JP2022103702A - 石英ガラスルツボ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、チョクラルスキー法(以下、「CZ法」という)によって単結晶を引上げるためのシリコン単結晶引上げ用石英ガラスルツボに関する。
シリコン単結晶の育成に関し、CZ法が広く用いられている。この方法は、石英ガラスルツボ内に収容されたシリコン溶融液の表面に種結晶を接触させ、ルツボを回転させるとともに、この種結晶を反対方向に回転させながら上方へ引上げることによって、種結晶の下端に単結晶を形成していくものである。
ところで、半導体デバイス用の高品質なシリコン単結晶を低コストで製造するためには、一回の引き上げ工程での単結晶収率を高めることが必要であり、そのためには長時間の操業中に変形することのない形状が安定したルツボが必要となる。
ルツボの変形では、ルツボの直胴部がシリコン融液側に倒れ込む、いわゆる内倒れが特に問題となる。シリコン融液の液面近くのインゴットの周囲には、いわゆるホットゾーンと呼ばれる熱遮蔽板が設けられているが、ルツボの直胴部が内倒れした場合、この内倒れした部分が熱遮蔽板に接触してしまうおそれがある。単結晶引き上げ中においてルツボは回転しているので、ルツボの直胴部は回転しながら熱遮蔽板に接触することになり、ルツボのさらなる変形、熱遮蔽板の破損、ルツボ片がシリコン融液に混入することによる製造歩留まりの低下等の不具合が発生する。
高温下でのルツボの変形を防止するため、特許文献1には、ルツボの外表面側に設けられた気泡を内包する不透明層と、ルツボの内表面側に設けられた気泡が除去された透明層とを備え、少なくとも前記直胴部における前記不透明層は、前記外表面から前記内表面に向かって気泡の平均直径が徐々に小さくなる気泡分布を有する石英ガラスルツボが開示されている。
特許文献1に開示された石英ガラスルツボによれば、不透明層内の気泡のサイズが外側から内側に向かって徐々に小さくなることから、靭性が向上し、高温下での内倒れ等の変形を抑制することができる。
特許文献1に開示された石英ガラスルツボの製造方法にあっては、金型の表面に第1の平均粒径を有する第1の天然石英粉(平均粒径は200~400μm)を堆積させる工程と、第1の平均粒径よりも小さい平均粒径を有する第2の天然石英粉(平均粒径は100~200μm)を堆積させる工程と、第2の平均粒径よりも小さい第3の平均粒径を有する第3の天然石英粉(平均粒径は50~150μm)を堆積させる工程とを備えている。
しかしながら、金型中に堆積した石英粉を溶融する際には、金型を高速回転させるため、ルツボ内側に堆積させた小さい石英粉が遠心力により外側に移動し、理想的な気泡の大きさの変化を形成することが困難であるという課題があった。
また、石英粉の粒度で気泡の大きさを制御しているため、気泡の大きさが粒のばらつきに影響され、ルツボによって同じ品質を保つことができないという課題があった。
また、石英粉の粒度で気泡の大きさを制御しているため、気泡の大きさが粒のばらつきに影響され、ルツボによって同じ品質を保つことができないという課題があった。
本発明は、前記事情の下になされたものであり、石英ガラスルツボの高温加熱の際にルツボの内側への倒れ込み変形、及び外側への沈み込み変形を防止することができ、外層に内在する気泡の大きさについて安定した品質を有する石英ガラスルツボ及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するためになされた本発明に係る石英ガラスルツボは、チョクラルスキー法によって単結晶を引上げるための石英ガラスルツボにおいて、透明内層と、前記透明内層よりも外側に配置され、気泡を含むことにより不透明に形成された外層とを備え、前記外層は、第一外層と、前記第一外層よりも内側に配置された第二外層とを有し、前記第一外層に内在する気泡の平均径は、前記第二外層に内在する気泡の径より小さく、且つ、前記第一外層の嵩密度は前記第二外層の嵩密度より大きいことに特徴を有する。
尚、前記外層において、前記第二外層の厚さは、前記第一外層の厚さと同じ、もしくは、より大きいことが望ましい。
また、前記外層において、前記第一外層に内在する気泡の平均径は、16~56μmであり、前記第二外層に内在する気泡の平均径は、21~100μmであることが望ましい。
また、前記外層において、前記第一外層の嵩密度は、1.96g/cm3以上2.08g/cm3以下であり、前記第二外層の嵩密度は、1.74g/cm3以上1.88g/cm3以下であることが望ましい。
尚、前記外層において、前記第二外層の厚さは、前記第一外層の厚さと同じ、もしくは、より大きいことが望ましい。
また、前記外層において、前記第一外層に内在する気泡の平均径は、16~56μmであり、前記第二外層に内在する気泡の平均径は、21~100μmであることが望ましい。
また、前記外層において、前記第一外層の嵩密度は、1.96g/cm3以上2.08g/cm3以下であり、前記第二外層の嵩密度は、1.74g/cm3以上1.88g/cm3以下であることが望ましい。
このような構成によれば、第二外層にあっては、高温時での気泡膨張により肉厚膨張率が高くなりカーボンサセプタへの密着性が向上するため、ルツボが倒れ込み難くなる。また、第一外層にあっては、高温時において粘性が高くなるため、第二外層が膨張しても外側への沈み込み変形を防止することができる。
また、前記課題を解決するためになされた本発明に係る石英ガラスルツボの製造方法は、前記石英ガラスルツボの製造方法であって、ルツボ成形用型の内側部材を軸周りに回転させるとともに、前記内側部材の内側にガラス原料粉末を供給し、外層を形成するステップと、前記外層の内側にガラス原料粉末を供給し、内層を形成してルツボ成形体を形成するステップと、前記ルツボ成形体の内側から加熱溶融し、石英ガラスルツボを形成するステップとを備え、前記外層の加熱溶融の際、前記内側部材内の圧力を二段階に変化させ、内在する気泡の平均径が異なる第一外層と第二外層とを形成することに特徴を有する。
このような方法によれば、外層の形成において、同じ粒径の石英粉を使用して成形体を形成し、成形体を溶融する際の金型内圧力を変えて、内在する気泡径が異なる第一外層と第二外層とを形成する。そのため、気泡径の制御が容易であり、ルツボによって同じ品質を保つことができないという課題を解決することができる。
本発明によれば、石英ガラスルツボの高温加熱の際にルツボの内側への倒れ込み変形、及び外側への沈み込み変形を防止することができ、外層に内在する気泡の大きさについて安定した品質を有する石英ガラスルツボ及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明に係るシリコン単結晶引上げ用石英ガラスルツボの実施の形態について図面に基づき説明する。
図1は本発明に係る石英ガラスルツボ1の断面図である。図2は、図1の石英ガラスルツボの一部拡大断面図である。
この石英ガラスルツボ1は、例えば単結晶引上装置(図示せず)において用いられ、装置内でカーボンサセプタ(図示せず)によって抱持された状態で使用される。
即ち、単結晶引上装置では、石英ガラスルツボ1内に原料シリコンが溶融され、溶融液からシリコン単結晶が引上げられる。
図1は本発明に係る石英ガラスルツボ1の断面図である。図2は、図1の石英ガラスルツボの一部拡大断面図である。
この石英ガラスルツボ1は、例えば単結晶引上装置(図示せず)において用いられ、装置内でカーボンサセプタ(図示せず)によって抱持された状態で使用される。
即ち、単結晶引上装置では、石英ガラスルツボ1内に原料シリコンが溶融され、溶融液からシリコン単結晶が引上げられる。
石英ガラスルツボ1は、例えば直径(口径)810mmに形成され、所定の曲率(第一の曲率)を有するルツボ底部9と、前記ルツボ底部9の周りに形成され、所定の曲率(第二の曲率)を有する底部コーナー8と、前記底部コーナー8から上方に延びる直胴部7とを有する。
図1に示すように、ルツボ1において外側には、外層2が形成され、内側には内層4が形成されている。外層2は、天然原料石英ガラスからなる不透明層(気泡を含むことにより不透明となる層)であり、さらに外層2は、外側に形成された第一外層2Aと、第一外層2Aの内側に形成された第二外層2Bとで構成されている。また、前記第二外層2Bより内側には、シリコン単結晶引上げ時に溶融シリコンと接する高純度の合成原料石英ガラス(または天然原料石英ガラス)からなる透明内層4が形成されている。
図1に示すように、ルツボ1において外側には、外層2が形成され、内側には内層4が形成されている。外層2は、天然原料石英ガラスからなる不透明層(気泡を含むことにより不透明となる層)であり、さらに外層2は、外側に形成された第一外層2Aと、第一外層2Aの内側に形成された第二外層2Bとで構成されている。また、前記第二外層2Bより内側には、シリコン単結晶引上げ時に溶融シリコンと接する高純度の合成原料石英ガラス(または天然原料石英ガラス)からなる透明内層4が形成されている。
ここで不透明とは、石英ガラス中に多数の気泡(気孔)が内在し、見かけ上、白濁した状態を意味する。また、天然石英層とは水晶等の天然質原料を溶融して製造されるシリカガラス層を意味し、合成石英層とは、例えばシリコンアルコキシドの加水分解により合成された合成原料を溶融して製造されるシリカガラス層を意味する。
前記外層2において第二外層2Bの厚さは第一外層2Aの厚さと同じ、またはそれ以上の厚さに形成される。好ましくは、第一外層と第二外層の厚さの比率が5:5以上4:6以下に形成される。第一外層2Aと第二外層2Bとは、各層に内在する気泡の径が異なる。具体的には、前記第一外層2Aの平均気泡径は、16~56μmの範囲にあり、それにより第一外層2Aの嵩密度は例えば2.03g/cm3に形成されている。一方、第二外層2Bの平均気泡径は、21~100μmの範囲にあり、それにより第二外層2Bの嵩密度は例えば1.81g/cm3に形成されている。
即ち、外層2において最も外側にある第一外層2Aの気泡径がより小さく、内側にある第二外層2Bの気泡径がより大きく形成されている。また、第一外層2Aの嵩密度が第二外層2Bの嵩密度よりも小さく形成されている。
これにより第二外層2Bにあっては、高温時での気泡膨張により肉厚膨張率が高くなりカーボンサセプタへの密着性が向上するため、ルツボ1が内側に倒れ込み難くなる。また、第一外層2Aにあっては、高温時において粘性が高くなるため、第二外層2Bが厚さ方向に膨張しても外側への沈み込み変形を防止することができる。
これにより第二外層2Bにあっては、高温時での気泡膨張により肉厚膨張率が高くなりカーボンサセプタへの密着性が向上するため、ルツボ1が内側に倒れ込み難くなる。また、第一外層2Aにあっては、高温時において粘性が高くなるため、第二外層2Bが厚さ方向に膨張しても外側への沈み込み変形を防止することができる。
図2に示すように、外層2は、ルツボ直胴部7における厚さ寸法et1が例えば15.0mm以上17.0mm以下に形成される。これは、厚さが17.0mmより大きいと、結晶化層が厚すぎることにより、カーボンルツボとの密着性が得られ難いためであり、15.0mmより小さいと、耐久性向上の寄与が得られ難いためである。
また、外層2を構成する第一外層2Aの厚さet2は、第二外層2Bの厚さet3より薄く形成され、第二外層2Bの厚さet3に対する厚さの比率が、例えば4:6の厚さに形成される。
また、外層2を構成する第一外層2Aの厚さet2は、第二外層2Bの厚さet3より薄く形成され、第二外層2Bの厚さet3に対する厚さの比率が、例えば4:6の厚さに形成される。
また、直胴部7における外層2から連続して形成されたルツボ底部コーナー8の外層2における厚さ寸法ct1は6mm以上に形成され、ルツボ底部9の外層2における厚さ寸法bt1は6mm以上に形成される。これは、ルツボ底部コーナー8における外層5の厚さ寸法ct1及びルツボ底部9における外層5の厚さ寸法bt1が6mmより小さいと、充分な耐久性が得られ難いためである。
これらルツボ底部コーナー8、及びルツボ底部9においても外層2における第一外層2Aの厚さct2、bt2の第二外層2Bの厚さct3、bt3に対する比率は、同様に4:6~5:5の厚さに形成されている。
これらルツボ底部コーナー8、及びルツボ底部9においても外層2における第一外層2Aの厚さct2、bt2の第二外層2Bの厚さct3、bt3に対する比率は、同様に4:6~5:5の厚さに形成されている。
また、透明内層4は、Na、K、Alの金属不純物含有量が各々1ppm以下の合成原料石英ガラス(または天然原料石英ガラス)を溶融して形成された実質的に気泡の存在しない透明層である。
透明内層4において、ルツボ直胴部7における厚さ寸法it1と、ルツボ底部コーナー8における厚さ寸法it2と、ルツボ底部9における厚さ寸法it3とは共に、3mm以上の厚さに形成されている。
これは、透明内層4の厚さが3mmより小さいとシリコン溶融と接する透明内層4の内表面の結晶化促進剤濃度を十分に低く、例えば1ppm以下にすることができ難いためである。
透明内層4において、ルツボ直胴部7における厚さ寸法it1と、ルツボ底部コーナー8における厚さ寸法it2と、ルツボ底部9における厚さ寸法it3とは共に、3mm以上の厚さに形成されている。
これは、透明内層4の厚さが3mmより小さいとシリコン溶融と接する透明内層4の内表面の結晶化促進剤濃度を十分に低く、例えば1ppm以下にすることができ難いためである。
このような構造を有する石英ガラスルツボ1によれば、シリコン単結晶引上げの開始初期段階において、ルツボ底部コーナー8及びルツボ底部9の外層2が軟化し、ルツボ1を支持するカーボンサセプタと密着する。また、ルツボ全体にわたり、嵩密度の小さい(径の大きい気泡を有する)第二外層2Bの厚さが、より嵩密度の大きい(径の小さい気泡を有する)第一外層2A層よりも厚く形成されているため、外層2において高温に加熱された際の泡膨れが促進され、肉厚膨張率が向上してカーボンサセプタとの密着性が良好となり、倒れ込みが抑制される。また、第一外層2Aの粘性が高くなるため、第二外層2Bが肉厚に膨張しても外側への沈み込み変形の発生が抑制される。
その後、引上げの開始から完了までの間に亘り、高温加熱により外層2の結晶化(クリストバライト化)が進行することになる。
その後、引上げの開始から完了までの間に亘り、高温加熱により外層2の結晶化(クリストバライト化)が進行することになる。
次に、前記構造を有する石英ガラスルツボ1の製造方法について説明する。
図3に示すような石英ガラスルツボ製造装置10を用いて石英ガラスルツボ1を製造する。石英ガラスルツボ製造装置10のルツボ成形用型は、例えば複数の貫通孔が穿設された金型、もしくは高純化処理した多孔質カーボン型などのガス透過性部材で構成された内側部材12と、その外周に通気部13を設けて、前記内側部材12を保持する保持体14とから構成されている。
図3に示すような石英ガラスルツボ製造装置10を用いて石英ガラスルツボ1を製造する。石英ガラスルツボ製造装置10のルツボ成形用型は、例えば複数の貫通孔が穿設された金型、もしくは高純化処理した多孔質カーボン型などのガス透過性部材で構成された内側部材12と、その外周に通気部13を設けて、前記内側部材12を保持する保持体14とから構成されている。
また、保持体14の下部には、図示しない回転手段と連結されている回転軸15が固着されていて、ルツボ成形用型11を回転可能に支持している。通気部13は、保持体14の下部に設けられた開口部16を介して、回転軸15の中央に設けられた排気路17と連結されており、この排気路17は、減圧機構18と連結されている。
内側部材12に対向する上部にはアーク放電用のアーク電極19と、天然石英粉供給ノズル22と、高純度合成石英粉供給ノズル23が設けられている。
内側部材12に対向する上部にはアーク放電用のアーク電極19と、天然石英粉供給ノズル22と、高純度合成石英粉供給ノズル23が設けられている。
このように構成された石英ガラスルツボ製造装置10により石英ガラスルツボ1の製造を行う場合、図示しない回転駆動源を稼働させて回転軸18を矢印の方向に回転させ、これによりルツボ成形用型11を高速で回転させる。
次いで、ルツボ成形用型11内に天然石英粉供給ノズル22から天然石英粉を供給する。供給された天然石英粉は、遠心力によって内側部材12の内面側に押圧され、外層2の成形体として形成される(図4のステップS1)。
次いで、ルツボ成形用型11内に天然石英粉供給ノズル22から天然石英粉を供給する。供給された天然石英粉は、遠心力によって内側部材12の内面側に押圧され、外層2の成形体として形成される(図4のステップS1)。
次に、外層2の内面側(第二外層2Bの内面側)に3mm以上の厚さを有する透明層が形成されるように、Na、K、Alの金属不純物含有量が各々1ppm以下の高純度合成石英粉を高純度合成石英粉供給ノズル23から供給する。
供給された高純度合成石英粉は、遠心力によって不透明中間層3及び不透明外層5の内面側に押圧されて、透明内層4の成形体として成形される(図4のステップS2)。
供給された高純度合成石英粉は、遠心力によって不透明中間層3及び不透明外層5の内面側に押圧されて、透明内層4の成形体として成形される(図4のステップS2)。
このようにして外層2と透明内層4とを有するルツボ成形体が得られる。
さらに、減圧機構18の作動により内側部材(金型)12内を減圧し、アーク電極19に通電してルツボ成形体の内側から加熱し、ルツボ成形体の透明内層4、外層2を順番に溶融する。
ここで、減圧機構18の減圧出力を調整し、溶融中における内側部材12内の圧力を調整する(変化させる)。
具体的には、透明内層4の溶融時には内側部材12内の圧力を例えば2.0~8.0kPaとして加熱溶融する(図4のステップS3)。
さらに、減圧機構18の作動により内側部材(金型)12内を減圧し、アーク電極19に通電してルツボ成形体の内側から加熱し、ルツボ成形体の透明内層4、外層2を順番に溶融する。
ここで、減圧機構18の減圧出力を調整し、溶融中における内側部材12内の圧力を調整する(変化させる)。
具体的には、透明内層4の溶融時には内側部材12内の圧力を例えば2.0~8.0kPaとして加熱溶融する(図4のステップS3)。
続く外層2の溶融において、最初に第二外層2Bを溶融して形成する。この第二外層2Bの溶融時において内側部材12内の圧力を例えば98kPa(大気圧近く)に設定する(図4のステップS4)。この状態で第二外層2Bとしての厚さが、後で形成する第一外層2Aより厚くなるように、例えば7.8~8.4mmとなるまで溶融する(図4のステップS5)。これにより内在する気泡の径が大きくなり、嵩密度が低く粘性が低い第二外層2Bが形成される。このような特性の第二外層2Bによれば、高温時での気泡膨張により肉厚膨張率が高くなりカーボンサセプタへの密着性が向上し、内側へ倒れ込み難くなる。
続いて、所望の厚さの第二外層2Bが形成されると、内側部材12内の圧力をより低い値、例えば85kPaに切り替え、例えば厚さ1mmの第一外層2Aの溶融を行う(図4のステップS6)。これにより内在する気泡の径が小さくなり、嵩密度が高く粘性が高い第一外層2Aが形成される。このような特性の第一外層2Aによれば、高温時において粘性が高く、ルツボ外側へ沈み込み難い効果が得られる。
このようにして、外層2において最も外側の第一外層2Aに内在する気泡の径が内側の第二外層2Bに内在する気泡の径より小さく、且つ前記第一外層2Aの嵩密度が前記第二外層2Bの嵩密度より小さい石英ガラスルツボ1を製造する。
以上のように本実施の形態によれば、外層2において最も外側にある第一外層2Aの気泡径がより小さく、内側にある第二外層2Bの気泡径がより大きく形成されている。また、第一外層2Aの嵩密度が第二外層2Bの嵩密度よりも小さく形成されている。
これにより第二外層2Bにあっては、高温時での気泡膨張により肉厚膨張率が高くなりカーボンサセプタへの密着性が向上するため、ルツボ1が内側に倒れ込み難くなる。また、第一外層2Aにあっては、高温時において粘性が高くなるため、第二外層2Bが厚さ方向に膨張しても外側への沈み込み変形を防止することができる。
また、本実施の形態によれば、外層2の形成において、同じ粒径の石英粉を使用して成形体を形成し、成形体を溶融する際の金型内圧力を変えて、内在する気泡径が異なる第一外層2Aと第二外層2Bとを形成する。そのため、気泡径の制御が容易であり、ルツボによって同じ品質を保つことができないという課題を解決することができる。
これにより第二外層2Bにあっては、高温時での気泡膨張により肉厚膨張率が高くなりカーボンサセプタへの密着性が向上するため、ルツボ1が内側に倒れ込み難くなる。また、第一外層2Aにあっては、高温時において粘性が高くなるため、第二外層2Bが厚さ方向に膨張しても外側への沈み込み変形を防止することができる。
また、本実施の形態によれば、外層2の形成において、同じ粒径の石英粉を使用して成形体を形成し、成形体を溶融する際の金型内圧力を変えて、内在する気泡径が異なる第一外層2Aと第二外層2Bとを形成する。そのため、気泡径の制御が容易であり、ルツボによって同じ品質を保つことができないという課題を解決することができる。
尚、前記実施の形態においては、ルツボ直胴部が3層構造のルツボを例に説明したが、本発明にあっては、それに限定されるものではなく、外層2が少なくとも2層有する構造であればよい。
続いて、本発明に係る石英ガラスルツボについて、実施例に基づきさらに説明する。
本実施例では、前記実施の形態に示した構成の石英ガラスルツボの製造を行い、熱処理を行うことにより、その効果を検証した。
本実施例では、前記実施の形態に示した構成の石英ガラスルツボの製造を行い、熱処理を行うことにより、その効果を検証した。
(実験1)
実施例1では、図3に示した石英ガラスルツボ製造装置を用い、図1に示した層構造の石英ガラスルツボを製造した。このとき、外層の成形体を溶融する際の内側部材(金型)内の圧力を2段階に設定し、気泡サイズと嵩密度とを制御した。
前記外層の成形体を溶融する際の金型内の圧力は、外層を構成する内側の第二外層形成時が98kPaに設定し、最も外側の第一外層形成時が85kPaに設定した。これらの設定圧力の継続時間は、第一外層形成時と第二外層形成時とで同じ時間に設定し、おおよそ同じ厚さに形成されるようにした。
製造した石英ガラスルツボにおいて、外層を構成する第一外層と第二外層における気泡の径、及び嵩密度は表1に示す通りである。
即ち、第一外層において気泡径は16~56μmであり、嵩密度は2.03g/cm3であった。また、第二外層において気泡径は21~100μmであり、嵩密度は1.81g/cm3であった。
実施例1では、図3に示した石英ガラスルツボ製造装置を用い、図1に示した層構造の石英ガラスルツボを製造した。このとき、外層の成形体を溶融する際の内側部材(金型)内の圧力を2段階に設定し、気泡サイズと嵩密度とを制御した。
前記外層の成形体を溶融する際の金型内の圧力は、外層を構成する内側の第二外層形成時が98kPaに設定し、最も外側の第一外層形成時が85kPaに設定した。これらの設定圧力の継続時間は、第一外層形成時と第二外層形成時とで同じ時間に設定し、おおよそ同じ厚さに形成されるようにした。
製造した石英ガラスルツボにおいて、外層を構成する第一外層と第二外層における気泡の径、及び嵩密度は表1に示す通りである。
即ち、第一外層において気泡径は16~56μmであり、嵩密度は2.03g/cm3であった。また、第二外層において気泡径は21~100μmであり、嵩密度は1.81g/cm3であった。
次に、この石英ガラスルツボを用いて炉内で高温加熱し、シリコン単結晶の引き上げを実施した。その結果、ルツボの倒れ込み、沈み込みといった変形は見られなかった。
表2に高温加熱後の石英ガラスルツボの外層における気泡数、平均気泡径、最大気泡径、最小気泡径、嵩密度を示す。
表2に高温加熱後の石英ガラスルツボの外層における気泡数、平均気泡径、最大気泡径、最小気泡径、嵩密度を示す。
表2に示すように高温加熱された後においても第一外層より厚さのある第二外層に内在する気泡の径が大きいため、肉厚膨張率が向上し、カーボンサセプタとの密着性が向上して倒れ込みが防止されたものと考えられた。また、高温熱処理後においても第一外層の嵩密度は第二外層の嵩密度より高く、即ち粘性が高いため、第二外層が肉厚に膨張しても第一外層によって沈み込み変形が防止されたものと考えられた。
(比較例1)
比較例1として、外層の成形体を溶融する際の金型の圧力を一貫して98kPaに設定し、石英ガラスルツボを製造した。その他の条件は実施例1と同様である。
次に、この石英ガラスルツボを用いて炉内で高温加熱し、シリコン単結晶の引き上げを実施した。その結果、ルツボの内側への倒れ込みは発生しなかったが、外側への沈み込み変形が発生した。
比較例1として、外層の成形体を溶融する際の金型の圧力を一貫して98kPaに設定し、石英ガラスルツボを製造した。その他の条件は実施例1と同様である。
次に、この石英ガラスルツボを用いて炉内で高温加熱し、シリコン単結晶の引き上げを実施した。その結果、ルツボの内側への倒れ込みは発生しなかったが、外側への沈み込み変形が発生した。
(比較例2)
比較例2として、外層の成形体を溶融する際の金型の圧力を一貫して85kPaに設定し、石英ガラスルツボを製造した。その他の条件は実施例1と同様である。
次に、この石英ガラスルツボを用いて炉内で高温加熱し、シリコン単結晶の引き上げを実施した。その結果、ルツボの内側への倒れ込みが発生した。
比較例2として、外層の成形体を溶融する際の金型の圧力を一貫して85kPaに設定し、石英ガラスルツボを製造した。その他の条件は実施例1と同様である。
次に、この石英ガラスルツボを用いて炉内で高温加熱し、シリコン単結晶の引き上げを実施した。その結果、ルツボの内側への倒れ込みが発生した。
以上の実施例の結果、本発明の石英ガラスルツボによれば、高温加熱時におけるルツボの倒れ込みや沈み込みといった変形を効果的に防止できることを確認した。
1 石英ガラスルツボ
2 外層
2A 第一外層
2B 第二外層
4 透明内層
7 直胴部
8 底部コーナー
9 底部
10 石英ガラスルツボ製造装置
2 外層
2A 第一外層
2B 第二外層
4 透明内層
7 直胴部
8 底部コーナー
9 底部
10 石英ガラスルツボ製造装置
Claims (5)
- チョクラルスキー法によって単結晶を引上げるための石英ガラスルツボにおいて、
透明内層と、前記透明内層よりも外側に配置され、気泡を含むことにより不透明に形成された外層とを備え、
前記外層は、第一外層と、前記第一外層よりも内側に配置された第二外層とを有し、
前記第一外層に内在する気泡の平均径は、前記第二外層に内在する気泡の径より小さく、
且つ、前記第一外層の嵩密度は前記第二外層の嵩密度より大きいことを特徴とする石英ガラスルツボ。 - 前記外層において、前記第二外層の厚さは、前記第一外層の厚さと同じ、もしくは、より大きいことを特徴とする請求項1に記載された石英ガラスルツボ。
- 前記外層において、前記第一外層に内在する気泡の平均径は、16~56μmであり、前記第二外層に内在する気泡の平均径は、21~100μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された石英ガラスルツボ。
- 前記外層において、前記第一外層の嵩密度は、1.96g/cm3以上2.08g/cm3以下であり、前記第二外層の嵩密度は、1.74g/cm3以上1.88g/cm3以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された石英ガラスルツボ。
- 前記請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された石英ガラスルツボの製造方法であって、
ルツボ成形用型の内側部材を軸周りに回転させるとともに、前記内側部材の内側にガラス原料粉末を供給し、外層を形成するステップと、
前記外層の内側にガラス原料粉末を供給し、内層を形成してルツボ成形体を形成するステップと、
前記ルツボ成形体の内側から加熱溶融し、石英ガラスルツボを形成するステップとを備え、
前記外層の加熱溶融の際、前記内側部材内の圧力を二段階に変化させ、内在する気泡の平均径が異なる第一外層と第二外層とを形成することを特徴とする石英ガラスルツボの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020218491A JP2022103702A (ja) | 2020-12-28 | 2020-12-28 | 石英ガラスルツボ及びその製造方法 |
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-
2020
- 2020-12-28 JP JP2020218491A patent/JP2022103702A/ja active Pending
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