JP7155914B2 - 黒色低反射膜形成用組成物、及び黒色低反射部材 - Google Patents
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Description
別の手法として、低屈折率の塗膜を別途最表面に配置する手法がある。例えば、特許文献1には、特定の高導電性カーボンブラックを分散させた着色低抵抗膜形成用塗布液から形成される着色低抵抗膜上に、前記着色低抵抗膜より低屈折率の膜が形成されてなる多層膜が開示されている(請求項1、6~8)。そして、低屈折率膜を構成する物質としては、Si化合物が屈折率、膜強度の点から好ましい旨、開示される。しかし、有機物や無機物の屈折率は1.3台のレベルが限界なので、空気の屈折率1.0とは乖離が大きく、反射率の低減レベルは不十分である。
また、特許文献1の発明は、良好な塗膜状態を得るために分散剤としてポリアクリレート等の樹脂成分を含むが、樹脂成分は可視光領域における吸収がほとんどなく可視光線を良く反射するため、低反射膜を形成するには阻害要因となる。
本発明の黒色低反射膜形成用組成物は、空隙率が50%以上の多孔質黒色顔料(A)、及び特定の分散剤(B)を含むことを特徴とする。
多孔質材料の屈折率は、空隙率が高いほど空気の屈折率に近づく。即ち、空隙率の高い多孔質材料で形成された塗膜の屈折率は空気の屈折率である1に近づく。通常、空気層から塗膜に入射する光は、空気層と塗膜との屈折率差により反射されるが、前述のとおり、空隙率の高い多孔質材料を含むことで塗膜の屈折率を空気層に近くすることで、光の反射界面が極小化され、反射率は小さくなる。また、多孔質の黒色顔料を使用することで、入射した光は、塗膜中の多孔質黒色顔料が光を効果的に吸収し、入射された光が外部に出ない構造をつくることが可能となる。また、特定の分散剤(B)を含むことで分散性を向上させるだけでなく、可視光領域の入射光を吸収して反射率を更に低下させ、優れた低反射性を発揮する。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の多孔質黒色顔料(A)は、空隙率が50%以上であれば特に制限はないが、カーボンブラック、黒鉛、酸化物系黒色顔料などや、カーボンブラック、黒鉛、酸化物系黒色顔料を骨格としたエアロゲルのような形態を持つ多孔質体を使用でき、これらは単独でも混合して用いても良いが、特に多孔質カーボンブラックを単独で使用することが好ましい。また、空隙率が高くなるほど、屈折率は空気層に近づくため、前述した低反射性発現の原理により、空隙率は50%以上であることが必要であり、好ましくは75%以上である。多孔質ではない黒色顔料を併用することも可能ではあるが、低反射性の発現の観点からは多孔質黒色顔料100質量部に対し、50質量部以下が好ましい。使用できる多孔質ではない黒色顔料は、カーボンブラック、黒鉛、酸化物系黒色顔料等が挙げられるが、黒色であれば特に制限はない。
本発明の分散剤(B)は、有機色素誘導体(b1)、及びトリアジン誘導体(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、制限なく従来公知の有機色素誘導体を用いることができ、2種以上を併用してもよい。なお、有機色素誘導体であって、さらにトリアジン構造を有するものについては、トリアジン誘導体とする。
酸性官能基としては、後述に示すとおり、SO3M、CO2M、又はP(O)(OM)2であることが好ましく、より好ましくは、SO3M、又はCO2Mであり、特に好ましくはCO2Mである。Mは、1~3価のカチオンの一当量を表し、中でも金属カチオン又は4級アンモニウムカチオンであることが好ましい。
以下に、酸性官基、及び塩基性官能基からなる群から選ばれる少なくも1種の官能基を有する有機色素誘導体(b1)、及びトリアジン誘導体(b2)について、詳細を述べる。
X8は、直接結合、又はX9Yを表し、
X9は、NH、O、CONH、NHCO、SO2NH、NHSO2、CH2NH又はCH2NHCOCH2NHを表し、
Yは、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルケニレン基又は置換基を有してもよい炭素数1~20のアリ-レン基を表し、
Zは、SO3M、CO2M又はP(O)(OM)2を表し、
Mは、1~3価のカチオンの一当量を表し、
R9は、有機色素残基を表し、nは1~4の整数を表す。]
とりわけ、金属錯体系色素ではない有機色素残基の使用が好ましく、中でもアゾ系色素、ジケトピロロピロール系色素、無金属フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素の使用が、分散性と光吸収性に優れるため好ましい。
金属カチオンの金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、ニッケル、コバルト等が挙げられる。また、4級アンモニウムカチオンとしては、一般式(2)で表される構造を有する単一化合物又は、混合物が挙げられる。
R5~R8は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、又は置換基を有してもよいアリ-ル基を表す。]
酸性官能基を有するトリアジン誘導体(b2)は、特に限定されるものではないが、好ましくは、下記一般式(3)で示されるトリアジン誘導体、又は下記一般式(4)で示されるトリアジン誘導体である。
X1は、NH、O、CONH、SO2NH、CH2NH、CH2NHCOCH2NH又はX3YX4を表し、
X2及びX4は、各々独立して、NH又はOを表し、
X3は、CONH、SO2NH、CH2NH、NHCO又はNHSO2を表し、
Yは、炭素数1~20で構成された、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルケニレン基又は置換基を有してもよい炭素数1~20のアリ-レン基を表し、
Zは、SO3M、CO2M又はP(O)(OM)2を表し、
Mは、1~3価のカチオンの一当量を表し、
R1は、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基又は下記一般式(5)で表される基を表し、
Qは、OR2、NHR2、ハロゲン原子、X1R1又はX2YZを表し、
R2は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアルケニル基を表す。]
X5は、NH又はOを表し、
X6及びX7は、各々独立して、NH、O、CONH、SO2NH、CH2NH又はCH2NHCOCH2NHを表し、
R3及びR4は、各々独立して、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基又はYZを表し、
Yは、炭素数1~20で構成された、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルケニレン基又は置換基を有してもよい炭素数1~20のアリ-レン基を表し、
Zは、SO3M、CO2M又はP(O)(OM)2を表す。]
とりわけ、金属錯体系色素ではない有機色素残基の使用が好ましく、中でもアゾ系色素、ジケトピロロピロール系色素、無金属フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素の使用が分散性や光吸収性に優れるため好ましい。
R1は、X1Y1で表される基を表し、
X1は、置換基を有してもよいアリーレン基を表し、
Y1は、SO3M、CO2M又はP(O)(OM)2を表し、
Mは、1~3価のカチオンの一当量を表す。]
上記アリーレン基が有してもよい置換基は、同一でも異なっても良く、その具体例としては、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、アルコキシル基等を挙げることができる。また、これらの置換基は、複数であっても良い。
塩基性官能基を有する有機色素誘導体は、特に限定されるものではないが、好ましくは、下記一般式(17)で示されるものである。
また、分散剤として2つ以上の有機色素誘導体を使用する場合、R1は互いに異なっていてもよい。
また、一般式(18)のR6及び一般式(18)のR7は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいフェニル基を表す。
一般式(20)のX6は、-SO2NH-R9-NR10R11、及び-CONH-R12-NR13R14、で表される基のいずれかを表す。ただし、R9、R12、R15~R18は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、及び置換基を有していてもよいアリーレン基のいずれかを表す。また、R10、R11、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかを表す。
一般式(22)のX10は、-NR26R27で表される基を表す。また、R26及びR27はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかを表す。
塩基性官能基を有するトリアジン誘導体は、特に限定されるものではないが、好ましくは、下記一般式(23)で示されるものである。
本発明の黒色低反射膜形成用組成物は、多孔質黒色顔料を分散するための有機溶剤を含む。使用する有機溶剤としては、25℃で液状の媒体が好ましい。具体的には、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール等のアルコール系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、n-オクタン等の炭化水素系溶剤等の公知の有機溶剤を、単独又は複数組み合わせて使用できる。
本発明の黒色低反射膜形成用組成物は、必要に応じてバインダー成分(C)を含むことができ、単独でも2種以上を併用して用いても良い。
バインダー成分(C)は、特に制限はないが、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ウレタンウレア樹脂、アルキッド樹脂、ブチラ-ル樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ギルソナイト、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、及び塩素化ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
単官能モノマーとしては、特に制限はないが、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、インデシルアクリレート、イソクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、エトキシ化ノニフェノールアクリレート、プロポキシ化ノニルフェノールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレンアクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェニルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、エチレンオキサイド2-エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート等やこれらのメタクリレートモノマーが挙げられる。
また、カチオン反応性の成分を紫外線により架橋させる場合には、必要に応じてカチオン系開始剤を併用してもよく、カチオン系開始剤としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨ-ドニウム塩、ルイス 酸のスルホニウム塩、ルイス酸のホスホニウム塩、その他のハロゲン化物、トリアジン系開始剤、ボレート系開始剤、及びその他の光酸発生剤等が挙げられる。電子線により架橋させる場合にはこれらを配合しなくても良い。
黒色低反射膜形成用組成物は、さらに、分散剤(B)以外の顔料分散剤、界面活性剤、難燃剤、充填剤、及びその他各種添加剤を含むことができる。
難燃剤としては例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びリン酸化合物等が挙げられる。また、添加剤として例えば、基材密着性を高めるためのカップリング剤、吸湿時・高温時の信頼性を高めるためのイオン捕捉剤・酸化防止剤、及びレベリング剤等が挙げられる。
本発明の黒色低反射膜形成用組成物は、様々な方法で得ることができ、例えば、多孔質黒色顔料と酸性基を有する分散剤とを有機溶剤に分散したり、多孔質黒色顔料と酸性基を有する分散剤とを有機溶剤に分散した後、得られた分散体とバインダー成分とを混合したり、バインダー成分を有機溶剤に溶解したバインダー溶液に多孔質黒色顔料を分散したりして製造することができる。
本発明の黒色低反射部材は、基材上に、前述の黒色低反射膜形成用組成物を用いた黒色低反射膜が形成された黒色低反射部材であって、前記黒色低反射膜が、光波長域400nm~700nmにおける正反射率の最大値が0.4%以下、散乱反射率の最大値が2%以下、光透過率の最大値が5%以下であることが好ましい。
黒色低反射膜の400~700nmにおける正反射率の最大値は0.4%以下が好ましく、より好ましくは0.2%以下、特に好ましくは0.1%以下である。正反射率が0.4%以下であると、低反射性が向上し、外観上も例えば蛍光灯等の映り込みが目立たないため好ましい。また、400~700nmにおける、散乱反射率の最大値は2%以下が好ましく、より好ましくは1.3%以下、特に好ましくは0.9%以下である。散乱反射率が2%以下であると、低反射性が向上し、また漆黒性の高い塗膜となるため好ましい。
Raは0.01~0.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.03~0.3μmであり、特に好ましくは0.06~0.2μmである。Raが0.01μm以上であることで、塗膜表面の凸部が十分な大きさを有し、正反射を低減させることができる。Raが0.5μm以下であることで、散乱反射を低下させることができ、かつ外観にも平滑感がある塗膜が得られる。また、Raが0.2μm以下であることで、正反射と散乱反射とを低減することができる。
本来正反射と散乱反射はトレードフの関係にあるものが、適切なRt、Raとすることでトレードフの関係を解消することができる。
基材としては、特に限定されるものではないが、ガラス基材、プラスチック基材(有機高分子基材)のほか、金属基材、紙基材、木基材(木製基材)、石基材、布基材、皮革基材等を挙げることができる。また、その形状としては、平板、フィルム状、シ-ト状、立体形状等が挙げられ、用途や使用条件に基づいて適宜選択することができる。中でも好ましくは、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン等の合成樹脂のフィルム又はこれらフィルムの複合体、及びガラス基材である。
黒色低反射膜を有する黒色低反射部材は種々の方法で得ることができる。
例えば、空隙率が50%以上の多孔質黒色顔料、特定の誘導体、有機溶剤、及び必要に応じてバインダー成分を含有した本発明の黒色低反射膜形成用組成物を、基材上に塗工した後、乾燥することによって得ることができる。あるいは、基材上に、多孔質黒色顔料を含有しない樹脂層を設けた後、前記樹脂層上に多孔質黒色顔料と分散媒とを含有する塗料を塗工し、分散媒を除去(乾燥)することにより、形成することもできる。
より具体的には例えば、本発明の黒色低反射膜は、前記の組成物を、基材の一主面上に、ロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、スリットコート法、スリット&スピンコート法、フローコート法、ダイコート法等の各種塗布法により塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜から樹脂溶媒等の溶剤を揮発等により除去して塗膜を形成し、該塗膜を必要により硬化処理することにより、容易に得ることができる。
アクリル樹脂、ニトロセルロース樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラ-ル、石油樹脂、及びこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。これら樹脂層は、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、コーター塗工、スピンコーター等の既知の方式で塗工することができる。
工程1:剥離性シ-トに、空隙率が50%以上の多孔質黒色顔料、特定の誘導体、有機溶剤、必要に応じてバインダー成分を含有する黒色低反射膜形成用組成物を、塗工した後、乾燥し、黒色膜を形成する。
工程2:基材に接着剤層(樹脂層)を設ける。
工程3:前記接着剤層に前記黒色膜を重ね合わせる。
工程4:前記剥離性シ-トを剥がし、前記黒色膜を前記接着剤層に転移させ、L*値が20以下、400nm~700nmにおける、正反射率の最大値が0.4%以下、散乱反射率の最大値が2%以下、光透過率の最大値が5%以下である黒色低反射膜を形成する。
JIS K0070に従って求めた。
質量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソ-株式会社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソ-株式会社製ガードカラムHXL-H
東ソ-株式会社製TSKgelG5000HXL
東ソ-株式会社製TSKgelG4000HXL
東ソ-株式会社製TSKgelG3000HXL
東ソ-株式会社製TSKgelG2000HXL
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
(アクリル樹脂(C-1)溶液)
撹拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、及び窒素導入管を備えた反応容器に、メタクリル酸メチル20.0部、メタクリル酸0.6部、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル3.0部、メタクリル酸n-ブチル76.4部、及びプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリル0.5部を加え、2時間重合反応を行った。次いで、転化率が98%以上となるまで1時間毎にアゾビスイソブチロニトリルを0.5部加えて重合反応を行った。転化率が98%以上になったことを確認した後、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート50部を加えて希釈した。以上のようにして、固形分濃度40%、Mw=30,000のアクリル樹脂である(C-1)溶液を得た。
バイロン(登録商標)300(東洋紡社製、Mn=23,000、Tg=7℃、OHV=5mgKOH/g、AV=2mgKOH/g未満)を使用した。プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタートで希釈して固形分濃度40%のポリエステル樹脂である(C-2)溶液を得た。
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、ポリエステルジオール24.0部、イソホロンジイソシアネート5.2部、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート7.5部を仕込み、窒素気流下に120℃で4時間反応させ、酢酸エチル7.5部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶液44.2部を得た。次いで、イソホロンジアミン2.2部、ジ-n-ブチルアミン0.1部、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート18部及びメチルエチルケトン7部からなる混合溶液に、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液44.2部を添加して50℃1時間反応させた後、メチルエチルケトン7部を添加して、固形分濃度40%、Mn18,000のポリウレタン樹脂である(C-3)溶液を得た。
(接着剤1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、及び窒素導入管を備えた反応容器にn-ブチルアクリレート60部、メチルアクリレート30部、2-エチルへキシルアクリレート5部、アクリル酸5部、酢酸エチル70部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.10部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、還流温度で7時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、固形分濃度30%、Mw=98万のアクリル樹脂溶液1を得た。
次に、反応容器にトルエン100部を仕込み、滴下装置にメタアクリル酸n-エチル96部、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート4部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.08部を仕込み、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下中で、1時間で滴下した後に、この反応溶液を還流温度で8時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、固形分濃度30%、Mw=3万のアクリル樹脂溶液2を得た。
得られたアクリル樹脂溶液1を65部、アクリル樹脂溶液2を35部、及び酢酸エチル50部を容器に入れ、撹拌混合して、粘着剤1を得た。
[実施例1]
(黒色組成物1)
多孔質黒色顔料(カーボンECP600JD:空隙率80%、比表面積1400m2/g)を1部、分散剤(b1-1)0.352部、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート50部、直径3mmガラスビーズ25部を容器に入れ、撹拌混合し、ペイントシェーカーで120分間分散し、黒色組成物中間体1を得た。
黒色組成物中間体1を40部に対し、アクリル樹脂(C-1)溶液を0.486部加え、黒色組成物1を得た。
(黒色組成物2~82、89~92、101~106)
黒色顔料及び分散剤の種類、質量比及び分散時間を、表1及び表2に示す内容に変更した以外は、黒色組成物1と同様にして、黒色組成物2~82、89~92、101~106を得た。
(黒色組成物83~87)
バインダー成分の種類、及び(A)/(C)質量比を表1及び表2に示す内容に変更した以外は、黒色組成物11と同様にして、黒色組成物83~87を得た。
(黒色組成物88)
多孔質黒色顔料(カーボンECP600JD:空隙率80%、比表面積1400m2/g)を1部、分散剤(b2-5)0.352部、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート50部、直径3mmガラスビーズ25部を容器に入れ、撹拌混合し、ペイントシェーカーで120分間分散し、バインダー成分を含まない黒色組成物88を得た。
ECP600JD:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製カーボン『製品名ECP600JD』、空隙率80%、比表面積1400m2/g
ECP:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製カーボン『製品名ECP』、空隙率60%、比表面積800m2/g
MA110:三菱ケミカル株式会社製カーボン『製品名MA110』、空隙率0%、比表面積110m2/g
[実施例101]
(黒色低反射膜1)
基材であるポリエステルフィルム(東洋紡株式会社、E5101、厚み188μm)に、黒色組成物1をブレ-ドコーターを用いて塗工し、100℃2分間乾燥して、膜厚4.8μmの黒色低反射膜1を得た。
(黒色低反射膜2~88、97~106)
黒色組成物1の代わりに、表2に示される黒色組成物を用い、ブレ-ドコーターの番手で膜厚を調整した以外は、黒色低反射膜1と同様にして、黒色低反射膜2~88、97~106を得た。
(黒色低反射膜89)
剥離性シート(厚さ75μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム)の剥離性表面に、黒色組成物11を塗工、乾燥して、膜厚5.1μmの黒色膜を形成した。
別途、他のポリエステルフィルム(東洋紡株式会社、E5101、厚み188μm)に、接着剤1を塗工、乾燥して、膜厚5.0μmの接着剤層を形成した。
黒色膜と接着剤層とを重ね合わせた状態で、ラミネーター(VA-700:大成ラミネーター株式会社)を用いて80℃、0.4MPa、0.5m/sで加熱加圧した後に、剥離性シートを剥離して、黒色低反射膜89を得た。
(黒色低反射膜90~94)
黒色組成物11の代わりに、表3に示す黒色組成物を用いた以外は、黒色低反射膜89と同様にして、黒色低反射膜90~94を得た。
(黒色低反射膜95)
基材である厚さ2mmの鋼板に、黒色組成物11をスプレー塗装によって塗布し、100℃2分間乾燥して、膜厚5.1μmの黒色低反射膜95を得た。
(黒色低反射膜96)
ポリエステル製の立体状基材に、黒色組成物11をスプレー塗装によって塗布し、100℃2分間乾燥して、膜厚4.8μmの黒色低反射膜96を得た。
得られた黒色膜について、低反射性、及びその他評価(表面粗さ、漆黒性、耐擦傷性)を実施した。結果を表4及び表5に示す。
白色校正板の上に各黒色膜を乗せ、正反射成分と散乱反射成分とを、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、CM-700d)によって、視野角10°、光源D65で、400~700nmの範囲を測定し、400nm~700nmにおける正反射率の最大値と散乱反射率の最大値とを求めた。正反射率の最大値と散乱反射率の最大値は、低い値であるほど良好である。
Taylar Hоbsоn社製のファームタリサーフシリーズi60を用いて5回測定した値の平均値を用いた。測定条件は下記のとおりである。
針の種類;先端2μmダイヤモンドスタイラス
カットオフ周波数λc;0.08mm
測定長;10mm
速度;20mm/min.
白色校正板の上に各黒色膜を乗せ、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、CM-700d)によって、視野角10°、光源D65で測定した。
黒色膜に当てる綿棒の角度を45度に維持して、黒色膜の表面を綿棒で1往復擦り、膜の状態を観察した。
A:膜の剥がれが無い。
B:膜中、擦った面積中の30%未満が剥がれて下地(フィルム)が見える。
C:膜中、擦った面積中の30%以上が剥がれて下地(フィルム)が見える。
特に、空隙率が80%のカーボンを用いた実施例111は、空隙率が60%のカーボンを用いた実施例181に比べて、優れた低反射性を示した。
また、酸性官能基を有し、NH結合を介してベンズイミダゾロン基が結合したトリアジン構造を有する分散剤を用いた実施例111、113、115、118~132は、ベンズイミダゾロン基を有しない実施例133~156に比べて、分散性に優れ、その塗膜は反射率を低下させるに適した良好な表面粗さを有し、より優れた低反射性が発現した。
さらに、酸性官能基を有し、水酸基が2個直接結合したトリアジン構造を有する分散剤を用いた実施例157~177も、同様の理由から優れた低反射性を発現した。
一方、低空隙率のカーボンを使用した比較例101~105は、本願特定の分散剤を組み合わせても低反射性は発現しなかった。また、高空隙率カーボンを用いているが本願特定の分散剤を使用していない比較例106は、良好な分散状態が得られず、さらに本願特定分散剤による可視光吸収効果が得られず、低反射性が発現しなかった。
Claims (10)
- 空隙率が75%以上の多孔質黒色顔料(A)、
有機色素誘導体(b1)(ただしトリアジン構造を有するものを除く)、及びトリアジン誘導体(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の分散剤(B)、
並びに、有機溶剤を含む、黒色低反射膜形成用組成物。 - 空隙率が75%以上の多孔質黒色顔料(A)、
酸性官能基を有する有機色素誘導体(b1)(ただしトリアジン構造を有するものを除く)、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の分散剤(B)、
並びに、有機溶剤を含む、請求項1に記載の黒色低反射膜形成用組成物。 - 前記酸性官能基が、SO3M、CO2M、又はP(O)(OM)2であり、
前記Mが、1~3価のカチオンの一当量である、請求項2に記載の黒色低反射膜形成用組成物。 - 前記分散剤(B)が、前記酸性官能基を有するトリアジン誘導体(b2)を含む、請求項2又は3に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
- 前記酸性官能基を有するトリアジン誘導体(b2)が、水酸基が2個直接結合したトリアジン構造、又は、NH結合を介してベンズイミダゾロン基が結合したトリアジン構造、のいずれかを有する、請求項2~4いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
- 前記分散剤(B)の含有量が、前記多孔質黒色顔料(A)及び前記分散剤(B)の合計量に対して、20質量%以上60質量%以下である、請求項1~5いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
- さらにバインダー成分(C)を含む、請求項1~6いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
- 前記多孔質黒色顔料(A)及び前記バインダー成分(C)の質量比((A):(C))が、60:40~95:5である、請求項1~7いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
- 前記多孔質黒色顔料(A)のBET比表面積が、600m2/g以上である、請求項1~8いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物。
- 請求項1~9いずれか1項に記載の黒色低反射膜形成用組成物を用いた黒色低反射膜が基材上に形成された黒色低反射部材であって、
該黒色低反射膜が、光波長域400nm~700nmにおける正反射率の最大値が0.4%以下、且つ散乱反射率の最大値が2%以下である、黒色低反射部材。
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