JP2009139856A - レンズ鏡筒及び撮像システム - Google Patents

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Abstract

【課題】赤外線による温度上昇を抑制することができるレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】レンズ鏡筒20は、鏡筒本体202上に赤外線反射部材300を有する。赤外線反射部材300は、鏡筒本体202側から、断熱層304、赤外線反射層302及び透明着色層306を順次有する。
【選択図】図4

Description

本発明は、一眼レフカメラなどの撮像装置に着脱自在に装着される交換レンズなどのレンズ鏡筒及びこれを用いた撮像システムに関する。
レンズ保持筒の外面または内面に保持筒よりも熱伝導性の低い塗膜を形成した断熱構造のレンズ鏡筒が知られている(特許文献1)。
特開平11−174304号公報
しかしながら、熱伝導性の低い断熱塗膜を形成しただけでは、直射日光などに含まれる赤外線による熱伝達を防止することはできず、赤外線が断熱塗膜を透過して鏡筒基材や鏡筒内部に到達し、温度上昇を十分に抑制できないとの問題があった。
本発明が解決しようとする課題は、赤外線による温度上昇を抑制することができるレンズ鏡筒及びこれを備えた撮像システムを提供することである。
本発明は、以下の解決手段によって上記課題を解決する。なお、本発明の実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、この符号は本発明の理解を容易にするためだけのものであって本発明を限定する趣旨ではない。
本発明に係る撮像システム(1)は、撮像素子(102)が組み込まれた撮像装置(10)と、撮像装置(10)に着脱自在に装着されるレンズ鏡筒(20)を有する。レンズ鏡筒(20)は、鏡筒本体(202)上に赤外線反射機能が付与してある赤外線反射部材(300,300a,300b)を有する。
本発明によれば、赤外線による温度上昇を抑制することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
図1に示すように、本発明の撮像システムの一例としての本実施形態に係るデジタルスチルカメラ1は、カメラボディ10と交換レンズ20から構成され、交換レンズ20はカメラボディ10に対して機械的に着脱することができる。
カメラボディ(撮像装置)10には、交換レンズ20の予定焦点面に調整配置される撮像素子102が内蔵されている。撮像素子102は、半導体チップから構成された、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどで構成される。
なお、カメラボディ10は、上述した撮像素子102の他、ボディCPU、液晶表示素子、接眼レンズ、液晶表示素子駆動回路、撮影画像信号を格納するメモリカードなどを備えるが、本実施形態ではこれらの各部材についての説明を割愛する。
交換レンズ(レンズ鏡筒)20は、鏡筒本体202を有する。鏡筒本体202の内部には、光学系204が設けてある。光学系204は、従来のカメラのレンズ鏡筒に通常使用されているものと同様な部分であるので、詳細な説明を割愛する。
鏡筒本体202の外周には、環状のピントリング206が左右両方向に所定の回転角度まで回転可能に設けてある。ピントリング206は、手動でピント位置の調整を行うモード(MFモード)の場合に光学系204の少なくとも一部を駆動させてピント位置を変更するピント操作部である。ピントリング206の外周表面は、操作者の操作性を考慮してゴムなどの弾性体で被覆してある。なお、このピントリング206に加え、あるいはこれに代えて環状のズームリング(図示省略)を鏡筒本体202の外周表面に設けてもよい。ズームリングは、ズームリングを回転させることによって光学系204の一部を駆動させ、焦点距離を変更する焦点距離操作部である。
なお、交換レンズ20は、通常、上述した光学系204及びピントリング206の他、レンズ内CPU、レンズ駆動機構、レンズ側マウントなどを備えているが、本実施形態ではこれらの各部材についての説明を割愛する。
鏡筒本体202の先端には、レンズフード208が装着してある。レンズフード208は、鏡筒本体202に対して着脱自在なカメラの付属品であり、有害な入射光を遮る役割を果たす部材として機能する。
本実施形態では、鏡筒本体202の外周(但し、ピントリング206が設けられている鏡筒本体202の外周部分を除く)と、鏡筒本体202の先端に着脱自在に装着してあるレンズフード208の外周とには、赤外線反射機能が付与してある。すなわち、操作者が触る機会の多い部位に赤外線反射機能を付与することが好ましい。これにより、太陽光線に含まれる赤外線が、交換レンズ20の赤外線反射機能により反射され、赤外線反射機能が付与されている箇所から鏡筒内部に入射することを抑制することができる。鏡筒内部に赤外線が入射することを抑制することにより、交換レンズ20が高温になるのを防止し、操作者が操作時に交換レンズ20を触っても暑さで苦痛に感じる可能性が低い。また、交換レンズ20の内部温度の上昇も抑制できるので、交換レンズ20内に配置された構成の温度変化による弊害を少なくすることもできる。特に、交換レンズ20内に樹脂製のレンズが備えられている場合、樹脂製のレンズは熱膨張係数が大きいため温度変化による弊害が多い傾向がある。このため、本実施形態では、操作者が触る機会の多い部位に赤外線反射機能を付与することが好ましい。
赤外線反射機能を付与する方法としては、鏡筒本体202及びレンズフード208の一方又は双方の外周表面上に、赤外線反射機能が付与してある部材(以下、「赤外線反射部材300」という。)を形成することにより実現することができる。
《赤外線反射部材》
本実施形態では、赤外線反射部材300は、鏡筒本体202及びレンズフード208の一方又は双方の外周表面上に形成してあればよいが、図2(a)〜図2(c)に示すように外周表面の全域に形成してあることが好ましい。但し、本実施形態では、図3に示すように、鏡筒本体202の一部に形成してもよい。
図3では、鏡筒本体202の被写体側の先端近傍に位置する操作部と、鏡筒本体202のカメラボディ10側に位置する操作部とに赤外線反射部材300が形成されている。一般に、デジタルスチルカメラ1の操作者は、撮影時に交換レンズ20の被写体側の先端近傍に位置する操作部と、カメラボディ1側に位置する操作部とに手が触れる機会が多い傾向にある。そこで、このような操作者の手が触れる機会の多い箇所に赤外線反射部材300を形成すると、操作者は交換レンズ20の温度の影響を受けず快適に操作を行なうことができ好ましい。被写体側の先端近傍に位置する操作部は、鏡筒本体202の最も大きい径寸法の領域としても良く、鏡筒本体202を径寸法毎に領域を分割したときの最も被写体側の領域としても良く、光学系204の最も被写体側に位置するレンズ群の周囲に配置される領域としても良い。カメラボディ10側に位置する操作部は、鏡筒本体202の最も小さい径寸法の領域としても良く、光学系204の最もカメラボディ10側に位置するレンズ群の周囲に配置される領域としても良い。
《赤外線反射層》
図4(a)及び図4(b)に示すように、赤外線反射部材300は、赤外線反射層302を有する。この赤外線反射層302を備えることで、太陽光線に含まれる赤外線による鏡筒本体202の内側の加熱防止を効果的に実現することができる。
赤外線反射層302を形成する方法は特に限定されず、鏡筒本体202及びレンズフード208の一方又は双方の外周表面に、例えば、1)赤外線反射機能を有する薄板を貼り付ける方法、2)赤外線反射機能を有する塗膜層を設ける方法、あるいは3)赤外線反射機能を有する薄膜を設ける方法、などが挙げられる。「赤外線反射機能」とは、1000〜2000nmの波長域(近赤外線領域)におけるJIS−A5759に準拠した光線反射率が少なくとも50%(好ましくは60%以上)であることを意味する。
まず、1)赤外線反射機能を有する薄板を貼り付ける方法を説明する。
薄板としては、赤外線反射機能を有するものであれば材質に限定はなく、その例としては、アルミニウム箔、アルミニウムシート、ステンレス箔などが挙げられる。また、プラスチック等の基材にアルミニウム箔やステンレス箔などを貼り付けたものを用いてもよい。さらに、アルミニウムを蒸着して製造した積層シートや、上記アルミニウムに代えてクロム蒸着シート、スズめっきシートなども使用することができる。
薄板の厚さは、例えば0.01μm〜10mm程度で、好ましくは0.1μm〜1mmである。厚さが0.01μm未満では赤外線反射(熱遮蔽)効果が低下することがあり、10mmを超えると成形性が低下し、また鏡筒の総重量が増加する等のおそれがある。
こうした薄板を鏡筒本体202及びレンズフード208の一方又は双方の外周表面に貼り付けるには、例えばエポキシ樹脂系、スチレン樹脂系、ポリオレフィン系等、適切な接着剤を用いることができる。ただし、本実施形態では、必ずしも鏡筒本体202及びレンズフード208の一方又は双方の外周表面に薄板を強固に密着させる必要はない。すなわち、操作者が操作時に剥がれ落ちない程度の接着性があれば良い。このため、部分熱融着、あるいは金属箔への粘着剤塗布等、接着剤を用いる以外の他の手段を用いることもできる。
次に、2)赤外線反射機能を有する塗膜層を設ける方法を説明する。
赤外線反射機能を有する塗膜は、赤外線反射性物質を含む塗料を、鏡筒本体202及びレンズフード208の一方又は双方の外周表面に塗布することにより形成することができる。
赤外線反射性物質としては、それが赤外線反射性を有している限り特に限定されないが、例えばMn、Pb、Ti、Al、Fe、Cuまたは化合物(例えば、非晶質シリカ(SiO)、TiO)などが挙げられる。中でも、それ自身、熱伝導性の低いものが好ましい。例えばMn(5.79)、Pb(39.6)、Ti(31.2)、SiO(20〜40)、TiO(16.9〜23.5)などは熱伝導率が低く、本実施形態で用いる赤外線反射性物質として好ましい。なお、括弧内の数字はその物質の熱伝導率を示している(単位はWm−1−1)。赤外線反射性物質は微粉末の形状であることが好ましいが、微小粒子の粒度については、本発明の目的を達成し得る限り、格別の限定はない。しかし、一般に50メッシュサイズ、又はそれより細かいものが好ましい。
塗膜のマトリックスを形成する皮膜形成性重合体材料は、例えばポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、シリコーン系樹脂、フッ素含有樹脂、ポリアクリル系樹脂、合成ゴム(例えば、ポリブタジエン、ブタジエン−エチレン共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム(トリフルオルクロルエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等))、クロルスルフォン化ポリエチレン、および天然ゴムなどから選択可能であり、鏡筒本体202及びレンズフード208の一方又は双方の構成材料や他の層構造に応じて密着性の良い樹脂を選択することができる。
マトリックス中に分散される赤外線反射性物質の量は、上述のような少なくとも50%の赤外線反射率を示すように適宜設定することができるが、一般には、マトリックスを形成する皮膜形成性重合体重量に対して10〜200%、好ましくは15〜150%の範囲で用いられる。
塗膜の厚さは、例えば1〜100μm程度で、好ましくは10〜50μmである。塗膜厚が1μm未満では赤外線反射(熱遮蔽)効果が不十分となり、一方100μmを超えても赤外線反射効果は飽和して経済上不利になることがある。
塗料形態は、有機溶剤型塗料か水性塗料が好ましく、低温焼付けまたは常温乾燥によって塗膜を形成することが好ましい。なお、塗装方法についてはスプレー塗装、刷毛塗り塗装、浸漬塗装、ロール塗装、流し塗装等、如何なる方法も使用できる。
次に、3)赤外線反射機能を有する薄膜を設ける方法を説明する。
赤外線反射機能を有する薄膜は、例えば窒化チタン(TiN)薄膜を2枚の二酸化チタン(TiO)薄膜で挟んだ多層薄膜で構成され、こうした各薄膜をスパッタなどのPVD法により形成することができる。
多層薄膜を例えば(TiO/TiN/TiO)の積層構造で形成する場合、TiO及びTiNの膜厚は、例えばそれぞれ30〜200nmの範囲で適宜選択可能である。
厚さ105nmのTiO膜と厚さ175nmのTiN膜を用いた(TiO/TiN/TiO/TiN/TiO)の層構成の場合、波長1000nmの赤外光線反射率が80%以上で、かつ波長380〜780nmの可視光線透過率が80%程度を得ることができる(図8参照)。
本実施形態では、赤外線反射機能を有する薄膜を、金属の蒸着又は金属箔の積層により設けることもできる。ここで用いる金属としては、赤外線に対する反射能の高いものであれば特に限定されないが、例えばAl、Ni、Ti、Pb、Cuなどを挙げることができる。必要に応じて、金属層(金属蒸着層又は金属箔)の片面又は両面に、合成樹脂等による保護層を形成してもよい。これらの薄膜は、赤外線反射効率が高く、輻射赤外線による温度上昇を抑制することができる。
《断熱層》
図4(a)及び図4(b)に示すように、赤外線反射部材300は、断熱層304をさらに有することが好ましい。断熱層304を備えることで、熱伝導性を低下させ、周囲の環境温度の影響が鏡筒本体202の内部に伝わることを抑制することが可能である。鏡筒本体202の内部が環境温度の影響を受けることを抑制すると、例えば、環境温度が低い屋外から環境温度の高い室内に交換レンズ20を持ちこむ際に、鏡筒本体202の内部の温度変化が少なく、鏡筒本体202の内部で結露が発生するおそれを低下させることができる。また、赤外線反射部材300は、赤外線反射機能を有するとともに断熱機能も有するので、例えば、交換レンズ20を長時間夏季の炎天下に置いたとしても、太陽光に含まれる赤外線を反射して鏡筒本体202内部が赤外線により加熱されるのを抑制するとともに、環境温度が鏡筒本体202内部で伝達されて鏡筒本体202内部の温度が上昇するのを効果的に防止できる。
断熱層304と前記赤外線反射層302との積層順序は、特に限定されないが、断熱層304より外側に赤外線反射層302が形成してあることがより好ましい。この順で形成することで、赤外線反射層302の外側で断熱層304自体が赤外線からの熱を吸収して高温の保温材となることを抑制できる。
断熱層304は、鏡筒本体202及びレンズフード208の一方又は双方の外周表面に、断熱性物質を含む塗料を塗布することにより形成することができる。
断熱性物質としては、低い熱伝導率を持つ粒子状物質であれば特に限定されないが、例えばガラス粒(1.1)、高分子材料粒(0.1〜0.4)、雲母粒(0.54)、石綿(0.14)、木材粒(0.1〜0.6)、繊維屑粒(0.01〜03)などが挙げられる。括弧内の数字はその物質の熱伝導率を示している(単位はWm−1−1)。中でも、ガラス製またはセラミック製の白色中空ビーズ、あるいは発泡樹脂の微粒子を用いることが好ましい。
中空ビーズは、熱伝導率が非常に低い空気を内包していることから、温度上昇を起こさせるような変化が発生した場合には中空ビーズに熱が吸収され、温度降下を起こさせるような変化が発生した場合には中空ビーズの表面から熱が放射される。このような中空ビーズが断熱層304内に分散配置されることになり、断熱層304全体として非常に優れた断熱効果を発揮する。
中空ビーズの平均粒径は、好ましくは30〜100μmである。30μm以上とすることで、中空ビーズ内に十分な断熱性を発揮できるだけの空気収容量を確保でき、100μm以下であれば、ノズルを目詰まりさせることなく通常のスプレー塗装を実施できるからである。
なお、断熱性物質は、赤外線反射性を保有するものであってもよく、保有しないものであってもよい。
断熱層304のマトリックスを形成する皮膜形成性重合体材料は、例えばポリ塩化ビニル、クロロスルフォン化ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン−エチレン/酢酸ビニル共重合体−ポリ塩化ビニルグラフトポリマー、エチレン−プロピレンジエンポリマー、ポリアクリルその他の熱可塑性重合体、および、ゴム類などが挙げられる。
マトリックス中に分散される断熱性物質の量は、塗料内に占める断熱性物質の容積割合で、好ましくは50〜80%である。断熱性物質の容積割合を50〜80%とすることにより、高い断熱性を確保しつつ塗布された塗料の付着性(剥がれ難さ)を確保することができる。断熱性物質の容積割合が80%を超えると塗料の付着性が悪くなり、50%未満では断熱性物質の量が少なすぎて断熱性が低下する傾向がある。
断熱層304の厚みは、好ましくは0.5〜5mmである。0.5mm以上の厚みで形成することで十分な断熱性を確保することができ、5mm以下で形成することで、厚膜になることによるコスト高を抑制しつつ、塗膜剥がれ(ピーリング)を効果的に防止することができる(付着性を良くできる)。
塗料形態は、有機溶剤型塗料か水性塗料が好ましく、低温焼付けまたは常温乾燥によって塗膜を形成することが好ましい。なお、塗装方法についてはスプレー塗装、刷毛塗り塗装、浸漬塗装、ロール塗装、流し塗装等、如何なる方法も使用できる。
《着色層》
図4(a)及び図4(b)に示すように、赤外線反射部材300は、着色層306をさらに有することが好ましい。着色層306を備えることで、鏡筒の外観色を所望の色にすることができる。
着色層306と前記断熱層304及び赤外線反射層302との積層順序は特に限定されないが、鏡筒本体202及びレンズフード208の一方又は双方の外周側から、断熱層304→赤外線反射層302→着色層306の順で、すなわち着色層306を3つの層のうち最も外側の層として形成することがより好ましい。
本実施形態の着色層306は、可視光線透過率よりも高い赤外線透過率を持つ必要がある(着色層)。すなわち、380〜780nmの波長域(可視光線領域)におけるJIS−K7361に準拠した光線透過率をT1とし、1000〜2000nmの波長域(近赤外線領域)における光線透過率をT2としたとき、着色層306は、T1<T2である。こうすることで、図4においては、着色層306は赤外線反射層302より外側に形成されているが、着色層306は赤外線を透過させることができる。その結果、着色層306が赤外線反射層302により反射された赤外線を透過させずに加熱されてしまうことを効果的に防止できる。また、着色層306を、赤外線反射部材300の最も外側に形成することにより、着色層306の色を調整して交換レンズ20の外観の色を調整することができ好ましい。さらに、着色層306は、赤外線反射層302や断熱層304より外側に形成されるので、赤外線反射層302や断熱層304の色を適宜変更可能である。
このようなことから、本実施形態の着色層306は、赤外線透過着色物質を含む塗料を、赤外線反射層302の表面の少なくとも一部(好ましくは全部)に塗布することにより形成することができる。
赤外線透過着色物質としては特に限定されない。
塗膜の厚さは、特に限定されないが、塗膜厚が厚過ぎると、赤外線透過率が低下するおそれがある。
塗膜のマトリックスを形成する皮膜形成性重合体材料は、上述した赤外線反射層302及び断熱層304で使用する皮膜形成性重合体材料を使用することができる。
塗料形態は、有機溶剤型塗料か水性塗料が好ましく、低温焼付けまたは常温乾燥によって塗膜を形成することが好ましい。なお、塗装方法についてはスプレー塗装、刷毛塗り塗装、浸漬塗装、ロール塗装、流し塗装等、如何なる方法も使用できる。
なお、図7に、本実施形態の赤外線反射層302及び着色層306の所定波長域における光線透過率の一例を示す。
赤外線反射層302は、近赤外線領域について光線透過率が低ければよく(つまり、近赤外線領域について光線反射率が高ければよく)、近赤外線領域以外の領域の光線透過率に特に制限は無い。着色層306は、交換レンズ20の外観の所望の色に応じた可視光線領域(図7では、波長700nm以下の領域)の光線透過率が低く、近赤外線領域の光線透過率が高い。よって、着色層306は、所望の色に応じた可視光線を反射させるとともに、赤外線を透過させるようになっている。
《その他の層》
本実施形態では、鏡筒本体202及びレンズフード208の一方又は双方の外周表面と上述した赤外線反射部材300との間、あるいは上述した赤外線反射部材300の外周表面や、赤外線反射部材300の中に、本発明の目的を阻害しない限り、例えば下地層、中間層、保護層などのその他の層(図示省略)を所定厚みで形成しても良い。
なお、本実施形態においては赤外線透過着色物質を含む着色層306を形成することとしたが、高い赤外線透過率を持つ着色物質を他の層に混入させて着色層306を省略する事としても良い。この際、赤外線反射層302より鏡筒本体202側の層に着色物質を混入させる場合、着色物質の赤外線透過率は高くする必要が無い。
また、本実施形態においては、ピントリング206に赤外線反射部材30は形成していないが、ピントリング206を弾性体で被覆せずに赤外線反射部材30を形成することとしても良い。つまり、赤外線反射部材30は、鏡筒本体202の全面を覆うように形成しても良い。
本実施形態では、太陽光線による加熱防止のため赤外線反射層302を備える。また、熱伝導性を低下させ、鏡筒温度が手指に伝達され、操作性を妨げないようにすると共に、低温時の結露を防止するために断熱層304を備える。さらに、鏡筒外観を所望の色とするために最外面に着色層306を備える。このため、鏡筒外観色として自由な着色をしつつ、赤外線反射による鏡筒の温度上昇の抑制と、断熱膜による冷却時の結露防止や使用者への冷熱の伝達防止などを効率的に実現することができる。
特に、上述した赤外線反射部材300の外周表面に、後述の透明赤外線反射層302a(図5(a)及び図5(b)参照)を積層することで、加熱のさらなる抑制が期待できる。
《第2実施形態》
本実施形態の基本構成は第1実施形態と同じであるので、共通する構成要素については第1実施形態と同符号を付して説明に代える。
図5(a)及び図5(b)に示すように、本実施形態の赤外線反射部材300aは、鏡筒本体202及びレンズフード208の一方又は双方の外周表面上に、断熱層304を有する点で、第1実施形態と同様である。しかしながら、この断熱層304の上に、着色層306a及び透明赤外線反射層302aが順次形成してある点で第1実施形態とは相違する。
着色層306aが、第1実施形態の着色層306と異なる点は、可視光線透過率よりも高い赤外線透過率を持つ必要がない点である。すなわち、本実施形態の着色層306aは、第1実施形態の着色層306と異なり、T1≧T2であってもよい。勿論、T1<T2となることを妨げるものではない。このようなことから、本実施形態の着色層306aは、一般的な着色剤を含む着色塗料を、断熱層304の表面の少なくとも一部(好ましくは全部)に塗布することにより形成することができる。塗膜の厚さ、皮膜形成性重合体材料、塗料形態、塗装方法については、第1実施形態と同様である。
赤外線反射層302aが、第1実施形態の赤外線反射層302と異なる点は、380〜780nmの波長域(可視光線領域)におけるJIS−K7361に準拠した光線透過率T1が少なくとも80%(好ましくは90%以上)である点である。すなわち、本実施形態の赤外線反射層302aは、第1実施形態の赤外線反射層302と異なり、少なくとも80%の可視光線透過率T1を持つ必要がある。こうすることで、着色層306aの光線透過率の低い可視光線領域の色を、赤外線反射層302aが透過させることができ、交換レンズ20の外観の色とすることができる。このようなことから、本実施形態の赤外線反射層302aは、透明赤外線反射性物質を含む塗料を、着色層306aの表面の少なくとも一部(好ましくは全部)に塗布することにより形成することができる。
透明赤外線反射性物質としては特に限定されないが、例えば窒化チタン(TiN)などが挙げられる。塗膜の厚さ、皮膜形成性重合体材料、塗料形態、塗装方法については、第1実施形態と同様である。
なお、図7に、本実施形態の赤外線反射層302a及び着色層306aの所定波長域における光線透過率の一例を示す。
赤外線反射層302aは、交換レンズ20の外観の所望の色に応じた可視光線領域(図7では、波長700nm以下の領域)の光線透過率が高く、近赤外線領域の光線透過率が低い。着色層306aは、交換レンズ20の外観の所望の色に応じた可視光線領域の光線透過率が低く、その他の領域の光線透過率に特に制限は無い。つまり、赤外線反射層302aは、所望の色に応じた可視光線を透過させるとともに、赤外線を反射させるようになっている。
《第3実施形態》
本実施形態の基本構成は第1実施形態と同じであるので、共通する構成要素については第1実施形態と同符号を付して説明に代える。
図6に示すように、本実施形態の赤外線反射部材300bは、その最表面に着色層306を有する点で第1実施形態と同様である。しかしながら、鏡筒本体202及びレンズフード208の一方又は双方の外周表面上に、断熱効果を有する赤外線反射層302bを形成し、この赤外線反射層302bの上に着色層306が形成してある点で第1実施形態とは相違する。
本実施形態の赤外線反射層302bは、赤外線反射機能に加えて、断熱機能も有する。このようなことから、本実施形態の赤外線反射層302bは、中空の赤外線反射性物質を含む塗料または、第1実施形態の断熱性物質と赤外線反射性物質とを含む塗料を、鏡筒本体202及びレンズフード208の一方又は双方の外周表面の少なくとも一部(好ましくは全部)に塗布することにより形成することができる。
中空の赤外線反射性物質としては特に限定されないが、例えば非晶質シリカの中空粒子などを使用することができる。塗膜の厚さ、皮膜形成性重合体材料、塗料形態、塗装方法については、第1実施形態と同様である。
なお、図7に、本実施形態の赤外線反射層302bの所定波長域における光線透過率を示す。赤外線反射層302bは、断熱効果を有しつつ近赤外線領域について光線透過率が高い。
なお、上記3つの実施形態では交換レンズ20に赤外線反射部材300を形成することとしたが、赤外線反射部材30はカメラボディ10の表面に形成しても良い。カメラボディ10の表面に形成することで、操作者の手が触れる箇所の温度が暑くなりすぎて操作性が低下することを防止することができるとともに、カメラボディ10の内部の構成の温度変化の影響を小さくすることができる。その他、操作者が撮影時に手を触れる三脚などにも赤外線反射部材30を形成することとしても良い。
次に、本発明の実施の形態をより具体化した実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
《実施例1》
以下に示す断熱膜用塗料、赤外線反射膜用塗料及び着色膜用塗料を準備した。断熱膜用塗料は、皮膜形成性重合体材料とガラス製白色中空ビーズを含有する。赤外線反射膜用塗料は、皮膜形成性重合体材料と非晶質シリカ微粉末を含有する。着色膜用塗料は、皮膜形成性重合体材料と赤外線透過着色物質を含有する。
そしてまず、金属板の上に、断熱膜用塗料をスプレー塗装で塗布し、乾燥させることにより断熱膜を形成した。次に、断熱膜の全面に、赤外線反射膜用塗料をスプレー塗装で塗布し、乾燥させることにより赤外線反射膜を形成した。次に、赤外線反射膜の全面に、着色膜用塗料をスプレー塗装で塗布し、乾燥させることにより着色膜を形成し、試料板を得た。
得られた試料板の着色膜側からの近赤外線反射率を測定した。近赤外線反射率の測定は、1000〜2000nmの波長域の光線反射率を、JIS−A5759に準拠し、近赤外スペクトル測定装置(U−3500形自記分光光度計、WIランプ(ヨウ素タングステン)使用、日立製作所社製)を用いて調べた。
また、得られた試料板の遮熱試験を行った。遮熱試験は、試料板の着色膜側に対して、100V、200Wの赤外線ランプ(東芝レフランプRF、東芝社製)を置いて熱線を照射し、1時間経過後の試料板の表面温度を測定することにより行った。
《比較例1》
赤外線反射膜を形成しなかった以外は、実施例と同様にして試料板(金属板−断熱膜−着色膜の層構造)を形成し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、得られた試料板の着色膜側からの近赤外線反射率及び遮熱試験については、ともに、実施例1と比較して劣っていた。以上のことから、実施例1の優位性が確認できた。
図1は本実施形態に係るカメラの全体構成の概略を説明する断面図である。 図2(a)は図1の平面図、図2(b)は図2(a)のIIb線に沿った断面図、図2(c)は図2(a)のIIc線に沿った断面図である。 図3は図2(a)に相当する他の形態を示す平面図である。 図4(a)及び図4(b)は図1のレンズ鏡筒表面に形成される赤外線反射部材の層構成を示す断面図である。 図5(a)及び図5(b)は他の形態に係る赤外線反射部材の層構成を示す断面図である。 図6は他の形態に係る赤外線反射部材の層構成を示す断面図である。 図7は本実施形態の赤外線反射層及び着色層の所定波長域における光線透過率の一例を示すグラフである。 図8は本実施形態の赤外線反射層を(TiO/TiN/TiO)の積層構造で形成した場合の当該積層構造での反射特性を示すグラフである。
符号の説明
1…デジタルスチルカメラ(撮像システム)
10…カメラボディ(撮像装置)
102…撮像素子
20…交換レンズ(レンズ鏡筒)
202…鏡筒本体
204…光学系
206…ピントリング(操作部)
208…レンズフード(操作部)
300,300a,300b…赤外線反射部材
302,302a,302b…赤外線反射層
304…断熱層
306,306a…着色層

Claims (9)

  1. 鏡筒本体上に赤外線反射機能が付与してある赤外線反射部材を有するレンズ鏡筒。
  2. 請求項1に記載のレンズ鏡筒であって、
    前記赤外線反射部材は、赤外線反射膜を有するレンズ鏡筒。
  3. 請求項1または2に記載のレンズ鏡筒であって、
    前記鏡筒本体上に断熱膜を有するレンズ鏡筒。
  4. 請求項3に記載のレンズ鏡筒であって、
    前記鏡筒本体上に前記断熱膜及び前記赤外線反射膜を順次有するレンズ鏡筒。
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載のレンズ鏡筒であって、
    前記鏡筒本体上に着色膜を有するレンズ鏡筒。
  6. 請求項5に記載のレンズ鏡筒であって、
    前記鏡筒本体上に前記赤外線反射膜及び前記着色膜を順次有し、
    前記着色膜が、可視光線透過率より高い赤外線透過率を持つレンズ鏡筒。
  7. 請求項5に記載のレンズ鏡筒であって、
    前記鏡筒本体上に前記着色膜及び前記赤外線反射膜を順次有し、
    前記赤外線反射膜が、80%以上の可視光線透過率を持つレンズ鏡筒。
  8. 請求項1〜7の何れか一項に記載のレンズ鏡筒であって、
    前記鏡筒本体の先端近傍に位置する操作部に前記赤外線反射部材を有するレンズ鏡筒。
  9. 撮像素子が組み込まれた撮像装置と、
    前記撮像装置に着脱自在に装着される、請求項1〜8の何れか一項に記載のレンズ鏡筒とを、有する撮像システム。
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