JP7155695B2 - 離型紙の製造方法、離型紙、被賦形体および合成皮革 - Google Patents
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Description
このような合成皮革の製造に使用される離型紙は、その表面模様を転写して合成皮革に表面模様を形成させるものであり、賦形に適した表面状態を有する必要がある。
さらに前記工程の後に、第2賦形加工ロール74の針状凸部形状の版面75が、前記積層シート7の表面樹脂層12の賦形部13に、前記工程にて賦形された凹部の深さよりも深い凹部を賦形することを特徴とする離型紙1が開示されている。賦形工程を2段階として、それぞれの工程で賦形するエンボスの深さが異なることから斬新なデザインのエンボス模様であると主張している。
ここで、離型紙1の表面樹脂層12の賦形部13に、大きさの異なる2種類の凹凸形状が存在する。凹凸のピッチ及び高さが大きいほうの凹凸形状を大エンボスと呼び、凹凸形状のピッチ及び高さが小さいほうを小エンボスと呼ぶことにする。ここで大エンボスは、主に離型紙の柄を支配する役割を持ち、小エンボスは主に離型紙の質感(テクスチャー)を支配する役割を持つ。
一般的には小エンボスは、大エンボスのピッチ及び高さのおよそ1/10~1/1000であり、大エンボスの面に沿って存在する。大エンボスと小エンボスについて図2を用いて説明する。図2は離型紙の断面図である。大エンボス25は、紙基材層21と表面樹脂層22を合わせて凹凸加工しており、小エンボス24よりも大エンボス25の大きさが大きい。前記大エンボス25の面に沿って前記小エンボス24が設けられる。
その工夫について説明する。紙基材層11の表面樹脂層12側の面の紙繊維による凹凸形状が前記表面樹脂層12の賦形部13に影響を与え、前記賦形部13に意図しない凹凸形状が現れる。合成皮革に賦形する際に、その凹凸形状が、合成皮革の仕上がりを劣化させてしまう。対策として、紙基材層11の表面に平滑化層14を設け、さらに前記平滑化層14の表面に表面樹脂層12を設けることで、紙基材層11の紙繊維による凹凸形状が表面樹脂層12の賦形部13に現れることがなくなり、模様の賦形が良好となる離型紙1が開示されている。
しかし図2のように、大エンボス25の面に沿って小エンボス24を設けるための技術は開示されておらず、よって大エンボス25の面に沿って小エンボス24をほぼ均一に設けた離型紙の製造は困難である。
前記第2エンボス加工工程79において、前記積層シート7に賦形加工をする際には、前記積層シート7を変形しやすくするために、前記積層シートの7を昇温させる。そのために金属製の前記第2賦形加工ロールを加熱して、前記積層シート7の表面樹脂層22の表面に押し当てることが多い。
しかしながら、従来の第2エンボス加工工程の方法では、前記離型紙2の表面樹脂層22の表面の賦形部23に、不具合が発生することがあった。具体的には、前記小エンボス24を賦形された前記積層シート7が、第2賦形加工ロール74と押圧加工ロール76の間で挟圧されて、前記積層シート7の表面樹脂層22の表面の賦形部23に、第2賦形加工ロール74を押し当てて賦形加工を行う際に、意匠の不具合が発生することがあった。
離型紙の位置ごとに、表面形状の大きさがバラつくことにより、離型紙2の表面樹脂層22の表面の賦形部23の光沢感の均一感が失われ、意匠性が劣化することもあった。
図6は、前記第2賦形加工ロール74の大エンボス9の凸部91が、前記積層シート7に接触している状態を示している。
また、前記第2賦形加工ロール74の外筒面の直径方向の断面は厳密には円弧状であるが、前記第2賦形加工ロール74の外径と比較して前記大エンボス9の大きさはかなり小さいので、図面上では円弧とせず直線で近似して表示している。
大エンボス9の凸部91は、前記表面樹脂層22の大エンボス25の凹部27を賦形し、前記大エンボス9の凸部91と凹部92の間の遷移部93は、前記表面樹脂層22の大エンボス25の凸部28と凹部27の間の遷移部26を賦形する。
なお、離型紙のデザインや製造条件によっては、前記表面樹脂層22の凸部28の小エンボス24は、前記大エンボス9の凹部92に押しつぶされて消滅し、前記大エンボス9の凹部92の表面形状が代わりに転写されてしまうこともある。
また本願発明は、当初に想定していた質感を有する、すなわち第1エンボス加工工程にて第1賦形加工ロールで賦形された小エンボスを備えた離型紙を提供することを課題としている。
さらに本願発明は、当初に想定していた質感を有する、すなわち第1エンボス加工工程にて第1賦形加工ロールで賦形された小エンボスを備えた被賦形体及び合成皮革を提供することを課題としている。
これに対して、本願発明の離型紙の製造方法では、加熱した大エンボス賦形用の賦形加工ロールを積層シートの紙基材層に押し当て、常温の押圧ロールを前記積層シートの表面樹脂層に押し当てて、前記2つのロールで挟圧して、積層シートに凹凸形状を賦形することを特徴とする。
なお、各図においては、分かり易くする為に、部材の大きさや比率を変更または誇張して記載することがある。また、見やすさの為に説明上不要な部分や繰り返しとなる符号は省略することがある。
本願発明の離型紙は、合成皮革が有する被賦形樹脂層に意匠性がある凹凸形状を賦形するためのシートである。昨今では合成皮革に、より天然皮革に近い品質が求められてきており、より微細な凹凸形状の再現が求められている。また、天然皮革の模倣でなく人工的な模様でも、より微細な凹凸形状による意匠性、さらにその意匠が引き立つために模様の均一感が求められている。さらに、高光沢の鏡面仕上げなども求められている。
また、前記紙基材層41と表面樹脂層42との間には、層間の接着性を向上させるためにアンカーコート層(不図示)を形成してもよい。さらに、前記紙基材層41と表面樹脂層42との間には、平滑性向上や目止めの役割、及び接着性の向上を目的とした中間層(不図示)を形成してもよい。
紙基材層41は、離型紙4の支持体となるものである。
前記紙基材層41のパルプとしては、賦形部43を形成する工程や、合成皮革を作製する際の工程に耐えうる強度と平滑性を得るために、針葉樹パルプ(N材)と広葉樹パルプ(L材)を混合したものが好ましい。その場合、強度と平滑性のバランスを取るため、広葉樹パルプ(L材)の混合率は50%~90%が好ましい
前記紙基材層41は、前記離型紙4の充分な耐熱性を得るために、中性紙であることが必要であり、サイズ剤としてアルキルケテンダイマーを用いてサイジングした中性紙が好ましい。
前記紙基材層41の厚さは、上記と同じ理由により、100μm~900μm、好ましくは150μm~400μmのものを使用することができる。
クレーコート層(不図示)は前記紙基材層41の少なくともどちらか一方の面に設けてもよく、無くてもよい。離型紙の用途や要求性能により、クレーコート層は、その有無、および性能などが適宜選定される。前記クレーコート層の目的は、前記紙基材層41の表面の粗面を平滑化し、そのために、前記表面樹脂層42の賦形部43に前記紙基材層41の表面の粗さの影響が出ないで、意匠性が向上するものである。
キャストコート層を有するキャストコート紙の製造方法は、キャストコート層を得る光沢仕上げを行う処理方法によって、ウェット法(直接法)、ゲル化法(凝固法)またはリウェット法(間接法)に大別される。すなわち、キャストコート層が、湿潤状態にあるうちに、加熱された金属製の鏡面ドラムに圧着し乾燥して光沢に仕上げるのが、ウェット法である。また、湿潤状態にあるキャストコート層を凝固液中に通してゲル化状態にした後、加熱された金属製の鏡面ドラムに圧着し乾燥して光沢に仕上げるのがゲル化法である。そして、湿潤状態にあるキャストコート層を一旦乾燥した後、再湿潤液でキャストコート層を再湿潤し、可塑状態にしてから加熱された金属製の鏡面ドラムに圧着し乾燥して光沢に仕上げるのがリウェット法である。
キャストコート紙の要求仕様により、それぞれの製造方法が適宜選定される。
クラフト紙や上質紙等のように表面が比較的粗い材料を紙基材層として用いる場合には、紙基材層の平滑性を向上させる効果は大きい。
前記クレーコート層の厚さも特に限定されないが、10μm~60μmが望ましく、性能とコストのバランスが優れる。
アンカーコート層(不図示)は、前記紙基材層41と表面樹脂層42の接着面に必要に応じて設けられ、前記紙基材層41と表面樹脂層42との接着性を高める機能を有する。
アンカーコート層は、例えば、水溶性、または、水分散型のエマルジョンもしくはディスパージョンのアンカーコート剤を塗布することにより形成できる。
このアンカーコート剤としては、ポリプロピレン系、変性ポリオレフィン系、エチレン-酢酸ビニル共重合体系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリウレタン系、ポリエステル系樹脂のエマルジョンもしくはディスパージョンのほか、ポリ塩化ビニルエマルジョン、ウレタンアクリル樹脂エマルジョン、シリコンアクリル樹脂エマルジョン、酢酸ビニルアクリル樹脂エマルジョン、その他のアクリル樹脂エマルジョン、そして、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体ラテックス、クロロプレンラテックス、ポリブタジエンラテックスなどのゴム系ラテックス、ポリアクリル酸エステルラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテックス、或いはこれらのラテックスのカルボキシル変性物、また、水溶性アンカーコート剤としては、ポリビニルアルコール、水溶性エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキサイド、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、水溶性イソシアネート、水溶性リグニン誘導体などの水溶液を使用することができる。
表面樹脂層42は、その表面に賦形部43が形成されており、合成皮革6を作製する際の賦形型として機能する。
前記表面樹脂層42に含まれる添加物は、特に限定されないが、例えば無機や有機の微粒子との混合物等が含まれていてもよい。
なお、前記表面樹脂層42には、さらに必要に応じて分散剤、粘度調整剤、着色剤、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
なお、前記表面樹脂層42の厚さは賦形部43の形状や大きさとの関係で適宜設定されることが好ましい。
また、準備したフィルムを貼り合わせる方法でもよい。押出ラミネート法、ドライラミネート法、ウエットラミネート法等を挙げることができる。
上記に説明したように、本願発明に係る離型紙4は、その表面に凹凸形状が形成された前記被賦形樹脂層62を有する合成皮革6の作製に好ましく用いることができる。
図8のように、本願発明において被賦形体5とは、被賦形樹脂層52の被賦形部53の表面模様が、本願発明の離型紙4を用いて形成された物品である。
被賦形体は、ロール状の連続シートであってもよく、枚葉シートでもよい。枚葉シートの被賦形体は、被賦形体シート原反から作製されたものであっても、連続シートの被賦形体シートを切断して得たものであってもよい。また、被賦形体5は、シート状に限らず、立体物であってもよい。
前記被賦形樹脂層52の厚さとしては、特に限定されず、用途および凹凸形状の深さによって異なる。
前記被賦形体5の基材層51は、前記被賦形樹脂層52の凹凸形状が形成された側とは反対面に積層された層であり、被賦形樹脂層52を支持している。
前記基材層51の材料には、前記被賦形樹脂層52を支持するとともに、被賦形体5の用途に応じた適切な材料が用いられればよく、木綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維、レーヨン、アセテートなどの再生または半合成繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィンなどの合成繊維、ガラス纖維等の繊維からなる織布、不織布、網布等の布(基布とも言う)、紙、ポリエステルやポリオレフィンの樹脂からなる樹脂フィルム及びガラス織布などの柔らかい材料、金属板、もしくは金属箔、ガラス板、硬質プラスチック、プラスチック厚肉成形品など固い材料から、樹脂の種類や用途に応じて適宜選定することができる。
具体的な被賦形体の用途としては例えば、合成皮革製品、靴、鞄、ソファー、椅子、乗物の座席等の表面材、箱、包装容器、壁紙や床材等の建築物内裝材、冷蔵庫やテレビジョン受像器等の家電製品、及びダッシュボードやドア内装パネル等の自動車部品の表面装飾材等を挙げることができる。
本願発明に係る合成皮革6は、図8に示すように、基材層61と、前記基材層61の一方の面に被賦形部63が形成された被賦形樹脂層62とを備えることを特徴とする。なお、図8は被賦形体5と層構成は同一であるので、同じ図を使用して説明するが、符号は合成皮革対応の符号に読み替える。
基材層61は、合成皮革6を構成し、一方の面に被賦形樹脂層62が設けられている。前記基材層61は特に限定されないが、天然の布地や不織布、人工の布地等、公知の合成皮革に用いられている布帛(基布)を適宜選定して用いることができる。また、基材として、布帛以外の樹脂シート、又はその樹脂シートで被覆された構造物であってもよい。そうした樹脂シートを構成する樹脂材料としては、塩化ビニル、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル-ウレタン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等を挙げることができる。
前記基材層61がロール状である場合の厚さは、巻き取り作業の容易さの観点から、5mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましい。下限についてはシート状の場合と同様、100μm以上が好ましく、500μm以上がより好ましい。
前記被賦形樹脂層62は、上記の基材とともに合成皮革6を構成し、前記基材層61の一方の面に形成されている。前記被賦形樹脂層62の表面は、被賦形部63が形成されている。
まとめると、前記被賦形樹脂層62の厚さは10μm以上200μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以上150μm以下である。
合成皮革6が有する被賦形樹脂層62に凹凸形状を形成するための、本願発明に係る離型紙4の製造方法を説明する。
先ず、合成皮革6の被賦形樹脂層62に形成する被賦形部63に対応する凹凸を有する版面75が形成された第2賦形加工ロール74が準備される。前記版面75には、前記合成皮革6の表面に賦形される前記被賦形部63に対応する凹凸形状が形成されている。言い換えると、この方法で製造された離型紙4を用いると、前記版面75の凹凸形状に対応する凹凸形状を有する合成皮革6を製造することができる。前記第2賦形加工ロール74は、前記離型紙4の上に賦形部43を形成することができる強度を有し、さらにその形成過程での各工程の温度条件や圧力条件等に耐える強度を有するものであれば特に制限されるものでない。前記第2賦形加工ロール74となる材料としては、例えば、ステンレス、鍍金を施した鉄、鍍金を施した銅等を用いることができる。
さらに積層シート7が準備される。前記積層シート7は、紙基材層41と、前記紙基材層41の一方の面に第2賦形加工ロール74の版面75によって凹凸形状が賦形されることになる表面樹脂層42を備えたシートである。
前記紙基材層41と前記表面樹脂層42は直接に接合されていてもよく、また間に中間層を介して接合されていてもよい。中間層としては、接合力を向上させるための層、紙基材層の表面の平滑化層、表面樹脂層の賦形性を向上させるための層などがある。
樹脂73は、押出機70から押出され、前記紙基材層41の上に積層されて、積層シート7が準備される。
紙基材層/樹脂A層/樹脂B層/〔賦形部43面〕
の構成においては、樹脂Aと樹脂Bに要求される物性が異なることがある。樹脂Bは合成皮革を製造する際に温度が上がるために耐熱性を要求されることが多く、樹脂Aは紙基材層と樹脂Bの両方に接着性が求められることが多い。また、樹脂Aは、樹脂Bほどの耐熱性が求められないため、より安価な樹脂を採用してコストを低減することもできる。
前記表面樹脂層42の多層化の方法は、図1の樹脂73を多層として、押出機70から共に押し出してもよい(不図示)。また、多層の樹脂フィルムを準備し、貼り合わせてもよい。あるいは、樹脂Aを接着性樹脂として溶融押出して、樹脂Bからなるフィルムを貼り合わせてもよい。
貼り合わせ方法は、ドライラミネート法、押出ラミネート法など、公知の種々の方法を適用することが可能である。
積層シート7の表面樹脂層42の表面に第1賦形加工ロール72を用いた加工により小エンボスを形成する。すなわち、押出機70より樹脂73を押し出すのと同時もしくは直後に、前記積層シート7を前記押出機70の直下に位置する押圧加工ロール71と前記第1賦形加工ロール72との間で挟圧して、紙基材層41の表面へ表面樹脂層42をラミネートすることで、小エンボス44を形成することができる。前記第1エンボス加工工程を経て作製された積層シート7を図5に示す。従来技術による積層シート7と同じものであるが、本願発明の符号に読み替える。
その際に使用する前記第1賦形加工ロール72としては、前記ロール外筒表面に、エッチング、機械彫刻、ミール彫刻等の手段を用いて凹凸形状を形成されたロールや、ロール外筒表面にクロム鍍金を施した後、トラバース研削、ポリシング加工等がされたミラー系ロールや、またはロール外筒表面にウェットブラスト、ドライブラスト処理等が施されたマット系のロールなどが使用される。
なお、前記第1賦形加工ロール72の表面の性状は、この後の第2エンボス加工工程79での賦形形状等も考慮の上で、離型紙4に求められる意匠性に基づき適宜選定される。
第1エンボス加工工程78を経た積層シート7は、第2エンボス加工工程79に送られる。第2エンボス加工工程79は大エンボス加工を行う工程である。積層シート7の搬送は、第1エンボス加工工程78から第2エンボス加工工程79を直接つないだインライン方式がある。また、第1エンボス加工工程78を完了後に積層シート7を巻き上げてロールにしてから保管し、第2エンボス加工工程79へは、前記ロールから繰り出して供給する方法である、オフライン方式がある。
インライン方式の場合は、反転バー装置(不図示)を通過させることで、積層シート7の表裏を反転させることができる。オフライン方式では、第1エンボス加工工程78完了後に、積層シート7を巻き取りロールにした後に、第2エンボス加工工程79で、積層シート7のロールを、表裏反転して繰り出すことで、積層シート7の表裏を反転させて、第2エンボス加工工程79に供給できる。
オフライン方式のメリットとしては、第1エンボス加工工程後にロールで保管することから、樹脂73の押し出し加工の熱を十分に冷却できることであり、離型紙4の意匠や樹脂の材質によっては、充分に冷却した方が望ましい場合がある。また、第1エンボス加工工程78と第2エンボス加工工程79の生産能力に差がある場合は、第1エンボス加工工程78完了後に、積層シート7をロールにて保管することにより、生産工程のスケジュール作成に柔軟性を持たせることができ、生産工程の効率化、コストダウンに寄与できる。
第2エンボス加工工程について、図1及び図9を用いて説明する。前記積層シート7の紙基材層41の表面49と第2賦形加工ロール74の版面75とを重ねて、押圧加工ロール76と前記第2賦形加工ロール74との間で挟圧して、前記積層シート7に前記版面75の凹凸形状を賦形する。このとき、前記積層シート7の紙基材層41の表面49と前記第2賦形加工ロール74の版面75の少なくとも一部とが接するように、前記積層シート7に第2賦形加工ロール74を重ねて圧力を掛ける。これにより、前記積層シート7の紙基材層41に、第2賦形加工ロール74の版面75に形成された凹凸形状が賦形され、前記紙基材層41の表面樹脂層42側の面が凹凸形状に変形して、前記表面樹脂層42を押す。前記表面樹脂層42の賦形部43は、前記紙基材層41の反対側にあり、押圧加工ロール76と接触する側の面に凹凸形状を形成する。前記押圧加工ロール76は、弾性材料で作製されているか、もしくは前記第2賦形加工ロール74の版面75の凹凸形状に相当する凹凸形状を備えているため、前記表面樹脂層42の賦形部43が凹凸形状に変形することができる。
前記押圧加工ロール76の材質は、木質系繊維からなるペーパーロール、綿花や羊毛などの天然繊維からなるウールンロール、ゴム、エラストマー等の変形しやすい柔らかい材質が選定される。また、金属、セラミック、硬質プラスチックなどの変形しづらい硬い材質でもよい。その際は、前記押圧加工ロール76の外筒面に前記第2賦形加工ロール74の版面75の凹凸形状に相当する凹凸形状を設ける。前記押圧加工ロール76の材質は、離型紙4の層構成、樹脂の種類、用途により適宜選定される。
次に、積層シート7を第2賦形加工ロール74から剥がす。この剥離工程により、表面樹脂層42の表面に賦形部43が形成された離型紙4を得ることができる。
上記の離型紙4の製造方法における各工程では、必要に応じて、加熱工程、冷却工程及び乾燥工程等を適宜含めることができる。また、本願発明に係る離型紙4の製造方法は上記の製造方法に限定されるものではない。
剥離工程後に離型紙4は、ロールまたは枚葉で輸送、保管される。輸送の容易さや、後工程で多くの加工形態を選べることから、ロールの場合が多い。輸送の容易さとは、枚葉積みでの輸送は荷崩れが発生するリスクがあるが、ロールでの輸送は荷崩れが発生しにくいことである。また、多くの加工形態とは、ロールのまま後工程の加工機に供給することや、任意の寸法に裁断できることなど、選択可能なことである。
合成皮革6の製造は、以下の手順により行われる。図10を用いて説明する。
基材層61と、前記基材層61の少なくとも一方の面に設けられた被賦形樹脂層62とを有する積層シート64を準備する工程と、前記被賦形樹脂層62に凹凸形状を形成するための離型紙4を準備する工程と、前記積層シート64の被賦形樹脂層62と前記離型紙4の表面樹脂層42とを重ね合わせて加圧する工程と、重ね合わせて加圧した後の前記離型紙4を前記積層シート64から剥がし、前記積層シート64の被賦形樹脂層62の表面に被賦形部63を形成する工程である。
次に、準備された前記積層シート64の被賦形樹脂層62と、前記離型紙4の表面樹脂層42とを重ね合わせて、加圧する。
その後、重ね合わせて加圧した後の前記離型紙4を前記積層シート64から剥がし、前記積層シート7の被賦形樹脂層62の表面に被賦形部63を形成する。すなわち、前記離型紙4の賦形部43が前記被賦形樹脂層62に賦型することで、前記被賦形樹脂層62の表面に賦形部43のパターンが反転した凹凸形状を形成する。
中でも、熱を加える熱エンボス処理の場合は、紙基材層の地合いによる斑を平滑にすることができるので好ましい。
また、積層シート64の被賦形樹脂層62の材料に応じて、例えばポリビニル系樹脂を用いた場合には、ペーストコーティング法を用いることができ、ウレタン樹脂を用いた場合には、乾式処理を用いることができる。処理の温度、圧力等の条件については特に限定はなく、採用する処理及び樹脂層に含まれる樹脂の種類に応じて適宜設定することができる。
本願発明の離型紙は、合成皮革以外の被賦形体にも展開が可能である。被賦形体用の離型紙の製造方法は、合成皮革用と同じである。
離型紙4の剥離速度や剥離時の温度等の諸条件、並びに、剥離手段については特に限定されない。
<実施例>
紙基材層には、上質紙(坪量125g/m2 AKD 北越紀州製紙製)を準備した。
この紙基材層の一方の面にコロナ処理加工を行い、表面樹脂層として第1のポリプロピレン樹脂(ポリエチレンメルトブレンド サンアロマー製)を305℃で共押出機の第1押出機から、またその上に第2のポリプロピレン樹脂(ホモポリプロピレン サンアロマー製)を共押出機の第2押出機から300℃で、ラインスピード80m/分で押出し、積層シートを得た。第1のポリプロピレン樹脂は、紙基材層と第2のポリプロピレン樹脂との接着性を向上させる特性を持ち、第2のポリプロピレン樹脂は耐熱性を有する。これらの樹脂を多層化して使うことにより、層間の接着性と、耐熱性のバランスが取れた離型紙を製作できた。
なお、積層シートの層構成は、
上質紙(坪量125g/m2)/第1のポリプロピレン樹脂層(15μm)/第2のポリプロピレン樹脂層(15μm)/〔賦形部側〕
である。
前記第2エンボス加工工程の際には、図1に示すように、第2賦形加工ロールは前記積層シートの紙基材層の表面に接触し、前記押圧加工ロールは表面樹脂層と接触する。
実施例で準備した積層シートと同一の積層シートを準備した。積層シートの材料、厚み、第1エンボス加工工程終了までの加工工程は実施例と同一であり、第2エンボス加工工程のみが異なっている。
比較例では、実施例の積層シートを第2エンボス加工工程において、図20のように第2賦形加工ロールと前記積層シートの表面樹脂層を接触させ、紙基材層に押圧加工ロールを接触させる。前記第2賦形加工ロールと前記押圧加工ロールは、実施例と部品および配置は同一であり、積層シートの表裏面が反転しているのみである。また、エンボス加工条件も実施例と同一である。第2エンボス加工工程を終了すると、比較例の離型紙が完成した。この比較例サンプルをS2とする。
また、第1エンボス加工工程後で、第2エンボス加工工程前の積層シートのサンプルをS3とする。
1.外観観察:
目視及び顕微鏡(キーエンス VK-8710)による表面の拡大観察
2.算術平均粗さ測定:形状解析レーザ顕微鏡を使用(キーエンス VK-8710)
外観観察のうち目視検査は、照度400ルクス(明るいオフィス相当)の試験環境下で、上記の手順で製作した離型紙サンプルから切り出した100mm角のサンプルを机の上に置き、被験者5名(品質管理・技術担当者)が500mm上方位置から目視して判定した。離型紙の小エンボスの均一感を主な観点として判定を行った。
また、形状解析レーザ顕微鏡(キーエンス VK-8710)を用いて、約140倍及び約280倍の倍率で撮影した。
離型紙サンプルの実施例、比較例について、形状解析レーザ顕微鏡(キーエンス VK-8710)で測定した。大エンボスの凸部及び大エンボスの凹部で、各々の領域のみが含まれるように測定範囲を指定して、10回測定した数値の平均である。測定範囲の指定では、他の領域にまたがらないように留意している。
従来の離型紙(サンプルS2)の表面樹脂層の大エンボスの凸部の表面粗さRaは1.2μmであり、前記表面樹脂層の大エンボスの凹部の表面粗さRaは6.0μmである。前記大エンボスの凸部と凹部の表面粗さが異なるため、離型紙の表面樹脂層の表面に渡り、小エンボスによる光沢感に均一感がない。
上記の測定結果より、従来の離型紙では表面樹脂層の小エンボスは不均一であり、本願発明の離型紙では表面樹脂層の小エンボスはほぼ均一であり、第1エンボス加工工程の第1賦形加工ロールの小エンボスが保持されていることが分かる。
従来の離型紙の表面樹脂層の大エンボスの凸部の表面形状(図16)、本願発明の離型紙の表面樹脂層の大エンボスの凸部の表面形状(図14)、本願発明の前記表面樹脂層の大エンボスの凹部の表面形状(図15)は、第1エンボス加工工程後かつ第2エンボス加工工程前の積層シートの表面性状(図13)とほぼ同じである。従来の離型紙の表面樹脂層の大エンボスの凸部、本願発明の離型紙の表面樹脂層の大エンボスの凸部及び前記大エンボスの凹部の表面性状は、第2エンボス加工工程にて大エンボスを賦形後も、第1エンボス加工工程で賦形された小エンボスが残っていることを示している。
従来の離型紙の表面樹脂層の大エンボスの凹部の表面性状(図17)は、第1エンボス加工工程後かつ第2エンボス加工工程前の積層シートの表面性状(図13)とは異なり、上に記載した他の3か所の表面粗さよりも粗いことから、第2エンボス加工工程で小エンボスがほとんどの部分でつぶれてしまっており、それに代わり第2加工ロールの微細凹凸形状が賦形されていることを示している。
上記の観察結果より、従来の離型紙では表面樹脂層の小エンボスは不均一であり、本願発明の離型紙では表面樹脂層の小エンボスはほぼ均一であり、第1エンボス加工工程の第1賦形加工ロールの小エンボスが保持されていることが分かる。
表1によると、サンプルNo.S3の表面樹脂層の表面粗さは1.0μmなので、本願発明の離型紙の表面粗さも1.0μmになる可能性があると考えられる。今回測定した本願発明の離型紙の大エンボスの凸部の表面粗さの値1.1μmは上記の数値よりやや粗く、測定誤差や第2エンボス加工工程で小エンボスが第2賦形加工ロールの微細凹凸形状の影響を受けた可能性も考えられる。
したがって、本願発明の離型紙の大エンボスの凸部と、大エンボスの凹部の表面粗さの差は0.3μmとみなすことができ、前記の2つの表面粗さの差が0.3μm小さければ、小エンボスが離型紙の略全面に渡ってほぼ均一である離型紙を得ることができる。
前段落で説明したように、意匠性が優れる本願発明の離型紙の大エンボスの凹部の表面粗さは1.3μm、前記大エンボスの凸部の表面粗さは1.0μmになると考えられる。したがって、本願発明の離型紙の大エンボスの凸部と凹部の表面粗さの比率は、小さいほうの数値を基準として最大値は133%となり、33%以内の違いであれば、小エンボスが離型紙の略全面に渡ってほぼ均一である離型紙を得ることができる。
前段落で説明したように、第2エンボス加工工程前の積層シートの表面樹脂層の表面の表面粗さは1.0μmであり、離型紙の表面樹脂層の表面の表面粗さの最大値が1.3μm以下では、離型紙の略全面に渡って表面粗さの均一感は保たれる。
したがって、本願発明の離型紙の表面樹脂層の表面の表面粗さの最大値と第2エンボス加工工程前の積層シートの表面樹脂層の表面の表面粗さの比率は、第2エンボス加工工程前の積層シートの表面樹脂層の表面の表面粗さを基準として最大値は133%となる。すなわち、第2エンボス加工工程前の積層シートの表面樹脂層の表面の表面粗さを基準として、第2エンボス加工工程後の離型紙の表面粗さと33%以内の違いであれば、離型紙の略全面に渡って表面粗さの均一感は保たれる。
11 紙基材層(従来品)
12 表面樹脂層(従来品)
13 賦形部(従来品)
14 平滑化層
2 離型紙(従来品)
21 紙基材層(従来品)
22 表面樹脂層(従来品)
23 賦形部(従来品)
24 小エンボス(従来品)
25 大エンボス(従来品)
26 遷移部(従来品)
27 大エンボスの凹部(従来品)
28 大エンボスの凸部(従来品)
29 紙基材層表面(従来品)
4 離型紙(本願発明)
41 紙基材層(本願発明)
42 表面樹脂層(本願発明)
43 賦形部(本願発明)
44 小エンボス(本願発明)
45 大エンボス(本願発明)
46 遷移部(本願発明)
47 大エンボスの凹部(本願発明)
48 大エンボスの凸部(本願発明)
49 紙基材層表面(本願発明)
5 被賦形体
51 基材層(被賦形体)
52 被賦形樹脂層(被賦形体)
53 被賦形部(被賦形体)
54 大エンボス(被賦形体)
55 小エンボス(被賦形体)
6 合成皮革
61 基材層(合成皮革)
62 被賦形樹脂層(合成皮革)
63 被賦形部(合成皮革)
64 積層シート(合成皮革)
65 大エンボス(合成皮革)
66 小エンボス(合成皮革)
7 積層シート
70 押出機
71 押圧加工ロール(第1エンボス加工工程用)
72 第1賦形加工ロール
73 樹脂
74 第2賦形加工ロール
75 版面
76 押圧加工ロール(第2エンボス加工工程用)
77 鏡面加工ロール
78 第1エンボス加工工程
79 第2エンボス加工工程
9 大エンボス(第2賦形加工ロール)
91 大エンボスの凸部(第2賦形加工ロール)
92 大エンボスの凹部(第2賦形加工ロール)
93 遷移部(第2賦形加工ロール)
S1 本願発明の離型紙のサンプル
S2 従来の技術による離型紙のサンプル
S3 第1エンボス加工工程後で、第2エンボス加工工程前の積層シートのサンプル
Claims (11)
- 紙基材層と、
前記紙基材層の一方の面に表面樹脂層を積層した積層シートから離型紙を製造する方法であって、
前記表面樹脂層に予め小エンボス加工がされた積層シートを供給する工程と、
前記紙基材層の面に賦形加工ロールを押し当て、かつ前記表面樹脂層の面に押圧加工ロールを押し当てて、挟圧することで前記積層シートに大エンボス加工を施す工程と、
を備えることを特徴とする離型紙の製造方法。 - 前記賦形加工ロールは加熱され、前記押圧加工ロールは常温であることを特徴とする請求項1の離型紙の製造方法。
- 紙基材層と、
前記紙基材層の一方の面に表面樹脂層を積層した積層シートから離型紙を製造する方法であって、
前記紙基材層の一方の面に前記表面樹脂層を形成させた積層シートを製造する工程と、
前記積層シートを製造する工程と同時もしくは直後に、前記表面樹脂層の表面に小エンボスの形状を賦形するための第1賦形加工ロールの版面を重ねて前記表面樹脂層の表面に小エンボスの形状を賦形する第1エンボス加工工程と、
前記小エンボスの形状を賦形する工程の後に、前記積層シートの前記紙基材層の表面に前記小エンボスの形状より大きい形状である大エンボスの形状を賦形するための第2賦形加工ロールの版面を重ねて、かつ前記表面樹脂層の面に押圧加工ロールを押し当てて、挟圧することで前記小エンボスよりも大きい形状の大エンボスの形状を前記積層シートに賦形する第2エンボス加工工程と、
上記の工程を経て凹凸形状が賦形された前記積層シートである前記離型紙を前記第2賦形加工ロールから剥がす工程と、
を備えることを特徴とする離型紙の製造方法。 - 前記第2賦形加工ロールは加熱されており、前記押圧加工ロールは常温であることを特徴とする請求項3の離型紙の製造方法。
- 紙基材層と、
前記紙基材層の一方の面に表面樹脂層を設けた離型紙であって、
前記紙基材層には大エンボスが形成されており、
前記紙基材層の大エンボスの形状に沿った表面樹脂層の表面には前記大エンボスの大きさよりも小さなエンボス形状である小エンボスが形成され、
前記小エンボスは前記表面樹脂層の表面に沿って形成され、
前記大エンボスの凸部に形成される小エンボスの表面粗さと、前記大エンボスの凹部に形成される小エンボスの表面粗さとの差が、0.3μm以内であることを特徴とする離型紙。 - 紙基材層と、
前記紙基材層の一方の面に表面樹脂層を設けた離型紙であって、
前記紙基材層には大エンボスが形成されており、
前記紙基材層の大エンボスの形状に沿った表面樹脂層の表面には前記大エンボスの大きさよりも小さなエンボス形状である小エンボスが形成され、
前記小エンボスは前記表面樹脂層の表面に沿って形成され、
前記大エンボスの凸部に形成される小エンボスの表面粗さと、前記大エンボスの凹部に形成される小エンボスの表面粗さの差が、上記の2つの表面粗さの数値の小さい方の数値を基準として33%以内であることを特徴とする離型紙。 - 紙基材層と、
前記紙基材層の一方の面に表面樹脂層を設けた離型紙であって、
前記紙基材層には大エンボスが形成されており、
前記紙基材層の大エンボスの形状に沿った表面樹脂層の表面には前記大エンボスの大きさよりも小さなエンボス形状である小エンボスが形成され、
前記小エンボスは前記表面樹脂層の表面に沿って形成され、
前記小エンボスの形状を賦形する第1エンボス工程の後に、第2エンボス加工工程にて賦形される前記小エンボスよりも大きい形状の前記大エンボスが形成され、
前記大エンボスを賦形した後の小エンボスは、前記大エンボスを賦形する前の小エンボスの形状に近似していることを特徴とする離型紙。 - 前記大エンボスを賦形した後の小エンボスの表面粗さと、前記大エンボスを賦形する前の小エンボスの表面粗さの差が、0.3μm以内であることを特徴とする請求項7に記載の離型紙。
- 前記大エンボスを賦形した後の小エンボスの表面粗さと、前記大エンボスを賦形する前の小エンボスの表面粗さの差が、上記の2つの表面粗さの数値の小さい方の数値を基準として33%以内であることを特徴とする請求項7に記載の離型紙。
- 請求項5から9までのいずれか1項に記載された離型紙の凹凸形状が、被賦形樹脂層の表面に賦形された被賦形体。
- 請求項5から9までのいずれか1項に記載された離型紙の凹凸形状が、被賦形樹脂層の表面に賦形された合成皮革。
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