JP7169804B2 - 液晶性樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
一方、炭酸ガスの発生を抑えることのみを考えれば、重縮合反応を無触媒で行えばよいが、無触媒の場合、当然ながら重縮合速度を向上させることができない。
以上のことから、液晶性樹脂の製造において、酸触媒の使用により炭酸ガスの発生を抑えつつ、重縮合速度の向上を図ることができれば有用である。
前記課題を解決する本発明の一態様は以下の通りである。
(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含む原料モノマーを反応させて液晶性樹脂を製造する方法であって、
前記原料モノマーを、モノ、ジ又はトリフルオロメタンスルホニル基を有する酸触媒、又は反応系内で前記酸触媒を発生し得る化合物の存在下で重縮合する工程を含む液晶性樹脂の製造方法。
原料モノマーは、芳香族ヒドロキシカルボン酸、及びその重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその重合可能な誘導体としては、特に限定されず、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、m-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-4-ナフトエ酸、4-ヒドロキシ-4’-カルボキシジフェニルエーテル、2,6-ジクロロ-p-ヒドロキシ安息香酸、2-クロロ-p-ヒドロキシ安息香酸、2,6-ジメチル-p-ヒドロキシ安息香酸、2,6-ジフルオロ-p-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸、バニリン酸等を挙げることができる。これらから選択される少なくとも1種の化合物を用いることができる。中でも、入手の容易さの点で、p-ヒドロキシ安息香酸及び6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
(1)芳香族若しくは脂環族ジカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、又は、
(2)芳香族若しくは脂環族ジカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
芳香族若しくは脂環族ジオール、芳香族若しくは脂環族ヒドロキシアミン、芳香族若しくは脂環族ジアミン、及びこれらの重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む。
(I)(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、又は、
(II)(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)芳香族若しくは脂環族ジカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、(c)芳香族若しくは脂環族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む組み合わせとすることができる。さらに上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
本実施形態の製造方法においては、後記重縮合の前に、上記原料モノマーを、アシル化剤を用いてアシル化する工程を設けることができる。当該アシル化は、上記酸触媒等の存在下で行うことが好ましい。アシル化剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2-エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β-ブロモプロピオン酸等が挙げられるが、特に限定されるものでない。これらから選択される少なくとも1種を用いることができる。価格と取り扱い性の観点から好適なものとしては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸等の無水カルボン酸等を挙げることができる。中でも、入手の容易さの点で、無水酢酸が好ましい。アシル化剤の使用量は、反応制御の容易さの点で、反応に用いる物質の水酸基総量中、1.0~1.1当量であることが好ましく、1.01~1.05当量であることがより好ましい。
原料モノマーを、上記酸触媒等の存在下で重縮合する。なお、上述のようにアシル化する工程を設けた場合にであって、その工程において上記酸触媒等を使用した場合、重縮合で使用する酸触媒等は、アシル化で使用したものと同じものであっても、異なるものであってもよい。
本実施形態の製造方法においては、原料モノマーを重縮合するに当たり、所定の酸触媒を用いるが、当該酸触媒を使用することにより、炭酸ガスの発生の低減と、重縮合速度の向上との両立を図ることができる。上記酸触媒は極めて強い酸であり、重縮合において、上記酸触媒が存在しても末端カルボキシル基が安定に存在できるようになるため分解が抑えられ、炭酸ガスの発生が少なくなる。また、上述の芳香族スルホン酸等の酸触媒を使用した場合と比較して、エステル基が効果的に活性化されるため、エステル交換反応が促進され、重縮合時間で短くなると考えられる。
上記酸触媒としては、モノフルオロメタンスルホン酸、ジフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられ、中でも、酸解離定数pKaが小さいトリフルオロメタンスルホン酸が最も好ましく、順に、ジフルオロメタンスルホン酸、モノフルオロメタンスルホン酸が好ましい。
本実施形態の液晶性樹脂の製造方法は、溶融重合工程(上記重縮合の工程)で得られた樹脂を、さらに固相重合させる工程を有していてもよい。固相重合により、原料樹脂の分子量の増加を図ることができ、強度や耐熱性に優れた液晶性樹脂を得ることができる。
本実施形態の製造方法により得られる液晶性樹脂は、液晶性ポリエステル及び液晶性ポリエステルアミドから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。液晶性ポリエステル及び液晶性ポリエステルアミドとしては、特に限定されないが、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドであることが好ましい。また、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルとすることもできる。
(1)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上からなるポリエステル;
(2)主として
(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、
(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上とからなるポリエステル;
(3)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステル;
(4)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(c1)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c2)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド;
(5)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c1)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c2)芳香族ジオール、脂環族ジオール、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド等、を挙げることができる。
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で3時間反応させた(アシル化)。その後、更に360℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら重縮合を行った。減圧開始から撹拌トルクが所定の値に達するまでの時間は、17分であった。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出した。その後、ストランドをペレタイズして液晶性樹脂ペレットを得た。
(原料)
4-ヒドロキシ安息香酸(HBA):184g(60モル%)
テレフタル酸(TA):52g(14モル%)
イソフタル酸(IA):22g(6モル%)
4,4’-ジヒドロキシビフェニル(BP):83g(20モル%)
トリフルオロメタンスルホン酸:66mg(220ppm)(酸触媒)
アシル化剤(無水酢酸):233g
酸触媒を、表2に記載のものに変更したこと以外は実施例1と同様にして液晶性樹脂ペレットを得た。ただし、酸触媒の使用量は表2に示す通りとした。
各実施例及び比較例において、減圧開始から撹拌トルクが所定の値に達するまでの時間を確認した。結果を表1及び表2に示す。なお、目標の溶融粘度となる際に示すトルク値を所定の値とする。目標の溶融粘度は、実施例1、比較例1~6のポリマーはシリンダー温度360℃、せん断速度1000sec-1での溶融粘度が15Pa・sである。なお、溶融粘度の測定は、キャピラリー式レオメーター(株式会社東洋精機製作所製キャピログラフ1D:ピストン径10mm)により、上記シリンダー温度及びせん断速度で、見かけの溶融粘度をISO 11443に準拠して測定した。測定には、内径0.5mm、長さ30mmのオリフィスを用いた。
各実施例及び比較例において、示差走査熱量計(DSC、(株)日立ハイテクサイエンス製)を使用し、液晶性樹脂を室温から20℃/分の昇温速度で加熱した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)を測定した。次いで、(Tm1+40)℃の温度で2分間保持した。さらに、20℃/分の降温速度で室温まで一旦冷却した後、再度、20℃/分の昇温速度で加熱した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)を融点として測定した。
各実施例及び比較例において、熱重量測定装置(TGA、TAインスツルメント(株)製)を使用し、液晶性樹脂10mgを窒素気流下にて、液晶性樹脂の融点よりも25℃高い温度(Tm2+25℃)で、30分保持した際の重量減少量を測定し、それを炭酸ガス発生量として評価した。
これに対して、表2より、比較例1~6においては、炭酸ガス発生の低減及び重縮合速度の向上を同時に満足のいく結果とすることができなかった。
Claims (3)
- 芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含む原料モノマーを反応させて液晶性樹脂を製造する方法であって、
前記原料モノマーを、モノ、ジ又はトリフルオロメタンスルホニル基を有する酸触媒、又は反応系内で前記酸触媒を発生し得る化合物の存在下で、かつ、温度を300~400℃として重縮合する工程を含む液晶性樹脂の製造方法。 - 前記重縮合する工程の前に、前記原料モノマーを、モノ、ジ又はトリフルオロメタンスルホニル基を有する酸触媒、又は反応系内で前記酸触媒を発生し得る化合物の存在下でアシル化させる工程をさらに含む請求項1に記載の液晶性樹脂の製造方法。
- 前記酸触媒の酸解離定数pKaが-2.6未満である請求項1又は2に記載の液晶性樹脂の製造方法。
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