JP2017178862A - 抗炎症剤、化粧料、皮膚外用剤、炎症性疾患の改善剤、及び抗炎症剤の製造方法 - Google Patents

抗炎症剤、化粧料、皮膚外用剤、炎症性疾患の改善剤、及び抗炎症剤の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】皮膚の炎症を効果的に予防、治療することができる抗炎症剤の提供。
【解決手段】カウレン類の化合物を有効成分とする抗炎症剤。アマクサシダ乾燥物をメタノール、エタノール、ブチレングリコール、メタノール水溶液、エタノール水溶液、ブチレングリコール水溶液、ヘキサン、及び酢酸エチルから選択される少なくとも一つの溶媒に浸漬して抽出したアマクサシダ抽出液を、液液分配法、吸着クロマトグラフィー又は分配クロマトグラフィーから選択される少なくとも一つの処理法を用いて、精製して得られる前記カウレン骨格を有する抗炎晶剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、抗炎症剤、当該抗炎症剤を用いた化粧料、皮膚外用剤及び炎症性疾患の改善剤、並びに当該抗炎症剤の製造方法に関する。
皮膚の炎症は、太陽光等による紫外線の暴露、摩擦等による物理的刺激、真菌の感染、ストレス等によるホルモンバランスの異常等によって引き起こされる。通常、皮膚が炎症を起こしても、免疫防御プロセスにより、自然治癒するものであるが、アトピー等の皮膚アレルギー疾患の場合、免疫機構が暴走し、炎症性サイトカインが過剰産生されることで、皮膚の状態が慢性的に悪化する。このような皮膚の炎症を引き起こす炎症性サイトカインとしては、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン1α(IL−1α)、IL−1β等が知られている。皮膚を構成するケラチノサイト細胞は、通常28日(4週間)で新しい皮膚に生まれかわるサイクルを繰り返すが、TNF−αの過剰産生は、ケラチノサイト細胞の代謝サイクルを過度に速めることにより、皮膚の角化が異常となる。また、体内に侵入する微生物等を排除するために、IL−1α、IL−1βは、白血球や好中球等の種々の炎症性細胞の浸潤を招くが、過剰な産生は深刻な炎症を引き起こす。その結果、皮膚が硬化したり、ひび割れして感染し易くなったり、痒みを伴うことで掻き壊したりすることで、皮膚の状態が悪化する。
皮膚の炎症を抑制するものとしては、一般に副腎皮質ホルモンを主とするステロイド剤が知られている。ステロイド剤を使用すると、抗菌物質やサイトカイン産生が抑制され過ぎるため、微生物の侵入や増殖を防ぐために必要な炎症(免疫防御プロセス)が起こりにくくなり、感染が拡大することがある。このような副作用が生じるため、ステロイド剤は長期に亘って使用することが困難であった。そこで、これらの炎症性サイトカインの過剰産生を抑制し、正常な免疫機構に近付けるとともに、長期使用が可能で、安全性の高い抗炎症剤のスクリーニングが精力的に行われている。
皮膚の炎症を抑制するものとしては、植物等の抽出物を用いるものが多く報告されている。例えば、リンデン、レモンバーム、コロハ、ルリヂシャ、ソウキュウ、鹿蹄草、大青葉、滴水珠及び風輪菜の抽出物が、アトピー性皮膚外用剤として有効であることが報告されている(特許文献1)。また、ウンカリア・トメントーサ及びウンカリア・ギアネセスから選択される1種又は2種の植物からの抽出物を皮膚外用剤に配合することで、抗炎症,免疫賦活作用を有し、湿疹,蕁麻疹、アトピー性皮膚炎等の各種アレルギー性炎症性疾患や、紫外線による皮膚免疫機能の低下等に効果を発揮することが報告されている(特許文献2)。さらに、シソ科メンタ属植物及び/又はその抽出物と、クルミ科黄杞及び/又はその抽出物を組み合わせて使用するアトピー性皮膚炎の予防又は治療剤が報告されている(特許文献3)。
特開平8−301779号公報 特開2001−131079号公報 特開2006−348027号公報
特許文献1〜3に記載の化合物及び植物の抽出物には、炎症を抑制する作用があることが開示され、一部の化粧品、皮膚外用剤等の各種製品に配合されて実用化されているものもある。しかしながら、抗炎症効果や安全性については、必ずしも満足のいくものではなかった。
抗炎症効果を安定的に発揮させるためには、植物等の抽出物に含まれる抗炎症効果の有効成分を特定し、当該成分の最適な条件で使用することが望まれる。しかしながら、植物等に含まれる抗炎症効果を奏する有効成分は特定されているものが少なく、免疫機構において、どのような因子に作用しているかまでは、上記特許文献1〜3を含めて具体的に明らかにされている技術は殆ど見られない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、皮膚の炎症を効果的に予防、治療することができる抗炎症剤を提供することを目的とする。また、当該抗炎症剤を用いた化粧料、皮膚外用剤、及び炎症性疾患の改善剤等を提供することを目的とする。さらに、当該抗炎症剤の製造方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明は以下の発明を含む。
[発明1]
下記式(I):
[式中、R、Rは、それぞれH、OH、又はCHであるか、R及びRが一緒になってCHであり、
は、H、OH、CHCOO、又はCCOOであり、
、Rは、H又はOHであり、
は、H、グルコース基、ガラクトース基、キシロース基、又はマンノース基である。]
で示される化合物又はその塩を有効成分とする抗炎症剤。
[発明2]
及びRは、一緒になってCHであり、
は、OH、CHCOO、又はCCOOであり、
、Rは、それぞれHであり、
は、H又はグルコース基である発明1に記載の抗炎症剤。
[発明3]
前記有効成分は、炎症性サイトカインの産生を抑制する発明1又は2に記載の抗炎症剤。
[発明4]
前記炎症性サイトカインは、ケラチノサイト内で産生される発明3に記載の抗炎症剤。
[発明5]
前記炎症性サイトカインは、TNF−α、IL−1α、及びIL−1βからなる群から選択される少なくとも一つである発明3又は4に記載の抗炎症剤。
[発明6]
発明1〜5の何れか一項に記載の抗炎症剤を含有する化粧料。
[発明7]
発明1〜5の何れか一項に記載の抗炎症剤を含有する皮膚外用剤。
[発明8]
発明1〜5の何れか一項に記載の抗炎症剤を含有する炎症性疾患の改善剤。
[発明9]
発明1〜5の何れか一項に記載の抗炎症剤を製造する方法であって、
アマクサシダ(Pteris dispar Kunze)乾燥物をメタノール、エタノール、ブチレングリコール、メタノール水溶液、エタノール水溶液、ブチレングリコール水溶液、ヘキサン、及び酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも一つの溶媒に浸漬してアマクサシダ抽出液を抽出する抽出工程
を包含する抗炎症剤の製造方法。
[発明10]
前記アマクサシダ抽出液を、液液分配法、吸着クロマトグラフィー、及び分配クロマトグラフィーからなる群から選択される少なくとも一つの処理法を用いて抗炎症剤を得る精製工程
をさらに包含する発明9に記載の抗炎症剤の製造方法。
[発明11]
前記式(I)で示される化合物又はその塩が、
[式中、R、Rは、それぞれH、OH、又はCHであるか、R及びRが一緒になってCHであり、
は、OHであり、
、Rは、H又はOHであり、
は、H、グルコース基、ガラクトース基、キシロース基、又はマンノース基である。]
である場合において、RをCHCOO、又はCCOOで置換する置換工程をさらに包含する発明9又は10に記載の抗炎症剤の製造方法。
本構成の抗炎症剤は、抗炎症効果に優れた効力を提供することができ、単離された当該成分を、配合することにより、安全性に優れ、且つ高い抗炎症効果を有する化粧料、皮膚外用剤、及び炎症性疾患の改善剤を提供することができる。また、本構成の抗炎症剤の製造方法は、当該抗炎症剤を、簡単な方法で製造することができる。
図1は、本発明に係る抗炎症剤における細胞毒性の評価結果を示すグラフである。 図2は、本発明に係る抗炎症剤の抗炎症効果(TNF−α抑制効果)を示すグラフである。 図3は、本発明に係る抗炎症剤の抗炎症効果(IL−1α抑制効果)を示すグラフである。 図4は、本発明に係る抗炎症剤の抗炎症効果(IL−1β抑制効果)を示すグラフである。 図5は、本発明に係る抗炎症剤の自然発症皮膚炎モデルマウスによる評価試験を示す図である。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、ある種のカウレン類の化合物に抗炎症効果が存在することを見出し、本発明を完成させた。カウレン類の化合物は、代表的なジテルペンであり、抗菌活性、抗腫瘍活性等を備えることが知られているが、カウレン類の化合物の抗炎症活性については、これまで十分に検討されていない。
本発明に係る抗炎症剤は、下記式(I)で示される化合物又はその塩を有効成分とする。
式中、R、Rは、それぞれH、OH、又はCHであるか、R及びRが一緒になってCHであり、
は、H、OH、CHCOO、又はCCOOであり、
、Rは、H又はOHであり、
は、H、グルコース基、ガラクトース基、キシロース基、又はマンノース基である。
本発明の好ましい化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
化合物1:
化合物2:
化合物3:
上記に挙げた化合物のうち、より好ましい化合物は、化合物1(11ベータ−ヒドロキシ−15−オキソ−エント−カウラ−16−エン−19−オイクアシッド:11β−Hydroxy−15−oxo−ent−kaur−16−en−19−oic Acid)、及び化合物2(11ベータ−アセチル−15−オキソ−エント−カウラ−16−エン−19−オイクアシッド:11β−Acetyl−15−oxo−ent−kaur−16−en−19−oic Acid)であり、さらに好ましい化合物は、化合物2である。また、上記化合物1〜3のグルコース基、ガラクトース基、キシロース基、又はマンノース基の配糖体も好ましい例として挙げられ、特にグルコース基の配糖体が好ましい。
本発明の抗炎症剤は、細胞内の炎症性サイトカイン分泌を抑制することによって、抗炎症効果が得られる。深刻な炎症は、炎症性サイトカインの過剰な分泌によって引き起こされるが、本発明の抗炎症剤は、炎症性サイトカインの過剰分泌を抑制することによって、正常な免疫機構に近付けることができる。その結果、皮膚、関節、血液、骨等における炎症を抑えることが可能となる。
本発明の抗炎症剤は、ケラチノサイト細胞内の炎症性サイトカイン分泌を抑制することによって、抗炎症効果が得られる。アトピー性皮膚炎等による炎症は、体内における免疫機構の暴走により、ケラチノサイト細胞内での炎症性サイトカインの過剰な分泌によって引き起こされる。本発明の抗炎症剤は、ケラチノサイト細胞内の炎症性サイトカインの過剰分泌を抑制することによって、正常な免疫機構に近付けることができ、アトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患による炎症を抑えることが可能となる。
本発明の抗炎症剤は、細胞内のTNF−α、IL−1α、及びIL−1βの少なくとも1つの炎症性サイトカインを抑制することによって、抗炎症効果が得られる。TNF−αの過剰分泌は、ケラチノサイト細胞の代謝サイクルを過度に速めることにより、皮膚の角化が異常となるが、本発明の抗炎症剤がTNF−αの分泌を抑制することによって、皮膚の代謝サイクルが正常に近付くことが可能となる。また、微生物が体内に侵入すると、IL−1αやIL−1βが、白血球や好中球等の種々の炎症性細胞の浸潤を招くことにより、炎症を引き起こすが、本発明の抗炎症剤がIL−1αやIL−1βの過剰な分泌を抑制することによって、炎症性細胞が浸潤し過ぎることを防ぐことができる。その結果、正常な免疫機構に近付けることができ、炎症を抑えることが可能となる。
本発明の抗炎症剤は、化粧料として許容される各種の基材や担体と組み合わせて提供される。化粧料には、必要に応じて、賦形剤、被膜剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、乳化剤、分散剤、安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、防腐剤、紫外線吸収剤、保湿剤、着色剤、香料、増粘剤、殺菌剤、細胞賦活剤等の添加剤を適宜配合することもできる。
化粧料として、具体的には、化粧水、乳液、クリーム、クレンジング、パック、オイルリキッド、マッサージ料、美容液、洗浄剤、脱臭剤、ハンドクリーム、リップクリーム等のスキンケア化粧料;メイクアップ下地、白粉、リキッドファンデーション、油性ファンデーション、パウダーファンデーション、頬紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、口紅等のメイクアップ化粧料、制汗剤、日焼け止め乳液や日焼け止めクリーム等の紫外線防御化粧料等が挙げられ、医薬部外品として使用されるものも含まれる。
化粧料における抗炎症剤の配合割合は、その有効量や、化粧料の形態等に応じて適宜設定されるが、例えば、化粧料の総量に対して、0.001〜10質量%であり、好ましくは0.001〜1質量%であり、さらに好ましくは0.001〜0.1質量%である。
皮膚外用剤は本発明の抗炎症剤を有効成分とし、薬学的に許容される基材や担体と組み合わせて提供される。皮膚外用剤には、薬学的に許容される限度において、賦形剤、被膜剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、乳化剤、分散剤、安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、防腐剤、紫外線吸収剤、保湿剤、着色剤、香料、増粘剤、殺菌剤、細胞賦活剤等の添加剤を適宜配合することもできる。皮膚外用剤の剤形としては、例えば、外用剤、経皮剤、液剤、貼付剤等が挙げられる。
皮膚外用剤における本発明の抗炎症剤の配合割合は、その有効量や、皮膚外用剤の剤形や、投与形態等に応じて適宜設定されるが、例えば、皮膚外用剤の総量に対して、0.001〜10質量%であり、好ましくは0.001〜1質量%であり、さらに好ましくは0.001〜0.1質量%である。
炎症性疾患の改善剤は本発明の抗炎症剤を有効成分とし、薬学的に許容される基材や担体と組み合わせて提供される。炎症性疾患の改善剤には、薬学的に許容される限度において、賦形剤、被膜剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、乳化剤、分散剤、安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、防腐剤、紫外線吸収剤、保湿剤、着色剤、香料、増粘剤、殺菌剤、細胞賦活剤等の添加剤を適宜配合することもできる。
炎症性疾患の改善剤としては、医薬品、医薬部外品、健康食品を含み、本発明の抗炎症剤を有効成分として含有する。ここで、医薬部外品とは、日本の薬事法に定められた、医薬品と化粧品との中間的な分類であって、人体に対する作用が緩やかなものが該当し、医薬品よりは緩和であるが、人体に何らかの改善効果をもたらすものが含まれる。当該炎症性疾患の改善剤は、経口又は非経口のいずれで適用される剤型であってもよい。経口投与で投与される炎症性疾患の改善剤の剤型としては、例えば、丸剤、散剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤等が挙げられる。非経口で投与される炎症性疾患の改善剤の剤型としては、例えば、外用剤、経皮剤、経鼻剤、液剤、貼付剤等が挙げられる。
炎症性疾患の改善剤における本発明の抗炎症剤の配合割合は、その有効量や、医薬組成物の剤形や、投与形態等に応じて適宜設定されるが、例えば、炎症性疾患の改善剤の総量に対して、0.001〜10質量%であり、好ましくは0.001〜1質量%であり、さらに好ましくは0.001〜0.1質量%である。
本発明の抗炎症剤は、アマクサシダ(Pteris dispar Kunze)から効率よく抽出、精製することができる。アマクサシダは、イノモトソウ科(Pteridaceae)に属し、千葉以西の本州、四国、九州、沖縄、台湾、中国等に広く分布するシダ植物である。アマクサシダの使用される部位は、特に限定されるものではないが、おもに葉が用いられる。
本発明の抗炎症剤は、アマクサシダの乾燥物を粉砕した粉砕物から有機溶媒により抽出される(抽出工程)。抽出に使用する有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブチルアルコール等の低級アルコール類;ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。上記有機溶媒には、水を加水して含水有機溶媒としてもよい。好ましい有機溶媒は、メタノール、エタノール、ブチレングリコール、ヘキサン、及び酢酸エチルであり、好ましい含水溶媒は、メタノール水溶液、エタノール水溶液、ブチレングリコール水溶液である。より好ましい有機溶媒は、エタノール、ブチレングリコールであり、より好ましい含水溶媒は、エタノール水溶液、ブチレングリコール水溶液である。有機溶媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。含水有機溶媒を調製する場合、有機溶剤の割合は、好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは50〜99質量%であり、特に好ましくは70〜99質量%である。
アマクサシダを有機溶媒で抽出する方法は、特に限定されないが、例えば、アマクサシダの乾燥粉末1質量部に対して、上記有機溶媒又は含水有機溶媒を1〜50質量部、好ましくは5〜20質量部添加し、抽出温度を5〜60℃、好ましくは10〜40℃で、抽出時間を5〜120時間、好ましくは8〜72時間で、静置又は撹拌しながらアマクサシダのエキス分を抽出した後、遠心分離機等で固形分を除去する方法等が挙げられる。得られたアマクサシダ抽出物は、抗炎症剤を比較的高い濃度(0.2質量%以上)で含有しているため、当該アマクサシダ抽出物をそのまま抗炎症剤として使用することも可能である。
得られたアマクサシダの抽出液を液液分配法、吸着クロマトグラフィー、又は分配クロマトグラフィー等により精製を行うことができる(精製工程)。吸着クロマトグラフィーの担体としてはスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着材(例えば、HP−20、三菱化学株式会社製)を、分配クロマトグラフィーの担体としてはシリカゲルを好適に用いることができる。抽出液は、一種の抽出法で精製してもよく、二種以上の抽出法を組み合わせて精製してもよい。
アマクサシダ抽出液、又はアマクサシダ抽出液を上記精製工程により精製して得られた化合物は、必要に応じて、アセチル化処理又はプロピオニル化処理をすることができる(置換工程)。置換工程は、アマクサシダ抽出液、又は精製して得られた化合物を、無水酢酸、ハロゲン化アセチル、又はハロゲン化プロピオニル等と反応させることにより行われる。
本発明の抗炎症剤について、炎症性サイトカインを抑制する作用を評価する試験を実施した。試験結果を以下に示す。
<アマクサシダからの抗炎症剤の抽出>
アマクサシダは、種子島で採取した葉を、換気・循環型乾燥用恒温器(株式会社いすゞ製作所製、型番EPFH−343−2T)を用いて50℃で2日間温風乾燥した。乾燥した葉は、卓上粉砕機(株式会社東京ユニコム、型番T−351)を用いて粉末化した。アマクサシダの粉末50gを、500mlのブチレングリコールに浸漬し、23℃で、72時間抽出を行った。その後、フィルター濾過を行い、450mlのアマクサシダ抽出液を回収した。
<アマクサシダからの抗炎症剤の精製>
「アマクサシダからの抗炎症剤の抽出」の項で説明したアマクサシダの粉末50gを、500mlのメタノールに浸漬し、23℃で、72時間抽出を行い、その後、2000rpm、10分間で遠心分離し、450mlのアマクサシダ抽出液を回収した。アマクサシダ抽出液をエバポレーターにかけてメタノールを揮発させ、10mlに濃縮した。濃縮液にクロロホルム500mlを添加し、1週間放置してクロロホルムに溶解させてクロロホルム溶解液を調製した。クロロホルム溶解液をフィルターでろ過し、ろ液をエバポレーターにかけて5mlに濃縮した。次いで、濃縮液を20gのシリカゲル(型番:30721、ナカライテスク株式会社製)を詰めたカラムを用いて分画した。濃縮したクロロホルム溶解液90mlをシリカゲルカラムにアプライし、メタノールをそれぞれ2.5容量%、5容量%、7.5容量%、10容量%、12.5容量%、15容量%、17.5容量%、20容量%に調整したメタノール/クロロホルムの溶出液90mlを用いて順次溶出させ、19画分を得た。後に説明するELISA法により、各画分の抗炎症効果を確認したところ、画分(16)、画分(17)、及び画分(18)の3画分に強い抗炎症活性が存在した。当該3画分を1本にまとめて乾燥し、1mlのクロロホルムを添加した。このクロロホルム添加物を、クロロホルムに溶解する画分と、クロロホルムに溶解しない画分とに分離したところ、何れの画分にも抗炎症効果を確認した。クロロホルムに溶解しない画分を硫酸(最終濃度1%)により100℃、30分で加水分解した。当該加水分解物を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて下記条件で分析し、メインピークを回収した。回収溶液を減圧乾燥して化合物1(11ベータ−ヒドロキシ−15−オキソ−エント−カウラ−16−エン−19−オイクアシッド)の精製物を得た。クロロホルムに溶解する画分も同様にHPLCを用いてメインピークを回収すると、同じ化合物1が得られた。化合物1は、アマクサシダの粉末50gから約10mg得られた。また、質量分析により、加水分解前のクロロホルム非溶解画分は、化合物1のグルコース配糖体であることが確認された。
(HPLC分析条件)
カラム:COSMOSIL(登録商標) 5C18−MS−II(ナカライテスク株式会社製)
移動相:アセトニトリル:水=10:90から60:40(グラジュエント溶出)
流速:2ml/分
検出波長:245nm
構造決定は、H−NMR及び13C−NMRに基づいて行った。以下に、H−NMR及び13C−NMRスペクトルのシグナルを示す。
H−NMR(CDCl+CDOD):0.85(3H,s),1.14(3H,s),2.29(1H,d,J=12.0Hz),2.95(1H,broads),3.93(1H,d,J=4.6Hz),5.16(1H,s),5.73(1H,s)
13C−NMR(CDCl+CDOD):40.5(C−1),18.7(C−2),37.8(C−3),43.4(C−4),55.8(C−5),19.8(C−6),33.7(C−7),50.6(C−8),62.8(C−9),38.8(C−10),65.7(C−11),65.7(C−12),36.8(C−13),36.4(C−14),210.7(C−15),150.3(C−16),112.7(C−17),28.8(C−18),180.4(C−19),15.4(C−20)
<アマクサシダからの抗炎症剤のアセチル化処理>
上記精製工程により精製して得られた化合物1について、アセチル基との置換工程(アセチル化処理)を行った。アセチル化処理は、上記精製工程で得られた化合物1を、無水酢酸(Sigma−Aldrich社製)と反応させることにより行い、アセチル化物として化合物2(11ベータ−アセチル−15−オキソ−エント−カウラ−16−エン−19−オイクアシッド)を得た。
回収したアマクサシダ抽出液由来の化合物1、及び化合物2について、細胞生存率、及び炎症性サイトカイン抑制を評価した。これらの化合物の抗炎症性を評価するために、PSVK1ケラチノサイト細胞を使用し、細胞生存率の測定をWSTアッセイにより行った。また、炎症性サイトカインのうち、TNF−α、IL−1αについては、ELISA法により産生量の測定を行った。IL−1βについては、Real Time PCR法により相対遺伝子発現量を算出した。
(WST細胞生死判別アッセイ)
(1)96ウェルプレートに、PSVK1ケラチノサイト細胞(JCRB細胞バンク、細胞番号:JCRB1093)を1×10細胞(100μL/ウェル)となるように前培養培地に懸濁後播種し、37℃、5%二酸化炭素気流下で24時間培養した。
前培養培地:Epilife Medium with 60μM Calcium(Thermo Fisher Scientific社製)に、HKGS(Human Keratinocyte Growth Supplement) Kit(Thermo Fisher Scientific社製)を規定量添加した。
(2)(1)で培養したPSVK1ケラチノサイト細胞の前培養培地を除去した後、100μLのPSVK1ケラチノサイト細胞の処理用培地を添加して24時間培養した。
処理用培地:前培養と同じ培地に、化合物1、化合物2、比較化合物1(ロンギカウリン E:Longikaurin E、BioBioPha社製)、比較化合物2(ロスオルニン A:Rosthornin A、ChemFaces社製)、比較化合物3(11,15−ジヒドロキシ−エント−カウラ−16−エン−19−オイクアシッド、ChemFaces社製)を、所定の濃度になるように夫々添加した。
コントロール用処理用培地:上記処理用培地に上記化合物を無添加とした。
(3)24時間培養後、水溶性テトラゾリウム(WST)試薬を各ウェルに添加し、1時間インキュベートした。450nmに設定したプレートリーダー Glomax System(Promega社製)を使用することによって、細胞の生死を比色法で判別した。
図1は、本発明に係る抗炎症剤における細胞毒性の評価結果を示すグラフである。各化合物の濃度と細胞生存率(%)との関係を示している。化合物を添加しないコントロールを100(%)として、それぞれの測定値を細胞生存率に換算した。化合物1、化合物2については、ケラチノサイト細胞培養液に10μMになるように添加しても細胞生存率が減少しなかった。比較化合物3についても、細胞生存率はほとんど減少しなかった。一方、比較化合物1、2については、3μMになるように添加すると、細胞生存率(%)が減少し始めることが確認された。
(ELISA法)
PSVK1ケラチノサイト細胞を24ウェルプレート又は96ウェルプレートで平板培養し、24時間接着させ、UV30mJ/cmを照射した。UV照射後各化合物を含有した培地を添加し、培養24時間後における培地を用いて、ELISA MAX(BioLegend社製)により、化合物1、2、及び比較化合物1〜3を添加したケラチノサイト細胞のTNF−α産生量、及びIL−1α産生量を測定し、比較を行った。
図2は、本発明に係る抗炎症剤の抗炎症効果(TNF−α抑制効果)を示すグラフである。化合物1、2、及び比較化合物1〜3とTNF−α産生量との関係を示している。図2(A)に示すように、化合物1を3μMになるようにケラチノサイト細胞培養液に添加した場合、TNF−α産生量は、コントロール9.4pg/mlに対し、化合物1では5.9pg/mlにまで減少した。また、比較化合物1、比較化合物2を夫々3μMになるように添加した場合、TNF−α産生量は、コントロール9.4pg/mlに対し、比較化合物1では2.6pg/ml、比較化合物2では3.7pg/mlにまで減少したが、これらは細胞毒性による細胞死(図1(A))の影響によるものである。一方で、図2(B)に示すように、化合物2を3μMになるようにケラチノサイト細胞培養液に添加した場合、TNF−α産生量は、コントロール215pg/mlに対して、化合物2では114pg/mlにまで減少しており、アセチル化する前の化合物1を3μMになるように添加した場合(TNF−α産生量:152pg/ml)よりも、TNF−α抑制効果がさらに高くなることが確認された。一方で、比較化合物3を3μMになるように添加した場合、TNF−α産生量が、コントール215pg/mlに対して、比較化合物3では272pg/mlにまで増加していたことから、比較化合物3にはTNF−α抑制効果がないことが確認された。なお、図2(A)及び図2(B)において、化合物1のケラチノサイト細胞内溶液への添加量がいずれも3μMになるように添加しているが、TNF−α産生量が、図2(A)においては、5.9pg/ml、図2(B)においては、152pg/mlと異なるのは、ELISA試験に供した培地中の細胞数が異なることによるものである。
図3は、本発明に係る抗炎症剤の抗炎症効果(IL−1α抑制効果)を示すグラフである。化合物1、2、及び比較化合物3とIL−1α産生量との関係を示している。IL−1α産生量は、化合物を添加しないコントロール42.3pg/mlに対し、化合物1を10μMになるようにケラチノサイト細胞培養液に添加した場合、化合物1では22.0pg/mlにまで減少した。また、化合物2を10μMになるように添加した場合、IL−1α産生量は、コントロール42.3pg/mlに対して、化合物2では20.0pg/mlにまで減少しており、アセチル化する前の化合物1よりも、IL−1α抑制効果が高いことが確認された。一方で、比較化合物3を10μMになるようケラチノサイト細胞培養液に添加した場合、IL−1α産生量が、コントロール42.3pg/mlに対し、比較化合物3では54.8pg/mlにまで増加していたことから、比較化合物3にはIL−1α抑制効果がないことが確認された。
<Real Time PCR法>
5×10個PSVK1ケラチノサイト細胞を培養し、UV30mJ/cmを照射し、化合物1、2、及び比較化合物1、2を添加した。UV照射3時間後に細胞を回収した。Real Time PCR法により、回収した細胞から、EZ1 RNA Universal Tissue kit(Qiagen社製)を用いて、Total RNAを抽出し、ReverTra Ace qPCR RT Master Mix PCR(東洋紡株式会社製)でcDNA逆転写した後、Express SYBR GreenER(Thermo Fisher Scientific社製)によりcDNAを鋳型として、IL−1βに特異的なプライマーを作成し、Real Time PCRに供した。18srRNAの量で標準化した、IL−1βの相対的なmRNA量を求め、IL−1β/18S相対遺伝子発現量を算出した。
Real Time PCR法は、高速サーマルサイクラーシステム上で実施した。典型的な反応条件は、10分間の活性化ステップ、95℃で15秒の変性、60℃で10秒のアニーリング、72℃で10秒の伸長からなるサイクル40回であった。使用したプライマーを下記に示す。
IL−1β
Forward:5’−CTATCTTCTTCGACACATGGGA−3’(配列番号1)
Reverse:5’−AAAGGACATGGAGAACACCACT−3’(配列番号2)
18srRNA(内部標準)用プライマー
Forward:5’−TGTTCAAAGCAGGCCCGAGC−3’(配列番号3)
Reverse:5’−CGCCGGTCCAAGAATTTCAC−3’(配列番号4)
図4は、本発明に係る抗炎症剤の抗炎症効果(IL−1β抑制効果)を示すグラフである。化合物1、2、及び比較化合物1、2とIL−1β/18S相対遺伝子発現量との関係を示している。図4(A)に示すように、化合物1を10μMになるようにケラチノサイト培養液に添加した場合、IL−1β/18S相対遺伝子発現量は、コントロール5.7に対し、化合物1では1.1にまで減少した。また、比較化合物1を3μM、比較化合物2を1μMになるように添加した場合、IL−1β/18S相対遺伝子発現量は、コントロール5.7に対し、比較化合物1では3.2、比較化合物2では4.6にまで減少したが、これらは細胞毒性による細胞死(図1(A))の影響によるものである。一方で、図4(B)に示すように、化合物2を5μMになるようにケラチノサイト細胞培養液に添加した場合、IL−1β/18S相対遺伝子発現量は、コントロール5.8に対し、化合物2では2.2にまで減少しており、アセチル化する前の化合物1(IL−1β/18S相対遺伝子発現量:3.4)よりも、IL−1β抑制効果が高いことが確認された。
<自然発症皮膚炎モデルマウスによる評価試験>
この試験は、アトピー性皮膚炎様の症状を示すNOAマウス(自然発症皮膚炎モデルマウス、皮膚炎発症頻度:10週齢30%、20週齢90%)を用いて、皮膚の炎症に対する本発明の抗炎症剤の効果を、肉眼所見として検討したものである。評価試験を、以下の通り実施した。(1)アトピー性皮膚炎様の症状を示すNOAマウス雄2匹(50週齢、体重25g)について、一方は200μLのアマクサシダ抽出液(ブチレングリコールを用いて抽出)を塗布し(No.1マウス)、他方はコントロールとしてブチレングリコールのみを塗布した(No.2マウス)。(2)上記塗布14日後に、肉眼的所見による観察を行った。
図5は、本発明に係る抗炎症剤の自然発症皮膚炎モデルマウスによる評価試験を示す図である。200μLのアマクサシダ抽出液をNOAマウスへ塗布したものとブチレングリコールのみを塗布したものとを比較したものである。実験マウスNo.1では、背中から腰部にかけてのびらん及び痂皮の改善が認められた。一方、実験マウスNo.2では、背中から腰部にかけてのびらん及び痂皮の改善はみられず、頸椎背中から首のあたりにも拡大していた。これらの結果から、化合物1は、自然発症皮膚炎モデルマウスに対し、抗炎症作用があることが確認された。
<安全性試験>
ヒトに対する安全性試験として24時間閉塞パッチテストにより、皮膚一次性刺激性試験を行った。アマクサシダ抽出物(ブチレングリコールを用いて抽出)の濃度が10%となるように白色ワセリン(日興リカ株式会社製)に練り込み、フィンチャンバー(株式会社スマートプラクティスジャパン製)を用いて、24時間閉塞パッチテストを成人男女40人に実施した。試験サンプル4点(アマクサシダ抽出液(濃度が10質量%となるように白色ワセリンで希釈したもの)1点、ブランクとして、白色ワセリン1点、生理食塩水1点、注射用蒸留水1点)を塗布したフィンチャンバーを、上腕内側に貼り付けてから24時間後に剥離し、その1時間後及び24時間後に判定を行った。皮膚に異常がなかった場合を皮膚刺激指数0ポイント、軽度の赤みのみの場合を1ポイント、赤みやはれ等の異常が見られた場合を3ポイントとし、40名の合計ポイントを計算して、試験サンプルを121段階(0〜121ポイント)で評価した。判定は、合計30ポイント以上で不合格とした。その結果、試験対象者40名全員が、いずれの試験サンプルにおいても、皮膚刺激指数は0ポイントであった。一次刺激(剥離1時間後)についても、40名全員が、いずれの試験サンプルにおいても、皮膚刺激指数は0ポイントであった。従って、24時間閉塞パッチテストにおいて、安全性試験の判定結果は合格であった。
また、ヒトに対する安全性試験として、RIPT(累積刺激及び感作性試験)により、複数回の皮膚接触(累積的刺激)による皮膚反応を確認した。アマクサシダ抽出物(ブチレングリコールを用いて抽出)の濃度が10%となるように白色ワセリンに練りこみ、被検物質を0.03mL充填した皮膚テスト用パッチテープ(パッチテスター「トリイ」、鳥居薬品株式会社製)を用いて、RIPTを成人男女50人に実施した。RIPTは、以下のように行った。まず累積刺激試験として、24時間閉塞パッチテストを、週3回、3週間にわたり行った。その後、2週間の休息期間をおき、感作性試験として24時間閉塞パッチテストを最後に1回行った。最終塗布除去時および除去後24時間後に判定を行った。判定方法は、皮膚に異常がなかった場合を皮膚刺激指数0ポイント、軽度の赤みのみの場合を1ポイント、赤みやはれ等の異常が見られた場合を3ポイントとし、試験対象者50名の合計ポイントを計算して、試験サンプルを151段階(0〜150ポイント)で評価した。判定は、合計35ポイント以上で不合格とした。その結果、最終塗布除去時および除去後24時間後に軽度の赤みがみられたのが1名であった。そのため、最終塗布除去時および除去後24時間後の皮膚刺激指数は、何れも1ポイントであった。従って、RIPTにおいても、安全性試験の判定結果は合格であった。
化合物1を含むサンプルは、24時間閉塞パッチテストでは、試験対象者40人全員、皮膚刺激指数が0ポイントであった。また、RIPT(累積刺激及び感作性試験)においても、試験対象者50人中1人のみ、最終日に軽度の赤みがみられた。いずれの結果からも、安全性試験は良好な結果が得られることが判明した。従って、本発明の抗炎症剤は、ヒトの皮膚に対して、一時的に使用するのみならず、長期連用する場合でも皮膚刺激がほとんどみられないため、安全性が高く、化粧品、皮膚外用剤、炎症性疾患の改善剤等の製品に適用できることが示唆された。
本発明に係る抗炎症剤、当該抗炎症剤を用いた化粧料、皮膚外用剤、炎症性疾患の改善剤、並びに当該抗炎症剤の製造方法は、例えば、食品分野、化粧品分野、及び医薬品分野に利用することができる。

Claims (11)

  1. 下記式(I):
    [式中、R、Rは、それぞれH、OH、又はCHであるか、R及びRが一緒になってCHであり、
    は、H、OH、CHCOO、又はCCOOであり、
    、Rは、H又はOHであり、
    は、H、グルコース基、ガラクトース基、キシロース基、又はマンノース基である。]
    で示される化合物又はその塩を有効成分とする抗炎症剤。
  2. 及びRは、一緒になってCHであり、
    は、OH、CHCOO、又はCCOOであり、
    、Rは、それぞれHであり、
    は、H又はグルコース基である請求項1に記載の抗炎症剤。
  3. 前記有効成分は、炎症性サイトカインの産生を抑制する請求項1又は2に記載の抗炎症剤。
  4. 前記炎症性サイトカインは、ケラチノサイト内で産生される請求項3に記載の抗炎症剤。
  5. 前記炎症性サイトカインは、TNF−α、IL−1α、及びIL−1βからなる群から選択される少なくとも一つである請求項3又は4に記載の抗炎症剤。
  6. 請求項1〜5の何れか一項に記載の抗炎症剤を含有する化粧料。
  7. 請求項1〜5の何れか一項に記載の抗炎症剤を含有する皮膚外用剤。
  8. 請求項1〜5の何れか一項に記載の抗炎症剤を含有する炎症性疾患の改善剤。
  9. 請求項1〜5の何れか一項に記載の抗炎症剤を製造する方法であって、
    アマクサシダ(Pteris dispar Kunze)乾燥物をメタノール、エタノール、ブチレングリコール、メタノール水溶液、エタノール水溶液、ブチレングリコール水溶液、ヘキサン、及び酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも一つの溶媒に浸漬してアマクサシダ抽出液を抽出する抽出工程
    を包含する抗炎症剤の製造方法。
  10. 前記アマクサシダ抽出液を、液液分配法、吸着クロマトグラフィー、及び分配クロマトグラフィーからなる群から選択される少なくとも一つの処理法を用いて抗炎症剤を得る精製工程
    をさらに包含する請求項9に記載の抗炎症剤の製造方法。
  11. 前記式(I)で示される化合物又はその塩が、
    [式中、R、Rは、それぞれH、OH、又はCHであるか、R及びRが一緒になってCHであり、
    は、OHであり、
    、Rは、H又はOHであり、
    は、H、グルコース基、ガラクトース基、キシロース基、又はマンノース基である。]
    である場合において、RをCHCOO、又はCCOOで置換する置換工程をさらに包含する請求項9又は10に記載の抗炎症剤の製造方法。
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