JP7156992B2 - 産業用ハイブリッドエンジン部構造 - Google Patents

Description

本発明は、ハイブリッドエンジンを搭載したトラクタや建機などのエンジン部構造、即ち、産業用ハイブリッドエンジン部構造に関するものである。

近年の排ガス規制や公害対策、さらには燃費向上の課題が、自動車用エンジンのみならず、農機用エンジンなどの産業用エンジンにも適用されつつある。そのため、特許文献１において開示されるように、電動モータによりエンジン出力をアシスト可能とされたハイブリッド建機用エンジンも開発されてきている。

例えば、トラクタ用ディーゼルエンジンの出力をアシストできるようにハイブリッド化する場合には、動力用の電動モータは、従来のエンジンに用いられるオルタネータに比べて、明確に大型化させた高出力のものが必要である。

従って、大型化された動力用の電動モータを駆動するための蓄電池、即ち動力用蓄電池を新たに設ける必要も出てくる。自動車においては、特許文献２において開示されるように、嵩張る動力用蓄電池（バッテリユニット：１０）を前席や後席の下方に配置することが知られている。

特開２０１５－１８２５１２号公報 ＷＯ２０１７／０１７７６２

しかしながら、農機や建機、或いは発電機など、各種の機械に搭載できるように汎用性が必要とされる産業用エンジンにおいては、特許文献２のような動力用蓄電池の配置構造を採ることはできないため、工夫が必要である。

本発明の目的は、農機や建機などの産業機械にハイブリッドエンジンを採用するにあたり、動力用蓄電池も含めたエンジン部が、コンパクトで合理的に構成された産業用ハイブリッドエンジン部構造を提供する点にある。

本発明は、産業用ハイブリッドエンジン部構造において、
クランク軸に無端回動帯により伝動される動力用の電動モータがエンジン本体に設けられ、前記エンジン本体における前記クランク軸の軸心の方向を前後方向とした場合の左右方向で前記電動モータが設けられる側の横傍に、前記電動モータを駆動するための動力用蓄電池が配置され、
前記エンジン本体における前記軸心に対して前記動力用蓄電池が配置された側と反対側の横傍に、スタータ駆動用の二次電池が配置されていることを特徴とする。

例えば、複数の前記動力用蓄電池が前記クランク軸の軸心に沿って前後方向に並べられていると好都合であり、前記動力用蓄電池の前記軸心の方向で隣り合う箇所に蓄電池用補機が配置されているとより好都合である。

そして、前記無端回動帯をループ内側に押圧付勢する緊張機構が前記エンジン本体に設けられていてもよい。

さらに、前記エンジン本体が、前記軸心が前後方向に沿う状態で走行車体に搭載されていると好都合であり、前記エンジン本体で生じた排気ガスを通す排気管が、前記エンジン本体と前記動力用蓄電池との間を通して前記走行車体の後に向けて配策されていればより好都合である。

本発明によれば、エンジン本体の電動モータが設けられる側の左右方向で横傍に、電動モータの動力用蓄電池が配置されているので、これら電動モータと動力用蓄電池とを接続する配線（ワイヤハーネス）をできるだけ短いものにすることができる。そして、動力用蓄電池がエンジンの横傍に配置されているので、エンジン部（或いはエンジンルーム）としての左右幅のコンパクト化が可能になる。

その結果、農機や建機などの産業機械にハイブリッドエンジンを採用するにあたり、動力用蓄電池も含めたエンジン部が、コンパクトで合理的に構成された産業用ハイブリッドエンジン部構造を提供することができる。

産業用ハイブリッドディーゼルエンジンの正面図 図１のエンジンの左側面図 バッテリー等を含む図１のエンジンの平面図 動力用蓄電池とエンジンとの配置関係を示す要部を右斜め後方上方から見た斜視図 動力用蓄電池アッシを示し、（Ａ）は左側面図、（Ｂ）は背面図

以下に、本発明による産業用ハイブリッドエンジン部構造の実施の形態を、フォークリフトやトラクタなどに搭載されるディーゼルエンジンに適用した場合について、図面を参照しながら説明する。

図１～図３に示されるように、産業用エンジンＥは、伝動ベルト１９のある方を前、フライホイールハウジング６のある方を後、排気マニホルド２０のある方を左、オイルフィルタ３のある方を右として定義する。また、エンジン本体ｈは、シリンダブロック２１、シリンダヘッド２２、ヘッドカバー２３、伝動ケース２５を含むものとする。

図１～図３に示されるように、直列３気筒の産業用ハイブリッドディーゼルエンジン（以下、単にエンジンと略称する）Ｅは、シリンダブロック２１の上にシリンダヘッド２２が組み付けられ、シリンダブロック２１の下にオイルパン２４が組み付けられている。シリンダブロック２１の下部はクランクケース２１ｂに形成され、上部はシリンダ２１ａにそれぞれ形成されている。シリンダヘッド２２の上にヘッドカバー（シリンダヘッドカバー）２３が組み付けられている。シリンダブロック２１の前には伝動ケース２５が組み付けられている。

図１～図３に示されるように、エンジンＥの前部に、軸心２６Ａを有するクランク軸２６の駆動プーリ２６ａ、冷却ファン（図示省略）駆動用のファンプーリ１７、及びモータジェネレータである電動モータ１８のモータプーリ１８ａに跨る伝動ベルト（無端回動体の一例）１９が配備されている。エンジンＥの左側には、排気マニホルド２０、過給器（ターボチャージャー）１、電動モータ１８などが装備されている。エンジンＥの右側にはオイルフィルタ３、吸気マニホルド４などが装備され、上方には３つのインジェクタ５が配置されている。エンジンＥの後部には、フライホイールハウジング６や排気処理装置７が装備されている。なお、排気処理装置７は、搭載機械によって様々な位置に配置可能であり、また排気処理装置が搭載されないこともある。

図１～図３に示されるように、駆動プーリ２６ａとモータプーリ１８ａの間において、可撓性を有する伝動ベルト１９をファンプーリ１７側に押圧付勢するベルトテンショナ（緊張機構の一例）８が、伝動ケース２５の左に位置する状態で装備されている。ベルトテンショナ８は、伝動ベルト１９の背面（外周面）に圧接されるテンションローラ８ａと、テンションローラ８ａを先端に軸支する揺動アーム８Ａと、揺動アーム８Ａを軸心Ｐの回りで左回り（図１では右方向）に回動付勢させるテンショナ支持部８Ｂとを備えて構成されている。

図１～図３に示されるように、電動モータ１８は、前後方向視で円形を呈する比較的大型（大出力）の動力用電動モータであり、重量も一般的なものより重い。そのため、下側の第１支持ブラケット９と上部右側の第２支持ブラケット１０との２つを用いて強度十分にエンジン本体ｈに取付けられている。ベルトテンショナ８は、テンショナ支持部８Ｂの２箇所のボルト止め構造により、第１支持ブラケット９に支持されている。

図１～図３に示されるように、電動モータ１８には上下の二股ブラケット１３，１５が設けられており、上側の二股ブラケット１３が第２支持ブラケット１０の支持部ス部１１を挟み、かつ、下側の二股ブラケット１５が第１支持ブラケット９の先端ボス部９Ｃを挟む状態でそれぞれ支持されている。各二股ブラケット１３，１５は、それぞれが前後一対のアーム部１３ａ，１３ａ，１５ａ，１５ａを備えている。また、第２支持ブラケット１０には、伝動ベルト１９の背面に作用するアイドラ１６が支承されている。

図３、図４に示されるように、エンジン本体ｈにおけるクランク軸２６の軸心２６Ａに対する左右方向で電動モータ１８が設けられる側、即ち、左側の横傍に、電動モータ１８を駆動するためのリチウムイオンバッテリー（動力用蓄電池の一例）２が配置されている。そして、エンジン本体ｈにおけるクランク軸２６の軸心２６Ａに対してリチウムイオンバッテリー２が配置された側と反対側、即ち、右側の横傍に、スタータ駆動用の鉛バッテリー（二次電池の一例）１４が配置されている。なお、スタータｓは、エンジン本体ｈの左側に設けられている（図２を参照）。

図３、図４に示されるように、起立姿勢（縦置き）で２個（複数の一例）のリチウムイオンバッテリー２，２が、クランク軸２６の軸心２６Ａの方向、即ち、前後方向に沿って並べられている。そして、リチウムイオンバッテリー２，２の前後方向で隣り合う箇所に蓄電池用補機ａが配置されている。これらリチウムイオンバッテリー２，２や蓄電池用補機ａを搭載枠３０に装備してなる動力用蓄電池アッシ（ＡＳＳＹ）Ａが構成されている。

図３～図５に示されるように、蓄電池用補機ａは、リチウムイオンバッテリー２，２の前に配置されるヒューズ２７、リチウムイオンバッテリー２，２の後に配置されるコンタクタ（電磁接触器）２８、及びコンタクタ２８の上に配置される電流センサ２９を有して構成されている。リチウムイオンバッテリー２，２は、台座部３０ａと、台座部３０ａの前後に取り付けられる側壁３０ｂ，３０ｂとでなる搭載枠３０に搭載され、前後の側壁３０ｂ，３０ｂに跨って着脱可能にボルト止めされる押え具３１で係止されている。

台座部３０ａの下側には、各リチウムイオンバッテリー２，２どうしを繋ぐ連結部材３２や台座部３０ａに対する補強部材３３が設けられている。前側の側壁３０ｂには、ヒューズ２７を支持する第１ステー２７Ａが取り付けられている。後側の側壁３０ｂには、コンタクタ２８を支持する第２ステー２８Ａ、及び電流センサ２９を支持する第３ステー２９Ａが取り付けられている。

図４に示されるように、ヒューズ２７、コンタクタ２８、電流センサ２９がまとめてリチウムイオンバッテリー２，２の側脇近くに配置された構成の動力用蓄電池アッシＡと、エンジンＥの電動モータ１８とが左右に並ぶように近接配置されている。従って、これら両者１８，Ａを電気的に接続するワイヤハーネス（リード線）３４が極力短いもので済む利点がある。

また、リチウムイオンバッテリー２，２を前後に並べてエンジンＥの左右一方（左側）に配置し、かつ、鉛バッテリー１４を前後に長くなる姿勢でエンジンＥの左右他方（右側）に配置してあるので、２種類のバッテリー２，２，１４をエンジンＥの近傍に配置しながらも、エンジン部（又はエンジンルーム）としての左右幅をコンパクトに収めることが可能である。

リチウムイオンバッテリー２，２をエンジンの側脇に縦置き配置し、かつ、クランク軸２６の軸心２６Ａに沿う方向に並べてあるから、動力用蓄電池２を含むエンジンとしての幅寸法を極力コンパクトすることができる。従って、フォークリフトなどの産業車両に搭載するためのエンジンルーム内に収まるように、限られたスペースの有効活用に寄与できる産業用ハイブリッドエンジン部構造が実現されている。

例えば、図３に示されるように、エンジン本体ｈが、クランク軸２６の軸心２６Ａが前後方向に沿い、かつ、エンジンＥとしての前が進行方向で後向きとなる状態で産業車両（例：フォークリフト）の走行車体３６に搭載することができる。そして、過給器１を通過した排気ガスを流す排気管３５が、エンジン本体ｈと動力用蓄電池アッシＡ（リチウムイオンバッテリー２，２）との左右間で、かつ、電動モータ１８の下方を通して走行車体３６の後（後部又は後方）へと配策する構成を採ることができる。この場合、図示は省略するが、エンジンＥの後部に配置されている排気処理装置７を、走行車体３６の後部に配置することができる。

図３に示されるように、産業車両に搭載された状態では、動力用蓄電池アッシＡはエンジンＥの右側に、かつ、鉛バッテリー１４はエンジンＥの左側に配置されており、エンジンＥの単体で定義した前後左右とは逆になることもある。また、産業車両によっては、エンジンＥとしての前後方向が走行車体の左右方向に沿う姿勢となる横置き姿勢で搭載されることもある。

〔別実施形態〕
電動モータ１８駆動用の動力用蓄電池２は、ニッケル水素電池や全固体電池など、リチウムイオンバッテリー以外の蓄電池であってもよい。そして、スタータｓなどに使用される二次電池１４は、鉛酸電池やニッケル亜鉛蓄電池など、鉛バッテリー以外の二次電池であってもよい。

また、二次電池１４を持たず、動力用蓄電池２で全ての電気機器の電力を賄うように構成された産業用ハイブリッドエンジン部構造であってもよい。
蓄電池用補機ａは、リレーや整流器など、種々のものを含んでいる。

２ 動力用蓄電池
８ 緊張機構
１４ 二次電池
１８ 電動モータ
１９ 無端回動帯
２６ クランク軸
２６Ａ 軸心
３５ 排気管
３６ 走行車体
ａ 蓄電池用補機
ｈ エンジン本体

Claims (6)

1. クランク軸に無端回動帯により伝動される動力用の電動モータがエンジン本体に設けられ、
   前記エンジン本体における前記クランク軸の軸心の方向を前後方向とした場合の左右方向で前記電動モータが設けられる側の横傍に、前記電動モータを駆動するための動力用蓄電池が配置され、
   前記エンジン本体における前記軸心に対して前記動力用蓄電池が配置された側と反対側の横傍に、スタータ駆動用の二次電池が配置されている産業用ハイブリッドエンジン部構造。
2. 複数の前記動力用蓄電池が前記クランク軸の軸心に沿って前後方向に並べられている請求項１に記載の産業用ハイブリッドエンジン部構造。
3. 前記動力用蓄電池の前記軸心の方向で隣り合う箇所に蓄電池用補機が配置されている請求項１又は２に記載の産業用ハイブリッドエンジン部構造。
4. 前記無端回動帯をループ内側に押圧付勢する緊張機構が前記エンジン本体に設けられている請求項１～３の何れか一項に記載の産業用ハイブリッドエンジン部構造。
5. 前記エンジン本体が、前記軸心が前後方向に沿う状態で走行車体に搭載されている請求項１～４の何れか一項に記載の産業用ハイブリッドエンジン部構造。
6. 前記エンジン本体で生じた排気ガスを通す排気管が、前記エンジン本体と前記動力用蓄電池との間を通して前記走行車体の後に向けて配策されている請求項５に記載の産業用ハイブリッドエンジン部構造。

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