹凸模様
Claims (5)
- 基材層と、絵柄インキ層と、接着剤層と、アンカーコート層と、透明樹脂層と、がこの順に積層されており、
前記接着剤層は、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアルキレングリコール及びポリイソシアネートを構成要素としたウレタン樹脂を含有し、
前記アンカーコート層は、アクリルポリオール及びポリイソシアネートを構成要素としたウレタン樹脂を含有しており、
前記アンカーコート層が含有する前記アクリルポリオールは、ガラス転移温度が95℃以上105℃以下の範囲内であり、
前記アンカーコート層における前記アクリルポリオールと前記ポリイソシアネートとの比率(前記アクリルポリオール:前記ポリイソシアネート)は、8~12:1である
ことを特徴とする化粧シート。 - 前記接着剤層が含有する前記ウレタン樹脂の構成要素には、ネオペンチルグリコールが含まれ、
前記接着剤層が含有する前記ポリイソシアネートは、ジイソシアネート及び該ジイソシアネートの水添物のうち少なくとも一方であり、
前記接着剤層が含有する前記ウレタン樹脂の前記構成要素の各単位としてのカプロラクトンユニット、アルキレングリコールユニット、ジイソシアネートユニット、及び前記ネオペンチルグリコールの物質量をそれぞれX,Y,Z,Nとした場合に、以下の関係式(式1)~(式3)を満たす
ことを特徴とする請求項1記載の化粧シート。
3<(X+Y+Z)/N<50 …(式1)
0.1<X/Y<10 …………(式2)
Z/(X+Y+Z+N)<0.5…(式3) - 前記接着剤層が含有する前記ウレタン樹脂の構成要素のうち前記ポリアルキレングリコールは、ポリテトラメチレングリコールであること
を特徴とする請求項1又は2に記載の化粧シート。 - 前記接着剤層が含有する前記ウレタン樹脂の構成要素のうち前記ポリイソシアネートは、イソホロンジイソシアネートであること
を特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の化粧シート。 - 前記透明樹脂層は、アクリル系樹脂とフッ素樹脂とが共押出し法にて積層されて最表層部に前記フッ素樹脂が配置されていること
を特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の化粧シート。
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