JP7162234B2 - 筋萎縮を阻害するための組成物、及び、筋萎縮原因遺伝子の発現を抑制するための組成物 - Google Patents
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Description
本発明はまた、筋萎縮原因遺伝子の発現を抑制するための組成物に関する。
特許文献1には、ウコン抽出物を有効成分とする剤により、筋芽細胞を活性化し、筋肉を増強させることで、筋肉萎縮を回復できることが記載されている。また、ウコン抽出物にはセスキテルペン類が含まれていることが記載されている。
(1)水溶性ウコン抽出物を有効成分として含む、筋萎縮を阻害するための組成物。
(2)ビサクロンを0.1重量%以上含む、(1)に記載の組成物。
(3)クルクミンを含まない又はクルクミンの含有量が0.5重量%以下である、(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)ビサクロンを有効成分として含む、筋萎縮を阻害するための組成物。
(5)飲食品である、(1)~(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)水溶性ウコン抽出物を有効成分として含む、筋萎縮原因遺伝子の発現を抑制するための組成物。
(7)ビサクロンを0.1重量%以上含む、(6)に記載の組成物。
(8)クルクミンを含まない又はクルクミンの含有量が0.5重量%以下である、(6)又は(7)に記載の組成物。
(9)ビサクロンを有効成分として含む、筋萎縮原因遺伝子の発現を抑制するための組成物。
(10)飲食品である、(6)~(9)のいずれかに記載の組成物。
本発明においてウコンとは、ショウガ科ウコン属の植物であるCurcuma longaを指す。Curcuma longaは「秋ウコン」と呼ばれる場合もある。
水溶性ウコン抽出物は、ウコン植物原料の、後述する親水性抽出溶媒による抽出物(ウコンエキス)をいい、必要に応じてさらに加熱及び/又は減圧等により抽出溶媒を揮発し、乾燥させたものであってもよい。これらの加熱、減圧、乾燥の方法は特に限定されず、例えば従来公知の方法を使用することができる。
本発明においてビサクロンとは、ビサボラン型セスキテルペン類に分類される化合物であり、下記の平面構造式を有する化合物又はその塩を意味する。ビサクロンは平面構造式中*印で示した位置に不斉炭素を有し、そのため数種の光学異性体が存在するが、本明細書におけるビサクロンとはそのいずれの光学異性体も包含する概念である。
本発明の一実施形態は、水溶性ウコン抽出物を有効成分として含む組成物に関する。
水溶性ウコン抽出物を有効成分として含む組成物は、水溶性ウコン抽出物からなる組成物(即ち水溶性ウコン抽出物自体)であってもよいし、水溶性ウコン抽出物と、少なくとも1種の他の成分とを含む組成物であってもよい。該組成物が、水溶性ウコン抽出物と、少なくとも1種の他の成分とを含む場合、水溶性ウコン抽出物と、少なくとも1種の他の成分とを混合した組成物であってもよいし、水溶性ウコン抽出物と、少なくとも1種の他の成分とを適当な手段で製剤化した組成物であってもよいし、水溶性ウコン抽出物と、少なくとも1種の他の成分との製剤化した組成物を、更に他の成分と混合した組成物であってもよい。本発明における、水溶性ウコン抽出物を有効成分として含む組成物の形状は、特に限定されず、例えば、液体状、流動状、ゲル状、半固形状、又は固形状などの何れの形状であってもよい。
ミネラル類としては、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄等が挙げられる。
本発明の一実施形態は、ビサクロンを有効成分として含む組成物に関する。
ビサクロンを有効成分として含む組成物は、ビサクロンからなる組成物(即ちビサクロン自体)であってもよいし、ビサクロンと、少なくとも1種の他の成分とを含む組成物であってもよい。該組成物が、ビサクロンと、少なくとも1種の他の成分とを含む場合、ビサクロンと、少なくとも1種の他の成分とを混合した組成物であってもよいし、ビサクロンと、少なくとも1種の他の成分とを適当な手段で製剤化した組成物であってもよいし、ビサクロンと、少なくとも1種の他の成分との製剤化した組成物を、更に他の成分と混合した組成物であってもよい。本発明における、ビサクロンを有効成分として含む組成物の形状は、特に限定されず、例えば、液体状、流動状、ゲル状、半固形状、又は固形状などの何れの形状であってもよい。
[試料]
下記表に示す試料を用いた。
<No.1 ビサクロン高濃度品(実施例)>
ビサクロンは、精製された(≧99%(HPLC))ビサクロン試薬を長良サイエンス株式会社から入手して、メタノールで適時希釈して使用した。
水溶性ウコン抽出物は、秋ウコンと通称される学名Curcuma longaの根茎の親水性抽出溶媒による抽出物を指す。ウコンの根茎部分を水等の抽出溶媒を用いて抽出し、加熱及び/又は減圧して抽出溶媒を揮発させたものを使用した。
ウコン色素は、Curcuma longaの根茎部分より、アルコールやヘキサン、アセトン等の有機溶媒で抽出したものを使用した。このようにして得られたウコン色素は主にクルクミン等のクルクミノイドを含む。
使用したウコン色素は、クルクミンを60重量%以上含有するものであった。
ガジュツは、ショウガ科ウコン属の1種の、紫ウコンと通称される学名Curcuma zedoariaを指し、秋ウコンとは別種である。ガジュツは秋ウコンに比べてビサクロンの含有量が少ない。ガジュツの根茎部分を、水を用いて抽出し、加熱及び/又は減圧して抽出溶媒を揮発させたものを、試料No.4として使用した。
ガジュツの根茎部分を、エタノールを用いて抽出し、加熱及び/又は減圧して抽出溶媒を揮発させたものを、試料No.5として使用した。
細胞障害率の測定
マウス骨格筋由来細胞株C2C12(ATCC)は10%ウシ胎児血清(FBS)(Cell Culture Bioscience)添加DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium, Sigma-Aldrich)にて37℃、水蒸気飽和した5%CO2条件下で培養した。培養に使用したDMEM培地は1%Penicillin-Streptomycin(Sigma-Aldrich)とフィルター滅菌した10%FBSを添加した。細胞継代の際は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した後、トリプシン溶液で細胞を剥がした。PBSはPBS10×,pH7.4(ライフテクノロジーズジャパン株式会社、東京)をdH2Oで10倍希釈し、オートクレーブ滅菌した。トリプシン溶液は0.25%trypsin-EDTA(1×)(gibco)を用いた。2日に一度培地交換を行い、細胞が40%confluentになったところでBiocoat collagen I cell ware 24well plate(CORNING)に播種した。細胞が90%confluentになったところで、4%ウマ血清(HS)(Sigma-Aldrich)添加DMEMに培地交換することにより分化誘導をかけた。培地交換は2日に一度行った。
=100×(培地上清の吸光度)/(培地上清の吸光度+細胞懸濁液の吸光度)
という式によりLDH放出率を算出し、各試料未添加群に対するLDH放出率の割合(%)を細胞障害率とした。細胞障害率が150%以下となる最大濃度を、次に示す、ユビキチンリガーゼ遺伝子発現への影響評価時の試料の添加濃度とした。
試料No.1~5のデキサメタゾン(DEX)誘導性ユビキチンリガーゼ発現に対する評価を行った。マウス骨格筋由来細胞株C2C12を24wellプレートに播種し、90%confluentになったところで、4%HS添加DMEMに培地交換することにより分化誘導をかけた。培地交換は2日に一度行った。分化誘導6日目にPBSで洗浄後、無血清DMEMで12時間培養した。培地を除去しPBSで洗浄後、各wellに100nMとなるようにDEX(Sigma)を、細胞障害率の測定で決定された濃度となるように各試料を添加した無血清DMEMを1mL加えて12時間培養した。DEXはEtOH(関東化学株式会社、東京)にて100μMとなるように溶解し、-20℃にて保存した。その後、上清を除去し、PBS 1mLにて洗浄し、TRIzolTM Reagent(Invitrogen、東京)1mLによって細胞を回収し、-80℃で保存またはそのまま次の操作に用いた。凍結保存した場合はTRIzolTM Reagentを融解した後、クロロホルム(関東化学株式会社、東京)200μLを添加・撹拌し、室温で3分間放置後、4℃で15分間遠心(16,000g)した。その後、上層の水層部を400μL取り出し、2-プロパノール(関東化学株式会社、東京)500μLを添加・撹拌し、室温で10分間放置後、4℃で10分間遠心(12,000g)した。その後、上清を除去し、75%EtOH(関東化学株式会社、東京)in RNase free waterを750μL添加し、4℃で5分間遠心(7,600g)した。再び上清を除去し、RNase free water 50μL、100%EtOH 125μL、3M酢酸ナトリウム10μLを添加し、-20℃で一晩または2時間静置した。その後、4℃で15分間遠心(16,000g)し、上清を除去後、75%EtOH in RNase free water 1mLを添加し4℃で5分間遠心(16,000g)した。再び上清を除去し、90%EtOH in RNase free water 1mLを添加し4℃で5分間遠心(16,000g)した。その後上清を除去し、残存EtOHを揮発させて得られたRNAを20μLのRNase free waterに溶解した。RNAの濃度はNano Drop ND-1000(Thermo Fisher Scientific)により測定を行った。Total RNA 500ngからPrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)(TaKaRa)を使用してcDNAを合成した。調製したcDNAは-20℃で保存した。その後リアルタイムPCRによってMafbx、Murf1及び内部標準遺伝子としてPpiaの発現レベルを検討した。リアルタイムPCRにはThermal Cycler Dice Real Time System TP800(TaKaRa)を用いた。PCR反応溶液の組成は、1サンプルにつきSYBR(登録商標) Premix Ex TaqTM(Tli RnaseH Plus)(TaKaRa)6.25μL、RNase free water 4.25μL、Forward primer(10μM)0.5μL、Reverse primer(10μM)0.5μL、cDNA 1μLとした。PCR反応条件は、初期変性を95℃10秒間で行い、その後95℃5秒間→60℃30秒間(40サイクル)→95℃15秒間→60℃30秒間→95℃15秒間とした。各プライマーはウェブアプリケーションPRIMER3 INPUTにより設計し、合成をThermo Fisher Scientificに依頼した。プライマー配列は以下に示した。
細胞障害率の測定
試料No.1~5の細胞障害率の測定結果を図1に示す。細胞障害率が150%以下となる最大濃度から添加濃度をNo.1は20ng/mL、No.2,4~5は200μL/mL、No.3は50μg/mLとした。
骨格筋細胞におけるDEX誘導性Mafbx及びMurf1発現に及ぼす、試料No.1~5の影響を見るために、分化させたC2C12にDEX処理をし、各試料により12時間処理した。
ウコン抽出物は、DEX誘導性のMafbx及びMurf1のmRNA発現低下作用を示した。また、ビサクロンはDEX誘導性のMurf1のmRNA発現低下作用を示した。
[実験材料及び実験方法]
秋ウコン抽出物(AE)として、実験1で調製した「水溶性ウコン抽出物(秋ウコン抽出物)」を用いた。
anti-MAFbx antibody(abcam,ab168372)
希釈倍率:1000倍
anti-β-Actin antibody(Cell Signaling,#3700)
希釈倍率:2000倍
〈二次抗体〉
IgG antibody(GE healthcare,NA934)
IgG antibody(GE healthcare,NA931)
図3上段は、Dexの不存在下(Dex(-))又はDexの存在下(Dex(+))で、対照群(CON)、秋ウコン抽出物添加群(AE)又はIGF-1添加群(IGF-1)のC2C12からのタンパク質抽出液を試料とした上記のウェスタンブロッティングで得られたPVDF膜上のMAFbx及びβ-actin(内部標準)のバンドを示す。
[実験材料及び実験方法]
秋ウコン抽出物(AE)として、実験1で調製した「水溶性ウコン抽出物(秋ウコン抽出物)」を用いた。
Forward:5’-TCGTCTCTGAACTCCTTGCGT-3’(配列番号7)
Reverse:5’-TGGAGTGTCTGGTTGCCGT-3’(配列番号8)
Ppia
Forward:5’-GCAAATGCTGGACCAAACAC-3’(配列番号5)
Reverse:5’-TCACCTTCCCAAAGACCACAT-3’(配列番号6)
図4は、Dexの不存在下(Dex(-))又はDexの存在下(Dex(+))の対照群(CON)又は秋ウコン抽出物添加群(AE)のC2C12でのFoxo3のmRNA発現量(PpiaのmRNA発現量に対する相対値)を示す。
[実験材料及び実験方法]
秋ウコン抽出物(AE)として、実験1で調製した「水溶性ウコン抽出物(秋ウコン抽出物)」を用いた。
図5上段は、Dexの不存在下(Dex(-))又はDexの存在下(Dex(+))で、対照群(CON)、秋ウコン抽出物添加群(AE)又はIGF-1添加群(IGF-1)のC2C12からのタンパク質抽出液を試料としたウェスタンブロッティングで得られたPVDF膜上のリン酸化されたp70S6K(p-p70S6K)及びリン酸化されていないp70S6K(p70S6K)のバンドを示す。
[実験材料及び実験方法]
秋ウコン抽出物(AE)として、実験1で調製した「水溶性ウコン抽出物(秋ウコン抽出物)」を用いた。
図6Aは、Dexの不存在下(Dex(-))又はDexの存在下(Dex(+))、対照群(CON)又は秋ウコン抽出物添加群(AE)で培養したC2C12の筋管直径の平均値(μm)と標準偏差を示す。
Dex誘導性の筋管直径の減少をAE(図6A)、BC(図6B)がともに抑制した。
秋ウコン抽出物(AE)はDex誘導性のMAFbxタンパク質発現量の増加を有意に減少させた(実験2)。このことは、実験1で確認されたmRNA発現の結果に加え、AEがDex誘導性骨格筋萎縮抑制効果を持つことを裏付ける。さらに、AE添加によりFoxo3の有意なmRNA発現亢進が認められなかった(実験3)。このことから、AE添加は、Foxo3のmRNA発現亢進を減弱させ、ユビキチンリガーゼの発現を促進する転写因子の発現量自体を減少させることで、Mafbx及びMurf1のmRNA発現亢進抑制及びMAFbxタンパク質発現亢進抑制を行うことが示唆された。さらに、AE添加は、Dex誘導性のp70S6Kの脱リン酸化を阻害する傾向も認められた(実験4)。このp70S6Kのリン酸化の促進はDex未添加群においても認められたことから、AEはタンパク質合成経路へも影響を及ぼし、タンパク質合成を促進する可能性も示唆された。また、AE及びその成分であるビサクロン(BC)は筋管直径の萎縮を抑制したことから(実験5)、表現型における効果も示された。
Claims (4)
- ビサクロンを有効成分として含む、筋萎縮を阻害するための組成物。
- 飲食品である、請求項1に記載の組成物。
- ビサクロンを有効成分として含む、筋萎縮原因遺伝子の発現を抑制するための組成物。
- 飲食品である、請求項3に記載の組成物。
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