JP7150250B2 - 石英ガラスルツボおよび石英ガラスルツボの製造方法 - Google Patents
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Description
なお、本明細書では、アーク溶融とその後に引き続き連続して行う冷却処理を含んだ熱処理を「アーク熱処理」といい、一旦製造された新品の石英ガラスルツボ、あるいは、CZ法による単結晶の育成に使用された石英ガラスルツボについて、内部歪の除去や均質化を図るために行う熱処理を「アニール処理」という。
透明層はアーク溶融中の減圧により気泡が除去された層であり、気泡層は気泡が残留した層になる。
そして、このような石英ガラスルツボの材質については、求められる特性に応じて、外面側の層を天然石英ガラス層(天然石英粉を溶融して形成された層)とし、内面側の層を合成石英ガラス層(合成シリカ粉を溶融して形成された層)とすること(特許文献2)や、外層を天然石英粉層、中間層を天然石英粉層または高純度合成石英粉層、内層を高純度合成石英粉層の三層構造とすること(特許文献3、特許文献4)などの複数層とするものが提案されている。
例えば、天然石英ガラス層の中に透明層と気泡層が存在し、また、透明層の中に合成石英ガラス層と天然石英ガラス層が存在する。
すなわち、シリコン単結晶引き上げ用の石英ガラスルツボは、前記したとおり、例えば、回転アーク溶融法により製造されるが、通常は、アーク溶融後、ルツボ上部(直胴部の上部)より冷却が進行するため、ルツボ上部では、仮想温度が高く、すなわち、密度が高く、ルツボ直胴部から底部にかけて、仮想温度が徐々に低くなる結果、底部に近づくほど低密度となる。そのため、従来は、例えば、特許文献5や特許文献6にも記載されているように、石英ガラスルツボを黒鉛或いはカーボン製のサセプタにより接触支持し、サセプタを回転しながら、石英ガラスルツボの直胴部に遠心力を働かせることにより内方への倒れ込みを防止していた。
また、前記したとおり、石英ガラスルツボは、通常、天然石英ガラスと合成石英ガラスとの複数層により構成されるが、その境界部においては、それぞれのガラス層の仮想温度における密度が異なっているために、それぞれのガラス層が同じ仮想温度を有していてもその密度差の違いにより異常膨張が生じガラス層が剥離を起こすという問題も指摘されており、前記倒れ込みの発生に加え、異なるガラス層の剥離に対する対応も合わせて求められている。
「(1)直胴部と底部を有するシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボにおいて、
前記底部では石英ガラスの密度が高く、前記直胴部の下部から上部に向けて順次前記密度が低いことを特徴とするシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボ。
(2)前記直胴部と前記底部が、天然石英ガラス層または合成石英ガラス層からなることを特徴とする前記(1)に記載されたシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボ。
(3)前記直胴部と前記底部が、外層として天然石英ガラス層を有し、内層として合成石英ガラス層を有することを特徴とする、前記(1)に記載されたシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボ。
(4)前記直胴部と前記底部が、外層として天然石英ガラス層、中間層として天然石英ガラス層または合成石英ガラス層、内層として合成石英ガラス層を有することを特徴とする、前記(1)または(3)に記載されたシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボ。
(5)直胴部と底部を有するシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボにおいて、
前記直胴部と前記底部が、外層として天然石英ガラスを有し、内層として合成石英ガラス層を有し、前記外層と前記内層が接する境界部において、それぞれの層の石英ガラスの密度差が0.0014g/cm3以下であることを特徴とするシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボ。
(6)直胴部と底部を有するシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボにおいて、
前記直胴部と前記底部が、外層として天然石英ガラス層を有し、中間層として天然石英ガラス層または合成石英ガラス層を有し、内層として合成石英ガラス層を有し、異なる種類の石英ガラス層が接する境界部において、前記境界部における石英ガラスの密度差が0.0014g/cm3以下であることを特徴とするシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボ。
(7)前記底部では石英ガラスの密度が高く、前記直胴部の下部から上部に向けて順次前記密度が低いことを特徴とする前記(5)または(6)に記載されたシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボ。
(8)シリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの製造方法であって、
回転する石英ガラスルツボ成形用型内に原料石英粉を供給し、該原料石英粉を所定厚さに堆積させ、次いで、前記石英ガラスルツボ成形用型の内側より堆積された前記原料石英粉をアーク溶融させた後、前記石英ガラスルツボ成形用型の底部より急冷を開始し、以降順次、直胴部の上部に至るまで冷却を行い、前記底部では仮想温度が高く、前記底部より前記直胴部の上部に向けて、順次前記仮想温度が低くなるように前記仮想温度の温度勾配を設けることにより、前記底部においては石英ガラスの密度が高く、前記直胴部の下部から上部に向けて順次前記密度を低くしたことを特徴とする、シリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの製造方法。
(9)前記底部より急冷を開始し、以降順次、前記直胴部の上部に至るまでの冷却は、アーク溶融処理後、窒素ガスを冷却した冷却ガスを上下方向に移動可動な冷却管を前記石英ガラスルツボ成形用型の内部に導入し、前記底部より前記直胴部の上部に至るまで前記冷却管を順次移動させることにより行うことを特徴とする前記(8)に記載されたシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの製造方法。
(10)前記底部より急冷を開始し、以降順次、前記直胴部の上部に至るまでの冷却は、前記石英ガラスルツボ成形用型に前記石英ガラスルツボ成形用型を外側から冷却するための冷却孔を多数設け、前記底部では強冷却とし、前記直胴部の上部に向けて順次緩冷却とする、または、前記アーク溶融の終了後の冷却が、前記底部では直ちに開始され、以降、前記直胴部の上部に向かって、一定時間保温後、順次冷却を開始することにより行うことを特徴とする前記(8)または(9)に記載されたシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの製造方法。
(11)シリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの製造方法であって、
回転する石英ガラスルツボ成形用型内に外層および内層の順に、または、外層、中間層および内層の順に、これらの層に応じた種類の異なる原料石英粉を供給して、それぞれ所定厚さに堆積させ、次いで、前記石英ガラスルツボ成形用型の内側より堆積された前記原料石英粉をアーク溶融させた後、前記各層が接する境界部において、前記各層の石英ガラスの密度差を小さくするために、天然石英ガラスを有する層については、仮想温度を下げることにより前記境界部における石英ガラスの密度を低く調整し、他方、合成石英ガラスを有する層については、仮想温度を上げることにより前記境界部における前記密度を高く調整し、前記境界部における二つの層の前記密度差を0.0014g/cm3以下としたことを特徴とする、シリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの製造方法。
(12)シリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの製造方法であって、
回転する石英ガラスルツボ成形用型内に外層および内層の順に、または、外層、中間層および内層の順に、これらの層に応じた種類の異なる原料石英粉を供給して、それぞれ所定厚さに堆積させ、次いで、前記石英ガラスルツボ成形用型の内側より堆積された前記原料石英粉をアーク溶融させた後、前記石英ガラスルツボ成形用型の底部より急冷を開始し、以降順次、直胴部の上部に至るまで冷却を行い、前記底部では仮想温度が高く、前記底部より前記直胴部の上部に向けて、順次前記仮想温度が低くなるよう前記仮想温度の温度勾配を設けるよう冷却を行うことにより、前記底部においては石英ガラスの密度が高く、前記直胴部の下部から上部に向けて順次前記密度を低くするアーク熱処理を行うとともに、該アーク熱処理に合わせて、同時に、前記各層が接する境界部においては、前記各層の石英ガラスの密度差を小さくするために、天然石英ガラスを有する層については、前記仮想温度を下げることにより前記境界部における前記密度を低く調整し、他方、合成石英ガラスを有する層については、前記仮想温度を上げることにより前記境界部における前記密度を高く調整し、前記境界部における二つの層の前記密度差を0.0014g/cm3以下としたことを特徴とする、シリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの製造方法。」
である。
さらに、天然石英ガラスおよび合成石英ガラスという異なる種類の石英ガラス層を複数有する石英ガラスルツボにおいては、それぞれの異なる種類の石英ガラスの仮想温度を調整し、それらの層の境界部における密度差を小さくすることにより、境界部における剥離を防止することができる。
なお、シリコン単結晶の製造時には、前記石英ガラスルツボをサセプタに収容することにより、製造の一層の安定化、および、効率化が図られるため、高品質のシリコン単結晶を安定して得ることができる。
通常、シリコン単結晶引き上げ用の石英ガラスルツボは、回転アーク溶融法を用い、製造されるが、ルツボ上部より天然シリカガラス、合成シリカガラスが投入され、上部よりアーク溶融され、自然冷却される結果、得られた天然シリカガラス層および合成シリカガラス層においては、ルツボ上部や直胴部での仮想温度が、ルツボ底部よりも高くなり、上部および直胴部にて高密度、底部において低密度のルツボが製造される。
例えば、回転アーク溶融法による石英ガラスルツボの製造方法において、モールドの内側からアーク放電を行って石英粉の内表面全体を加熱・溶融した後、冷却する際に、ルツボの底部を急冷し、直胴部の上部にかけて冷却速度を遅くする制御を行うことで、直胴部の上部に対して底部を高密度とする石英ガラスルツボを得ることができる。
図2では、ルツボ底部から直胴部の上部まで冷却可能な回動機構を有する冷却ノズルを備えた冷却管を遠隔操作されたロボット等によりアーク溶融直後にルツボ内部へ挿入し、ルツボ内部の各位置における冷却速度を制御しながら冷却を行う。ここで、ルツボ底部および直胴部を冷却するための冷却管または冷却ノズルの回動機構は、冷却ノズルを水平軸に対して底部側および直胴部側に回動する機構とし、また、冷却管をその管軸を中心に回転する機構とすることにより、遠隔操作等を用い、ルツボの底部を急冷し、直胴部の上部にかけて冷却速度を遅くする冷却制御を行うことにより、直胴部に対して底部において高密度の石英ガラスルツボを得ることができる。
加えて、モールドの必要箇所に冷却孔を設け、冷却ガスの吹き付け量を調整することにより、ルツボの外側からもより細かな冷却制御を行うことができ、モールド(成形用型)下部に設けられた冷却孔からの冷却により、底部において高密度の石英ガラスルツボを得ることができる。
図3では、ルツボの直胴部、および、底部の内面に沿った形状を有し、冷却制御をすべき複数位置にそれぞれ流量可変ノズルを有する冷却管を、アーク溶融直後のルツボ内部に挿入配置し、ルツボの各位置において、流量可変ノズルからの冷却ガスの流量を個々に調節し、冷却速度を制御しながら冷却することにより、直胴部に対して底部において高密度である石英ガラスルツボを得ることができる。
従来の回転アーク溶融法の石英粉溶融温度は1700℃以上であり、それによって製造された通常の石英ガラスルツボのガラスの仮想温度は1000℃~1500℃程度の範囲となるため、最高温度が1000℃~1500℃程度のアニール処理によって仮想温度を制御することができる。
すなわち、前記電気炉においては、石英ガラスルツボは、その底部のうちの最下部のみが支持されるよう載置台に配置され、ルツボ上部および側面部に配置されたヒーターにより所定温度にて加熱された後、ルツボの内面冷却用の先端ノズルを有する冷却ガス吹き付け冷却管、および、ルツボの外面冷却用の先端ノズルを有する冷却ガス吹き付け冷却管を同期させ、ルツボの底部から順次直胴部の上部へと冷却ガスを吹き付けながら、移動させることにより、ルツボ底部での密度が高く、ルツボ直胴部での密度が相対的に低い石英ガラスルツボを得ることができる。
すなわち、電気炉において、石英ガラスルツボは、その底部のうちの最下部のみが支持されるよう載置台に配置され、ルツボ上部および側面部に配置されたヒーターにより所定温度にて加熱された後、ルツボの内面冷却用の先端ノズルを有する冷却ガス吹き付け冷却管、および、ルツボの外面冷却用の先端ノズルを有する冷却ガス吹き付け冷却管を同期させ、ルツボの底部から順次直胴部の上部へと冷却ガスを吹き付けることにより、ルツボ底部での密度が高く、ルツボ直胴部での密度が相対的に低い石英ガラスルツボを得ることができる。
単結晶引き上げ用の石英ガラスルツボは、通常、天然石英ガラスと合成石英ガラスとの複数層により構成されるが、その境界部においては、それぞれのガラス層の仮想温度が同じであっても、それぞれのガラスにおいて仮想温度に対応する密度が異なっているために、その密度差の違いにより異常膨張が生じガラス層が剥離を起こすという問題を有している。
ここでは、それぞれのガラス層における仮想温度を調整することにより、それぞれのガラス層間の密度差を最小として剥離等の課題を解決する手法について説明する。
天然石英ガラスおよび合成石英ガラスについて、それらの仮想温度と密度の関係についてみると、石英ガラスの溶融温度以下であって調整可能な仮想温度範囲である1000℃から1400℃~1500℃までの温度範囲では、それぞれの石英ガラスは、仮想温度の上昇に対応し密度が上昇するものの、同じ仮想温度についてみたときの密度は、常に、天然石英ガラスが高く、合成石英ガラスが低いことから、合成石英ガラスの仮想温度を高くし、天然石英ガラスの仮想温度を低くすることにより、これらの密度差を小さくできることを見出したものである。
そして、天然石英ガラスと合成石英ガラスの密度を揃えるためには、例えば、合成石英ガラスの仮想温度を1450℃、天然石英ガラスの仮想温度を1200℃とすることにより、いずれの石英ガラスにおいても、密度値は約2.2030g/cm3であり、密度差をほぼ0とすることができ、耐剥離性に優れた石英ガラスルツボを得ることができることを知見した。
さらに、多層の石英ガラス層からなる石英ガラスルツボにおいて、前記したアニール処理を組み合わせることにより、上部に対して底部の密度を高め、層間の密度差を最小とした、耐剥離性に優れ、内倒れや変形を生じない石英ガラスルツボを製造することができる。
第1の実施形態である石英ガラスルツボは、円筒状の直胴部および底部を有し、天然石英ガラス層もしくは合成石英ガラス層の単一層から成り、ルツボの直胴部の内倒れなどの問題を解決することができる、シリコン単結晶の引き上げ用の石英ガラスルツボであり、必要に応じて、カーボン製のサセプタにより支持されて用いるものである。(以下、第2~第4の実施形態である石英ガラスルツボについても、必要に応じて、カーボン製のサセプタにより支持されて用いる点は同様である。)
石英ガラスルツボの冷却方法に関して、ルツボ底部より急冷を開始し、ルツボ底部より直胴部の上部に至るまで順次冷却する方法は、例えば、アーク切断後、窒素ガスを冷却した冷却ガスを上下方向に移動可動な冷却管により石英ガラスルツボの内部に導入し、ルツボ内部のルツボ底部より直胴部の上部に至るまで冷却管を順次移動させることにより達成でき、底部から直胴部の上部に至るまで望ましい仮想温度の勾配を得ることができる。
図2あるいは図3に示す回転アーク溶融法によるルツボの製造装置にて製造することができる。
なお、仮想温度については、同一の条件にて製造された石英ルツボについて、例えば、各層の厚み方向中間部位置から試片を採取し、レーザラーマン分光法を用いて測定することにより、確認することができる(特許文献7、特許文献8、非特許文献1を参照)。
第2の実施形態である石英ガラスルツボは、第1の実施形態である石英ガラスルツボと同様、ルツボの直胴部の内倒れなどの問題を解決することができる、シリコン単結晶の引き上げ用の石英ガラスルツボであり、円筒状の直胴部および底部を有し、二層構造もしくは三層構造を含む複数層からなる石英ガラスルツボである。
そして、この石英ガラスルツボは、具体的には、例えば、天然石英ガラスを原料とする天然石英ガラス層を外層とし、合成石英ガラスを原料とする合成石英ガラス層を内層として有する石英ガラスルツボや、天然石英ガラス層を外層とし、中間層として天然石英ガラス層または合成石英ガラス層を中間層とし、合成石英ガラス層を内層として有する多層からなる石英ガラスルツボを含むものである。
第2の実施形態も第1の実施形態と同様に、図2あるいは図3に示す、回転アーク溶融法によるルツボの製造装置を使用して製造することができる。
この場合、図4あるいは図5に示すような電気炉を用いてアニール処理を行うことにより製造することができる。
なお、仮想温度の測定位置および確認方法については、第1の実施形態と同様である。
第3の実施形態である石英ガラスルツボは、円筒状の直胴部および底部を有し、二層構
造もしくは三層構造を含む複数層からなる石英ガラスルツボにおいて、材質の異なる石英ガラスからなる層間の境界部における各層の密度の違いにより生じる剥離の問題を回避することができる、シリコン単結晶の引き上げ用の石英ガラスルツボである。
具体的には、例えば、天然石英ガラスを原料とする天然石英ガラス層を外層とし、該外層に接して、合成石英ガラスを原料とする合成石英ガラス層を中間層あるいは内層として有する石英ガラスルツボや、天然石英ガラス層を中間層とし、該中間層に接して合成石英ガラス層を第2の中間層、或いは、内層として有する多層構造の石英ガラスルツボを含むものである。
また、外層側に合成石英ガラス層を設け、内層側に天然石英ガラス層を設けるような場合には、内側層を緩冷却し、外側層を急冷することにより、境界部における密度差を小さくし、境界部における剥離を防止することができる。
この場合、第2の実施形態と同様に図4あるいは図5に示す電気炉を用いて製造することができる。
また、石英ガラスルツボの各層の密度はアルキメデス法などにより、直接測定することもできる。直接測定することにより正確な密度の違いを測定することもできる。その場合、各層から切り出したサンプルをアルキメデス法により密度を測定した結果を石英ガラスルツボの製造条件にフィードバックすることで、各層にて所望の密度のガラスからなる石英ガラスルツボを製造することが得られる。また気泡がサンプル中に存在するとガラスそのものの密度が測定できないため、気泡が存在しない箇所からサンプルを抽出する必要がある。
第4の実施形態である石英ガラスルツボは、第2の実施形態において解決課題とされた
石英ガラスルツボの直胴部において発生する内倒れなどの変形の問題と第3の実施形態において解決課題とされた材質の異なる石英ガラスからなる複数層からなる石英ガラスルツボにおいて発生する層間の剥離の問題を同時に解決することができる、シリコン単結晶の引き上げ用の石英ガラスルツボである。
具体的には、第2の実施形態および第3の実施形態において示した、例えば、天然石英ガラスを原料とする天然石英ガラス層を外層とし、該外層に接して、合成石英ガラスを原料とする合成石英ガラス層を中間層あるいは内層として有する石英ガラスルツボや、天然石英ガラス層を中間層とし、該中間層に接して合成石英ガラス層を第2の中間層、或いは、内層として有する多層構造の石英ガラスルツボを含むものである。
また、外層側に合成石英ガラス層を設け、それに隣接して内層側に天然石英ガラス層を設けるような場合には、内側層に対し外側層の冷却能を高めることにより、二つの層の境界部における密度差を小さくし、境界部における剥離の発生や割れなどの欠陥の発生を防止することができる。
第2の実施形態同様に図4あるいは図5に示す電気炉を用いて製造することができる。
また、石英ガラスルツボの各層の密度はアルキメデス法などにより、直接測定することもできる。直接測定することにより正確な密度の違いを測定することもできる。その場合、各層から切り出したサンプルをアルキメデス法により密度を測定した結果を石英ガラスルツボの製造条件にフィードバックすることで、各層にて所望の密度のガラスからなる石英ガラスルツボを製造することが得られる。また気泡がサンプル中に存在するとガラスそのものの密度が測定できないため、気泡が存在しない箇所からサンプルを抽出する必要がある。
なお、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
表1に実施例1~6を、表2に比較例1~3を、表3に実施例11~15を、表4に比較例11~13を示す。
そして、実施例1および実施例3では、回転アーク溶融法を用いた石英ガラスルツボの製造時に、石英ガラス層の仮想温度を調整し、直胴部の上部の密度が低く、底部の密度が高い石英ガラスルツボを直接製造するものである。
石英ガラス層の仮想温度の調整は図2に示した回転アーク溶融法による製造装置を用いて行った。アーク溶融直後にルツボ内側に冷却管を挿入し、10L/秒の速度で冷却ガス(空気)を内側に吹きつけながら底部から上部に向かって移動させた。
石英ガラス層の仮想温度の調整は図4に示したアニール処理装置を用いて行った。アニール処理の冷却時にルツボ内側に冷却管を挿入し、10L/秒の速度で冷却ガス(空気)を内側に吹きつけながら底部から上部に向かって移動させた。
そして、これらの製造方法によって得られた石英ガラスルツボは、表1に示されるように、単結晶の引き上げ時に内倒れや熱変形を発生せず、製造された単結晶の品質も良好であった。
これに対して、従来の回転アーク溶融法により得られた比較例1、2の石英ガラスルツボでは、製造時に仮想温度の調整を行っていない(冷却管を挿入していない)ため、単結晶の引き上げ時に内倒れの発生がみられた。
そして、実施例5は、複数の石英ガラス層からなる石英ガラスルツボを製造する際に、実施例1および実施例3と同様、回転アーク溶融法を用いた石英ガラスルツボの製造時に、石英ガラス層の仮想温度を調整し、直胴部の上部の密度が低く、底部の密度が高い石英ガラスルツボを直接製造するものである。
石英ガラス層の仮想温度の調整は図3に示した回転アーク溶融法による製造装置を用いて行った。アーク溶融直後にルツボ内側に冷却管を挿入し、10L/秒の速度で冷却ガス(空気)を内側に吹きつけながら底部から直胴部の上部に向かって移動させると同時に、モールドから石英ガラス底部には0.1L/秒の速度、コーナー部には1L/秒の速度、直胴部には10L/秒の速度で冷却ガス(空気)を内側に吹きつけながら冷却を行った。
石英ガラス層の仮想温度の調整は図5に示したアニール処理装置を用いて行った。アニール処理の冷却時にルツボ内側に冷却管を挿入し、10L/秒の速度で冷却ガス(空気)をルツボ内側に吹きつけながら底部から直胴部の上部に向かって移動させると同時に、ルツボ外側の冷却管から5L/秒の速度で冷却ガス(空気)をルツボ外側に吹きつけながら底部から直胴部の上部に向かって移動させながら冷却を行った。
そして、これらの製造方法によって得られた石英ガラスルツボは、表1に示されるように、単結晶の引き上げ時に内倒れや熱変形を発生せず、製造された単結晶の品質も良好であった。
これに対して、従来の回転アーク溶融法により得られた複数の石英ガラス層からなる比較例3の石英ガラスルツボでは、製造時に仮想温度の調整を行っていない(冷却管を挿入していない)ため、ルツボの底部に対するルツボ上部の密度が高くなっており、単結晶の引き上げ時に内倒れの発生がみられた。
そして、実施例11は、複数の異なる特性の石英ガラス層からなる石英ガラスルツボを製造する際に、回転アーク溶融法を用いた石英ガラスルツボの製造時に、複数層の境界部における密度差が小さくなるよう各石英ガラス層の仮想温度を調整し、その密度差を0.0014g/cm3以下とすることで、直接製造するものである。
そして、このような方法で製造された石英ガラスルツボにおいては、表3において示されるように、異なる特性を有する石英ガラス層間の境界部において剥離や割れなどの欠陥の発生を回避することができた。
これに対して、従来の回転アーク溶融法により得られた比較例11~13の石英ガラスルツボでは、製造時に仮想温度の調整を行っていない(冷却管を挿入していない)ため、異なる特性を有する石英ガラス層間の境界部において、0.0014g/cm3を超える密度差が生じ、これら層間の境界部においては、剥離の発生が見られた。
そして、実施例12および14では、複数の異なる特性の石英ガラス層からなる石英ガラスルツボを製造する際に、回転アーク溶融法を用いた石英ガラスルツボの製造時に、それぞれの石英ガラス層において、その仮想温度を調整し、直胴部の上部の密度を低く、底部の密度を高くするとともに、同時に、これらの石英ガラス層の境界部において、それぞれの石英ガラス層の密度差が小さくなるように調整を行うことにより、直胴部のルツボ内側への倒れ込みや熱変形の発生を抑制し、合わせて、これらの石英ガラス層の境界部における剥離の発生や割れなどの欠陥の発生を回避するものである。
石英ガラス層の仮想温度の調整は図2に示した回転アーク溶融法による製造装置を用いて行った。アーク溶融直後にルツボ内側に冷却管を挿入し、10L/秒の速度で冷却ガス(空気)を内側に吹きつけながら底部から上部に向かって移動させると同時に、モールドから石英ガラス底部には0.2L/秒の速度、コーナー部には1L/秒の速度、直胴部には5L/秒の速度で冷却ガス(空気)を内側に吹きつけながら冷却を行った。
石英ガラス層の仮想温度の調整は図4に示したアニール処理装置を用いて行った。アニール処理の冷却時にルツボ内側に冷却管を挿入し、10L/秒の速度で冷却ガス(空気)をルツボ内側に吹きつけながら底部から直胴部の上部に向かって移動させると同時に、ルツボ外側の冷却管から5L/秒の速度で冷却ガス(空気)をルツボ外側に吹きつけながら底部から直胴部の上部に向かって移動させながら冷却を行った。
これに対して、従来の回転アーク溶融法により得られた比較例11~13の石英ガラスルツボでは、製造時に仮想温度の調整を行っていない(冷却管を挿入していない)ため、内倒れが発生するとともに、異なる特性を有する石英ガラス層間の境界部においては、0.0014g/cm3を超える密度差が生じ、剥離の発生が見られた。
2 アーク電極
3 冷却管
4 調整弁
5 モールド回転機構
6 モールド冷却孔
7 ノズル回動機構
8 ルツボ
9 電気炉
10 ヒーター
11 台
Claims (12)
- 直胴部と底部を有するシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボにおいて、
前記底部では石英ガラスの密度が高く、前記直胴部の下部から上部に向けて順次前記密度が低いことを特徴とするシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボ。 - 前記直胴部と前記底部が、天然石英ガラス層または合成石英ガラス層からなることを特徴とする、請求項1に記載されたシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボ。
- 前記直胴部と前記底部が、外層として天然石英ガラス層を有し、内層として合成石英ガラス層を有することを特徴とする、請求項1に記載されたシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボ。
- 前記直胴部と前記底部が、外層として天然石英ガラス層、中間層として天然石英ガラス層または合成石英ガラス層、内層として合成石英ガラス層を有することを特徴とする、請求項1または請求項3に記載されたシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボ。
- 直胴部と底部を有するシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボにおいて、
前記直胴部と前記底部が、外層として天然石英ガラスを有し、内層として合成石英ガラス層を有し、前記外層と前記内層が接する境界部において、それぞれの層の石英ガラスの密度差が0.0014g/cm3以下であることを特徴とするシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボ。 - 直胴部と底部を有するシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボにおいて、
前記直胴部と前記底部が、外層として天然石英ガラス層を有し、中間層として天然石英ガラス層または合成石英ガラス層を有し、内層として合成石英ガラス層を有し、異なる種類の石英ガラス層が接する境界部において、前記境界部における石英ガラスの密度差が0.0014g/cm3以下であることを特徴とするシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボ。 - 前記底部では石英ガラスの密度が高く、前記直胴部の下部から上部に向けて順次前記密度が低いことを特徴とする、請求項5または6に記載されたシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボ。
- シリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの製造方法であって、
回転する石英ガラスルツボ成形用型内に原料石英粉を供給し、該原料石英粉を所定厚さに堆積させ、次いで、前記石英ガラスルツボ成形用型の内側より堆積された前記原料石英粉をアーク溶融させた後、前記石英ガラスルツボ成形用型の底部より急冷を開始し、以降順次、直胴部の上部に至るまで冷却を行い、前記底部では仮想温度が高く、前記底部より前記直胴部の上部に向けて、順次前記仮想温度が低くなるように前記仮想温度の温度勾配を設けることにより、前記底部においては石英ガラスの密度が高く、前記直胴部の下部から上部に向けて順次前記密度を低くしたことを特徴とする、シリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの製造方法。 - 前記底部より急冷を開始し、以降順次、前記直胴部の上部に至るまでの冷却は、アーク溶融処理後、窒素ガスを冷却した冷却ガスを上下方向に移動可動な冷却管を前記石英ガラスルツボ成形用型の内部に導入し、前記底部より前記直胴部の上部に至るまで前記冷却管を順次移動させることにより行うことを特徴とする、請求項8に記載されたシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの製造方法。
- 前記底部より急冷を開始し、以降順次、前記直胴部の上部に至るまでの冷却は、前記石英ガラスルツボ成形用型に前記石英ガラスルツボ成形用型を外側から冷却するための冷却孔を多数設け、前記底部では強冷却とし、前記直胴部の上部に向けて順次緩冷却とする、または、前記アーク溶融の終了後の冷却が、前記底部では直ちに開始され、以降、前記直胴部の上部に向かって、一定時間保温後、順次冷却を開始することにより行うことを特徴とする、請求項8または9に記載されたシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの製造方法。
- シリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの製造方法であって、
回転する石英ガラスルツボ成形用型内に外層および内層の順に、または、外層、中間層および内層の順に、これらの層に応じた種類の異なる原料石英粉を供給して、それぞれ所定厚さに堆積させ、次いで、前記石英ガラスルツボ成形用型の内側より堆積された前記原料石英粉をアーク溶融させた後、前記各層が接する境界部において、前記各層の石英ガラスの密度差を小さくするために、天然石英ガラスを有する層については、仮想温度を下げることにより前記境界部における石英ガラスの密度を低く調整し、他方、合成石英ガラスを有する層については、仮想温度を上げることにより前記境界部における前記密度を高く調整し、前記境界部における二つの層の前記密度差を0.0014g/cm3以下としたことを特徴とする、シリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの製造方法。 - シリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの製造方法であって、
回転する石英ガラスルツボ成形用型内に外層および内層の順に、または、外層、中間層および内層の順に、これらの層に応じた種類の異なる原料石英粉を供給して、それぞれ所定厚さに堆積させ、次いで、前記石英ガラスルツボ成形用型の内側より堆積された前記原料石英粉をアーク溶融させた後、前記石英ガラスルツボ成形用型の底部より急冷を開始し、以降順次、直胴部の上部に至るまで冷却を行い、前記底部では仮想温度が高く、前記底部より前記直胴部の上部に向けて、順次前記仮想温度が低くなるよう前記仮想温度の温度勾配を設けるよう冷却を行うことにより、前記底部においては石英ガラスの密度が高く、前記直胴部の下部から上部に向けて順次前記密度を低くするアーク熱処理を行うとともに、該アーク熱処理に合わせて、同時に、前記各層が接する境界部においては、前記各層の石英ガラスの密度差を小さくするために、天然石英ガラスを有する層については、前記仮想温度を下げることにより前記境界部における前記密度を低く調整し、他方、合成石英ガラスを有する層については、前記仮想温度を上げることにより前記境界部における前記密度を高く調整し、前記境界部における二つの層の前記密度差を0.0014g/cm3以下としたことを特徴とする、シリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの製造方法。
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