JP2020062870A - 膜を有する物品、光学機器、塗料、および物品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】変色や、膜剥がれ、膜割れの心配がない、意匠性と遮熱性を兼ね備えた膜を表面に有する物品を提供する。【解決手段】樹脂と、アゾ系有機粒子と、TiおよびOを含む粒子と、を含む膜とする。アゾ系有機粒子7のアゾ基が切断されて色が退色したアゾ系有機粒子9になるため明度が高くなる一方、TiおよびOを含む粒子中のTiO2部分が太陽光による光触媒作用で励起して励起したTiおよびOを含む粒子11となり、電子(e−)を樹脂に放出し、樹脂の分子鎖は電子エネルギーによって切断される。このことにより、樹脂は変色した樹脂12となり明度が低下する。太陽光の照射により、アゾ系有機粒子7の明度は高く変化する一方で、TiおよびOを含む粒子の明度は低く変化するため、全体としてはキャンセル効果で色の変色が抑制される。【選択図】図3−B

Description

本発明は、膜を有する物品、光学機器、塗料、および物品の製造方法に関する。
本発明は、膜を有する物品、特にカメラやビデオ、放送機器などの光学機器のレンズ鏡筒や、その他の屋外で使用される可能性があるカメラ本体、ビデオ本体、監視カメラ、お天気カメラ等の光学機器、および塗料に関する。
例えば、光学機器の表面には、屋外で使用した際に太陽光による部材の温度上昇を抑制する機能を有する膜が設けられている。従来、太陽光による部材の温度上昇を抑制する方法としては、図1に示すように太陽光による入射光1を基材5の赤外線反射膜4で反射光2として反射させる方法が知られている。入射光1に対する反射光2の比率を大きくすることで、透過光3による発熱を抑制することが出来る。反射率を上げるための材料としては可視光から赤外線領域の反射率が高い白色のチタニアや、赤外線反射率が高い顔料が用いられることが多い。太陽光エネルギー分布は可視光領域で47%、赤外領域で50%であり、可視光から赤外領域での広い範囲での反射率が高いことが求められる。
上述した赤外線反射膜は光学機器のレンズ鏡筒の表面に設けられる外装膜であるため、ユーザーの目から見た色味の外観品位も重要である。つまり、レンズ鏡筒の外観色を所望の色味に調整するための意匠性についても求められる。また、光学機器は屋外で使用されることが多いため、遮熱性能に加えて赤道直下等の過酷な太陽光条件下での耐光性も求められる。
特許文献1には、赤外反射層の上に着色層を備えることで、レンズ鏡筒の外観色を所望の色に調整しつつ、赤外線による温度上昇を抑制することができるレンズ鏡筒が開示されている。また、特許文献1では、赤外線反射層、着色層だけでなく、膜厚が500μmから2000μmの断熱層を設けることにより遮熱性能を高めている。特許文献1の着色層は赤外線透過着色物質を含む塗料を赤外線反射層の表面に塗布することにより形成され、レンズ鏡筒の外観色を所望の色に調整することができる。このように特許文献1では多層構成で意匠性と遮熱性を両立させたレンズ鏡筒の表面に設ける膜が開示されている。
特許文献2には、単層で、明度(L*)が50以上80以下と比較的高く、日射反射率が40%以上と高いボンベに用いられる遮熱塗料が開示されている。特許文献2の遮熱塗料は、明度が50以上80以下と比較的高いため可視光の反射率が比較的高く、遮熱性能が良好であることが記載されている。
特開2009−139856号公報 特開2011−085235号公報
しかしながら、特許文献1では着色層、赤外線反射層、断熱層といった多層構成でないと意匠性と遮熱性を両立することができない。しかし、多層膜は、各膜層からの不要な界面反射により赤外線が膜内部に侵入し、温度上昇抑制効果を阻害したり、耐環境下において膜界面からの膜剥がれや、膜割れが発生しやすくなる。
また、単層の特許文献2では、明度を比較的高くするために、無機系遮熱粒子、有機系遮熱粒子およびこれらの併用が良好であると記載されているが、有機系遮熱粒子は太陽光に対する耐光性が比較的低いため、退色が発生する場合がある。
本発明の物品は、樹脂と、アゾ系有機粒子と、TiおよびOを含む粒子と、を含むことを特徴とする。
また本発明の光学機器は、膜を有する光学機器であって、
前記膜は、樹脂と、アゾ系有機粒子と、TiおよびOを含む粒子と、を含み、
前記膜は、前記光学機器の外表面に形成されていることを特徴とする。
また本発明の塗料は、樹脂と、アゾ系有機粒子と、TiおよびOを含む粒子と、を含み、前記アゾ系有機粒子の含有量を100重量%とした時、TiおよびOを含む粒子の含有量は、10重量%以上1600重量%以下であることを特徴とする。
また、本発明の物品の製造方法は、平均粒径が100nm以上400nm以下であってチタニア、アルミナ、ジルコニアおよび酸化亜鉛のうちの少なくとも一種を含む粒子と樹脂とを含む領域と、前記領域の表面の一部分に、前記平均粒径が100nm以上400nm以下の粒子を含まない領域とを形成する工程と、前記含まない領域の上に、平均粒径が100nm以上400nm以下であってチタニア、アルミナ、ジルコニアおよび酸化亜鉛のうちの少なくとも一種を含む粒子と、樹脂とを含む領域を形成する工程と、を有することを特徴とする。
あるいは、本発明の物品の製造方法は、樹脂と、有機顔料と、無機顔料と、アルキロールアンモニウム塩を含む塗料を基材上に塗布する工程と、前記塗布した塗料を硬化させて膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
意匠性と遮熱性を兼ね備えた膜を表面に有する物品を提供する。
基材の上面に光学機器の表面に設ける膜を形成した際の太陽光の反射および吸収の状態を示す断面模式図である。 第1の実施形態の膜を説明する断面模式図である。 第1の実施形態の膜を説明する断面模式図である。 第1の実施形態の膜を説明する断面模式図である。 第1の実施形態の膜を説明する断面模式図である。 第1の実施形態の膜を説明する断面模式図である。 第1の実施形態の膜を説明する断面模式図である。 本発明の光学機器の一態様であるレンズ鏡筒を有するカメラ用交換レンズの一例を示す外観図である。 本発明の光学機器の一態様であるレンズ鏡筒を有するカメラ用交換レンズの一例を示す断面図である。 分光光度計による反射率の測定形態を示す模式図である。 温度の評価方法を示す模式図である。 第2の実施形態の膜を示す断面模式図である。 第3の実施形態の膜を示す断面模式図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
(第1の実施形態)
まず、色が薄くても(明度が高くても)太陽光に対する変色(退色)が少ない、遮熱性能に優れた膜を有する物品について説明する。本発明における変色とは、退色による変色も含む。
[明度が高く、遮熱性能に優れた膜の遮熱効果と太陽光による変色抑制を両立するための方法]
(太陽光によるアゾ系有機粒子の変色と遮熱性能の関係について)
太陽光によるアゾ系有機粒子の変色と遮熱性能の関係について説明する。
アゾ系有機粒子とは、分子中にアゾ基であるR−N=N−R’の化学構造を持つ有色の顔料である。アゾ系有機粒子は、無機顔料と比較して赤外線の反射性能が高い特徴を持つ。アゾ系有機粒子は太陽光が照射されるとアゾ基が切断されて2RとN2になる場合がある。アゾ系有機粒子はアゾ系有機粒子に含まれるN=Nおよびその周囲の原子配置により色を発現しているため、N=Nが切断されると色が消失し、明度が高くなる。アゾ系有機粒子とは、本明細書においては、分子中にアゾ基であるR−N=N−R’の化学構造を持つ有色の顔料であると定義する。また、分子中にアゾ基であるR−N=N−R’の化学構造を持つ有色の顔料のN=Nが切断され色が変化した有色の顔料も、アゾ系有機粒子であると定義する。
可視光の反射率を高め、遮熱性能を向上させるためには、光学機器の表面の明度を50以上にする必要があり、また、反射性能が高いアゾ系有機粒子を用いる必要がある。光学機器の表面に膜が形成されている場合は、その膜も、明度が高くなくてはならない。また、反射性能が高いアゾ系有機粒子を用いる必要があるが、明度の高い膜は、着色剤の量を少なくする必要がある。つまり、図2−Aに示すように、着色剤であるアゾ系有機粒子7の量は、樹脂8の中にまばらに存在する程度になってしまう。まばらに存在する程度とは、例えば、前記アゾ系有機粒子の含有量は、前記膜の体積に対して、0.1体積%以上0.4体積%以下である。太陽光6が照射されてアゾ基が切断されると、色が消失したアゾ系有機粒子9となる。図2−Bに示すように、樹脂8の中にまばらに存在する程度になってしまうため、アゾ基が切断されていないアゾ系有機粒子7に対するアゾ基が切断されたアゾ系有機粒子9の比率が高く、光学機器の表面に形成された膜の色が大きく変化してしまう。
一方、図2−Cに示すように明度が50未満と比較的低い膜はアゾ系有機粒子7が樹脂8の中に多く存在する。このため、太陽光6が照射されて同様にアゾ基が切断されても、図2−Dに示すようにアゾ基が切断されていないアゾ系有機粒子7に対するアゾ基が切断されたアゾ系有機粒子9の比率が高い。よって、光学機器の表面に形成された膜の色の変化が比較的少ない。ただし、明度が50未満と低い膜は可視光の吸収が大きく、太陽光の反射が低くなるため遮熱性能が悪化する。
(本発明の遮熱効果と変色抑制を両立するための方法)
以上のように、明度が50以上と高く、アゾ系有機粒子7を有する膜は遮熱効果が高いものの、太陽光による変色の課題があることが分かる。
本発明者は、遮熱効果と変色抑制を両立するための方法を鋭意検討したところ、膜中にTiおよびOを含む粒子を更に添加することで、太陽光による変色を抑制できることを見出した。TiおよびOを含む粒子は、詳細は後述するが、TiおよびOの他に1種類以上の無機金属を含んでいてもよい。
図3−Aに示すように本発明に係る膜はアゾ系有機粒子7と樹脂8とTiおよびOを含む粒子10を含んでいる。加えて、明度が50以上に調整されていると、遮熱効果が高くなるため、より好ましい。本発明に係る膜に太陽光6を照射すると図3−Bに示すように、アゾ系有機粒子7のアゾ基が切断されて色が退色したアゾ系有機粒子9になるため明度が高くなる。一方、TiおよびOを含む粒子10は粒子中のTiO部分が太陽光による光触媒作用で励起して励起したTiおよびOを含む粒子11となる。太陽光により励起したTiおよびOを含む粒子11は電子(e−)を樹脂8に放出し、樹脂8の分子鎖は電子エネルギーによって切断される。このことにより、樹脂8は変色した樹脂12となり明度が低下する。
このように、本発明に係る膜は、太陽光6の照射により、アゾ系有機粒子7の明度は高く変化する一方で、TiおよびOを含む粒子10の明度は低く変化するため、全体としてはキャンセル効果で色の変色が抑制される。
[本発明の物品]
本発明の物品は、プラスチックあるいは金属の基材に本発明の塗料を塗布することで、その表面に遮熱性能に優れた膜(本発明に係る膜)が形成されている。つまり、本発明の物品は、その表面に遮熱性能に優れた膜(本発明に係る膜)を有している。本発明の物品は、特に光学機器に好適に用いられる。光学機器は、例えば、カメラやビデオ、放送機器などに用いられる交換レンズである。また、その他の屋外で使用される可能性がある、レンズを透過した光により画像を形成する画像形成装置であるカメラ本体、ビデオ本体、監視カメラ、お天気カメラ等である。本発明の光学機器は、屋外で使用された場合太陽光が照射される部分(外表面と称する)に本発明に係る膜を形成しておくことにより、より高い遮熱効果が発揮される。図4−Aは本発明の光学機器の一態様である、レンズを保持する保持部を有するレンズ鏡筒を含むカメラ用交換レンズの外観を示している。交換レンズは、レンズ鏡筒30と三脚座33を有し、レンズ鏡筒30はレンズ、固定筒31、環状部材32などで構成されている。本発明の光学機器は、レンズ鏡筒30の固定筒31や環状部材32、三脚座33などの表面に、遮熱性能に優れた膜(本発明に係る膜)が形成されている。固定筒31や環状部材32、三脚座33の材料は特に限定されるものではなく、プラスチックでもあっても金属であってもよい。
図4−Bは、本発明の光学機器の一態様であるレンズを保持する保持部を有するレンズ鏡筒を含む交換レンズが結合された一眼レフデジタルカメラの断面図を示している。
本発明の光学機器とは、双眼鏡、顕微鏡、半導体露光装置、交換レンズ、カメラ等の電子機器等、本発明の膜が形成された機器であって、特に、光学素子を含む光学系を備える機器のことをいう。あるいは光学素子を通過した光によって画像を生成する機器のことをいう。
また、本発明の光学機器は、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等のカメラシステムや、携帯電話機等の本発明の光学素子を通過した光を受光する撮像素子を備える電子機器であってもよい。なお、電子機器に搭載されるモジュール状の形態、例えばカメラモジュールを撮像装置とする場合もある。
図4−Bにおいて、カメラ本体602と光学機器である本発明の膜が形成されたレンズ鏡筒の外筒620を含む交換レンズ601とが結合されているが、交換レンズ601はカメラ本体602対して着脱可能である。
被写体からの光は、交換レンズの601内の撮影光学系の光軸上に配置された複数のレンズ603、605などからなる光学系を通過し、撮像素子に受光される。
ここで、レンズ605はレンズ鏡筒の内筒604によって支持されて、フォーカシングやズーミングのためにレンズ鏡筒の外筒620に対して可動支持されている。
撮影前の観察期間では、被写体からの光は、カメラ本体の筐体621内の主ミラー607により反射され、プリズム611を透過後、ファインダレンズ612を通して撮影者に撮影画像が映し出される。主ミラー607は例えばハーフミラーとなっており、主ミラーを透過した光はサブミラー608によりAF(オートフォーカス)ユニット613の方向に反射され、例えばこの反射光は測距に使用される。また、主ミラー607は主ミラーホルダ640に接着などによって装着、支持されている。不図示の駆動機構を介して、撮影時には主ミラー607とサブミラー608を光路外に移動させ、シャッタ609を開き、撮像素子610にレンズ鏡筒601から入射した撮影光像を結像させる。また、絞り606は、開口面積を変更することにより撮影時の明るさや焦点深度を変更できるよう構成される。
[本発明の塗料]
まず、本発明の塗料およびその製造方法について説明する。
本発明の塗料は少なくとも樹脂とアゾ系有機粒子とTiおよびOを含む粒子を含む。
(アゾ系有機粒子)
本発明の塗料に含まれるアゾ系有機粒子について説明する。
本発明の塗料に含まれるアゾ系有機粒子としては、アゾ基を有する化合物であれば任意の粒子を用いることが出来る。本発明の塗料に含まれるアゾ系有機粒子の色としては、黒色系、黄色系、赤色系、橙色系などが挙げられるが、黒色系が太陽光による退色が起こった際の、色味変化(a*、b*)が少ないのでより好ましい。また、太陽光の反射率が高いことが好ましく、アゾ系有機粒子単独での日射反射率が10%を超える材料を選択することが好ましい。アゾ系有機粒子の一例としては、ニッケルアゾ顔料、不溶性アゾ系顔料、溶性アゾ系顔料、高分子量アゾ系顔料、アゾメチンアゾ顔料系顔料等が挙げられる。これらのアゾ系有機粒子は1種類を用いても複数の種類を含んでも構わない。
本発明の塗料に含まれるアゾ系有機粒子の平均粒径としては10nm以上5μmであることが好ましく、より好ましくは50nm以上2μm以下である。本発明のアゾ系有機粒子の平均粒径が10nm未満になると粒子の表面積が増加するため、耐光性が悪化し、変色する恐れがある。また、本発明の塗料に含まれるアゾ系有機粒子の平均粒径が5μmを超えると塗膜の凹凸が大きくなり、膜厚精度が悪化するため、ピント合わせなどの精度が低下する恐れがある。
アゾ系粒子には任意の形状の粒子を用いることができる。その一例としては、球状、板状、立方体、楕円形、板状、層状、中空、星形、針状、異形状などがあげられる。これらのアゾ系有機粒子は1種類を用いても複数の種類を含んでも構わない。
また本発明の塗料に含まれるアゾ系有機粒子の含有量は、塗料中の不揮発成分に対して0.1重量%以上1.0重量%以下が好ましく、より好ましくは0.15重量%以上0.5重量%以下である。アゾ系有機粒子の含有量が0.1重量%未満になると膜の明度が高くなりすぎて、防汚性が悪化する恐れがある。また、アゾ系有機粒子の含有量が1.0重量%以上になると、膜の明度が低くなりすぎて日射反射率が悪化する。塗料中の不揮発成分に対してのアゾ粒子の含有量は、塗料を硬化させた後に、後述する、本発明に係る膜に含まれるアゾ系有機粒子の含有量の測定と同じ方法で測定することができる。
(TiおよびOを含む粒子)
次に本発明の塗料に含まれるTiおよびOを含む粒子について説明する。前記の通り、本発明の塗料に含まれる、TiおよびOを含む粒子とは、TiおよびOの他に1種類以上の無機金属を含んでいてもよい。TiおよびOの他に1種類以上の無機金属を含ませると粒子の色が変化し、色を調整するための粒子(顔料)として用いることができる。本発明のTiおよびOを含む粒子の一例としては、チタニアがあげられる。また、(Ti、Ni、Sb)Ox、(Ti、Cr、Sb)Ox、(Ti、Fe、Zn)Ox、(Co、Cr、Zn、Al、Ti)Ox、(Co、Cr、Zn、Ti)Ox、(Co、Al、Ni、Ti)Ox等が挙げられる。例えば、(Ti、Ni、Sb)Oxは、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化アンチモンを焼成して得られる結晶構造の顔料である。本発明のTiおよびOを含む粒子は、チタニア、(Ti、Sb、Cr)O、および(Ti、Fe、Zn)Oより選ばれる1種類もしくは混合物であることが好ましい。
これらのTiおよびOを含む粒子は光触媒作用によって樹脂の分子鎖を切断する必要があるので、耐光性を有するシリカ等の被覆が少ないもしくはないことが好ましい。塗料中の不揮発成分に対してのTiおよびOを含む粒子の含有量は、塗料を硬化させた後に、後述する、本発明に係る膜に含まれるTiおよびOを含む粒子の含有量の測定と同じ方法で測定することができる。
本発明の塗料に含まれるTiおよびOを含む粒子の含有量は、塗料中の不揮発成分に対して0.1重量%以上1.6重量%以下が好ましく、より好ましくは0.3重量%以上0.7重量%以下である。本発明の塗料に含まれるTiおよびOを含む粒子の含有量が0.1%未満になると太陽光照射時の光触媒作用が少ないため、本発明に係る膜の明度変化が大きくなる恐れがある。本発明の塗料に含まれるTiおよびOを含む粒子の含有量が1.6重量%を超えると太陽光照射時の光触媒作用が大きすぎて、本発明に係る膜の明度変化が大きくなる恐れがある。
また、本発明の塗料に含まれるTiおよびOを含む粒子の平均粒径は、10nm以上5μmであることが好ましく、より好ましくは50nm以上2μm以下である。本発明のTiおよびOを含む粒子の平均粒径が10nm未満になると粒子の表面積が増加するため、光触媒作用が増加し、変色する恐れがある。また、本発明のTiおよびOを含む粒子の平均粒径が5μmを超えると塗膜の凹凸が大きくなり、膜厚精度が悪化するため、ピント合わせなどの精度が低下する恐れがある。
塗料に含まれるアゾ系有機粒子の含有量を100重量%とした時、TiおよびOを含む粒子の含有量は、10重量%以上1600重量%以下が好ましい。範囲を外れると、明度変化が大きくなる恐れがある。
(樹脂)
次に本発明の塗料に含まれる樹脂について説明する。
本発明の塗料に含まれる樹脂の一例としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種類を用いても複数の種類を含んでも構わない。
また、本発明の塗料に含まれる樹脂の含有量は、塗料中の不揮発成分に対して5重量%以上80重量%以下が好ましく、より好ましくは15重量%以上50重量%以下である。本発明の樹脂の含有量が5重量%未満になると基材との密着性が悪化する恐れがある。また、本発明の樹脂の含有量が50重量%を超えると、太陽光の日射反射率が悪化する恐れがある。塗料中の不揮発成分に対しての樹脂の含有量は、塗料を硬化させた後に、後述する、本発明に係る膜に含まれる樹脂の含有量の測定と同じ方法で測定することができる。
(明度を調整するための粒子(無機顔料))
本発明の塗料には明度を調整するための粒子としてTiおよびOを含む粒子以外の無機顔料が含まれていてもよい。本発明の膜の明度は50以上であることが好ましく、より好ましくは71以上80以下である。本明細書では、TiおよびOを含む粒子以外の無機顔料を単に無機顔料と称する。
本発明の塗料に含まれる明度を50以上に調整するための粒子(無機顔料)は、明度を調整できる粒子であれば任意の材料を用いることが出来る。本発明の明度を50以上に調整するための粒子(無機顔料)は、太陽光の日射反射率が高いことが好ましく、材料単独での日射反射率が10%を超えることがより好ましい。本発明の明度を50以上に調整するための粒子(無機顔料)の一例としては、シリカで表面が被覆されたチタニア(酸化チタン)、アルミナ、ジルコニア、シリカ、中空シリカ、酸化亜鉛が挙げられる。これらの材料は1種類で用いてもよいし組み合わせて用いても構わない。本発明の塗料を用いて形成した膜の明度が50未満になると、日射反射率が低下し、温度低減効果が悪化する。本発明の塗料を用いて形成した膜の明度が80を超えると色が白くなりすぎて汚れが目立ちやすくなる恐れがある。本明細書において、シリカで表面が被覆されたチタニアとは、チタニア粒子の少なくとも表面の一部がシリカで覆われているものである。明度を50以上に調整するための粒子(無機顔料)は、シリカで表面が被覆された酸化チタン粒子であることが好ましい。
シリカで表面が被覆された酸化チタン粒子の酸化チタンは、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタンを用いることが出来る。また、酸化チタンは少なくとも一部がシリカで被覆されている。酸化チタンがシリカで被覆されていない場合、無酸素雰囲気下での酸化チタンの変色が大きくなり、反射率が低下する。また、酸化チタンには、シリカの他に酸化ジルコニウムや酸化アルミニウム、有機物などが複数被覆されていてもよい。シリカが被覆された酸化チタン粒子は平均粒径が0.2μm以上である。シリカが被覆された酸化チタン粒子は平均粒径が0.2μm未満になると粒子の電荷が低くなり後述するシリカ粒子を引き寄せることが困難となり、無酸素雰囲気下での変色が大きくなる恐れがある。一方、シリカが被覆された酸化チタン粒子の平均粒径が5μmを超えると塗膜の凹凸が大きくなり、膜厚精度が悪化するため、ピント合わせなどの精度が低下する恐れがある。よって、シリカが被覆された酸化チタン粒子の平均粒径は5μm以下であることが好ましい。
本発明の塗料に含まれる、明度を50以上に調整するための粒子(シリカで表面が被覆された酸化チタン粒子)の含有量は、塗料中の不揮発成分に対して5重量%以上80重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以上40重量%以下である。本発明の明度を50以上に調整するための粒子(シリカで表面が被覆された酸化チタン粒子)の含有量が5重量%未満になると着色力が弱く、明度を50以上にすることが困難になる恐れがある。また明度を50以上に調整するための粒子(シリカで表面が被覆された酸化チタン粒子)の含有量が80重量%を超えると膜の脆性が悪化し、脆くなる恐れがある。塗料中の不揮発成分に対しての明度を50以上に調整するための粒子の含有量は、塗料を硬化させた後に、後述する、本発明に係る膜に含まれる明度を50以上に調整するための粒子の含有量の測定と同じ方法で測定することができる。
本明細書において、シリカで表面が被覆された酸化チタン粒子とは、酸化チタン粒子の少なくとも表面の一部がシリカで覆われていればシリカで表面が被覆されたチタニア粒子であるとする。シリカで表面が被覆された酸化チタン粒子の表面積全体に対して80%以上がシリカで被覆されていることが好ましい。そして、本明細書においては、シリカで表面が被覆されたチタニア粒子は無機顔料の一例であり、明度を50以上に調整するための粒子の一例であるとする。
(シリカ粒子)
本実施形態では、さらにシリカ粒子を含んでいてもよい。平均粒径は、10nm以上110nm以下であることが好ましい。平均粒径は、10nm以上110nm以下であると、表面がシリカで被覆されたチタニア粒子のシリカの微小欠陥を埋める効果があり、無酸素雰囲気下での変色を抑制する効果がある。本実施形態のシリカ粒子は、平均粒径が10nm未満になると、表面がシリカで被覆された酸化チタン粒子のシリカの微小欠陥を埋める力が低下するので無酸素雰囲気下での変色を抑制する効果が悪化する恐れがある。また、本発明の塗料に含まれるシリカ粒子は、平均粒径が110nmを超えると酸化チタンへの吸着力が低下するため、無酸素雰囲気下での変色低減効果が悪化する恐れがある。
シリカ粒子の形状は任意のものを用いることが出来る。シリカ粒子の形状の一例としては、球形、不定形、星形、鎖状、中空、多孔質が挙げられる。これらのシリカ粒子は、1種類を用いても複数の種類を含んでも構わない。
本実施形態のシリカ粒子128の粒子径は、個数基準の平均粒子径であり、シリカ粒子128の平均粒子径は、塗布前の塗料の状態の場合は、動的光散乱法により測定できる。また、膜の状態から測定する場合は、まず、本実施形態に係る膜から、厚さ300nm、5μm×5μmのサンプルを5か所切り出し、透過電子顕微鏡法(TEM)で10万倍に拡大する。次に、5か所についてEnergy Dispersive X−ray Spectroscopy(EDS)でシリカ粒子128を面分析し、それぞれのシリカ粒子128の粒子径を求め、その平均値を算出する。最後に、5か所の平均値を求める。この5か所の平均値を、本実施形態に係る膜に含まれるシリカ粒子の平均粒子径とする。本実施形態においては、例えば、図7(c)に示すように、10nm以上50nm以下のシリカ粒子128が凝集し二次粒子になっている場合には、二次粒子の長手方向の長さが50nm以上350nm以下であれば塗布性を向上させることができる。特に、球状のシリカ粒子128がつながった分鎖状のシリカ粒子を選択することが好ましい。球状のシリカ粒子128がつながった分鎖状のシリカ粒子は、遮光膜を形成するための塗料を塗布する際、シリカ粒子128による空間が大きくなるため、粒子127が移動し易いため好適である。
シリカ粒子の含有量は、塗料中の不揮発成分に対して0.6質量%以上14質量%以下であり、好ましくは1質量%以上10質量%以下である。シリカ粒子の含有量が0.6質量%未満になると、シリカで被覆された酸化チタン粒子のシリカの微小欠陥を埋めきれないため、無酸素雰囲気下での変色が悪化する恐れがある。また、本発明のシリカ粒子の含有量が14質量%を超えると、塗膜のヘイズが悪化するため、反射率が悪化する恐れがある。塗料中の不揮発成分に対してのシリカ粒子の含有量は、塗料を硬化させた後に、後述する、本発明に係る膜に含まれるシリカ粒子の含有量の測定と同じ方法で測定することができる。
(分散剤)
本実施形態の塗料に含まれる分散剤としては、無機顔料に比べて有機顔料をより凝集させる作用を有するものであれば適用することができる。特にアルキロールアンモニウム塩を含むことが好ましい。本来、分散剤とは、顔料の表面に吸着して相互に離間させながら、顔料間の距離を一定に保ち、顔料同士が凝集するのを防ぐことが役割であるが、本実施形態における分散剤は有機顔料を凝集させ、無機顔料は分散させることが好ましい。
また、本発明の分散剤は少なくとも酸基を有していることが好ましい。また本発明の分散剤は酸価(mgkOH/g)が30以上100以下であることが好ましい。酸価(mgkOH/g)が30以上100以下の範囲だとより適度に有機顔料を空気界面側に析出させることができる。また、有機顔料に対する分散剤の添加量は、分散剤の方が多いことが好ましい。分散剤の方が少ない場合は一部の有機顔料が分散し、空気界面側への偏析が少なくなる。
また本発明の塗料に含まれる分散剤の含有量は、塗料中の不揮発成分に対して0.1重量%以上10.0重量%以下が好ましく、より好ましくは0.15重量%以上7.0重量%以下である。分散剤の含有量が0.1重量%未満になると遮熱性が悪化する。また、分散剤の含有量が10.0重量%以上になると、層の屈折率が低くなり、屈折率差による反射が小さくなる。
(溶媒)
塗料に含まれる溶剤について説明する。
溶剤としては、任意の材料を用いてよい。溶剤の一例としては、水、シンナー、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールがあげられる。また、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレン、アセトン、セロソルブ類、グリコールエーテル類、エーテル類が挙げられる。これらの溶剤は、1種類を用いても複数の種類を含んでも構わない。
本発明の塗料の好ましい粘度は、10mPa・s以上10000mPa・s以下であり、より好ましくは50mPa・s以上500mPa・s以下である。塗料の粘度が10mPa・s未満になると塗布後の遮熱膜の膜厚が薄くなる箇所が生じる場合がある。また、10000mPa・sを超えると、塗料の塗布性が低下する恐れがある。
(その他の添加剤)
本発明の塗料は、その他の任意の添加材を含んでいてもよい。その一例としては、分散剤、硬化剤、硬化触媒、可塑剤、チキソ性付与剤、レベリング剤、艶消し剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤、上記以外の色味を調整するための無機微粒子および有機微粒子等が挙げられる。
《塗料の製造方法》
以下に、本発明の塗料の製造方法について説明する。
本発明の塗料の製造方法としては、アゾ系有機粒子、TiおよびOを含む粒子、明度を50以上に調整するための粒子を塗料中に分散できれば任意の方法を用いることが出来る。一例としては、ビーズミル、ボールミル、ジェットミル、三本ローラー、遊星回転装置、ミキサー、超音波分散機、ホモジナイザー等が挙げられる。
《本発明の物品》
次に、本発明の物品について説明する。
本発明の物品は、プラスチックあるいは金属の基材に本発明の塗料を塗布することで、その表面に遮熱性能に優れた膜(本発明に係る膜)が形成されている。つまり、本実施形態によれば、膜剥がれや、膜割れの心配がない、意匠性と遮熱性を兼ね備えた膜を表面に有する光学機器等の物品を提供することが出来る。よって、本発明の物品は、その表面に遮熱性能に優れた膜(本発明に係る膜)を有している。そして、少なくとも基材よりも外側(外部環境にさらされる側)に形成されていることが好ましい。また、本発明に係る膜は、基材と密着していてもよいし、基材と本発明に係る膜の間に密着性を向上させるプライマー層が設けられていてもよい。
(基材)
基材としては、任意の材料を用いることが出来るが、金属やプラスチックが好ましい。金属材料の一例としては、アルミニウム、チタン、ステンレス、マグネシウム合金、リチウムマグネシウム合金等が挙げられる。プラスチックの一例としては、ポリカーボネート樹脂、アクリアル樹脂、ABS樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
また、基材の膜厚としては任意の厚みを持つことが出来るが、0.5mm以上5mm以下、より好ましくは、0.5mm以上2mm以下であることが好ましい。膜厚が0.5mm未満になるとレンズ鏡筒の形状を保持することが困難である。また、膜厚が5mmを超えると部材のコストが高くなる。
(プライマー)
プライマーは基材と膜の密着性を向上させる目的で用いても良い。
プライマーとしては、任意の材料を用いることが出来るが、一例としてはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、プライマーには本発明の粒子や本発明以外の粒子、着色剤、分散剤、硬化剤、硬化触媒、可塑剤、チキソ付与剤、レベリング剤、有機着色剤、無機着色剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤、溶媒の残渣が含まれていても構わない。
また、プライマーの膜厚としては2μm以上30μm以下が好ましく、5μm以上20μm以下がより好ましい。膜厚が2μm未満では膜の密着性が低下することがあり、30μmを超えると位置精度に悪影響を及ぼすことがある。
(本発明に係る膜の膜厚)
本発明に係る膜は膜厚10μm以上70μm以下であることが好ましい。膜厚が10μm未満になると、日射反射率が低下する恐れがある。また、膜厚が70μmを超えると光学機器の位置精度に悪影響を及ぼすことがある。
《物品の製造方法》
本発明に係る物品の製造方法は、10μm以上70μm以下で本発明の塗料を基材上に均一に塗布出来れば任意の塗布方法および硬化方法を用いることが出来る。
塗布方法としては、ハケ塗り、スプレー塗布、ディップコーティング、転写等が挙げられる。また、遮熱膜は1層塗りであっても、多層塗りであっても構わないし、意匠性を出すためにシボ加工されていても良い。
また、硬化方法としては室温放置しても構わないし、任意の熱により硬化を促進したり、紫外線を与えても構わない。熱を与えて硬化させる方法としては、加熱炉、ヒーター、赤外線加熱等が挙げられる。硬化温度としては、室温から400℃が好ましく、更に室温から200℃が好ましい。
このように、本発明の物品は、プラスチックあるいは金属の基材に本発明の塗料を塗布することで、その表面に遮熱性能に優れた膜(本発明に係る膜)が形成されている。このように形成された膜には、少なくとも樹脂とアゾ系有機粒子とTiおよびOを含む粒子を含む。
(アゾ系有機粒子)
本発明に係る膜に含まれるアゾ系有機粒子の含有量は0.1面積%以上0.4面積%以下が好ましく、より好ましくは0.15面積%以上0.3面積%以下である。アゾ系有機粒子の含有量が0.1面積%未満になると膜の明度が高くなりすぎて、防汚性が悪化する。また、アゾ系有機粒子の含有量が0.4面積%以上になると、膜の明度が低くなりすぎて日射反射率が悪化する。
尚、本発明に係る膜に含まれるアゾ系有機粒子の含有量の測定は以下のように行なうものとする。まず、本発明に係る膜表面付近の断面(3μm×3μm)を5か所切り出し、透過電子顕微鏡法(TEM)で10万倍に拡大する。粒子が大きい場合は、断面(10μm×10μm)を5か所切り出し、透過電子顕微鏡法(TEM)で3万倍に拡大する。次に、5か所についてEnergy Dispersive X−ray Spectroscopy(EDS)でアゾ系有機粒子を面分析し、単位面積当たりの含有量を算出する。最後に、5か所の平均値より本発明に係る膜に含まれるアゾ系有機粒子の含有量を算出する。尚、本分析手法は5か所の断面積の平均をとっているため、理論値の体積値と本手法による分析値はほぼ同じ値となる。
(TiおよびOを含む粒子)
本発明に係る膜に含まれるTiおよびOを含む粒子の含有量は、膜の断面積に対して、0.1面積%以上1.0面積%以下が好ましく、より好ましくは0.2面積%以上0.7面積%以下である。本発明のTiおよびOを含む粒子の含有量が0.1面積%未満になると太陽光照射時の光触媒作用が少ないため、本発明の膜の明度変化が大きくなる恐れがある。本発明のTiおよびOを含む粒子の含有量が1.0面積%を超えると太陽光照射時の光触媒作用が大きすぎて、本発明の膜の明度変化が大きくなる恐れがある。
尚、本発明に係る膜に含まれるTiおよびOを含む粒子の含有量の測定は以下のように行なうものとする。まず、本発明に係る膜表面付近の断面(3μm×3μm)を5か所切り出す。この5か所の断面を透過電子顕微鏡法(TEM)で10万倍に拡大する。粒子が大きい場合は、断面(10μm×10μm)を5か所切り出し、透過電子顕微鏡法(TEM)で3万倍に拡大する。次に、5か所についてEnergy Dispersive X−ray Spectroscopy(EDS)で粒子を面分析し、単位面積当たりの含有量を算出する。最後に、5か所の平均値より本発明に係る膜に含まれるTiおよびOを含む粒子の含有量を算出し、この値をTiおよびOを含む粒子の含有量とする。本実施形態においてはこの方法によって算出された含有量を面積%とする。
また、TiおよびOを含む粒子は、TiおよびOを含む粒子と樹脂との接触面積が、TiおよびOを含む粒子の表面積に対して20%以上である粒子をTiおよびOを含む粒子とする。具体的には、含有量を算出するために切り出した断面を同じように面分析する。そして、TiおよびOを含む粒子の断面の全体の輪郭線の長さに対する、樹脂と接している輪郭線の長さが20%以上であればTiおよびOを含む粒子であるとする。
また、本発明のアゾ系有機粒子の含有量を100面積%とした時、TiおよびOを含む粒子の含有量は、25面積%以上1000面積%以下であることが好ましく、より好ましくは50面積%以上500面積%以下である。1000面積%を超えると明度変化が大きくなる恐れがある。また、25面積%未満になっても明度変化が大きくなる恐れがある。
(樹脂)
本発明に係る膜に含まれる樹脂の含有量は、膜の断面積を100面積%とした時、5面積%以上80面積%以下が好ましく、より好ましくは30面積%以上60面積%以下である。本発明の樹脂の含有量が5面積%未満になると基材との密着性が悪化する恐れがある。また、本発明の樹脂の含有量が60面積%を超えると、太陽光の日射反射率が悪化する恐れがある。
尚、本発明に係る膜に含まれる樹脂の含有量の測定は以下のように行った。まず、本発明に係る膜表面付近の断面(3μm×3μm)を5か所切り出し、透過電子顕微鏡法(TEM)で10万倍に拡大する。粒子が大きい場合は、断面(10μm×10μm)を5か所切り出し、透過電子顕微鏡法(TEM)で3万倍に拡大する。次に、5か所についてEnergy Dispersive X−ray Spectroscopy(EDS)で樹脂を面分析し、単位面積当たりの含有量を算出する。最後に、5か所の平均値より本発明に係る膜に含まれる樹脂の含有量を算出し、この値を膜に含まれる樹脂の含有量とする。
(明度を調整するための粒子(無機顔料))
本発明に係る膜に含まれる明度を調整するための粒子(無機顔料)の含有量は、膜の単位断面積を100面積%とした時、10面積%以上80面積%以下が好ましく、より好ましくは20面積%以上60面積%以下である。本発明の明度を調整するための粒子の含有量が10面積%未満になると着色力が弱く、明度を50以上にすることが困難になる恐れがある。また本発明の明度を調整するための粒子の含有量が80面積%を超えると膜の脆性が悪化し、脆くなる恐れがある。
尚、本発明に係る膜に含まれる明度を調整するための粒子(無機顔料)の含有量の測定は以下のように行った。まず、本発明に係る膜表面付近の断面(3μm×3μm)を5か所切り出し、透過電子顕微鏡法(TEM)で10万倍に拡大する。粒子が大きい場合は、断面(10μm×10μm)を5か所切り出し、透過電子顕微鏡法(TEM)で3万倍に拡大する。次に、5か所についてEnergy Dispersive X−ray Spectroscopy(EDS)で明度を調整するための粒子(無機顔料)を面分析し、単位面積当たりの含有量を算出する。最後に、5か所の平均値より本発明に係る膜に含まれる明度を調整するための粒子(無機顔料)の含有量を算出する。
明度を調整するための粒子(無機顔料)がシリカで表面が被覆された酸化チタン粒子の場合は、上記の面分析によって、酸化チタン粒子の一部分にシリカが付着(被覆)していれば、シリカで表面が被覆されたチタニアであるとする。
(シリカ粒子)
シリカ粒子の含有量は1面積%以上10面積%以下であることが好ましい。シリカ粒子の含有量が1面積%未満になると、シリカで表面が被覆された酸化チタン粒子に被覆されたシリカの微小欠陥を埋めきれないため、無酸素雰囲気下での変色が悪化する恐れがある。また、シリカ粒子の含有量が10面積%を超えると、塗膜のヘイズが悪化するため、反射率が悪化する恐れがある。
尚、本発明に係る膜に含まれるシリカ粒子の含有量の測定は以下のように行った。まず、本発明に係る膜表面付近の断面(3μm×3μm)を5か所切り出し、透過電子顕微鏡法(TEM)で10万倍に拡大する。粒子が大きい場合は、断面(10μm×10μm)を5か所切り出し、透過電子顕微鏡法(TEM)で3万倍に拡大する。次に、5か所についてEnergy Dispersive X−ray Spectroscopy(EDS)でシリカ粒子を面分析し、単位面積当たりの含有量を算出する。最後に、5か所の平均値よりシリカ粒子の含有量を算出する。
(その他の添加剤)
本発明に係る膜には、その他の任意の添加材を含んでいてもよい。その一例としては、分散剤、硬化剤、硬化触媒、可塑剤、チキソ性付与剤、レベリング剤、艶消し剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤、上記以外の色味を調整するための無機微粒子および有機微粒子等が挙げられる。
次に、このように形成された膜を有する物品の特性について説明する。
(日射反射率)
本発明の物品の、少なくとも本発明に係る膜が形成されている部分は、日射反射率が60%以上であることが好ましい。日射反射率が60%未満になると温度低減効果が低下する。
(明度)
本発明の物品の、少なくとも本発明に係る膜が形成されている部分は、明度が50以上であることが好ましく、71以上80以下であることがより好ましい。明度が50未満になると、反射率が低下し、温度低減効果が下がる。明度が80以上になると色が白いため防汚性が悪化する恐れがある。
(a*、b*の範囲)
本発明の物品の、少なくとも本発明に係る膜が形成されている部分の色味を表すa*およびb*はそれぞれ−5以上+5以下であることが好ましい。a*およびb*の値が−5未満もしくは+5以上になると太陽光の照射によりアゾ系有機顔料が退色した際のa*およびb*の色味変化が大きくなる恐れがある。
[実施例1〜12]
以下に、本発明における好適な実施例について説明する。
実施例1から12における塗料の調製、膜の作製、膜を有する物品の特性評価は下記の方法で行った。
<物品の特性評価>
膜を有する物品の特性評価には色差計(SE−7700;日本電色)を用い、明度(L*)、a*、b*を測定した。測定用のサンプルには30mm角で厚みがlmmの金属板に本発明に係る膜を形成して用いた。金属板には、ステンレス、アルミニウム、チタン、マグネシウム合金の中のいずれかを用いた。また、マグネシウム合金の金属板にスピンコーターで50μmの膜厚になるように本発明に係る膜を塗布して焼成した。焼成後に、色差計で本発明に係る膜を有する金属板の膜の部分のL*、a*、b*の値を測定した。次に、耐光性試験機(SUNTESTXXL+;ATLAS)で300nmから400nmで放射強度が50±2W/mでブラックパネルの温度が63℃±3℃の条件で200時間投入した。耐光試験終了後に、本発明に係る膜を有する金属板の膜の部分のL*、a*、b*の値を測定した。
ΔL*=耐光性試験後のL*−耐光性試験後のL*
明度変化(ΔL*)が0.3未満であれば色味変化が非常に少ない良好な膜と言える。明度変化が0.3以上1.0未満であれば良好な膜と言える。明度変化が1.0以上になると色味変化が大きく、良好な膜とは言えない。
(A〜Cの4段階評価)
A;明度変化±が0.3未満
B;明度変化±が0.3以上1.0未満
C;明度変化±が1.0以上
<日射反射率評価>
以下に、日射反射率評価について説明する。日射反射率は、図5に示すように、分光光度計(U−4000,日立ハイテク)を用いて反射率を測定した後に日射反射率に換算した。
まず、反射率測定方法を説明する。図5に示すように積分球19に対して波長300nmから波長2500nmの入射光1を入射させた。まず、入射光1に対して、5°傾けた試験片を取り付け部20に100%反射が起こるアルミナ焼結体のブランクを設置し、ベースライン測定を行った。続いて、試験片取り付け部20にブランクの替わりに本発明に係る膜を形成した試験片を設置し、波長300nmから波長2500nmの光を入射させ、検出器21で検出して反射率を測定した。次に、測定した反射率にJIS−K560(塗膜の日射反射率の求め方)に基づいて、重み付けの数値(重価係数)を掛け合わせて積分し、積分値より日射反射率を算出した。
測定用のサンプルには30mm角で厚みがlmmの金属板に本発明に係る膜を形成して用いた。金属板には、ステンレス、アルミニウム、チタン、マグネシウム合金の中のいずれかを用いた。また、マグネシウム合金の金属板にスピンコーターで50μmの膜厚になるように本発明に係る膜を塗布して焼成した。本発明に係る膜の上面にセロハンテープ(CT−12M;ニチバン)を貼り付けた。そして耐光性試験機(SUNTESTXXL+;ATLAS)で300nmから400nmで放射強度が50±2W/mでブラックパネルの温度が63℃±3℃の条件で200時間投入した。耐光試験終了後にセロハンテープを膜から剥がしてアセトンで洗浄後、24時間以内に分光光度計で波長300mmから波長2500nmの反射率を測定し、JISK 560に基づいて、日射反射率を算出した。
日射反射率としては、日射反射率が70%以上であれば温度低減効果が高いので非常に良好な膜と言える。また、日射反射率が60%以上70%未満であれば温度低減効果が比較的高いので良好な膜と言える。日射反射率が60%未満になると温度低減効果が下がるので良好な膜とは言えない。
(A〜Cの3段階評価)
A:日射反射率が70%以上
B:日射反射率が60%以上70%未満
C:日射反射率が60%未満
<遮熱効果>
図6は温度の評価方法を示す模式図である。図6に示すように、温度測定にはランプ22、温度測定用治具25および温度評価用の試験片23を用いた。温度評価用の試験片23には、100mm角で厚みがlmmの金属板に本発明に係る膜を形成して用いた。金属板には、ステンレス、アルミニウム、チタン、マグネシウム合金の中のいずれかを用いた。また、金属板にスピンコーターで50μmの膜厚になるように本発明に係る膜を塗布して焼成した。温度測定用治具25には、表面が自色で120mm×120mm×120mmの段ボールを用い、温度評価用の試験片23取り付け部分に90mm×90mmの窓部を設けた。また、ランプ22にはハイラックスMT150FD6500K(岩崎電気)を用いた。
次に、温度測定用治具25に温度評価用の試験片23を取り付け、温度評価用の試験片23の裏面に熱電対を取り付けた。温度評価用の試験片23が取り付けられた温度測定用治具25をランプ22の距離が100mmになるように設置した。次にランプ22を60分間照射し、60分後の温度を測定した。
温度低減効果は、温度評価用の試験片23の表面に黒色のブランクを形成して温度測定し、実施例の膜の温度測定結果との差分を計算して温度低減効果とした。
黒色のブランクとしては、カーボンブラック(MA100,三菱化学)20g、エポキシ樹脂(jER828;三菱化学)100g、アミン硬化剤(STll,三菱化学)70g、シンナー20gを遊星回転装置で混合した塗料を試験片23の表面に塗布した。そして、焼成して作製した。
温度低減効果が7℃以上であれば非常に遮熱効果が高い膜であると言える。温度低減効果が3℃以上7℃未満であれば比較的遮熱効果が高い膜であると言える。また、温度低減効果が3℃未満であれば遮熱効果が良好な膜とは言えない。
(A〜Cの3段階評価)
A:温度低減効果が7℃以上
B:温度低減効果が3℃以上7℃未満
C:温度低減効果が5℃未満
[実施例1]
<塗料の調製>
実施例1は、以下の方法で塗料を作製した。樹脂125g(塗膜換算48.6vol%)、アゾ系有機粒子0.5g(塗膜換算0.2vol%)、TiおよびOを含む粒子4.5g(塗膜換算0.7vol%)を秤量した。また、明度を調整するための粒子(無機顔料)150g(塗膜換算28.6vol%)、分散剤5g(塗膜換算3.5vol%)、溶剤100gを秤量した。そして、ボールミルにて15時間攪拌し、主剤を得た。得られた主剤10gに対して硬化剤1g(体積換算18.4vol%)を混合し、実施例1の塗料を得た。
樹脂にはオレスターQ−691(三井化学)を用いた。アゾ系有機粒子には、クロモファインブラックA1103(大日精化工業)を用いた。TiおよびOを含む粒子には#5950(旭日産業)を用いた。明度を調整するための粒子(無機顔料)には、D−970(堺化学;平均粒径0.26μm、シリカ被覆チタニア)を用いた。硬化剤には、タケネートD−120N(三井化学)を用いた。
<膜の作製>
実施例1では、以下の方法で膜を作製した。上記の塗料をマグネシウム合金の金属板にスピンコーターで50μmの膜厚になるように本発明の膜を塗布し、室温で一晩乾燥後、130℃で30分間焼成し、実施例1の膜を得た。
[実施例2〜13]
実施例2〜13では、表1、2の材料および条件にする以外は実施例1と同様にして、塗料および膜を作製した。
尚、(Ti,Ni,Sb)O粒子にはYellow5000(旭日産業)を用いた。中空シリカにはSphericel−110P8(ポッターズバロティーニ社)を用いた。ニッケルアゾ粒子にはC.I.ピグメントイエロー150を用いた。Fe−Zn粒子にはBrown4123(旭日産業)を用いた。Co−Al−Ni−Ti粒子にはGreen2024(旭日産業)を用いた。Co−Al粒子にはCoBlue1024(旭日産業)を用いた。TiO粒子にはHT0110(東邦チタニウム)を用いた。
(評価結果〉
上記の方法により、実施例1から12の膜の耐光試験後の明度変化(ΔL*)、耐光試験後の日射反射率(R)、耐光試験前後の温度低減効果を評価した結果を表3、4に記す。
結果としては、アゾ系有機粒子を含んでいるにもかかわらず、明度変化(ΔL*)が1.0未満に抑えられているかどうか、より好ましくは0.3未満に抑えられているかどうかで評価した。
また、遮熱効果に関しては、日射反射率が60以上70%未満であることが好ましく、日射反射率が70%以上であることがより好ましいとした。また温度低減効果は3℃以上7℃未満であることが好ましく、7℃以上であることがより好ましいとした。
表3に示すように、アクリルポリオール、アゾメチンブラック、(Ti、Sb、Cr)O、シリカ被覆チタニア、分散剤を用い、明度を76に調整した実施例1の耐光試験後の明度変化、日射反射率、温度低減効果を評価した。明度変化は、0.3未満であり非常に良好であった。また、日射反射率は60%以上70%未満であり良好であった。また温度低減効果は3℃以上7℃未満であり、良好であった。
表3に、実施例1に対してアゾメチンブラックを0.1体積%、(Ti、Sb、Cr)Oを0.1体積%と少なく調整した実施例2の膜の耐光試験前後の明度変化、日射反射率、温度低減効果を評価した。明度変化は、0.3未満であり非常に良好であった。また、日射反射率は70%以上であり非常に良好であった。また温度低減効果は7℃以上であり、非常に良好であった。
表3に、実施例1に対してアゾメチンブラックを0.4体積%、(Ti、Sb、Cr)Oを1体積%と多く調整した実施例3の膜の耐光試験前後の明度変化、日射反射率、温度低減効果を評価した。明度変化は、0.3未満であり非常に良好であった。また、日射反射率は60%以上70%未満であり良好であった。また温度低減効果は3℃以上7℃未満であり、良好であった。
表3に、実施例1に対して(Ti、Sb、Cr)Oの代わりに(Ti、Ni−Sb)Oを使用した実施例4の膜の耐光試験前後の明度変化、日射反射率、温度低減効果を評価した。明度変化は、0.3未満であり非常に良好であった。また、日射反射率は60%以上70%未満であり良好であった。また温度低減効果は3℃以上7℃未満であり、良好であった。
表3に、実施例1に対してシリカ被覆酸化チタンの代わりに断熱性のある中空シリカを使用した実施例5の膜の耐光試験前後の明度変化、日射反射率、温度低減効果を評価した。明度変化は、0.3未満であり非常に良好であった。また、日射反射率は60%未満であったが、中空シリカは断熱効果が高いため温度低減効果は3℃以上7℃未満であり、良好であった。
表3に、実施例1に対してアゾメチンブラックの代わりにニッケルアゾを使用した実施例6の膜の耐光試験前後の明度変化、日射反射率、温度低減効果を評価した。明度変化は、0.3未満であり非常に良好であった。また、日射反射率は60%以上70%未満であり良好であった。また温度低減効果は3℃以上7℃未満であり、良好であった。
表4に、実施例1に対してその他の顔料としてFe−Zn粒子を追加し、a*を+6に調整した実施例7の膜の耐光試験前後の明度変化、日射反射率、温度低減効果を評価した。明度変化は、0.3以上1.0未満であり良好であった。また、日射反射率は60%以上70%未満であり良好であった。また温度低減効果は3℃以上7℃未満であり、良好であった。
表4に、実施例1に対して、(Co−Al−Ni−Ti)Oを0.2体積%追加して、a*を−6に調整した実施例8の膜の耐光試験前後の明度変化、日射反射率、温度低減効果を評価した。明度変化は、0.3以上1.0未満であり良好であった。また、日射反射率は60%以上70%未満であり良好であった。また温度低減効果は3℃以上7℃未満であり、良好であった。
表4に、実施例1に対して、(Ti、Sb、Cr)Oを1.63体積%と多く添加して、b*を+6に調整した実施例9の膜の耐光試験前後の明度変化、日射反射率、温度低減効果を評価した。明度変化は、0.3以上1.0未満であり良好であった。また、日射反射率は60%以上70%未満であり良好であった。また温度低減効果は3℃以上7℃未満であり、良好であった。
表4に、実施例1に対して、Co−Alを添加して、b*を−6に調整した実施例10の膜の耐光試験前後の明度変化、日射反射率、温度低減効果を評価した。明度変化は、0.3以上1.0未満であり良好であった。また、日射反射率は60%以上70%未満であり良好であった。また温度低減効果は3℃以上7℃未満であり、良好であった。
表4に、実施例1に対して、(Ti、Sb、Cr)Oの代わりにチタニアを添加した、実施例11の膜の耐光試験前後の明度変化、日射反射率、温度低減効果を評価した。明度変化は、0.3以上1.0未満であり良好であった。また、日射反射率は60%以上70%未満であり良好であった。また温度低減効果は3℃以上7℃未満であり、良好であった。
表4に、実施例1に対して、アゾメチンブラックを0.94体積%、(Ti、Sb、Cr)Oを1.61体積%と多く添加して明度を50に調整した、実施例12の膜の耐光試験前後の明度変化、日射反射率、温度低減効果を評価した。明度変化は、0.3未満であり非常に良好であった。また、日射反射率は60%以上70%未満であり良好であった。また温度低減効果は3℃以上7℃未満であり、良好であった。
表4に、実施例1に対して、アゾメチンブラックを1.11体積%、(Ti、Sb、Cr)Oを1.6体積%と多く添加した、実施例13の膜の耐光試験前後の明度変化、日射反射率、温度低減効果を評価した。明度変化は、0.3未満であり非常に良好であった。しかし、明度が低くなりすぎたため、日射反射率は60%未満であり低かった。また温度低減効果は3℃未満であり、悪かった。このことから、アゾメチンブラックを多く添加した膜であってもTiおよびOを含む粒子を含ませることで明度変化が抑えられることがわかった。しかし、アゾメチンブラックを多く添加すると明度が下がり日射反射率が低減し温度低減効果が抑制されてしまうため、明度は50以上に調整することが好ましいことがわかった。
[比較例1〜2]
比較のための塗料の調製、膜の作製、膜の特性評価、明度変化の評価、日射反射率の評価、温度低減効果の評価を前述の実施例1〜13と同様に行った。実施例1〜13と異なる点について以下に示す。
表5に比較例1〜2の膜を構成する材料および添加量を示す。表6に比較例1〜2の膜を用いて評価した結果をそれぞれ示す。
表5に、実施例1に対して、アゾメチンブラックの代わりにFe−Cr(Black6350;旭日産業)を添加した、比較例1の膜の耐光試験前後の明度変化、日射反射率、温度低減効果を評価した。アゾ系有機粒子を含まないため、明度変化は0.3未満に抑えられていたが、日射反射率は60%未満であり低かった。また温度低減効果は3℃未満であり、悪かった。
表5に、実施例1に対して、(Ti、Sb、Cr)Oを添加しない、比較例2の膜の耐光試験前後の明度変化、日射反射率、温度低減効果を評価した。明度変化は、1.0以上であり悪かった。日射反射率は60%以上70%未満であり良好であった。また温度低減効果は3℃以上7℃未満であり、良好であった。
(第2の実施形態)
本発明の実施形態の一例として、遮熱性能および耐水性に優れた膜が形成された物品について図7を用いて説明する。第1の実施形態と同じ内容の部分については説明を省略する場合がある。
《材料構成》
図7は、基材120の表面121の少なくとも一部に形成された膜122を有する物品を示す図であり、図7(a)は、本実施形態の物品の断面図である。図7(b)は、図7(a)の領域125を拡大した概略図である。図7(c)は、凝集したシリカ粒子の説明図である。図7(d)は物品の断面のSEM画像である。図7(d)に示す基材120はプライマー層を含んでいる例を示している。図7において、本実施形態の物品は、基材120と膜122を有し、膜122は少なくとも樹脂126、および平均粒径が100nm以上400nm以下の粒子127を含んでいる。また、本実施形態の膜122は、平均粒径が100nm以上400nm以下の粒子127を含む領域124と、平均粒径が100nm以上400nm以下の粒子127を含まない領域123を含む。本明細書においては、平均粒径が100nm以上400nm以下の粒子127を含む領域を粒子領域124、平均粒径が100nm以上400nm以下の粒子127を含まない領域を樹脂領域123と称する。
(樹脂)
次に本実施形態の膜122に含まれる樹脂126について説明する。
本実施形態の樹脂の一例としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種類を用いても複数の種類を含んでも構わない。
また、本実施形態の樹脂126の含有量は、膜の断面において、10面積%以上80面積%以下が好ましく、より好ましくは15面積%以上70面積%以下である。本明細書において、膜の断面とは、基材120の表面121あるいは膜122の表面30の法線方向に平行な断面を少なくとも30μm×30μmの面積を有する断面を切り出す。法線方向に平行な断面が好ましいが、法線方向に対して10°程度傾いた断面であっても構わない。また、厚さが30μm以下の膜厚である場合は、一辺が30μm以下の断面であっても構わない。
本実施形態の樹脂126の含有量が10面積%未満になると基材120との密着性が悪化する恐れがある。また、本実施形態の樹脂126の含有量が80面積%を超えると、太陽光の日射反射率が悪化する恐れがある。本実施形態の樹脂126の含有量の測定は以下のように行う。まず、本実施形態に係る膜122から、厚さ300nm、5μm×5μmのサンプルを5か所切り出し、透過電子顕微鏡法(TEM)で10万倍に拡大する。次に、5か所についてEnergy Dispersive X−ray Spectroscopy(EDS)で樹脂を面分析し、単位面積当たりの含有量を算出する。最後に、5か所の平均値より本発明に係る膜122に含まれる樹脂126の含有量を算出する。本実施形態においてはこの方法によって算出された含有量を面積%とする。
(白色顔料)
次に本実施形態の膜122に含まれる粒子127である白色顔料(本明細書においては第一の粒子または単に粒子と称する場合がある)について説明する。本実施形態の膜122は、日射反射率が高いことが好ましく、白色かつ高屈折率であることが好ましい。粒子127を膜122に含ませることで、白色かつ高屈折率を有する膜122を得ることが可能となる。粒子127は、チタニア、アルミナ、ジルコニアおよび酸化亜鉛のうち、少なくとも一種を含む粒子である。特に、高屈折率のチタニアをシリカで表面を被覆した粒子を用いると、光触媒活性を抑制できるため周囲の樹脂劣化を低減することができ、より好ましい。
また、粒子127の粒径は平均粒径が100nm以上400nm以下であることが好ましい。平均粒径が100nm未満の場合、太陽光を反射させることが難しい。また、平均粒径が400nmを超えると耐水性が減少する。詳しくは後述するが、樹脂126と粒子127の親水性の違いにより、樹脂126と粒子127の界面を介して、水分が膜中に取り込まれてしまう。平均粒径が400nmを超えるとさらに樹脂126との連続した接触面積が増えてしまい、非常に多くの水分が膜中の一部に取り込まれてしまい、耐水性が著しく減少してしまう。本実施形態に係る粒子127の粒径は、次のように求めるものとする。まず、本実施形態に係る膜122から、厚さ300nm、5μm×5μmのサンプルを5か所切り出し、透過電子顕微鏡法(TEM)で10万倍に拡大する。次に、5か所についてEnergy Dispersive X−ray Spectroscopy(EDS)で粒子127を面分析し、一つ一つの粒子の粒子径を求め、その平均値を算出する。最後に、5か所の平均値を求める。この5か所の平均値を、本実施形態に係る膜に含まれる粒子127の平均粒子径とする。
本実施形態の粒子127の含有量は、本実施形態に係る膜122の断面において、10面積%以上60面積%以下が好ましく、より好ましくは15面積%以上50面積%以下である。粒子127の含有量が10面積%未満になると太陽光に対する隠ぺい性が低下し、遮熱性能に優れた膜として機能しなくなる。また本実施形態の粒子127の含有量が90面積%を超えると膜の脆性が悪化し、脆くなる恐れがある。粒子127の含有量の測定は以下のように行う。まず、本実施形態に係る膜から、厚さ300nm、5μm×5μmのサンプルを5か所切り出し、透過電子顕微鏡法(TEM)で10万倍に拡大する。次に、5か所についてEnergy Dispersive X−ray Spectroscopy(EDS)で粒子を面分析し、単位面積当たりの含有量を算出する。最後に、5か所の平均値より本発明に係る膜122に含まれる粒子127の含有量を算出する。本実施形態においてはこの方法によって算出された含有量を面積%とする。
(シリカ粒子)
本実施形態の膜122は、シリカ粒子128を含んでいてもよい。シリカ粒子128は、個数基準の平均粒子径が50nm以上350nm以下であることが好ましく、150nm以上300nm以下であることがより好ましい。シリカ粒子128の平均粒子径が50nm未満になると、膜を形成するための塗料におけるチキソ性が減少し、塗布性が低下する。また、これらの微粒子の形状は、例えば、真球、球状、楕円球、直方体、立方体、またはそれらの結合した状態、あるいは不定形であっても良い。
本実施形態のシリカ粒子128の粒子径は、個数基準の平均粒子径であり、シリカ粒子128の平均粒子径は、塗布前の塗料の状態の場合は、動的光散乱法により測定できる。また、膜の状態から測定する場合は、まず、本実施形態に係る膜から、厚さ300nm、5μm×5μmのサンプルを5か所切り出し、透過電子顕微鏡法(TEM)で10万倍に拡大する。次に、5か所についてEnergy Dispersive X−ray Spectroscopy(EDS)でシリカ粒子128を面分析し、それぞれのシリカ粒子128の粒子径を求め、その平均値を算出する。最後に、5か所の平均値を求める。この5か所の平均値を、本実施形態に係る膜に含まれるシリカ粒子の平均粒子径とする。本実施形態においては、例えば、図7(c)に示すように、10nm以上50nm以下のシリカ粒子128が凝集し二次粒子になっている場合には、二次粒子の長手方向の長さが50nm以上350nm以下であれば塗布性を向上させることができる。特に、球状のシリカ粒子128がつながった分鎖状のシリカ粒子を選択することが好ましい。球状のシリカ粒子128がつながった分鎖状のシリカ粒子は、遮光膜を形成するための塗料を塗布する際、シリカ粒子128による空間が大きくなるため、粒子127が移動し易いため好適である。
また、シリカ粒子128の含有量は、本実施形態に係る膜の断面において、2.5面積%以上15.0面積%以下であることが好ましく、2.5面積%以上10.0面積%以下であることがより好ましい。シリカ粒子128の含有量が2.5面積%未満であると塗料のチキソ性が減少し、塗布性が低下する。また、シリカ粒子128の含有量が15.0面積%より多い場合は遮熱性能が低下する。シリカ粒子128の含有量の測定は以下のように行う。まず、本実施形態に係る膜から、厚さ300nm、5μm×5μmのサンプルを5か所切り出し、透過電子顕微鏡法(TEM)で10万倍に拡大する。次に、5か所についてEnergy Dispersive X−ray Spectroscopy(EDS)でシリカ粒子128を面分析し、単位面積当たりの含有量を算出する。最後に、5か所の平均値より本発明に係る膜に含まれるシリカ粒子128の含有量を算出する。本実施形態においてはこの方法によって算出された含有量を面積%とする。
(着色剤)
本実施形態の膜122には、必要に応じて外観に意匠性を持たせるために、着色剤として前述の粒子127である白色顔料とは別の顔料を含んでいてもよい。本明細書において、白色顔料とは別の顔料を単に顔料と称する場合がある。
本実施形態の顔料は、遮熱膜の明度(L*値)が、71以上となるように調整出来ることが好ましく、より好ましい範囲としては、明度71以上85以下である。本実施形態の遮熱膜が明度71未満になると、日射反射率が低下し、温度低減効果が悪化する。本発明の遮熱膜の明度が85を超えると顔料による可視光の吸収が少なくなるので、可視光の反射による眩しさを感じる恐れがある。また、本実施形態の顔料は赤外線を反射もしくは透過することが好ましい。
本実施形態の顔料としては、着色剤を指し、有機顔料を用いても無機顔料を用いてもそれらを組み合わせても構わない。
本実施形態における明度とは、色差計(SE−7700;日本電色)を用いて測定した値とする。
有機顔料の一例としては、アゾメチンブラック、ペリレン顔料、などが挙げられる。無機顔料の一例としては、Co−Zn−Si系、Co−Al系、Co−Al−Cr系、Co−Al−Cr−Zn系、Co−Al−Zn−Ti系、Co−Ni−Zn−Ti系、Ti−Cr−Sb系、Ti−Fe−Zn系、Fe−Zn系、Fe−Cr系が挙げられる。また、Mn−Bi系、Co−Cr−Zn−Sb系、Cu−Cr系、Cu−Cr−Mn系、Cu−Fe−Mn系、Mn−Y系、Mn−Sr系、Co−Cr−Zn−Al−Ti系、Co−Cr−Zn−Ti系、Ti−Cr−Sb系、P−Ba−Sr系なども挙げられる。
(有機顔料)
アゾ系有機粒子としては、アゾ基を有する化合物であれば任意の粒子を用いることが出来る。本実施形態のアゾ系有機粒子の色としては、黒色系、黄色系、赤色系、橙色系などが挙げられるが、黒色系が太陽光による退色が起こった際の、色味変化(a*、b*)が少ないのでより好ましい。また、太陽光の反射率が高いことが好ましく、アゾ系有機粒子単独での日射反射率が10%を超える材料を選択することが好ましい。アゾ系有機粒子の一例としては、ニッケルアゾ顔料、不溶性アゾ系顔料、溶性アゾ系顔料、高分子量アゾ系顔料、アゾメチンアゾ顔料系顔料等が挙げられる。これらのアゾ系有機粒子は1種類を用いても複数の種類を含んでも構わない。
本実施形態の有機顔料の平均粒径としては0.1μm以上5.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上2.0μm以下である。本実施形態の有機顔料の平均粒径が0.1μm未満になると粒子の表面積が増加するため、耐光性が悪化し、変色する恐れがある。また、本実施形態の有機顔料の平均粒径が5.0μmを超えると膜の凹凸が大きくなり、膜厚精度が悪化するため、本実施形態をレンズ鏡筒に用いた場合、ピント合わせなどの精度が低下する恐れがある。
本実施形態における平均粒径とは、複数の樹脂粒子それぞれの粒径の平均である。樹脂粒子の平均粒径は、水中へ分散させレーザー散乱法により分析することにより求められる。本実施形態では、樹脂粒子の平均粒径は、体積平均粒径である。
また有機顔料には任意の形状の粒子を用いることができる。その一例としては、球状、立方体、楕円形、板状、層状、鎖状、中空、星形、針状、異形状などがあげられる。その中でも、有機顔料の凝集による空気界面側への偏析を発生させやすい板状、層状、鎖状などの形状がさらに好ましい。
これらの有機顔料は1種類を用いても複数の種類を含んでも構わないが、意匠性と遮熱性を損なわない範囲で用いることが好ましい。
また本実施形態に係る塗料に含まれる有機顔料の含有量は、塗料全体を100重量%とした場合、0.01重量%以上1.0重量%以下が好ましく、より好ましくは0.015重量%以上0.5重量以下である。有機顔料の含有量が0.01重量%未満になると膜の明度が高くなりすぎて意匠性が悪化する。また防汚性も悪化する恐れがある。また、有機顔料の含有量が1.0重量%以上になると、膜の明度が低くなりすぎて遮熱性が悪化する。
(無機顔料)
本実施形態に用いられる無機顔料としては、遮熱性に優れたものであれば任意の無機顔料を用いることができるが、表面がシリカで被覆されたチタニア粒子を含むことが好ましい。色の調整のために着色された無機顔料をさらに含むことが好ましい。また、表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子を含んでいてもよい。表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子が着色された無機顔料であってもよい。本実施形態においては、表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子を単に、TiおよびOを含む粒子と称する場合がある。
チタニアはそのもの自身が持つ高い屈折率のため、膜を所望の屈折率に調整することが容易である。また、自身が持つ明色のため、塗膜を所望の色味に調整することが容易であり、さらに、十分に微粒化された微粒子が比較的安価に多数上市されていることからも好適に用いることができる。
本実施形態における膜に含まれる表面がシリカで被覆されたチタニア粒子の含有量は、樹脂組成物に対して10重量%以上70重量%以下であることが好ましく、20重量%以上60重量%以下であることが更に好ましい。10重量%未満であると十分な赤外反射効果を得ることができない場合があり、また70重量%より多い場合は膜として十分な膜質が得られない場合がある。表面がシリカで被覆された粒子を用いると、光触媒活性を抑制できるため周囲の樹脂劣化を低減することができる。
また、本実施形態における表面がシリカで被覆されたチタニア粒子の平均粒子径は0.1μm以上1.5μm以下であることが好ましく、さらには0.1μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。0.1μm未満であると粒子の表面積が増大し、表面がシリカで被覆されたチタニア粒子が凝集しやすくなり、好適に膜中に分散させることが困難となる。また、1.5μmより大きいと、詳しくは後述するが、有機顔料の空気界面側への偏析を阻害してしまい、意匠性と遮熱性を両立するための十分な性能を発揮できなくなる。なお、本実施形態における表面がシリカで被覆されたチタニア粒子とは、少なくとも表面の一部がシリカで覆われているものと定義する。また、本実施形態における表面がシリカで被覆されたチタニア粒子の平均粒子径とは、凝集していない粒子における体積球相当直径を指すものとする。
本実施形態における表面がシリカで被覆されたチタニア粒子はその屈折率と平均粒子径が所望の条件を満足する限り、気相法、液相法等公知の方法により製造することができる。例えば、少なくとも酸素を含む雰囲気下において、火炎中に金属粉を投入し燃焼させることで二酸化チタン微粒子を合成する方法や、触媒存在下でチタンアルコキシドを加水分解、重縮合するゾルーゲル法等公知の方法等が挙げられる。また、チタニアはルチル構造やアナターゼ構造といった結晶構造を有することが知られており、アモルファス構造のそれと比較してより高い屈折率を示すが、所望の粒子径を満たすものであればどの結晶形態にも寄らず好適に用いることができる。
本実施形態に係る無機顔料は、前述した表面がシリカで被覆されたチタニア粒子の他に、着色された無機顔料を含んでいてもよい。本実施形態の赤外反射型の着色された無機顔料の含有量は、0.01重量%以上2.0重量%以下が好ましく、より好ましくは0.02重量以上1.5重量%以下である。本実施形態の赤外反射型の着色された無機顔料の含有量が0.01重量積%未満になると太陽光照射時の光触媒作用が少ないため、本実施形態の膜の外観色味変化が大きくなる恐れがある。本実施形態の赤外反射型の着色された無機顔料の含有量が2.0重量%を超えると遮熱性能が悪化する恐れがある。また、本実施形態の赤外反射型の着色された無機顔料は膜中に均一に分散していることがより好ましい。
さらに、表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子を含んでいてもよい。TiおよびOを含む粒子は光触媒作用によって樹脂の分子鎖を切断する必要があるので、耐光性を有するシリカ等の被覆が少ないもしくはないことが好ましい。これは、表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子の光触媒作用によって、太陽光が照射されると膜の明度が低くなるように変化させたいからである。その理由について次に述べる。有機顔料として前述したアゾ系有機粒子は、分子中にアゾ基であるR−N=N−R‘の化学構造を持つ有色の顔料である。アゾ系有機粒子は、無機顔料と比較して赤外線の反射性能が高い特徴を持つが、アゾ系有機粒子は太陽光が照射されるとアゾ基が切断されて2RとN2になる。アゾ系有機粒子はアゾ系有機粒子に含まれるN=Nおよびその周囲の原子配置により色を発現しているため、N=Nが切断されると色が消失し、明度が高くなってしまう。つまり、光学機器等の物品の表面に形成された膜の色が大きく変化してしまう場合がある。この変化は、アゾ系有機粒子の量が少ないほど顕著にあらわれる。
一方、TiおよびOを含む粒子10は粒子中のTiO部分が太陽光による光触媒作用で励起して励起したTiおよびOを含む粒子となる。太陽光により励起したTiおよびOを含む粒子は電子(e−)を樹脂に放出し、樹脂の分子鎖は電子エネルギーによって切断される。このことにより、樹脂は変色した樹脂となり明度が低下する。
このように、本発明に係る膜は、太陽光の照射により、アゾ系有機粒子の明度は高く変化する一方で、TiおよびOを含む粒子の明度は低く変化するため、全体としてはキャンセル効果で色の変色が抑制される。TiおよびOを含む粒子は、TiおよびOのみを含む粒子(例えばチタニア粒子)、およびまたは、TiおよびOの他に1種類以上の無機金属を含む粒子を含む。本実施形態のTiおよびOの他に1種類以上の無機金属を含む粒子の一例としては、(Ti、Ni、Sb)Ox、(Ti、Cr、Sb)Oxが挙げられる。また、(Ti、Fe、Zn)Ox、(Co、Cr、Zn、Al、Ti)Ox、(Co、Cr、Zn、Ti)Ox、(Co、Al、Ni、Ti)Ox等が挙げられる。また、本発明のTiおよびOを含む粒子の一例としては、上記の(Ti、Ni、Sb)Ox、(Ti、Cr、Sb)Ox、(Ti、Fe、Zn)Oxが挙げられる。また、(Co、Cr、Zn、Al、Ti)Ox、(Co、Cr、Zn、Ti)Ox、(Co、Al、Ni、Ti)Oxが挙げられる。TiおよびOを含む粒子を含む場合、その含有量は、1.6重量%以下が好ましい。
本実施形態の顔料としては、任意の色の顔料を用いることが出来る。一例としては、黒色、茶色、黄色、赤色、青色、紫色、ピンク色、緑色、オレンジ色が挙げられる。これらの顔料は1種類を用いても複数の種類を含んでも構わない。
本実施形態の顔料の含有量は、本実施形態に係る膜の断面において、15面積%以下であることが好ましい。本発明の顔料の含有量が15面積%を超えると塗膜の色味が濃くなり、明度が下がる恐れがある。顔料の含有量の測定は以下のように行う。まず、本実施形態に係る膜から、厚さ300nm、5μm×5μmのサンプルを5か所切り出し、透過電子顕微鏡法(TEM)で10万倍に拡大する。次に、5か所についてEnergy Dispersive X−ray Spectroscopy(EDS)で顔料を面分析し、単位面積当たりの含有量を算出する。最後に、5か所の平均値より本発明に係る膜に含まれる顔料の含有量を算出する。本実施形態においてはこの方法によって算出された含有量を面積%とする。
(その他の添加剤)
本発明の光学機器に用いる膜は、その他の任意の添加材を含んでいてもよい。その一例としては、分散剤、硬化剤、硬化触媒、可塑剤、チキソ性付与剤、レベリング剤、艶消し剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤、上記以外の色味を調整するための無機微粒子および有機微粒子等が挙げられる。
次に、遮熱膜の遮熱効果を維持しつつ、耐水性を向上させるための方法について説明する。
[遮熱膜の遮熱効果を維持しつつ耐水性を向上させるための方法]
(遮熱膜の耐水性について)
樹脂126、および平均粒径が100nm以上400nm以下の粒子127を含んでいる膜122は、雨天時の水分あるいは高湿度の状況下において、膜表面から膜の内部に水分を取り込んでしまう。これは、樹脂126と平均粒径が100nm以上400nm以下の粒子127の親水性の違いにより、樹脂126と粒子127の界面を介して、水分が膜中に取り込まれてしまうためであることが分かった。樹脂126と粒子127の界面から取り込まれた水分は、どんどん膜の中に取り込まれ、膜122と基材120の界面129にも偏在することになる。この水分の存在下において、温度変化によって膜122および基材120に膨張や収縮が起こる。すると、膜122と基材120の膨張係数の違いもあり、膜122と基材120との界面129での膜浮きやハガレ、基材120と水分との反応による膨れ等の不良が生じてしまう。一方、高い遮熱性を有するためには、膜中の平均粒径が100nm以上400nm以下の粒子127の含有量をできるだけ増やすことが望ましいが、膜中に水分の通り道を増やしてしまい、膜122と基材120との界面129の水分量を増加させてしまう。
(本発明の遮熱膜の遮熱効果を維持しつつ耐水性を向上させるための方法)
このように、遮熱性と耐水性の向上は、従来の技術では両立することができない課題であることが分かった。
本発明者は、遮熱性の維持と耐水性を向上させるための方法を鋭意検討したところ、膜122中に、樹脂126と粒子127の界面を分断する、平均粒径が100nm以上400nm以下の粒子127を含まない樹脂領域123を設けることを見出した。具体的には、粒子127を含む領域(粒子領域124)の間に、平均粒径が100nm以上400nm以下の粒子127を含まない樹脂領域123を設ける。これにより遮熱性を維持しつつ、耐水性を向上させることが可能であることを見出したものである。
(樹脂領域)
本実施形態の平均粒径が100nm以上400nm以下の粒子127を含まない領域123(樹脂領域)について説明する。
図7に示す、樹脂領域123は、少なくとも樹脂126を含み、必要に応じて前述した添加剤を含む領域である。樹脂126としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂が挙げられる。
樹脂領域の屈折率は、粒子領域の屈折率より低いことが好ましい。樹脂領域の屈折率が、粒子領域の屈折率より低いと、太陽光の反射をより効率的に実現することができ、遮熱性能を向上させることができる。
低屈折率を実現するためには、低屈折率の特性を有する樹脂を用いること、あるいは低屈折率の特性を有する粒子を用いることができる。
低屈折率の特性を有する樹脂は、1.6以下の屈折率を有する樹脂が好ましく、例えば、シリコーン系の樹脂、フッ素樹脂、フッ素基を導入した樹脂が挙げられる。シリコーン系の樹脂の一例としては、メチル系、メチル/フェニル系、プロピル/フェニル系、エポキシ樹脂変性、アルキッド樹脂変性、ポリエステル樹脂変性、ゴム系、それらのレジンやオリゴマー等が挙げられる。これらの樹脂は1種類を用いても複数の種類を含んでも構わない。
また、粒径が100nmより小さく、1.6以下の屈折率を有する粒子(低屈折粒子と称する)を樹脂に分散させることで樹脂領域を低屈折率化しても構わない。また、低屈折率の特性を有する樹脂に低屈折率の粒子を分散させても構わない。
低屈折率粒子としては、有機粒子を用いても無機粒子を用いても構わない。材料としては、例えば、フッ素、MgF2、およびシリカのうちの少なくとも一種を含む粒子が挙げられる。形状は球状であっても、不定形であっても、中空であっても、細孔があっても構わない。
また、本実施形態の低屈折率の特性を有する樹脂の含有量は、20体積%以上100体積%以下が好ましく、より好ましくは30体積%以上90体積%以下である。本発明の樹脂の含有量が20体積%未満になると樹脂領域123に隣接する粒子領域124との密着性が悪化する恐れがある。同様に、本実施形態の低屈折率の特性を有する樹脂の含有量が90体積%を超えても、樹脂領域123に隣接する粒子領域124との密着性が悪化する恐れがある。
樹脂領域123の形状および面積は、膜122の表面1220に垂直な膜の断面について通常のSEM観察により行うことができる。SEM観察の条件としては、加速電圧を5kV、倍率を1000倍として観察をおこなった結果得られた値であるとする。
樹脂領域123の、基材120の表面の法線方向の幅Dは200nm以上2000nm以下が好ましく、200nm以上1000nm以下であればより好ましい。樹脂領域123の基材120の表面の法線方向幅Dが200nm未満になるとになると、耐水性に対して効果がなくなる恐れがある。また2000nmを超えると遮熱性が低下する恐れがある。
樹脂領域123の基材120の表面と平行な方向(平行方向)の幅Eは、3μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。3μm以下になると、耐水性に対する効果がなくなる恐れがあり、また100μmを超えると膜はがれなどの不良が発生する恐れがある。
膜122中に分布している樹脂領域123の面積の合計は、膜の断面の面積全体に対して、0.05面積%以上13面積%以下が好ましく、0.1面積%以上5面積%以下がより好ましい。0.05面積%未満になると、耐水性に対する効果がなくなる恐れがある。また13面積%を超えると、遮熱性能が著しく劣化する恐れがある。
《膜構成》
本実施形態の物品、特に光学機器の上面に形成される膜は少なくとも基材よりも外側に形成される。その形態としては、基材と密着していてもよいし、基材と光学機器上面に形成される膜の間に密着性を向上させるプライマー層が設けられていてもよい。また、基材に金属を用いる場合には、必要に応じて化成処理を施してもよい。
(基材)
基材としては、任意の材料を用いることが出来るが、金属やプラスチックが好ましい。金属材料の一例としては、アルミニウム、チタン、ステンレス、マグネシウム合金、リチウムマグネシウム合金等が挙げられる。プラスチックの一例としては、ポリカーボネート樹脂、アクリアル樹脂、ABS樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
また、基材の膜厚としては任意の厚みを持つことが出来るが、0.5mm以上5mm以下、より好ましくは、0.5mm以上2mm以下であることが好ましい。膜厚が0.5mm未満になるとレンズ鏡筒の形状を保持することが困難である。また、膜厚が5mmを超えると部材のコストが高くなる。
(プライマー)
プライマーは基材と膜の密着性を向上させる目的で用いても良い。
プライマーとしては、任意の材料を用いることが出来るが、一例としてはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、プライマーには本発明の粒子や本発明以外の粒子、着色剤、分散剤、硬化剤、硬化触媒、可塑剤、チキソ付与剤、レベリング剤、有機着色剤、無機着色剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤、溶媒の残渣が含まれていても構わない。
また、プライマーの膜厚としては2μm以上30μm以下が好ましく、5μm以上20μm以下がより好ましい。膜厚が2μm未満では膜の密着性が低下することがあり、30μmを超えると位置精度に悪影響を及ぼすことがある。
(本実施形態の膜の膜厚)
本実施形態の膜は膜厚が10μm以上70μm以下であることが好ましい。膜厚が10μm未満になると、日射反射率が低下する恐れがある。また、膜厚が70μmを超えると、他部品との組み込みの際、中心が偏る可能性があり、光学機器の位置精度に悪影響を及ぼすことがある。
《本実施形態の物品の製造方法》
(膜の形成方法)
本実施形態の物品の膜は、10μm以上70μm以下で本実施形態の遮熱塗料を均一に塗布出来れば任意の塗布方法および効果方法を用いることが出来る。
本実施形態の物品、特に光学機器用の膜の塗布方法の一例としては、ハケ塗り、スプレー塗布、ディップコーティング、転写、インクジェット等が挙げられる。また、膜は1層塗りであっても、多層塗りであっても構わないし、意匠性を出すためにシボ加工されていても良い。
また、本実施形態の物品、特に光学機器用の膜の硬化方法としては室温放置しても構わないし、任意の熱により硬化を促進したり、紫外線を与えたりしても構わない。熱を与えて硬化させる方法としては、加熱炉、ヒーター、赤外線加熱等が挙げられる。硬化温度としては、室温から400℃が好ましく、更に室温から200℃が好ましい。
(樹脂領域の形成方法)
上記の方法を用いて膜(粒子領域)を形成したのち、膜(粒子領域)の表面に、樹脂領域に使用する材料を転写、インクジェット法などを用いて前記膜の一部分に塗布し形成することができる。樹脂領域を形成した後、さらに膜(粒子領域)を形成することにより、膜内部(粒子領域と粒子領域との間)に樹脂領域を形成することができる。また、樹脂領域は、基材が平たんであれば、フォトリソグラフィー技術を用いて形成することもできる。また、本発明の光学機器用の膜中(粒子領域と粒子領域との間)にある線状領域の硬化方法としては室温放置しても構わないし、任意の熱により硬化を促進したり、紫外線を与えたりしても構わない。熱を与えて硬化させる方法としては、加熱炉、ヒーター、赤外線加熱等が挙げられる。硬化温度としては、室温から400℃が好ましく、更に室温から200℃が好ましい。
[実施例14〜27]
以下に、本発明における好適な実施例について説明する。
実施例14から27における膜の特性評価および膜の作製は下記の方法で行った。
<遮熱膜の耐水性評価>
<耐水性の試験および評価>
耐水性の測定用のサンプルには30mm角で厚みがlmmの金属板に本実施形態の膜を形成して用いた。金属板には、ステンレス、アルミニウム、チタン、マグネシウム合金の中のいずれかを用いた。また、マグネシウム合金の金属板にスピンコーターおよびインクジェットを用いて65μmの膜厚になるように塗布して焼成し、膜を形成した。
本実施形態の遮熱膜を、高温高湿下(温度:70℃、湿度:90%)に設定された恒温槽で100時間投入し、耐水性を検討した。
耐水性の評価は、JIS K 5600−5−4(引っかき硬度(鉛筆法))により、耐水性試験前後の比較により行った。耐候性試験前後で、硬さが変化しなかったものをA、硬さが低下したものをBとした。
<日射反射率評価>
日射反射率は、第1の実施形態と同じ装置、方法を用いて測定し、算出した。
測定用のサンプルには30mm角で厚みがlmmの金属板に膜を形成して用いた。金属板には、ステンレス、アルミニウム、チタン、マグネシウム合金の中のいずれかを用いた。また、マグネシウム合金の金属板にスピンコーターおよびインクジェットを用いて65μmの膜厚になるように塗布して焼成し膜を形成した。
日射反射率としては、日射反射率が70%以上であれば温度低減効果が高いので非常に良好な膜と言える。また、日射反射率が60%以上70%未満であれば温度低減効果が比較的高いので良好な膜と言える。日射反射率が60%未満になると温度低減効果が下がるので良好な膜とは言えない。
(A〜Cの3段階評価)
A:日射反射率が70%以上
B:日射反射率が60%以上70%未満
C:日射反射率が60%未満
<遮熱効果>
遮熱効果についても、第1の実施形態と同じ装置、方法を用いて測定した。
[実施例14]
<塗料の調製>
実施例14は、以下の方法で塗料を作製した。酸化チタン15g(塗膜換算20体積%)、樹脂13g(塗膜換算57.5体積%)、シリカ0.75g(塗膜換算1.8体積%)、顔料lg(塗膜換算3.5体積%)、硬化剤3.9g(塗膜換算17.2体積%)、シンナー3gを用いた。それぞれ秤量し、遊星回転装置(AR−100,シンキー)にて10分間攪拌して、実施例14の塗料T1を得た。酸化チタンには、D−970(堺化学;平均粒径0.26μm、シリカ表面被覆)を用いた。樹脂にはオレスターQ−691(三井化学)を用いた。
シリカ粒子にはアエロジルR−972(日本アエロジル;平均粒径100nm)を用いた。顔料にはクロモファインブラックAl103(大日精化工業)を用いた。硬化剤には、タケネートD−120N(三井化学)を用いた。
実施例14に使用する、樹脂領域123を形成するための塗料は、シリカ0.75g、樹脂13g、硬化剤3.9g、シンナー20gを秤量し、遊星回転装置(AR−100,シンキー)にて10分間攪拌して、塗料T2を得た。樹脂にはオレスターQ−691(三井化学)を用いた。シリカにはアエロジルR−972(日本アエロジル;平均粒径100nm)を用いた。硬化剤には、タケネートD−120N(三井化学)を用いた。
<遮熱膜の作製>
実施例14では、以下の方法で膜が形成された試料を2枚作製した。
まず、塗料T1をマグネシウム合金の金属板にスピンコーターで20μmの膜厚になるように塗布し、室温で一晩乾燥後、130℃で30分間焼成することで膜M1を得た。次に、膜M1上にタンポ印刷により塗料T2を、10μm×8μmのパターンを、1.5μmの厚さになるように膜M1の表面に塗布した。次に、室温で一晩乾燥後、130℃で30分間焼成し、樹脂領域123を得た。次にスピンコーターで45μmの膜厚になるように塗料T1を塗布し、室温で一晩乾燥後、130℃で30分間焼成し、実施例14の試料を2枚得た。得られた2枚の試料のうちの一枚の断面を切り取り観察したところ、膜断面の全面積に対する樹脂領域123の面積比率は、0.15面積%であった。
[実施例15〜27]
実施例15〜27では、表7の材料および条件にする以外は実施例14と同様にして、塗料および膜が形成された試料を作製した。
[比較例3〜12]
比較例3〜12では、表7の材料および条件にする以外は実施例14と同様にして、塗料および膜が形成された試料を作製した。
膜の耐水性試験後の引っかき硬度の変化、耐水性試験後の日射反射率、耐光試験前後の温度低減効果を前述の実施例14〜27と同様に行った。
(評価結果〉
上記の方法により、実施例14から27、比較例3から12の膜の耐水性試験後の引っかき硬度の変化、耐水性試験後の日射反射率、耐光試験前後の温度低減効果、光学精度を評価した結果を表8に記す。光学精度については、軸ずれが許容範囲であるものについてはA、許容範囲を超えてしまっていたものについてはBとした。
(第3の実施形態)
本実施形態では、単層であっても、意匠性と遮熱性を両立させた膜を有する物品について説明する。第1の実施形態と同じ内容の部分については説明を省略する場合がある。
[意匠性と遮熱膜を両立させるための方法]
(外観色の意匠性を確保する方法)
例えば、レンズ鏡筒等の物品の外観色の意匠性を確保するには、基材上に着色材で所望の色に調整した膜を形成することが一般的である。しかし、膜の色調が暗い場合には、膜に暗色の着色材を多く含ませなければならない。膜に暗色の着色材を多く含ませると、可視光の吸収が大きくなり、太陽光による温度上昇が大きくなってしまい遮熱性が悪化する。本実施形態では、暗色の着色材として有機顔料を用い、その有機顔料を、膜の中において基材側よりも空気界面側に多く分布させるようにする。これにより、有機顔料の含有量が本来より少なくても所望の色の膜を得ることができる。有機顔料を膜の基材側よりも空気界面側に多く分布させるために、膜中に含まれる有機顔料だけを意図的に凝集させる。そして、膜形成時の対流により、凝集させた有機顔料だけを膜中の空気界面側に偏析させることで、暗色成分が少なくても所望の色に調整することができることを見出したものである。これを実現するために、少なくとも樹脂と有機顔料と無機顔料と分散剤を含んだ塗料を基材上に塗布して得られる膜であって、分散剤に無機顔料に比べて有機顔料を凝集させる作用のあるものを用いる。例えば、分散剤にアルキロールアンモニウム塩を用いる。これにより、有機顔料だけを凝集させて、その有機顔料を空気界面側に偏析させることができることを見出したものである。
(遮熱性を確保する方法)
例えばレンズ鏡筒等、物品の遮熱性を確保するためには、太陽光による赤外線を反射させることが必要である。図1は、本実施形態に係る膜の太陽光の反射および吸収の状態を示す断面模式図である。図1において、1は入射光、2は反射光、3は透過光、4は膜、5は基材を示す。太陽光の波長は約0.3μmから約3μmの範囲であり、これらの波長の光が図1に示すように透過光3となると熱エネルギーに変換され、基材5が発熱する。よって、断熱層なしに太陽光による発熱を抑制するためには、入射光1に対する反射光2の比率を出来るだけ上げて内部への光の透過による発熱を抑制する必要がある。
太陽光の波長である0.3μmから3μmの範囲は粒径が数μmの粒子に対してはMie散乱の領域であり、Mie散乱の計算に基づくと粒径が約1μm付近において、太陽光の反射率が最も高くなる。このため、太陽光の反射粒子の粒径は1μm付近であるのが一般的である。
太陽光の反射粒子が赤外線をより効率よく反射させるためには、反射粒子が膜4の中に均一に分散していることが望ましい。反射粒子が均一に分散していないと温度上昇抑制効果が悪くなる。
太陽光の反射粒子としては、白色のチタニア粒子をはじめとして、着色された無機顔料などが挙げられるが、無機顔料を膜中に均一に分散させることで、十分な赤外反射を達成することができる。
(意匠性と遮熱性を両立するための方法)
本実施形態では、レンズ鏡筒の外観色の意匠性と遮熱性を確保する方法として、有機顔料の空気界面側への偏析を利用し膜の表面だけで所望の色を調整して意匠性を確保する。そして、それ以外の膜の内部(中央部から基材界面側)はチタニア粒子や赤外線反射型の着色無機顔料を均一に分散させることで効率よく赤外線を反射させることにより遮熱性を確保する。
図8は、本実施形態に係る膜の断面模式図を示す。図8に示す膜の断面は、膜が形成されている物品において、膜表面の法線方向に対して平行な方向に、空気界面221から膜厚方向(A方向)に基材205まで幅Wを有する断面を切り出した模式図を示している。図8において、221は膜204の空気界面、222は膜204の基材界面、223は樹脂、224は有機顔料、225は無機顔料を示す。本実施形態においては、膜204の表面が空気である例を示しているため221を空気界面としているが、膜204の上に別の膜が形成されている場合であっても、膜204の別の膜との界面を本実施形態においては空気界面と称することとする。また、第2の実施形態で説明した、樹脂領域が、膜の中に形成されている場合は、空気界面21から膜厚方向(A方向)に樹脂領域まで断面を切り出す。図8に示すように、膜厚方向Aに対して、切り出した断面を10分割する(空気界面側を1とし、基材側を10とする)。その断面において、有機顔料の含有量を100面積%とした時、70面積%以上95面積%以下が膜厚方向の範囲1〜3に分布していると、意匠性と遮熱性の両立が図れることが分かった。言い換えれば、前記膜の空気界面側から基材界面側に向かって切り出した断面の膜厚方向に30%の領域に、前記有機顔料の含有量の70面積%以上95面積%以下が含まれていると両立が図れることがわかった。本実施形態において有機顔料224の含有量とは、以下のように測定することによって得るものとする。まず、膜の断面を5か所切り出す。膜の断面は、膜表面の法線方向に対して平行な方向に幅W(例えば1μm)切り出す。膜表面の法線方向とは、膜表面に凹凸がある場合は、凸部分を結んだ面の法線方向とする。この5か所の断面を透過電子顕微鏡法(TEM)で10万倍に拡大する。次に、5か所についてEnergy Dispersive X−ray Spectroscopy(EDS)で粒子を面分析し、単位面積当たりの含有量を算出する。最後に、5か所の平均値より本発明に係る膜204に含まれる有機顔料224の含有量を算出する。本実施形態においてはこの方法によって算出された含有量を面積%とする。
つまり、例えば、膜204には有機顔料は、切り出した断面を100面積%とした時、0.1面積%以上2.0面積%以下含まれている。この場合、膜204の空気界面側から1〜3の範囲)に有機顔料224の含有量の70面積%以上95面積%以下が含まれていると、意匠性と遮熱性の両立が図れる。膜204の空気界面側から1〜3の範囲とは、言い換えれば、膜204の、空気界面側から基材側までの長さを100%とした時、空気界面側から基材側に向かって30%の領域である。しかし、70面積%未満だと、外観色の意匠性を確保するために、より多くの有機顔料224を含ませなければならず、結果として遮熱性が悪化する。また、95%を超えると、膜の空気界面側から1〜3の範囲(言い換えれば膜厚の空気界面側から30%までの範囲)のところに界面が形成されてしまい、不要な界面反射により赤外線が膜内部に侵入し、温度上昇抑制効果を阻害する。膜の空気界面側から1〜3の範囲とは、切り出した膜の断面の空気界面側から基材側までの長さを100%とした時の空気界面側の膜の界面から30%の長さに位置する点を通る基材と平行な線までの範囲とする。本実施形態において、空気界面側から基材側までの長さとは、膜の空気界面側の界面から基材までの長さ、あるいは空気界面側の界面から樹脂領域までの長さであるとする。切り出した断面の膜の空気界面側に凹凸がある場合は、一番凹んだ部分(切り出した断面の膜の空気界面側から基材(あるいは樹脂領域)までの長さが一番短い部分)を通る、基材と平行な線を膜の空気界面側の界面とする。
[本実施形態に係る塗料]
以下に、本実施形態に係る塗料の材料構成および本発明の塗料の製造方法について説明する。
《材料構成》
本実施形態に係る塗料は、少なくとも、樹脂、有機顔料無機顔料、および分散剤を含む。
(樹脂成分)
次に本実施形態の塗料に含まれる樹脂について説明する。
本実施形態の樹脂の一例としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種類を用いても複数の種類を含んでも構わない。
また、本実施形態に係る塗料に含まれる樹脂の含有量は、塗料全体を100重量%とした場合、5重量%以上80重量%以下が好ましく、15重量%以上50重量%以下であるとより好ましい。本実施形態に係る塗料に含まれる樹脂の含有量が5重量%未満になると基材との密着性が悪化したり、膜の靭性が低下する恐れがある。また、本実施形態に係る塗料に含まれる樹脂の含有量が50重量%を超えると、太陽光の日射反射率が悪化する恐れがある。塗料は主に、塗膜にした際に、揮発して無くなる溶剤成分と、膜中に残る樹脂成分と顔料から構成される。よって塗料中の樹脂成分や顔料の含有量は、塗料を各条件下で乾燥・焼成して固形分濃度を求める。
(有機顔料)
本実施形態に係る塗料に含まれる有機顔料としては、アゾ系有機顔料や、ペリレン系有機顔料が用いられる。
アゾ系有機粒子としては、アゾ基を有する化合物であれば任意の粒子を用いることが出来る。本実施形態のアゾ系有機粒子の色としては、黒色系、黄色系、赤色系、橙色系などが挙げられるが、黒色系が太陽光による退色が起こった際の、色味変化(a*、b*)が少ないのでより好ましい。また、太陽光の反射率が高いことが好ましく、アゾ系有機粒子単独での日射反射率が10%を超える材料を選択することが好ましい。アゾ系有機粒子の一例としては、ニッケルアゾ顔料、不溶性アゾ系顔料、溶性アゾ系顔料、高分子量アゾ系顔料、アゾメチンアゾ顔料系顔料等が挙げられる。これらのアゾ系有機粒子は1種類を用いても複数の種類を含んでも構わない。
本実施形態の有機顔料の平均粒径としては0.1μm以上5.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上2.0μm以下である。本実施形態の有機顔料の平均粒径が0.1μm未満になると粒子の表面積が増加するため、耐光性が悪化し、変色する恐れがある。また、本実施形態の有機顔料の平均粒径が5.0μmを超えると膜の凹凸が大きくなり、膜厚精度が悪化するため、本実施形態をレンズ鏡筒に用いた場合、ピント合わせなどの精度が低下する恐れがある。
本実施形態における平均粒径とは、複数の樹脂粒子それぞれの粒径の平均である。樹脂粒子の平均粒径は、水中へ分散させレーザー散乱法により分析することにより求められる。本実施形態では、樹脂粒子の平均粒径は、体積平均粒径である。
本実施形態の有機顔料の平均粒子径は、有機顔料の凝集による空気界面側への偏析を発生させやすくするためにも、後述する無機顔料の平均粒子径よりも大きいことがより好ましい。
また有機顔料には任意の形状の粒子を用いることができる。その一例としては、球状、立方体、楕円形、板状、層状、鎖状、中空、星形、針状、異形状などがあげられる。その中でも、有機顔料の凝集による空気界面側への偏析を発生させやすい板状、層状、鎖状などの形状がさらに好ましい。
これらの有機顔料は1種類を用いても複数の種類を含んでも構わないが、意匠性と遮熱性を損なわない範囲で用いることが好ましい。
また本実施形態に係る塗料に含まれる有機顔料の含有量は、塗料全体を100重量%とした場合、0.01重量%以上1.0重量%以下が好ましく、より好ましくは0.015重量%以上0.5重量以下である。有機顔料の含有量が0.01重量%未満になると膜の明度が高くなりすぎて意匠性が悪化する。また防汚性も悪化する恐れがある。また、有機顔料の含有量が1.0重量%以上になると、膜の明度が低くなりすぎて遮熱性が悪化する。
(無機顔料)
本実施形態に用いられる無機顔料としては、遮熱性に優れたものであれば任意の無機顔料を用いることができるが、表面がシリカで被覆されたチタニア粒子を含むことが好ましい。色の調整のために着色された無機顔料をさらに含むことが好ましい。また、表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子を含んでいてもよい。表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子が着色された無機顔料であってもよい。本実施形態においては、表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子を単に、TiおよびOを含む粒子と称する場合がある。
チタニアはそのもの自身が持つ高い屈折率のため、膜を所望の屈折率に調整することが容易である。また、自身が持つ明色のため、塗膜を所望の色味に調整することが容易であり、さらに、十分に微粒化された微粒子が比較的安価に多数上市されていることからも好適に用いることができる。
本実施形態における膜に含まれる表面がシリカで被覆されたチタニア粒子の含有量は、樹脂組成物に対して10重量%以上70重量%以下であることが好ましく、20重量%以上60重量%以下であることが更に好ましい。10重量%未満であると十分な赤外反射効果を得ることができない場合があり、また70重量%より多い場合は膜として十分な膜質が得られない場合がある。表面がシリカで被覆された粒子を用いると、光触媒活性を抑制できるため周囲の樹脂劣化を低減することができる。
また、本実施形態における表面がシリカで被覆されたチタニア粒子の平均粒子径は0.1μm以上1.5μm以下であることが好ましく、さらには0.1μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。0.1μm未満であると粒子の表面積が増大し、表面がシリカで被覆されたチタニア粒子が凝集しやすくなり、好適に膜中に分散させることが困難となる。また、1.5μmより大きいと、詳しくは後述するが、有機顔料の空気界面側への偏析を阻害してしまい、意匠性と遮熱性を両立するための十分な性能を発揮できなくなる。なお、本実施形態における表面がシリカで被覆されたチタニア粒子とは、少なくとも表面の一部がシリカで覆われているものと定義する。また、本実施形態における表面がシリカで被覆されたチタニア粒子の平均粒子径とは、凝集していない粒子における体積球相当直径を指すものとする。
本実施形態における表面がシリカで被覆されたチタニア粒子はその屈折率と平均粒子径が所望の条件を満足する限り、気相法、液相法等公知の方法により製造することができる。例えば、少なくとも酸素を含む雰囲気下において、火炎中に金属粉を投入し燃焼させることで二酸化チタン微粒子を合成する方法や、触媒存在下でチタンアルコキシドを加水分解、重縮合するゾルーゲル法等公知の方法等が挙げられる。また、チタニアはルチル構造やアナターゼ構造といった結晶構造を有することが知られており、アモルファス構造のそれと比較してより高い屈折率を示すが、所望の粒子径を満たすものであればどの結晶形態にも寄らず好適に用いることができる。
本実施形態に係る無機顔料は、前述した表面がシリカで被覆されたチタニア粒子の他に、着色された無機顔料を含んでいてもよい。本実施形態の赤外反射型の着色された無機顔料の含有量は、0.01重量%以上2.0重量%以下が好ましく、より好ましくは0.02重量以上1.5重量%以下である。本実施形態の赤外反射型の着色された無機顔料の含有量が0.01重量積%未満になると太陽光照射時の光触媒作用が少ないため、本実施形態の膜の外観色味変化が大きくなる恐れがある。本実施形態の赤外反射型の着色された無機顔料の含有量が2.0重量%を超えると遮熱性能が悪化する恐れがある。また、本実施形態の赤外反射型の着色された無機顔料は膜中に均一に分散していることがより好ましい。
さらに、表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子を含んでいてもよい。TiおよびOを含む粒子は光触媒作用によって樹脂の分子鎖を切断する必要があるので、耐光性を有するシリカ等の被覆が少ないもしくはないことが好ましい。これは、表面が被覆されていないTiおよびOを含む粒子の光触媒作用によって、太陽光が照射されると膜の明度が低くなるように変化させたいからである。その理由について次に述べる。有機顔料として前述したアゾ系有機粒子は、分子中にアゾ基であるR−N=N−R‘の化学構造を持つ有色の顔料である。アゾ系有機粒子は、無機顔料と比較して赤外線の反射性能が高い特徴を持つが、アゾ系有機粒子は太陽光が照射されるとアゾ基が切断されて2RとN2になる。アゾ系有機粒子はアゾ系有機粒子に含まれるN=Nおよびその周囲の原子配置により色を発現しているため、N=Nが切断されると色が消失し、明度が高くなってしまう。つまり、光学機器等の物品の表面に形成された膜の色が大きく変化してしまう場合がある。この変化は、アゾ系有機粒子の量が少ないほど顕著にあらわれる。
一方、TiおよびOを含む粒子10は粒子中のTiO部分が太陽光による光触媒作用で励起して励起したTiおよびOを含む粒子となる。太陽光により励起したTiおよびOを含む粒子は電子(e−)を樹脂に放出し、樹脂の分子鎖は電子エネルギーによって切断される。このことにより、樹脂は変色した樹脂となり明度が低下する。
このように、本発明に係る膜は、太陽光の照射により、アゾ系有機粒子の明度は高く変化する一方で、TiおよびOを含む粒子の明度は低く変化するため、全体としてはキャンセル効果で色の変色が抑制される。TiおよびOを含む粒子は、TiおよびOのみを含む粒子(例えばチタニア粒子)、およびまたは、TiおよびOの他に1種類以上の無機金属を含む粒子を含む。本実施形態のTiおよびOの他に1種類以上の無機金属を含む粒子の一例としては、(Ti、Ni、Sb)Ox、(Ti、Cr、Sb)Oxが挙げられる。また、(Ti、Fe、Zn)Ox、(Co、Cr、Zn、Al、Ti)Ox、(Co、Cr、Zn、Ti)Ox、(Co、Al、Ni、Ti)Ox等が挙げられる。また、本発明のTiおよびOを含む粒子の一例としては、上記の(Ti、Ni、Sb)Ox、(Ti、Cr、Sb)Ox、(Ti、Fe、Zn)Oxが挙げられる。また、(Co、Cr、Zn、Al、Ti)Ox、(Co、Cr、Zn、Ti)Ox、(Co、Al、Ni、Ti)Oxが挙げられる。TiおよびOを含む粒子を含む場合、その含有量は、1.6重量%以下が好ましい。
(シリカ粒子)
本実施形態では、さらにシリカ粒子を含んでいてもよい。平均粒径は、10nm以上110nm以下であることが好ましい。平均粒径は、10nm以上110nm以下であると、表面がシリカで被覆されたチタニア粒子のシリカの微小欠陥を埋める効果があり、無酸素雰囲気下での変色を抑制する効果がある。本実施形態のシリカ粒子は、平均粒径が10nm未満になると、表面がシリカで被覆された酸化チタン粒子のシリカの微小欠陥を埋める力が低下するので無酸素雰囲気下での変色を抑制する効果が悪化する恐れがある。また、本発明の塗料に含まれるシリカ粒子は、平均粒径が110nmを超えると酸化チタンへの吸着力が低下するため、無酸素雰囲気下での変色低減効果が悪化する恐れがある。
シリカ粒子の形状は任意のものを用いることが出来る。シリカ粒子の形状の一例としては、球形、不定形、星形、鎖状、中空、多孔質が挙げられる。これらのシリカ粒子は、1種類を用いても複数の種類を含んでも構わない。
本実施形態のシリカ粒子128の粒子径は、個数基準の平均粒子径であり、シリカ粒子128の平均粒子径は、塗布前の塗料の状態の場合は、動的光散乱法により測定できる。また、膜の状態から測定する場合は、まず、本実施形態に係る膜から、厚さ300nm、5μm×5μmのサンプルを5か所切り出し、透過電子顕微鏡法(TEM)で10万倍に拡大する。次に、5か所についてEnergy Dispersive X−ray Spectroscopy(EDS)でシリカ粒子128を面分析し、それぞれのシリカ粒子128の粒子径を求め、その平均値を算出する。最後に、5か所の平均値を求める。この5か所の平均値を、本実施形態に係る膜に含まれるシリカ粒子の平均粒子径とする。本実施形態においては、例えば、図7(c)に示すように、10nm以上50nm以下のシリカ粒子128が凝集し二次粒子になっている場合には、二次粒子の長手方向の長さが50nm以上350nm以下であれば塗布性を向上させることができる。特に、球状のシリカ粒子128がつながった分鎖状のシリカ粒子を選択することが好ましい。球状のシリカ粒子128がつながった分鎖状のシリカ粒子は、遮光膜を形成するための塗料を塗布する際、シリカ粒子128による空間が大きくなるため、粒子127が移動し易いため好適である。
シリカ粒子の含有量は、塗料中の不揮発成分に対して0.6質量%以上14質量%以下であり、好ましくは1質量%以上10質量%以下である。シリカ粒子の含有量が0.6質量%未満になると、シリカで被覆された酸化チタン粒子のシリカの微小欠陥を埋めきれないため、無酸素雰囲気下での変色が悪化する恐れがある。また、本発明のシリカ粒子の含有量が14質量%を超えると、塗膜のヘイズが悪化するため、反射率が悪化する恐れがある。塗料中の不揮発成分に対してのシリカ粒子の含有量は、塗料を硬化させた後に、後述する、本発明に係る膜に含まれるシリカ粒子の含有量の測定と同じ方法で測定することができる。
(分散剤)
本実施形態の塗料に含まれる分散剤としては、無機顔料に比べて有機顔料をより凝集させる作用を有するものであれば適用することができる。特にアルキロールアンモニウム塩を含むことが好ましい。本来、分散剤とは、顔料の表面に吸着して相互に離間させながら、顔料間の距離を一定に保ち、顔料同士が凝集するのを防ぐことが役割であるが、本実施形態における分散剤は有機顔料を凝集させ、無機顔料は分散させることが好ましい。
また、本発明の分散剤は少なくとも酸基を有していることが好ましい。また本発明の分散剤は酸価(mgkOH/g)が30以上100以下であることが好ましい。酸価(mgkOH/g)が30以上100以下の範囲だとより適度に有機顔料を空気界面側に析出させることができる。また、有機顔料に対する分散剤の添加量は、分散剤の方が多いことが好ましい。分散剤の方が少ない場合は一部の有機顔料が分散し、空気界面側への偏析が少なくなる。
また本発明の分散剤の含有量は0.1重量%以上10.0重量%以下が好ましく、より好ましくは0.15重量%以上7.0重量%以下である。分散剤の含有量が0.1重量%未満になると遮熱性が悪化する。また、分散剤の含有量が10.0重量%以上になると、膜の屈折率が低くなり、屈折率差による反射が小さくなる。
(溶媒)
次に、塗料に含まれる溶剤について説明する。
溶剤としては、任意の材料を用いてよい。溶剤の一例としては、水、シンナー、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトンが挙げられる。また、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレン、アセトン、セロソルブ類、グリコールエーテル類、エーテル類が挙げられる。これらの溶剤は、1種類を用いても複数の種類を含んでも構わない。
本発明の塗料の好ましい粘度は、10mPa・s以上10000mPa・s以下であり、より好ましくは20mPa・s以上1000mPa・s以下である。塗料の粘度が10mPa・s未満になると塗布後の遮熱膜の膜厚が薄くなる箇所が生じる場合がある。また、10000mPa・sを超えると、塗料の塗布性が低下する恐れがある。
(その他の添加剤)
本実施形態の光学機器に用いる塗料は、その他の任意の添加材を含んでいてもよい。その一例としては、硬化剤、硬化触媒、可塑剤、チキソ性付与剤、レベリング剤、艶消し剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤等が挙げられる。
《塗料の製造方法》
以下に、本実施形態の塗料の製造方法について説明する。
本実施形態の光学機器上面の膜を形成するための塗料の製造方法は、本発明の有機粒子および無機顔料を塗料中に分散できれば任意の方法を用いることが出来る。一例としては、ビーズミル、ボールミル、ジェットミル、三本ローラー、遊星回転装置、ミキサー、超音波分散機、ホモジナイザー等が挙げられる。
[膜]
以下に、本実施形態の膜の材料構成について説明する。
本実施形態の膜は少なくとも樹脂、有機顔料、および無機顔料を含む。
《材料構成》
(樹脂成分)
本実施形態の樹脂の含有量は、20面積%以上90面積%以下が好ましく、より好ましくは30面積%以上80面積%以下である。本実施形態の樹脂の含有量が20面積%未満になると基材との密着性が悪化する恐れがある。また、本実施形態の樹脂の含有量が90面積%を超えると、太陽光の日射反射率が悪化する恐れがある。
(有機顔料)
本発明の有機顔料の含有量は0.1面積%以上2.0面積%以下が好ましく、より好ましくは0.15面積%以上1.5面積%以下である。有機顔料の含有量が0.1面積%未満になると膜の明度が高くなりすぎて意匠性が悪化する。また防汚性も悪化する恐れがある。また、有機顔料の含有量が2.0面積%以上になると、膜の明度が低くなりすぎて遮熱性が悪化する。
(無機顔料)
本実施形態の明度を調整するための無機顔料の一例である表面がシリカで被覆されたチタニア粒子の含有量は、10面積%以上80面積%以下が好ましく、20面積%以上60面積%以下がより好ましい。本実施形態の明度を調整するための無機顔料の含有量が10面積%未満になると着色力が弱く、明度を50以上にすることが困難になる恐れがある。また本実施形態の明度を調整するための無機顔料の含有量が80面積%を超えると膜の脆性が悪化し、脆くなる恐れがある。
また本実施形態の着色された無機顔料の含有量は、0.1面積%以上3.0面積%以下が好ましく、より好ましくは0.2面積%以上2.0面積%以下である。本実施形態の着色された無機顔料の含有量が0.1面積%未満になると太陽光照射時の光触媒作用が少ないため、膜の外観色味変化が大きくなる恐れがある。着色された無機顔料の含有量が3.0面積%を超えると遮熱性能が悪化する恐れがある。
また、着色された無機顔料は膜中に均一に分散していることがより好ましい。
(その他の添加剤)
本実施形態の光学機器に用いる塗料は、その他の任意の添加材を含んでいてもよい。その一例としては、硬化剤、硬化触媒、可塑剤、チキソ性付与剤、レベリング剤、艶消し剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤等が挙げられる。
《膜構成》
本実施形態の光学機器の上面に形成される膜は少なくとも基材よりも外側に形成される。その形態としては、基材と密着していてもよいし、基材と光学機器上面に形成される膜の間に密着性を向上させるプライマー層が設けられていてもよい。
(基材)
基材としては、任意の材料を用いることが出来るが、金属やプラスチックが好ましい。金属材料の一例としては、アルミニウム、チタン、ステンレス、マグネシウム合金、リチウムマグネシウム合金等が挙げられる。プラスチックの一例としては、ポリカーボネート樹脂、アクリアル樹脂、ABS樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
また、基材の膜厚としては任意の厚みを持つことが出来るが、0.5mm以上5mm以下、より好ましくは、0.5mm以上2mm以下であることが好ましい。膜厚が0.5mm未満になるとレンズ鏡筒の形状を保持することが困難である。また、膜厚が5mmを超えると部材のコストが高くなる。
(プライマー)
プライマーを基材と膜の密着性を向上させる目的で用いても良い。プライマーを用いた場合、本明細書においては、プライマーの部分までを基材とする。つまり基材はプライマーを含む。
プライマーとしては、任意の材料を用いることが出来るが、一例としてはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、プライマーには本実施形態の粒子や本実施形態以外の粒子、着色剤、分散剤、硬化剤、硬化触媒、可塑剤、チキソ付与剤、レベリング剤、有機着色剤、無機着色剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤、溶媒の残渣が含まれていても構わない。
また、プライマーの膜厚としては2μm以上30μm以下が好ましく、5μm以上20μm以下がより好ましい。膜厚が2μm未満では膜の密着性が低下することがあり、30μmを超えると位置精度に悪影響を及ぼすことがある。
(本実施形態の膜の膜厚)
本実施形態の膜は膜厚10μm以上100μm以下であることが好ましい。20μm以上90μm以下がより好ましい。膜厚が10μm未満になると、日射反射率が低下する恐れがある。また、膜厚が100μmを超えると光学機器の位置精度に悪影響を及ぼしたり、耐環境下で膜剥がれや膜割れが発生する場合がある。
《本実施形態の膜の形成方法》
本実施形態の膜は、10μm以上100μm以下で本実施形態の塗料を均一に塗布出来れば任意の塗布方法および効果方法を用いることが出来る。
本実施形態の光学機器用の遮熱膜の塗布方法の一例としては、ハケ塗り、スプレー塗布、ディップコーティング、転写等が挙げられる。また、遮熱膜は1層塗りであっても、多層塗りであっても構わないし、意匠性を出すためにシボ加工されていても良い。
また、本実施形態の物品用または光学機器用の膜の硬化方法としては室温放置しても構わないし、任意の熱により硬化を促進したり、紫外線を与えても構わない。熱を与えて硬化させる方法としては、加熱炉、ヒーター、赤外線加熱等が挙げられる。硬化温度としては、室温から400℃が好ましく、更に室温から200℃が好ましい。
《膜の特性》
(日射反射率)
本実施形態の膜は日射反射率が60%以上であることが好ましい。日射反射率が60%未満になると温度低減効果が低下する。
(明度)
本実施形態の膜は、明度L*が60以上90以下であることが好ましく、71以上80以下あることがより好ましい。明度が60未満になると、温度上昇抑制効果が悪化する。明度が90以上になると色が白いため防汚性が悪化する恐れがある。
[実施例28〜37]
以下に、本実施形態における好適な実施例について説明する。
実施例28から37における塗料の調製、膜の作製、膜の特性評価は下記の方法で行った。
<膜の断面観察>
膜の断面観察には光学顕微鏡を用いた。その後、断面像を画像解析ソフト(MedaiaCybernetics社製Image−Pro Plus)を用いて画像処理し、有機顔料の膜厚方向の含有量分布について評価した。膜厚方向の範囲を10分割し、下地界面側から空気界面側へ向けて1から10のエリアへ分割し、有機顔料の膜厚方向の含有量分布を評価した。
<意匠性の評価>
意匠性の評価には色差計(SE−7700;日本電色)を用い、明度L*を測定した。測定用のサンプルは、SUS箔上に塗膜を形成して用いた。まず、SUS箔上に50μmの膜厚になるように本発明の膜を塗布した後、焼成炉で硬化した。塗膜形成後に、色差計で空気界面側の膜のL*の値を測定した。次に、SUS箔から膜を剥がした後、SUS箔界面側の膜のL*値を測定した。塗膜の空気界面側と下地(SUS箔)界面側の明度の差を比較することで、有機顔料の膜厚方向の空気界面側への分布の有無を評価した。
明度差(ΔL*)が0.2以上かつ、空気界面側の明度が下地界面側の明度より小さい場合は、有機顔料が空気界面側に多く分布した膜Aとした。また、明度差(ΔL*)が0.2以上かつ、空気界面側の明度が下地界面側の明度より大きい場合は、有機顔料が空気界面側に少なく分布した膜Bとした。一方、明度差(ΔL*)が0.2未満であれば塗膜中の有機顔料が均一に分布した膜Cとした。
A;明度差が0.2以上かつ、空気界面側の明度<下地界面側の明度
B;明度差が0.2以上かつ、空気界面側の明度>下地界面側の明度
C;明度差が0.2未満
本発明において、膜Aの場合は、膜B、膜Cよりも明度を調整する有機顔料が少なくても所望の色味に調整することができるため、意匠性が良好であるとした。
<遮熱性の評価>
遮熱性の評価は日射反射率によって評価した。日射反射率は、第1の実施形態と同じ装置、方法を用いて測定し、算出した。
測定用のサンプルは、SUS箔上に塗膜を形成して用いた。まず、SUS箔上に50μmの膜厚になるように本発明の膜を塗布した後、焼成炉で硬化し塗膜を形成した。
日射反射率としては、日射反射率が70%以上であれば温度低減効果が高いので非常に良好な膜と言える。また、日射反射率が60%以上70%未満であれば温度低減効果が比較的高いので良好な膜と言える。日射反射率が60%未満になると温度低減効果が下がる。
A:日射反射率が70%以上
B:日射反射率が60%以上70%未満
C:日射反射率が60%未満
本発明において、日射反射率の評価がA、Bの場合は遮熱性が良好であるとした。
<耐久性の評価>
塗膜の耐久性については以下の方法で実施した。測定用のサンプルには80mm×160mmで厚みがlmmの金属板に本発明の膜を形成して用いた。金属板には、ステンレス、アルミニウム、チタン、マグネシウム合金の中のいずれかを用いた。まず、金属板上に50μmの膜厚になるように本発明の膜を塗布した後、焼成炉で硬化し塗膜を形成した。次にサンプルを−30℃から80℃の範囲で繰り返し熱衝撃を100回加えた後、塗膜の外観を評価した。
外観上の変化がほとんど見られないもの(A)は、耐久性の非常に高い膜、外観の見た目などが若干変化しているもの(B)は、耐久性の比較的高い膜、膜割れや膜剥がれが生じているもの(C)は耐久性の悪い膜として評価した。
A:耐久性が非常に高い膜
B:耐久性が比較的高い膜
C:耐久性が悪い膜
本発明において、耐久性の評価がA、Bの場合は耐久性に問題のない膜とした。
[実施例28]
<塗料の調製>
実施例28は、以下の方法で塗料を作製した。樹脂100g(塗膜換算45.9vol%)、無機顔料(シリカで被覆されたチタニア)130g(塗膜換算29.3vol%)、有機顔料1.0g(塗膜換算0.5vol%)を秤量した。また、着色された無機顔料4.0g(塗膜換算0.7vol%)、分散剤5.0g(塗膜換算4.1vol%)、溶剤100gを秤量した。これらを、ボールミルにて15時間攪拌し、主剤を得た。得られた主剤10gに対して硬化剤1g(体積換算18.4vol%)を混合し、実施例28の塗料を得た。
樹脂にはオレスターQ−691(三井化学)を用いた。有機顔料には、クロモファインブラックA1103(大日精化工業)を用いた。着色された無機顔料には#5950(旭日産業)を用いた。分散剤にはDISPERBYK−180(ビックケミージャパン)、無機顔料(シリカで被覆されたチタニア)には、D−970(堺化学;平均粒径0.26μm)を用いた。硬化剤には、タケネートD−120N(三井化学)を用いた。
<膜の作製>
実施例28では、以下の方法で膜を作製した。上記の塗料をマグネシウム合金の金属板にスピンコーターで50μmの膜厚になるように本発明の膜を塗布し、室温で一晩乾燥後、130℃で30分間焼成し、実施例28の膜を得た。また、SUS箔および金属板にバーコーターで50μmの膜厚になるように本発明の膜を塗布し、室温で一晩乾燥後、130℃で30分間焼成し、実施例28の膜を得た。
[実施例29〜37]
実施例29〜37では、表9、10の材料および条件にする以外は実施例28と同様にして、塗料および膜を作製した。実施例29の無機顔料(シリカで被覆されたチタニア)にはQSC−100(デンカ;平均粒径0.11μm)を用いた。実施例30の無機顔料(シリカで被覆されたチタニア)にはR−38L(堺化学;平均粒径0.4μm)を用いた。実施例31の有機顔料にはペリレン顔料のC.I.Pigment Black 32(BASF;平均粒径0.2μm)を用いた。実施例33の分散剤にはDISPERBYK(ビックケミージャパン)を用いた。実施例34の分散剤にはANTI−TERRA−250(ビックケミージャパン)を用いた。実施例35の分散剤にはDISPERBYK−187(ビックケミージャパン)を用いた。
[比較例13〜19]
比較例13〜19では、表9の材料および条件にする以外は実施例28と同様にして膜を作成した。比較例13の無機顔料(シリカで被覆されたチタニア)にはHT0210(東邦チタニウム;平均粒径2.25μm)を用いた。比較例14の無機顔料(シリカで被覆されたチタニア)にはMT−700B(テイカ;平均粒径0.08μm)を用いた。比較例17の分散剤にはDISPERBYK−145(ビックケミージャパン)を用いた。比較例18の分散剤にはANTI−TERRA−108(ビックケミージャパン)を用いた。比較例19の分散剤にはDISPERBYK−2008(ビックケミージャパン)を用いた。表11に比較例13〜16の膜を構成する材料および添加量を示す。表12に比較例17〜19の膜を用いて評価した結果をそれぞれ示す。
(評価結果〉
上記の方法により、実施例28から37、比較例13から19の膜の意匠性、遮熱性、耐久性を評価した結果を表5に記す。
C評価がある場合は、光学機器の表面に設ける膜としては、好ましくないと判断した。
本発明の光学機器上面に形成される膜は、カメラやビデオ、放送機器などの光学機器のレンズ鏡筒や、その他の屋外で使用される可能性があるカメラ本体、ビデオ本体、監視カメラ、お天気カメラ等に利用することが出来る。
1 入射光
2 反射光
3 透過光
4 赤外線反射膜
5 基材

Claims (36)

  1. 樹脂と、アゾ系有機粒子と、TiおよびOを含む粒子と、を含む膜を有することを特徴とする物品。
  2. 明度が50以上であることを特徴とする請求項1記載の物品。
  3. 前記TiおよびOを含む粒子は、TiおよびOの他に1種類以上の無機金属を含むことを特徴とする請求項1または2記載の物品。
  4. 前記無機金属がSb、Cr、Fe、またはZnである請求項3記載の物品。
  5. 前記アゾ系有機粒子の含有量を100面積%とした時、TiおよびOを含む粒子の含有量は、25面積%以上1000面積%以下であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか一項記載の物品。
  6. 前記アゾ系有機粒子の含有量は、前記膜の断面積を100面積%とした時、0.1面積%以上0.4面積%以下であり、前記TiおよびOを含む粒子の含有量は、前記膜の断面積を100面積%とした時、0.1面積%以上1.0面積%以下である請求項1乃至5いずれか一項記載の物品。
  7. 前記アゾ系有機粒子がアゾメチンブラックである請求項1乃至6いずれか一項記載の物品。
  8. 前記膜は、シリカで表面が被覆された酸化チタン粒子をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至7いずれか一項記載の物品。
  9. 前記膜は、シリカ粒子をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至8いずれか一項記載の物品。
  10. 前記膜の明度が71以上80以下である請求項1乃至9いずれか一項記載の物品。
  11. 前記TiおよびOを含む粒子が、(Ti、Sb、Cr)Oおよび(Ti、Fe、Zn)Oより選ばれる1種類もしくは混合物である請求項1乃至10いずれか一項記載の物品。
  12. 前記膜の断面において、前記粒子を10面積%以上60面積%以下の含有量で含有する粒子領域と、前記粒子領域の間に前記平均粒径が100nm以上400nm以下の粒子を含まない樹脂領域と、を有し、
    前記膜の断面における前記樹脂領域の比率は、0.05面積%以上13面積%以下であり、前記膜の断面における前記樹脂領域の前記基材の表面の法線方向の幅は200nm以上2000nm以下であり、平行方向の幅は3μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1乃至11いずれか一項記載の物品。
  13. 前記膜の、空気界面側から基材側までの長さを100%とした時、空気界面側から基材側に向かって30%の領域に、前記アゾ系有機粒子の含有量の70面積%以上95面積%以下が含まれていることを特徴とする請求項1乃至12いずれか一項記載の物品。
  14. 膜を有する光学機器であって、
    前記膜は、樹脂と、アゾ系有機粒子と、TiおよびOを含む粒子と、を含み、
    前記膜は、前記光学機器の外表面に形成されていることを特徴とする光学機器。
  15. 明度が50以上であることを特徴とする請求項14記載の光学機器。
  16. 前記TiおよびOを含む粒子は、TiおよびOの他に1種類以上の無機金属を含むことを特徴とする請求項14または15記載の光学機器。
  17. 前記無機金属がSb、Cr、Fe、またはZnである請求項16記載の光学機器。
  18. 前記アゾ系有機粒子の含有量を100面積%とした時、TiおよびOを含む粒子の含有量は、25面積%以上1000面積%以下であることを特徴とする請求項14乃至17いずれか一項記載の光学機器。
  19. 前記アゾ系有機粒子の含有量は、前記膜の断面積を100面積%とした時、0.1面積%以上0.4面積%以下であり、前記TiおよびOを含む粒子の含有量は、前記膜の断面積を100面積%とした時、0.1面積%以上1.0面積%以下である請求項14乃至18いずれか一項記載の光学機器。
  20. 前記アゾ系有機粒子がアゾメチンブラックである請求項14乃至19いずれか一項記載の光学機器。
  21. 前記膜は、シリカで表面が被覆された酸化チタン粒子をさらに含むことを特徴とする請求項14乃至20いずれか一項記載の光学機器。
  22. 前記膜は、シリカ粒子をさらに含むことを特徴とする請求項14乃至21いずれか一項記載の光学機器。
  23. 前記膜の明度が、71以上80以下である請求項14乃至22いずれか一項記載の光学機器。
  24. 前記TiおよびOを含む粒子が、チタニア、(Ti、Sb、Cr)O、および(Ti、Fe、Zn)Oより選ばれる1種類もしくは混合物である請求項14乃至23いずれか一項記載の光学機器。
  25. 前記膜の断面において、前記粒子を10面積%以上60面積%以下の含有量で含有する粒子領域と、前記粒子領域の間に前記平均粒径が100nm以上400nm以下の粒子を含まない樹脂領域と、を有し、
    前記膜の断面における前記樹脂領域の比率は、0.05面積%以上13面積%以下であり、前記膜の断面における前記樹脂領域の前記基材の表面の法線方向の幅は200nm以上2000nm以下であり、平行方向の幅は3μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項14乃至24いずれか一項記載の光学機器。
  26. 前記膜の、空気界面側から基材側までの長さを100%とした時、空気界面側から基材側に向かって30%の領域に、前記アゾ系有機粒子の含有量の70面積%以上95面積%以下が含まれていることを特徴とする請求項14乃至24いずれか一項記載の光学機器。
  27. 樹脂と、アゾ系有機粒子と、TiおよびOを含む粒子と、を含み、
    前記アゾ系有機粒子の含有量を100重量%とした時、TiおよびOを含む粒子の含有量は、10重量%以上1600重量%以下であることを特徴とする塗料。
  28. 前記アゾ系有機粒子の含有量は、塗料中の不揮発成分に対して0.1重量%以上1.0重量%以下であり、
    TiおよびOを含む粒子の含有量は、塗料中の不揮発成分に対して0.1重量%以上1.6重量%以下であることを特徴とする請求項27記載の塗料。
  29. 前記TiおよびOを含む粒子は、TiおよびOの他に1種類以上の無機金属を含むことを特徴とする請求項27または28記載の塗料。
  30. 前記無機金属がSb、Cr、Fe、またはZnであることを特徴とする請求項29記載の塗料。
  31. 前記TiおよびOを含む粒子が、(Ti、Sb、Cr)O、および(Ti、Fe、Zn)Oより選ばれる1種類もしくは混合物であることを特徴とする請求項27乃至30いずれか一項記載の塗料。
  32. 前記アゾ系有機粒子がアゾメチンブラックである請求項27乃至31いずれか一項記載の塗料。
  33. シリカで表面が被覆された酸化チタン粒子をさらに含むことを特徴とする請求項27乃至32いずれか一項記載の塗料。
  34. シリカ粒子をさらに含むことを特徴とする請求項27乃至33いずれか一項記載の塗料。
  35. 平均粒径が100nm以上400nm以下であってチタニア、アルミナ、ジルコニアおよび酸化亜鉛のうちの少なくとも一種を含む粒子と樹脂とを含む領域と、前記領域の表面の一部分に、前記平均粒径が100nm以上400nm以下の粒子を含まない領域とを形成する工程と、
    前記含まない領域の上に、平均粒径が100nm以上400nm以下であってチタニア、アルミナ、ジルコニアおよび酸化亜鉛のうちの少なくとも一種を含む粒子と、樹脂とを含む領域を形成する工程と、を有することを特徴とする物品の製造方法。
  36. 樹脂と、有機顔料と、無機顔料と、アルキロールアンモニウム塩を含む塗料を基材上に塗布する工程と、
    前記塗布した塗料を硬化させて膜を形成する工程と、
    を有することを特徴とする物品の製造方法。
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