JP6896492B2 - 光学機器、光学機器の表面に設ける膜、および光学機器に用いる塗料 - Google Patents
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Description
光学機器の表面に設ける膜とは、屋外で使用した際に太陽光による部材の温度上昇を抑制する機能を有する膜である。従来、太陽光による部材の温度上昇を抑制する方法としては、図1に示すように太陽による入射光1を基材5上の赤外線反射膜4で反射光2として反射する方法が知られており、入射光1に対する反射光2の比率を大きくすることで、透過光3による発熱を抑制することができる。反射率を上げるための材料としては可視光から赤外領域の反射率が高い酸化チタンが用いられることが多い。また、太陽光エネルギー分布は可視光領域で47%、赤外領域で50%であり、可視光から赤外領域での広い範囲での反射率が高いことが求められる。
このような遮熱性能に加えて、継続的な遮熱性能の維持や外観上の観点から真夏や赤道直下等の過酷な高温高湿下で割れやハガレといった不良の発生を低減する耐環境性および使用中の傷の発生を低減する耐傷性が求められる。
また、一般的に光学機器の表面は複雑な形状を有しており、塗料を塗布することで塗膜を形成する。このため、塗料は、経時による遮熱性や耐環境性が劣化しないことが重要である。
特許文献1には、膜の耐環境性能を向上させるために、微粒子とポリロタキサンを含む塗料を用いた膜を形成し、ポリロタキサン周囲の薬品侵入経路を塞ぐことにより、薬品による膜の膨潤を抑制している。一般に、樹脂中にポリロタキサンを含有させることで、傷修復性や柔軟性および耐衝撃性を付与することが知られている。
また、特許文献2には、遮熱膜に耐水性や耐候性を向上させるために、遮熱顔料の表面を光学的に透明な有機皮膜および無機皮膜を形成することで耐候性を向上させている。
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、100μm以下の膜厚においても遮熱性能、耐環境性が高い塗膜を、光学機器用の表面に設ける膜、光学機器用の塗料、光学機器を提供するものである。
前記膜が、樹脂と、無機粒子と、顔料と、分子量が18万以上70万以下のポリロタキサンと、を少なくとも含み、
前記膜における前記無機粒子の含有量が23vol%以上34vol%以下で、前記膜における前記ポリロタキサンの含有量が0.24質量%以上4.9質量%以下であることを特徴とする光学機器に関する。
前記光学用塗膜における前記無機粒子の含有量が23vol%以上34vol%以下で、前記光学用塗膜における前記ポリロタキサンの含有量が0.24質量%以上4.9質量%以下であることを特徴とする光学用塗膜に関する。
一般に遮熱性を上げるためには、樹脂量に対して遮熱性能を有する無機粒子量を増やすことで太陽光を反射する成分密度を上げる。または、遮熱性能を有する無機粒子の分散性を高めることで、遮熱性能を有する無機粒子の偏在による太陽光の反射漏れをなくすることで実現できる(図3)。しかしながら遮熱性能を有する無機粒子を増やすと相対的に樹脂量が低下してしまうために、太陽光による膜の劣化あるいは硬度が増すことによる応力が高くなることによる割れといった問題が発生する。また、塗料中での遮熱性能を有する無機粒子間距離が近くなることにより、遮熱性能を有する無機粒子同士の凝集が起こる。このため、塗膜形成後の遮熱性能を有する無機粒子の偏在が発生し、反射漏れによる反射率が減少する(図4)。このため、一般的には凝集を改善するために、分散剤を多量に用いることで分散性を向上できる。しかしながら、相対的に遮熱性能を有する無機粒子量が減少することによる遮熱性の悪化、樹脂量が減少することによる耐候性の悪化が起こってしまう。このように遮熱性を悪化させずに、耐候性を向上させることは困難であった。
以下に、本発明の光学機器用の塗料の材料構成および本発明の光学機器用の塗料の製造方法について説明する。
(ポリロタキサン)
本発明の光学用塗料に含まれるポリロタキサンについて説明する。
本発明の塗料に含まれる遮熱性能を有する無機粒子について説明する。
次に、本発明の塗料に含まれる樹脂について説明する。
次に、本発明の塗料に含まれる顔料について説明する。
次に、塗料に含まれる溶剤について説明する。
本発明の遮熱塗料は、遮熱性および耐候性、耐傷性を悪化させない範囲で、その他の任意の添加剤を樹脂の一部として含んでいてもよい。その一例としては、分散剤、硬化剤、硬化触媒、可塑剤、チキソ性付与剤、レベリング剤、艶消し剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤、無機微粒子および有機微粒子等が挙げられる。
以下に、本発明の光学用塗料の製造方法について説明する。
以下に、本発明の光学機器上面に形成される膜の材料構成について説明する。本発明の光学機器上面に形成される膜は少なくとも樹脂と遮熱性能を有する無機粒子と顔料とポリロタキサンを含む。
(ポリロタキサン)
本発明のポリロタキサンの含有量は、膜に対して0.24質量%以上4.9質量%以下であり、好ましくは2.4質量%以上3.7質量%以下である。本発明のポリロタキサンの含有量が0.24質量%未満になると、十分なポリロタキサンが遮熱性能を有する無機粒子に吸着しないため、分散性が悪化する。また、ポリロタキサンの含有量が4.9質量%を超えるとポリロタキサンが遮熱性能を有する無機粒子に対して余剰になってしまうことから、耐候性が悪化する。
遮熱性能を有する無機粒子の膜中の含有量は、23vol%以上34vol%以下であり、好ましくは25vol%以上30vol%以下である。遮熱性能を有する無機粒子の含有量が23vol%未満になると、塗膜中を太陽光が透過するので反射率が悪化する恐れがある。また、遮熱性能を有する無機粒子の含有量が34vol%を超えると膜の脆性が悪化する恐れがある。
本発明の樹脂の含有量は39vol%以上60vol%以下であることが好ましく、より好ましくは45vol%以上55vol%以下である。本発明の樹脂の含有量が39vol%未満になると、基材との密着性が悪化する恐れがある。また、本発明の樹脂の含有量が60vol%を超えると、太陽光の日射反射率が悪化する。
本発明の顔料の含有量は10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。本発明の顔料の含有量が10質量%を超えると塗膜の色味が濃くなり、明度が下がる恐れがある。
本発明の遮熱膜は、遮熱性および耐候性、耐傷性を悪化させない範囲で、その他の任意の添加剤を樹脂の一部として含んでいてもよい。その一例としては、分散剤、硬化剤、硬化触媒、可塑剤、チキソ性付与剤、レベリング剤、艶消し剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤、無機微粒子および有機微粒子等が挙げられる。
本発明の光学機器の上面に形成される膜は少なくとも基材よりも外側に形成される。その形態としては、基材と密着していてもよいし、基材と光学機器上面に形成される膜の間に密着性を向上させるプライマー層が設けられていてもよい。
基材としては、任意の材料を用いることが出来るが、金属やプラスチックが好ましい。金属材料の一例としては、アルミニウム、チタン、ステンレス、マグネシウム、を含む合金等が挙げられる。プラスチックの一例としては、ポリカーボネート樹脂、アクリアル樹脂、ABS樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
プライマーは基材と膜の密着性を向上させる目的で用いても良い。プライマーとしては、任意の材料を用いることが出来るが、一例としてはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、プライマーには本発明の粒子や本発明以外の粒子、着色剤、分散剤、硬化剤、硬化触媒、可塑剤、チキソ付与剤、レベリング剤、有機着色剤、無機着色剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤、溶媒の残渣が含まれていても構わない。
本発明の光学用塗膜は膜厚10μm以上70μm以下であることが好ましい。膜厚が10μm未満になると、光学機器用の遮熱膜として十分な日射反射率に到達できない。また、膜厚が70μmより厚くなると光学機器の位置精度に悪影響を及ぼすことがある。
本発明の光学用塗膜は、10μm以上70μm以下で本発明の遮熱塗料を均一に塗布出来れば任意の塗布方法および硬化方法を用いることが出来る。
(日射反射率)
本発明の光学機器上面に形成される膜は日射反射率が70%以上98%以下である。日射反射率が70%未満になると温度低減効果が低下する。また日射反射率が98%を超えるためには、多量の酸化チタンを含有させる必要があり、膜の脆性が悪化する。
評価用のサンプルには30mm角で厚みが1mmの金属板に本発明の膜を形成して用いた。金属板には、マグネシウム合金を用いた。また、金属板にスピンコーターで所望の膜厚になるように本発明の膜を塗布して焼成した。
本発明の膜を、高温高湿下(温度:60℃、湿度:90%)に設定された恒温槽で1000時間投入し、耐候性を検討した。
耐候性の評価は、JIS K 5600−5−4(引っかき硬度(鉛筆法))により、耐候性試験前後の比較により行った。耐候性試験前後で、3H以上を○、3H未満を×として評価した。
日射反射率は、図5に示すように、分光光度計(U−4000,日立ハイテク)を用いて反射率を測定した後に日射反射率に換算した。
<ポリロタキサンの調製>
使用したポリロタキサンは、特許第3475252にあるような調製方法を用いて作製し、棒状分子としてポリエチレングリコール、環状分子としてシクロデキストリンを選択した。
実施例1は、以下の方法で膜を作製した。分子量18万のポリロタキサン0.66g、遮熱性能を有する無機粒子として酸化チタン15g、樹脂13g(内40質量%が溶剤)、チキソ性付与剤としてシリカ0.75g、顔料0.2g、硬化剤3.9g、シンナー3gを秤量し、遊星回転装置(AR−100、シンキー社製)にて10分間撹拌して、実施例1の塗料を得た。酸化チタンには、D−970(堺化学社製;平均粒径0.26μm)を用いた。樹脂にはアクリルポリオール樹脂であるWFU−580(DIC社製)を用いた。シリカにはアエロジルR−972(日本アエロジル社製)を用いた。顔料にはクロモファインブラックA1103(大日精化工業社製)を用いた。硬化剤にはDN−981(DIC社製)を用いた。
実施例1では、以下の方法で膜を作製した。上記の塗料を外観評価用試験片、高温高湿雰囲気下での耐候試験前後の硬度試験片、日射反射率評価試験片にそれぞれ膜厚が50μmになるように塗布し、室温で6時間以上乾燥後、130℃で30分間焼成し、実施例1の膜を得た。
実施例2〜11では、表1の材料および条件にする以外は実施例1と同様にして、塗料および膜を作製した。
上記の方法により、実施例1から11の膜の外観、高温高湿雰囲気下での耐候試験前後の硬度、日射反射率を評価した結果を表2に示す。
比較のために遮熱塗料の調整、遮熱膜の作製、耐候性試験前後の外観、高温高湿雰囲気下での耐候試験前後の硬度、日射反射率を実施例1〜11と同様に行った。実施例1〜11と異なる点について以下に示す。
Claims (12)
- レンズと、レンズ鏡筒と、を少なくとも備え、前記レンズ鏡筒の表面に膜が形成された光学機器であって、
前記膜が、樹脂と、無機粒子と、顔料と、分子量が18万以上70万以下のポリロタキサンと、を少なくとも含み、
前記膜における前記無機粒子の含有量が23vol%以上34vol%以下で、前記膜における前記ポリロタキサンの含有量が0.24質量%以上4.9質量%以下であることを特徴とする光学機器。 - 前記膜の硬度が3H以上5H以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学機器。
- 前記膜の膜厚が10μm以上70μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学機器。
- 前記無機粒子は、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、ジルコニア又は酸化亜鉛のいずれかを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学機器。
- 前記樹脂は、エポキン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂又はアルキッド樹脂のいずれかを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学機器。
- 樹脂と、無機粒子と、顔料と、分子量が18万以上70万以下のポリロタキサンと、を少なくとも含む光学用塗膜であって、
前記光学用塗膜における前記無機粒子の含有量が23vol%以上34vol%以下で、前記光学用塗膜における前記ポリロタキサンの含有量が0.24質量%以上4.9質量%以下であることを特徴とする光学用塗膜。 - 前記光学用塗膜の硬度が3H以上5H以下であることを特徴とする請求項6に記載の光学用塗膜。
- 前記光学用塗膜の膜厚が10μm以上70μm以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載の光学用塗膜。
- 前記無機粒子は、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、ジルコニア又は酸化亜鉛のいずれかを有することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の光学用塗膜。
- 前記樹脂は、エポキン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂又はアルキッド樹脂のいずれかを有することを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載の光学用塗膜。
- 樹脂と、無機粒子と、顔料と、分子量が18万以上70万以下のポリロタキサンと、溶剤と、を少なくとも含む光学用塗料であって、前記光学用塗料における前記無機粒子の含有量が35質量%以上55質量%以下であり、前記光学用塗料中の前記溶剤を除く全ての成分における前記ポリロタキサンの含有量が0.24質量%以上4.9質量%以下であることを特徴とする光学用塗料。
- 前記光学用塗料における前記樹脂の含有量は10質量%以上80質量%以下であり、前記光学用塗料の粘度は10mPa・s以上10000mPa・s以下であることを特徴とする請求項11に記載の光学用塗料。
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