JP7166122B2 - ロール体 - Google Patents

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Description

本発明は、ロール体、詳しくは、高周波アンテナや高速伝送基板の製造に好適に用いられる低誘電基板材を備えるロール体に関する。
従来、いわゆる「第三世代(3G)」や「第四世代(4G)」の規格の無線通信が広く利用されている。しかしながら、近年、画像データ等の通信容量がより一層増加する傾向(大容量化の傾向)にあり、上記した規格の無線通信では、大容量のデータを、実用レベルの速度で伝送できない。
そこで、いわゆる「第五世代(5G)」の規格の無線通信の開発が進められている。「第五世代(5G)」の規格の無線通信であれば、大容量のデータを伝送できる。しかも、この「第五世代(5G)」の規格の無線通信では、上記のデータを、高速で伝送することもでき、近年、ますます、「第五世代(5G)」の規格の利用が望まれている。
具体的には、「第五世代(5G)」の規格の無線通信では、ミリ波を含む高周波が用いられる。このミリ波は、大気中の水分で減衰し易く、ミリ波を放出する高周波アンテナの基板材として、誘電率が低い基板材が求められている。低誘電の基板材をアンテナに用いると、ミリ波の電波を効率よく放出することができる。また、低誘電のアンテナ用基板材を用いると、通信距離が延び、しかも、アンテナ部材の小面積化を図ることができ、さらに、低消費電力にもつながる。
また、近年、FPC(フレキシブルプリント回路基板)として、データを高速で伝送する高速伝送基板(高速伝送FPC)が求められており、この高速伝送FPCの基板材としても、低誘電の基板材が求められる。
上記した要求に応えるために、つまり、大容量のデータ無線通信のアンテナや高速伝送FPCに備えられる基板材として、誘電率の低い低誘電基板の開発が進められており、ポリイミド系樹脂やフッ素系樹脂などの低誘電樹脂材料を用いた基板が開発されている。
一方で、材料が多孔質体である基板も検討されている。多孔質体は、最も低い誘電率1である空気を孔内に有することから、多孔質体は誘電率が比較的低くなる。このような多孔質体を備える金属箔積層板として、例えば、絶縁材である樹脂多孔質体と、その厚み方向両側に配置される金属箔とを備える金属箔積層板が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
特開2004-82372号公報
しかし、特許文献1を含む従来の多孔質体は、「第三世代(3G)」や「第四世代(4G)」規格の無線通信や、従来の速度でデータを伝送するFPCの基板材として利用できるが、その空孔率が低いことから、十分な低誘電率ではなく、「第五世代(5G)」規格や高速伝送FPCで必要とされるレベルの低誘電率を有さない。
そこで、本発明者らは、空孔率が顕著に高い多孔質樹脂層を使いこなし、第五世代(5G)規格や高速伝送FPCに適合できる低誘電率を有しながら、良好な伝送効率を有する低誘電基板材(低誘電率の金属箔積層板)を完成し、併せて、そのような低誘電基板材を工業的に製造(量産)し、使用する方法を確立するに至った。
すなわち、本発明[1]は、巻き芯と、前記巻き芯に巻回される長尺な低誘電基板材とを備え、前記低誘電基板材は、金属層および多孔質樹脂層を厚み方向に備え、巻き芯の直径が、3.0cm以上である、ロール体を含む。
本発明[2]は、前記低誘電基板材の厚みdと、前記巻き芯の直径Rとが、下記式(1)を満足する、[1]に記載のロール体を含む。
200d≦ R (1)
本発明のロール体の低誘電基板材は、多孔質樹脂層を有し、多孔質樹脂層が高い空孔化率を有する場合には、十分に低い低誘電率を有することができる。具体的には、低誘電基板材が、第五世代(5G)規格の無線通信のアンテナや、高速伝送FPCに対応できる低い誘電率を有することができる。
本発明のロール体は、巻き芯と、それに巻回される長尺な低誘電基板材とを備える。そのため、ロールトゥロール方式にて、上記したアンテナや高速伝送FPCを工業的に製造(量産)することができる。
本発明のロール体は、巻き芯の直径が、3.0cm以上である。そのため、ロール体の中心部に巻回される低誘電基板材の曲がり具合が緩やかとなっている。したがって、ロール体から低誘電基板材を繰り出した際に、低誘電基板材におけるシワや折れの発生を抑制することができる。
図1A-Bは、本発明のロール体の一実施形態であって、図1Aは、斜視図、図1Bは、側面図を示す。 図2は、図1Aに示すロール体の低誘電基板材の側断面図を示す。 図3は、図2に示す低誘電基板材から得られるパターン積層材の断面図を示す。 図4は、図1Aに示すロール体の巻き芯の斜視図を示す。
<一実施形態>
本発明のロール体の一実施形態を、図1A-図6を参照して説明する。ロール体1は、図1A-Bに示すように、一方向に長尺な低誘電基板材2と、低誘電基板材2が巻回される低誘電基板材のロール体であって、巻き芯7とを備えており、低誘電基板材2が、巻き芯7に巻回されてなる。すなわち、ロール体1は、巻き芯7と、巻き芯7に巻回される長尺な低誘電基板材2とを備える。
1.低誘電基板材
低誘電基板材2は、図1Aに示すように、一方向(搬送方向)に長尺であり、図2に示すように、厚み方向に対向する一方面および他方面を有しており、厚み方向に直交する面方向に延びる形状を有する。
この低誘電基板材2は、第1金属層3と、第1金属層3の厚み方向一方面に配置される多孔質樹脂層4と、多孔質樹脂層4の厚み方向一方面に配置される接着層5と、接着層5の厚み方向一方面に配置される第2金属層(金属層の一例)6とを備える。つまり、低誘電基板材2は、第1金属層3と、多孔質樹脂層4と、接着層5と、第2金属層6とを厚み方向他方側から一方側に向かって順に備える。好ましくは、低誘電基板材2は、第1金属層3と、多孔質樹脂層4と、接着層5と、第2金属層6とのみを備える。
〔第1金属層〕
第1金属層3は、厚み方向に対向する一方面および他方面を有しており、面方向に延びるシート(板)形状を有する。第1金属層3の材料は、特に限定されず、例えば、銅、鉄、銀、金、アルミニウム、ニッケル、それらの合金(ステンレス、青銅)などが挙げられる。好ましくは、銅が挙げられる。
第1金属層3の厚みは、例えば、0.1μm以上、好ましくは、1μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下である。
〔多孔質樹脂層〕
多孔質樹脂層4は、厚み方向に対向する一方面および他方面を有しており、面方向に延びシート形状を有する。多孔質樹脂層4の他方面は、第1金属層3の一方面に接触(密着)している。
多孔質樹脂層4は、微細な空孔(気孔)10を多数有している。多孔質樹脂層4は、例えば、独立気泡構造および連続気泡構造のいずれかを有する。好ましくは、独立気泡構造を主として有しており、この場合の独立気泡の割合は、例えば、50%超過、好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上であり、また、例えば、100%未満である。独立気泡の割合が上記した下限を上回れば、第1金属層3および第2金属層6のパターンニングで用いられるエッチング液の多孔質樹脂層4への染み込みに起因するパターン精度の低下を抑制することができる。
多孔質樹脂層4における空孔率は、例えば、60%以上、より好ましくは、70%以上、さらに好ましくは、80%以上、とりわけ好ましくは、85%以上である。なお、多孔質樹脂層4の空孔率は、例えば、100%未満、さらには、99%以下である。空孔率は、例えば、多孔質樹脂層4の断面SEM写真の画像解析により求められる。あるいは、空孔率は、下記式に基づく計算により求められる。
空孔率(%)=(1-無孔樹脂層の比重/多孔質樹脂層の比重)×100
なお、式中、無孔樹脂層は、多孔質樹脂層4の材料からなるが、多孔質ではなく、緻密質を有するフィルムである。
多孔質樹脂層4の空孔率が上記した下限以上であれば、多孔質樹脂層4が、第五世代(5G)規格や高速伝送FPCに十分に対応できる低い誘電率を有することができる。具体的には、低誘電基板材2が、上記したように、第五世代(5G)規格のアンテナや高速伝送FPCに十分に対応できる基板材として有用となる。
多孔質樹脂層4における空孔10の平均径(つまり、平均孔径)は、例えば、10μm以下であり、また、例えば、0.1μm以上である。平均孔径は、多孔質樹脂層4の断面SEM写真の画像解析により求められる。画像解析は、SEM像に2値化を施し、空孔10を識別した後、その孔径を算出し、ヒストグラム化する。解析ソフトは、ImageJを用いる。
多孔質樹脂層4の周波数60GHzにおける誘電率は、空孔率および次に述べる樹脂の種類によって適宜調整され、具体的には、例えば、2.5以下、好ましくは、2.0以下であり、また、例えば、1.0超過である。多孔質樹脂層4の誘電率は、周波数の60GHzを用いる共振器法により、実測される。
多孔質樹脂層4の誘電率が上記した上限以下であれば、低誘電基板材2が低誘電率を有することとなるので、第五世代(5G)規格のアンテナや高速伝送FPCの基板材として有用に用いることができる。
多孔質樹脂層4の材料としては、特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性フッ化ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、フッ素樹脂(含フッ素オレフィンの重合体(具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)など))、液晶ポリマー(LCP)などが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、マレイミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性フッ化ポリイミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、セルロース樹脂、液晶ポリマー、アイオノマーなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
上記した樹脂のうち、機械強度の観点から、好ましくは、ポリイミド樹脂(熱硬化性ポリイミド樹脂および熱可塑性ポリイミド樹脂を含む)、フッ化ポリイミド樹脂(熱硬化性フッ化ポリイミド樹脂および熱可塑性フッ化ポリイミド樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂が挙げられる。特に好ましくは、ポリイミド樹脂が挙げられる。ポリイミド樹脂は、独立気泡構造を有する多孔質樹脂層4を含む低誘電基板材1の作製工程に含まれる、加圧よる積層に最も適した材料である。なお、上記した好適な樹脂の物性および製造方法等の詳細は、例えば、特開2018-021171号公報、特開2018-021172号公報などに記載されている。
多孔質樹脂層4は、その厚み方向一方面および他方面に形成されるスキン層(図示せず)を有することができる。好ましくは、多孔質樹脂層4は、厚み方向一方面(接着層5側)にスキン層を有する。
多孔質樹脂層4の厚みは、例えば、2μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、1,000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
なお、多孔質樹脂層4以外の層、具体的には、第1金属層3、接着層5(後述)、および、第2金属層6(後述)は、いずれも、多孔質樹脂層4と異なり、例えば、無孔であり、つまり、微細な空孔を実質的に有さず、緻密である。
[接着層]
接着層5は、多孔質樹脂層4の厚み方向一方面において、面方向に沿うシート形状を有する。接着層5の材料としては、特に限定されず、ホットメルト型接着剤、熱硬化型接着剤など、種々の型の接着剤が挙げられ、具体的には、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤などが挙げられる。好ましくは、アクリル系接着剤が挙げられる。
接着層5の厚みは、例えば、2μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、25μm以下である。
[第2金属層]
第2金属層6は、厚み方向に対向する一方面および他方面を有しており、面方向に延びるシート形状を有する。第2金属層6の他方面は、接着層5を介して、多孔質樹脂層4の一方面に接着している。第2金属層6の材料および厚みは、第1金属層3のそれらと同様である。
低誘電基板材2の厚みは、第1金属層3、多孔質樹脂層4、接着層5および第2金属層6の総厚みであって、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、5,000μm以下、好ましくは、2,000μm以下である。
低誘電基板材2の幅(軸方向長さ)は、例えば、10cm以上、好ましくは、20cm以上であり、また、例えば、150cm以下、好ましくは、120cm以下である。
2.巻き芯
巻き芯7は、図4に示すように、軸方向(搬送方向と直交する直交方向:幅方向)に延びる略円筒形状を有する。巻き芯7は、中空であってもよく、中実であってもよい。巻き芯7の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ABSなどのプラスチック、例えば、紙、例えば、金属などが挙げられる。
巻き芯7の軸方向長さは、例えば、低誘電基板材2の幅よりも長く、例えば、12cm以上、好ましくは、22cm以上であり、また、例えば、160cm以下、好ましくは、130cm以下である。
3.ロール体の製造方法
次に、ロール体1の製造方法を説明する。なお、ロール体1の低誘電基板材2の製造では、例えば、ロールトゥロール法によって、各部材を、搬送しながら積層(形成)する。
具体的には、まず、搬送方向(一方向)に長尺な第1金属層3を準備する。例えば、上記した材料からなる箔(金属箔)を第1金属層3として準備する。
次いで、多孔質樹脂層4を第1金属層3の一方面の全面に形成する。例えば、多孔質樹脂層4を、第1金属層3の一方面で作製する(作り込む)。
具体的には、まず、上記した樹脂の前駆体と、多孔化剤と、核剤と、溶媒とを含むワニスを調製し、次いで、ワニスを第1金属層3の一方面に塗布して塗膜を形成する。ワニスにおける多孔化剤、核剤および溶媒の、種類および配合割合等は、例えば、特開2018-021171号公報、特開2018-021172号公報などに記載されている。
とりわけ、多孔化剤の質量部数(配合割合)は、前駆体100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上、より好ましくは、20質量部以上、さらに好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、250質量部以下である。
核剤は、前駆体を発泡(多孔化)させるときに核となる発泡核剤(気泡調整剤)である。また、核剤として、上記公報に記載の核剤(PTFEなど)の他に、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)などのフッ素樹脂(含フッ素オレフィンの重合体)、さらには、モノマー単位として、(メタ)アクリル酸エステルおよび上記した含フッ素オレフィンを含有する共重合体なども挙げられる。
核剤は、常温(23℃)で、例えば、固体状、液体状、半固体状のいずれであってよく、好ましくは、固体状である。核剤が常温で固体状であれば、核剤の形状としては、例えば、略球形状、略板形状、略針形状、不定形状(塊状を含む)が挙げられ、好ましくは、略球形状が挙げられる。
核剤が常温で固体状であれば、核剤の最大長さの平均値(略球形状であれば、平均粒子径)は、例えば、1,000nm未満、好ましくは、800nm以下、より好ましくは、500nm未満であり、また、例えば、1nm以上である。
また、核剤は、予め溶媒(PTFE)に分散したスラリーとして調製されていてもよい。
その後、塗膜を加熱により乾燥することにより、溶媒の除去が進行しつつ、核剤を核とした、前駆体と多孔化剤との相分離構造が形成される。
その後、例えば、超臨界二酸化炭素を溶媒として用いる超臨界抽出法により、多孔化剤を前駆体から抽出する(引き抜く、あるいは、除去する)。
その後、前駆体を硬化させて、多孔を有する樹脂、具体的には、多孔質樹脂層4を形成する。
その後、接着層5を、多孔質樹脂層4の一方面の全面に配置する。例えば、接着剤を多孔質樹脂層4の一方面に塗布したり、あるいは、接着剤から予めシート状に形成した接着層5を多孔質樹脂層4の一方面に貼る。
続いて、搬送方向に長尺な第2金属層6を、接着層5の一方面の全面に配置する。例えば、上記した材料からなる箔(金属箔)を接着層5の一方面に貼り付ける。
これにより、搬送方向に長尺な低誘電基板材2が得られる。
そして、ロールトゥロール法の最後の工程において、低誘電基板材2を巻き芯7に巻回する。
この際、第1金属層3が巻き芯7の表面に接触するように(すなわち、第2金属層6が外側に配置されるように)巻回してもよい、また、第2金属層6(接着層5側)が巻き芯7の表面に接触するように(すなわち、第1金属層3が外側に配置されるように)巻回してもよい。好ましくは、第1金属層3が巻き芯7の表面に接触するように巻回する。
これにより、ロール体1を製造することができる。
4.ロール体
ロール体1の直径(すなわち、ロール状に巻回された低誘電基板材2の外径)は、例えば、3.0cm以上、好ましくは、5.0cm以上であり、また、例えば、80cm以下、好ましくは、60cm以下である。
低誘電基板材2の巻き数は、例えば、30回以上、好ましくは、100回以上、より好ましくは、150回以上であり、また、例えば、1000回以下である。
このロール体1が備える低誘電基板材2の用途は、好ましくは、第五世代(5G)規格に適合する無線通信のアンテナや、高速伝送基板の製造に用いられる。具体的には、低誘電基板材2は、高周波アンテナや高速伝送FPCの基板材として用いられる。
低誘電基板材2を上記の用途で使用する場合には、第2金属層6を、フォトリソグラフィ(例えば、サブトラクティブ法)によって、図3に示すように、パターンニングして、例えば、信号配線(差動配線など)やアンテナ配線などの一方側配線17を形成する。続いて、第1金属層3を、フォトリソグラフィによって、パターンニングして、例えば、グランド配線などの他方側配線18を形成する。
これにより、他方側配線18、多孔質樹脂層4、接着層5および一方側配線17を厚み方向一方側に向かって順に備えるパターン積層材13を製造し、このパターン積層材13を、第五世代(5G)規格に適合する高周波アンテナや高速伝送基板に備える。
そして、このロール体1の低誘電基板材2は、多孔質樹脂層4を有し、多孔質樹脂層4が、60%以上、より好ましくは、70%以上、さらに好ましくは、80%以上、とりわけ好ましくは、85%以上の高い空孔率を有する場合には、十分に低い低誘電率を有することができる。具体的には、低誘電率が、例えば、2.5以下、好ましくは、2.0以下である。従って、低誘電基板材2が、第五世代(5G)規格のアンテナや、高速伝送FPCに対応できる低い誘電率を有することができる。
また、低誘電基板材2は、第1金属層3および第2金属層6を備えるので、第五世代(5G)規格のアンテナや高速伝送FPCの配線としてパターンニングすることができる。具体的には、工業的なエッチング条件で、第1金属層3および第2金属層6をパターンニングしても、第五世代(5G)規格のアンテナや高速伝送FPCの配線を、優れた精度で形成できる。
また、多孔質樹脂層4が独立気泡構造を有する場合であって、独立気泡の割合が、50%超過、さらには、80%以上、さらには、90%以上と高い場合には、パターンニングで用いられるエッチング液の染み込みに起因するパターン精度の低下を抑制することができる。そのため、低誘電基板材2は、第五世代(5G)規格のアンテナや、高速伝送FPCに、十分かつ確実に対応できる基板材として有用である。
5.顕著な特徴点
次いで、ロール体1における顕著な特徴点を以下に説明する。
ロール体1は、図1A-Bに示すように、巻き芯7と、それに巻回される長尺な低誘電基板材2とを備える。そのため、ロールトゥロール方式にて、低誘電基板材2を加工して、所望の配線基板を製造することができる。特に、低誘電基板材2が、低誘電率を有する場合には、「第五世代(5G)」規格のアンテナや高速伝送FPCを工業的に製造することができる。
また、ロール体1は、巻き芯7の直径R(ひいては、ロール状に巻回された低誘電基板材2の内径)が、3.0cm以上である。好ましくは、4.0cm以上、より好ましくは、5.0cm以上である。巻き芯7の直径Rが上記した下限以上であれば、低誘電基板材2表面におけるシワや折れの発生を抑制することができる。
特に、「第五世代(5G)」規格や高速伝送FPCで必要とされるレベルの低誘電率を有する低誘電基板材2の場合では、多孔質樹脂層4の空孔率が高いため、多孔質樹脂層4が脆く、押し潰され易い。とりわけ、ロール体1の中心部では、ロール径が小さい上、外周部よりも強い圧力がかかるため、特に押し潰され易い。その結果、ロール体1から平板状に繰り出した(巻き戻した)際に、低誘電基板材2の表面に破損(具体的には、シワや折れ)が発生する不具合が生じる。
これに鑑み、本発明者らは、ロール体1の中心にある巻き芯7に着目し、巻き芯7の直径Rを上記の範囲とすることにより、ロール体1の中心部のカーブを緩やかにして、繰り出し(巻き戻し)後の低誘電基板材2におけるシワや折れの発生を抑制したものである。その結果、シワや折れの発生が抑制された低誘電基板材2を工業的に加工でき、シワや折れが少ない「第五世代(5G)」規格のアンテナや高速伝送FPCを工業的に製造することができる。
なお、上記繰り出し後の表面の破損は、多孔質樹脂層4を備える低誘電基板材特有の不具合(課題)である。多孔質樹脂層4を備えない低誘電基板材(例えば、金属層と液晶ポリマー層との積層体)では、後述する参考例に示されるように、その不具合の程度は非常に低く、問題になりにくい。
また、巻き芯7の直径Rの上限は、例えば、30.0cm以下、好ましくは、20.0cm以下、より好ましくは、10.0cm以下である。巻き芯7の直径Rが上記した上限以下であれば、小型化が可能である。
また、低誘電基板材2の厚みdと、巻き芯7の直径Rとが、好ましくは、下記式(1)を満足する。
200d ≦ R (1)
これにより、繰り出し後におけるシワや折れをより一層抑制することができる。また、好ましくは、R ≦ 1000d を満足する。
<変形例>
次に、一実施形態の変形例を説明する。以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、一実施形態および各変形例を適宜組み合わせることができる。さらに、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
一実施形態では、低誘電基板材2は、第1金属層3を備えているが、例えば、図示しないが、低誘電基板材2は、第1金属層3を備えていなくてもよい。すなわち、一実施形態では、両面金属層積層型の低誘電基板材であるが、例えば、他の実施形態では、片面金属層積層型の低誘電基板材であってもよい。
また、一実施形態では、低誘電基板材2の第1金属層3および第2金属層6は、多孔質樹脂層4の全面に配置されており、パターニングされていないが、例えば、図示しないが、第1金属層3および/または第2金属層6は、パターンニングされていてもよい。すなわち、第1金属層3および/または第2金属層6は、所望の形状を有することができる。
また、図示しないが、低誘電基板材2は、第1金属層3の他方側に配置される第1剥離シートと、第2金属層6の一方側に配置される第2剥離シートとを備えることができる。すなわち、低誘電基板材2は、第1剥離シート、第1金属層3と、多孔質樹脂層4と、接着層5と、第2金属層6と、第2剥離シートとを厚み方向他方側から一方側に向かって順に備えることもできる。
また、図示しないが、ロール体1において径方向に積層される複数の低誘電基板材2の間に、スペーサー、合紙などを挟むことができる。
なお、図示しないが、低誘電基板材2は、各層間に介在したり、あるいは、表面に形成される機能層をさらに備えることもできる。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
実施例1
まず、搬送方向(一方向)に長尺で、銅からなる第1金属層3(厚み12μm)を準備した。
次いで、特開2018-021172号公報の参考例に記載のポリイミド前駆体溶液100質量部に、イミド化触媒(2-メチルイミダゾール)4.2質量部、ポリオキシエチレンジメチルエーテル(日油社製、グレード:MM400、重量平均分子量400)からなる多孔化剤200質量部、PTFEからなる平均粒子径1000nm以下の核剤3質量部、および、NMP(N-メチルピロリドン)を配合して、ワニスを調製した。核剤は、予めNMPに分散されたスラリーとして調製したものを、ポリイミド前駆体に対して配合した。なお、ワニスにおけるNMPの総配合部数は、上記したスラリー中に含まれるものを併せて、ポリイミド前駆体100質量部に対して、150質量部となるように、調整した。
このワニスを、第1金属層3の一方面に塗布し、120℃で30分間、乾燥して、NMPを除去し、続いて、超臨界抽出法により、多孔化剤を除去し、その後、真空下、380℃で2時間加熱して、イミド化させて、ポリイミドからなる多孔質樹脂層4を、第1金属層3の一方面で作り込んだ。
多孔質樹脂層4における空孔率が、80%、平均孔径が、7μmであった。多孔質樹脂層4の周波数60GHzにおける誘電率が、1.5であった。また、多孔質樹脂層4の一方面(第1金属層3とは反対側の面)にスキン層が形成された。
次いで、アクリル系接着剤からなり、厚み5μmの接着層5を、多孔質樹脂層4の一方面に形成した。
次いで、搬送方向に長尺で、銅からなる第2金属層6(厚み12μm)を、接着層5の一方面に接着した。
これにより、図2に示すように、第1金属層3と、多孔質樹脂層4と、接着層5と、第2金属層6とを厚み方向一方側に順に備える長尺な低誘電基板材2を製造した。
この長尺な低誘電基板材2を長尺方向10cm×幅方向2cmに切断した。切断した低誘電基板材2を、直径Rが5.6cmである巻き芯7に、第1金属層3が巻き芯に接触するように、巻きつけた。これにより、巻き芯7と、それに巻回される低誘電基板材2とを備えるロール体1を得た。
また、同様に、切断した低誘電基板材2を、上記巻き芯7に、第2金属層6が巻き芯7に接触するように、巻きつけた。これにより、巻き芯7と、それに巻回される低誘電基板材2とを備えるもう一つのロール体1を得た。
実施例2
巻き芯7の直径Rを、8.3cmに変更した以外は、実施例1と同様にして、2つのロール体1を製造した。
比較例1
巻き芯7の直径Rを、2.0cmに変更した以外は、実施例1と同様にして、2つのロール体1を製造した。
評価
<繰り出し性>
各実施例および各比較例の各ロール体1において、巻き付け後10分後に、低誘電基板材2を直線状に繰り出した。このとき、繰り出した低誘電体基板材2の表面を観察した。
シワや折れが観察されなかった場合を〇と評価した。
シワや折れがごく僅かに観察された場合を△と評価した。
シワや折れが明確に観察された場合を×と評価した。
<低誘電基板材の厚み>
巻き芯7に巻きつける前と、繰り出した後の低誘電基板材2の厚みを測定した。具体的には、任意の5点の厚みをダイヤルゲージ(PEACOCK社製、「UPRIGHTDIAL GAUGE R1-205」)を用いて測定し、その5点の平均値を低誘電基板材2の厚みとして算出した。また、これら前後の低誘電基板材2の厚みの変化率も算出した。
上記した評価の結果を表1に示す。
Figure 0007166122000001
繰り出し性において、巻き芯の直径Rが3.0cm以上である実施例1~2では、シワや折れが観察されていないため外観などの不具合が生じていない。すなわち、これらの低誘電基板材は製品として良好である。一方、巻き芯の直径Rが3.0cm未満である比較例1では、シワや折れが観察されており、製品として不適であることが分かる。
(参考例)
多孔質樹脂層の代わりに、液晶ポリマー(LCP、無孔)層を使用した市販の低誘電基板材を用意した。すなわち、銅層(厚み12μm)、LCP層(厚み100μm)および銅層(厚み12μm)を順に備える低誘電基板材(パナソニック電工社製、品番「R-F705T」)を用意した。この低誘電基板材を用いた以外は、各実施例または比較例と同様にして、参考例1~3のロール体を得た。
各参考例の繰り出し性および厚みを上記と同様にして測定した。結果を表2に示す。
Figure 0007166122000002
参考例の低誘電基板材では、巻き芯を3.0cm未満にした場合であっても、シワや折れの発生の程度が低かった。そのため、多孔質樹脂層を用いない低誘電基板材では、巻き芯によるシワなどの発生は、問題にならないことが分かる。
1 ロール体
2 低誘電基板材
4 多孔質樹脂層
5 接着層
6 第2金属層
7 巻き芯

Claims (2)

  1. 巻き芯と、
    前記巻き芯に巻回される長尺な低誘電基板材と
    を備え、
    前記低誘電基板材は、金属層および多孔質樹脂層を厚み方向に備え、
    前記多孔質樹脂層は、独立気泡構造を有し、独立気泡の割合は、50%超過であり、
    前記巻き芯の直径が、3.0cm以上であることを特徴とする、ロール体。
  2. 前記低誘電基板材の厚みdと、前記巻き芯の直径Rとが、下記式(1)を満足することを特徴とする、請求項1に記載のロール体。
    200d≦ R (1)
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