JP2020100515A - 石英ガラスルツボ - Google Patents

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Abstract

【課題】シリコン単結晶中の転位発生を防止しながら低酸素の単結晶を製造することが可能な石英ガラスルツボを提供する。【解決手段】石英ガラスルツボ1は、気泡を含有する合成石英溶融ガラスからなり、石英ガラスルツボ1の内面を構成するシール層11と、気泡を含有しない合成石英溶融ガラスからなり、シール層11の外側に形成された合成透明層12と、気泡を含有しない天然石英溶融ガラスからなり、合成透明層12の外側に形成された天然透明層13と、気泡を含有する天然石英溶融ガラスからなり、天然透明層13の外側に形成された天然気泡層14とを備え、シール層11の気泡含有率は合成透明層12よりも高い。【選択図】図1

Description

本発明は、石英ガラスルツボに関し、特に、チョクラルスキー法(CZ法)によるシリコン単結晶の引き上げに用いられる石英ガラスルツボに関する。
CZ法によるシリコン単結晶の製造には石英ガラスルツボ(シリカガラスルツボ)が用いられる。CZ法では、石英ガラスルツボ内で多結晶シリコン原料を加熱してシリコン融液を生成し、シリコン融液に種結晶を浸漬し、ルツボを回転させながら種結晶を徐々に引き上げることにより、種結晶よりも大きな単結晶を成長させる。CZ法によれば、大口径の単結晶を育成することができ、シリコン単結晶の量産性を向上させることができる。
石英ガラスルツボに関し、例えば特許文献1には、合成石英ガラス内面層の最大層厚がコーナー部の最大肉厚の20〜80%であり、これにより直胴部及び底部の内面層がコーナー部の内面層よりも薄く形成され、コーナー部の合成石英ガラス内面層が最も厚い石英ガラスルツボが記載されている。
特許文献2には、シリコン融液内の熱対流を抑制し、融液表面の振動が発生しないようにするために、天然石英ガラスからなり気泡を多数含む半透明の外層と、合成石英ガラスからなり実質的に無気泡の透明な内層との間に、合成石英ガラスからなり気泡を多数含む半透明の中間層を設けて三層構造とした石英ガラスルツボが記載されている。
特許文献3には、コーナー部における不透明層の厚さが、不透明層及び透明層の合計厚さの25%以上80%以下であり、ストレート部及び底部における不透明層の厚さが、不透明層及び透明層の合計厚さの10%以上25%未満であり、かつ、コーナー部における不透明層の厚さがストレート部及び底部よりも大きい石英ガラスルツボが記載されている。
特許文献4には、ルツボの壁体の内面側が透明層からなり、壁体の外面側が不透明層からなり、ルツボの湾曲部における透明層の厚さが他の部分の透明層よりも0.5mm以上厚く、反対に湾曲部における不透明層の厚さが他の部分の不透明層よりも0.5mm以上薄いシリコン単結晶引上げ用石英ルツボが記載されている。
特許文献5には、ルツボ内面側から、合成無気泡層、天然無気泡層、天然気泡層、未溶融粒子層が順に形成された石英ガラスルツボが記載されている。また石英ルツボの製造方法において、ルツボ溶融プロセスの第1段階でルツボの内面に形成される皮膜層を昇華により除去することが記載されている。
特許第5252157号公報 特開2001−348294号公報 特開2016−193809号公報 特開平8−301693号公報 特開2010−143818号公報
近年、シリコン単結晶の大口径化及び結晶引き上げ工程の長時間化に伴い、石英ガラスルツボは長時間の使用に耐える必要がある。また引き上げ炉内部品の断熱性能が高くなることでルツボの熱負荷が高くなっている。
しかし、従来の石英ガラスルツボはシリコン単結晶引き上げ時の1400℃以上の熱環境下でその形状を維持できず、座屈や内倒れなどのルツボの変形が生じ、これによりシリコン融液の液面レベルの変動やルツボの破損、炉内部品との接触などが問題になる。また、ルツボの内面のうちシリコン融液と接触した部位にはクリストバライトが析出し、その外周が茶色い析出物(ブラウンリング)となる。このブラウンリングが剥離して育成中のシリコン単結晶に取り込まれた場合には有転位化の要因となる。特に、ルツボの変形によりブラウンリングの剥離が促進され、転位が発生しやすくなるため、ルツボの変形をできるだけ防止することが求められている。
また単結晶引き上げ工程中にシリコン融液と接触するルツボの内面は徐々に溶損するため、CZ法で育成されるシリコン単結晶にはルツボから供給される多量の酸素が含まれている。一方、半導体デバイスの品質向上のため、最近はシリコン単結晶中の酸素濃度(特に引き上げ軸方向の酸素濃度)を均一にすることが求められており、そのような要求を満たすことができる石英ガラスルツボが望まれている。またルツボとシリコン融液との反応により融液面が振動することがあり、湯面振動が起きると種結晶を着液させることができず、着液できたとしても結晶直径が安定せず、単結晶中に転位が発生する確率が高くなる。
したがって、本発明の目的は、変形しにくく、転位発生率を低くすることが可能な石英ガラスルツボを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明によるシリコン単結晶引き上げ用石英ガラスルツボは、気泡を含有する合成石英溶融ガラスからなり、前記石英ガラスルツボの内面を構成するシール層と、気泡を含有しない合成石英溶融ガラスからなり、前記シール層の外側に形成された合成透明層と、気泡を含有しない天然石英溶融ガラスからなり、前記合成透明層の外側に形成された天然透明層と、多数の気泡を含有する天然石英溶融ガラスからなり、前記天然透明層の外側に形成された天然気泡層とを備え、前記シール層の気泡含有率は、前記合成透明層の気泡含有率よりも高いことを特徴とする。
アーク溶融を行ったルツボの最表面にはブラウンリグが発生しやすく、結晶引き上げ中はブラウンリングの成長と融解が同時に起きており、ブラウンリングが剥離すると単結晶中に転位が発生する確率が高くなる。しかし、本発明による石英ガラスルツボは、ルツボ内面にシール層が形成されており、シール層中に気泡があることでシール層の溶損が進みやすいので、融液の湯面振動と共にブラウンリングの成長を抑制することができ、これにより転位発生率を低減することができる。
本発明において、前記シール層の厚さは0.1mm以上2.0mm以下であることが好ましい。シール層の厚さが上記範囲内であれば、結晶引き上げ工程の初期において融液の湯面振動及びブラウンリングの成長を抑制することができる。また単結晶の直胴部育成工程を開始する前にシール層が溶けて消滅するので、シール層を原因とする単結晶の有転位化を防止することができる。
本発明において、前記シール層の気泡含有率は0.1vol%以上5.0vol%以下であることが好ましく、0.1vol%以上3.0vol%以下であることがさらに好ましい。この場合において、前記シール層の気泡数密度は15個/cm以上300個/cm以下であり、前記シール層の平均気泡径は0.2μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。シール層の気泡含有率、気泡数密度及び平均気泡径が上記範囲内であれば、ルツボの内面が結晶化(クリストバライトが析出)して剥離することによる単結晶の有転位化を防止しながら湯面振動を抑制することができる。
前記シール層の気泡含有率は前記天然気泡層の気泡含有率よりも低いことが好ましい。これにより、ピンホールの発生を抑制することができる。またシール層の赤外線透過率が大きく低下してルツボの内面の温度が過度に低下することを防止することができる。なお、ピンホールとは、シリコン融液中のガスなどがシリコン単結晶中に取り込まれることによって生じる結晶中の微小な空洞のことであり、デバイス不良を引き起こす原因となるものを言う。
本発明による石英ガラスルツボは、多数の気泡を含有する天然石英溶融ガラスからなり、前記天然気泡層の外側に形成された結晶硬化層をさらに備え、前記結晶硬化層に含まれるアルカリ金属、アルカリ土類金属又は土類金属の元素の濃度は、前記天然気泡層よりも高いことが好ましい。この場合、結晶硬化層に含まれるアルカリ金属、アルカリ土類金属又は土類金属の元素の濃度は、天然気泡層よりも10ppm以上高いことが好ましく、20ppm以上高いことが特に好ましい。この構成によれば、ルツボの外面の結晶化を促進させてルツボの強度を向上させることができ、ルツボの変形に伴う単結晶の有転位化を抑制することができる。またルツボの外面の結晶化により赤外線透過率を小さくしてルツボの内面の高温化を抑制することができ、ルツボの溶損による酸素の供給を抑えることができる。
本発明による石英ガラスルツボは、円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、前記側壁部と前記底部との間に位置し前記底部よりも大きな曲率を有するコーナー部とを有し、前記コーナー部の肉厚は、前記側壁部及び前記底部の肉厚よりも厚く、前記コーナー部における前記合成透明層の厚さは、前記側壁部及び前記底部における前記合成透明層の厚さよりも厚いことが好ましい。特に、コーナー部の最大肉厚は、側壁部の平均肉厚の1.1倍以上が好ましく、1.5倍以上であることさらに好ましい。コーナー部1cの肉厚を他の部位よりも十分に厚くすることによってルツボ全体の強度を向上させ、ルツボの座屈、沈み込み等の変形を抑制することができる。またルツボの内面はコーナー部の温度が最も高くなり、またシリコン融液との接触時間も長いので、他の部位よりも溶損量が多くなる。しかし、コーナー部の肉厚を厚くし、さらにコーナー部における合成透明層の厚さを十分に厚くすることで、天然気泡層の露出を防止することができ、単結晶の不純物汚染と有転位化を防止することができる。さらに、合成透明層が厚ければ天然層内の不純物がルツボの内面まで拡散する距離を十分に保つことができる。したがって、天然層内の不純物がルツボの内面まで拡散することによるクリストバライトの剥離やシリコン単結晶の汚染を防止することができる。
本発明によれば、変形しにくく、単結晶の転位発生率を低くすることが可能な石英ガラスルツボを提供することができる。
図1は、本発明の実施の形態による石英ガラスルツボの構造を示す略断面図である。 図2は、図1の石英ガラスルツボの側壁部の一部(E部)を拡大して示す略断面図である。 図3は、石英ガラスルツボの製造方法を説明するための模式図である。 図4(a)〜(d)は、石英ガラス層の形成過程を説明するための図である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態による石英ガラスルツボの構造を示す略断面図である。また、図2は、図1の石英ガラスルツボの側壁部の一部(E部)を拡大して示す略断面図である。
図1に示すように、石英ガラスルツボ1は、シリコン融液を支持するための有底円筒状の容器であり、円筒状の側壁部1aと、緩やかに湾曲した底部1bと、側壁部1aと底部1bとの間に位置し底部1bよりも大きな曲率を有するコーナー部1cとを有している。
本発明は14インチ(約350mm)の小径のルツボを含めたあらゆる口径のルツボに適用可能であるが、24インチ(600mm)以上であることが好ましく、32インチ(約800mm)以上であることがさらに好ましい。このような大口径のルツボは直径300mm以上の大型のシリコン単結晶インゴットの引き上げに用いられ、長時間使用しても変形しにくいことが求められるからである。近年、シリコン単結晶の大型化に伴うルツボの大型化、引き上げ工程の長時間化に伴い、ルツボの熱環境が厳しくなっており、大型ルツボにおいて耐久性の向上は重要な課題である。
ルツボの肉厚はその部位によって多少異なるが、14インチ以上のルツボの側壁部の肉厚は6mm以上、24インチ以上のルツボの側壁部1aの肉厚は7mm以上、32インチ以上の大型ルツボの側壁部1aの肉厚は10mm以上、40インチ(約1000mm)以上の大型ルツボの側壁部1aの肉厚は13mm以上であることが好ましい。大容量のルツボには多量のシリコン融液からの圧力によって変形することがない十分な厚さが必要だからである。ルツボの側壁部1aの肉厚は概ね一定であるが、下端部よりも上端部のほうが少し薄くなる傾向がある。
石英ガラスルツボ1のコーナー部1cの厚さは、側壁部1aや底部1bよりも厚いことが好ましい。特に、コーナー部1cの最大肉厚は、側壁部1aの平均肉厚の1.1倍であることが好ましく、1.5倍以上であることがさらに好ましい。
石英ガラスルツボ1は結晶引き上げ中に加熱されて軟化し、シリコン融液からの圧力とルツボの自重により変形しやすい状態となっている。特に、シリコン融液の液面よりも下方の部位の軟化の程度が大きく、コーナー部の内面の膨らみ(スウェリング)が発生しやすい。ルツボが変形するとルツボ内面に形成されたブラウンリングが剥離してシリコン単結晶の有転位化の原因となる。またルツボの内面はコーナー部の温度が最も高くなり、またシリコン融液との接触時間も長いので、他の部位よりも溶損量が多くなるため、単結晶中の酸素濃度を増加させる原因となる。
しかし、コーナー部1cの肉厚を他の部位よりも厚くすることによってルツボ全体の強度を向上させることができ、ルツボの座屈、沈み込み等の変形を抑制することができ、特にコーナー部の内面のスウェリングを抑制することができる。さらに、ルツボのコーナー部1cの肉厚が厚いことでルツボの内表面の温度が比較的低温になるため、ルツボの溶損を抑えることができる。
図2に示すように、本実施形態による石英ガラスルツボ1は5層構造であって、ルツボの内側から、シール層11、合成透明層12、天然透明層13、天然気泡層14、結晶硬化層15が順に設けられた構造を有している。
シール層11は、気泡を含有する合成石英溶融ガラス層であり、シリコン単結晶の引き上げ工程の初期(着液工程〜ネック工程)において、ルツボ内面に発生するブラウンリングの成長を抑制すると共に、シリコン融液の湯面振動を防止する役割を果たすものである。アーク溶融を行ったルツボの最表面にはブラウンリングが発生しやすく、ブラウンリングが剥離すると単結晶中に転位が発生する確率が高くなる。また種結晶の着液工程で湯面振動が起きると種結晶を融液に馴染ませることができない。また結晶直径を細く絞るネック工程で湯面振動が起きると結晶直径が安定せず、単結晶中に転位が発生するおそれもある。さらに湯面振動が起きると振動にてルツボ表面に発生したブラウンリングやルツボ表面の石英片が剥離しやすくなる。しかし、ルツボの内面にシール層11を設けた場合には、シリコン融液の湯面振動を抑制しながらルツボの内面の溶損を促進させることができ、ルツボの内面のブラウンリングが大きく成長する前にシール層11と共にブラウンリングを消滅させることができる。
合成石英溶融ガラス層とは、合成石英原料(合成シリカ原料)を用いて形成された石英ガラス層のことを言う。合成石英は、例えばケイ素アルコキシドの加水分解により合成されたシリカ原料である。一般に合成石英は天然石英に比べて金属不純物の濃度が低く、OH基の濃度が高い。例えば、合成石英に含まれる各金属不純物の含有量は0.05ppm未満であり、OH基の含有量は30ppm以上である。合成石英か否かは、OH基及び複数の金属不純物の濃度から総合的に判断することができる。このように、合成石英は天然石英と比べて不純物が少ないことから、ルツボからシリコン融液中への不純物の溶出を防止することができる。
シール層11はシリコン単結晶の直胴部の引き上げ開始前に溶けて、合成透明層12が露出するように設計されている。直胴部の引き上げ開始時にシール層11が消滅しない場合、ブラウンリングが単結晶中に取り込まれて転位が発生するおそれがあるからである。そのため、シール層11の厚さは0.1〜2.0mmであることが好ましい。シール層11が0.1mmよりも小さい場合にはシール層11がすぐに消滅してしまい、シール層11を設けたことによる効果が得られない。またシール層11が2.0mmよりも大きい場合には直胴部の引き上げ開始前にシール層11が消滅しないおそれがある。シール層11は少なくとも側壁部1aにあればよく、これによりルツボ内面の結晶化及びシリコン融液の湯面振動を抑制することができる。
シール層11の気泡含有率は合成透明層12や天然透明層13よりも高く且つ天然気泡層14よりも低いことが好ましく、特にシール層11の気泡含有率は0.1〜5.0vol%であることが好ましく、0.1〜3.0vol%であることがさらに好ましい。この場合において、気泡数密度は15〜300個/cmであることが好ましい。また、平均気泡径は0.2〜100μmであることが好ましく、0.2〜50μmであることが好ましい。シール層11内の気泡含有率、気泡数密度及び平均気泡径が上記範囲内である場合には、ルツボの内面の溶損速度を大きくすることができ、シール層11の表面に発生したクリストバライトが成長して剥離する前にシール層11ごとクリストバライトを消滅させて単結晶の有転位化を防止することができる。シール層11の気泡含有率は、側壁部の下部のよりも側壁部の上部のほうが高いことが好ましい。
シール層11の気泡含有率、気泡数密度及び平均気泡径が上記範囲を超える場合、結晶中にピンホールが発生するおそれがある。すなわち、ルツボの内面の溶融時に多くの気泡がルツボ内のシリコン融液に入り、この気泡が融液対流に乗って固液界面に取り込まれることにより、単結晶中にピンホールが発生する。または、気泡がルツボ内面に付着した後、直胴部引き上げ中にルツボ内面から剥離するなどして単結晶中に取り込まれた場合には、単結晶中にピンホールが発生する。
2層目の合成透明層12は、気泡を含有しない合成石英溶融ガラス層であり、シール層11の外側に位置している。合成透明層12は、気泡の影響によるシリコン単結晶の有転位化や単結晶中のピンホールの発生を防止すると共に、シリコン単結晶の不純物汚染を防止するために設けられている。合成透明層12はシール層11が溶けて消滅した後にルツボ壁の内面を構成し、シリコン融液と接する層であるため、シリコン融液の汚染を防止するため高純度であることが要求される。
合成透明層12の厚さは0.1〜10mmであることが好ましく、0.5〜10mmであることが特に好ましい。単結晶の引き上げ工程中に完全に消失して天然透明層13が露出することがないよう、合成透明層12はルツボの部位ごとに適切な厚さに設定される。例えば、14インチ以上のルツボの合成透明層の厚さは0.5mm程度存在させている。合成透明層12は天然透明層13と共にルツボの側壁部1aから底部1bまでのルツボ全体に設けられていることが好ましい。ただし、シリコン融液と接触しないルツボの上端部(リム部)において透明層の形成を省略することも可能である。
合成透明層12が気泡を含有しないとは、一見して透明に見える程度まで気泡が除去されているという意味である。合成透明層12は、気泡が破裂したときのルツボ破片が原因で単結晶歩留まりが低下しない程度の気泡含有率を有していればよく、気泡含有率は0.1vol%未満であり、気泡数密度は15個/cm以下であり、平均気泡径は50μm以下であることが好ましい。
3層目の天然透明層13は、気泡を含有しない天然石英溶融ガラス層であり、合成透明層12の外側に位置している。すなわち、2層目の合成透明層12と3層目の天然透明層13は同じ透明層であるが、使用する原料が天然原料である点で合成原料を使用する合成透明層12とは異なっており、これにより天然透明層13に含まれる不純物の濃度は合成透明層12よりも高くなっている。天然透明層13は合成透明層12よりも粘性が高いため、ルツボの外面側に設けられた天然気泡層14の熱膨張がルツボの内面側へ伝搬することを抑制することができる。また合成石英溶融ガラス層と天然石英溶融ガラス層との境界を透明層内に設けることで、熱負荷による合成石英溶融ガラス層の剥離を防止することができる。天然透明層13が気泡を有しないとは、一見して透明に見える程度まで気泡が除去されているという意味であり、天然透明層13は合成透明層12と同等の透明性を有していればよい。
天然石英溶融ガラス層とは、天然石英原料を用いて形成された石英ガラス層のことを言う。天然石英は、天然水晶、ケイ石等の天然質原料である。一般に天然石英は合成石英に比べて金属不純物の濃度が高く、OH基の濃度が低い。例えば、天然石英に含まれるAlの含有量は1ppm以上、アルカリ金属(Na,K及びLi)の含有量はそれぞれ0.05ppm以上、OH基の含有量は80ppm未満である。天然石英か否かは、OH基及び複数の金属不純物の濃度から総合的に判断することができる。天然石英は合成石英に比べて高温における粘性が高いことから、ルツボ全体の耐熱強度を高めることができる。また天然石英は合成石英に比べて安価であり、コスト面でも有利である。
結晶引き上げの初期段階(ショルダー部育成開始まで)ではブラウンリングもまだ小さく、シール層がルツボ内面を構成していることでルツボ内面の溶解が進みやすいので、ブラウンリングの多くはそのサイズがまだ小さいうちに剥離又は溶解により消滅する。このように、結晶引き上げの中盤においてブラウンリングの数は少なくなるが、ブラウンリングの一部は消滅せずに成長しており、消滅しなかったブラウンリングが直胴部育成中に剥離することで単結晶が有転位化するものと推測される。ブラウンリングの剥離はルツボ内面が変形したときに発生しやすい。しかし、合成透明層12と天然気泡層14との間に天然透明層13が介在することで合成透明層12の内面の変形を抑制することができ、ブラウンリングの剥離を防止することができる。
4層目の天然気泡層14は、多数の気泡を含有する天然石英溶融ガラス層である。天然気泡層14は、ルツボの外側に配置されたヒーターからの輻射熱を分散させてルツボ内のシリコン融液をできるだけ均一に加熱するために設けられている。天然気泡層14は、透明層に比べて熱容量が大きいことから、シリコン融液の温度を安定的に制御することができる。また、ルツボの断熱性を向上させることができ、ルツボの内面の温度が高くなりすぎることによるルツボ内面の垂れ、ブラウンリングの発生・成長の抑制、ルツボの溶損による単結晶の酸素濃度の増加を抑えることができる。さらに、ルツボの昇降やヒーターパワーオン、単結晶のショルダー部から直胴部へのプロセス移行などの際にヒーターから受ける熱の急激な変化を緩和してルツボ内面の劣化を抑制し、シリコン単結晶中に取り込まれる酸素の急激な変化を抑制することができる。天然気泡層14はルツボの側壁部1aから底部1bまでのルツボ全体に設けられていることが好ましい。
天然気泡層14の気泡含有率は、シール層11、合成透明層12及び天然透明層13の気泡含有率よりも大きく、0.2〜5vol%であることが好ましく、1〜4vol%であることがさらに好ましい。天然気泡層14の気泡含有率が1vol%以下では天然気泡層14の機能を発揮できず、保温性が不十分となるからである。また、天然気泡層14の気泡含有率が5vol%を超える場合には気泡の膨張によりルツボが大きく変形して単結晶歩留まりが低下するおそれがあり、さらに伝熱性が不十分となるからである。特に、天然気泡層14の気泡含有率が1〜4%であれば、ルツボの変形をさらに防止することができ、また伝熱性をさらに高めることができる。
5層目の結晶硬化層15は、結晶化促進剤を多く含む天然石英溶融ガラス層である。結晶化促進剤は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は土類金属の元素であり、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga等を挙げることができる。結晶化促進剤を多く含む場合には、ルツボ外面の結晶化を促進させてルツボの強度を高めることができ、あるいは高温下で軟化した石英ガラスの粘性を高めてルツボの座屈、倒れ込み等の変形を防止することができる。また結晶硬化層15にはルツボの赤外線透過率を下げる効果があり、ヒーターから受ける急激な熱変化を緩やかにし、これによりシリコン単結晶中の酸素濃度の急激な変化を抑えることができる。天然気泡層14及び結晶硬化層15の合計厚さは、ルツボの肉厚からシール層11、合成透明層12及び天然透明層13の合計厚さを差し引いた値であり、ルツボの部位によって異なる。
合成透明層12及び天然透明層13の合計厚さが最大となる部位は、コーナー部1cに形成されており、コーナー部1cにおける合成透明層12の厚さは、側壁部1a及び底部1bにおける合成透明層12の厚さよりも厚いことが好ましい。ルツボのコーナー部1cはルツボの内面の温度が最も高くなる部位であり、またシリコン融液との接触時間も長いので、他の部位よりも溶損量が多くなる。しかし、コーナー部1cの肉厚を厚くし、さらにコーナー部1cにおける合成透明層12の厚さを十分に厚くすることで、天然気泡層14の露出を防止することができ、単結晶の不純物汚染と有転位化を防止することができる。
図3は、石英ガラスルツボの製造方法を説明するための模式図である。また図4(a)〜(d)は、石英ガラス層の形成過程を説明するための図である。
図3に示すように、本実施形態による石英ガラスルツボ1はいわゆる回転モールド法により製造することができる。回転モールド法では、回転するモールド30の内面30iに、結晶化促進剤が添加された天然石英粉21、通常の天然石英粉22及び合成石英粉23をこの順に堆積させて原料石英粉の堆積層20を形成する(図4(a)参照)。原料石英粉は遠心力によってモールド30の内面30iに張り付いたまま一定の位置に留まり、ルツボの形状が維持されている。
次に、モールド30内にアーク電極31を設置し、モールド30の内面30i側から原料石英粉の堆積層20をアーク溶融する。加熱時間、加熱温度等の具体的条件はルツボの原料やサイズなどの条件を考慮して適宜決定する必要がある。このとき、モールド30の内面30iに設けられた多数の通気孔32から原料石英粉の堆積層20を真空引きすることにより、溶融石英ガラス中の気泡量を制御する。
アーク熱は原料石英粉の堆積層20の内側から外側に向かって徐々に伝わって原料石英粉を融解していくので、原料石英粉が融解し始めるタイミングで減圧条件を変えることにより、シール層11、合成透明層12、天然透明層13、天然気泡層14、結晶硬化層15をそれぞれ作り分けることができる。石英粉が融解するタイミングで減圧を強める減圧溶融を行えば、アーク雰囲気ガスがガラス中に閉じ込められず、気泡を含まない石英ガラスになる。また、石英粉が融解するタイミングで減圧を弱める通常溶融(大気圧溶融)を行えば、アーク雰囲気ガスがガラス中に閉じ込められ、多くの気泡を含む石英ガラスになる。
具体的には、アーク溶融の開始時に通気孔32からの吸引力を少し弱めるなどを行うことで気泡を含有するシール層11を形成し(図4(b)参照)、次いで吸引力を強めることで合成透明層12及び天然透明層13を順に形成する(図4(c)参照)。その後、吸引力を弱めることで天然気泡層14及び結晶硬化層15を順に形成する(図4(d))。
その後、アーク加熱を終了し、ルツボを冷却する。以上により、ルツボ壁の内側から外側に向かってシール層11、合成透明層12、天然透明層13、天然気泡層14、結晶硬化層15が順に設けられた石英ガラスルツボ1が完成する。
以上説明したように、本実施形態による石英ガラスルツボ1は、ルツボの内面側から、シール層11、合成透明層12、天然透明層13、天然気泡層14及び結晶硬化層15が順に設けられた構造を有し、シール層11の気泡含有率が合成透明層12よりも高く且つ天然気泡層14よりも低いので、シリコン融液の湯面振動を抑制しながらルツボの内面の溶損を促進させることができる、したがって、ルツボの内面が結晶化して剥離することによる単結晶の有転位化を防止することができ、これにより単結晶の転位発生率を低減することができる。またシール層11の厚さが0.1mm以上2.0mm以下であり、シリコン単結晶の直胴部育成工程を開始する前にシール層が溶けて消滅し、合成透明層が露出してルツボの内面を構成するので、単結晶の有転位化と不純物汚染を防止することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態においては、シール層11、合成透明層12、天然透明層13、天然気泡層14及び結晶硬化層15の5層構造としたが、最も外側の結晶硬化層15を省略してシール層11、合成透明層12、天然透明層13及び天然気泡層14の4層構造とすることも可能である。
<考察1:層構造が異なるルツボの考察>
口径32インチの石英ガラスルツボを用いてCZ法によるシリコン単結晶の引き上げを行った後、単結晶歩留まり及び使用後のルツボの変形の度合いを評価した。この評価試験では層構造が異なる3種類のルツボサンプルA1〜A3をそれぞれ複数個用意し、これらのルツボを用いて複数本のシリコン単結晶の引き上げを行った。その結果を表1に示す。
Figure 2020100515
表1に示すように、合成透明層/天然透明層/天然気泡層の3層構造を有し、シール層がないサンプルA1では、湯面振動が激しいため結晶引き上げを実施できないか、できたとしても単結晶の有転位化により結晶歩留まりが60%以下となった。
またシール層/合成透明層/天然気泡層の3層構造を有するルツボサンプルA2では、シール層の作用により湯面振動及びブラウンリングの増加を抑制できたが、結晶歩留まりが70%以下となった。このような結晶歩留まりの悪化は、天然透明層がないことにより、天然気泡層の熱膨張による変形が合成透明層に伝搬し、内表面の変形を起こしてブラウンリングの剥離が起きたためと考えられる。
さらにシール層/合成透明層/天然透明層/天然気泡層の4層構造を有するサンプルA3では、結晶歩留まりが80%以上となった。サンプルA3では、シール層の作用により湯面振動及びブラウンリングの増加を抑制でき、さらに天然透明層の作用により天然気泡層の膨張に伴う合成透明層の変形を抑制し、合成透明層の変形によるブラウンリングの剥離を抑制することができると考えられる。
<考察2:4層ルツボのシール層の厚さの考察>
シール層の厚さが異なる4層ルツボのサンプルB1〜B5をそれぞれ複数個用意し、これらのルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。その結果を表2に示す。
Figure 2020100515
表2に示すように、シール層の厚さが0.05mmであるサンプルB1では、シール層がないサンプルA1と同様に、湯面振動が激しいため結晶引き上げを実施できないか、できたとしても単結晶の有転位化により結晶歩留まりが65%以下となった。またシール層の厚さが2.5mmであるサンプルB5でも有転位化が発生し、結晶歩留まりが70%以下となった。一方、シール層の厚さが0.1〜2.0mmであるルツボサンプルB2〜B4では有転位化が発生しなかった。これらの結果から、シール層の厚さが0.1〜2.0mmの範囲内であれば、シール層により単結晶の有転位化を抑制する効果が得られることが分かった。シール層が厚すぎる場合には、単結晶の直胴部育成中にシール層の溶け残りがあり、ブラウンリングが剥離しやすい状態であるため、結晶歩留まりが低下するものと考えられる。
<考察3:シール層の気泡含有率、気泡数密度、平均気泡径の考察>
シール層に含まれる気泡の条件が異なる4層ルツボのサンプルC1〜C3をそれぞれ複数個用意し、これらのルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。その結果を表3に示す。
Figure 2020100515
表3に示すように、気泡含有率が0.1〜5.0vol%、気泡数密度が15〜300個/cm、平均気泡径が0.2〜100μmであるサンプルC1では、結晶歩留まりが80%以上となった。一方、気泡含有率が0.1vol%未満、気泡数密度が15個/cm未満、平均気泡径が0.2μm未満であるサンプルC2では、シール層がないサンプルA1と同様に、湯面振動が激しいため結晶引き上げを実施できないか、できたとしても単結晶の有転位化により結晶歩留まりが70%以下となった。
また、気泡含有率が5.0vol%超、気泡数密度が300個/cm超、平均気泡径が100μm超であるサンプルC3では、有転位化が抑制され結晶歩留まりが80%以上となったが、単結晶から切り出したウェーハを検査したところ、ピンホールが発生していた。サンプルC1、C2のピンホール発生率が0.1%以下であったのに対し、サンプルC3のピンホール発生率は3%以上となった。なおピンホール発生率は、ピンホール不良ウェーハ枚数/(ピンホール合格ウェーハ枚数+ピンホール不良ウェーハ枚数)を計算することにより求められる。シール層に含まれる気泡が多すぎる場合には、単結晶の有転位化は防止できるが、単結晶中にピンホールが発生しやすくなると考えられる。以上の結果から、気泡含有率が0.1〜5.0vol%、気泡数密度が15〜300個/cm、平均気泡径が0.2〜100μmの範囲内であれば、シール層により単結晶の有転位化を抑制できる効果が得られることが分かった。
<考察4:結晶硬化層の有無の考察>
結晶硬化層を有しない4層ルツボのサンプルD1と、結晶硬化層を有する5層ルツボのサンプルD2をそれぞれ複数個用意し、これらのルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。その結果を表4に示す。
Figure 2020100515
表4に示すように、シール層/合成透明層/天然透明層/天然気泡層の4層構造を有し、結晶硬化層がないサンプルD1では、ルツボの変形が小さく、結晶歩留まりは80%以上であった。一方、シール層/合成透明層/天然透明層/天然気泡層/結晶硬化層の5層構造を有するサンプルD2では、ルツボの変形が非常に小さく、結晶歩留まりは85%以上であった。結晶硬化層をさらに設けたサンプルD2では、ルツボの変形が十分に抑制されることでブラウンリングの剥離抑制効果がさらに高まるものと考えられる。
<考察5:コーナー部最大肉厚(最大/側壁平均)の考察>
ルツボのコーナー部の最大肉厚比率(コーナー部の最大肉厚/側壁部の平均肉厚)が異なる4層ルツボのサンプルE1〜E8を用意し、これらのルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。その結果を表5に示す。
Figure 2020100515
表5に示すように、コーナー部最大肉厚比率が0.5であり、側壁部及び底部部の合成透明層の厚さがコーナー部よりも大きいサンプルE1では、合成透明層の消失及び不純物拡散によるクリストバライトの剥離により天然透明層が露出し、またルツボの変形(スウェリング)によりブラウンリングが剥離し、結晶歩留まりが60%以下となった。また、コーナー部最大肉厚比率が0.5であり、側壁部及び底部の合成透明層の厚さがコーナー部よりも小さいサンプルE2では、天然透明層は露出しなかったが、ルツボの変形(スウェリング)によりブラウンリングが剥離し、結晶歩留まりが70%以下となった。
コーナー部最大肉厚比率が1であり、側壁部及び底部の合成透明層の厚さがコーナー部よりも大きいサンプルE3は、サンプルE1と同様の結果となった。コーナー部最大肉厚比率が1であり、側壁部及び底部の合成透明層の厚さがコーナー部よりも小さいサンプルE4は、サンプルE2と同様の結果となった。
コーナー部最大肉厚比率が1.1であり、側壁部及び底部の合成透明層の厚さがコーナー部よりも大きいサンプルE5は、サンプルE1、E3と同様の結果となり、結晶歩留まりが70%以下となった。一方、コーナー部最大肉厚比率が1.1であり、側壁部及び底部の合成透明層の厚さがコーナー部よりも小さいサンプルE6では、天然透明層が露出せず、ルツボの変形も生じなかった。これにより、サンプルE6の結晶歩留まりは80%以上となった。
コーナー部最大肉厚比率が1.5であり、側壁部及び底部の合成透明層の厚さがコーナー部よりも大きいサンプルE7は、サンプルE5と同様の結果となり、結晶歩留まりが70%以下となった。また、コーナー部最大肉厚比率が1.5であり、側壁部及び底部の合成透明層の厚さがコーナー部よりも小さいサンプルE8は、サンプルE6と同様の結果となり、結晶歩留まりは80%以上となった。
以上の結果から、コーナー部最大肉厚比率が1.1以上であり、側壁部及び底部部の合成透明層の厚さがコーナー部よりも大きいサンプルE5、E7では、結晶歩留まりが80%以上となり、天然透明層の露出やルツボの変形(スウェリング)に起因する有転位化を抑制できることが分かった。
1 石英ガラスルツボ
1a 側壁部
1b 底部
1c コーナー部
11 シール層
12 合成透明層
13 天然透明層
14 天然気泡層
15 結晶硬化層
20 原料石英粉の堆積層
21 結晶化促進剤が添加された天然石英粉
22 天然石英粉(通常の天然石英粉)
23 合成石英粉
30 モールド
30i モールドの内面
31 アーク電極
32 通気孔

Claims (8)

  1. シリコン単結晶引き上げ用石英ガラスルツボであって、
    気泡を含有する合成石英溶融ガラスからなり、前記石英ガラスルツボの内面を構成するシール層と、
    気泡を含有しない合成石英溶融ガラスからなり、前記シール層の外側に形成された合成透明層と、
    気泡を含有しない天然石英溶融ガラスからなり、前記合成透明層の外側に形成された天然透明層と、
    多数の気泡を含有する天然石英溶融ガラスからなり、前記天然透明層の外側に形成された天然気泡層とを備え、
    前記シール層の気泡含有率は、前記合成透明層の気泡含有率よりも高いことを特徴とする石英ガラスルツボ。
  2. 前記シール層の厚さは0.1mm以上2.0mm以下である、請求項1に記載の石英ガラスルツボ。
  3. 前記シール層の気泡含有率は0.1vol%以上5.0vol%以下である、請求項1又は2に記載の石英ガラスルツボ。
  4. 前記シール層の気泡数密度は15個/cm以上300個/cm以下である、請求項3に記載の石英ガラスルツボ。
  5. 前記シール層の平均気泡径は0.2μm以上100μm以下である、請求項3又は4に記載の石英ガラスルツボ。
  6. 前記シール層の気泡含有率は、前記天然気泡層の気泡含有率よりも低い、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
  7. 多数の気泡を含有する天然石英溶融ガラスからなり、前記天然気泡層の外側に形成された結晶硬化層をさらに備え、
    前記結晶硬化層に含まれるアルカリ金属、アルカリ土類金属又は土類金属の元素の濃度は、前記天然気泡層よりも高い、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
  8. 円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、前記側壁部と前記底部との間に位置し前記底部よりも大きな曲率を有するコーナー部とを有し、
    前記コーナー部の肉厚は、前記側壁部及び前記底部よりも厚く、
    前記コーナー部における前記合成透明層の厚さは、前記側壁部及び前記底部における前記合成透明層よりも厚い、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
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