JP7165487B2 - 抗菌ペプチド発現促進剤 - Google Patents

抗菌ペプチド発現促進剤 Download PDF

Info

Publication number
JP7165487B2
JP7165487B2 JP2016253896A JP2016253896A JP7165487B2 JP 7165487 B2 JP7165487 B2 JP 7165487B2 JP 2016253896 A JP2016253896 A JP 2016253896A JP 2016253896 A JP2016253896 A JP 2016253896A JP 7165487 B2 JP7165487 B2 JP 7165487B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
extract
expression
mass
extraction
antimicrobial peptide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016253896A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018104364A (ja
Inventor
茂之 小野
彰子 川崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kao Corp filed Critical Kao Corp
Priority to JP2016253896A priority Critical patent/JP7165487B2/ja
Publication of JP2018104364A publication Critical patent/JP2018104364A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7165487B2 publication Critical patent/JP7165487B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Cosmetics (AREA)
  • Medicines Containing Plant Substances (AREA)

Description

本発明は、ヒト皮膚由来の抗菌ペプチドの発現を促進する抗菌ペプチド発現促進剤に関する。
ヒトの皮膚は外的環境に接しており、病原性微生物(細菌、真菌等)等の生体異物の侵入の危険に常に晒されている。また、皮膚は常在菌と共生関係を有しており、健康な状態においては、病原性微生物の侵入を排除する生体バリアとしても機能している。しかしながら、なんらかの原因(例えば、免疫力の低下)で常在菌が異常増殖して皮膚組織に侵入すると日和見感染が生じる。皮膚は病原性微生物による危険から生体を防御すると同時に、常在菌の過剰増殖を制御する手段の1つとして抗菌ペプチド(antimicrobial peptides)による自然免疫機構を発展させてきた(非特許文献1)。
抗菌ペプチドは、その名称の様に抗菌活性を有し、種々の細菌等に殺菌・静菌作用を示す。生体防御に関わる抗菌ペプチドは非常に多くのものが同定されているが、皮膚で機能している代表的な抗菌ペプチドとして、LL-37(37-amino-acid carboxy-terminal peptide of the cathelicidin antimicrobial protein)、ヒト β-ディフェンシン-1(human beta-defensin-1;hBD-1)、ヒト β-ディフェンシン-2(hBD-2)、ヒト β-ディフェンシン-3(hBD-3)、リボヌクレアーゼ 7(ribonuclease 7;RNase 7)、プソリアシン(psoriasinまたはS100A7)が良く知られている。
hBD-3は、グラム陽性菌(例えば、黄色ブドウ球菌[Staphylococcus aureus])、グラム陰性菌(例えば、緑膿菌)および真菌(例えば、カンジダ菌)に対し強い抗菌活性を示す。加えて、hBD-3は同族のhBD-1やhBD-2に比較して抗菌活性が高く、汗等に由来する塩類によっても活性が影響を受けないというより好ましい特徴も有している。(非特許文献1)。また、近年、アトピー性皮膚炎において、皮膚におけるhBD-3の発現レベルが感染を抑制できる程、十分に高まっていないことが報告され、アトピー性皮膚炎の発症あるいは重症度とhBD-3の発現状態との関係が示唆されている(非特許文献2)。
最近になって、アトピー性皮膚炎発症の原因の1つに、黄色ブドウ球菌の異常増殖が関係していることがわかってきた(非特許文献3)。RNase 7は、hBD-3と同様に、黄色ブドウ球菌に対し高い抗菌活性を有し、皮膚バリアを構成する重要な抗菌ペプチドであると考えられている(非特許文献4)。さらに、定常状態(steady state)におけるRNase 7発現レベルが高い人は、高くない人に比較して、黄色ブドウ球菌感染に対する抵抗性が高いことが示されている(非特許文献5)。
以上のように、抗菌ペプチドの発現レベルを適切な状態に高め、維持しておくことが、皮膚バリアの強化、ひいては皮膚の健康という観点から非常に重要であることが示唆されている。hBD-3の発現を促進する代表的な方法の1つとして、15-d-プロスタグランジンJおよびプロスタグランジンDのプロスタグランジン類の作用が知られている(非特許文献6)。しかしながら、これらは炎症性メディエーターであり、hBD-3の発現を促進する手段として、容易かつ現実的に利用できるものではない。一方、RNase 7の発現は、アトピー性皮膚炎等による皮膚の炎症部位や角層皮膚バリアが物理的に傷害された部位において高まるが、hBD-3と同様に、生理的条件下、すなわち定常状態下、具体的にどの様な因子、機構によって発現が制御されているかは現在のところほとんどわかっていない。従って、このような状況から、皮膚バリアの維持、促進に有用な抗菌ペプチドの発現を一般的な生活の場面でも(例えば、化粧料として)促進、制御できる方法の開発が強く望まれていた。
ブッチャーブルーム(Butcher’s broom)は、日本名をナギイカダ(Ruscus acleatus L.)というユリ科の植物で、主に根茎からの抽出物が古くよりヨーロッパにおいて薬用成分として利用されてきた。静脈不全症、浮腫、月経前症候群、痔および糖尿病性網膜症等の改善に有効であるとされている(非特許文献7)。また、ブッチャーブルームは、上記機能の他に、表皮におけるカテプシンDの産生量を高め脱毛を促進すること(特許文献1)、皮膚表皮細胞および毛母細胞のコレステロール合成を促進させ、皮膚・毛髪の保湿機能を改善させること(特許文献2)等が報告されている。しかしながら、皮膚(表皮細胞)においてブッチャーブルームがヒト皮膚由来の抗菌ペプチドの発現を促進することはこれまでに全く知られていない。
特開2003-95903号公報 特開2013-199501号公報
Niyonsaba F et al. Protective roles of the skin against infection: Implication of naturally occuring human antimicrobial agents b-defensins, cathelicidin LL-37 and lysozyme. J Dermatol Sci 40: 157-168, 2005 Nomura I et al. Cytokine milieu of atopic dermatitis, as compared to psoriasis, skin prevents induction of innate immune response genes. J Immunol 171: 3262-3269, 2003 Kobayashi T et al. Dysbiosis and Staphylococcus aureus colonization drives inflammation in atopic dermatitis. Immunity 42: 756-766, 2015 Cho JS et al. Lucky number seven: RNase 7 can prevent Staphylococcus aureus skin colonization. J Invest Dermatol 130: 2703-2706, 2010 Zanger P et al. Constitutive expression of the antimicrobial peptide RNase 7 is associated with Staphylococcus aureus infection of the skin. J Infect Dis 200: 1907-1915, 2009 Bernard JJ et al. Cyclooxygenase-2 enhances antimicrobial peptide expression and killing of Staphylococcus aureus. J Immunol 185: 6535-6544, 2010 NO authers listed. Ruscus aculeatus (Butcher’s Broom). Altern Med Rev 6: 608-612, 2001
本発明は、ヒト皮膚由来の抗菌ペプチド発現促進剤を提供することに関する。
本発明者は、抗菌ペプチドの発現を促進する物質を探索した結果、ブッチャーブルームの抽出物がhBD-3やRNase 7のようなヒト皮膚由来の抗菌ペプチドの発現を促進する作用があり、当該抗菌ペプチドの発現促進剤となり得ることを見出した。
すなわち本発明は、ブッチャーブルーム抽出物を有効成分とするヒト皮膚由来の抗菌ペプチド発現促進剤に係るものである。
本発明によれば、皮膚における自然免疫機能(主として抗菌作用)を高めることができ、その結果、皮膚バリア機能の強化、或いはアトピー性皮膚炎の予防又は改善を図ることができる。
本発明において、「ヒト皮膚由来の抗菌ペプチド」とは、ヒト皮膚の上皮細胞において発現している抗菌ぺプチドを指し、例えば、hBD-3等の誘導性型抗菌ペプチドや、RNase7等の常時発現型抗菌ペプチドが挙げられる。
ここで、「hBD-3」は、ヒト β-ディフェンシン-3(human β-defensin-3[Gene Symbol=DEFB103])として特定されている5.1kDaのペプチドである。hBD-3は、定常状態において、ほとんど発現していないか、あるいは発現レベルが低い抗菌ペプチドで、物理的な上皮細胞バリアの破壊や炎症性メディエーター(プロスタグランジン類、サイトカイン類 等)の刺激によって発現が高まることから誘導性型抗菌ペプチドに分類されている。「RNase 7」は、リボヌクレアーゼ 7(ribonuclease 7[Gene Symbol=RNASE7]として特定されている14.5kDaのペプチドである。RNase 7は、定常状態において十分な発現が認められることから一般に常時発現型抗菌ペプチドに分類されているが、炎症性メディエーター等の刺激によってさらに発現が高まることより誘導性型の性質を有していることも知られている。
hBD-3およびRNase 7は、黄色ブドウ球菌等の病原性細菌に対して強い抗菌活性を示すのみならず、近年、白癬菌、いわゆる水虫菌に対して高い抗真菌活性を示すことも明らかとなり、これらの抗菌ペプチド類は生体防御因子として一段と注目を集めている。
本発明において、「ヒト皮膚由来の抗菌ペプチドの発現促進」とは、上記抗菌ペプチドのmRNA及び/又はタンパク質の発現促進を意味する。
尚、当該抗菌ペプチド発現促進の評価は、例えば、正常ヒト表皮角化細胞(normal human epidermal keratinocyte)などの細胞系を用い、当該細胞からmRNA又タンパク質を抽出し、抗菌ペプチドをコードするmRNA量又はタンパク質量を、リアルタイムPCRやノーザンブロッティング、或いはELISAやウェスタンブロッティングをそれぞれ用いて、測定することにより行うことができる。
本発明において、「ブッチャーブルーム(Butcher’s broom)」は、ユリ科のナギイカダ(Ruscus acleatus L.)を指す。
抽出に用いられるブッチャーブルームの部位は、特に限定されず、例えば全草、葉、茎、芽、花、蕾、木質部、樹皮、地衣体、根、根茎、仮球茎、球茎、塊茎、種子、果実等、又はそれらの組み合わせであり得るが、根、根茎、新芽、葉等を用いるのが好ましく、根茎がさらに好ましい。
本発明に用いるブッチャーブルーム抽出物の製造方法は、特に限定はなく上記植物を公知の方法で抽出することにより得ることができる。本発明では各種抽出溶媒による溶媒抽出法により製造した抽出物が好ましく用いられる。
抽出のための溶媒には、極性溶媒、非極性溶媒のいずれをも使用することができる。溶媒の具体例としては、例えば、水;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール等の1価アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール 200、ポリエチレングリコール 300、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)等のグリコール類又はグリコールのモノエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の鎖状又は環状のエーテル類;ヘキサン、シクロヘキサン等の鎖状又は環状の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ピリジン類;ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド;アセトニトリル;二酸化炭素、超臨界二酸化炭素;油脂、ワックス、その他のオイル類が挙げられる。これら上述の抽出のための溶媒は、一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、物性(抽出効率、安定性)、安全性および汎用性の点から、1価アルコール類、、グリコール類又はグリコールのモノエーテル類が好ましい。また、操作性に関する物性(粘度、融点、沸点)の点も加味すれば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-オクタノール等の炭素数1~8の1価アルコール類、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、セロソルブ、エチルカルビトールがより好ましい。
上述した好適な抽出溶媒の特徴は、オクタノール/水分配係数(LogP)を指標とすることで、さらに明確にすることができる。LogP値とは、以下の数式で定義される化学物質の疎水性を表す指標である。
(数1)
LogP=log([物質]Octanol/[物質]Water)
〔式中、[物質]Octanolは1-オクタノール相中の物質のモル濃度を、[物質]Waterは水相中の物質のモル濃度を示す。〕
LogP値は、通常、上記式に従って、実測に基づいて算出されるものである。しかし、近年は、計算機化学の進歩により、計算によってLogP値を予測できるようになってきており、種々の場面で計算によるLogP値が広く利用されている。本発明においては、市販ソフトウェアであるChemBioDraw Ultra 14.0(PerkinElmer)のLogP予想機能を利用してLogP値を計算した。なお、本発明におけるLogP値に関する記述は、全て上記ソフトウェアによって計算された値に基づくものである。
抽出溶媒としては、LogP値が-1.3以上、1.3以下である溶媒が好ましい。さらに好ましくは、LogP値が-0.6以上、1.1以下の溶媒である。例えば、エチルカルビトール(LogP=-0.40)、メタノール(LogP=-0.76)、エタノール(LogP=-0.24)、1-ブタノール(LogP=0.82)、プロピレングリコール(LogP=-1.06)が挙げられる。
抽出溶媒の使用量は、十分な抽出効率が得られる条件であれば特に限定されないが、例えば、ブッチャーブルーム乾燥物1g重量に対し、1~1000mL、好ましくは5~100mL等を例示することができる。
抽出条件は、十分な抽出効率が得られる条件であれば特に限定されない。抽出期間(時間)は、例えば、1時間以上、好ましくは1日以上、30日間以下、好ましくは14日間以下等を例示することができる。抽出温度は、0℃以上,使用する溶媒の沸点以下で実施することが好ましく、より好ましくは常温から使用溶媒の沸点以下の温度範囲を例示することができる。ただし、加圧条件下において実施する場合には、抽出温度は使用溶媒の沸点に限定されることなく、抽出効率に鑑みて適宜、最適な温度を設定することができる。
抽出手段は、特に限定されないが、例えば、固液抽出、液液抽出、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、加圧加熱抽出、蒸留,超臨界抽出等の通常の手段を用いることができる。
本発明のブッチャーブルーム抽出物は、例えば化粧品や医薬品上許容し得る規格に適合し、本発明の効果を発揮するものであれば粗精製物であってもよい。また、必要に応じて、液液分配、固液分配、活性炭処理、イオン交換樹脂処理、等の公知の技術によって不活性な夾雑物の除去、脱臭、脱色等の処理を施すことができる。
また、さらに公知の分離精製方法を適宜組み合わせて、ある特定成分(画分)の濃度・割合を高めてもよい(例えば、限外濾過膜分離により,分子量10kD以上の画分を除去する等)。精製手段としては、有機溶剤沈殿、遠心分離、限界濾過膜分離、高速液体クロマトグラフやカラムクロマトグラフ等が挙げられる。
本発明において、上記の抽出物はそのまま用いることもできるが、当該抽出物を希釈、濃縮若しくは凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製して用いることもできる。また、凍結乾燥し、用時に、通常抽出に用いられる溶剤、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、、水-エタノール混液、水-プロピレングリコール混液、水-1,3-ブチレングリコール混液等の溶剤で溶解・希釈して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
後記実施例に示すように、ブッチャーブルーム抽出物を正常ヒト表皮角化細胞に添加すると、hBD-3及びRNase 7のmRNAの発現量が有意に増加する。
したがって、本発明のブッチャーブルーム抽出物は、ヒト皮膚由来の抗菌ペプチドの発現を促進することから、ヒト皮膚由来の抗菌ペプチド発現促進剤となり得、また、ヒト皮膚由来の抗菌ペプチド発現促進剤を製造するために使用することができる。すなわち、本発明のブッチャーブルーム抽出物は、ヒト皮膚由来の抗菌ペプチド発現促進のために使用することができる。ここで、ヒトに対する使用は、治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。「非治療的」とは、医療行為を含まない概念、すなわち人間を手術、治療又は診断する方法を含まない概念、より具体的には医師又は医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法を含まない概念である。
本発明のヒト皮膚由来の抗菌ペプチド発現促進剤は、それ自体、ヒト皮膚由来の抗菌ペプチド発現促進のための、化粧品、医薬品部外品、医薬品であってもよく、又は当該化粧品、医薬部外品、医薬品等に配合して使用される素材又は製剤であってもよい。
本発明のヒト皮膚由来の抗菌ペプチド発現促進剤を含有する化粧品、医薬部外品又は医薬品は、好適には皮膚外用剤の形態で、具体的には、軟膏、乳化化粧料、クリーム、乳液、ローション、ジェル、エアゾール等の種々の形態で用いることができる。
斯かる製剤は、それぞれ一般的な製造法により、直接又は製剤上許容し得る担体、例えば、各種油剤、界面活性剤、ゲル化剤、防腐剤、酸化防止剤、溶剤、アルコール、水、キレート剤、増粘剤、紫外線吸収剤、乳化安定剤、pH調整剤、色素、香料等とともに混合、分散した後、所望の形態に加工することによって得ることができる。また、これらの化粧品、医薬部外品又は医薬品等には、それぞれの製剤に応じて、適宜、植物抽出物、殺菌剤、保湿剤、抗炎症剤、抗菌剤、清涼剤、抗脂漏剤等を本発明の効果を妨害しない範囲で適宜配合することができる。
当該化粧品、医薬部外品又は医薬品中の本発明のブッチャーブルーム抽出物の含有量は、その抽出物の固形分に換算して、一般的に好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.0002質量%以上、更に好ましくは0.0005質量%以上、更に好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上であり、そして好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。また、0.00001~10質量%とするのが好ましく、0.0002~1質量%とするのがより好ましく、0.0005~0.5質量%とするのが更に好ましく、0.001~0.5質量%とするのが更に好ましく、0.005~0.5質量%とするのが更に好ましく、0.01~0.5質量%とするのが更に好ましくい。尚、抽出物の固形分換算とは、抽出物から抽出溶媒を除いた残渣(蒸発残分)の質量に換算することを意味する。
上記化粧品、医薬部外品又は医薬品の投与量は、効果が得られる量であれば特に限定されず、対象者の状態、体重、性別、年齢又はその他の要因に従って変動し得るが、成人(60kg)1人当たり1日、本発明のブッチャーブルーム抽出物(固形分換算)として、例えば、好ましくは0.5mg以上であり、更に好ましくは1mg以上であり、更に好ましくは5mg以上であり、更に好ましくは10mg以上であり、そして1000mg以下、好ましくは500mg以下である。また、0.5~1000mgとするのが好ましく、更に1~500mgとするのが好ましく、更に5~500mgとするのが好ましく、更に10~500mgとするのが好ましい。また、当該製剤は、任意の摂取・投与計画に従って摂取・投与され得るが、1日1回~数回に分け、数週間~数カ月間継続して投与することが好ましい。このうち、1日3回に分け、6週間以上継続して投与することがより好ましい。
また、上記化粧品、医薬部外品又は医薬品の適用対象者としては、それを必要としていれば特に限定されないが、皮膚バリアを始めとする上皮細胞器官における自然免疫機能の強化を所望するヒト、アトピー性皮膚炎の予防又は改善を所望するヒトが挙げられる。
上述した実施形態に関し、本発明においては更に以下の態様が開示される。
<1>ブッチャーブルーム抽出物を有効成分とするヒト皮膚由来の抗菌ペプチド発現促進剤。
<2>ヒト皮膚由来の抗菌ペプチド発現促進剤を製造するための、ブッチャーブルーム抽出物の使用。
<3>ヒト皮膚由来の抗菌ペプチド発現促進に使用するための、ブッチャーブルーム抽出物。
<4>ブッチャーブルーム抽出物を投与することを含むヒト皮膚由来の抗菌ペプチド発現促進方法。
<5>上記<1>~<4>において、ヒト皮膚由来の抗菌ペプチドは、hBD-3又はRNase 7である。
<6>上記<1>~<5>において、ブッチャーブルーム抽出物における抽出溶媒は、炭素数1~8の1価アルコールである。
<7>上記<1>~<5>において、ブッチャーブルーム抽出物における抽出溶媒は、オクタノール/水分配係数[LogP]が,-1.3以上1.3以下の有機溶媒である。
<8>上記<1>~<5>において、ブッチャーブルーム抽出物における抽出溶媒は、メタノール、エタノール、1-ブタノール、プロピレングリコール及びエチルカルビトールから選ばれる1種以上である。
<9>上記<1>又は<2>において、製剤組成物中のブッチャーブルーム抽出物の含有量は、ブッチャーブルーム抽出物中の固形分に換算して、一般的に好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.0002質量%以上、更に好ましくは0.0005質量%以上、更に好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上であり、そして好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。また、好ましくは0.00001~10質量%、より好ましくは0.0002~1質量%、更に好ましくは0.0005~0.5質量%、更に好ましくは0.001~0.5質量%、更に好ましくは0.005~0.5質量%、更に好ましくは0.01~0.5質量%である。
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
製造例1 ブッチャーブルームのエタノール抽出物の調製
ブッチャーブルーム(Ruscus aculeatus L.、ユリ科、ナギイカダ)の乾燥根茎を細切りし、その20gにエタノール(LogP=-0.24)を200mL加え、室温下、時々撹拌しながら7日間抽出した後、濾過した。得られた抽出物について、下記の方法で固形分を算出したところ、固形分濃度は0.33%(w/v)であった。
<固形分の算出>
ブッチャーブルーム抽出物2mLを窒素気流下、120℃で12時間乾燥させたところ(乾燥機:DRY Thermo Unit DTU-1C(TAITEC CORPORATION社製)使用)、乾燥物6.52mgが得られた。この抽出物の固形分濃度を、6.52/2000×100=0.33%(w/v)と算出した。
なお、以下の製造例においても、各抽出物の固形分は同様にして算出した。
抽出残渣に再度、エタノールを200mL加え、室温下、時々撹拌しながら7日間抽出した後、濾過した(固形分濃度0.12%(w/v))。1回目と2回目の抽出物を混合した後、濃縮して抽出固形分0.88gを得た。抽出固形分にエタノールを加えて全量を88mLとし、蒸発残分1.0%(w/v)のブッチャーブルームのエタノール抽出物を調製した。
製造例2 ブッチャーブルームのプロピレングリコール抽出物の調製
ブッチャーブルーム(Ruscus aculeatus L.、ユリ科、ナギイカダ)の乾燥根茎を細切りし、その20gにプロピレングリコール(PG、LogP=-1.06)を200mL加え、室温下、時々撹拌しながら7日間抽出した後、濾過した。得られた抽出物について、固形分濃度を算出したところ、0.70%(w/v)であった。
製造例3 ブッチャーブルームのメタノール抽出物の調製
ブッチャーブルーム(Ruscus aculeatus L.、ユリ科、ナギイカダ)の乾燥根茎を細切りし、その20gにメタノール(LogP=-0.76)を200mL加え、室温下、時々撹拌しながら7日間抽出した後、濾過した。得られた抽出物について固形分濃度を算出したところ、1.50%(w/v)であった。
製造例4 ブッチャーブルームのブタノール抽出物の調製
ブッチャーブルーム(Ruscus aculeatus L.、ユリ科、ナギイカダ)の乾燥根茎を細切りし、その20gに1-ブタノール(LogP=0.82)を200mL加え、室温下、時々撹拌しながら7日間抽出した後、濾過した。得られた抽出物について固形分濃度を算出したところ、0.12%(w/v)であった。
製造例5 ブッチャーブルームのエチルカルビトール抽出物の調製
ブッチャーブルーム(Ruscus aculeatus L.、ユリ科、ナギイカダ)の乾燥根茎を細切りし、その20gにエチルカルビトール(LogP=-0.40)を200mL加え、室温下、時々撹拌しながら7日間抽出した後、濾過した。得られた抽出物について固形分濃度を算出したところ、0.34%(w/v)であった。
実施例1 hBD-3発現及びRNase 7発現に対する効果の評価
1)細胞培養は、正常ヒト表皮角化細胞を購入し(Life Technologies)、HuMedia-KG増殖添加剤セット(クラボウ)を添加したEpiLife無血清細胞培養培地( Life Technologies)を用い、37℃で行った。実験には、継代数3及び4の細胞を使用した。細胞は、1×10個/ウェルで6ウェル培養プレートに播種し,subuconfluent(約80%)の状態まで培養した。Subconfluentに達した状態で、細胞培養培地をHuMedia-KG増殖添加剤(5種類)からヒト組換え型上皮成長因子(hEGF)及びウシ脳下垂体抽出液(BPE)以外の添加剤セットを加えたEpiLife無血清細胞培養培地に交換し、24時間培養した。
2)製造例1~5で調製した各ブッチャーブルーム抽出物を、固形分濃度が0.1%(w/v)になるように濃度を調整した後、ヒト組換え型上皮成長因子(hEGF)及びウシ脳下垂体抽出液(BPE)以外の増殖添加剤セットを加えたEpiLife無血清細胞培養培地10mLあたり100μLの割合で添加し、72時間細胞を刺激した(n=3)(細胞を刺激した際のブッチャーブルーム抽出物の最終固形分濃度(final concentration)は0.001%(w/v))。
3)培養細胞からRNA抽出キット[QIAshredder(キアゲン)及びRNeasy Mini Kit(キアゲン)]を用いて全RNAを抽出した。RNAからcDNAへの逆転写反応は、2000ngスケールで、High Capacity RNA-to-cDNA kit(Applied Biosystems)により行った。リアルタイムPCRは、TaqMan primer/probe assay試薬(Applied Biosystems)及びTaqMan RT-PCR Master Mix試薬(Applide Biosystems)を用い、7500 real-time PCR system(Applied Biosystems)で実施した。
hBD-3遺伝子及びRNase 7遺伝子の発現レベルは、ハウスキーピング遺伝子、Ribosomal Protein LP0(RPLP0)で標準化を行い、抽出溶媒のみを比較対照とし、その発現レベルを1.0とする相対変化量として算出した。各実験群間の有意差検定は、Student’s t-test法により行った。
4)結果
hBD-3発現に対する効果を表1、RNase 7発現に対する効果を表2に示す。ブッチャーブルームのエタノール抽出物、1-ブタノール抽出物、エチルカルビトール抽出物、プロピレングリコール抽出物は、hBD-3およびRNase 7の相対的mRNA発現量が対照と比較して増加した。
Figure 0007165487000001
Figure 0007165487000002

Claims (1)

  1. ブッチャーブルーム抽出物を有効成分とするヒト皮膚由来の抗菌ペプチド発現促進剤であって、抽出溶媒がメタノール、エタノール、1-ブタノール、プロピレングリコール及びエチルカルビトールから選ばれる1種以上であり、ヒト皮膚由来の抗菌ペプチドがhBD-3又はRNase 7である、抗菌ペプチド発現促進剤
JP2016253896A 2016-12-27 2016-12-27 抗菌ペプチド発現促進剤 Active JP7165487B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016253896A JP7165487B2 (ja) 2016-12-27 2016-12-27 抗菌ペプチド発現促進剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016253896A JP7165487B2 (ja) 2016-12-27 2016-12-27 抗菌ペプチド発現促進剤

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018104364A JP2018104364A (ja) 2018-07-05
JP7165487B2 true JP7165487B2 (ja) 2022-11-04

Family

ID=62785512

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016253896A Active JP7165487B2 (ja) 2016-12-27 2016-12-27 抗菌ペプチド発現促進剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7165487B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7173770B2 (ja) * 2018-07-06 2022-11-16 花王株式会社 抗菌ペプチド発現促進剤
KR20220091336A (ko) 2020-12-23 2022-06-30 가부시키가이샤 블룸 클래식 피부의 방어 기능 강화를 위한 미용 방법, 항균 펩티드 발현 촉진 방법, 시르투인1 발현 촉진 방법, 항균 펩티드 발현 촉진 장치 및 시르투인1 발현 촉진 장치

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5286864B2 (ja) 2007-11-28 2013-09-11 株式会社デンソー 基板の製造方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5204105A (en) * 1990-04-10 1993-04-20 Chanel, Inc. Cosmetic composition
IT1253431B (it) * 1991-12-02 1995-08-08 Valetudo S R L Preparati farmaceutici per uso topico destinati al trattamento della psoriasi e della dermatite atopica
JP2003012495A (ja) * 2001-07-06 2003-01-15 Kanebo Ltd 化粧料
JP2004339138A (ja) * 2003-05-15 2004-12-02 Kanebo Ltd 皮膚化粧料

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5286864B2 (ja) 2007-11-28 2013-09-11 株式会社デンソー 基板の製造方法

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
関根茂ほか,新化粧品ハンドブック,2006年10月,p.358-391

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018104364A (ja) 2018-07-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Kowalska et al. 18β‐Glycyrrhetinic acid: its core biological properties and dermatological applications
US20150017227A1 (en) Methods and Compositions for Treating Skin Diseases and Conditions
US9114115B2 (en) Compositions for skin disease or disorders
JP7433908B2 (ja) セイヨウノコギリソウフレッシュ植物圧搾汁濃縮物、製造、および使用
JP7165487B2 (ja) 抗菌ペプチド発現促進剤
JP7173770B2 (ja) 抗菌ペプチド発現促進剤
JP7138496B2 (ja) 抗菌ペプチド発現促進剤
KR20210113490A (ko) 마치현, 애엽 및 홍경천의 혼합추출물을 유효성분으로 포함하는 피부보호 및 피부자극 완화용 화장료 조성물
JP2017178862A (ja) 抗炎症剤、化粧料、皮膚外用剤、炎症性疾患の改善剤、及び抗炎症剤の製造方法
JP2017178862A6 (ja) 抗炎症剤、化粧料、皮膚外用剤、炎症性疾患の改善剤、及び抗炎症剤の製造方法
KR102417303B1 (ko) 아토피 피부염 예방 또는 개선용 조성물
KR102137581B1 (ko) 고장초 추출물을 유효성분으로 함유하는 항균용 조성물
Gonçalves et al. Antimicrobial effect and enzymatic activity of extract of Zingiber officinale Roscoe and stability in topical preparations
EP3796897B1 (en) Compounds for preventing and treating skin or mucosal affections having an inflammatory component
KR20170065187A (ko) 티트리 잎 복합 추출물을 함유하는 여드름 개선용 화장료 조성물
JP6603551B2 (ja) 毛成長抑制剤
JP6947484B2 (ja) 自然免疫賦活剤
JP5986891B2 (ja) Mif分泌抑制剤
JP6002510B2 (ja) エストロゲン受容体β活性化剤
US20230116974A1 (en) Complexation of Curcumin with Calixarene Derivatives
JP2000119126A (ja) 生体内環境快適化組成物
TW202033210A (zh) 丁香萃取物與其化合物用於調控IL-1β基因、IL-18基因、IFNG基因、TGF-β基因、IL-8基因、IL-16基因、及/或IL-23基因表現量的用途
KR20230075157A (ko) 어성초추출물 및 팔각회향추출물의 혼합 추출물을 유효성분으로 포함하는 피부 마이크로바이옴 균형 유지용 피부외용제 조성물
WO2024012787A1 (en) Composition comprising an extract of jasminum sambac and use thereof
JP2024118298A (ja) オートファジー抑制剤

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190918

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200825

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201020

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20210302

C60 Trial request (containing other claim documents, opposition documents)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C60

Effective date: 20210524

C22 Notice of designation (change) of administrative judge

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C22

Effective date: 20220510

C23 Notice of termination of proceedings

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C23

Effective date: 20220920

C03 Trial/appeal decision taken

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C03

Effective date: 20221018

C30A Notification sent

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C3012

Effective date: 20221018

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20221024

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7165487

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151