JP7166998B2 - 窒化物半導体基板 - Google Patents

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Description

本発明は、窒化物半導体基板に関する。
III族窒化物半導体の単結晶からなる基板を下地基板(種基板)として用い、当該下地基板のうち最も近い低指数の結晶面が(0001)面である主面上に、III族窒化物半導体の単結晶からなる結晶層をさらに成長させる手法が知られている。この手法によれば、所定の厚さで成長させた結晶層をスライスすることで、少なくとも1つの窒化物半導体基板を得ることができる(例えば特許文献1)。
特開2013-60349号公報
本発明の目的は、窒化物半導体基板の結晶品質を向上させることにある。
本発明の一態様によれば、
III族窒化物半導体の単結晶からなり、鏡面化された主面を有し、前記主面に対して最も近い低指数の結晶面が(0001)面である下地基板を準備する工程と、
前記(0001)面が露出した頂面を有するIII族窒化物半導体の単結晶を前記下地基板の前記主面上に直接的にエピタキシャル成長させ、前記(0001)面以外の傾斜界面で構成される複数の凹部を前記頂面に生じさせ、前記下地基板の前記主面の上方に行くにしたがって該傾斜界面を徐々に拡大させ、前記(0001)面を前記頂面から消失させ、表面が前記傾斜界面のみで構成される第1層を成長させる第1工程と、
前記第1層上にIII族窒化物半導体の単結晶をエピタキシャル成長させ、前記傾斜界面を消失させ、鏡面化された表面を有する第2層を成長させる第2工程と、
を有し、
前記第1工程では、
前記単結晶の前記頂面に前記複数の凹部を生じさせ、前記(0001)面を消失させることで、前記第1層の表面に、複数の谷部および複数の頂部を形成する
窒化物半導体基板の製造方法が提供される。
本発明の他の態様によれば、
上述の態様に記載の窒化物半導体基板の製造方法において、前記第2層をスライスすることにより得られる
窒化物半導体基板が提供される。
本発明の更に他の態様によれば、
2インチ以上の直径を有し、最も近い低指数の結晶面が(0001)面である主面を有する窒化物半導体基板であって、
Ge(220)面の2結晶モノクロメータおよびスリットを介して前記主面に対してCuのKα1のX線を照射し、(0002)面回折のX線ロッキングカーブ測定を行った場合に、前記スリットの幅を1mmとしたときの前記(0002)面回折の半値幅FWHMaから、前記スリットの幅を0.1mmとしたときの前記(0002)面回折の半値幅FWHMbを引いた差FWHMa-FWHMbは、FWHMaの30%以下である
窒化物半導体基板が提供される。
本発明の更に他の態様によれば、
2インチ以上の直径を有する窒化物半導体基板であって、
多光子励起顕微鏡により視野250μm角で前記窒化物半導体基板の主面を観察して暗点密度から転位密度を求めたときに、前記転位密度が3×10cm-2を超える領域が前記主面に存在せず、前記転位密度が1×10cm-2未満である領域が前記主面の80%以上存在する
窒化物半導体基板が提供される。
本発明の更に他の態様によれば、
III族窒化物半導体の単結晶からなり、鏡面化された主面を有し、前記主面に対して最も近い低指数の結晶面が(0001)面である下地基板と、
前記(0001)面が露出した頂面を有するIII族窒化物半導体の単結晶を前記下地基板の前記主面上に直接的にエピタキシャル成長させ、前記(0001)面以外の傾斜界面で構成される複数の凹部を前記頂面に生じさせ、前記下地基板の前記主面の上方に行くにしたがって該傾斜界面を徐々に拡大させ、(0001)面を前記頂面から消失させることにより形成され、表面が前記傾斜界面のみで構成される第1層と、
前記第1層上にIII族窒化物半導体の単結晶をエピタキシャル成長させ、前記傾斜界面を消失させ、鏡面化された表面を有する第2層と、
を有し、
前記第1層は、前記単結晶の前記頂面に前記複数の凹部を生じさせ、前記(0001)面を消失させることで前記表面に形成される複数の谷部および複数の頂部を有する
積層構造体が提供される。
本発明によれば、窒化物半導体基板の結晶品質を向上させることができる。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法を示すフローチャートである。 (a)~(g)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略断面図である。 (a)~(c)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略断面図である。 本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略斜視図である。 (a)~(b)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略断面図である。 (a)~(b)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略断面図である。 (a)は、傾斜界面およびc面のそれぞれが拡大も縮小もしない基準成長条件下での成長過程を示す概略断面図であり、(b)は、傾斜界面が拡大しc面が縮小する第1成長条件下での成長過程を示す概略断面図である。 傾斜界面が縮小しc面が拡大する第2成長条件下での成長過程を示す概略断面図である。 (a)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板を示す概略上面図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板のm軸に沿った概略断面図であり、(c)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体基板のa軸に沿った概略断面図である。 (a)は、湾曲したc面に対するX線の回折を示す概略断面図であり、(b)および(c)は、c面の曲率半径に対する、(0002)面の回折角度の揺らぎを示す図である。 実施例の積層構造体の断面を蛍光顕微鏡により観察した観察像を示す図である。 多光子励起顕微鏡を用い、実施例の窒化物半導体基板の主面を観察した図である。 (a)は、実施例の窒化物半導体基板について、スリットを異ならせてX線ロッキングカーブ測定を行ったときの、規格化したX線回折パターンを示す図であり、(b)は、下地基板について、実施例と同じ測定を行ったときの、規格化したX線回折パターンを示す図である。 (a)は、実験2の積層構造体の表面を光学顕微鏡により観察した観察像を示す図であり、(b)は、実験2の積層構造体の表面を走査型電子顕微鏡により観察した観察像を示す図である。 (a)は、実験2の積層構造体のM断面を光学顕微鏡により観察した観察像を示す図であり、(b)は、実験2の積層構造体のM断面を走査型電子顕微鏡により観察した観察像を示す図である。 (a)は、実験2の積層構造体のa断面を光学顕微鏡により観察した観察像を示す図であり、(b)は、実験2の積層構造体のa断面を走査型電子顕微鏡により観察した観察像を示す図である。
<発明者等の得た知見>
まず、発明者等の得た知見について説明する。
(i)転位密度について
従来では、上述のように、III族窒化物半導体の単結晶からなる下地基板上に、さらに結晶層をエピタキシャル成長させる場合において、例えば、下地基板上の結晶層を、c面以外の傾斜界面を露出させずに、c面のみを成長面として成長させていた。この場合、結晶層の表面における転位密度は、当該結晶層の厚さに対して反比例する傾向があった。
しかしながら、c面のみを成長面として結晶層を成長させる場合では、結晶層を非常に厚く成長させなければ、結晶層の表面における転位密度を充分に低減させることはできなかった。このため、主面における所望の転位密度を有する窒化物半導体基板を得るための生産性が低下していた。
したがって、低転位密度を有する窒化物半導体基板を効率よく得ることができる技術が望まれていた。
(ii)オフ角ばらつきについて
窒化物半導体基板において、(0001)面が主面に対して凹の球面状に湾曲することがある。(0001)面が主面に対して湾曲すると、主面の法線に対して<0001>軸のなす角度であるオフ角が、主面内でばらつくこととなる。
窒化物半導体基板のオフ角は、例えば、該基板上に成長させる半導体機能層の表面モフォロジに影響する。例えば、基板の(0001)面の曲率半径が小さく、基板のオフ角のばらつきが大きい場合では、基板上の一部分において、オフ角起因で、半導体機能層の表面モフォロジが悪化する場合がある。このため、該基板を用いてショットキーバリアダイオード(SBD)としての半導体装置を作製した場合に、半導体機能層の表面モフォロジが悪化した部分から切り出した半導体装置において、耐圧や信頼性が低下してしまう可能性がある。
また、窒化物半導体基板のオフ角は、例えば、該基板上にインジウム(In)をドープして発光層を形成した場合に、発光層中のIn含有量に影響する。例えば、基板の(0001)面の曲率半径が小さく、基板のオフ角のばらつきが大きい場合では、基板のオフ角のばらつきに依存して、発光層中のIn含有量にばらつきが生じる。このため、該発光層を有する発光素子において、発光波長のばらつきや発光ムラが生じてしまう可能性がある。
したがって、表面モフォロジの悪化や発光ムラなどの実用上の課題が生じないよう、窒化物半導体基板におけるオフ角のばらつきを小さくすることができる技術が望まれていた。
本発明は、発明者等が見出した上記(i)および(ii)の知見に基づくものである。
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
(1)窒化物半導体基板の製造方法
図1~図6を用い、本実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法について説明する。
図1は、本実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法を示すフローチャートである。図2(a)~(g)、図3(a)~(c)、図5(a)~図6(b)は、本実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略断面図である。図4は、本実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法の一部を示す概略斜視図である。なお、図4は、図3(b)の時点での斜視図に相当し、下地基板10上に成長する第1層30の一部を示している。また、図5(b)において、細実線は、成長途中の結晶面を示し、図3(c)~図6(b)において、点線は、転位を示している。
図1に示すように、本実施形態に係る窒化物半導体基板の製造方法は、例えば、下地基板準備工程S100と、第1工程S200と、第2工程S300と、スライス工程S400と、研磨工程S500と、を有している。
(S100:下地基板準備工程)
まず、下地基板準備工程S100において、III族窒化物半導体の単結晶からなる下地基板10を準備する。本実施形態では、下地基板10として、例えば、窒化ガリウム(GaN)自立基板を準備する。
なお、以下では、ウルツ鉱構造を有するIII族窒化物半導体の結晶において、<0001>軸(例えば[0001]軸)を「c軸」といい、(0001)面を「c面」という。なお、(0001)面を「+c面(III族元素極性面)」といい、(000-1)面を「-c面(窒素(N)極性面)」ということがある。また、<1-100>軸(例えば[1-100]軸)を「m軸」といい、{1-100}面を「m面」という。なお、m軸は<10-10>軸と表記してもよい。また、<11-20>軸(例えば[11-20]軸)を「a軸」といい、{11-20}面を「a面」という。
本実施形態の下地基板準備工程S100では、例えば、VAS(Void-Assisted Separation)法により下地基板10を作製する。
具体的には、下地基板準備工程S100は、例えば、結晶成長用基板準備工程S110と、第1結晶層形成工程S120と、金属層形成工程S130と、ボイド形成工程S140と、第2結晶層形成工程S150と、剥離工程S160と、スライス工程S170と、研磨工程S180と、を有している。
(S110:結晶成長用基板準備工程)
まず、図2(a)に示すように、結晶成長用基板1(以下、「基板1」と略すことがある)を準備する。基板1は、例えば、サファイア基板である。なお、基板1は、例えば、Si基板またはガリウム砒素(GaAs)基板であってもよい。基板1は、例えば、成長面となる主面1sを有している。主面1sに対して最も近い低指数の結晶面は、例えば、c面1cである。
本実施形態では、基板1のc面1cが、主面1sに対して傾斜している。基板1のc軸1caは、主面1sの法線に対して所定のオフ角θで傾斜している。基板1の主面1s内でのオフ角θは、主面1s全体に亘って均一である。基板1の主面1s内でのオフ角θは、後述する下地基板10の主面10sの中心におけるオフ角θに影響する。
(S120:第1結晶層形成工程)
次に、図2(b)に示すように、例えば、有機金属気相成長(MOVPE)法により、所定の成長温度に加熱された基板1に対して、III族原料ガスとしてのトリメチルガリウム(TMG)ガス、窒化剤ガスとしてのアンモニアガス(NH)およびn型ドーパントガスとしてのモノシラン(SiH)ガスを供給することで、基板1の主面1s上に、第1結晶層(下地成長層)2として、低温成長GaNバッファ層およびSiドープGaN層をこの順で成長させる。このとき、低温成長GaNバッファ層の厚さおよびSiドープGaN層の厚さを、それぞれ、例えば、20nm、0.5μmとする。
(S130:金属層形成工程)
次に、図2(c)に示すように、第1結晶層2上に金属層3を蒸着させる。金属層3としては、例えば、チタン(Ti)層とする。また、金属層3の厚さを例えば20nmとする。
(S140:ボイド形成工程)
次に、上述の基板1を電気炉内に投入し、所定のヒータを有するサセプタ上に基板1を載置する。基板1をサセプタ上に載置したら、ヒータにより基板1を加熱し、水素ガスまたは水素化物ガスを含む雰囲気中で熱処理を行う。具体的には、例えば、20%のNHガスを含有する水素(H)ガス気流中において、所定の温度で20分間熱処理を行う。
なお、熱処理温度を、例えば、850℃以上1,100℃以下とする。このような熱処理を行うことで、金属層3を窒化し、表面に高密度の微細な穴を有する金属窒化層5を形成する。また、上述の熱処理を行うことで、金属窒化層5の穴を介して第1結晶層2の一部をエッチングし、該第1結晶層2中に高密度のボイドを形成する。
これにより、図2(d)に示すように、ボイド含有第1結晶層4を形成する。
(S150:第2結晶層形成工程)
次に、例えば、ハイドライド気相成長(HVPE)法により、所定の成長温度に加熱された基板1に対して、塩化ガリウム(GaCl)ガス、NHガスおよびn型ドーパントガスとしてのジクロロシラン(SiHCl)ガスを供給することで、ボイド含有第1結晶層4および金属窒化層5上に第2結晶層(本格成長層)6としてSiドープGaN層をエピタキシャル成長させる。なお、n型ドーパントガスとして、SiHClガスの代わりに、テトラクロロゲルマン(GeCl)ガスなどを供給することで、第2結晶層6としてGeドープGaN層をエピタキシャル成長させてもよい。
このとき、第2結晶層6は、ボイド含有第1結晶層4から金属窒化層5の穴を介してボイド含有第1結晶層4および金属窒化層5上に成長する。ボイド含有第1結晶層4中のボイドの一部は、第2結晶層6によって埋め込まれるが、ボイド含有第1結晶層4中のボイドの他部は、残存する。第2結晶層6と金属窒化層5との間には、当該ボイド含有第1結晶層4中に残存したボイドを起因として、平らな空隙が形成される。この空隙が後述の剥離工程S160での第2結晶層6の剥離を生じさせることとなる。
また、このとき、第2結晶層6は、基板1の配向性が引き継がれて成長される。すなわち、第2結晶層6の主面内でのオフ角θは、基板1の主面1s内でのオフ角θと同様に、主面全体に亘って均一となる。
また、このとき、第2結晶層6の厚さを、例えば、600μm以上、好ましくは1mm以上とする。なお、第2結晶層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、生産性向上の観点から、第2結晶層6の厚さを50mm以下とすることが好ましい。
(S160:剥離工程)
第2結晶層6の成長が終了した後、第2結晶層6を成長させるために用いたHVPE装置を冷却する過程において、第2結晶層6は、ボイド含有第1結晶層4および金属窒化層5を境に基板1から自然に剥離する。
このとき、第2結晶層6には、その成長過程で生じる初期核同士が引き合うことによって、引張応力が導入されている。このため、第2結晶層6中に生じた引張応力に起因して、第2結晶層6には、その表面側が凹むように内部応力が働く。また、第2結晶層6の主面(表面)側の転位密度が低く、一方で、第2結晶層6の裏面側の転位密度が高くなっている。このため、第2結晶層6の厚さ方向の転位密度差に起因しても、第2結晶層6には、その表面側が凹むように内部応力が働く。
その結果、図2(f)に示すように、第2結晶層6は、基板1から剥離された後に、その表面側が凹となるように反ってしまう。このため、第2結晶層6のc面6cは、第2結晶層6の主面6sの中心の法線方向に垂直な面に対して凹の球面状に湾曲する。第2結晶層6の主面6sの中心の法線に対してc軸6caがなすオフ角θは、所定の分布を有する。
(S170:スライス工程)
次に、図2(f)に示すように、例えば、第2結晶層6の主面6sの中心の法線方向に対して略垂直な切断面SSに沿って、ワイヤーソーにより、第2結晶層6をスライスする。
これにより、図2(g)に示すように、アズスライス基板としての下地基板10を形成する。このとき、下地基板10の厚さを、例えば、450μmとする。なお、下地基板10のオフ角θは、スライス方向依存性により、第2結晶層6のオフ角θから変化する可能性がある。
(S180:研磨工程)
次に、研磨装置により下地基板10の両面を研磨する。これにより、下地基板10の主面10sは、鏡面化される。
以上の下地基板準備工程S100により、GaNの単結晶からなる下地基板10が得られる。
下地基板10の直径は、例えば、2インチ以上である。また、下地基板10の厚さは、例えば、300μm以上1mm以下である。
下地基板10の主面10sは、例えば、エピタキシャル成長面となる主面(下地表面)10sを有している。本実施形態において、主面10sに対して最も近い低指数の結晶面は、例えば、c面(+c面)10cである。
下地基板10におけるc面10cは、主面10sに対して凹の球面状に湾曲している。
ここでいう「球面状」とは、球面近似される曲面状のことを意味している。また、ここでいう「球面近似」とは、真円球面または楕円球面に対して所定の誤差の範囲内で近似されることを意味している。
本実施形態では、下地基板10のc面10fは、例えば、m軸に沿った断面およびa軸に沿った断面のそれぞれにおいて球面近似される曲面状となっている。下地基板10でのc面10cの曲率半径は、例えば、1m以上10m未満である。
下地基板10の主面10sの中心の法線に対してc軸10caのなすオフ角θは、所定の分布を有している。
本実施形態では、下地基板10の主面10sの中心におけるオフ角θの大きさを、例えば、1°以下、好ましくは、0.4°以下とする。主面10sの中心におけるオフ角θの大きさが1°超であると、後述の第1工程S200において第1成長条件によっては第1層30の3次元成長が発現し難くなる場合がある。このため、c面30cを消失させることが困難となる。これに対し、本実施形態では、主面10sの中心におけるオフ角θの大きさを1°以下とすることで、後述の第1工程S200において第1層30を容易に3次元成長させることができる。これにより、c面30cを容易に消失させることができる。さらに、主面10sの中心におけるオフ角θの大きさを0.4°以下とすることで、比較的広い成長条件下で第1層30を3次元成長させることができ、c面30cを安定的に消失させることができる。
なお、主面10sの中心におけるオフ角θの大きさは、第1層30の3次元成長の観点では、小さければ小さいほど良い。しかしながら、主面10sの中心におけるオフ角θの大きさが0°に近すぎると、第1層30の表面が過剰に荒れてしまう可能性がある。
このため、主面10sの中心におけるオフ角θの大きさは、例えば、0.1°以上であることが好ましい。
なお、下地基板10の主面10sの中心におけるオフ角θの大きさおよび方向は、例えば、上述のVAS法で用いる結晶成長用基板1のオフ角θの大きさおよび方向と、スライス工程S170でのスライス角度およびスライス方向とによって調整することが可能である。
また、本実施形態では、例えば、下地基板10の主面10sを、III族窒化物半導体の単結晶がエピタキシャル成長することが可能ないわゆるエピレディの状態に保ちつつ、粗く研磨する。
具体的には、下地基板10の主面10sの二乗平均粗さRMSを、例えば、1nm以上10nm以下とする。下地基板10の主面10sのRMSを上記範囲内とすることで、後述の第1工程S200において下地基板10上に第1層30を成長させるときに、第1層30の表面でのc面以外の傾斜界面30iの発生を促すことができる。また、下地基板10の主面10sのRMSを上記範囲内とすることで、第1層30の表面が過度に粗くなることを抑制し、第1層30における後述の最近接頂部間平均距離Lが短くなることを抑制することができる。
また、本実施形態では、例えば、下地基板10中のバルク部分の結晶品質を良好に保ちつつ、下地基板10のスライス工程S170や研磨工程S180等の加工によって導入される結晶歪みを、該下地基板10の主面10s側に残存させてもよい。具体的には、加工後の下地基板10の主面10sに対する入射角を2°としてX線ロッキングカーブ測定を行ったときの、(10-10)面回折の半値幅(FWHM)を、例えば、加工前の下地基板10の半値幅よりも大きくし、60arcsec以上200arcsec以下とする。(10-10)面回折のFWHMを上記範囲内とすることで、下地基板10の主面10s側における結晶歪みに起因して、後述の第1層30の表面に現れる安定な結晶面を変化させることができる。その結果、第1層30の表面にc面以外の傾斜界面30iを生じさせることができる。また、(10-10)面回折のFWHMを上記範囲内とすることで、下地基板10の主面10s側における結晶歪みに起因して、後述の第1層30に過剰に多くの転位が発生することを抑制することができる。
また、本実施形態では、下地基板10が上述のVAS法により作製されるため、下地基板10の主面10sにおける転位密度が低くなっている。具体的には、下地基板10の主面10sにおける転位密度は、例えば、3×10cm-2以上1×10cm-2未満である。
(S200:第1工程(第1層成長工程))
下地基板10を準備したら、図3(a)に示すように、主面10s上へのマスク層の形成、および主面10sへの凹凸パターンの形成のうち、いずれの加工を施さない状態の下地基板10を用いて、以下の第1工程S200を行う。なお、ここでいう「マスク層」とは、例えば、いわゆるELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)法において用いられ、所定の開口を有するマスク層のことを意味する。また、ここでいう「凹凸パターン」は、例えば、いわゆるペンデオエピタキシー法において用いられ、下地基板の主面を直接パターニングしたトレンチおよびリッジのうち少なくともいずれかのことを意味する。ここでいう凹凸パターンの高低差は、例えば、100nm以上である。本実施形態の下地基板10は、上述のような構造を有しない状態で、第1工程S200に用いられる。
まず、図3(b)、図3(c)、および図4に示すように、c面30cが露出した頂面30uを有するIII族窒化物半導体の単結晶を、下地基板10の主面10s上に直接的にエピタキシャル成長させる。これにより、第1層30を成長させる。
このとき、c面以外の傾斜界面30iで囲まれて構成される複数の凹部30pを単結晶の頂面30uに生じさせ、下地基板10の主面10sの上方に行くにしたがって、該傾斜界面30iを徐々に拡大させ、c面30cを徐々に縮小させる。これにより、c面30cを頂面30uから消失させる。その結果、表面が傾斜界面30iのみで構成される第1層30を成長させる。
すなわち、第1工程S200では、下地基板10の主面10sをあえて荒らすように、第1層30を3次元成長させる。なお、第1層30は、このような成長形態を形成したとしても、上述のように、単結晶で成長させる。この点において、第1層30は、サファイアなどの異種基板上にIII族窒化物半導体をエピタキシャル成長させる前に該異種基板上にアモルファスまたは多結晶として形成されるいわゆる低温バッファ層とは異なるものである。
本実施形態では、第1層30として、例えば、下地基板10を構成するIII族窒化物半導体と同じIII族窒化物半導体からなる層をエピタキシャル成長させる。具体的には、例えば、HVPE法により、下地基板10を加熱し、当該加熱された下地基板10に対してGaClガスおよびNHガスを供給することで、第1層30としてGaN層をエピタキシャル成長させる。
ここで、第1工程S200では、上述の成長過程を発現させるために、例えば、所定の第1成長条件下で、第1層30を成長させる。
まず、図7(a)を用い、傾斜界面30iおよびc面30cのそれぞれが拡大も縮小もしない基準成長条件について説明する。図7(a)は、傾斜界面およびc面のそれぞれが拡大も縮小もしない基準成長条件下での成長過程を示す概略断面図である。
図7(a)において、太い実線は、単位時間ごとの第1層30の表面を示している。図7(a)で示されている傾斜界面30iは、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面とする。また、図7(a)において、第1層30のうちのc面30cの成長レートをGc0とし、第1層30のうちの傾斜界面30iの成長レートをGとし、第1層30においてc面30cと傾斜界面30iとのなす角度をαとする。また、図7(a)において、c面30cと傾斜界面30iとのなす角度αを維持したまま、第1層30が成長するものとする。なお、第1層30のc面30cのオフ角が、c面30cと傾斜界面30iとのなす角度αに比べて無視できるものとする。
図7(a)に示すように、傾斜界面30iおよびc面30cのそれぞれが拡大も縮小もしないとき、傾斜界面30iとc面30cとの交点の軌跡は、c面30cに対して垂直となる。このことから、傾斜界面30iおよびc面30cのそれぞれが拡大も縮小もしない基準成長条件は、以下の式(a)を満たす。
c0=G/cosα ・・・(a)
次に、図7(b)を用い、傾斜界面30iが拡大しc面30cが縮小する第1成長条件について説明する。図7(b)は、傾斜界面が拡大しc面が縮小する第1成長条件下での成長過程を示す概略断面図である。
図7(b)においても、図7(a)と同様に、太い実線は、単位時間ごとの第1層30の表面を示している。また、図7(b)で示されている傾斜界面30iも、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面とする。また、図7(b)において、第1層30のうちのc面30cの成長レートをGc1とし、第1層30のうちの傾斜界面30iとc面30cとの交点の軌跡の進行レートをRとする。また、傾斜界面30iとc面30cとの交点の軌跡と、c面30cとのなす角度のうち、狭いほうの角度をαR1とする。R方向とG方向とのなす角度をα’としたとき、α’=α+90-αR1である。なお、第1層30のc面30cのオフ角が、c面30cと傾斜界面30iとのなす角度αに比べて無視できるものとする。
図7(b)に示すように、傾斜界面30iとc面30cとの交点の軌跡の進行レートRは、以下の式(b)で表される。
=G/cosα’ ・・・(b)
また、第1層30のうちのc面30cの成長レートGc1は、以下の式(c)で表される。
c1=RsinαR1 ・・・(c)
式(c)に式(b)を代入することで、Gc1は、Gを用いて、以下の式(d)で表される。
c1=GsinαR1/cos(α+90-αR1) ・・・(d)
傾斜界面30iが拡大しc面30cが縮小するためには、αR1<90°となることが好ましい。したがって、傾斜界面30iが拡大しc面30cが縮小する第1成長条件は、式(d)とαR1<90°とにより、以下の式(1)を満たすことが好ましい。
c1>G/cosα ・・・(1)
ただし、上述のように、Gは、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面30iの成長レートであり、αは、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面30iと、c面30cとのなす角度である。
または、第1成長条件下でのGc1が、基準成長条件下でのGc0よりも大きいことが好ましいと考えることもできる。このことからも、Gc1>Gc0に式(a)を代入することにより、式(1)が導出されうる。
なお、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面30iを拡大させる成長条件が最も厳しい条件となることから、第1成長条件が式(1)を満たせば、他の傾斜界面30iも拡大させることが可能となる。
具体的には、例えば、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面30iが{10-11}面であるとき、α=61.95°である。したがって、第1成長条件は、例えば、以下の式(1’)を満たすことが好ましい。
c1>2.13G ・・・(1’)
または、後述するように、例えば、傾斜界面30iがm≧3の{11-2m}面である場合には、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面30iが{11-23}面であるため、α=47.3°である。したがって、第1成長条件は、例えば、以下の式(1”)を満たすことが好ましい。
c1>1.47G ・・・(1”)
本実施形態の第1成長条件としては、例えば、第1工程S200での成長温度を、後述の第2工程S300での成長温度よりも低くする。具体的には、第1工程S200での成長温度を、例えば、980℃以上1,020℃以下、好ましくは1,000℃以上1,020℃以下とする。
また、本実施形態の第1成長条件として、例えば、第1工程S200でのIII族原料ガスとしてのGaClガスの分圧に対する窒化剤ガスとしてのNHガスの流量の分圧の比率(以下、「V/III比」ともいう)を、後述の第2工程S300でのV/III比よりも大きくしてもよい。具体的には、第1工程S200でのV/III比を、例えば、2以上20以下、好ましくは、2以上15以下とする。
実際には、第1成長条件として、式(1)を満たすように、成長温度およびV/III比のうち少なくともいずれかをそれぞれ上記範囲のなかで調整する。
なお、本実施形態の第1成長条件のうちの他の条件は、例えば、以下のとおりである。
成長圧力:90~105kPa、好ましくは、90~95kPa
GaClガスの分圧:1.5~15kPa
ガスの流量/Hガスの流量:0~1
ここで、本実施形態の第1工程S200は、例えば、第1層30の成長中の形態に基づいて、2つの工程に分類される。具体的には、本実施形態の第1工程S200は、例えば、傾斜界面拡大工程S220と、傾斜界面維持工程S240と、を有している。これらの工程により、第1層30は、例えば、傾斜界面拡大層32と、傾斜界面維持層34と、を有することとなる。
(S220:傾斜界面拡大工程)
まず、図3(b)および図4に示すように、III族窒化物半導体の単結晶からなる第1層30の傾斜界面拡大層32を、上述の第1成長条件下で、下地基板10の主面10s上に直接エピタキシャル成長させる。
傾斜界面拡大層32が成長する初期段階では、下地基板10の主面10sの法線方向(c軸に沿った方向)に、c面30cを成長面として傾斜界面拡大層32が成長する。
第1成長条件下で傾斜界面拡大層32を徐々に成長させることで、図3(b)および図4に示すように、傾斜界面拡大層32のうちc面30cを露出させた頂面30uに、c面以外の傾斜界面30iで構成される複数の凹部30pを生じさせる。c面以外の傾斜界面30iで構成される複数の凹部30pは、当該頂面30uにランダムに形成される。これにより、c面30cとc面以外の傾斜界面30iとが表面に混在する傾斜界面拡大層32が形成される。
なお、ここでいう「傾斜界面30i」とは、c面30cに対して傾斜した成長界面のことを意味し、c面以外の低指数のファセット、c面以外の高指数のファセット、または面指数で表すことができない傾斜面を含んでいる。なお、c面以外のファセットは、例えば、{11-2m}、{1-10n}などである。ただし、mおよびnは0以外の整数である。
本実施形態では、上述の下地基板10を用い、且つ、式(1)を満たすように第1成長条件を調整したことで、傾斜界面30iとして、例えば、m≧3である{11-2m}面を生じさせることができる。これにより、c面30cに対する{11-2m}面の傾斜角度を緩やかにすることができる。具体的には、該傾斜角度を47.3°以下とすることができる。
第1成長条件下で傾斜界面拡大層32をさらに成長させることで、図3(b)および(c)に示すように、下地基板10の上方に行くにしたがって、傾斜界面拡大層32において、c面以外の傾斜界面30iを徐々に拡大させ、c面30cを徐々に縮小させる。なお、このとき、下地基板10の上方に行くにしたがって、該下地基板10の主面10sに対する、傾斜界面30iがなす傾斜角度が徐々に小さくなっていく。これにより、最終的に、傾斜界面30iのほとんどが、上述したm≧3の{11-2m}面となる。
さらに傾斜界面拡大層32を成長させていくと、傾斜界面拡大層32のc面30cは頂面30uから消失し、傾斜界面拡大層32の表面は傾斜界面30iのみで構成される。これにより、錐体を連続的に結合させた山脈状の傾斜界面拡大層32が形成されることとなる。
このように、傾斜界面拡大層32の頂面30uにc面以外の傾斜界面30iで構成される複数の凹部30pを生じさせ、c面30cを消失させることで、図3(c)に示すように、該傾斜界面拡大層32の表面に、複数の谷部30vおよび複数の頂部30tを形成する。複数の谷部30vのそれぞれは、傾斜界面拡大層320の表面のうち下に凸の変曲点であって、c面以外の傾斜界面30iのそれぞれが発生した位置の上方に形成される。一方で、複数の頂部30tのそれぞれは、傾斜界面拡大層320の表面のうち上に凸の変曲点であって、c面30cが消失した位置またはその上方に形成される。谷部30vおよび頂部30tは、下地基板10の主面10sに沿った方向に交互に形成される。
本実施形態では、傾斜界面拡大層32が成長する初期段階において、下地基板10の主面10s上に、傾斜界面30iを生じさせずにc面30cを成長面として傾斜界面拡大層32を所定の厚さで成長させた後、傾斜界面拡大層32の表面に、c面以外の傾斜界面30iを生じさせる。これにより、複数の谷部30vは、下地基板10の主面10sから上方に離れた位置に形成されることとなる。
以上のような傾斜界面拡大層32の成長過程により、転位は、以下のように屈曲して伝播する。具体的には、図3(c)に示すように、下地基板10内においてc軸に沿った方向に延在していた複数の転位は、下地基板10から傾斜界面拡大層32のc軸に沿った方向に向けて伝播する。傾斜界面拡大層32のうちc面30cを成長面として成長した領域では、下地基板10から傾斜界面拡大層32のc軸に沿った方向に向けて転位が伝播する。しかしながら、傾斜界面拡大層32のc軸に沿った方向に伝播した転位が、傾斜界面30iに到達すると、当該転位は、傾斜界面30iが露出した位置で、該傾斜界面30iに対して略垂直な方向に向けて屈曲して伝播する。すなわち、転位は、c軸に対して傾斜した方向に屈曲して伝播する。これにより、傾斜界面拡大工程S220以降の工程において、一対の頂部30t間での略中央の上方において、局所的に転位が集められることとなる。その結果、後述の第2層40の表面における転位密度を低減させることができる。
このとき、本実施形態では、下地基板10の主面10sに垂直な任意の断面を見たときに、複数の谷部30vのうちの1つを挟んで複数の頂部30tのうちで最も接近する一対の頂部30t同士が、下地基板10の主面10sに沿った方向に離間した平均距離(「最近接頂部間平均距離」ともいう)Lを、例えば、100μm超とする。傾斜界面拡大工程S220の初期段階から下地基板10の主面10s上に微細な六角錐状の結晶核を生じさせる場合などのように、最近接頂部間平均距離Lが100μm以下であると、傾斜界面拡大工程S220以降の工程において、転位が屈曲して伝播する距離が短くなる。このため、傾斜界面拡大層32のうち一対の頂部30t間の略中央の上方で充分に転位が集められない。その結果、後述の第2層40の表面における転位密度が充分に低減されない可能性がある。これに対し、本実施形態では、最近接頂部間平均距離Lを100μm超とすることで、傾斜界面拡大工程S220以降の工程において、転位が屈曲して伝播する距離を、少なくとも50μm超、確保することができる。これにより、傾斜界面拡大層32のうち一対の頂部30t間の略中央の上方に、充分に転位を集めることができる。その結果、後述の第2層40の表面における転位密度を充分に低減させることができる。
一方で、本実施形態では、最近接頂部間平均距離Lを800μm未満とする。最近接頂部間平均距離Lが800μm以上であると、下地基板10の主面10sから傾斜界面拡大層32の谷部30vから頂部30tまでの高さが過剰に高くなる。このため、後述の第2工程S300において、第2層40が鏡面化するまでの厚さが厚くなる。これに対し、本実施形態では、最近接頂部間平均距離Lを800μm未満とすることで、下地基板10の主面10sから傾斜界面拡大層32の谷部30vから頂部30tまでの高さを低くすることができる。これにより、後述の第2工程S300において、第2層40を早く鏡面化させることができる。
また、このとき、傾斜界面拡大層320には、成長過程での成長面の違いに基づいて、c面30cを成長面として成長した第1c面成長領域60と、c面以外の傾斜界面30iを成長面として成長した傾斜界面成長領域70(図中灰色部)とが形成される。
また、このとき、第1c面成長領域60では、傾斜界面30iが発生した位置に凹部60aを形成し、c面30cが消失した位置に凸部60bを形成する。また、第1c面成長領域60では、凸部60bを挟んだ両側に、c面30cと傾斜界面30iとの交点の軌跡として、一対の傾斜部60iを形成する。
また、このとき、第1成長条件が式(1)を満たすことで、一対の傾斜部60iのなす角度βを、例えば、70°以下とする。
これらの領域については、詳細を後述する。
(S240:傾斜界面維持工程)
傾斜界面拡大層32の表面からc面30cを消失させた後に、図5(a)に示すように、表面が傾斜界面30iのみで構成された状態を維持しつつ、所定の厚さに亘って第1層30の成長を継続させる。これにより、傾斜界面拡大層32上に、c面を有さず傾斜界面30iのみを表面に有する傾斜界面維持層34を形成する。傾斜界面維持層34を形成することで、第1層30の表面全体に亘って確実にc面30cを消失させることができる。
このとき、傾斜界面維持工程S240での成長条件を、傾斜界面拡大工程S220と同様に、上述の第1成長条件で維持する。これにより、傾斜界面30iのみを成長面として傾斜界面維持層34を成長させることができる。
また、このとき、第1成長条件下で、傾斜界面30iを成長面として傾斜界面維持層34を成長させることで、上述のように、傾斜界面拡大層32において傾斜界面30iが露出した位置で、c軸に対して傾斜した方向に向けて屈曲して伝播した転位は、傾斜界面維持層34においても同じ方向に伝播し続ける。
また、このとき、傾斜界面維持層34は、傾斜界面30iを成長面として成長することで、傾斜界面維持層34の全体が、傾斜界面成長領域70の一部となる。
以上の第1工程S200により、傾斜界面拡大層32および傾斜界面維持層34を有する第1層30が形成される。
本実施形態の第1工程S200では、下地基板10の主面10sから第1層30の頂部30tまでの高さ(第1層30の厚さ方向の最大高さ)を、例えば、100μm超1.5mm未満とする。
(S300:第2工程(第2層成長工程))
c面30cを消失させた第1層30を成長させたら、図5(b)および図6(a)に示すように、第1層30上に、III族窒化物半導体の単結晶をさらにエピタキシャル成長させる。
このとき、下地基板10の主面10sの上方に行くにしたがって、傾斜界面40iを徐々に縮小させ、c面40cを徐々に拡大させる。これにより、第1層30の表面に形成されていた傾斜界面30iを消失させる。その結果、鏡面化された表面を有する第2層40を成長させる。
本実施形態では、第2層40として、例えば、第1層30を構成するIII族窒化物半導体と同じIII族窒化物半導体を主成分とする層をエピタキシャル成長させる。なお、第2工程S300では、所定の成長温度に加熱された下地基板10に対して、GaClガス、NHガスおよびn型ドーパントガスとしてのジクロロシラン(SiHCl)ガスを供給することで、第2層40として、シリコン(Si)ドープGaN層をエピタキシャル成長させる。なお、n型ドーパントガスとして、SiHClガスの代わりに、GeClガスなどを供給してもよい。
ここで、第2工程S300では、上述の成長過程を発現させるために、例えば、所定の第2成長条件下で、第2層40を成長させる。
図8を用い、傾斜界面40iが縮小しc面40cが拡大する第2成長条件について説明する。図8は、傾斜界面が縮小しc面が拡大する第2成長条件下での成長過程を示す概略断面図である。図8は、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面30iが露出した第1層30上に、第2層40が成長する過程を示している。
図8においても、図7(a)と同様に、太い実線は、単位時間ごとの第2層40の表面を示している。また、図8において、第2層40のうちのc面40cの成長レートをGc2とし、第2層40のうちの傾斜界面40iの成長レートをGとし、第2層40のうちの傾斜界面40iとc面40cとの交点の軌跡の進行レートをRとする。また、傾斜界面40iとc面40cとの交点の軌跡と、c面30cとのなす角度のうち、狭いほうの角度をαR2とする。R方向とG方向とのなす角度をα”としたとき、α”=α-(90-αR2)である。また、図8において、第1層30におけるc面30cと傾斜界面30iとのなす角度αを維持したまま、第2層40が成長するものとする。なお、第2層40のc面40cのオフ角が、c面30cと傾斜界面30iとのなす角度αに比べて無視できるものとする。
図8に示すように、傾斜界面40iとc面40cとの交点の軌跡の進行レートRは、以下の式(e)で表される。
=G/cosα” ・・・(e)
また、第2層40のうちのc面40cの成長レートGc2は、以下の式(f)で表される。
c2=RsinαR2 ・・・(f)
式(f)に式(e)を代入することで、Gc2は、Gを用いて、以下の式(g)で表される。
c2=GsinαR2/cos(α+αR2-90) ・・・(g)
傾斜界面40iが縮小しc面40cが拡大するためには、αR2<90°となることが好ましい。したがって、傾斜界面40iが縮小しc面40cが拡大する第2成長条件は、式(g)とαR2<90°とにより、以下の式(2)を満たすことが好ましい。
c2<G/cosα ・・・(2)
ただし、上述のように、Gは、c面40cに対して最も傾斜した傾斜界面40iの成長レートであり、αは、c面40cに対して最も傾斜した傾斜界面40iと、c面40cとのなす角度である。
または、基準成長条件下での第2層40のうちのc面30cの成長レートをGc0としたとき、第2成長条件下でのGc2が、基準成長条件下でのGc0よりも小さいことが好ましいと考えることもできる。このことからも、Gc2<Gc0に式(a)を代入することにより、式(2)が導出されうる。
なお、c面40cに対して最も傾斜した傾斜界面40iを縮小させる成長条件が最も厳しい条件となることから、第2成長条件が式(2)を満たせば、他の傾斜界面40iも縮小させることが可能となる。
具体的には、c面40cに対して最も傾斜した傾斜界面40iが{10-11}面であるとき、第2成長条件は、以下の式(2’)を満たすことが好ましい。
c2<2.13G ・・・(2’)
または、例えば、傾斜界面30iがm≧3の{11-2m}面である場合には、c面30cに対して最も傾斜した傾斜界面30iが{11-23}面であるため、第2成長条件は、例えば、以下の式(2”)を満たすことが好ましい。
c2<1.47G ・・・(2”)
本実施形態の第2成長条件としては、第2工程S300での成長温度を、例えば、第1工程S200での成長温度よりも高くする。具体的には、第2工程S300での成長温度を、例えば、990℃以上1,120℃以下、好ましくは1,020℃以上1,100℃以下とする。
また、本実施形態の第2成長条件として、第2工程S300でのV/III比を調整してもよい。例えば、第2工程S300でのV/III比を、第1工程S200でのV/III比よりも小さくしてもよい。具体的には、第2工程S300でのV/III比を、例えば、1以上10以下、好ましくは、1以上5以下とする。
実際には、第2成長条件として、式(2)を満たすように、成長温度およびV/III比のうち少なくともいずれかをそれぞれ上記範囲のなかで調整する。
なお、本実施形態の第2成長条件のうちの他の条件は、例えば、以下のとおりである。
成長圧力:90~105kPa、好ましくは、90~95kPa
GaClガスの分圧:1.5~15kPa
ガスの流量/Hガスの流量:1~20
ここで、本実施形態の第2工程S300は、例えば、第2層40の成長中の形態に基づいて、2つの工程に分類される。具体的には、本実施形態の第2工程S300は、例えば、c面拡大工程S320と、本成長工程S340と、を有している。これらの工程により、第2層40は、例えば、c面拡大層42と、本成長層44と、を有することとなる。
(S320:c面拡大工程)
図5(b)に示すように、第1層30上に、上述の第2成長条件で、III族窒化物半導体の単結晶からなる第2層40のc面拡大層42をエピタキシャル成長させる。
このとき、第1層30の上方に行くにしたがって、c面40cを拡大させつつ、c面以外の傾斜界面40iを縮小させる。
具体的には、第2成長条件下での成長により、c面拡大層42は、傾斜界面維持層34の傾斜界面30iから、傾斜界面40iを成長面としてc軸に垂直な方向に沿った方向(すなわち沿面方向または横方向)に成長する。c面拡大層42を横方向成長させていくと、傾斜界面維持層34の頂部30tの上方で、c面拡大層42のc面40cが再度露出し始める。これにより、c面40cとc面以外の傾斜界面40iとが表面に混在するc面拡大層42が形成される。
さらにc面拡大層42を横方向成長させていくと、c面40cが徐々に拡大し、c面拡大層42の傾斜界面40iが徐々に縮小する。これにより、第1層30の表面において複数の傾斜界面30iにより構成された凹部30pが徐々に埋め込まれる。
その後、さらにc面拡大層42を成長させると、c面拡大層42の傾斜界面40iが完全に消失し、第1層30の表面において複数の傾斜界面30iにより構成された凹部30pが完全に埋め込まれる。これにより、c面拡大層42の表面が、c面40cのみにより構成される鏡面(平坦面)となる。
このとき、第1層30およびc面拡大層42の成長過程で、転位を局所的に集めることで、転位密度を低減させることができる。具体的には、第1層30においてc軸に対して傾斜した方向に向けて屈曲して伝播した転位は、c面拡大層42においても同じ方向に伝播し続ける。これにより、c面拡大層42のうち、一対の頂部30t間での略中央の上方において、隣接する傾斜界面40iの会合部で、局所的に転位が集められる。c面拡大層42において隣接する傾斜界面40iの会合部に集められた複数の転位のうち、互いに相反するバーガースベクトルを有する転位同士は、会合時に消失する。また、隣接する傾斜界面40iの会合部に集められた複数の転位の一部は、ループを形成し、c軸に沿った方向(すなわち、c面拡大層42の表面側)に伝播することが抑制される。なお、c面拡大層42において隣接する傾斜界面40iの会合部に集められた複数の転位のうちの他部は、その伝播方向をc軸に対して傾斜した方向からc軸に沿った方向に再度変化させ、第2層40の表面側まで伝播する。このように複数の転位の一部を消失させたり、複数の転位の一部をc面拡大層42の表面側に伝播することを抑制したりすることで、第2層40の表面における転位密度を低減することができる。また、転位を局所的に集めることで、第2層40のうち、転位がc軸に対して傾斜した方向に向けて伝播した部分の上方に、低転位密度領域を形成することができる。
また、このとき、c面拡大層42では、c面40cが徐々に拡大することで、c面40cを成長面として成長した後述の第2c面成長領域80が、厚さ方向の上方に行くにしたがって徐々に拡大しながら形成される。
一方で、c面拡大層42では、傾斜界面40iが徐々に縮小することで、傾斜界面成長領域70が厚さ方向の上方に行くにしたがって徐々に縮小し、厚さ方向の所定位置で終端する。このようなc面拡大層42の成長過程により、c面40cが再度発生した位置に、傾斜界面成長領域70の凹部70aが形成される。また、傾斜界面40iにより構成された凹部が徐々に埋め込まれる過程で、傾斜界面40iが消失した位置に、傾斜界面成長領域70の凸部70bが形成される。
c面拡大工程S320では、c面拡大層42の表面がc面40cのみにより構成される鏡面となるため、c面拡大層42の厚さ方向の高さ(厚さ方向の最大高さ)は、例えば、傾斜界面維持層34の谷部30vから頂部30tまでの高さ以上となる。
(S340:本成長工程(c面成長工程))
c面拡大層42において傾斜界面40iが消失し、表面が鏡面化されたら、図6(a)に示すように、c面拡大層42上に、c面40cを成長面として所定の厚さに亘って本成長層44を形成する。これにより、傾斜界面40iを有さずc面40cのみを表面に有する本成長層44を形成する。
このとき、本成長工程S340での成長条件を、c面拡大工程S320と同様に、上述の第2成長条件で維持する。これにより、c面40cを成長面として本成長層44をステップフロー成長させることができる。
また、このとき、本成長層44のc面40cの曲率半径を、下地基板10のc面10cの曲率半径よりも大きくすることができる。これにより、本成長層44のうち表面の法線に対するc軸のオフ角のばらつきを、下地基板10のうち主面10sの法線に対するc軸10caのオフ角のばらつきよりも小さくすることができる。
また、このとき、傾斜界面40iを露出させることなく、c面40cのみを成長面として、本成長層44を成長させることで、本成長層44の全体が、後述の第2c面成長領域80となる。
本成長工程S340では、本成長層44の厚さを、例えば、300μm以上10mm以下とする。本成長層44の厚さを300μm以上とすることで、後述のスライス工程S400において、本成長層44から少なくとも1枚以上の基板50をスライスすることができる。一方で、本成長層44の厚さを10mm以下とすることで、最終的な厚さを650μmとし、700μm厚の基板50を本成長層44からスライスする場合に、カーフロス200μm程度を考慮しても、少なくとも10枚の基板50を得ることができる。
以上の第2工程S300により、c面拡大層42および本成長層44を有する第2層40が形成される。その結果、本実施形態の積層構造体90が形成される。
なお、以上の第1工程S200から第2工程S300までの工程を、下地基板10を大気暴露することなく、同一のチャンバ内で連続的に行う。これにより、第1層30と第2層40との間の界面に、意図しない高酸素濃度領域(傾斜界面成長領域70よりも過剰に高い酸素濃度を有する領域)が形成されることを抑制することができる。
(S400:スライス工程)
次に、図6(b)に示すように、例えば、本成長層44の表面と略平行な切断面に沿ってワイヤーソーにより本成長層44をスライスする。これにより、アズスライス基板としての窒化物半導体基板50(基板50ともいう)を少なくとも1つ形成する。このとき、基板50の厚さを、例えば、300μm以上700μm以下とする。
このとき、基板50のc面50cの曲率半径を、下地基板10のc面10cの曲率半径よりも大きくすることができる。なお、このとき、基板50のc面50cの曲率半径を、スライス前の本成長層44のc面40cの曲率半径よりも大きくすることができる。これにより、基板50の主面50sの法線に対するc軸50caのオフ角θのばらつきを、下地基板10のc軸10caオフ角のばらつきよりも小さくすることができる。
(S500:研磨工程)
次に、研磨装置により基板50の両面を研磨する。なお、このとき、最終的な基板50の厚さを、例えば、250μm以上650μm以下とする。
以上の工程S100~S500により、本実施形態に係る基板50が製造される。
(半導体積層物の作製工程および半導体装置の作製工程)
基板50が製造されたら、例えば、基板50上にIII族窒化物半導体からなる半導体機能層をエピタキシャル成長させ、半導体積層物を作製する。半導体積層物を作製したら、半導体積層物を用いて電極等を形成し、半導体積層物をダイシングし、所定の大きさのチップを切り出す。これにより、半導体装置を作製する。
(2)積層構造体
次に、図6(a)を用い、本実施形態に係る積層構造体90について説明する。
本実施形態の積層構造体90は、例えば、下地基板10と、第1層30と、第2層40と、を有している。
第1層30は、例えば、下地基板10の主面10s上に成長している。
第1層30は、例えば、III族窒化物半導体の単結晶の頂面30uに、c面以外の傾斜界面30iで構成される複数の凹部30pを生じさせ、c面30cを消失させることで形成される複数の谷部30vおよび複数の頂部30tを有している。下地基板10の主面に垂直な任意の断面を見たときに、最近接頂部間平均距離は、例えば、100μm超である。
また、第1層30は、例えば、成長過程での成長面の違いに基づいて、第1c面成長領域(第1低酸素濃度領域)60と、傾斜界面成長領域(高酸素濃度領域)70と、を有している。
第1c面成長領域60は、c面30cを成長面として成長した領域である。第1c面成長領域60は、例えば、山脈状に形成され、複数の凹部60aおよび複数の凸部60bを有する。複数の凹部60aのそれぞれは、第1c面成長領域60のうち下に凸の変曲点であって、傾斜界面30iが発生した位置に形成される。複数の凹部60aのうち少なくとも1つは、下地基板10の主面10sから上方に離れた位置に設けられている。一方で、複数の凸部60bのそれぞれは、第1c面成長領域60のうち上に凸の変曲点であって、c面30cが消失した位置に形成される。凹部60aおよび凸部60bは、下地基板10の主面10sに沿った方向に交互に形成される。
第1c面成長領域60は、複数の凸部60bのうちの1つを挟んだ両側に、c面30cと傾斜界面30iとの交点の軌跡として設けられる一対の傾斜部60iを有している。
一対の傾斜部60iのなす角度βは、例えば、70°以下、好ましくは、20°以上65°以下である。一対の傾斜部60iのなす角度βが70°以下であることは、第1成長条件において、第1層30のうちのc面30cに対して最も傾斜した傾斜界面30iの成長レートGに対する、第1層30のうちのc面30cの成長レートGc1の比率Gc1/Gが高かったことを意味する。これにより、c面以外の傾斜界面30iを容易に生じさせることができる。その結果、傾斜界面30iが露出した位置で、転位を容易に屈曲させることが可能となる。また、一対の傾斜部60iのなす角度βを70°以下とすることで、下地基板10の主面10sの上方に、複数の谷部30vおよび複数の頂部30tを容易に生じさせることができる。さらに、一対の傾斜部60iのなす角度βを65°以下とすることで、c面以外の傾斜界面30iをさらに容易に生じさせることができ、下地基板10の主面10sの上方に、複数の谷部30vおよび複数の頂部30tをさらに容易に生じさせることができる。なお、一対の傾斜部60iのなす角度βを20°以上とすることで、第1層30の谷部30vから頂部30tまでの高さが高くなることを抑制し、第2層40が鏡面化するまでの厚さが厚くなることを抑制することができる。
一方で、傾斜界面成長領域70は、c面以外の傾斜界面30iを成長面として成長した領域である。傾斜界面成長領域70の下面は、例えば、第1c面成長領域60の形状に倣って形成される。傾斜界面成長領域70は、下地基板10の主面に沿って連続して設けられている。
傾斜界面成長領域70では、第1c面成長領域60と比較して、酸素を取り込みやすい。このため、傾斜界面成長領域70中の酸素濃度は、第1c面成長領域60中の酸素濃度よりも高くなる。なお、傾斜界面成長領域70中に取り込まれる酸素は、例えば、HVPE装置内に意図せずに混入する酸素、またはHVPE装置を構成する部材(石英部材等)から放出される酸素等である。
なお、第1c面成長領域60中の酸素濃度は、例えば、5×1016cm-3以下、好ましくは3×1016cm-3以下である。一方で、傾斜界面成長領域70中の酸素濃度は、例えば、3×1018cm-3以上5×1019cm-3以下である。
第2層40は、例えば、成長過程での成長面の違いに基づいて、傾斜界面成長領域70と、第2c面成長領域(第2低酸素濃度領域)80と、を有している。
第2層40における傾斜界面成長領域70の上面は、例えば、複数の凹部70aおよび複数の凸部70bを有している。傾斜界面成長領域70の複数の凹部70aは、上述のように、c面40cが再度発生した位置に形成されている。また、傾斜界面成長領域70の複数の凹部70aは、それぞれ、第1c面成長領域60の複数の凸部60bの上方に形成されている。一方で、傾斜界面成長領域70の複数の凸部70bは、上述のように、傾斜界面40iが消失した位置に形成されている。また、傾斜界面成長領域70の複数の凸部70bは、それぞれ、第1c面成長領域60の複数の凹部60aの上方に形成されている。
また、第2層40のうち傾斜界面成長領域70の上端で下地基板10の主面10sに略平行な面が、第2層40で傾斜界面40iが消失した位置の境界面40bとなる。
第2c面成長領域80は、c面40cを成長面として成長した領域である。第2c面成長領域80では、傾斜界面成長領域70と比較して、酸素の取り込みが抑制される。このため、第2c面成長領域80中の酸素濃度は、傾斜界面成長領域70中の酸素濃度よりも低くなる。第2c面成長領域80中の酸素濃度は、例えば、SIMSによる検出下限以下である。
本実施形態では、第1層30の成長過程で、c面以外の傾斜界面30iが露出した位置で、該傾斜界面30iに対して略垂直な方向に向けて、転位が屈曲して伝播することで、第2層40では、複数の転位の一部が消失したり、複数の転位の一部がc面拡大層42の表面側に伝播することが抑制されたりしている。これにより、第2層40の表面における転位密度は、下地基板10の主面10sにおける転位密度よりも低減されている。
また、本実施形態では、第2層40の表面における転位密度は、厚さ方向に急激に低減される。
ここで、下地基板10の主面10sにおける転位密度をNとし、第2層40のうち傾斜界面40iが消失した位置の境界面40bにおける転位密度をNとする。なお、境界面40bにおける平均転位密度をNとする。一方で、下地基板10の主面10s上にc面のみを成長面としてIII族窒化物半導体の結晶層を、本実施形態の下地基板10の主面から境界面40bまでの厚さと等しい厚さでエピタキシャル成長させた場合(以下、「c面限定成長の場合」ともいう)の、結晶層の表面における転位密度をN’とする。
c面限定成長の場合では、結晶層の表面における転位密度は、当該結晶層の厚さに対して反比例する傾向があった。具体的には、c面限定成長の場合では、結晶層の厚さが1.5mmのときに、N’/Nで求められる転位密度の減少率は、およそ0.6であった。
これに対し、本実施形態では、N/Nで求められる転位密度の低減率が、例えば、c面限定成長の場合におけるN’/Nで求められる転位密度の低減率よりも小さい。
具体的には、本実施形態では、第2層40のうち傾斜界面40iが消失した位置の境界面40bの、下地基板10の主面10sからの厚さは、例えば、1.5mm以下、好ましくは1.2mm以下である。また、本実施形態では、上述のN/Nで求められる転位密度の低減率は、例えば、0.3以下、好ましくは0.23以下、より好ましくは0.15以下である。
なお、本実施形態において、下地基板10の主面10sから境界面40bまでの厚さの下限値は、薄ければ薄いほどよいため、限定されるものではない。しかしながら、第1工程S200および第2工程S300において、傾斜界面30iを生じさせてから傾斜界面40iを消失させるまでの過程を考慮すると、下地基板10の主面10sから境界面40bまでの厚さは、例えば、200μm超である。
また、本実施形態において、転位密度の低減率の下限値は、小さければ小さいほどよいため、限定されるものではない。しかしながら、下地基板10の主面10sから境界面40bまでの厚さが1.5mm以下であることを考慮すると、転位密度の低減率は、例えば、0.01以上である。
その他、本実施形態では、第2層40の表面全体は+c面により構成されており、第1層30および第2層40は、それぞれ、極性反転区(インバージョンドメイン)を含んでいない。この点において、本実施形態の積層構造体90は、いわゆるDEEP(Dislocation Elimination by the Epitaxial-growth with inverse-pyramidal Pits)法により形成された積層構造体とは異なり、すなわち、ピットの中心に位置するコアに極性反転区を含む積層構造体とは異なっている。
(3)窒化物半導体基板(窒化物半導体自立基板、窒化物結晶基板)
次に、本実施形態に係る窒化物半導体基板50について説明する。
本実施形態において、上述の製造方法によって得られる基板50は、例えば、III族窒化物半導体の単結晶からなる自立基板である。本実施形態では、基板50は、例えば、GaN自立基板である。
基板50の直径は、例えば、2インチ以上である。また、基板50の厚さは、例えば、300μm以上1mm以下である。
基板50の導電性は特に限定されるものではないが、基板50を用いて縦型のショットキーバリアダイオード(SBD)としての半導体装置を製造する場合には、基板50は例えばn型であり、基板50中のn型不純物は例えばSiまたはゲルマニウム(Ge)であり、基板50中のn型不純物濃度は例えば1.0×1018cm-3以上1.0×1020cm-3以下である。
基板50は、例えば、エピタキシャル成長面となる主面50sを有している。本実施形態において、主面50sに対して最も近い低指数の結晶面は、例えば、c面50cである。
なお、基板50の主面50sは、例えば、鏡面化されており、基板50の主面50sの二乗平均粗さRMSは、例えば、1nm未満である。
また、本実施形態において、上述の製造方法によって得られる基板50中の不純物濃度は、フラックス法またはアモノサーマル法などによって得られる基板よりも低くなっている。
具体的には、基板50中の水素濃度は、例えば、1×1017cm-3未満、好ましくは5×1016cm-3以下である。
また、本実施形態では、基板50は、c面40cを成長面として成長した本成長層44をスライスすることで形成されるため、傾斜界面30iまたは傾斜界面40iを成長面として成長した傾斜界面成長領域70を含んでいない。すなわち、基板50の全体は、低酸素濃度領域により構成されている。
具体的には、基板50中の酸素濃度は、例えば、5×1016cm-3以下、好ましくは3×1016cm-3以下である。
(c面の湾曲、およびオフ角のばらつき)
図9(b)および(c)に示すように、本実施形態では、基板50の主面50sに対して最も近い低指数の結晶面としてのc面50cは、例えば、上述した基板50の製造方法に起因して、主面50sに対して凹の球面状に湾曲している。
本実施形態では、基板50のc面50cは、例えば、m軸に沿った断面およびa軸に沿った断面のそれぞれにおいて球面近似される曲面状となっている。
本実施形態では、基板50のc面50fが上述のように凹の球面状に湾曲していることから、少なくとも一部のc軸50caは、主面50sの法線に対して傾斜している。主面50sの法線に対してc軸50caがなす角度であるオフ角θは、主面50s内で所定の分布を有している。
なお、主面50sの法線に対するc軸50caのオフ角θのうち、m軸に沿った方向成分を「θ」とし、a軸に沿った方向成分を「θ」とする。なお、θ=θ +θ である。
本実施形態では、基板50のc面50cが上述のように凹の球面状に湾曲していることから、オフ角m軸成分θおよびオフ角a軸成分θは、それぞれ、xの一次式およびyの一次式で近似的に表すことができる。
本実施形態では、基板50のc面50cの曲率半径は、例えば、上述した基板50の製造方法で用いる下地基板10のc面10cの曲率半径よりも大きくなっている。
具体的には、基板50のc面50cの曲率半径は、例えば、23m以上、好ましくは30m以上、さらに好ましくは40m以上である。
なお、参考までに、c面限定成長の場合であっても、本実施形態の第1層30および第2層40の合計厚さと同じ厚さを有する結晶層からスライスした基板におけるc面の曲率半径は、下地基板10のc面10cの曲率半径よりも大きくなることがある。しかしながら、c面限定成長の場合において、結晶層の厚さを2mmとしたときの、該結晶層からスライスした基板におけるc面の曲率半径は、約11mであり、下地基板10のc面10cの曲率半径の約1.4倍程度である。
本実施形態では、基板50のc面50cの曲率半径の上限値は、大きければ大きいほどよいため、特に限定されるものではない。基板50のc面50cが略平坦となる場合は、該c面50cの曲率半径が無限大であると考えればよい。
また、本実施形態では、基板50のc面50cの曲率半径が大きいことにより、基板50の主面50sの法線に対するc軸50caのオフ角θのばらつきを、下地基板10のc軸10caオフ角のばらつきよりも小さくすることができる。
具体的には、基板50の(0002)面のX線ロッキングカーブ測定を行い、該(0002)面の回折ピーク角度に基づいて、主面50sの法線に対するc軸50caのオフ角θを測定したときに、主面50sの中心から直径29.6mm内におけるオフ角θの大きさの最大最小差で求められるばらつきは、例えば、0.075°以下、好ましくは0.057°以下、さらに好ましくは0.043°以下である。
なお、参考までに、上述のVAS法で作製された下地基板10において、上述の測定方法によって求められるc軸10caのオフ角のばらつきは、およそ0.22°である。また、c面限定成長の場合に、結晶層の厚さを本実施形態の第1層30および第2層40の合計厚さと同じ厚さ(例えば2mm)としたときに、該結晶層から得られる窒化物半導体基板において、上述の測定方法によって求められるc軸のオフ角のばらつきは、およそ0.15°である。
本実施形態では、基板50のc軸50caのオフ角θのばらつきの下限値は、小さければ小さいほどよいため、特に限定されるものではない。基板50のc面50cが略平坦となる場合は、基板50のc軸50caのオフ角θのばらつきが0°であると考えればよい。
また、本実施形態では、基板50の主面50sに対して等方的にc面50cの湾曲が小さくなるため、c面50cの曲率半径には、方向依存性が小さい。
具体的には、上述の測定方法で求められるa軸に沿った方向におけるc面50cの曲率半径と、m軸に沿った方向におけるc面50cの曲率半径との差は、例えば、これらのうち大きいほうの曲率半径の50%以下、好ましくは20%以下である。
(暗点)
次に、本実施形態の基板50の主面50sにおける暗点について説明する。なお、ここでいう「暗点」とは、転位だけでなく、異物または点欠陥を起因とした非発光中心も含んでいる。
本実施形態では、VAS法により作製された高純度のGaN単結晶からなる下地基板10を用いて基板50が製造されているため、基板50中に、異物または点欠陥を起因とした非発光中心が少ない。したがって、多光子励起顕微鏡等により基板50の主面を観察したときの暗点の95%以上、好ましくは99%以上は、異物または点欠陥を起因とした非発光中心ではなく、転位となる。なお、「多光子励起顕微鏡」とは、二光子励起蛍光顕微鏡と呼ばれることもある。
また、本実施形態では、上述の製造方法により、第2層40の表面における転位密度が、下地基板10の主面10sにおける転位密度よりも低減されている。これにより、第2層40をスライスして形成される基板50の主面50sにおいても、転位が低減されている。
また、本実施形態では、上述の製造方法により、加工を施さない状態の下地基板10を用いて、第1工程S200および第2工程S300を行ったことで、第2層40をスライスして形成される基板50の主面50sにおいて、転位の集中に起因した転位密度が高い領域が形成されておらず、転位密度が低い領域が均一に形成されている。
具体的には、本実施形態では、多光子励起顕微鏡により視野250μm角で基板50の主面50sを観察して暗点密度から転位密度を求めたときに、転位密度が3×10cm-2を超える領域が存在せず、転位密度が1×10cm-2未満である領域が主面50sの80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上存在する。
言い換えれば、本実施形態では、基板50の主面50s全体を平均した転位密度は、例えば、1×10cm-2未満であり、好ましくは、5.5×10cm-2未満であり、より好ましくは3×10cm-2以下である。
なお、本実施形態の製造方法を用いた場合では、転位密度が1×10cm-2未満である領域の割合の上限値は、例えば、主面50sの99%となる。
また、本実施形態の基板50の主面50sは、例えば、上述の第1工程S200での最近接頂部間平均距離Lに基づいて、50μm角以上の無転位領域を含んでいる。また、本実施形態の基板50の主面50sは、例えば、重ならない50μm角の無転位領域を100個/cm以上の密度で有している。
次に、本実施形態の基板50における転位のバーガースベクトルについて説明する。
本実施形態では、上述の製造方法で用いられる下地基板10の主面10sにおける転位密度が低いため、下地基板10上に第1層30および第2層40を成長させる際に、複数の転位が結合(混合)することが少ない。これにより、第2層40から得られる基板50内において、大きいバーガースベクトルを有する転位の生成を抑制することができる。
具体的には、a軸方向の格子定数をa、c軸方向の格子定数をcとしたときに、本実施形態の基板50が有する複数の転位のうち、バーガースベクトルの大きさが、例えば、a、a+c、またはcのうちいずれかである転位が多い。言い換えれば、基板50の主面50sの所定面積内において、複数の転位の全数に対する、バーガースベクトルの大きさが、a、a+cまたはcのうちいずれかである転位の数の割合は、例えば、90%以上である。なお、ここでの「バーガースベクトル」は、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)を用いた大角度収束電子回折法(LACBED法)により測定可能である。また、バーガースベクトルの大きさがaである転位は、刃状転位であり、バーガースベクトルの大きさがa+cである転位は、刃状転位と螺旋転位とが混合した混合転位であり、バーガースベクトルの大きさがcである転位は、螺旋転位である。
(スリット幅を異ならせたX線ロッキングカーブ測定について)
ここで、発明者は、入射側のスリット幅を異ならせてX線ロッキングカーブ測定を行うことにより、本実施形態の基板50を構成する結晶のモザイシティと、上述のc面50cの湾曲(反り)と、の両方を同時に評価することができることを見出した。
まず、X線ロッキングカーブ測定における結晶のモザイシティの影響について説明する。
ここでいう「結晶のモザイシティ」とは、結晶面方位の広がりのことを意味する。結晶において、転位が多いほど、結晶面方位がランダムに傾き、結晶のモザイシティが高くなる傾向がある。特に、複数の転位が線状に配列し、リネージを形成している場合には、リネージを介して隣接する亜結晶粒同士の結晶面方位がずれ、結晶のモザイシティが高くなり易い。このように結晶のモザイシティが高い場合では、X線ロッキングカーブ測定を行うと、モザイシティに起因して、結晶面の回折角度の揺らぎ(変動、分布幅)が大きくなる。
次に、図10(a)を用い、X線ロッキングカーブ測定におけるc面50cの湾曲の影響について説明する。図10(a)は、湾曲したc面に対するX線の回折を示す概略断面図である。
X線の入射側のスリットの幅をaとし、基板の主面に照射されるX線の照射幅(フットプリント)をbとし、結晶のブラッグ角度をθとしたとき、基板の主面におけるX線の照射幅bは、以下の式(h)で求められる。
b=a/sinθ ・・・(h)
図10(a)に示すように、基板のc面が湾曲している場合では、c面の曲率半径をRとし、X線の照射幅bの範囲において湾曲したc面が形成する中心角度の半分をγとしたときに、c面の曲率半径Rは、X線の照射幅bに対して非常に大きい。このことから、角度γは、以下の式(i)で求められる。
γ=sin-1(b/2R)≒b/2R ・・・(i)
このとき、基板のc面のうちX線が照射される領域の入射側の端部(図中右側端部)では、基板の主面に対する回折角度は、θ+γ=θ+b/2Rとなる。
一方、基板のc面のうちX線が照射される領域の受光側の端部(図中左側端部)では、基板の主面に対する回折角度は、θ-γ=θ-b/2Rとなる。
したがって、基板のc面のうち上記入射側の端部における基板の主面に対する回折角度と、基板のc面のうち上記受光側の端部における基板の主面に対する回折角度との差分により、湾曲したc面に対するX線の回折角度の揺らぎは、b/Rとなる。
図10(b)および(c)は、c面の曲率半径に対する、(0002)面の回折角度の揺らぎを示す図である。なお、図10(b)の縦軸が対数スケールとなっており、図10(c)の縦軸がリニアスケールとなっている。
図10(b)および(c)に示すように、X線の入射側のスリットの幅aを大きくし、すなわちX線の照射幅bを大きくした場合では、X線の照射幅bに応じて、(0002)面の回折角度の揺らぎが大きくなる。また、c面の曲率半径Rが小さくなるにつれて、(0002)面の回折角度の揺らぎは徐々に大きくなる。また、X線の照射幅bを異ならせたときの、(0002)面の回折角度の揺らぎの差は、c面の曲率半径Rが小さくなるにつれて、大きくなる。
実際に、結晶のモザイシティが低い基板のX線ロッキングカーブ測定を行った場合では、入射側のスリットの幅aが狭いときには、(0002)面の回折角度の揺らぎのうち、c面の湾曲による成分が小さく、結晶のモザイシティによる成分が支配的となる。しかしながら、入射側のスリットの幅aが広いときには、(0002)面の回折角度の揺らぎにおいて、結晶のモザイシティによる成分と、c面の湾曲による成分との両方が重畳されることとなる。したがって、入射側のスリットの幅aを異ならせてX線ロッキングカーブ測定を行えば、結晶のモザイシティと、c面の湾曲(反り)と、の両方を同時に評価することが可能となる。
ここで、本実施形態の基板50についてX線ロッキングカーブ測定を行ったときの特徴について説明する。
以下において、Ge(220)面の2結晶モノクロメータおよびスリットを介して基板50の主面50sに対してCuのKα1のX線を照射し、(0002)面回折のX線ロッキングカーブ測定を行った場合に、スリットのω方向の幅を1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅を「FWHMa」とし、スリットのω方向の幅を0.1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅を「FWHMb」とする。なお、「ω方向」とは、X線ロッキングカーブ測定において、基板50の中心を通り基板50の主面に平行な軸を中心軸として基板50を回転させたときの回転方向(周方向)のことをいう。
本実施形態の基板50では、上述のように、主面50sの広い範囲に亘って、転位が少なく、結晶のモザイシティが低い。
その結果、本実施形態の基板50の主面50s内に5mm間隔で設定した複数の測定点において、スリットのω方向の幅を0.1mmとして(0002)面回折のX線ロッキングカーブ測定を行ったときに、例えば、全測定点の90%以上において、(0002)面回折の半値幅FWHMbは、80arcsec以下である。
また、本実施形態の基板50では、入射側のスリット幅を広くしてX線ロッキングカーブ測定を行ったときの(0002)面の回折スペクトルが、入射側のスリット幅を狭くしてX線ロッキングカーブ測定を行ったときの(0002)面の回折スペクトルよりも狭くなり難い傾向がある。
その結果、本実施形態の基板50では、スリットのω方向の幅を1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅FWHMaは、例えば、スリットのω方向の幅を0.1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅FWHMb以上となりうる。
また、本実施形態の基板50では、上述のように、主面50sの広い範囲に亘って、転位が少なく、結晶のモザイシティが低い。さらに、基板50のc面50cの湾曲が小さく、c面50cの曲率半径が大きい。これらにより、本実施形態の基板50において、入射側のスリット幅を広くしてX線ロッキングカーブ測定を行ったとしても、(0002)面の回折角度の揺らぎはあまり大きくならず、また、入射側のスリット幅を異ならせてX線ロッキングカーブ測定を行ったとしても、(0002)面の回折角度の揺らぎの差は小さくなる。
その結果、本実施形態の基板50の所定の測定点(例えば主面の中心)において、スリットのω方向の幅を1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅FWHMaから、スリットのω方向の幅を0.1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅FWHMbを引いた差FWHMa-FWHMbは、例えば、FWHMaの(0%以上)30%以下、好ましくは22%以下である。
なお、本実施形態の基板50では、FWHMa<FWHMbとなったとしても、|FWa-FWHMb|は30%以下となる。
なお、参考までに、上述のVAS法で作製された下地基板10では、比較的、c面10cの湾曲が大きく、c面10cの曲率半径が小さいため、下地基板10における差FWHMa-FWHMbは、例えば、FWHMaの50%以上となる。
(4)本実施形態により得られる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
(a)第1工程S200において、第1層30を構成する単結晶の表面にc面以外の傾斜界面30iを生じさせることで、傾斜界面30iが露出した位置で、該傾斜界面30iに対して略垂直な方向に向けて、転位を屈曲させて伝播させることができる。これにより、転位を局所的に集めることができる。転位を局所的に集めることで、互いに相反するバーガースベクトルを有する転位同士を消失させることができる。または、局所的に集められた転位がループを形成することで、転位が第2層40の表面側に伝播することを抑制することができる。このようにして、第2層40の表面における転位密度を低減することができる。その結果、下地基板10よりも転位密度を低減させた基板50を得ることができる。
(b)上述のように、第2層40の成長過程で、複数の転位の一部を消失させたり、複数の転位の一部を第2層40の表面側に伝播することを抑制したりすることで、c面限定成長の場合よりも、急激に早く、転位密度を低減することができる。すなわち、本実施形態におけるN/Nで求められる転位密度の低減率を、c面限定成長の場合におけるN’/Nで求められる転位密度の減少率よりも小さくすることができる。その結果、下地基板10よりも転位密度を低減させた基板50を効率よく得ることができ、その生産性を向上させることが可能となる。
(c)第1工程S200では、第1層30の頂面30uからc面30cを消失させる。これにより、第1層30の表面に、複数の谷部30vおよび複数の頂部30tを形成することができる。その結果、下地基板10から伝播する転位を、第1層30における傾斜界面30iが露出した位置で、確実に屈曲させることができる。
ここで、第1工程において、c面が残存した場合について考える。この場合、c面が残存した部分では、下地基板から伝播した転位が、屈曲されずに略鉛直上方向に伝播し、第2層の表面にまで到達する。このため、c面が残存した部分の上方では、転位が低減されず、高転位密度領域が形成されてしまう。
これに対し、本実施形態によれば、第1工程S200において、第1層30の頂面30uからc面30cを消失させることで、第1層30の表面をc面以外の傾斜界面30iのみにより構成することができ、第1層30の表面に、複数の谷部30vおよび複数の頂部30tを形成することができる。これにより、下地基板10から伝播する転位を、第1層30の表面全体に亘って、確実に屈曲させることができる。転位を確実に屈曲させることで、複数の転位の一部を消失させ易くし、または、複数の転位の一部を第2層40の表面側に伝播し難くすることができる。その結果、第2層40から得られる基板50の主面1s全体に亘って転位密度を低減することが可能となる。
(d)本実施形態では、下地基板10の主面10sのRMSを1nm以上とすることで、第1工程S200において下地基板10上に第1層30を成長させるときに、第1層30の表面でのc面以外の傾斜界面30iの発生を促すことができる。
また、本実施形態では、下地基板10の加工によって導入される結晶歪みを、該下地基板10の主面10s側に残存させる。このとき、加工後の下地基板10の主面10sに対する入射角を2°としてX線ロッキングカーブ測定を行ったときの、(10-10)面回折の半値幅(FWHM)を、加工前の下地基板10の半値幅よりも大きくし、60arcsec以上とする。これにより、下地基板10の主面10s側における結晶歪みに起因して、第1層30の表面に現れる安定な結晶面を変化させることができる。その結果、第1層30の表面にc面以外の傾斜界面30iを生じさせることができる。
(e)本実施形態では、上述の下地基板10を用い、且つ、式(1)を満たすように第1成長条件を調整することで、第1工程S200において、傾斜界面30iとして、m≧3である{11-2m}面を生じさせることができる。これにより、c面30cに対する{11-2m}面の傾斜角度を緩やかにすることができる。具体的には、該傾斜角度を47.3°以下とすることができる。c面30cに対する{11-2m}面の傾斜角度を緩やかにすることとで、複数の頂部30tの周期を長くすることができる。具体的には、下地基板10の主面10sに垂直な任意の断面を見たときに、最近接頂部間平均距離Lを100μm超とすることができる。
なお、参考までに、通常、所定のエッチャントを用い窒化物半導体基板にエッチピットを生じさせると、該基板の表面に、{1-10n}面により構成されるエッチピットが形成される。これに対し、本実施形態において所定の条件で成長させた第1層30の表面では、m≧3である{11-2m}面を生じさせることができる。したがって、通常のエッチピットに比較して、本実施形態では、製法特有の傾斜界面30iが形成されると考えられる。
(f)本実施形態では、下地基板10の主面10sに垂直な任意の断面を見たときに、最近接頂部間平均距離Lを100μm超とすることで、転位が屈曲して伝播する距離を、少なくとも50μm超、確保することができる。これにより、第1層30のうち一対の頂部30t間の略中央の上方に、充分に転位を集めることができる。その結果、第2層40の表面における転位密度を充分に低減させることができる。
(g)第1工程S200では、第1層30の表面からc面30cを消失させた後に、該表面が傾斜界面30iのみで構成された状態を維持しつつ、所定の厚さに亘って第1層30の成長を継続させる。これにより、第1層30の表面全体に亘って確実にc面30cを消失させることができる。例えば、たとえ傾斜界面拡大工程S220において第1層30の表面でc面30cが消失するタイミングがずれ、傾斜界面拡大層32の一部にc面30cが残存していたとしても、確実にc面30cを消失させることができる。
また、c面30cが消失した後に、第1層30の傾斜界面30iによる成長を継続することで、傾斜界面30iが露出した位置で転位を屈曲させる時間を充分に確保することができる。ここで、c面が消失してから直ぐにc面成長をさせると、転位が充分に屈曲されずに、第2層の表面に向けて略鉛直方向に伝播してしまう可能性がある。これに対し、本実施形態では、c面以外の傾斜界面30iが露出した位置で転位を屈曲させる時間を充分に確保することで、特に第1層30の頂部30t付近の転位を確実に屈曲させることができ、下地基板10から第2層40の表面に向けて略鉛直方向に転位が伝播することを抑制することができる。これにより、第1層30の頂部30tの上方における転位の集中を抑制することができる。
(h)本実施形態の製造方法により、基板50のc面50cの曲率半径を、下地基板10のc面10cの曲率半径よりも大きくすることができる。これにより、基板50の主面50sの法線に対するc軸50caのオフ角θのばらつきを、下地基板10のc軸10caオフ角のばらつきよりも小さくすることができる。
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
上述の実施形態では、下地基板10がGaN自立基板である場合について説明したが、下地基板10は、GaN自立基板に限らず、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウム(InN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)等のIII族窒化物半導体、すなわち、AlInGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の組成式で表されるIII族窒化物半導体からなる自立基板であってもよい。
上述の実施形態では、基板50がGaN自立基板である場合について説明したが、基板50は、GaN自立基板に限らず、例えば、AlN、AlGaN、InN、InGaN、AlInGaN等のIII族窒化物半導体、すなわち、AlInGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の組成式で表されるIII族窒化物半導体からなる自立基板であってもよい。
上述の実施形態では、基板50がn型である場合について説明したが、基板50はp型であったり、または半絶縁性を有していたりしてもよい。例えば、基板50を用いて高電子移動度トランジスタ(HEMT)としての半導体装置を製造する場合には、基板50は、半絶縁性を有していることが好ましい。
上述の実施形態では、第1工程S200において、第1成長条件として主に成長温度を調整する場合について説明したが、第1成長条件が式(1)を満たせば、当該第1成長条件として、成長温度以外の成長条件を調整したり、成長温度と成長温度以外の成長条件とを組み合わせて調整したりしてもよい。
上述の実施形態では、第2工程S300において、第2成長条件として主に成長温度を調整する場合について説明したが、第2成長条件が式(2)を満たせば、当該第2成長条件として、成長温度以外の成長条件を調整したり、成長温度と成長温度以外の成長条件とを組み合わせて調整したりしてもよい。
上述の実施形態では、傾斜界面維持工程S240での成長条件を、傾斜界面拡大工程S220と同様に、上述の第1成長条件で維持する場合について説明したが、傾斜界面維持工程S240での成長条件が第1成長条件を満たせば、該傾斜界面維持工程S240での成長条件を、傾斜界面拡大工程S220での成長条件と異ならせてもよい。
上述の実施形態では、本成長工程S340での成長条件を、c面拡大工程S320と同様に、上述の第2成長条件で維持する場合について説明したが、本成長工程S340での成長条件が第2成長条件を満たせば、該本成長工程S340での成長条件を、c面拡大工程S320での成長条件と異ならせてもよい。
上述の実施形態では、スライス工程S170およびスライス工程S400において、ワイヤーソーを用い、第2結晶層6または本成長層44をスライスする場合について説明したが、例えば、外周刃スライサー、内周刃スライサー、放電加工機等を用いてもよい。
上述の実施形態では、積層構造体90のうちの本成長層44をスライスすることで、基板50を得る場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、積層構造体90をそのまま用いて、半導体装置を作製するための半導体積層物を製造してもよい。具体的には、積層構造体90を作製したら、半導体積層物作製工程において、積層構造体90上に半導体機能層をエピタキシャル成長させ、半導体積層物を作製する。半導体積層物を作製したら、積層構造体90の裏面側を研磨し、積層構造体90のうち、下地基板10と、第1層30と、c面拡大層42と、を除去する。これにより、上述の実施形態と同様に、本成長層44と、半導体機能層と、を有する半導体積層物が得られる。この場合によれば、基板50を得るためのスライス工程S400および研磨工程S500を省略することができる。
上述の実施形態では、基板50を製造したら、製造工程を終了する場合について説明したが、当該基板50を下地基板10として用い、工程S200~S500を再度行ってもよい。これにより、さらに転位密度を低減させた基板50を得ることができる。また、さらにc軸50caのオフ角θのばらつきを小さくした基板50を得ることができる。また、基板50を下地基板10として用いた工程S200~S500を1サイクルとして、当該サイクルを複数回繰り返してもよい。これにより、サイクルを繰り返す回数に応じて、基板50の転位密度を徐々に低減させていくことができる。また、サイクルを繰り返す回数に応じて、基板50におけるc軸50caのオフ角θのばらつきも徐々に小さくしていくことができる。
以下、本発明の効果を裏付ける各種実験結果について説明する。
(1)実験1
(1-1)窒化物半導体基板の作製
以下のようにして、実施例および比較例の窒化物半導体基板を作製した。なお、実施例については、窒化物半導体基板をスライスする前の積層構造体も作製した。
[実施例の窒化物半導体基板の作製条件]
(下地基板)
材質:GaN
作製方法:VAS法
直径:2インチ
厚さ:400μm
主面に対して最も近い低指数の結晶面:c面
主面に対するマスク層等のパターン加工なし。
主面の二乗平均粗さRMS:2nm
主面のオフ角:m方向に0.4°
XRC測定での(10-10)面回折のFWHM:100arcsec
(第1層)
材質:GaN
成長方法:HVPE法
第1成長条件:
成長温度を980℃以上1,020℃以下とし、V/III比を2以上20以下とした。このとき、第1成長条件が式(1)を満たすように、成長温度およびV/III比のうち少なくともいずれかをそれぞれ上記範囲のなかで調整した。
(第2層)
材質:GaN
成長方法:HVPE法
成長温度:1,050℃
V/III比:2
なお、上記第2成長条件は、式(2)を満たす。
下地基板の主面から第2層の表面までの厚さ:2mm
(スライス条件)
窒化物半導体基板の厚さ:400μm
カーフロス:200μm
なお、実施例では、加工状態が若干異なる2つの窒化物半導体基板を作製した。
[比較例の窒化物半導体基板の作製条件]
(下地基板)
材質:GaN
作製方法:VAS法
直径:2インチ
厚さ:400μm
主面に対して最も近い低指数の結晶面:c面
主面に対するマスク層等のパターン加工なし。
主面の二乗平均粗さRMS:0.7nm
主面のオフ角:m方向に0.4°
XRC測定での(10-10)面回折のFWHM:50arcsec
(結晶層)
材質:GaN
成長方法:HVPE法
成長温度:1,050℃(実施例の第2層と同じ)
V/III比:2(実施例の第2層と同じ)
なお、上記成長条件は、式(2)を満たす。
下地基板の主面から結晶層の表面までの厚さ:2mm
(スライス条件)
実施例と同じ。
(1-2)評価
(蛍光顕微鏡による観察)
蛍光顕微鏡を用い、実施例の窒化物半導体基板をスライスする前の積層構造体の断面を観察した。
(多光子励起顕微鏡による観察)
多光子励起顕微鏡を用い、下地基板、実施例の窒化物半導体基板、および比較例の窒化物半導体基板のそれぞれの主面を観察した。このとき、視野250μmごとに主面全体に亘って暗点密度を測定することで、転位密度を測定した。なお、これらの基板における暗点の全てが転位であることは、厚さ方向に焦点をずらして測定することにより確認している。また、このとき、視野250μmでの全測定領域数に対する、転位密度が1×10cm-2未満である領域(低転位密度領域)の数の割合を求めた。なお、ここでいう「低転位密度領域」とは、後述の結果で示すように、第1工程を行わずに結晶層を成長させた比較例の、結晶層の主面における平均転位密度よりも低い転位密度を有する領域のことを意味する。
(X線ロッキングカーブ測定)
下地基板、実施例の窒化物半導体基板、および比較例の窒化物半導体基板のそれぞれについて、以下の2種類のX線ロッキングカーブ測定を行った。
X線ロッキングカーブ測定には、スペクトリス社製「X’Pert-PRO MRD」を用い、入射側のモノクロメータとしては、同社製「ハイブリッドモノクロメータ」を用いた。ハイブリッドモノクロメータは、X線光源側から順に、X線ミラーと、Ge(220)面の2結晶と、を有する。当該測定では、まず、X線光源から放射されるX線を、X線ミラーにより平行光とする。これにより、使用されるX線のフォトン数(すなわちX線強度)を増加させることができる。次に、X線ミラーからの平行光を、Ge(220)面の2結晶により、CuのKα1の単色光とする。次に、Ge(220)面の2結晶からの単色光を、スリットを介して所定の幅に狭め、基板に入射させる。なお、当該ハイブリッドモノクロメータを用いたときの分解能は、約24arcsecである。
なお、当該測定において基板に入射されるX線は、ω方向に沿った断面では基板側に向かう平行光とされるが、ω方向に直交する方向(基板の回転軸方向)に沿った断面では平行光になっていない。このため、X線がスリットから基板に到達するまでの間において、X線のω方向の幅はほぼ一定であるが、X線のω方向に直交する方向の幅は広がる。したがって、X線ロッキングカーブ測定において、所定の結晶面で回折されるX線の半値幅は、入射側のスリットのうち、X線が平行光となったω方向の幅に依存するものとなる。
(X線ロッキングカーブ測定1)
入射側スリットのω方向の幅を0.1mmとし、下地基板、実施例の窒化物半導体基板、および比較例の窒化物半導体基板のそれぞれの、(0002)面のX線ロッキングカーブ測定を行った。このとき、それぞれの基板の主面内のうちm軸方向およびa軸方向のそれぞれに5mm間隔で設定した複数の測定点において、該測定を行った。測定の結果、各測定点における(0002)面の回折ピーク角度に基づいて、c面の曲率半径と、主面の法線に対するc軸のなす角度であるオフ角と、を求めた。また、主面の中心から直径29.6mm内におけるオフ角の大きさの最大最小差として、オフ角のばらつきを求めた。また、各測定点において、入射側スリットのω方向の幅を0.1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅FWHMbを求めた。
(X線ロッキングカーブ測定2)
入射側スリットのω方向の幅を1mmとし、下地基板および実施例の窒化物半導体基板のそれぞれについて、X線ロッキングカーブ測定を行った。なお、該測定は、それぞれの基板における主面の中心で行った。測定の結果、入射側スリットのω方向の幅を1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅FWHMaを求めた。さらに、それぞれの基板における主面の中心において、FWHMaに対するFWHMa-FWHMbの割合を求めた。
なお、X線ロッキングカーブ測定1および2において、それぞれの基板の主面に対して(0002)面のブラッグ角17.28°でX線が入射した場合、スリットのω方向の幅が0.1mmのとき、X線のフットプリントは約0.337mmとなり、スリットのω方向の幅が1mmのとき、X線のフットプリントは約3.37mmとなる。
(1-3)結果
結果を表1に示す。
Figure 0007166998000001
また、図11は、実施例の積層構造体の断面を蛍光顕微鏡により観察した観察像を示す図である。図12は、多光子励起顕微鏡を用い、実施例の窒化物半導体基板の主面を観察した図である。
図11に示すように、実施例の積層構造体では、第1層は、成長過程での成長面の違い(すなわち、酸素濃度の違い)に基づいて、c面を成長面として成長した第1c面成長領域と、傾斜界面を成長面として成長した傾斜界面成長領域と、を有していた。第1c面成長領域は、複数の凹部および複数の凸部を有していた。第1c面成長領域のうち一対の傾斜部のなす角度の平均値は、およそ52°だった。また、最近接頂部間平均距離は、およそ234μmであった。また、下地基板の主面から第1c面成長領域の頂部までの高さは、およそ298~866μmであった。また、傾斜界面成長領域は、下地基板の主面に沿って連続して形成されていた。また、第2層のうち傾斜界面が消失した位置の境界面の、下地基板の主面からの厚さは、およそ1mmであった。
表1に示すように、実施例の窒化物半導体基板では、主面における平均転位密度が、下地基板および比較例の窒化物半導体基板に比べて、大幅に低減され、5.5×cm-2未満であった。比較例のように結晶層を厚く成長させた場合であっても、窒化物半導体基板の転位密度は下地基板よりも低減されるが、実施例の窒化物半導体基板では、転位密度が比較例よりもさらに低減されていた。
また、実施例の窒化物半導体基板の転位密度をNとしたときに、上述のN/Nで求められる転位密度の低減率は、0.15であった。
また、実施例の窒化物半導体基板では、転位密度が3×10cm-2を超える領域が存在しなかった。なお、転位密度が最も高い領域であっても、当該転位密度は、1.5×10cm-2未満であった。また、実施例の窒化物半導体基板では、転位密度が1×10cm-2未満である領域(低転位密度領域)が主面50sの90%以上存在していた。当該低転位密度領域における転位密度は、1.7×10~8.1×10cm-2だった。
また、図12において四角枠で示したように、実施例の窒化物半導体基板の主面は、50μm角以上の無転位領域を含んでいた。
また、表1に示すように、実施例の窒化物半導体基板では、c面の曲率半径が、下地基板および比較例の窒化物半導体基板に比べて大きくなり、22m以上であった。また、実施例の窒化物半導体基板では、直径29.6mm内でのc軸のオフ角のばらつきが、下地基板および比較例の窒化物半導体基板に比べて低減され、0.075°以下であった。比較例のように結晶層を厚く成長させた場合であっても、窒化物半導体基板におけるc軸のオフ角のばらつきが下地基板よりも小さくなるが、実施例の窒化物半導体基板では、c軸のオフ角のばらつきが比較例よりもさらに小さくなっていた。
また、表1に示すように、実施例の窒化物半導体基板では、全測定点(すなわち100%)において、スリットのω方向の幅を0.1mmとしたときの(0002)面回折の半値幅FWHMbは、50arcsec以下であった。
図13(a)は、実施例の窒化物半導体基板について、スリットを異ならせてX線ロッキングカーブ測定を行ったときの、規格化したX線回折パターンを示す図であり、(b)は、下地基板について、実施例と同じ測定を行ったときの、規格化したX線回折パターンを示す図である。なお、図13(a)および(b)は、m軸に沿った方向の測定結果を示している。また、同図において、「Line width」は上述のX線のフットプリントを意味している。
図13(b)に示すように、下地基板では、スリットのω方向の幅を0.1mmとしたときには、X線の回折スペクトルが狭かったが、スリットのω方向の幅を1mmとしたときには、X線の回折スペクトルが広がっていた。
このため、表1に示すように、下地基板では、FWHMa-FWHMbは、FWHMaの50%以上であった。
これに対し、図13(a)に示すように、実施例の基板では、スリットのω方向の幅を0.1mmから1mmに広げた場合であっても、X線の回折スペクトルは若干広がるものの、その広がりは小さかった。
これにより、表1に示すように、実施例の基板では、FWHMa-FWHMbは、FWHMaの0%以上30%以下であった。
以上の実施例によれば、下地基板の主面の二乗平均粗さRMSを1nm以上とし、下地基板の主面のオフ角を0.4°以下とした。また、下地基板の加工によって導入される結晶歪みを該下地基板の主面側に残存させ、加工後の下地基板のXRC測定での(10-10)面回折のFWHMを60arcsec以上とした。これにより、第1層の表面におけるc面以外の傾斜界面の発生を充分に促すことができた。また、第1工程において、式(1)を満たすように第1成長条件を調整した。これにより、第1層の成長過程で、c面を確実に消失させることができた。c面を確実に消失させたことで、第1層における傾斜界面が露出した位置で、転位を確実に屈曲させることができた。その結果、窒化物半導体基板の主面における転位密度を効率よく低減することができたことを確認した。
また、実施例によれば、上述の下地基板を用い、かつ、式(1)を満たすように第1成長条件を調整したことで、最近接頂部間平均距離を100μm超とすることができた。これにより、窒化物半導体基板の主面における転位密度を充分に低減させることができたことを確認した。また、最近接頂部間平均距離を100μm超とすることで、50μm角以上の無転位領域を形成することができたことを確認した。
また、実施例によれば、窒化物半導体基板のc面の曲率半径を、下地基板のc面の曲率半径よりも大きくすることができ、窒化物半導体基板におけるc軸のオフ角のばらつきを、下地基板におけるc軸のオフ角のばらつきを小さくすることができたことを確認した。
また、実施例によれば、上述のように、窒化物半導体基板の主面の広い範囲に亘って、転位が少なく、該基板における結晶のモザイシティが低かった。これにより、実施例の基板では、主面の広い範囲に亘って、FWHMbが50arcsec以下となることを確認した。
また、実施例によれば、上述のように、結晶のモザイシティが低く、且つ、窒化物半導体基板のc面の曲率半径が大きかった。これらにより、実施例では、入射側のスリットの幅を異ならせてX線ロッキングカーブ測定を行ったときの、半値幅の差FWHMa-FWHMbが、FWHMaの30%以下となることを確認した。
(2)実験2
(2-1)積層構造体の作製
第1層の表面に生じる傾斜界面を調べるため、下地基板および第1層を有し第2層を有しない積層構造体を作製した。なお、下地基板および第1層の条件は、実験1の実施例とほぼ同等の条件とした。
(2-2)評価
(光学顕微鏡による観察)
光学顕微鏡を用い、積層構造体の第1層の表面を観察した。
(蛍光顕微鏡による観察)
蛍光顕微鏡を用い、積層構造体の断面を観察した。
(2-3)結果
図14(a)は、実験2の積層構造体の表面を光学顕微鏡により観察した観察像を示す図であり、(b)は、実験2の積層構造体の表面を走査型電子顕微鏡により観察した観察像を示す図である。図15(a)は、実験2の積層構造体のM断面を光学顕微鏡により観察した観察像を示す図であり、(b)は、実験2の積層構造体のM断面を走査型電子顕微鏡により観察した観察像を示す図である。図16(a)は、実験2の積層構造体のa断面を光学顕微鏡により観察した観察像を示す図であり、(b)は、実験2の積層構造体のa断面を走査型電子顕微鏡により観察した観察像を示す図である。
図14(a)~図16(b)に示すように、第1層の頂面には、c面以外の傾斜界面で構成される複数の凹部が生じていた。
図14(a)に示すように、第1層の頂面に生じた凹部内には、光って見える面が6つ形成され、すなわち、凹部は6つの傾斜界面を有していた。
図14(b)に示すように、第1層の頂面に生じた凹部内の稜線(一例を白線で表示)は、中心から均等に6本形成されていた。すなわち、凹部は、逆正六角錘であった。また、下地基板のオリエンテーションフラットの方向から考えて、凹部内の稜線は、<1-100>軸方向に沿っており、また、凹部を構成する傾斜界面は、<11-20>軸から傾斜した方向を法線方向とする面(すなわち{11-2m}面)であった。
図15(a)および(b)が示すM断面(<11-20>軸に沿った方向の断面)は、逆正六角錘の凹部を構成する傾斜界面をほぼ垂直に切断されていた。
図15(a)および(b)に示すように、M断面において、第1層における傾斜界面の、下地基板の主面に対する角度は、約47°以下であった。また、図15(a)に示すように、角度が約47°である傾斜界面が多かった。
一方、図16(a)および(b)に示すa断面(<1-100>軸に沿った方向の断面)は、逆正六角錘の凹部を構成する稜線に沿って切断されていた。
図16(a)および(b)に示すように、a断面において、逆正六角錘の凹部を構成する稜線の、下地基板の主面に対する角度の多くは、約43°であった。逆正六角錘を構成する傾斜界面の角度が47°として稜線の角度を幾何学的に計算すると、稜線の角度が43°となる。このことから、図16(a)および(b)から求められる稜線の角度に基づいても、多くの凹部において、傾斜界面の角度が約47°であったことが裏付けられた。
ここで、GaNの{0001}面に対する{11-2m}の角度は、以下のとおりである。
{11-21}面:72.9°
{11-22}面:58.4°
{11-23}面:47.3°
{11-24}面:39.1°
以上のことから、実験2の条件で成長させた第1層の表面に生じた傾斜界面は、m≧3の{11-2m}面であることを確認した。また、傾斜界面の多くは、{11-23}面であることを確認した。
実験2によれば、実験1と同様に、上述の下地基板を用い、かつ、式(1)を満たすように第1成長条件を調整したことで、傾斜界面として、m≧3である{11-2m}面を生じさせることができた。これにより、第1層において、最近接頂部間平均距離を100μm超とすることができたことを確認した。
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
(付記1)
III族窒化物半導体の単結晶からなり、鏡面化された主面を有し、前記主面に対して最も近い低指数の結晶面が(0001)面である下地基板を準備する工程と、
前記(0001)面が露出した頂面を有するIII族窒化物半導体の単結晶を前記下地基板の前記主面上に直接的にエピタキシャル成長させ、前記(0001)面以外の傾斜界面で構成される複数の凹部を前記頂面に生じさせ、前記下地基板の前記主面の上方に行くにしたがって該傾斜界面を徐々に拡大させ、前記(0001)面を前記頂面から消失させ、表面が前記傾斜界面のみで構成される第1層を成長させる第1工程と、
前記第1層上にIII族窒化物半導体の単結晶をエピタキシャル成長させ、前記傾斜界面を消失させ、鏡面化された表面を有する第2層を成長させる第2工程と、
を有し、
前記第1工程では、
前記単結晶の前記頂面に前記複数の凹部を生じさせ、前記(0001)面を消失させることで、前記第1層の表面に、複数の谷部および複数の頂部を形成する
窒化物半導体基板の製造方法。
(付記2)
前記下地基板を準備する工程では、
前記下地基板の前記主面の二乗平均粗さを、1nm以上とする
付記1に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記3)
前記下地基板を準備する工程では、
前記下地基板の加工によって導入される結晶歪みを該下地基板の前記主面側に残存させ、
加工後の前記下地基板の前記主面に対する入射角を2°としてX線ロッキングカーブ測定を行ったときの、(10-10)面回折の半値幅を、加工前の前記下地基板の前記半値幅よりも大きくし、60arcsec以上200arcsec以下とする
付記1又は2に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記4)
前記第1工程では、
前記主面に垂直な任意の断面を見たときに、前記複数の谷部のうちの1つを挟んで前記複数の頂部のうちで最も接近する一対の頂部同士が前記主面に沿った方向に離間した平均距離を、100μm超とする
付記1~3のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記5)
前記第1工程では、
最も接近する前記一対の頂部同士の前記平均距離を、800μm未満とする
付記4に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記6)
前記第1工程では、
前記(0001)面を前記表面から消失させた後に、前記表面が前記傾斜界面のみで構成された状態を維持しつつ、所定の厚さに亘って前記第1層の成長を継続させる
付記1~5のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記7)
前記下地基板を準備する工程では、
前記(0001)面が前記主面に対して凹の球面状に湾曲した前記下地基板を準備し、
前記第2工程の後に、
前記第2層から少なくとも1つの窒化物半導体基板をスライスし、
前記窒化物半導体基板のうち主面の法線に対する<0001>軸のなす角度であるオフ角のばらつきを、前記下地基板のうち前記主面の法線に対する<0001>軸のなす角度であるオフ角のばらつきよりも小さくする
付記1~6のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記8)
前記第1工程では、式(1)を満たす第1成長条件で、前記第1層を成長させ、
前記第2工程では、式(2)を満たす第2成長条件で、前記第2層を成長させる
付記1~7のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
c1>G/cosα ・・・(1)
c2<G/cosα ・・・(2)
(ただし、前記第1層のうちの前記(0001)面の成長レートをGc1とし、前記第2層のうちの前記(0001)面の成長レートをGc2とし、前記第1層および前記第2層のそれぞれのうち前記(0001)面に対して最も傾斜した前記傾斜界面の成長レートをGとし、前記第1層および前記第2層のそれぞれにおいて前記(0001)面に対して最も傾斜した前記傾斜界面と前記(0001)面とのなす角度をαとする。)
(付記9)
前記第1工程では、
前記第1層に、前記(0001)面を成長面として成長した第1c面成長領域を形成し、
前記第1c面成長領域のうち前記(0001)面が消失した位置に凸部を形成するとともに、前記第1c面成長領域のうち前記凸部を挟んだ両側に、前記(0001)面と前記傾斜界面との交点の軌跡として一対の傾斜部を形成し、
前記一対の傾斜部のなす角度を70°以下とする
付記1~8のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記10)
前記第1工程は、
前記下地基板の上方に行くにしたがって前記傾斜界面を徐々に拡大させ、傾斜界面拡大層を形成する工程と、
前記(0001)面を前記表面から消失させた前記傾斜界面拡大層上に、前記表面が前記(0001)面以外の傾斜界面のみで構成された状態を維持しつつ、所定の厚さに亘って傾斜界面維持層を形成する工程と、
を有する
付記1~9のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記11)
前記第2工程は、
前記第1層の上方に行くにしたがって前記(0001)面を拡大させつつ前記(0001)面以外の傾斜界面を縮小させ、c面拡大層を形成する工程と、
表面が鏡面化された前記c面拡大層上に、前記(0001)面を成長面として所定の厚さに亘って本成長層を形成する工程と、
を有する
付記1~10のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記12)
前記第1工程では、
前記傾斜界面として、m≧3である{11-2m}面を生じさせる
付記1~11のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板の製造方法。
(付記13)
付記1~12のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板の製造方法において、前記第2層をスライスすることにより得られる
窒化物半導体基板。
(付記14)
2インチ以上の直径を有し、最も近い低指数の結晶面が(0001)面である主面を有する窒化物半導体基板であって、
Ge(220)面の2結晶モノクロメータおよびスリットを介して前記主面に対してCuのKα1のX線を照射し、(0002)面回折のX線ロッキングカーブ測定を行った場合に、前記スリットのω方向の幅を1mmとしたときの前記(0002)面回折の半値幅FWHMaから、前記スリットのω方向の幅を0.1mmとしたときの前記(0002)面回折の半値幅FWHMbを引いた差FWHMa-FWHMbは、FWHMaの30%以下である
窒化物半導体基板。
(付記15)
前記主面内に5mm間隔で設定した複数の測定点において、前記スリットのω方向の幅を0.1mmとして前記(0002)面回折のX線ロッキングカーブ測定を行ったときに、全測定点の90%以上において、前記(0002)面回折の半値幅FWHMbは、80arcsec以下である
付記14に記載の窒化物半導体基板。
(付記16)
前記(0002)面回折のX線ロッキングカーブ測定を行った場合に、該(0002)面の回折ピーク角度に基づいて、前記主面の法線に対する<0001>軸のなす角度であるオフ角を測定したときに、前記主面の中心から直径29.6mm内における前記オフ角の大きさの最大最小差で求められるばらつきは、0.075°以下である
付記14又は15に記載の窒化物半導体基板。
(付記17)
2インチ以上の直径を有し、最も近い低指数の結晶面が(0001)面である主面を有する窒化物半導体基板であって、
(0002)面のX線ロッキングカーブ測定を行い、該(0002)面の回折ピーク角度に基づいて、前記主面の法線に対する<0001>軸のなす角度であるオフ角を測定したときに、前記主面の中心から直径29.6mm内における前記オフ角の大きさの最大最小差で求められるばらつきは、0.075°以下である
窒化物半導体基板。
(付記18)
多光子励起顕微鏡により視野250μm角で前記主面を観察して暗点密度から転位密度を求めたときに、前記転位密度が3×10cm-2を超える領域が前記主面に存在せず、前記転位密度が1×10cm-2未満である領域が前記主面の80%以上存在する
付記14~17のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板。
(付記19)
2インチ以上の直径を有する窒化物半導体基板であって、
多光子励起顕微鏡により視野250μm角で前記窒化物半導体基板の主面を観察して暗点密度から転位密度を求めたときに、前記転位密度が3×10cm-2を超える領域が前記主面に存在せず、前記転位密度が1×10cm-2未満である領域が前記主面の80%以上存在する窒化物半導体基板。
(付記20)
前記主面は、重ならない50μm角の無転位領域を100個/cm以上の密度で有する
付記14~19のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板。
(付記21)
前記<0001>軸に沿った方向に延在する複数の転位を有し、
前記<11-20>軸方向の格子定数をa、前記<0001>軸の格子定数をcとしたときに、
前記複数の転位の全数に対する、バーガースベクトルの大きさが、a、a+c、またはcのうちいずれかである転位の数の割合は、90%以上である
付記14~20のいずれか1つに記載の窒化物半導体基板。
(付記22)
III族窒化物半導体の単結晶からなり、鏡面化された主面を有し、前記主面に対して最も近い低指数の結晶面が(0001)面である下地基板と、
前記(0001)面が露出した頂面を有するIII族窒化物半導体の単結晶を前記下地基板の前記主面上に直接的にエピタキシャル成長させ、前記(0001)面以外の傾斜界面で構成される複数の凹部を前記頂面に生じさせ、前記下地基板の前記主面の上方に行くにしたがって該傾斜界面を徐々に拡大させ、(0001)面を前記頂面から消失させることにより形成され、表面が前記傾斜界面のみで構成される第1層と、
前記第1層上にIII族窒化物半導体の単結晶をエピタキシャル成長させ、前記傾斜界面を消失させ、鏡面化された表面を有する第2層と、
を有し、
前記第1層は、前記単結晶の前記頂面に前記複数の凹部を生じさせ、前記(0001)面を消失させることで前記表面に形成される複数の谷部および複数の頂部を有する
積層構造体。
(付記23)
前記第1層は、
前記(0001)面を成長面として成長した第1c面成長領域と、
前記傾斜界面を成長面として成長した傾斜界面成長領域と、
を有し、
前記第2層は、前記(0001)面を成長面として成長した第2c面成長領域を有する
付記22に記載の積層構造体。
(付記24)
前記傾斜界面成長領域は、前記下地基板の前記主面に沿って連続して設けられる
付記23に記載の積層構造体。
(付記25)
前記第1c面成長領域は、
前記(0001)面が消失した位置に設けられる凸部と、
前記凸部を挟んだ両側に、前記(0001)面と前記傾斜界面との交点の軌跡として設けられる一対の傾斜部と、
を有し、
前記一対の傾斜部のなす角度は、70°以下である
付記23又は24に記載の積層構造体。
(付記26)
前記下地基板の前記主面における転位密度をNとし、前記第2層のうち前記傾斜界面が消失した位置の境界面における転位密度をNとしたときに、N/Nで求められる転位密度の低減率は、前記下地基板の前記主面上に前記(0001)面のみを成長面としてIII族窒化物半導体の結晶層を、前記下地基板の前記主面から前記境界面までの厚さと等しい厚さでエピタキシャル成長させた場合の、前記結晶層の表面における転位密度をN’としたときに、N’/Nで求められる転位密度の低減率よりも大きい
付記22~25のいずれか1つに記載の積層構造体。
(付記27)
前記第2層のうち前記傾斜界面が消失した位置の境界面の、前記下地基板の前記主面からの厚さは、1.5mm以下であり、
前記下地基板の前記主面における転位密度をNとし、前記第2層の前記境界面における転位密度をNとしたときに、N/Nで求められる転位密度の低減率は、0.3以下である
付記22~26のいずれか1つに記載の積層構造体。
10 下地基板
30 第1層
40 第2層
50 窒化物半導体基板(基板)

Claims (5)

  1. 2インチ以上の直径を有し、最も近い低指数の結晶面が(0001)面である主面を有する窒化物半導体基板であって、
    多光子励起顕微鏡により視野250μm角で前記主面を観察したときに検出される暗点の95%以上は、異物または点欠陥を起因とした非発光中心ではなく転位に対応しており、
    前記主面は、重ならない50μm角の無転位領域を100個/cm 以上の密度で有する
    窒化物半導体基板。
  2. 前記多光子励起顕微鏡により視野250μm角で前記主面を観察して暗点密度から転位密度を求めたときに、前記転位密度が1×10cm-2未満である領域が前記主面の80%以上存在する
    請求項1に記載の窒化物半導体基板。
  3. 前記多光子励起顕微鏡により視野250μm角で前記主面を観察して暗点密度から転位密度を求めたときに、前記転位密度が3×10cm-2を超える領域が前記主面に存在しない
    請求項1又は2に記載の窒化物半導体基板。
  4. 酸素濃度は、5×10 16 cm -3 以下である
    請求項1~3のいずれか1項に記載の窒化物半導体基板。
  5. 水素濃度は、1×10 17 cm -3 未満である
    請求項1~4のいずれか1項に記載の窒化物半導体基板。
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