JP6375818B2 - 放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置及び製造方法 - Google Patents
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Description
このような放熱板付パワーモジュール用基板は、従来、次に示すように製造されてきた。
まず、セラミックス基板の表面に、セラミックス基板と回路層及び金属層との接合に適するろう材を介して2つの金属板を積層し、所定の圧力で加圧しながら、ろう材が溶融する温度以上まで加熱することにより、セラミックス基板と両面の金属板とを接合してパワーモジュール用基板を製造する。次に、このパワーモジュール用基板の金属層と放熱板とを、ろう付けや固相拡散接合により接合することにより、放熱板付パワーモジュール用基板を製造する。そして、この場合においても、パワーモジュール用基板と放熱板とを積層して、所定の圧力で加圧しながら加熱することにより、金属層と放熱板とを接合することができる。
上側加圧板及び下側加圧板を十分な厚さを有する硬質のカーボン層により形成するとともに、そのカーボン層と薄肉カーボン層との間にクッション性を有する軟質のグラファイト層を積層することにより、個々のパワーモジュール用基板や放熱板の表面に対して、圧力を均一にして加圧することができる。したがって、複数設けられたパワーモジュール用基板を、放熱板に良好な接合状態で接合することができる。
各上側加圧板は、バネ等の付勢手段によって、パワーモジュール用基板と放熱板との積層体に押圧力を付加する構成とされていることから、加圧時や加熱時において付勢手段が動くと、各上側加圧板はその影響を受け易い。その結果、放熱板に対する各パワーモジュール用基板の位置ずれを引き起こし易くなる。ところが、本発明おいては、上側加圧板に積層されるグラファイト層を、複数の上側加圧板に跨って連結した一枚のシート状に設けているので、そのクッション性により両側に積層されるカーボン層及び薄肉カーボン層の動きを拘束することができる。これにより、付勢手段が動くことにより生じる放熱板に対する各パワーモジュール用基板の位置ずれを防止することができ、パワーモジュール用基板の位置精度を向上させることができる。
また、グラファイト層により連結して各上側加圧板を一体に取り扱うことが可能となるので、作業性を向上させることもできる。
本発明に係る放熱板付パワーモジュール用基板の製造方法により製造される放熱板付パワーモジュール用基板100は、図3(c)に示すように、複数のパワーモジュール用基板10が、一枚の放熱板20に面方向に間隔をあけて接合されるものである。そして、この放熱板付パワーモジュール用基板100のパワーモジュール用基板10の表面に半導体チップ等の電子部品30が搭載されることにより、パワーモジュールが製造される。
セラミックス基板11は、例えばAlN(窒化アルミニウム)、Si3N4(窒化珪素)等の窒化物系セラミックス、もしくはAl2O3(アルミナ)等の酸化物系セラミックスを用いることができる。また、セラミックス基板11の厚さは0.2mm〜1.5mmの範囲内に設定することができ、本実施形態のセラミックス基板11は、AlNからなり、0.635mmの厚さとされる。
また、金属層13は、アルミニウム又はアルミニウム合金、もしくは銅又は銅合金からなる板材を、セラミックス基板11に接合することにより形成される。特に純度1N99(純度99.99質量%以上:いわゆる4Nアルミニウム)を好適に用いることができる。
また、回路層12及び金属層13の厚さは、0.2mm〜2.0mmの範囲内に設定することができ、本実施形態においては、純度が99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなるアルミニウム板により、回路層12が0.4mm、金属層13が0.4mmの厚みに設けられている。
この製造装置50は、図1及び図2に示すように、四隅に設けられた支柱51により支持される天板52と座板53との間に、パワーモジュール用基板10を放熱板20に重ねた積層体25をその積層方向に加圧するための加圧手段60を備える。
天板52及び座板53は、それぞれ平板状に設けられ、天板52が座板53の上方に互いに平行となるように配置されている。また、各支柱51は、鉛直方向に延びる柱状に設けられ、両端には螺子が切られている。一方、座板53には、螺子穴が設けられており、各支柱51の一端側が座板53の螺子穴に立設されるとともに、他端側が天板52を貫通して上方に向かって延びて配置されており、その他端側に、ナット等の締結部材54が締結されている。そして、この4本の支柱51により、天板52が、座板53と平行状態を維持しながら、支柱51の延在方向(鉛直方向)にスライド移動可能に設けられている。
また、グラファイト層71,81には、例えば旭グラファイト株式会社製T‐5(熱伝導率:75.4W/mK、弾性率:11.4GPa)や、東洋炭素工業株式会社製黒鉛シートPF(圧縮率47%、復元率14%)などを用いることができる。
また、薄肉カーボン層72,82は、グラファイト層71,81とパワーモジュール用基板10とが直接接触することを避けるために設けられるので、その厚さは下側加圧板70及び下側加圧板80よりも薄く、例えば0.5mm以上5.0mm以下(本実施形態では1mm)とされる。
また、本実施形態においては、支柱51、天板52、座板53、締結部材54、ガイド軸92、ばね受け皿93等の各部材も、圧縮コイルバネ91と同様にカーボンコンポジットから形成される。なお、これらの各部材の全てが必ずしもカーボンコンポジットから形成されている必要はなく、これらの各部材のうち少なくとも一つがカーボンコンポジットから形成されているものであってもよい。
まず、図3(a)及び(b)に示すように、回路層12及び金属層13として、それぞれ99.99質量%以上の純アルミニウム圧延板を準備し、これらの純アルミニウム圧延板を、セラミックス基板11の一方の面及び他方の面にそれぞれろう材18を介して積層し、加圧・加熱することによって、セラミックス基板11の一方の面及び他方の面に純アルミニウム圧延板が接合されたパワーモジュール用基板10を製造する。なお、このろう付け温度は、600℃〜655℃に設定される。
具体的には、まず、各パワーモジュール用基板10と放熱板20とをポリエチレングリコール(PEG)等の仮止め材(図示略)により仮止めした積層体25を作製する。この際、各パワーモジュール用基板10を、一枚の放熱板20の面方向に間隔をあけて載置し、パワーモジュール用基板10を放熱板20上に位置決めする。そして、この積層体25を下側加圧板80の上に載置し、各パワーモジュール用基板10上に、個々の上側加圧板70を接触させて、下側加圧板80とそれぞれの上側加圧板70とによって積層体25を挟持する。そして、天板52を下方に変位させ、圧縮コイルバネ91を圧縮することにより、積層体25に加圧力を付加する。また、このように圧縮コイルバネ91を圧縮した状態で、締結部材54を支柱51に締結することで、天板52の上方向への移動を制限する。これにより、圧縮コイルバネ91(付勢手段90)の付勢力を加圧力として、積層体25はその積層方向に加圧された状態に保持される。
図1に示す第1実施形態の製造装置50では、各上側加圧板70は、それぞれが独立して設けられていたが、第2実施形態の製造装置250では、図4に示すように、上側加圧板70に積層されるグラファイト層71Aが、上側加圧板70に跨って連結された一枚のシート状に設けられる。これにより、複数の上側加圧板70が、グラファイト層71Aによって連結された状態とされる。
なお、第2実施形態の製造装置250において、グラファイト層71A以外の他の構成要素は第1実施形態の製造装置50と同じものが用いられているので、各図において、第1実施形態と共通要素には同一符号を付して説明を省略する。
まず、第1実施形態と同様に、図3(a)及び(b)に示すように、回路層12及び金属層13として、セラミックス基板11の一方の面及び他方の面に純アルミニウム圧延板が接合されたパワーモジュール用基板10を製造する。
なお、複数の上側加圧板70が一枚のグラファイト層71Aによって連結された状態とされているが、グラファイト層71Aは軟質であるので、加圧時のパワーモジュール用基板10相互間のばらつきを吸収するために必要となる各上側加圧板70のわずかな相対移動は許容される。
したがって、このようにして製造される放熱板付パワーモジュール用基板100においては、各パワーモジュール用基板10と放熱板20との接合信頼性を高めることができ、良好な放熱性能を確保することができるとともに、パワーモジュール用基板10の位置精度を向上させることができる。
放熱板付パワーモジュール用基板を構成するパワーモジュール用基板は、厚み0.635mmのAlNからなるセラミックス基板と、厚み0.6mmの純度99.99質量%以上のアルミニウム(4N‐Al)からなる回路層及び金属層とを、Al‐Si系ろう材によりろう付けしたものを用いた。また、放熱板は、厚み3.0mmの無酸素銅を用いた。なお、各部材のそれぞれの平面サイズは、セラミックス基板が30.7mm×43mm、回路層及び金属層が26.7mm×43mm、放熱板が165mm×144mmとされるものを用いた。
放熱板と2個のパワーモジュール用基板とを、図1に示す第1実施形態の製造装置50を用いて接合し、放熱板付パワーモジュール用基板の試料を作製した。また、従来例として、図5に示す製造装置300を用いて、放熱板付パワーモジュール用基板の試料を作製した。製造装置300では、上側加圧板70Bを、下側加圧板80と同様に一枚で構成しており、対となるこれら上側加圧板70Bと下側加圧板80とにより、パワーモジュール用基板と放熱板との積層体を挟持して加圧する構成とされる。また、上側加圧板70Bに積層されるグラファイト層71B及び薄肉カーボン層72Bも、下側加圧板80と同様に一枚で構成される。
そして、得られた放熱板付パワーモジュール用基板に対し、パワーモジュール用基板と放熱板との界面(金属層と放熱板との界面)の接合状態を、超音波探傷装置を用いて観察した。
まず、放熱板に6個のパワーモジュール用基板を仮止めした積層体を作製し、この仮止め段階での放熱板に対する各パワーモジュール用基板の固定位置を、顕微鏡画像を用いて測定した。次に、これらパワーモジュール用基板と放熱板との積層体を、図1に示す第1実施形態の製造装置50と、図4に示す第2実施形態の製造装置250とを用いて接合し、放熱板付パワーモジュール用基板の試料を作製した。なお、第1実施形態の製造装置50及び第2実施形態の製造装置250のそれぞれについて、42個の放熱板付パワーモジュール用基板を作製した。そして、得られた放熱板付パワーモジュール用基板について、接合後の放熱板に対する各パワーモジュール用基板の固定位置を顕微鏡画像により測定し、パワーモジュール用基板の仮止め段階からの位置ずれ(位置精度)を評価した。
例えば、前述の実施形態では、一枚の放熱板に6個のパワーモジュール用基板を接合する構成としたが、パワーモジュール用基板の搭載数はこれに限定されるものではない。パワーモジュール用基板が複数搭載される放熱板付パワーモジュール用基板において、パワーモジュール用基板と同数の上側加圧板を備える構成とすることができる。
また、上記実施形態では、回路層及び金属層が設けられたパワーモジュール用基板を用いたが、これに限らず、回路層のみを有するパワーモジュール用基板を用いることもできる。この場合、セラミックス基板と放熱板とが接合されることとなる。
11 セラミックス基板
12 回路層
13 金属層
18 ろう材
20 放熱板
25 積層体
30 電子部品
50,250,300 放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置
51 支柱
52 天板
53 座板
54 締結部材
60 加圧手段
70 上側加圧板
71,71A,71B グラファイト層
72 薄肉カーボン層
80 下側加圧板
81 グラファイト層
82 薄肉カーボン層
90 付勢手段
91 圧縮コイルバネ
92 ガイド軸
93 ばね受け皿
94 締結部材
Claims (4)
- セラミックス基板に回路層が配設されてなる複数のパワーモジュール用基板を、一枚の放熱板に面方向に間隔をあけて積層し、その積層方向に加圧しながら加熱することにより接合して放熱板付パワーモジュール用基板を製造するための装置であって、
複数の前記パワーモジュール用基板を前記放熱板に重ねて配置した積層体を、その積層方向に加圧する加圧手段を備え、
前記加圧手段は、前記パワーモジュール用基板の前記回路層表面を個別に押圧するための複数の上側加圧板と、前記放熱板背面を押圧するための一枚の下側加圧板と、前記上側加圧板に押圧力を付加する付勢手段とを有し、
前記上側加圧板及び前記下側加圧板は、カーボン層により形成されていることを特徴とする放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置。 - 前記上側加圧板及び前記下側加圧板は、前記カーボン層に、グラファイト層が積層されるとともに、該グラファイト層に前記カーボン層よりも薄い薄肉カーボン層が積層されており、該薄肉カーボン層が前記パワーモジュール用基板側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置。
- 前記上側加圧板に設けられる前記グラファイト層は、複数の前記上側加圧板に跨って連結された一枚のシート状に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置。
- セラミックス基板に回路層が配設されてなる複数のパワーモジュール用基板を、一枚の放熱板に面方向に間隔をあけて接合して放熱板付パワーモジュール用基板を製造するための方法であって、
各パワーモジュール用基板を前記放熱板に重ねて配置した積層体を、その積層方向に加圧しながら加熱することにより、前記パワーモジュール用基板と前記放熱板とを接合する接合工程を有し、
前記接合工程において、前記パワーモジュール用基板の前記回路層表面を個別に押圧するための複数の上側加圧板と、前記放熱板背面を押圧するための一枚の下側加圧板との間に前記積層体を挟んで加圧し、
前記上側加圧板及び前記下側加圧板は、カーボン層により形成されていることを特徴とする放熱板付パワーモジュール用基板の製造方法。
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