JP7154921B2 - 光学機器、レンズフード、光学機器の製造方法、およびレンズフードの製造方法 - Google Patents

光学機器、レンズフード、光学機器の製造方法、およびレンズフードの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7154921B2
JP7154921B2 JP2018185430A JP2018185430A JP7154921B2 JP 7154921 B2 JP7154921 B2 JP 7154921B2 JP 2018185430 A JP2018185430 A JP 2018185430A JP 2018185430 A JP2018185430 A JP 2018185430A JP 7154921 B2 JP7154921 B2 JP 7154921B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
optical device
lens hood
lens
reflective layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018185430A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020056826A5 (ja
JP2020056826A (ja
Inventor
洋二 寺本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP2018185430A priority Critical patent/JP7154921B2/ja
Publication of JP2020056826A publication Critical patent/JP2020056826A/ja
Publication of JP2020056826A5 publication Critical patent/JP2020056826A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7154921B2 publication Critical patent/JP7154921B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Lens Barrels (AREA)
  • Blocking Light For Cameras (AREA)

Description

本発明は、カメラやビデオ、放送機器などのレンズ鏡筒を含む光学機器に関する。
光学機器には屋外で使用することを想定した場合、高い光学性能だけではなく様々な温度変化が生じる環境下での撮影においても光学性能を維持できることが求められている。
このような温度変化が生じる環境下でも光学性能を維持できる光学機器として、赤外光を反射する層と、断熱層を具備する光学機器が特許文献1に提案されている。
特許文献1は、レンズフードの熱がレンズ鏡筒に伝わることにより、レンズ鏡筒の外周および内蔵部品の温度が過度に上昇する問題を解決している。レンズフード外表面に太陽光を反射する反射層を具備することでレンズフードに入る熱量を少なくし、レンズフードとレンズ鏡筒の間に断熱層を備えることで、熱量をレンズ鏡筒へ流入することを抑制し、問題を解決している。
特許文献2は、フード全体やレンズ鏡筒の前面や上部、に太陽光を反射する反射膜を具備することで、鏡筒に入る熱量を抑制している。
例えば光学機器の外表面に設ける膜は、屋外で使用した際に太陽光による部材の温度上昇を抑制する機能を有する。従来、太陽光による部材の温度上昇を抑制する方法としては、図1に示すように太陽光による入射光1を基材5上に形成した反射膜4で反射光2として反射する方法が知られている。入射光1に対する反射光2の比率を大きくすることで、透過光3による発熱を抑制することが出来る。反射率を上げるための材料としては可視光から赤外線領域の反射率が高い白色のチタニアや、赤外線反射率が高い顔料が用いられることが多い。太陽光エネルギー分布は可視光領域で47%、赤外領域で50%であり、可視光から赤外領域での広い範囲での反射率が高いことが求められる。
特開2010-160416号公報 特開2010-38957号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2のようにレンズフードおよびレンズ鏡筒といった光学機器の表面に反射膜や断熱層を設けるだけでは、光学機器内側の温度上昇の抑制については十分ではない。屋外使用時の、太陽光の部分的な照射により、照射部近傍の光学機器外周部の内側の温度上昇による、内側近傍の空気の温度の偏り(陽炎)ができてしまう。
例えば、光学機器の内側やレンズフードの内側は、撮影に不要な迷光を防止するために、一般的に黒色にすることで太陽光の反射を抑えている。このため、太陽光の可視光および赤外光の吸収により、内側の温度が上昇することで内側の空気の温度上昇し、空気の屈折率分布が発生する。これより、撮影時にフォーカスがずれてしまうことで、画質が悪化することがある。
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、温度上昇を効果的に抑制し、かつ、不要な可視光による迷光を防止できる光学機器を提供するものである。
本発明の光学機器は、レンズ鏡筒の内側表面の、太陽光が直接照射される可能性のある部分が、L*値が5%以上30%以下であり、近赤外波長域の日射反射率が20%以上45%以下であることを特徴とする。
本発明の光学機器は、レンズ鏡筒の内側表面の、太陽光が直接照射される可能性のある部分に、樹脂、有機顔料、および無機顔料を含み、L*値が5%以上30%以下で近赤外波長域の日射反射率が20%以上45%以下である、赤外反射層が形成されていることを特徴とする。
本発明のレンズフードは、内側表面の少なくとも一部が、L*値が5%以上30%以下であり、近赤外波長域日射反射率が20%以上45%以下であることを特徴とする。
本発明の塗料は、樹脂と、有機顔料と、無機顔料と、を含む塗料であって、
前記塗料の硬化物が、L*値が5%以上30%以下であり、かつ近赤外波長域の日射反射率が20%以上45%以下であることを特徴とする。
本発明のレンズフードの製造方法は、樹脂と、有機顔料と、無機顔料と、を含む第一の塗料を基材の光入射面に塗布して遮熱層を形成する工程と、樹脂と、有機顔料と、無機顔料と、を含む第二の塗料を基材の前記光入射面とは反対側の面に塗布して赤外反射層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、光学機器を屋外で使用する場合においても、光学機器内側の温度上昇を抑制可能な光学機器を提供できる。
基材の上面に光学機器の表面に設ける膜を形成した際の太陽光の反射および吸収の状態を示す断面模式図である。 本実施形態の光学機器の模式図である。 本実施形態の光学機器の拡大断面図である。 本発明の光学機器の温度測定方法の模式図である。 分光光度計による反射率の測定形態を示す模式図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
本実施形態によれば、光学機器を屋外で使用する場合においても、可視光の迷光を防止しつつ、かつ光学機器の温度上昇を抑制する方法について説明する。
[光学機器]
まず、図2を用いて、本実施形態の光学機器について説明する。図2において、図2(a)は、本実施形態の光学機器の一例の外観図、図2(b)は図2(a)の一部を示す外観図、図2(c)は図2(b)の断面図を示す。図2において、21はレンズ、22、23は、レンズを保持するためのレンズ鏡筒であり、本実施形態において、レンズ21と、レンズを保持するためのレンズ鏡筒(22、23)とを有する装置を光学機器と称する。レンズ鏡筒は、複数の部材(22、23)からなっていてもよい。また、光学機器は、レンズを透過する光によって画像を形成する画像形成装置であるカメラ27を含んでいてもよく、レンズ鏡筒(22、23)は、画像形成装置27に装着するための装着部25を有していてもよい。また、光学機器は、レンズ21を複数有していてもよい。複数のレンズのうち、一番外側のレンズ21a(画像形成装置あるいは装着部から一番遠い側のレンズの外側にレンズフード28を有していてもよい。光学機器は、レンズを保持するためのレンズ鏡筒(22、23)やレンズフード28の内側表面26に、赤外反射層が形成されている。
≪レンズ鏡筒の構成≫
図3は、図2(b)のA部分の拡大図である。レンズ鏡筒23は、基材31と、基材31の内側表面に形成された赤外反射層32と、基材の外側表面に形成された遮熱層33とからなっている。内側表面に形成された赤外反射層32は、レンズ鏡筒の少なくとも一部分に形成されていればよい。特に、一番外側のレンズ21aよりさらに外側の、外気と連通している部分の内側表面(図2(b)の26)、およびまたはレンズフードの内側表面(図2(a)の26)に形成されることが好ましい。また、レンズ鏡筒23の外側表面の少なくとも一部には、光学機器を物理的、環境変化などから守るために遮熱層33が設けられている。レンズ鏡筒が二重になっている部分については、最も外側の表面(図2(b)においてはレンズ鏡筒23の外側表面)に遮熱層33を形成する。そして、最も内側の表面(図2(b)においてはレンズ22の内側表面)に赤外線反射層32を形成することが好ましい。
屋外で使用される場合、太陽光は光学機器に対してある角度から入射するために、光学機器の外側表面だけでなく、レンズフードあるいはレンズ鏡筒の内側表面26にも直接照射されてしまう場合がある。
太陽光が直接照射される可能性がある光学機器の内側表面26に、赤外線反射層32(近赤外波長域日射反射率の高い膜)を形成することで、内側の温度上昇を抑制することができる。
また、外側表面に遮熱層33を設けることで、光学機器のレンズ鏡筒の内部への熱の流入を抑えることができるため、光学機器の内部の温度上昇を抑制できる。また、遮熱層33と基材31との間に断熱層を設けてもさらに温度上昇を抑制できる。
本実施形態の光学機器に形成される赤外反射層32は少なくとも基材よりも内側に形成される。基材31上に直接形成されていてもよいしプライマー層を介して形成されていてもよい。また、基材に金属を用いる場合には、必要に応じて金属表面に化成処理を施してもよい。
(赤外反射層)
赤外反射層は、L値が5%以上30%以下であり、近赤外波長域日射反射率が20%以上45%以下であることが好ましい。L値が5未満であると、可視光の吸収が大きくなるため、光学機器内側の温度が上昇し画質が悪化してしまう。また、L値が30より大きいと、可視光の反射が大きくなるため、迷光が多くなるため画質が悪化する。
近赤外波長域日射反射率が20%未満であると、赤外光の吸収が大きくなるため、光学機器内側の温度が上昇してしまい、画質の悪化を引き起こす。近赤外波長域日射反射率が45%よりも大きくなると、必然的にL値が上昇してしまい、迷光が大きくなるために、画質が悪化する。
赤外反射層を形成するための方法は特に限定しないが、フィルムを張ってもよいし、赤外反射性を有する赤外反射塗料を塗布する方法などもある。光学機器の内側は、平坦形状でないことから塗料を塗布することが好適に用いられる。
本実施形態の赤外反射層の厚みは10μm以上70μm以下であることが好ましい。厚みが10μm未満になると、近赤外波長域日射反射率が低下する恐れがある。また、厚みが70μmを超えると、他部品との組み込みの際、中心が偏る可能性があり、光学機器の位置精度に悪影響を及ぼすことがある。赤外反射層の起毛部や凹凸部は厚みに含まないが、起毛部や凹凸部により、厚みが70μmを超える場合は、組み込み嵌合部には、起毛や凹凸を形成しないことが好ましい。
(遮熱層)
遮熱層は、光学機器を物理的、環境変化などから守れれば、特に限定しないが、太陽光によるエネルギーを効果的に反射することで、光学機器内側の温度上昇を抑えることが可能である。好適には、近赤外波長域日射反射率が55%以上85%以下である。近赤外波長域日射反射率が55%未満であると、赤外光の吸収が大きくなるため、光学機器外側の温度が上昇してしまう。近赤外波長域日射反射率が85%よりも大きくなると、L値が上昇してしまい、太陽光を強く反射することで、周囲の撮影者に不快感を与えてしまう。
[本実施形態に係る塗料]
赤外反射層と遮熱層は基本的には、同じ材料を含む塗料を用いることができ、本実施形態に係る塗料は、少なくとも、樹脂、有機顔料、無機顔料を含む。ただし、遮熱層のL値は、高くても問題ないが、赤外反射層のL値は、迷光が発生してしまうため30%以下に抑える必要がある。L値は、有機顔料の含有量により調整可能であり、この有機顔料の含有量を調整することにより本実施形態の赤外反射層と遮熱層の塗料を得ることが可能になる。
(樹脂成分)
次に本実施形態の赤外反射層と遮熱層の塗料に含まれる樹脂について説明する。
本実施形態の樹脂の一例としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種類を用いても複数の種類を含んでも構わない。
また、本実施形態に係る塗料に含まれる樹脂の含有量は、塗料全体を100重量%とした場合、5重量%以上80重量%以下が好ましく、15重量%以上50重量%以下であるとより好ましい。本実施形態に係る塗料に含まれる樹脂の含有量が5重量%未満になると基材との密着性が悪化したり、層の靭性が低下する恐れがある。また、本実施形態に係る塗料に含まれる樹脂の含有量が50重量%を超えると、太陽光の日射反射率が悪化する恐れがある。塗料は主に、塗膜にした際に、揮発して無くなる溶剤成分と、層中に残る樹脂成分と顔料から構成される。よって塗料中の樹脂成分や顔料の含有量は、塗料を各条件下で乾燥・焼成して固形分濃度を求める。
(有機顔料)
本実施形態に係る塗料に含まれる有機顔料としては、アゾ系有機顔料や、ペリレン系有機顔料が用いられる。
アゾ系有機粒子としては、アゾ基を有する化合物であれば任意の粒子を用いることが出来る。本実施形態のアゾ系有機粒子の色としては、黒色系、黄色系、赤色系、橙色系などが挙げられるが、黒色系が太陽光による退色が起こった際の、色味変化(a*、b*)が少ないのでより好ましい。また、太陽光の反射率が高いことが好ましく、アゾ系有機粒子単独での日射反射率が10%を超える材料を選択することが好ましい。アゾ系有機粒子の一例としては、ニッケルアゾ顔料、不溶性アゾ系顔料、溶性アゾ系顔料、高分子量アゾ系顔料、アゾメチンアゾ顔料系顔料等が挙げられる。これらのアゾ系有機粒子は1種類を用いても複数の種類を含んでも構わない。
本実施形態の有機顔料の平均粒径としては0.1μm以上5.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上2.0μm以下である。本実施形態の有機顔料の平均粒径が0.1μm未満になると粒子の表面積が増加するため、耐光性が悪化し、変色する恐れがある。また、本実施形態の有機顔料の平均粒径が5.0μmを超えると層の凹凸が大きくなり、層の厚さの精度が悪化するため、本実施形態をレンズ鏡筒に用いた場合、ピント合わせなどの精度が低下する恐れがある。
本実施形態における平均粒径とは、複数の樹脂粒子それぞれの粒径の平均である。樹脂粒子の平均粒径は、水中へ分散させレーザー散乱法により分析することにより求められる。本実施形態では、樹脂粒子の平均粒径は、体積平均粒径である。
本実施形態の有機顔料の平均粒子径は、有機顔料の凝集による空気界面側への偏析を発生させやすくするためにも、後述する無機顔料の平均粒子径よりも大きいことがより好ましい。
また有機顔料には任意の形状の粒子を用いることができる。その一例としては、球状、立方体、楕円形、板状、層状、鎖状、中空、星形、針状、異形状などがあげられる。その中でも、有機顔料の凝集による空気界面側への偏析を発生させやすい板状、層状、鎖状などの形状がさらに好ましい。
これらの有機顔料は1種類を用いても複数の種類を含んでも構わないが、意匠性と遮熱性を損なわない範囲で用いることが好ましい。
本実施形態に係る赤外反射層の塗料に含まれる有機顔料の含有量は、塗料全体を100重量%とした場合、1.0重量%以上5.0重量%以下が好ましく、より好ましくは1.5重量%以上4.5重量以下である。有機顔料の含有量が1.0重量%未満になると可視光の反射が大きくなるため、迷光が多くなり画質が悪化する。また、有機顔料の含有量が5.0重量%以上になると、可視光の吸収が大きくなるため、光学機器内側の温度が上昇し画質が悪化してしまう。
本実施形態に係る遮熱層の塗料に含まれる有機顔料の含有量は、塗料全体を100重量%とした場合、0.01重量%以上1.0重量%以下が好ましく、より好ましくは0.015重量%以上0.5重量以下である。有機顔料の含有量が0.01重量%未満になると層の明度が高くなりすぎて意匠性が悪化する。また防汚性も悪化する恐れがある。また、有機顔料の含有量が1.0重量%以上になると、層の明度が低くなりすぎて遮熱性が悪化する。
(無機顔料)
本実施形態に用いられる無機顔料としては、遮熱性に優れたものであれば任意の無機顔料を用いることができるが、表面がシリカで被覆されたチタニア粒子、または表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子を含むことが好ましい。色の調整のために着色された無機顔料をさらに含むことが好ましい。表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子が着色された無機顔料であってもよい。本実施形態においては、表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子を単に、TiおよびOを含む粒子と称する場合がある。
チタニアはそのもの自身が持つ高い屈折率のため、層を所望の屈折率に調整することが容易である。また、自身が持つ明色のため、塗膜を所望の色味に調整することが容易であり、さらに、十分に微粒化された微粒子が比較的安価に多数上市されていることからも好適に用いることができる。
本実施形態における層に含まれる表面がシリカで被覆されたチタニア粒子の含有量は、樹脂組成物に対して10重量%以上70重量%以下であることが好ましく、20重量%以上60重量%以下であることが更に好ましい。10重量%未満であると十分な赤外反射効果を得ることができない場合があり、また70重量%より多い場合は層として十分な膜質が得られない場合がある。表面がシリカで被覆された粒子を用いると、光触媒活性を抑制できるため周囲の樹脂劣化を低減することができる。
また、本実施形態における表面がシリカで被覆されたチタニア粒子の平均粒子径は0.1μm以上1.5μm以下であることが好ましく、さらには0.1μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。0.1μm未満であると粒子の表面積が増大し、表面がシリカで被覆されたチタニア粒子が凝集しやすくなり、好適に層中に分散させることが困難となる。また、1.5μmより大きいと、詳しくは後述するが、有機顔料の空気界面側への偏析を阻害してしまい、意匠性と遮熱性を両立するための十分な性能を発揮できなくなる。なお、本実施形態における表面がシリカで被覆されたチタニア粒子とは、少なくとも表面の一部がシリカで覆われているものと定義する。また、本実施形態における表面がシリカで被覆されたチタニア粒子の平均粒子径とは、凝集していない粒子における体積球相当直径を指すものとする。
本実施形態における表面がシリカで被覆されたチタニア粒子はその屈折率と平均粒子径が所望の条件を満足する限り、気相法、液相法等公知の方法により製造することができる。例えば、少なくとも酸素を含む雰囲気下において、火炎中に金属粉を投入し燃焼させることで二酸化チタン微粒子を合成する方法や、触媒存在下でチタンアルコキシドを加水分解、重縮合するゾルーゲル法等公知の方法等が挙げられる。また、チタニアはルチル構造やアナターゼ構造といった結晶構造を有することが知られており、アモルファス構造のそれと比較してより高い屈折率を示すが、所望の粒子径を満たすものであればどの結晶形態にも寄らず好適に用いることができる。
本実施形態に係る無機顔料は、前述した表面がシリカで被覆されたチタニア粒子の他に、着色された無機顔料を含んでいてもよい。本実施形態の赤外反射型の着色された無機顔料の含有量は、0.01重量%以上2.0重量%以下が好ましく、より好ましくは0.02重量以上1.5重量%以下である。本実施形態の赤外反射型の着色された無機顔料の含有量が0.01重量積%未満になると太陽光照射時の光触媒作用が少ないため、本実施形態の層の外観色味変化が大きくなる恐れがある。本実施形態の赤外反射型の着色された無機顔料の含有量が2.0重量%を超えると遮熱性能が悪化する恐れがある。また、本実施形態の赤外反射型の着色された無機顔料は層中に均一に分散していることがより好ましい。
さらに、表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子を含んでいてもよい。TiおよびOを含む粒子は光触媒作用によって樹脂の分子鎖を切断する必要があるので、耐光性を有するシリカ等の被覆が少ないもしくはないことが好ましい。これは、表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子の光触媒作用によって、太陽光が照射されると層の明度が低くなるように変化させたいからである。その理由について次に述べる。有機顔料として前述したアゾ系有機粒子は、分子中にアゾ基であるR-N=N-R‘の化学構造を持つ有色の顔料である。アゾ系有機粒子は、無機顔料と比較して赤外線の反射性能が高い特徴を持つが、アゾ系有機粒子は太陽光が照射されるとアゾ基が切断されて2RとN2になる。アゾ系有機粒子はアゾ系有機粒子に含まれるN=Nおよびその周囲の原子配置により色を発現しているため、N=Nが切断されると色が消失し、明度が高くなってしまう。つまり、光学機器等の物品の表面に形成された層の色が大きく変化してしまう場合がある。この変化は、アゾ系有機粒子の量が少ないほど顕著にあらわれる。
一方、TiおよびOを含む粒子10は粒子中のTiO部分が太陽光による光触媒作用で励起して励起したTiおよびOを含む粒子となる。太陽光により励起したTiおよびOを含む粒子は電子(e-)を樹脂に放出し、樹脂の分子鎖は電子エネルギーによって切断される。このことにより、樹脂は変色した樹脂となり明度が低下する。
このように、本発明に係る層は、太陽光の照射により、アゾ系有機粒子の明度は高く変化する一方で、TiおよびOを含む粒子の明度は低く変化するため、全体としてはキャンセル効果で色の変色が抑制される。TiおよびOを含む粒子は、TiおよびOのみを含む粒子(例えばチタニア粒子)、およびまたは、TiおよびOの他に1種類以上の無機金属を含む粒子を含む。本実施形態のTiおよびOの他に1種類以上の無機金属を含む粒子の一例としては、(Ti、Ni、Sb)Ox、(Ti、Cr、Sb)Oxが挙げられる。また、(Ti、Fe、Zn)Ox、(Co、Cr、Zn、Al、Ti)Ox、(Co、Cr、Zn、Ti)Ox、(Co、Al、Ni、Ti)Ox等が挙げられる。また、本発明のTiおよびOを含む粒子の一例としては、上記の(Ti、Ni、Sb)Ox、(Ti、Cr、Sb)Ox、(Ti、Fe、Zn)Oxが挙げられる。また、(Co、Cr、Zn、Al、Ti)Ox、(Co、Cr、Zn、Ti)Ox、(Co、Al、Ni、Ti)Oxが挙げられる。TiおよびOを含む粒子を含む場合、その含有量は、1.6重量%以下が好ましい。
(シリカ)
本実施形態では、さらにシリカを含んでいてもよい。平均粒径は、10nm以上110nm以下であることが好ましい。平均粒径は、10nm以上110nm以下であると、表面がシリカで被覆されたチタニア粒子のシリカの微小欠陥を埋める効果があり、無酸素雰囲気下での変色を抑制する効果がある。本実施形態のシリカは、平均粒径が10nm未満になると、第二のシリカの微小欠陥を埋める力が低下するので無酸素雰囲気下での変色を抑制する効果が悪化する恐れがある。また、本発明のシリカは、平均粒径が110nmを超えると酸化チタンへの吸着力が低下するため、無酸素雰囲気下での変色低減効果が悪化する恐れがある。
シリカの形状は任意のものを用いることが出来る。シリカの形状の一例としては、球形、不定形、星形、鎖状、中空、多孔質が挙げられる。これらのシリカは、1種類を用いても複数の種類を含んでも構わない。
シリカの含有量は、塗料中の不揮発成分に対して0.6質量%以上14質量%以下であり、好ましくは1質量%以上10質量%以下である。シリカの含有量が0.6質量%未満になると、シリカで被覆されたチタニア粒子のシリカの微小欠陥を埋めきれないため、無酸素雰囲気下での変色が悪化する恐れがある。また、本発明の第一のシリカの含有量が14質量%を超えると、塗膜のヘイズが悪化するため、反射率が悪化する恐れがある。
(分散剤)
本実施形態の塗料に含まれる分散剤としては、無機顔料に比べて有機顔料をより凝集させる作用を有するものであれば適用することができる。特にアルキロールアンモニウム塩を含むことが好ましい。本来、分散剤とは、顔料の表面に吸着して相互に離間させながら、顔料間の距離を一定に保ち、顔料同士が凝集するのを防ぐことが役割であるが、本実施形態における分散剤は有機顔料を凝集させ、無機顔料は分散させることが好ましい。
また、本発明の分散剤は少なくとも酸基を有していることが好ましい。また本発明の分散剤は酸価(mgkOH/g)が30以上100以下であることが好ましい。酸価(mgkOH/g)が30以上100以下の範囲だとより適度に有機顔料を空気界面側に析出させることができる。また、有機顔料に対する分散剤の添加量は、分散剤の方が多いことが好ましい。分散剤の方が少ない場合は一部の有機顔料が分散し、空気界面側への偏析が少なくなる。
また本発明の分散剤の含有量は0.1重量%以上10.0重量%以下が好ましく、より好ましくは0.15重量%以上7.0重量%以下である。分散剤の含有量が0.1重量%未満になると遮熱性が悪化する。また、分散剤の含有量が10.0重量%以上になると、層の屈折率が低くなり、屈折率差による反射が小さくなる。
(溶媒)
次に、塗料に含まれる溶剤について説明する。
溶剤としては、任意の材料を用いてよい。溶剤の一例としては、水、シンナー、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトンが挙げられる。また、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレン、アセトン、セロソルブ類、グリコールエーテル類、エーテル類が挙げられる。これらの溶剤は、1種類を用いても複数の種類を含んでも構わない。
本発明の塗料の好ましい粘度は、10mPa・s以上10000mPa・s以下であり、より好ましくは20mPa・s以上1000mPa・s以下である。塗料の粘度が10mPa・s未満になると塗布後の遮熱層の厚さが薄くなる箇所が生じる場合がある。また、10000mPa・sを超えると、塗料の塗布性が低下する恐れがある。
(その他の添加剤)
本実施形態の光学機器に用いる塗料は、その他の任意の添加材を含んでいてもよい。その一例としては、硬化剤、硬化触媒、可塑剤、チキソ性付与剤、レベリング剤、艶消し剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤等が挙げられる。
≪塗料の製造方法≫
以下に、本実施形態の塗料の製造方法について説明する。
本実施形態の光学機器上面の層を形成するための塗料の製造方法は、本発明の有機粒子および無機顔料を塗料中に分散できれば任意の方法を用いることが出来る。一例としては、ビーズミル、ボールミル、ジェットミル、三本ローラー、遊星回転装置、ミキサー、超音波分散機、ホモジナイザー等が挙げられる。
[赤外反射層および遮熱層]
以下に、本実施形態の赤外反射層および遮熱層の材料構成について説明する。
本実施形態の赤外反射層および遮熱層は、少なくとも樹脂、有機顔料、および無機顔料を含む。
≪材料構成≫
(樹脂成分)
本実施形態の樹脂の含有量は、20面積%以上90面積%以下が好ましく、より好ましくは30面積%以上80面積%以下である。本実施形態の樹脂の含有量が20面積%未満になると基材との密着性が悪化する恐れがある。また、本実施形態の樹脂の含有量が90面積%を超えると、太陽光の日射反射率が悪化する恐れがある。
(有機顔料)
本実施形態の赤外反射層の有機顔料の含有量は2.0面積%以上7.0面積%以下が好ましく、より好ましくは2.5面積%以上6.5面積%以下である。有機顔料の含有量が2.0面積%未満になると可視光の反射が大きくなるため、迷光が多くなり画質が悪化する。また、有機顔料の含有量が7.0重量%を超えると、可視光の吸収が大きくなるため、光学機器内側の温度が上昇し画質が悪化してしまう。
本実施形態の遮熱層の有機顔料の含有量は0.1面積%以上2.0面積%以下が好ましく、より好ましくは0.15面積%以上1.5面積%以下である。有機顔料の含有量が0.1面積%未満になると層の明度が高くなりすぎて意匠性が悪化する。また防汚性も悪化する恐れがある。また、有機顔料の含有量が2.0面積%以上になると、層の明度が低くなりすぎて遮熱性が悪化する。
(無機顔料)
本実施形態の明度を調整するための無機顔料の一例である表面がシリカで被覆されたチタニア粒子の含有量は、10面積%以上80面積%以下が好ましく、20面積%以上60面積%以下がより好ましい。本実施形態の明度を調整するための無機顔料の含有量が10面積%未満になると着色力が弱く、明度を50以上にすることが困難になる恐れがある。また本実施形態の明度を調整するための無機顔料の含有量が80面積%を超えると層の脆性が悪化し、脆くなる恐れがある。
また本実施形態の着色された無機顔料の含有量は、0.1面積%以上3.0面積%以下が好ましく、より好ましくは0.2面積%以上2.0面積%以下である。本実施形態の着色された無機顔料の含有量が0.1面積%未満になると太陽光照射時の光触媒作用が少ないため、層の外観色味変化が大きくなる恐れがある。着色された無機顔料の含有量が3.0面積%を超えると遮熱性能が悪化する恐れがある。
また、着色された無機顔料は層中に均一に分散していることがより好ましい。
(その他の添加剤)
本実施形態の光学機器に用いる塗料は、その他の任意の添加材を含んでいてもよい。その一例としては、硬化剤、硬化触媒、可塑剤、チキソ性付与剤、レベリング剤、艶消し剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤等が挙げられる。
(基材)
基材としては、任意の材料を用いることが出来るが、金属やプラスチックが好ましい。金属材料の一例としては、アルミニウム、チタン、ステンレス、マグネシウム合金、リチウムマグネシウム合金等が挙げられる。プラスチックの一例としては、ポリカーボネート樹脂、アクリアル樹脂、ABS樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
また、基材の厚みとしては任意の厚みを持つことが出来るが、0.5mm以上5mm以下、より好ましくは、0.5mm以上2mm以下であることが好ましい。厚さが0.5mm未満になるとレンズ鏡筒の形状を保持することが困難である。また、厚さが5mmを超えると部材のコストが高くなる。
(基材)
基材としては、任意の材料を用いることが出来るが、金属やプラスチックが好ましい。金属材料の一例としては、アルミニウム、チタン、ステンレス、マグネシウム合金、リチウムマグネシウム合金等が挙げられる。プラスチックの一例としては、ポリカーボネート樹脂、アクリアル樹脂、ABS樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
また、基材は任意の厚みを持つことが出来るが、0.5mm以上5mm以下、より好ましくは、0.5mm以上2mm以下であることが好ましい。厚みが0.5mm未満になるとレンズ鏡筒の形状を保持することが困難である。また、厚みが5mmを超えると部材のコストが高くなる。
(断熱層)
断熱層に用いるものは、特に限定しないが、赤外反射層や基体よりも熱伝導率が低い材料で形成されていることが好適である。また、断熱層は任意の厚みを持つことが出来るが、0.01mm以上5mm以下、より好ましくは、0.05mm以上2mm以下であることが好ましい。厚みが0.01mm未満になると断熱層としての効果を出すことが困難である。また、厚みが5mmを超えると光学機器の重さが重くなり、ハンドリングが困難になる。
(プライマー層)
プライマーは基材、赤外反射層、断熱層、外周部の密着性を向上させる目的で用いても良い。プライマーとしては、任意の材料を用いることが出来るが、一例としてはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、プライマーには本発明の粒子や本発明以外の粒子、着色剤、分散剤、硬化剤、硬化触媒、可塑剤、チキソ付与剤、レベリング剤、有機着色剤、無機着色剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤、溶媒の残渣が含まれていても構わない。
また、プライマーの膜厚としては2μm以上30μm以下が好ましく、5μm以上20μm以下がより好ましい。膜厚が2μm未満では膜の密着性が低下することがあり、30μmを超えると位置精度に悪影響を及ぼすことがある。
≪本実施形態の光学機器の製造方法≫
(赤外反射層、遮熱層の形成方法)
本実施形態の光学機器の製造方法は、樹脂と、有機顔料と、無機顔料と、を含む第一の塗料を基材の外側に塗布する工程と、樹脂と、有機顔料と、無機顔料と、を含む第二の塗料を基材の内側に塗布する工程と、を含む。
また、本実施形態のレンズフードの製造方法は、樹脂と、有機顔料と、無機顔料と、を含む第一の塗料を基材の外側に塗布する工程と、樹脂と、有機顔料と、無機顔料と、を含む第二の塗料を基材の内側に塗布する工程と、を含む。
第一の塗料による遮熱層、第二の塗料による赤外反射層は、それぞれ厚みが10μm以上70μm以下で本実施形態の塗料を均一に塗布出来れば任意の塗布方法および効果方法を用いることが出来る。
本実施形態の塗布方法の一例としては、ハケ塗り、スプレー塗布、ディップコーティング、転写、インクジェット等が挙げられる。また、層は1層塗りであっても、多層塗りであっても構わないし、意匠性を出すためにシボ加工されていても良い。また、起毛させるために、塗料中にレーヨンや、ナイロン、ポリエステル、アクリル、面などを主原料とした短い糸を混合してもよいし、静電植毛を用いてもよい。
また、本実施形態の赤外反射層の硬化方法としては室温放置しても構わないし、任意の熱により硬化を促進したり、紫外線を与えたりしても構わない。熱を与えて硬化させる方法としては、加熱炉、ヒーター、赤外線加熱等が挙げられる。硬化温度としては、室温から400℃が好ましく、更に室温から200℃が好ましい。
前記第一の塗料の塗料全体を100とした時の前記有機顔料の含有量は、前記第二の塗料の塗料全体を100とした時の前記有機顔料の含有量より少ないことが好ましい。
以下に、本発明における実施例について説明する。
(赤外反射層の形成方法)
実施例1から実施例6および比較例2~4における赤外反射層の形成については、塗料を塗布する手法を用いて作成した。赤外反射層の特性評価は下記の方法で行った。
<赤外反射層の特性評価>
層の特性評価には色差計(SE-7700;日本電色)を用い、明度(L*)を測定した。測定用のサンプルには、金属板で30mm角、厚みが1mmの表面に本発明の赤外反射層を形成して用いた。金属板には、マグネシウム合金を用いた。マグネシウム合金の金属板にスプレー法により50μmの膜厚になるように膜を塗布して焼成し赤外反射層を形成した。焼成後に、色差計で本実施形態の層のL*の値を測定した。
<近赤外波長域日射反射率評価>
以下に、近赤外波長域の日射反射率評価について説明する。近赤外波長域の日射反射率は、図5に示すように、分光光度計(U-4000,日立ハイテク)を用いて反射率を測定した後に近赤外波長域の日射反射率に換算した。
まず、反射率測定方法を説明する。図5に示すように積分球50に対して波長780nmから波長2500nmの入射光1を入射させた。まず、入射光1に対して、5°傾けた試験片を取り付け部51に100%反射が起こるアルミナ焼結体のブランクを設置し、ベースライン測定を行った。続いて、試験片取り付け部51にブランクの替わりに本発明の膜を形成した試験片を設置し、波長780nmから波長2500nmの光を入射させ、検出器52で検出して反射率を測定した。次に、測定した反射率にJIS-K5602(塗膜の日射反射率の求め方)に基づいて、重み付けの数値(重価係数)を掛け合わせて積分し、積分値より近赤外波長域日射反射率を算出した。
実施例1から実施例7および比較例2~4における赤外反射層22による温度および温度差測定およびピントズレ抑制効果測定は下記のように行った。
≪温度センサによる温度および温度差測定≫
本発明の光学機器の温度および温度差測定方法について図4を用いて説明する。温度センサは、撮像装置41を取り付けた光学機器1のレンズ鏡筒42およびレンズフード43の外周部材内側に光軸方向に対向して上面側と下面側に設け(不図示)、三脚44を取り付けた。太陽光の替わりに疑似太陽45として、ハイラックスMT150FD6500K(岩崎電気)を光学機器1のレンズフード43の45°上面に1か所、前部に1か所、レンズ鏡筒、上面に1か所、配置した。尚、光学機器1と疑似太陽45の距離は5cmとした。次に、疑似太陽45を光学機器45°上面より照射し、30分後の温度を測定した。
≪ピントズレ抑制効果測定≫
本発明の光学機器のピントズレ抑制効果測定方法について説明する。ピントズレ抑制効果は、疑似太陽を30分照射後に撮像装置で同一の白黒被写体を撮影し、赤外反射層を用いず、従来の黒色層を用いた場合のピントズレを100%とした[比較例1]。ピントズレの数値は、撮影した画像の輝度値を解析し、赤外反射層を用いなかった際の輝度値の傾きを100とし、ピントズレ抑制効果を評価した。ピントズレ抑制効果は、10%以上あれば抑制効果があると言える。また、ピントズレ抑制効果が20%以上あれば目視でも十分に抑制効果が確認できるので非常に有効であると言える。
(ピントズレ抑制効果の3段階評価)
A:ピントズレ抑制効果が20%以上
B:ピントズレ抑制効果が10%以上20%未満
C:ピントズレ抑制効果が10%未満
表1に実施例1~7、比較例1~4の光学機器評価結果について記す。
[実施例1]
<塗料の調製>
実施例1は、以下の方法で塗料を作製した。樹脂125g、アゾ系有機粒子9g、チタニア150g、分散剤5g、溶剤100gを秤量し、ボールミルにて15時間攪拌し、主剤を得た。得られた主剤10gに対して硬化剤1gを混合し、実施例1の塗料を得た。
樹脂にはオレスターQ-691(三井化学)を用いた。アゾ系有機粒子には、クロモファインブラックA1103(大日精化工業)を用いた。チタニアには、D-970(堺化学;平均粒径0.26μm)を用いた。硬化剤には、タケネートD-120N(三井化学)を用いた。
<赤外反射層の作製>
実施例1では、以下の方法で赤外反射層を作製した。上記の塗料をマグネシウム合金の金属板にスプレー塗布によりで50μmの膜厚になるように本発明の膜を塗布し、室温で一晩乾燥後、130℃で30分間焼成し、実施例1の膜を得た。
本サンプルについてのL*は5、近赤外波長域の日射反射率は29%であった。
上記のように測定した塗膜を、レンズ鏡筒42およびレンズフード43の外周部内側に50μmの膜厚になるようにスプレー塗布にて形成した。
実施例2~12では、アゾ系有機粒子とチタニアの配合量、配合比率により、所望のL*および近赤外波長域の日射反射率になるようにした。
実施例1の光学機器は、温度センサをレンズフード外周で外周部材の内側の光軸中心を挟んで上面と下面に2か所配置した。レンズフード内側表面に、明度L*が5、近赤外波長域の日射反射率が29%である層を50μm形成した。この時のピント抑制効果はピントズレ抑制効果が10%以上20%未満であった。迷光も少なく問題はなかった。
[実施例2]
実施例2の光学機器は、温度センサをレンズフード外周で外周部材の内側の光軸中心を挟んで上面と下面に2か所配置した。レンズフード内側表面に、明度L*が30、近赤外波長域の日射反射率が40%である層を50μm形成した。この時のピント抑制効果はピントズレ抑制効果が20%以上であった。迷光も少なく問題はなかった。
[実施例3]
実施例3の光学機器は、温度センサをレンズフード外周で外周部材の内側の光軸中心を挟んで上面と下面に2か所配置した。レンズフード内側表面に、明度L*が30、近赤外波長域の日射反射率が45%である層を50μm形成した。この時のピント抑制効果はピントズレ抑制効果が20%以上であった。迷光も少なく問題はなかった。
[実施例4]
実施例4の光学機器は、温度センサをレンズフード外周で外周部材の内側の光軸中心を挟んで上面と下面に2か所配置した。レンズフード内側表面に、明度L*が5、近赤外波長域の日射反射率が20%である層を50μm形成した。この時のピント抑制効果はピントズレ抑制効果が10%以上20%未満であった。迷光も少なく問題はなかった。
[実施例5]
実施例5の光学機器は、温度センサをレンズフード外周で外周部材の内側の光軸中心を挟んで上面と下面に2か所配置した。レンズフード内側表面に、明度L*が5、近赤外波長域の日射反射率が29%である層を50μm形成した。また、基材と外装の間に、断熱層を30μm形成した。この時のピント抑制効果はピントズレ抑制効果が20%以上であった。迷光も少なく問題はなかった。
[実施例6]
実施例6の光学機器は、温度センサをレンズフード外周で外周部材の内側の光軸中心を挟んで上面と下面に2か所配置した。レンズフード内側表面に、明度L*が5、近赤外波長域の日射反射率が29%である層を50μm形成した。また、外装の間に、近赤外波長域日射反射率が77%の外装を30μm形成した。この時のピント抑制効果はピントズレ抑制効果が20%以上であった。迷光も少なく問題はなかった。
[実施例7]
実施例7の光学機器は、温度センサをレンズ鏡筒外周で外周部材の内側の光軸中心を挟んで上面と下面に2か所配置した。レンズ鏡筒内側表面に、明度L*が5、近赤外波長域の日射反射率が29%である層を50μm形成した。この時のピント抑制効果はピントズレ抑制効果が10%以上20%未満であった。迷光も少なく問題はなかった。
[比較例1]
比較例1の光学機器は、温度センサをレンズフードの内側の光軸中心を挟んで上面と下面に2か所配置した。レンズフード内側表面に、明度L*が3、近赤外波長域の日射反射率が13%である静電植毛品を用いた。可視光の吸収が大きく、下面の温度が上昇し、画質が悪化した。この時のピントずれを基準とした。よって、ピント抑制効果は0%である。迷光は少なく問題はなかった。
[比較例2]
比較例2の光学機器は、温度センサをレンズフード外周で外周部材の内側の光軸中心を挟んで上面と下面に2か所配置した。レンズフード内側表面に、明度L*が35、近赤外波長域の日射反射率が5%である層を50μm形成した。この時のピント抑制効果はなく、また、迷光も発生した。
[比較例3]
比較例3の光学機器は、温度センサをレンズフード外周で外周部材の内側の光軸中心を挟んで上面と下面に2か所配置した。レンズフード内側表面に、明度L*が80、近赤外波長域の日射反射率が50%である層を50μm形成した。この時のピント抑制効果はピントズレ抑制効果が20%以上であった。迷光が強く発生した。
[比較例4]
比較例4の光学機器は、温度センサをレンズフード外周で外周部材の内側の光軸中心を挟んで上面と下面に2か所配置した。レンズフード内側表面に、明度L*が53、近赤外波長域の日射反射率が15%である層を50μm形成した。この時のピント抑制効果はピントズレ抑制効果が10%未満であった。迷光が強く発生した。
Figure 0007154921000001
本発明の光学機器は、カメラやビデオ、放送機器などの光学機器のレンズ鏡筒やレンズフード、その他の屋外で使用される可能性があるカメラ本体、ビデオ本体、監視カメラ、お天気カメラ等に利用することが出来る。
1 入射光
2 反射光
3 透過光
4 膜
5 基材
21 レンズ
22、23 レンズ鏡筒
28 レンズフード
31 基材
32 赤外反射層
33 遮熱層

Claims (16)

  1. レンズ鏡筒の内側表面の、太陽光が直接照射される可能性のある部分が、
    L*値が5%以上30%以下であり、
    近赤外波長域の日射反射率が20%以上45%以下であることを特徴とする光学機器。
  2. 前記レンズ鏡筒の外側表面の少なくとも一部は、近赤外波長域の日射反射率が55%以上85%以下であることを特徴とする請求項1記載の光学機器。
  3. 前記太陽光が直接照射される可能性のある部分は、一番外側のレンズより外側の、外気と連通している部分の内側表面であることを特徴とする請求項1または2記載の光学機器。
  4. レンズ鏡筒の内側表面の、太陽光が直接照射される可能性のある部分に、樹脂、有機顔料、および無機顔料を含み、L*値が5%以上30%以下で近赤外波長域の日射反射率が20%以上45%以下である、赤外反射層が形成されていることを特徴とする光学機器。
  5. 前記有機顔料は、アゾ系有機顔料であることを特徴とする請求項4記載の光学機器。
  6. 前記無機顔料は、表面がシリカで被覆されたチタニア粒子、およびまたは表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子であることを特徴とする請求項4または5記載の光学機器。
  7. 前記赤外反射層はさらにシリカを含むことを特徴とする請求項4乃至6いずれか一項記載の光学機器。
  8. 前記太陽光が直接照射される可能性のある部分は、一番外側のレンズより外側の、外気と連通している部分の内側表面であることを特徴とする請求項4乃至7いずれか一項記載の光学機器。
  9. 内側表面の少なくとも一部が、L*値が5%以上30%以下であり、近赤外波長域の日射反射率が20%以上45%以下であることを特徴とするレンズフード。
  10. 前記内側表面の少なくとも一部に、樹脂と有機顔料と無機顔料とを含む赤外反射層が設けられていることを特徴とする請求項9に記載のレンズフード。
  11. 前記赤外反射層が、アゾ系有機顔料またはペリレン系有機顔料を含むことを特徴とする請求項10に記載のレンズフード。
  12. 前記赤外反射層が、前記無機顔料として、表面がシリカで被覆されたチタニア粒子、および、表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項10または11記載のレンズフード。
  13. 前記赤外反射層が、表面がシリカで被覆されたチタニア粒子と、表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子とを含むことを特徴とする請求項12記載のレンズフード。
  14. 前記赤外反射層が、さらにシリカ粒子を含むことを特徴とする請求項10乃至13のいずれか一項記載のレンズフード。
  15. 前記レンズフードの外側表面の少なくとも一部が、近赤外波長域の日射反射率が55%以上85%以下であることを特徴とする請求項9乃至14のいずれか一項に記載のレンズフード。
  16. 前記外側表面の少なくとも一部に、樹脂と有機顔料と無機顔料とを含む遮熱層が設けられていることを特徴とする請求項15に記載のレンズフード。
JP2018185430A 2018-09-28 2018-09-28 光学機器、レンズフード、光学機器の製造方法、およびレンズフードの製造方法 Active JP7154921B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018185430A JP7154921B2 (ja) 2018-09-28 2018-09-28 光学機器、レンズフード、光学機器の製造方法、およびレンズフードの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018185430A JP7154921B2 (ja) 2018-09-28 2018-09-28 光学機器、レンズフード、光学機器の製造方法、およびレンズフードの製造方法

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2020056826A JP2020056826A (ja) 2020-04-09
JP2020056826A5 JP2020056826A5 (ja) 2021-11-11
JP7154921B2 true JP7154921B2 (ja) 2022-10-18

Family

ID=70107152

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018185430A Active JP7154921B2 (ja) 2018-09-28 2018-09-28 光学機器、レンズフード、光学機器の製造方法、およびレンズフードの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7154921B2 (ja)

Citations (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010160416A (ja) 2009-01-09 2010-07-22 Nikon Corp レンズフードおよび光学機器
JP2010186157A (ja) 2009-01-15 2010-08-26 Hoya Corp 鏡枠部材、及び鏡枠部材の表面加工方法
JP2010197993A (ja) 2009-01-27 2010-09-09 Nikon Corp 光学装置
JP2011037939A (ja) 2009-08-07 2011-02-24 Toda Kogyo Corp 赤外線反射性複合黒色顔料、該赤外線反射性複合黒色顔料を用いた塗料及び樹脂組成物
JP2011064737A (ja) 2009-09-15 2011-03-31 Nikon Corp 光学系部品
JP2011094086A (ja) 2009-11-02 2011-05-12 Ishihara Sangyo Kaisha Ltd 赤外線反射材料及びその製造方法並びにそれを含有した塗料、樹脂組成物
JP2012002895A (ja) 2010-06-15 2012-01-05 Nikon Corp 光学部品および塗料
JP2012036331A (ja) 2010-08-10 2012-02-23 Kansai Paint Co Ltd 塗料組成物及び塗膜形成方法
JP2012068511A (ja) 2010-09-24 2012-04-05 Pentax Ricoh Imaging Co Ltd 鏡筒基体及びそれを用いた鏡筒の製造方法
JP2017194632A (ja) 2016-04-22 2017-10-26 キヤノン株式会社 遮熱膜、遮熱塗料、および光学機器

Patent Citations (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010160416A (ja) 2009-01-09 2010-07-22 Nikon Corp レンズフードおよび光学機器
JP2010186157A (ja) 2009-01-15 2010-08-26 Hoya Corp 鏡枠部材、及び鏡枠部材の表面加工方法
JP2010197993A (ja) 2009-01-27 2010-09-09 Nikon Corp 光学装置
JP2011037939A (ja) 2009-08-07 2011-02-24 Toda Kogyo Corp 赤外線反射性複合黒色顔料、該赤外線反射性複合黒色顔料を用いた塗料及び樹脂組成物
JP2011064737A (ja) 2009-09-15 2011-03-31 Nikon Corp 光学系部品
JP2011094086A (ja) 2009-11-02 2011-05-12 Ishihara Sangyo Kaisha Ltd 赤外線反射材料及びその製造方法並びにそれを含有した塗料、樹脂組成物
JP2012002895A (ja) 2010-06-15 2012-01-05 Nikon Corp 光学部品および塗料
JP2012036331A (ja) 2010-08-10 2012-02-23 Kansai Paint Co Ltd 塗料組成物及び塗膜形成方法
JP2012068511A (ja) 2010-09-24 2012-04-05 Pentax Ricoh Imaging Co Ltd 鏡筒基体及びそれを用いた鏡筒の製造方法
JP2017194632A (ja) 2016-04-22 2017-10-26 キヤノン株式会社 遮熱膜、遮熱塗料、および光学機器

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020056826A (ja) 2020-04-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11187832B2 (en) Light-shielding film for optical element and optical element having light-shielding film
JP4959007B2 (ja) 光学素子用の遮光膜、遮光塗料および光学素子
JP2011186438A5 (ja)
JP5455387B2 (ja) レンズの外周面に形成される膜及び光学レンズ
JP6797548B2 (ja) 遮熱膜、遮熱塗料、および光学機器
JP6891029B2 (ja) 光学機器、光学機器の表面に設ける膜、および光学機器に用いる塗料
JP2024032021A (ja) 膜を有する物品、光学機器、塗料、および物品の製造方法
TWI571497B (zh) 遮光塗料,遮光塗料組,遮光膜,光學元件,以及製造光學元件的方法
JP7154921B2 (ja) 光学機器、レンズフード、光学機器の製造方法、およびレンズフードの製造方法
JP6744751B2 (ja) 光学機器用の遮熱膜、光学機器用の遮熱塗料、およびそれらを用いる光学機器
US11163132B2 (en) Thermal barrier film, thermal barrier paint, and optical instrument
JP2016109943A (ja) 光学素子、遮光膜および遮光塗料
JP6896492B2 (ja) 光学機器、光学機器の表面に設ける膜、および光学機器に用いる塗料
JP7071481B2 (ja) 遮熱膜、遮熱塗料、および光学機器
JP2021091107A (ja) 膜を有する物品、塗料、および物品の製造方法
JP2022095096A (ja) 光学機器の表面に設けられる膜、光学機器、塗料
JP2020062870A (ja) 膜を有する物品、光学機器、塗料、および物品の製造方法
JP2022183839A (ja) 遮熱膜を有する物品、光学機器、塗料、および物品の製造方法
US20200386918A1 (en) Article, optical apparatus, and coating material
JP2020199757A (ja) 膜を有する物品、光学機器、塗料、および物品の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210927

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210927

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220518

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220628

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220808

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220906

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20221005

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7154921

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151