以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。まず、本発明に係るエンジンの概略について、エンジン吸気マニホールド側からのエンジンの正面図である図1を用いて説明する。エンジンENGは、複数の気筒(不図示)が車幅方向に配列するように車両エンジンルーム内に配設される、所謂、横置きエンジンとされると共に、複数の気筒が配列して設けられたシリンダブロックCBと、シリンダブロックCBの下部に設けられたオイルパンOPと、シリンダブロックCB上面部にガスケット(不図示)を介して組付けられたシリンダヘッドHと、シリンダヘッドHの上面周縁部H1に組付けられたシリンダヘッドカバー1を備えた構造とされている。
また、エンジンENGの車両前方側には吸気マニホールドIMが配設されている。この吸気マニホールドIMは、シリンダヘッドHの車両前方側の面部に固定される複数の吸気マニホールド分岐管IM1、IM2、IM3、及びIM4と、これらマニホールド分岐管IM1他を束ねるように下方及び車両前方に膨出した形状を成すサージタンク部STと、サージタンク部STからエンジン上後方に向かって延びる上流管UPとを備え、さらに上流管UPのエンジン後方側端部には、その内部にスロットルバルブSVを有するスロットルボディSBが組付けられている。
さらに、スロットルボディSBの上流側には、吸気ダクトであるフレキシブルなチューブで形成されているスロットル上流管FPが連結され、このスロットル上流管FPよりも吸気上流側にはエアクリーナボックス(不図示)が連結されている。
さらにまた、シリンダヘッドカバー1における車両後方側の面からはブローバイガスがその内部を流れるパイプ部材BPが設けられて車両前方側に向かって延びた後、スロットル上流管FPに連結されて、連通口BPHが形成されている。
次に、シリンダヘッドカバーの構造について図2〜図8に基づいて説明する。
ここで、図2は、本発明に係るシリンダヘッドカバーの平面図、並びに正面図、図3は、同シリンダヘッドカバーの下面図、図4は、バッフルプレートの斜視図、図5は、シリンダヘッドカバーをシリンダヘッドに組付けた状態での図2(A)におけるA−A断面図、図6は、図5のバッフルプレートにおけるB部(ドレーン部)詳細図、図7は、エンジンを図2若しくは図3のシリンダヘッドカバーE−E部で切断した断面図(但し、シリンダブロックCBの下部省略)、図8は、エンジンを図2のシリンダヘッドカバーF−F部で切断した断面図である。
図2において、図2(A)はシリンダヘッドカバー1の平面図、図2(B)はシリンダヘッドカバー1の正面図である。図2(A)に示すように、シリンダヘッドカバー1は、車両前後方向幅よりもエンジン前後方向幅の方が長く、且つエンジン前方部側の車両前後方向幅は他の部分より少し長い形状とされている。そしてこの外周形状はシリンダヘッドの上部周縁部H1と略同形状とされている。
即ち、シリンダヘッドカバー1は、シリンダヘッドの上部周縁部と略同形状の周縁部11を下部周囲に備え、エンジン排気側の周縁部11からは縦壁部7aが立設され、縦壁部7aの上端は略水平な排気側天井壁部7に繋がり、エンジン前方側の周縁部11からは縦壁部3aが立設され、その上端はエンジン前方側天井壁部3に繋がり、エンジン吸気側の周縁部11からは縦壁部5aが立設され、その上端は略水平な吸気側天井壁部5に繋がっている。なお、本実施の形態におけるエンジンENGは、シリンダヘッドの車両後方側端面に排気マニホールド(不図示)を備える構造であり、したがって、排気側天井壁部7は排気バルブ駆動用カムシャフトSE(図7参照)の上方に配設され、吸気側天井壁部5は吸気バルブ駆動用カムシャフトSI(図7参照)の上方に配設されている。
また、エンジン後方側の周縁部11からは排気側天井壁部7に繋がる縦壁部7bと、吸気側天井壁部5に繋がる縦壁部5bとが立設されている。
排気側天井壁部7と吸気側天井壁部5との間はシリンダヘッド側に窪んでおり、排気側天井壁部7のエンジン吸気側端部からは縦壁部7cが垂下し、吸気側天井壁部5のエンジン排気側端部からは縦壁部5cが垂下し、これら縦壁部7cと縦壁部5cの下端部は中間面部9で連結されている。なお、中間面部9のエンジン後方側端部からも縦壁部9aが周縁部11と連結されており、縦壁部7cと、縦壁部5cと、縦壁部9aとでシリンダヘッドカバー1のエンジン後方側の縦壁部が一体的に形成されている。
排気側天井壁部7の縦壁部7aにおけるエンジン後方側にはブローバイガス出口管17が設けられている。このブローバイガス出口管17には、図1で説明したパイプ部材BPの一端が連結される。
一方、排気側天井壁部7のエンジン前方側には、エンジンオイルを注入するためのエンジンオイル供給口15a(図3参照)を覆うキャップ15が設けられている。
また、周縁部11には複数の締結部13(一部、符号省略)が設けられている。これら締結部13はボルト挿通孔(不図示)が形成されており、シリンダヘッドカバー1はシリンダヘッドHに対して複数箇所のボルトで組付けられる。
なお、排気側天井壁部7の高さは吸気側天井壁部5の高さよりも高く形成され(図7参照)、エンジン前方側天井壁部3は、排気側天井壁部7と吸気側天井壁部5のエンジン前方側部を結ぶように緩やかに傾斜した形状とされている(図2(B)参照)。
以上、シリンダヘッドカバー1の外観について説明したが、このシリンダヘッドカバー1は合成樹脂材とされ、例えば射出成形で一体的に形成されているのが好ましいが、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の軽合金で形成されているものでも良く、特に材料を限定するものではない。
次に、図3に基づいて、バッフルプレートを組付けたシリンダヘッドカバー1の裏面構造について説明する。図3は、図2(A)のシリンダヘッドカバー1をエンジン前後方向に裏返した構造を示している。これによれば、シリンダヘッドカバー1における前方側天井壁部3と、吸気側天井壁部5と、排気側天井壁部7と、中間面部9の裏面には、車両前後方向、並びにエンジン前後方向に延びて交差するリブR1が一体的に形成され、シリンダヘッドカバー1の強度、剛性が確保されている。
排気側天井壁部7の下部(シリンダヘッド側)には、バッフルプレート21が配設固定されている。なお、このバッフルプレート21の下面にもリブR2が形成され、強度、剛性が確保されている。
ここで、バッフルプレート21について図4〜図6を用いて詳細な説明を行う。バッフルプレート21の斜視図である図4によれば、バッフルプレート21は、2箇所の切欠き部31a、31bを除いて縁部31に近接して上方に延びる立設部33が設けられ、立設部33の内方には2箇所の第一平面部35と、これら2箇所の第一平面部35に挟まれ、段落ちした第二平面部37とが形成されている平板状の成形体である。なお、この第二平面部37は、縁部31と略面一状態とされている。
第一平面部35のエンジン前方側で、且つ切欠き部31aの内方には、上方に向かって突出するブローバイガス入口部23が形成されている。
ブローバイガス入口部23は、下部開口23aと側部開口23bとを有し、他の部分は壁部材(符号なし)で仕切られた構造となっている。
なお、側部開口23bの面と、切欠き部31aにおける仮想の立設部33との間には隙間L1が設けられている。
したがって、バッフルプレート21の下方に形成される動弁室75並びにクランク室83(図5、図7または図8参照)で発生したオイルミストを含むブローバイガスは、ブローバイガス入口部23の下部開口23aから側部開口23b、及び隙間L1を経てバッフルプレート21とシリンダヘッドカバー1とにより形成された気液分離室70(図5または図7参照)に流れ込むようになっている。
一方、バッフルプレート21のエンジン後方側には、気液分離室70(図5または図7参照)内でブローバイガスのオイルミストが冷却凝縮または壁面付着されて液体オイルとなり、その液体オイルが動弁室75(図5または図7参照)に滴下して戻るためのドレーン部47が設けられている。
ドレーン部47は、バッフルプレート21のエンジン後方側における第一平面部35と第二平面部37とに渡ってそれらの上面に設けられると共に、その内部に立設部33の切欠き部31bに臨む横向き通路41a(図6参照)を有する横向き通路部41と、バッフルプレート21のエンジン後方側における第一平面部35と第二平面部37とに渡ってバッフルプレート21から下方に突出すると共に、その内部に下向き通路45a(図6参照)を有する下向き通路部45とから成るものである。
また、横向き通路41aと下向き通路45aとは連通していると共に、横向き通路部41と下向き通路部45とからなるドレーン部47は、バッフルプレート21の一部として一体的に形成されてなるものである。
ここで、図5におけるB部、即ちドレーン部47周辺の構造の詳細図である図6を用いてドレーン部47の周辺の構造を説明する。図6において図6(A)は、図5におけるB部の拡大図、図6(B)は、図6(A)におけるC−C断面図、図6(C)は図6(A)におけるD−D断面図である。
ドレーン部47は、横向き通路41aを有する横向き通路部41と、下向き通路45aを有する下向き通路部45とから成ることを先に説明したが、詳細には、横向き通路部41は、バッフルプレート21の第二平面部37から立ち上がる高さの低い縦面部41cと、縦面部41cの上端からエンジン後方に向かって延びる上面部41bと、上面部41bの車両前方側端部から下方に向かって延びて第二平面部37に連結される高さの低い側壁41dと、上面部41bの車両後方側端部から下方に向かって延びて第一平面部35に連結される高さの低い側壁41eとを有し、上面部41bと、側壁41dと、側壁41eと、上面部41bに対面する第二平面部37とによって横向き通路41aが形成され、結果、この横向き通路41aは図6(B)に示すように扁平な通路形状とされている。
一方、下向き通路部45は、横向き通路41aと略L字状に連通すると共に、その扁平な形状と略同形状の下向き通路45aを有する。つまり、下向き通路部45は第二平面部37から下方に突出しエンジン前後方向に扁平な形状とされている(図6(C)参照)。
なお、横向き通路41aは、その開口断面積がエンジン後方側に行くに従ってやや拡がった形状とされ、一方、下向き通路45aは、その開口断面積が下端部に行くに従ってやや拡がった形状とされている。
これは、横向き通路41aのエンジン後方側の開口からオイルが流入しやすくすると共に、動弁室75にオイルが滴下しやすくするためであるが、必ずしもこれに限定される必要はなく、拡がりを持たない横向き通路41aと下向き通路45aであっても良い。なお、先に特許文献1で示した屈曲部の屈曲開始部から端部に行くに従って広くなっている構造と比べると、本発明では、横向き通路41aと下向き通路45aとが連通し、略L字状の通路となっている点でオイルミストを含むブローバイガスの動弁室から気液分離室内への吹き上がりは生じ難いものとなっている。
即ち、このドレーン部47を含むバッフルプレート21は、合成樹脂材とされ、例えば射出成形により一体成形されるため、部品点数が少なく、低コストで製造が可能である。
以上、バッフルプレート21の構造を説明したが、図3によれば、このバッフルプレート21は、エンジンオイル供給口15aよりもエンジン後方側の位置から、排気側天井壁部7に繋がる縦壁部7bまで延びて固定され、車両前後方向では、排気側天井壁部7に繋がる縦壁部7aと縦壁部7cを橋渡すように固定されている。
詳細には、図7に示すように、縦壁部7aと縦壁部7cとに固定されるバッフルプレート21は、縦壁部7aと縦壁部7cの上下方向中間部において固定されるもので、詳細には、縦壁部7aと縦壁部7cとにはそれぞれ段部7d、7dが形成され、その段部7dに対してバッフルプレート21の縁部31と立設部33が当接され、例えば、振動溶着法で接合固定されている。なお、耐油性の接着剤を用いて接合されても良い。
また、図5に示すように、バッフルプレート21のエンジン前方側端部は、排気側天井壁部7の下面から垂下する縦壁部7sの下端部と振動溶着法等で接合固定され、一方、バッフルプレート21のエンジン後方側端部は、図6に詳細を示しているが、その縁部31と立設部33がシリンダヘッドカバー1の縦壁部7bの上下方向中間部において形成された段部7dに振動溶着法等で接合固定されている。
したがって、バッフルプレート21よりも上部は、シリンダヘッドカバー1の排気側天井壁部7、縦壁部7a、縦壁部7b、縦壁部7c、及び縦壁部7sにより空間部が形成されたものとなっており、この空間部は、ブローバイガスのオイルミストが冷却凝縮されて液体オイルになり、結果、オイルミストを含むブローバイガスからオイル成分が分離される気液分離室70として機能する。
ところで、図6(A)によれば、横向き通路41aのエンジン後方側の開口は、立設部33の切欠き部31bの位置に対応しているため、縦壁部7bに隙間L2の間隔を持って対面している。切欠き部31bの部分では、縁部31が段部7dと接合され、段部7dから縦壁部7bが上方に向かって延びている。
この縦壁部7bは、オイルミストを含むブローバイガスが動弁室75からドレーン部47の下向き通路45と横向き通路41aとを通って気液分離室70に侵入してきた際に衝突する邪魔板部材として機能する。
即ち、ブローバイガス中のオイルミストは、ガスの流れの変更があっても慣性により方向変更しにくく、縦壁部7bに付着する。また、縦壁部7bはエンジンルーム(不図示)に面しているため比較的低温であり、オイルミストを含むブローバイガスが縦壁部7bに衝突するとブローバイガス自体が冷却凝縮され、ミスト化を促進され、縦壁部7bへのオイル成分の付着量を増大させることになる。これらのことにより、オイル液滴として下方に向かって流れるようになる。
そしてオイルは、縦壁部7bを伝って第二平面部37に流れ落ちて行き、再度、ドレーン部47の横向き通路41a、下向き通路45aを通って動弁室75に流れ落ちる。
図9に邪魔板部材の参考例を示す。なお、図9は、図6(A)を基に邪魔板部材37jを設けた図であり、詳細な説明は省略し、変更部についてのみ説明する。
参考例の場合、縦面部41cの上端からエンジン後方に向かって延びる上面部41bのエンジン前後方向長さは、図6(A)で説明した実施の形態よりも若干短くされ、その結果、隙間L2は図6(A)で説明した実施の形態よりも長くなっている。そしてその長くなった隙間の間に、第二平面部37から邪魔板部材37jが上方に向かって延設されている。
この邪魔板部材37jにおける第二平面部37から上端部までの高さは、動弁室75から侵入してきたオイルミスとを含むブローバイガスが衝突するように、少なくとも上面部41bの上面まであれば良く、適宜設定される。
また、邪魔板部材37jにおける車両前後方向幅は、動弁室75から侵入してきたオイルミスとを含むブローバイガスが衝突するように、少なくとも横向き通路部41の車両前後方向幅と同じかそれより多少広い幅があれば良く、適宜設定される。
邪魔板部材37jにおける車両前後方向幅が横向き通路部41の車両前後方向幅よりも十分に長く設定される場合、邪魔板部材37jの下部で、且つ横向き通路41aに対面しない位置に連通口R(仮想線で示している)を設けても良い。これは、邪魔板部材37jを設けた場合においてもやはり、入口部23から入るブローバイガス中のオイル成分が気液分離室70をゆっくり流れる過程で縦壁部7b沿いで冷却凝縮され、該縦壁部7bに付着する。その結果、邪魔板部材37jと縦壁部7bとの間に流れ落ちたオイルを横向き通路41a側の第二平面部37に流れ込みやすくするようにするためである。
以上、シリンダヘッドH上に組付けられたシリンダヘッドカバー1において、排気側天井壁部7と、縦壁部7aと、縦壁部7bと、縦壁部7cと、縦壁部7sと、バッフルプレート21とで形成された気液分離室70で、動弁室75からドレーン部47の下向き通路45と横向き通路41aとを通って侵入してきたブローバイガスからオイルミスト成分が液化、分離して、再度、動弁室75に滴下していくのに好適なドレーン部47と邪魔板部材7bの構造について説明した。
続いて、上記のようなオイル分離性能が効果的に発揮される条件を、エンジン運転状態の観点から図1及び図8に基づいて説明する。なお、以下の説明において、第2オイルセパレータ部とは、これまで説明してきた気液分離室70のことであり、第2オイルセパレータ部70と称す。また、図8においては、カムシャフトSEを始めとする動弁系部品やピストン等の図は省略した。
まず、図2のF−F部におけるエンジンENGの前後方向視断面を示す図8を用いて、構造を説明しておく。なお、これまで説明してきた構造については省略する。シリンダヘッドH上に設けられる動弁室75は、シリンダヘッドオイルドレーン通路77と繋がっており、さらにシリンダヘッドオイルドレーン通路77の下端部は、シリンダブロックCB内においてエンジン上下方向に延びるシリンダブロックオイルドレーン通路81の上端と図示しないガスケットを介して連通している。
シリンダブロックオイルドレーン通路81の下端は、シリンダブロックCBの下部に形成されたクランク室83に望み、その下方部にはエンジンオイルが貯留されるオイルパンOPが組付けられている
一方、吸気マニホールドIMが組付けられているエンジン吸気側のシリンダブロックCBには第1オイルセパレータ部91が設けられている。
第1オイルセパレータ部91は、クランク室83の上方に設けられ、ピストン(不図示)がその内周部を上下往復動するシリンダライナCLを覆うべくシリンダブロックCBと一体的に形成された凹部87と、カバー部材89と、内部に迷路状の通路を形成するようにシリンダブロックCB乃至カバー部材89に形成した複数の邪魔板部(一部を符号91aで示す)とによって構成されている。
後で説明するオイルミストを含むブローバイガスが例えば、邪魔板部91a等に衝突してオイルミストを液滴として付着させるとともに迷路状の通路を移動する過程でミスト化が促進され、液滴となったオイルをオイルパンOPへ落下させるようにしてある。
第1オイルセパレータ部91の上部には、周知の圧力制御弁PCVが連結されている。この圧力制御弁PCVは、特に図での説明は行わないが、スプリングの付勢力により、通常は閉状態とされているが、所謂、吸気負圧が所定値以上になると付勢力に抗して開状態となるものである。
また、図8には示していないが、圧力制御弁PCVの上部にはパイプ部材95(図1参照)が連結され、そのパイプ部材95の他端はサージタンクSTの上流管UP側寄り、即ち、吸入空気の上流側の部分に設けられた接続部93へ繋がっている。
したがって、圧力制御弁PCVが開状態となると、第1オイルセパレータ部91にてオイルミストが除去されたブローバイガスは、サージタンクSTへ導かれた後、複数の吸気マニホールド分岐管IM1他を通って各気筒燃焼室に導入されるようになっている。
ところで、このようなブローバイガスの流れは、エンジン運転状態によって異なるようにされている。まず、エンジンENGが部分負荷運転時、即ち、スロットルバルブSVの開度が比較的小さい場合、吸気負圧が高くなって圧力制御弁PCVが開くと、第1オイルセパレータ部91がオイル分離機能を果たす。そして、この時、図1で説明したように、パイプ部材BPの一端はスロットル上流管FPの連通口BPHに連通していると共に、他端はシリンダヘッドカバー1の第2オイルセパレータ部(気液分離室)70と連通しているので、エアクリーナボックス(不図示)を通して吸入されてきたフレッシュエアは、スロットル上流管FPの連通口BPHからパイプ部材BPを通って第2オイルセパレータ部70へと導かれる。図8において、フレッシュエアは右上ハッチングの矢印でその流れが示されている。
そして、第2オイルセパレータ部70へと導かれたフレッシュエアは、動弁室75、シリンダヘッドオイルドレーン通路77、さらにはシリンダブロックCB内のシリンダブロックオイルドレーン通路81を経てクランク室83へと流れて行くことになる。
この時のオイルミストは、フレッシュエアの流れに乗ってクランク室83まで導かれ、一部はオイルパンOP内のオイルミストと合流する。そしてクランク室83内部に溜まっているブローバイガスと共に、フレッシュエアによるベンチュレーションの基で、シリンダブロックCBに形成されている第1オイルセパレータ部91に流れる。このフレッシュエアと、ブローバイガスと、オイルミストとの流れは白抜き矢印で示している。
そして、先に説明したように圧力制御弁PCVに達するまでに邪魔板部91a等においてオイルミストは付着凝縮し、オイルパンOP内へと落ちていくことになるが、残ったフレッシュエアとブローバイガスとの混合流体(左上ハッチングの矢印)は圧力制御弁PCVの開弁動作によりパイプ部材95(図1参照)を通ってサージタンクSTの上流管UP側寄り、即ち、吸入空気の上流側の部分に設けられた接続部93へ至り、最終的にエンジン燃焼室に導入される。
従って、部分負荷運転時においては、ブローバイガスの流れがパイプ部材BPから第2オイルセパレータ部70、動弁室75等を経てクランク室83へ流れるという点から、バッフルプレート21に設けられているドレーン部47と邪魔板部材7b、或いは参考例で示した邪魔板部材37jの作用効果は十分には発揮されない。但し、これは図1並びに図8で示している様な、パイプ部材BPが第2オイルセパレータ70からスロットルバルブSVの上流のスロットル上流管FPに繋がっている構造であるのがその理由であり、パイプ部材BPが第2オイルセパレータ70からスロットルバルブSVの下流へ繋がっている場合においては、部分負荷時においてスロットルバルブSVの下流が第2オイルセパレータ70に比して負圧になるためブローバイガスは第2オイルセパレータ70からパイプ部材BPを通ってスロットルバルブSVの下流へ流れ込み、その過程においてオイル分離性能は十分に発揮される。
一方、エンジンENGが全負荷運転時、即ち、スロットルバルブSVの開度が全開、或いは比較的大きい場合、ブローバイガスの流れは部分負荷運転時とは逆になる。即ち、全負荷運転時においては、スロットルバルブSVの下流では吸気負圧が減少すると共に、クランク室83の内圧が高くなり、その結果、クランク室83、及び第2オイルセパレータ70と比べてスロットルバルブSVの上流側のスロットル上流管FP内の圧力が低圧状態となることにより、クランク室83から第1オイルセパレータ部70を通りスロットルバルブSVの上流に向けてブローバイガスは流れていく。
そしてこの場合について図8ではブローバイガスの流れを黒矢印で示している。即ち、エンジン燃焼室から漏れたブローバイガスは、クランク室83からシリンダブロックオイルドレーン通路81及びシリンダヘッドオイルドレーン通路77を通って動弁室75に流れ込んで行く。なお、この際、クランク室83のオイルミストもブローバイガスの流れに乗って動弁室75へ向かって流れていくが、そのオイルミストの一部はシリンダブロックオイルドレーン通路81及びシリンダヘッドオイルドレーン通路77を通過中に、それらの壁面に付着若しくはクランク室83へ流れ落ちているオイルに吸収される。
そして、動弁室75に流れてきたブローバイガスとオイルミストは、動弁部品の駆動により発生したオイルミストが加わり、ブローバイガス入口部23(図4、図5参照)とドレーン部47とを通って第2オイルセパレータ部70へと流れる。ここで、ブローバイガス入口部23の開口部の面積と、ドレーン部47の下向き通路45a、並びに横向き通路41aの開口断面積は前者の方が大きいため、オイルミストを含むブローバイガスの多くはブローバイガス入口部23から第2オイルセパレータ部70へ流れ、一部がドレーン部47を通って第2オイルセパレータ部70へ流れる。
このドレーン部47を通って第2オイルセパレータ部70へ流れ込んできたオイルミストを含むブローバイガスは、シリンダヘッドカバー1の邪魔板部材7b(即ち、縦壁部7b)(図6参照)に衝突する。その結果、オイルミストは邪魔板部材7bに付着した後、下方へ流れ落ちてドレーン部47の横向き通路41aと下向き通路45aを通って動弁室75に滴下して行くことになる。
一方、ブローバイガス入口部23から流れ込んできたオイルミストを含むブローバイガスは、通路断面積の大きい第2オイルセパレータ部70をゆっくりと流れること、並びにブローバイガス出口部17に向かう間に第2オイルセパレータ部70を構成するシリンダヘッドカバー1の排気側天井壁部7、縦壁部7a、縦壁部7b、縦壁部7c、及び縦壁部7s沿いで冷却される等して、オイル成分が液化して第一平面部35から第二平面部37に溜まる。そして溜まったオイルはドレーン部47を通って動弁室75に滴下していくことになる。
したがって、ブローバイガス出口部17からパイプ部材BPへ排出されていくのは、オイルミストが殆ど分離除去されたブローバイガス(流れは、左上ハッチングの矢印で示している)であり、このブローバイガスは、パイプ部材BPの他端に連結されているスロットル上流管FPの連通口BPHに流れ、スロットルバルブSVの下流の吸気間にホールドIMからエンジン燃焼室へと導入される。
以上、第2オイルセパレータ部(気液分離室)におけるオイルミストを含むブローバイガスからのオイルミスとの分離性能について、エンジン運転条件との関係を示しつつ説明したが、本発明の主旨は、気液分離室におけるオイルドレーン部と邪魔板部材の構造にあり、したがって、本発明のエンジンのオイル分離装置は、上記実施の形態に限定されるものではない。