JP7156117B2 - 接合体の製造方法及び絶縁回路基板の製造方法 - Google Patents
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Description
このパワーモジュール用基板として、例えば特許文献1におけるパワーモジュール用基板が開示されている。このパワーモジュール用基板は、セラミックス基板の両面側に、アルミニウム又はアルミニウム合金、もしくは銅又は銅合金からなる金属板がそれぞれろう材を介して接合されることにより、セラミックス基板の一方の面に回路層、他方の面に放熱層が形成されている。また、放熱層に、アルミニウム又はアルミニウム合金、もしくは銅又は銅合金からなる放熱板が接合されている。
このパワーモジュール用基板は、セラミックス基板と金属板との積層体を加圧装置により加圧加熱することにより接合される。このとき、積層体と加圧装置との間には、カーボン層とグラファイト層とを積層してなるスペーサーが介在される。この場合、カーボン層が積層体側に配置される。
この対策として、加圧力を高めた場合には、カーボン層に割れが生じる可能性がある。
一方、スペーサーにおける積層体に接する表面をグラファイト層とした場合、グラファイト層が接合体に付着するという問題が生じる。
また、スペーサーのビッカース硬度とミリメートルを単位とする厚さとの積を10以下とすることで、金属板どうしを高精度に接合することができる。ビッカース硬度と厚さとの積が10を超えると、積層体表面形状への追従性が損なわれ、接合不良が生じるおそれがある。
しかも、加圧時に金属箔に割れが生じたり、金属箔の一部が剥離して積層体に付着するおそれもなく、スペーサーの破損を抑制しつつ不良品の少ない高品質の接合体を製造することができる。
ビッカース硬度と厚さとの積が0.1未満であると、金属箔が破れる可能性がある。
硬いカーボンシートに軟らかいグラファイトシートを介して金属箔を設けているので、積層体の表面形状への金属箔の追従性をより高めることができ、さらに接合性を向上させることができる。
アルミニウムと銅とは一般に固相拡散接合されるが、本発明は、このような固相で接合する場合に特に有効である。
この実施形態は絶縁回路基板としてのパワーモジュール用基板を接合体とした例である。このパワーモジュール用基板1は、図1に示すように、セラミックス基板10と、このセラミックス基板10の一方の面に接合された回路層20と、セラミックス基板10の他方の面に接合された放熱層30とを備える。
セラミックス基板10は、例えばAlN(窒化アルミニウム)、Si3N4(窒化珪素)等の窒化物系セラミックス、もしくはAl2O3(アルミナ)等の酸化物系セラミックスを用いることができる。また、セラミックス基板10の厚さは、0.2mm以上1.5mm以下とされる。
第二金属層42は、例えば純度99.96質量%以上の銅(無酸素銅)や純度99.90質量%以上の銅(タフピッチ銅)が好適である。
まず、セラミックス基板10の両面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる第一金属板41´をろう材50を介して積層し、その積層体を加圧加熱することにより、セラミックス基板10と第一金属板41´とを接合して、セラミックス基板10の両面に第一金属層41を形成する(第一接合工程)。次いで、その第一金属層41の上に銅又は銅合金からなる第二金属板42´を積層し、その積層体を加圧加熱することにより、アルミニウムと銅とを固相拡散接合して、第一金属層41の上に第二金属層42を形成する(第二接合工程)。
この加圧装置110は、ベース板111と、ベース板111の上面の四隅に垂直に取り付けられたガイドポスト112と、これらガイドポスト112の上端部に固定された固定板113と、これらベース板111と固定板113との間で上下移動自在にガイドポスト112に支持された押圧板114と、固定板113と押圧板114との間に設けられて押圧板114を下方に付勢するばね等の付勢手段115とを備えている。
この場合、ベース板111及び押圧板114において、積層体Sと接する側に、加圧を均一にするためのスペーサー60が配設される。
カーボンシート61は、耐熱性を有する硬質のカーボン材料により平板状に形成され、3000℃程度の高温で焼成したものである。この上側加圧板を構成するカーボンシート32は、かさ密度が1.6Mg/m3以上1.9Mg/m3以下の比較的硬質で平滑な平面に構成される。例えば、旭グラファイト株式会社製G-347(熱伝導率:116W/mK、弾性率:10.8GPa)を用いることができる。
この場合、金属箔63は、前述したように積層体Sの表面(この場合は銅)と加熱時に反応しない材料であれば、適宜の金属を選択できるが、ビッカース硬度と厚さ(mm)との積が、0.1以上10以下になるように設定される。
その積が0.1未満では、金属箔63が破れる可能性があり、10を超えると、積層体表面形状への追従性が損なわれ、接合不良が生じるおそれがあるからである。
なお、グラファイトシート62の金属箔63との反対側は、硬質で加熱時に変形しないものであれば、カーボンシート61以外の材料を用いてもよい。
以下、この加圧装置110を用いた第一接合工程、第二接合工程を順に説明する。
図2(a)に示すように、セラミックス基板10の両面に、それぞれろう材50を介して、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる第一金属板41´を積層する。ろう材50としては、Al-Si系、Al-Ge系、Al-Cu系、Al-Mg系又はAl-Mn系等の合金が使用される。
そして、その積層体Sを図3に示す加圧装置110を用いて積層方向に加圧して、加圧装置110ごと真空雰囲気下で加熱することにより、第一金属板41´をセラミックス基板10に接合して、セラミックス基板19の両面に第一金属層41を形成する。
このときの加圧力としては、例えば0.1MPa以上3.4MPa以下、接合温度としては600℃以上655℃以下、加熱時間としては15分以上120分以下とされる。
なお、この第一接合工程はろう材50を介した接合であるので、必ずしもスペーサーの表面を金属箔にする必要はなく、従来のカーボンシートを表面に用いたスペーサーも適用可能である。
図2(b)に示すように、セラミックス基板10の両面に形成された第一金属層41の上に、それぞれ銅又は銅合金からなる第二金属板42´を積層する。
そして、その積層体Sを図3に示す加圧装置110を用いて積層方向に加圧した状態で、加圧装置110ごと真空雰囲気下で加熱して、第一金属層41に対して第二金属板42´をそれぞれ固相拡散接合することにより、第一金属層41の上に第二金属層42を形成する。この場合の加圧力としては、例えば0.3MPa以上3.5MPa以下、加熱温度としては400℃以上548℃未満とされ、この加圧及び加熱状態を5分以上240分以下保持することにより、第一金属層41と第二金属板42´とが固相拡散接合され、第一金属層41の上に第二金属層42が形成される。
以上により、このスペーサー60を設けた加圧装置110を用いることにより、接合不良のない高品質のパワーモジュール用基板(絶縁回路基板)1を製造することができる。
例えば、本発明の製造方法は、セラミックス基板の一方の面にアルミニウム層と銅層との二層構造からなる回路層を形成する場合に適用することができ、セラミックス基板の他方の面に実施形態のように二層構造の放熱層を有さなくてもよい。
また、上記実施形態では、積層体の表面が銅又は銅合金からなるものとしたが、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものとしてもよく、その場合、スペーサーの金属箔をアルミニウム又はアルミニウム合金、或いはステンレス又はステンレス合金とすることが望ましい。
この場合、前述の実施形態で述べた方法によりセラミックス基板に第一金属層、第二金属層からなる回路層及び放熱層をそれぞれ形成し、その放熱層の第二金属層にAlSiC複合材をヒートシンクとして接合した絶縁回路基板とすることができ、セラミックス基板の両面に第一金属層を形成しておき(第一接合工程により)、その第一金属層に第二金属板をそれぞれ積層し、一方の第二金属板にAlSiC複合材を積層して、これらの積層体を加圧加熱して固相拡散接合する(第二接合工程)とよい。
その他、本発明は、パワーモジュール用基板の回路層に限らず、固相で接合できる金属の組み合わせのものに適用することが可能である。
スペーサーは、カーボンシート、グラファイトシート、金属箔の積層構造体とし、その金属箔には、ステンレス鋼としてSUS304、銅としてC1020、アルミニウムとしてA6063、あるいはニッケル(Ni)、チタン(TR270C)のいずれかを用いた。これらのビッカース硬度及び厚さはそれぞれ表1に示す通りである。比較例として、金属箔に代えて、Si3N4のセラミックス板を用いたものも試験した。また、従来例としてカーボンシート、グラファイトシートからなるスペーサーを用いたものも試験した。
接合性は、超音波探傷装置(日立パワーソリューションズ社製FINESAT)を用いて、両金属層の界面を観察し、非接合面積を測定し、接合前における接合すべき面積(金属層の面積)から接合率を割り出し、接合率が95%以上を「A」、95%未満を「B」とした。
各評価結果を表1に示す。なお、表1には、スペーサーのうち、被着材に接する側の表面を構成している材料についてのみ掲載している。
接合後にスペーサーを非接着材からはがした時に、非接着材に金属箔が残留していた場合を「B」とし、残留していなかった場合を「A」とした。
(スペーサーの破損)
接合後にスペーサーを目視にて観察し、クラックが生じていた場合を「B」、クラックが生じていなければ「A」と評価した。
これに対して、比較例1及び2は、スペーサーの硬度×厚さの積が大きすぎるため、接合不良が生じた。比較例3は、被着材が銅に対して、スペーサーの金属箔をアルミニウムとしたため、接合時にこれらが反応して接着が生じた。比較例4は、アルミニウムからなる被着材に銅からなる金属箔を用いたため、これらが接着してしまった。比較例5はスペーサーの表面に金属箔ではなくセラミックス板を用いたため、割れが生じた。従来例1はスペーサーの表面にカーボンシートを用いたものであり、薄肉であったため、被着材表面形状への追従性はよく、接合性は良好であったが、割れが生じた。従来例2もスペーサーの表面にカーボンシートを用いたが、厚肉であったため、割れは生じなかったものの、接合不良が生じた。従来例3はグラファイトを用いたため、被着材に付着した。
10 セラミックス基板
20 回路層
30 放熱層
41 第一金属層
41´ 第一金属板
42 第二金属層
42´ 第二金属板
50 ろう材
60 スペーサー
61 カーボンシート
62 グラファイトシート
63 金属箔
110 加圧装置
Claims (6)
- 第一金属板と第二金属板とを積層状態とした積層体の少なくとも一方側の表面にスペーサーを接触させた状態で前記積層体を加圧及び加熱して接合する接合体の製造方法であって、前記スペーサーは、前記積層体との接触面側に、前記積層体の表面と加熱時に反応しない材料からなる金属箔が設けられており、前記金属箔のビッカース硬度と厚さ(mm)との積が10以下であることを特徴とする接合体の製造方法。
- 前記金属箔のビッカース硬度と厚さ(mm)との積が、0.1以上であることを特徴とする請求項1に記載の接合体の製造方法。
- 前記スペーサーは、カーボンシートとグラファイトシートと前記金属箔とがこの順に積層状態に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の接合体の製造方法。
- 前記第一金属板又は前記第二金属板のうち、いずれか一方が銅又は銅合金からなり、他方がアルミニウム又はアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の接合体の製造方法。
- 請求項4記載の接合体の製造方法により、セラミックス基板の一方の面に前記第一金属板が接合され、該第一金属板に前記第二金属板が接合されてなる絶縁回路基板を製造する方法であって、
前記第一金属板がアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、前記第二金属板が銅又は銅合金からなり、前記第一金属板は前記セラミックス基板の一方の面に予め接合されており、
前記積層体は、前記セラミックス基板に接合状態の前記第一金属板と前記第二金属板との積層体であり、前記第一金属板と前記第二金属板とを固相拡散接合することを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。 - 前記絶縁回路基板は、前記セラミックス基板の両方の面に前記第一金属板が接合されるとともに、両第一金属板に前記第二金属板がそれぞれ接合され、いずれか一方の前記第二金属板に、炭化ケイ素の多孔体にアルミニウムを主成分とする金属を含浸させてなるAlSiC複合材が接合されてなり、
前記第一金属板は前記セラミックス基板の両方の面に予め接合されており、
前記積層体は、前記セラミックス基板に接合状態の前記第一金属板と、これら第一金属板にそれぞれ積層された前記第二金属板と、いずれか一方の前記第二金属板に積層された前記AlSiC複合材との積層体であり、
前記第一金属板と前記第二金属板、及び前記第二金属板と前記AlSiC複合材を同時に固相拡散接合することを特徴とする請求項5記載の絶縁回路基板の製造方法。
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