JP7157012B2 - ブローバイガス還流装置付エンジン - Google Patents

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Description

本発明は、農機や建機に適用されるディーゼルエンジンや自動車用エンジンなど、ブローバイガスを吸気通路に還流するように構成されたブローバイガス還流装置付エンジンに関するものである。
上述した各種のエンジンにおいては、ブローバイガスを吸気通路に戻すためのブローバイガス還流装置を装備しているのが一般的である。即ち、クランクケースからのブローバイガスを、ヘッドカバーの内部に形成されたカバー内ガス通路を通して吸気通路に導くように構成されている。
ヘッドカバーのカバー内ガス通路は、ブローバイガスを流すための専用の箱体をヘッドカバーに内装させる構造や、ヘッドカバーの内部スペースを上下に仕切る仕切り壁を設け、仕切り壁の上側をブローバイガスの通り道とする構造のものが多い。このような従来例としては、特許文献1において開示されたものが知られている。
ブローバイガスは、ミスト状になったオイル(水分も含まれる)を含んでおり、そのままの状態で吸気通路に戻されるとエンジンオイルが早期に減少して都合が悪い。そこで、ブローバイガスの通路には、ブローバイガス中のオイル成分を捕捉して回収するためのフィルタやセパレータなどのオイル回収部と、回収されたオイルをエンジン内部に戻すためのオイル戻し部が設けられている。
特許文献1においては、ヘッドカバー内を上下に仕切る仕切板4を設け、その上側にカバー内ガス通路が形成されるとともに、仕切板4の上側にオイルセパレータ部5が構成されている。カバー内ガス通路にて捕捉されたオイルは、仕切板4に設けられたドレインバルブ43や下方突出する回収筒49から流下排出され、エンジン内(九ランクケース内)に戻されるようになる。
特開2019-27342号公報
カバー内ガス通路におけるブローバイガス中のオイルミスト(ミスト状のオイル)は、フィルタやセパレータで、或いはヘッドカバーの内壁に衝突したりすることで気液分離され、オイルとして回収されるようになる。しかしながら、回収されたオイルはカバー内ガス通路における各所に滞留しやすいため、エアクリーナの目詰まりなどによって吸気負圧が過大になると、滞留しているオイルが吸気通路に吸込まれてしまい、オイル持ち去り量が一気に増大するおそれがある。
エンジンオイルの早期減少を招くオイル持ち去り量の増大は、特許文献1の場合のように、ドレインバルブや回収筒などのオイル回収部を設けていても生じる可能性のあることが判ってきたため、何らかの対策を講じることが必要になってきている。
本発明の目的は、ヘッドカバーのさらなる内部構造の工夫により、オイル持ち去り量が増えるおそれを軽減或いは解消させ、エアクリーナの目詰まりなどが生じてもエンジンオイルが早期減少しないようにして、改善されたブローバイガス還流装置付エンジンを提供する点にある。
本発明は、ブローバイガス還流装置付エンジンにおいて、
クランクケースからのブローバイガスを、ヘッドカバーの内部に形成されたカバー内ガス通路を通して吸気通路に導くように構成され、
前記カバー内ガス通路の底壁に、前記底壁から下方に突出される有底筒状のオイル落し部が動弁装置の上に位置する状態で形成され、
前記オイル落し部の下端部に、前記オイル落し部に形成されている縦向きオイル通路の下端に連通し、かつ、前記下端部を水平方向に貫通する横向き孔が形成され、
前記縦向きオイル通路にあるオイルが、前記横向き孔を通って排出されて前記動弁装置に供給されることが可能に構成されていることを特徴とする。
前記縦向きオイル通路及び前記横向き孔により、前記オイル落し部の下端部には上下逆向きT字状の末端オイル路が形成されているとよく、前記横向き孔の断面積は、前記縦向きオイル通路の下端部の断面積よりも小に設定されているとさらによい。
そして、前記横向き孔の前記下端部の外部に貫通する箇所の開口面積は、前記ヘッドカバーの内部における前記カバー内ガス通路以外の部分の圧と前記カバー内ガス通路の圧とが互いに等しい状態においては前記横向き孔からオイルの排出が許容されない表面張力が作用する程度の面積に設定されていると好都合である。
前記横向き孔は、前記オイル落し部の下端部に対するブローバイガス流れ方向で上流側と下流側とに亘って延びるように設定されているとよい。そして、前記ヘッドカバーは気筒配列方向に長い長尺形状をなし、前記横向き孔は前記ヘッドカバーの長手方向に沿って延びる状態で形成されていると好都合である。前記吸気通路は、前記ヘッドカバーにおける前記オイル落し部の上方に設けられたカバー吸気通路を有するとともに、前記カバー内ガス通路と前記カバー吸気通路とが連通されているとより好都合である。
本発明によれば、オイル落し部の縦向きオイル通路の下端に連通して外部に開口する横向き孔から、縦向きオイル通路にあるオイルを排出可能であるから、カバー内ガス通路において捕捉されたオイルを横向き孔から排出してエンジン内に回収できるようになる。例えば、エンジンの吸気脈動派により、縦向きオイル通路にあるオイルを横向き孔から排出させることができる。
縦向きオイル通路が横向き孔と連通していることで、オイル落し部の下端部にはラビリンス構造のオイル通路が形成されていることとなり、オイルが横向き孔及び縦向きオイル通路を通ってカバー内ガス通路へ逆流することも生じないようになる。
従って、エアクリーナが目詰まりするなどによって吸気負圧が過大になっても、オイル落し部からオイルが逆流して吸い上げられることはないし、カバー内ガス通路にオイルが溜まる状態もまず生じないようになるので、吸気通路へのオイル持ち去り量が増えるおそれを解消させることが可能になる。
その結果、ヘッドカバーのさらなる内部構造の工夫により、オイル持ち去り量が増えるおそれを軽減或いは解消させ、吸気負圧が過大になることが生じてもエンジンオイルが早期減少しないようになり、改善されたブローバイガス還流装置付エンジンを提供することができる。
産業用ディーゼルエンジンの左側面図 図1に示すエンジンの正面図 図1に示すエンジンの右側面図 図1に示すエンジンの平面図 図1に示すエンジンの背面図 ヘッドカバー前部周辺の平面図 ヘッドカバー及びカバー吸気通路を示す一部切欠きの左側面図 ヘッドカバーの平面図 ヘッドカバーの底面図 図8のX-X線断面図のヘッドカバーとガス出口カバーとを示す正面図 ガス出口カバーを示し、(A)は平面図、(B)は底面図 ブローバイガス出口部と動弁装置とを示し、(A)は横断面図、(B)は要部の縦断面図 (A)排出リード弁の側面図、(B)戻りリード弁の側面図 (A)ガスケットの平面図、(B)ガスケットとその上下部分の断面図 オイル落し部及びその周辺の構造を示す一部切欠きの側面図 (A)オイル落し部を示す一部切欠きの背面図、(B)オイル落し部のカタンブを示す要部の拡大断面図
以下に、本発明によるブローバイガス還流装置付エンジンの実施の形態を、産業用ディーゼルエンジンに適用した場合について図面を参照しながら説明する。初めに、エンジン及び基本となるブローバイガス還流装置について説明し、その後に、本発明の要旨であるオイル落し部50について説明するものとする。
図1~図5に示されるように、産業用ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンと略称する)Eは、シリンダブロック1の上部にシリンダヘッド2が組付けられ、シリンダヘッド2の上部にヘッドカバー3が組付けられ、シリンダブロック1の下部にオイルパン4が組付けられている。シリンダブロック1の前端部に伝動ケース5が組付けられ、伝動ケース5の前部にエンジン冷却ファン6が配置され、シリンダブロック1の後部にフライホイール7が配置されている。シリンダブロック1の上半部はシリンダ1Aに、そして、下半部はクランクケース1Bにそれぞれ構成されている。
エンジンEの前部に、クランク軸(図示省略)の軸端に取り付けられる駆動プーリ8、エンジン冷却ファン6の駆動用ファンプーリ6A、及びダイナモ(オルタネータ)9の受動プーリ9Aに跨る伝動ベルト10、ウォータフランジ21などが配備されている。エンジンEの左側には、排気マニホルド11、過給機12、スタータ13、オイルフィルタ14などが装備されている。エンジンEの右側には吸気マニホルド15、燃料噴射ポンプハウジング16、停止ソレノイド17などが装備され、上方には3つのインジェクタ18、コンプレッサ上流側吸入通路19、コンプレッサ下流側吸入通路20などが配置されている。
コンプレッサ下流側吸入通路20は、コンプレッサハウジング12Aに連結されてヘッドカバー3の直上に横切って配置されている始端側管20Aと、始端側管20Aと吸気マニホルド15とを繋ぐ終端側管20Bとを備えて構成されている。図4に示されるように、平面視において始端側管20Aは、カバー吸気通路19Aの後側の位置で沿う状態に配置されている。曲り管19B、始端側管20A、終端側管20Bは、ゴム等の可撓性を有する材料製のパイプ、或いは金属製パイプから成るものでも良い。
図4,6,7、及び図10に示されるように、このエンジンEには、クランクケース1B内のブローバイガスを、ヘッドカバー3の内部を通してから吸気通路kに導くように構成されたブローバイガス還流装置Aが装備されている。ヘッドカバー3は、動弁装置Bを跨いでシリンダヘッド2に組み付けられる無底箱状(上蓋状)の部品であり、左右に延びる複数のリブ3aがカバー内側に形成されている。ヘッドカバー3の後部には、エンジンオイルの供給用孔22が設けられている。
吸気通路kは、ヘッドカバー3のブローバイガス出口部3Aに設けられたカバー吸気通路19Aを有し、ブローバイガス出口部3Aの内部空間である出口空間部(カバー内ガス通路の一例)26とカバー吸気通路19Aとが連通されている。カバー吸気通路19Aは、エアクリーナ23(図4や図6を参照)と過給機12とを接続するコンプレッサ上流側吸入通路19の一部として構成されている。つまり、コンプレッサ上流側吸入通路19は、カバー吸気通路19Aと、カバー吸気通路19Aと過給機12のコンプレッサハウジング12Aとを繋ぐ曲り管19Bと、を有して構成されている。なお、吸気通路kとは、エアクリーナ23や吸気マニホルド15など、空気aを燃焼室(図示省略)まで送るための全通路とする概念である。
ここで、ブローバイガス還流装置Aにおける主要な機能(吸気通路kへの還流部分)を簡単に説明する。図6,図7に示されるように、シリンダブロック1からヘッドカバー3の内部空間に流れてくるブローバイガスgは、排出リード弁31を通ってブローバイガス出口部3Aのブローバイガス通路である出口空間部26に入る。CCV(クランクケースベンチレーション)室とも呼ばれる出口空間部26に入ったブローバイガスgは、ガスケット35の連通孔38及び連絡通路40(後述)を通ってカバー吸気通路19Aに、即ち、吸気通路kに還元される。なお、ヘッドカバー3の内部における出口空間部26以外の空間部は、ブローバイガスgの移動が可能な残り空間部分Wである(図7参照)。
次に、ヘッドカバー3及びカバー吸気通路19Aについて詳しく説明する。
図6~図10に示されるように、平面視で角丸四角形(長円形)を呈するヘッドカバー3は、その頂壁3Cの前端部に、上向き開放状のブローバイガス出口部3Aが形成されている。ブローバイガス出口部3Aは、上下向きの隔側壁24と底壁25とで囲まれた出口空間部26、及び上面である接合面27を備えた無蓋箱状の部分としてヘッドカバー3に形成されている。
ブローバイガス通路である出口空間部26は、平面視で右側に短い辺を持つ台形を呈する箇所であり、底壁25は、深さの浅い主底面25Aと、深さが前後方向で異なる状態で主底面25Aの前後それぞれに形成された流し底面25B,25Bとを有している。平面視で横向きT字形状を呈する主底面25Aの前後中央部位には、ブローバイガスgをヘッドカバー3内から送り出すための排出リード弁31が横向き(左向き)姿勢で装備されている。
排出リード弁31は、図7~図10、図12、図13に示されるように、主底面25A上に配置される薄肉の排出弁体31Aと、厚肉の排出弁ガイド31Bとを、それぞれの根元側にて底壁25にボルト止めすることで構成されている。排出弁体31Aの丸い先端部31aは、主底面25Aに開口して底壁25に形成された排出弁孔31Cの上側に配置され、通常は排出弁孔31Cの蓋となっている(閉弁状態)。底壁25における排出弁孔31Cの部位は、上下方向視で排出弁孔31Cと同心状の丸形状を呈して下方に突出する突出孔壁25aに形成されている。
流し底面25Bは、排出リード弁31の前後から前又は後へ行くに従って低くなる傾斜面32と、傾斜面32の低い側に続く最低面33とを備えている(図8を参照)。最低面33は、傾斜面32に対して左側に寄って位置する状態に構成されている。底壁25における各最低面33,33には、上下に貫通する戻し弁孔33aが形成され、これら戻し弁孔33aに対する戻しリード弁34が設けられている。
戻しリード弁34は、図7~図10、図12、図13に示されるように、底壁25における最低面33の反対側面、即ち最低裏面33Aに接する戻し弁体34Aと、厚肉の戻し弁ガイド34Bとを、それぞれの根元側にて底壁25にボルト止めすることで構成されている。戻しリード弁34は、排出リード弁31とは上下逆さまの姿勢で設けられており、通常は、戻し弁体34Aの先端部34aによって戻し弁孔33aが軽く閉じられるか、又は戻し弁体34Aが僅かに垂れ変位することで極僅か開いた状態になっている。
各戻しリード弁34,34は、先端部34aが左側になる横向き姿勢で配置されており、出口空間部26においてブローバイガスgから捕捉されたオイルミストを、ヘッドカバー3の内部空間に戻す箇所である。各戻し弁孔33aの径は排出弁孔31Cの径よりも小さい。排出弁体31Aと戻し弁体34A、及び排出弁ガイド31Bと戻し弁ガイド34Bはそれぞれ同一の部品であれば好都合である。
図6~図8及び図11に示されるように、ブローバイガス出口部3Aの上にはガス出口カバー3Bがボルト止めされており、ガス出口カバー3Bは、蓋カバー部36とカバー吸気通路19Aとを備えて構成されている。蓋カバー部36は、平面視でブローバイガス出口部3Aと同様の外郭形状を有し、ガスケット35を挟んでの3箇所のボルト止めによりヘッドカバー3に固定される箇所である。
図11(A),(B)に示されるように、カバー吸気通路19Aは、カバー吸気通路19Aの通路始端部19aに対してカバー吸気通路19Aの通路終端部19bがヘッドカバー3の長手方向で外側に寄る状態に屈曲した蛇行通路に形成されている。詳しくは、カバー吸気通路19Aは、ヘッドカバー長手方向(前後方向)に直交(交差の一例)する方向に延びて互いに平行な通路始端部19a及び通路終端部19bと、通路始端部19aの終端と通路終端部19bの始端とを繋ぐ前後左右で斜め向きの通路中間部19cとを有し、平面視でクランク状(略Z形状)を呈する蛇行通路に形成されている。
通路中間部19cは、断面が下向きU字形状の溝状通路部に形成され、その下端の開放口37は、平面視の形状が通路中間部19cと同様な形状で下側に開口する状態に形成されている。また、蓋カバー部36には、開放口37の後に位置して下方開口するガス通路用凹み36aが形成され、ボルト孔3bが3箇所に形成されている。
図14(A)に示されるように、ガスケット35は、1箇所の連通孔38と、3箇所のボルト挿通孔39とを備えた薄板状(シート状)のものである。図14(B)に示されるように、ガスケット35は、ブローバイガス出口部3Aの上面である接合面27と蓋カバー部36の(ガス出口カバー3Bの)接合下面36bとの間で挟持される状態で設けられている。ブローバイガス出口部3Aの接合面27の外郭形状と、ガスケット35の外郭形状と、蓋カバー部36の外郭形状とは互いに同形であるが、この限りではない。
図6に示されるように、ブローバイガス出口部3Aの出口空間部26は、蓋カバー部36の開放口37のほぼ全面を覆う上面開口を有しており、ガスケット35の連通孔38は、出口空間部26と開放口37とを連通させる唯一の箇所である。つまり、連通孔38は、通路中間部19c(開放口37)と出口空間部26との連通面積及び通路中間部19cに対する連通位置を定める孔である。
動弁装置Bについて簡単に説明する。図8、図10、図12に示されるように、動弁装置Bは、シリンダヘッド2に立設されている軸支部2aの複数個所に支持されて前後方向に延びるロッカーアーム軸28と、ロッカーアーム軸28に揺動可能に軸支される給排気用で複数(計6個)のロッカーアーム29,30とを有して構成されている。
ロッカーアーム29,30は、給排バルブ(図示省略)を作動させる駆動側端部29a,30a、及びプッシュロッド(図示省略)により駆動される受動側端部29b,30bを備えている。シリンダヘッド2には、プッシュロッドを通すために形成されたプッシュロッド孔(図示省略)が形成されており、図8に示されるように、そのプッシュロッド孔を通ってブローバイガスgがヘッドカバー3内に送られてくる。
ブローバイガス還流装置Aにおいては、ヘッドカバー3の内部と出口空間部26とは、排出リード弁31と2箇所の戻しリード弁34,34を備えた底壁25により仕切られており、出口空間部26はガスケット35の連通孔38によりカバー吸気通路19Aと連通されている。従って、ヘッドカバー3の内圧がカバー吸気通路19Aの圧より高い状態では、排出リード弁31が開弁し、ヘッドカバー3内のブローバイガスgは排出リード弁31、出口空間部26、連通孔38を通って通路中間部19cに入り、吸気通路kに還流される。
そして、ヘッドカバー3の内圧とカバー吸気通路19Aの圧とが同じ状態、或いはヘッドカバー3の内圧がカバー吸気通路19Aの圧より低い状態では、一対の戻しリード弁34,34が開弁し、出口空間部26においてブローバイガスg中から捕捉されたオイルが戻し弁孔33a、33aからヘッドカバー3内に落下される。戻し弁孔33aからの滴下オイルは、エンジン内部に戻されるだけでなく、ロッカーアーム軸28とロッカーアーム29との摺動部(図示省略)など、動弁装置Bに供給される良好な潤滑機能も得られる。
本実施形態によるブローバイガス還流装置付エンジンでは、コンプレッサ上流側吸入通路19の一部であるカバー吸気通路19Aがヘッドカバー3に取り付けられ、ブローバイガス出口部3Aのブローバイガス通路26と、カバー吸気通路19Aの通路中間部19cとがガスケット35の連通孔38を介して連通されている。ヘッドカバー3は、シリンダヘッド2から熱伝導されて温かくなる箇所であり、その温かくなるヘッドカバー3の一部であるカバー吸気通路19Aにブローバイガスgが戻される。
従って、極寒時などによって吸入空気aが冷たくても、カバー吸気通路19Aを流れる空気aは温度上昇される〔図11(A)を参照〕ので、通路中間部19cに還流されるブローバイガスg中の水分が凍結することが解消又は抑制されるようになる。その結果、ブローバイガス通路26における吸気系に接続される終端部において凍結され難い状態となり、低温時の凍結による不都合が極力生じないように改善されたブローバイガス還流装置付エンジンを提供することができる。
カバー吸気通路19Aは、通路始端部19aに対して通路終端部19bがヘッドカバー長手方向で外側(前側)に寄る状態に形成されている。詳しくは、カバー吸気通路19Aは、ヘッドカバー3の長手方向(前後方向)に交差する方向(左右方向)に延びて互いに平行な通路始端部19a及び通路終端部19bと、通路始端部19aの終端と通路終端部19bの始端とを繋ぐ通路中間部19cとを有して形成されている。
そして、図6や図11に示されるように、カバー吸気通路19Aは、平面視で略Z状(クランク状又は折れ曲がり状)となる蛇行した通路に設定されている。このカバー吸気通路19Aの蛇行により、図11(A)に示されるように、直線に比べて空気aの流れが変化して活発化されている箇所にブローバイガスgが還流されるので、前述の凍結防止作用が強化される利点がある。
通路始端部19aより通路終端部19bが前側(ヘッドカバー長手方向で外側)に寄っているので、型成形部品のガス出口カバー3Bによるカバー吸気通路19Aを蛇行通路にすれば、構造簡単にコンプレッサ上流側吸入通路19の形状を非直線通路にできる利点がある。また、コンプレッサ上流側吸入通路19におけるブローバイガスgの合流箇所(通路中間部19c)より下流側(通路終端部19b)が前に寄っているので、エンジン冷却ファン6の冷却風による冷却作用が通路始端部19aより強化され、吸気マニホルド15への供給空気の温度を低められる利点もある。
ガス出口カバー3B及びその付近について追加説明する。図10、図11に示されるように、ブローバイガス通路26とカバー吸気通路19Aとは、連通孔38と、ラビリンス状の連絡通路40とにより連通されている。連絡通路40は、ガス出口カバー3Bのガス通路用凹み36aと、これの開口を塞ぐ蓋となるガスケット35とによって構成されている。ガス出口カバー3Bのガス通路用凹み36aは、通路中間部19cのガス流れ方向で下流側の端部に連通している。
図11(A),(B)に示されるように、ガス通路用凹み36aは、その右側端部がガスケット35の連通孔38の上に位置するとともに、通路中間部19cに繋がる幅狭で前後向きの終端凹み42を有している。そして、ガス出口カバー3Bには、終端凹み42に沿ってガス通路用凹み36aに向けて後方突出する左突起壁43と、左突起壁43の右側においてガス通路用凹み36aに向けて前方突出する右突起壁44とが形成されている。従って、連通孔38から流れてくるブローバイガスgが、右突起壁44及び左突起壁43によってラビリンス状(クランク状)に屈曲した経路である連絡通路40を通ってから通路中間部19cに進むように構成されている。
図11(A),(B)に示されるように、連絡通路40における吸気通路側の端部(終端凹み42)を除く部分と、カバー吸気通路19A、詳しくは通路中間部19cとの間に断熱部Dが設けられている。断熱部Dは、ガス出口カバー3Bのガスケット側面に開口する状態でガス出口カバー3Bに形成された湾曲状長穴(凹み又は穴の一例)41により構成され、湾曲状長穴41の開口41aは、ガスケット35により覆われている。
湾曲状長穴41は、通路中間部19cとガス通路用凹み36aとの間に、厚さの薄い前後それぞれのリブ状壁45,45で仕切られる状態で形成されている。ガスケット35の存在により、湾曲状長穴41は閉塞された空間部となるので、その空間部が空気層となって断熱部Dが形成されている。なお、湾曲状長穴41の深さは、ガス通路用凹み36aの深さよりも深く形成されているが、この限りではない。
ブローバイガス通路である出口空間部26と通路中間部19cとを連通させる連絡通路40が、ストレートな経路ではなくジグザグに屈曲したラビリンス状の通路とされているので、エアクリーナ23などの吸気通路k側(通路中間部19c)からの液滴(水分など)がヘッドカバー3の内部に侵入し難い効果がある。そして、ブローバイガス中のオイル成分が連絡通路40に引き込まれ難くなり、引き込まれたとしてもラビリンス状通路によって振り落とされ、オイル除去作用が発揮される効果も奏することができる。
また、連絡通路40と通路中間部19cと互いに沿う形状とされているが、これら両者40,19cの間には断熱部Dが形成されているから、寒冷時において、ブローバイガス出口部3Aが、特に連絡通路40の付近の温度が吸気によって低下し難くなり、凍結のおそれがさらに減少する効果が得られる。
次に、オイル落し部61について説明する。本発明によるブローバイガス還流装置付エンジンは、図7~図10,図12,図13に示される一対の戻しリード弁34,34が、後述する一対のオイル落し部61,61に置き換えられた構造のヘッドカバー3を有するものである。そこで、これ以降は、その置き換えられた構造体であるオイル落し部61に関して記載する。
図15、図16(A)に示されるように、カバー内ガス通路である出口空間部26の底壁25に、底壁25から下方に突出される有底筒状のオイル落し部61が、排出リード弁31の前後それぞれに形成されている。後側のオイル落し部61で構造を説明すると、オイル落し部61の下端部61Aに、オイル落し部61に形成されている縦向きオイル通路33aの下端に連通し、かつ、下端部61Aを水平方向に貫通する横向き孔62が形成され、縦向きオイル通路33aにあるオイルが、横向き孔62を通って排出されることが可能に構成されている。
図15、図16(A),(B)に示されるように、縦向きオイル通路33a及び前後向きの横向き孔62により、オイル落し部61の下端部61Aには、左右方向の側面視で上下逆向きT字状でラビリンス構造の末端オイル路uが形成されている。横向き孔62の径rは、縦向きオイル通路33aの径Rより十分小さく(例:0.2R≦r≦0.5R)、従って、横向き孔62の断面積s(πr2/4)は、縦向きオイル通路33aの下端の断面積S(πR2/4)よりも小に設定されている。故に、見かけ上、横向き孔62は、縦向きオイル通路33aの前に位置する前側孔部62aと、後側孔部62bとに別れている。
横向き孔62は、オイル落し部61の下端部61Aに対するブローバイガスgの流れ方向で上流側と下流側とに亘って延びるように設定されていると好都合である。ヘッドカバー3は、前後に長い角丸長方形(矩形)であり、図7に示されるように、ブローバイガスgはヘッドカバー3の長手方向である前後方向に流れ易い。従って、横向き孔62の孔軸線方向の向きを前後向きとすれば、後述する吸気脈動波の作用を効果的に受けられる利点があると考えられる。
ヘッドカバー3の内部を含むエンジン内部には、エンジン回転中は、ピストンのポンピングによる脈動、主に吸気による吸気脈動波(圧力脈動波)が生じている。故に、その吸気脈動波が横向き孔62にも作用することにより、縦向きオイル通路33aにある(溜まっている)オイルが、図16(B)に示されるように、前後いずれかの孔部62a,62bから排出されるようになる。しかしながら、吸気脈動波が無い場合(エンジン停止時など)には、前側孔部62a及び後側孔部62bのいずれからもオイルは排出されないので、横向き孔62からオイルなどが縦向きオイル通路33aに逆流しないものとなっている。
つまり、ヘッドカバー3の内部における出口空間部26以外の部分Wの圧と出口空間部26の圧とが互いに等しい状態(エンジン停止時など)において、次の通りに定義される。即ち、横向き孔62の下端部61Aの外部(残り空間部分W)に臨む開口部の開口面積s1、s2は、横向き孔62からオイルの排出が許容されない表面張力が各孔部62a,62bそれぞれの開口部に作用する程度の面積に設定されている。
オイル落し部61は、孔底壁61a及び孔側壁61bが共に上下方向視で円形をなす円筒状のものが好ましいが、上下方向視で矩形や楕円、多角形、或いはテーパ孔など種々のものが可能である。縦向きオイル通路33aや横向き孔62も円形断面として描いてあるが、それらには限らない。また、縦向きオイル通路33aの下端と横向き孔62の最も低い高さ位置とが同一面となるように描いてあるが、これにも限らない。
上述のように、オイル落し部61には、上下逆T字形状となるように、縦向きオイル通路33aの下端に連通する横向き孔62が形成されて、いわばラビリンス構造の末端オイル路uが形成されているので、オイルの上方への逆流を防止しながらも、出口空間部26で捕捉されたオイルを吸気脈動波によって効率良く下方に排出させることが可能になっている。
エンジン運転中は常に吸気脈動派が生じているから、その吸気脈動派によってブローバイガスから分離されたオイルがオイル落し部61の横向き孔62から流下排出されるようになる。従って、急激に吸気負圧が過大になっても、出口空間部26にオイルが溜まってはいないので、カバー吸気通路19Aを経て吸気通路kにオイルが吸い上げられることがまず生じない。そして、オイル落し部61から出口空間部26にオイルを吸い上げてしまうことも無いから、オイル持ち去り量を軽減することが可能になる。
オイル持ち去り量(単位時間当たりの持ち去り量)が低減されることにより、次の(1)~(3)の効果が得られる。
(1)オイル消費量を減じることが可能になる
(2) 吸気ポート内部のオイル付着やエンジン内部へのオイル侵入による性能低下を抑制させることが可能になる
(3)エアクリーナが完全に目詰まりしても、オイル持ち去り量の抑制や解消が可能になる
〔別実施形態〕
前側孔部62aと後側孔部62bの断面積や開口面積が互いに異なる仕様の横向き孔62でも良い。また、孔軸線方向に行くに従って断面積が変化するテーパ孔による横向き孔62でも良い。オイル落し部61の下方突出量は、図15の場合より大でもよい。
本実施形態における前側孔部62aの開口面積s1、及び後側孔部62bの開口面積s2は、共に横向き孔62の断面積s(πr2/4)と同じ(s=s1=s2)であるが〔図16(A)参照〕、各孔部61a,62bの形状や径の異なりなどによっては前記断面積sとは異なる場合(s≠s1,s≠s2)もあり得る。
1B クランクケース
3 ヘッドカバー
19A カバー吸気通路
33a 縦向きオイル通路
35 底壁
26 カバー内ガス通路
61 オイル落し部
61A 下端部
62 横向き孔
B 動弁装置
W 残り空間部分
k 吸気通路
u 末端オイル路

Claims (7)

  1. クランクケースからのブローバイガスを、ヘッドカバーの内部に形成されたカバー内ガス通路を通して吸気通路に導くように構成され、
    前記カバー内ガス通路の底壁に、前記底壁から下方に突出される有底筒状のオイル落し部が動弁装置の上に位置する状態で形成され、
    前記オイル落し部の下端部に、前記オイル落し部に形成されている縦向きオイル通路の下端に連通し、かつ、前記下端部を水平方向に貫通する横向き孔が形成され、
    前記縦向きオイル通路にあるオイルが、前記横向き孔を通って排出されて前記動弁装置に供給されることが可能に構成されているブローバイガス還流装置付エンジン。

  2. 前記縦向きオイル通路及び前記横向き孔により、前記オイル落し部の下端部には上下逆向きT字状の末端オイル路が形成されている請求項1に記載のブローバイガス還流装置付エンジン。
  3. 前記横向き孔の断面積は、前記縦向きオイル通路の下端部の断面積よりも小に設定されている請求項1又は2に記載のブローバイガス還流装置付エンジン。
  4. 前記横向き孔の前記下端部の外部に貫通する箇所の開口面積は、前記ヘッドカバーの内部における前記カバー内ガス通路以外の部分の圧と前記カバー内ガス通路の圧とが互いに等しい状態においては前記横向き孔からオイルの排出が許容されない表面張力が作用する程度の面積に設定されている請求項1~3の何れか一項に記載のブローバイガス還流装置付エンジン。
  5. 前記横向き孔は、前記オイル落し部の下端部に対するブローバイガス流れ方向で上流側と下流側とに亘って延びるように設定されている請求項1~4の何れか一項に記載のブローバイガス還流装置付エンジン。
  6. 前記ヘッドカバーは気筒配列方向に長い長尺形状をなし、前記横向き孔は前記ヘッドカバーの長手方向に沿って延びる状態で形成されている請求項1~5の何れか一項に記載のブローバイガス還流装置付エンジン。
  7. 前記吸気通路は、前記ヘッドカバーにおける前記オイル落し部の上方に設けられたカバー吸気通路を有するとともに、前記カバー内ガス通路と前記カバー吸気通路とが連通されている請求項1~6の何れか一項に記載のブローバイガス還流装置付エンジン。
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