JP7151203B2 - 細胞培養培地添加剤、細胞培養培地及び細胞凝集塊の製造方法 - Google Patents
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Description
該重合体(a)に含まれる、ポリエチレンオキサイド部分(A2)の質量/[アクリル系ポリマー部分(A1)の質量とポリエチレンオキサイド部分(A2)の質量との合計]が0.05~0.5である、細胞培養培地添加剤。
すなわち、本発明により、コストや手間の増加を伴わずに3次元的な細胞凝集塊を作製するための、細胞培養培地添加剤、該添加剤を含む細胞培養培地、該該添加剤を用いた細胞凝集塊の製造方法を提供することができる。
本発明の細胞培養培地添加剤は、アクリル系ポリマー部分(A1)とポリエチレンオキサイド部分(A2)とを有する重合体(a)を含み、該重合体(a)に含まれる、ポリエチレンオキサイド部分(A2)の質量/[アクリル系ポリマー部分(A1)の質量とポリエチレンオキサイド部分(A2)の質量との合計]が0.05~0.5であることを特徴とする。このような重合体(a)を含むことで、細胞が基材に接着することなく、細胞同士が集まった3次元的な細胞凝集塊を形成する効果を発揮する。
本発明における重合体(A)は、アクリル系ポリマー部分(A1)とポリエチレンオキサイド部分(A2)とを有する重合体であり、該重合体(a)に含まれる、ポリエチレンオキサイド部分(A2)の質量/[アクリル系ポリマー部分(A1)の質量とポリエチレンオキサイド部分(A2)の質量との合計]が0.05~0.5である。ポリエチレンオキサイド部分は、以下、PEG部分ということがある。
重合体(Aa)は、前記の部分を両方とも主鎖に有する構造、アクリル系ポリマー部分(A1)を主鎖とし、その側鎖部位にポリエチレンオキサイド部分(A2)を有する構造の少なくともいずれかを有し、前記構造を両方とも有していてもよい。
アクリル系ポリマー部分(A1)及びポリエチレンオキサイド部分(A2)を共に主鎖に有する重合体について、結合構造ごとに説明する。このような重合体は、後述するとおり、特定の官能基を有するラジカル開始剤を用いてアクリル系ポリマーを合成した後に、特定官能基を起点に、PEG部分(A2)を導入する方法、及び、アクリル系ポリマーを合成する際のラジカル重合開始剤として、下記式(II)で示される、PEG部分(A2)とアゾ基を含む構造単位を有する高分子アゾ重合開始剤を用いる方法、により得ることができる。
上記の式(IA)で示される結合構造を有する重合体の合成方法の一例を挙げる。
例えば、ラジカル重合開始剤としてカルボキシル基を有する4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)を用いてアクリル系ポリマーを合成すると、末端にカルボキシル基を有するアクリル樹脂が得られる。これに、PEG部分(A2)を構成する原料としてポリエチレングリコールを加え、エステル化反応をさせることで、アクリル系ポリマー部分(A1)と、PEG部分(A2)とが上記式(IA)で結合してなる重合体を得ることができる。
前記高分子アゾ重合開始剤は、・C(CH3)CN-(CH2)2-COO-(CH2CH2O)m-CO-(CH2)2-C(CH3)CN・にて示されるようなラジカルを生じ、後述するアクリル系モノマーを重合させる。そして、アクリル系モノマーから形成されるアクリル系ポリマー部分(A1)と前記ラジカル由来の部分とが結合した主鎖を形成し、ブロック重合体を形成する。PEG部分(A2)は、ラジカルの一部に由来する。
次に、アクリル系ポリマー部分(A1)と、PEG部分(A2)とが上記式(IB)の構造を介して結合してなるブロック重合体の合成方法について説明する。
例えば、アクリル系ポリマー部分(A1)とPEG部分(A2)とが、上記式(IB)の構造を介して結合してなるブロック重合体は、アクリル系モノマーを、ヒドロキシ基を有するアゾ重合開始剤を用いて重合し、末端にヒドロキシ基を有するアクリル系ポリマーブロックを得る工程、及び前記アクリル系ポリマーブロック及びポリエチレングリコールと、2官能のイソシアネート化合物とをウレタン化反応させる工程を含む方法により製造することができる。
ウレタン化反応の際用いられる2官能イソシアネート化合物としては、例えば、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。
さらに、アクリル系ポリマー部分(A1)と、PEG部分(A2)とが上記式(IC)の構造を介して結合してなるブロック重合体の合成方法について説明する。
例えば、アクリル系ポリマー部分とポリエチレンオキサイド部分とが、上記式(IC)の構造により結合してなるブロック重合体は、アクリル系モノマーを、カルボキシル基を有するアゾ重合開始剤を用いて重合し、カルボキシル基を有するアクリル系ポリマーブロックを得る工程、及び前記アクリル系ポリマーブロックにポリエチレングリコールをエステル化反応させる工程を含む方法により製造することができる。
次に、アクリル系ポリマー部分(A1)を主鎖とし、その側鎖部位にポリエチレンオキサイド部分(A2)を有する重合体について説明する。このような重合体は、ポリエチレンオキサイドを有する(メタ)アクリル系モノマーを他のモノマーと共重合することで得ることができる。
などが挙げられる。
なお、これらのモノマーは、アクリル系ポリマー部分(A1)も形成するが、ポリエチレンオキサイド部分(A2)も形成するものである。そこで、これらのモノマーは、アクリル系ポリマー部分(A1)には含めないこととする。
本発明では、アクリル系ポリマー部分(A1)が、水/1-オクタノール分配係数(LogP)の平均値が0以上2以下であるアクリル系モノマーから形成されることが望ましい。LogPの平均値が0以上である場合、親水性であるポリエチレンオキサイド部分(A2)に対してアクリル系ポリマー部分(A1)が疎水性となるため、重合体(a)が疎水性相互作用を発現することができる。また、LogPの平均値が2以下であることにより、重合体(a)を培地に添加した際に析出せず、可溶性を示すようになる。
(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ブタジエン、イソプレンなどのビニル基含有モノマー; N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、1-ビニルイミダゾール、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル、あるいはエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端にカルボキシル基を有するアルキレンオキサイド付加系コハク酸(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有モノマーなどが挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの化合物のうち、特に2-メトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートが経済性や操作性の点から好ましい。
重合体(a)の質量平均分子量Mwは、10,000~300,000であることが好ましい。分子量が10,000未満である場合や300,000より大きい場合、感度よく分析を行えなくなる可能性がある。また、分子量が300,000より大きい場合、粘度が高く、使用上問題が生じる可能性がある。
Mwの測定は昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「GPC-101」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。本発明における測定は、カラムに「KF-805L」(昭和電工社製:GPCカラム:8mmID×300mmサイズ)を直列に2本接続して用い、試料濃度1wt%、流量1.0ml/min、圧力3.8MPa、カラム温度40℃の条件で行い、質量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。データ解析はメーカー内蔵ソフトを使用して検量線及び分子量、ピーク面積を算出し、保持時間15~30分の範囲を分析対象として質量平均分子量を求めた。
本実施形態に係る細胞凝集塊の製造方法では、前述の共重合体(a)を含む細胞培養培地添加剤を細胞培養培地に添加する。共重合体を培地に添加することにより、細胞が培養容器に接着しなくなる。そのため、本実施形態に係る製造方法では、静置培養にて細胞凝集塊を容易に形成することができる。
[実施例1]
(細胞培養培地添加剤1)
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒としてメチルエチルケトン(以下、MEKと略す)150質量部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてメトキシエチルアクリレートを80質量部、2‐エチルヘキシルアクリレートを20質量部、重合開始剤としてVPE-0201(和光純薬工業社製:PEG部分含有マクロアゾ開始剤)を25質量部、溶媒としてMEKを10質量部仕込み、2時間かけて滴下した。滴下終了後6時間加熱撹拌した。その後、室温に冷却し反応を停止した。その後、ダイヤフラムポンプでMEKを除去し、重合体(a-1)を得た。得られた重合体のMwは57,400であった。
ここで、重合体(a-1)は、アクリル系ポリマー部分(A1)及びPEG部分(A2)を主鎖に有し、(A1)と(A2)とが、式(IA)の結合構造を介してなる重合体であり、(A1)を形成するアクリル系モノマーの水/1-オクタノール分配係数(LogP)の平均値は、1.1である。
なお、25℃のリン酸緩衝生理食塩水(以下PBSという)99g中に、得られた重合体(a-1)を1g入れて撹拌して溶解させた後、25℃で24時間放置して、PBSで1質量%に希釈された細胞培養培地添加剤1を得た。
その結果、重合体(a-1)の分離、析出ともに見られず、完全に溶解可能であり、PBSに対して可溶であることが示された。
(細胞培養培地添加剤2~6、9~10)
表1に示す配合組成で、実施例1と同様の方法で重合体(a-2~6、9~10)を合成した後、PBSに溶解させて、PBSで1質量%に希釈された細胞培養培地添加剤2~6、9~10を得た。
ここで、重合体(a-2~6)は、アクリル系ポリマー部分(A1)及びPEG部分(A2)を主鎖に有し、(A1)と(A2)とが、式(IA)の結合構造を介してなる重合体である。重合体(a-4)は、さらに側鎖部位にポリエチレンオキサイド部分(A2)を有する。
また、重合体(a-9)は、PEG部分(A2)を有しないものである。
また、重合体(a-10)は、アクリル系ポリマー部分(A1)及びPEG部分(A2)を主鎖に有し、(A1)と(A2)とが、式(IA)の結合構造を介してなる重合体であるが、A2/[A1+A2]が0.67であり本願発明の範囲外のものである。
(細胞培養培地添加剤7))
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒としてMEK130質量部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてメトキシエチルアクリレートを100質量部、重合開始剤として、VA-086(和光純薬工業社製:水酸基含有アゾ開始剤)を16.2質量部、溶媒としてMEKを10質量部仕込み、2時間かけて滴下した。滴下終了後5時間熟成させた後、室温に冷却し反応を停止し、末端が水酸基のアクリル樹脂を得た。その後、PEG2000(日油株式会社製、ポリエチレングリコール、Mn=2,000、水酸基価=56)を40質量部、イソホロンジイソシアネートを16質量部、及び触媒としてテトラブチルオルソチタネートを0.1質量部仕込み、85℃まで昇温し、3時間反応した後、温度を低下させた。内温が50℃まで低下したところにMEKを加えて希釈することで、固形分10質量%の重合体(a-7)の溶液を得た。得られた重合体のMwは10,200、Tgは8℃であった。
得られた重合体(a-7)について、細胞培養培地添加剤1と同様に、ダイヤフラムポンプでMEKを除去した後、PBSに溶解させて、PBSで1質量%に希釈された細胞培養培地添加剤7を得た。
なお、重合体(a-7)は、アクリル系ポリマー部分(A1)及びPEG部分(A2)を主鎖に有し、(A1)と(A2)とが、式(IB)の結合構造を介してなる重合体であり、(A1)を形成するアクリル系モノマーの水/1-オクタノール分配係数(LogP)の平均値は、0.48である。
(細胞培養培地添加剤8))
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒としてMEK130質量部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてメトキシエチルアクリレートを100質量部、重合開始剤としてVA‐057(和光純薬工業社製:カルボン酸基含有アゾ開始剤)を10質量部、溶媒としてMEKを10質量部仕込み、2時間かけて滴下した。滴下終了後5時間熟成させた後、室温に冷却し反応を停止し、末端がカルボン酸のアクリル樹脂を得た。その後、PEG2000(日油株式会社製、ポリエチレングリコール、Mn=2,000、水酸基価=56)を46質量部、及び触媒としてテトラブチルオルソチタネートを0.1質量部仕込み、85℃まで昇温し、MEKの流出を確認してから、温度を120℃に昇温し、その後、30分ごとに10℃ずつ昇温しながら脱水反応を続けた。温度が230℃になった後、そのままの温度で3時間反応をつづけ、約2kPaの真空化で1時間保持し、さらに約1kPaの真空化で2~3時間反応させ、温度を低下させた。内温が100℃まで低下したところにMEKを加えて希釈することで、固形分10質量%の重合体(a-8)の溶液を得た。得られた重合体のMwは9,500、Tgは3℃であった。
得られた重合体(a-8)について、細胞培養培地添加剤1と同様に、ダイヤフラムポンプでMEKを除去した後、PBSに溶解させて、PBSで1質量%に希釈された細胞培養培地添加剤8を得た。
ここで、重合体(a-8)は、(A1)及び(A2)を主鎖に有し、アクリル系ポリマーブロック(A1)とポリエチレンオキサイドブロック(A2)とが、式(IC)の結合構造を介してなる重合体であり、アクリル系ポリマーブロック(A1)を形成するモノマーの水/1-オクタノール分配係数(LogP)の平均値は、0.48である。
得られた細胞培養培地添加剤について、以下の評価を実施した。結果を表1に示す。
培地にはダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)にウシ胎児血清(FBS)を10%添加したものを使用した(以下、「10%FBS-DMEM培地」とも呼ぶ。)。10%FBS-DMEM培地にマウス線維芽細胞用細胞株(NIH/3T3細胞)を加え、NIH/3T3の濃度が100,000cells/mlとなる細胞懸濁液を作製した。
得られた細胞懸濁液100μlを、滅菌されたポリスチレン製のU底96ウェルプレートの各ウェルに播種した。さらに、得られた細胞培養培地添加剤を、重合体(a)の濃度が0.05質量%及び0.5質量%になるようにそれぞれ添加し、ピペッティングした。その後、5%CO2/37℃のインキュベーターで5日目まで培養した。
細胞凝集塊の形成性は、5日目の細胞培養状態を透過式光学顕微鏡40倍で写真撮影し、細胞の形態を目視観察することによって評価した。
a:1つのスフェロイドを形成 :良好
b:複数個のスフェロイドを形成 :使用不可
c:スフェロイドを形成しない :不良
MEA:メトキシエチルアクリレート、LogP=0.48
BA:ブチルアクリレート、LogP=1.88
MMA:メチルメタクリレート、LogP=1.11
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート、LogP=0.42
AA:アクリル酸、LogP=0.38
BMA:ブチルメタクリレート、LogP=2.23
2EHA: 2-エチルヘキシルアクリレート、LogP=3.53
ISTA:イソステアリルアクリレート、LogP=7.47
PME:メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(ブレンマーPME-1000、日油株式会社製)
VPE-0201:一般式(II)で示される部位を有する、ポリエチレンオキサイド部分(A2)を有し且つ質量平均分子量が5,000~10万である高分子アゾ重合開始剤(和光純薬工業株式会社製)
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
VA-086:水酸基含有アゾ開始剤(和光純薬工業社製)
VA-057:カルボン酸基含有アゾ開始剤(和光純薬工業社製)
PEG2000:日油株式会社製、ポリエチレングリコール、Mn=2,000、水酸基価=56
IPDI:イソホロンジイソシアネート
また、ポリエチレンオキサイド部位の質量/[アクリル系ポリマー部位とポリエチレンオキサイド部位との合計の質量]が0.5よりも大きい重合体を使用した比較例2は、細胞凝集塊ができなかった。これは、重合体の水溶性が高く、細胞に十分に作用しなかったため、細胞と基材との接着が優先されたためであると考えられる。
Claims (6)
- アクリル系ポリマー部分(A1)とポリエチレンオキサイド部分(A2)とを有する重合体(a)を含む、細胞培養培地添加剤を含み、
該重合体(a)に含まれる、ポリエチレンオキサイド部分(A2)の質量/[アクリル系ポリマー部分(A1)の質量とポリエチレンオキサイド部分(A2)の質量との合計]が0.05~0.5であり、
細胞培養培地中の前記重合体(a)の濃度が、0.01質量%以上1質量%以下である、細胞培養培地。 - 前記重合体(a)中のアクリル系ポリマー部分(A1)が、水/1-オクタノール分配係数(LogP)の平均値が0以上2以下であるアクリル系モノマーから形成される、請
求項1~3いずれか1項に記載の細胞培養培地。 - 請求項1~5いずれか1項に記載の細胞培養培地で細胞を培養して細胞凝集塊を形成する、細胞凝集塊の製造方法。
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