JP7149674B1 - 荷出し開口用型枠とそれを用いた荷出し開口の形成方法 - Google Patents
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Abstract
Description
従来の荷出し開口は、開口部を形成する予定の箇所を囲むように設置された複数枚のベニヤ板からなる型枠によって形成されていた。しかしながら、木製の型枠はスラブ筋を通すための孔を正確な位置に形成することが困難なため、設置に時間を要していた。また、スラブ筋が嵌め込まれている状態の型枠をコンクリートが固化した後にスラブ筋から取り外す作業は容易でなく、型枠の撤去を効率良く行うことができないという課題があった。さらに、撤去した後の型枠は再利用できないため、廃棄せざるを得ず、その結果、大量の木材資源が無駄になっていた。
特許文献1に開示された型枠は、小穴が全域に亘って形成された穴明き鉄板と、この穴明き鉄板が側面に添着される鉄筋製枠体からなり、この鉄筋製枠体が連絡用床貫通口の周壁部に相当する形状及び大きさを有する周壁部骨格を備えていることを特徴とする。
このように型枠が鉄筋製であれば、コンクリートが固化した後に撤去せずにコンクリートスラブの中に埋設された状態にしても問題ないため、型枠の撤去作業が不要となる。そして、この型枠を用いる場合には、木製の型枠を用いる場合とは異なり、大量の木材資源が無駄に廃棄されることがない。さらに、型枠にスラブ筋を通す際に、予め形成されている小穴を利用できるため、設置された型枠に対する配筋作業を効率良く行うことができる。
特許文献2に開示された仮設支柱挿通口用フレームは、耐アルカリ性グラスファイバー入り強化コンクリート製であって、方形の上部開口端に向けて漸次拡幅された倒台形状をなし、下部側壁にその周縁部を残して支柱挿通口が設けられるとともに、各側壁面に配筋用の貫通孔が形成されていることを特徴とする。
このようにフレームが耐アルカリ性グラスファイバー入り強化コンクリート製であれば、仮設支柱挿通口へのコンクリート打設時にフレームが撤去されずにそのままコンクリートスラブ内に埋設された状態となったとしても床スラブの強度が低下することがない。すなわち、上記構造のフレームは撤去しなくとも良いため撤去作業に要する手間や費用が削減される。また、フレームの各側壁に配筋用の貫通孔が形成されており、フレームの組み込み時に支柱挿通口開設部の床スラブ鉄筋の端部を上記貫通孔に通してフレーム内に突出させておけば、仮設支柱撤去後に仮設支柱挿通口へコンクリートを打設する際にその鉄筋を利用できるため、仮設支柱挿通口の埋め戻し作業を効率良く行うことができる。
特許文献3に開示されたスラブ開口用型枠に係る発明は、スラブ形成用型枠の一部を構成する平板材の上に設置されるものであって、平面視矩形状をなす第1の枠体と、この第1の枠体の四隅をそれぞれ保持する4つの保持手段と、この4つの保持手段をそれぞれ下方から支持する4つの支持具と、合成樹脂からなり可撓性を有する矩形状のシートと、このシートの四辺を第1の枠体に固定する固定手段と、を備えており、上記シートは、平板材の上に広げられ、かつ、保持手段を介して第1の枠体の四隅にそれぞれ設置される4つの支持具の下端によって、平面視して中央部分から均等な距離にある4か所を固定された状態において、シートの四辺を持ち上げて、第1の枠体の外側からその上部を跨ぐようにして内側へ折り込むことが可能な大きさを有していることを特徴とする。
このような構造のスラブ開口用型枠においては、底面と4つの側面がシートで覆われた状態で、その周りにコンクリートを打設すると、シートによってコンクリートの侵入が阻まれるため、シートで周りを囲まれた空間内にはコンクリートスラブが形成されない。そして、コンクリートスラブの中に埋もれることなく、単にコンクリートスラブの表面と接触した状態となっている合成樹脂製のシートはコンクリートに対する密着力が弱いため、コンクリートスラブから容易に引き剥がすことができる。さらに、シートはカッター等を用いて簡単に切断することができるため、シートに複数本のスラブ筋が貫通している場合であっても、シートに形成されたスラブ筋の挿通孔をカッター等で切り開くようにすれば、シートをスラブ筋から容易に分離することが可能である。
第1の発明において、スラブ形成用型枠の一部を構成する平板材の上面に第1の底板を密着させるように固定された型枠本体が合成樹脂製であるため、ドリルなどの工具を用いることによって、型枠本体にスラブ筋の挿通孔を簡単に形成することができる。したがって、第1の発明においては、型枠本体が配筋作業の支障にならない。
なお、コンクリートが固化した場合、型枠本体はコンクリートスラブの中に埋もれることなく、単にコンクリートスラブの表面に片面が接触した状態となっている。そして、型枠本体は合成樹脂製であることから木材や金属からなる従来の型枠に比べてコンクリートに対する密着力が弱い。したがって、第1の発明においては、型枠本体をコンクリートスラブから引き剥がす作業が容易であるという作用を有する。また、合成樹脂はバールなどの工具によって簡単に破壊可能であるため、第1の発明では、側板に複数本のスラブ筋が貫通している状態であってもスラブ筋から型枠本体を取り外してコンクリートスラブから撤去する作業が容易である。
第2の発明においては、第1の発明の作用に加え、第1の棒材と受け具の荷重の一部を支柱が負担することにより、第1の棒材と受け具から型枠本体が受ける荷重が軽減されるという作用を有する。
第3の発明においては、第2の発明の作用に加え、上板の第1の貫通孔と下板の第2の貫通孔に支柱を連通させた状態で上板と下板を上下から挟むように一対のナットを締め付けることによって支柱固定具に支柱が固定されるとともに、支柱固定具の上板及び下板の少なくともいずれか一方を受け具に固定すると、支柱固定具を介して支柱が受け具に固定されるという作用を有する。
第4の発明においては、第3の発明の作用に加え、支柱の雄ネジ部に螺合している一対のナットの間に支柱固定具の上板及び下板が配置されるように各ナットの位置を調節した後、第3の切り欠きの内部に配置した支柱を接続板と平行な状態を維持しながら、上板及び下板の基端側から先端側へ移動させると、支柱が第3の切り欠きを通って第1の切り欠き及び第2の切り欠きの内部に配置されるという作用を有する。
第5の発明において、第1の棒材の端部を受け具の凹溝内に配置すると、第1の棒材は底部が受け具の第2の底板で保持されるとともに、側部が受け具の外板と内板でそれぞれ保持されるため、不用意に横方向へずれて受け具から外れてしまうおそれがない。したがって、第5の発明においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、第1の棒材の端部を受け具内に設置する際の作業性が良いという作用を有する。
第6の発明においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、受け具を型枠本体の枠体板上に配置することで、型枠本体の側板の上端側の四隅に4個の受け具をそれぞれ正確に設置する作業が容易になるという作用を有する。
第7の発明において、受け具を型枠本体の枠体板上に配置すると、受け具の外側部が型枠本体の外側板でそれぞれ保持されるため、受け具が不用意に横方向へずれて型枠本体の枠体板上から外れてしまうおそれがない。したがって、第7の発明においては、第6の発明の作用に加え、型枠本体の側板の上端側の四隅に4個の受け具をそれぞれ配置する際の作業性が良いという作用を有する。
型枠本体の側板が鉛直方向と平行に設置されている場合、型枠本体の第1の底板に対して鉛直方向上向きに加えた力は側板をコンクリートスラブから引き剥がす方向に作用しないため、側板をコンクリートスラブから引き剥がすには第1の底板に対する上述の力とは別に水平方向の力を側板に加える必要がある。これに対し、第8の発明では、型枠本体の側板が上方へ向かって次第に広がるような形状をなしているため、型枠本体の第1の底板に対して鉛直方向上向きに加えた力は側板をコンクリートスラブから引き剥がす方向にも作用する。したがって、第8の発明においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、型枠本体の側板が鉛直方向と平行に設置される場合に比べて、型枠本体をコンクリートスラブから引き剥がし易いという作用を有する。
第9の発明では、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用を有することに加え、型枠本体の凹凸部が設けられている面において曲げ剛性が高まるという作用を有する。
第10の発明においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、型枠本体が透明であるため、スラブ筋の挿通孔を形成する作業が容易であるという作用を有する。
第11の発明においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、2本の第1の棒材が上端に配置された一対の側板が第1の棒材を介して第2の棒材にそれぞれ固定されるため、上記一対の側板の間隔が変化するような変形が型枠本体に生じ難いという作用を有する。
第12の発明においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、現場で使用する型枠本体の数が多い場合でも分割体ごとにまとめれば嵩張らない状態になるため、型枠本体の運搬が容易であるとともに、保管スペースが節約されるという作用を有する。また、打設されたコンクリートが固化した後で型枠本体をコンクリートスラブから引き剥がす際に、型枠本体が最初から2つに分割された状態となっているため、第12の発明では、コンクリートスラブから型枠本体を引き剥がす作業が容易であるという第1の発明の作用がより一層発揮される。さらに、型枠本体を射出成形によって製造する場合には、分割体ごとに金型を作れば良いため、型枠本体が分割されていない場合に比べて金型のサイズが小さくなるというメリットがある。
このような荷出し開口の形成方法においては、型枠本体が合成樹脂製であって、ドリルなどの工具を用いれば、スラブ筋の挿通孔を簡単に形成できる構造であることから、荷出し開口用型枠の内部にスラブ筋を配置する際に、型枠本体がその作業の支障にならない。また、スラブ形成用型枠内において荷出し開口用型枠の周りにコンクリートを打設してコンクリートスラブを形成する際に、型枠本体によってコンクリートの移動が阻止されるため、型枠本体の内部にはコンクリートスラブが形成されない。さらに、コンクリートスラブが形成された場合、型枠本体はコンクリートスラブの中に埋もれることなく、単にコンクリートスラブの表面に片面が接触した状態となっているため、コンクリートスラブから型枠本体を引き剥がす作業が容易である。
このような荷出し開口の形成方法においては、第13の発明の作用に加え、第1の棒材と受け具の荷重の一部を支柱が負担することにより、第1の棒材と受け具から型枠本体が受ける荷重が軽減されるという作用を有する。
なお、コンクリートスラブから取り出した型枠本体の再利用は困難であるが、第1の発明における型枠本体の材料費は、金属製の型枠本体に比べると格段に安い。したがって、第1の発明によれば、コンクリートスラブの一部に荷出し開口を安価に形成することが可能である。また、第1の発明では、型枠本体の周囲にコンクリートが打設された際に第1の棒材によって型枠本体の変形が抑制されるため、肉厚が薄い型枠本体を用いることが可能である。そして、このような型枠本体を用いた場合、コンクリートスラブからの型枠本体を引き剥がす作業をさらに容易に行うことができる。
また、第13の発明によれば、荷出し開口用型枠の内部にもスラブ筋を配置することから、使い終わった荷出し開口を塞ぐために、その内部に形成されるコンクリートスラブに対し、十分な強度をもたせることができる。
なお、本発明の荷出し開口用型枠は、鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートを構造材料とする建築物においてコンクリートスラブに荷出し開口を形成する際に型枠の一部として用いられる合板のような木製の平板材又はデッキプレートのような金属製の平板材の上面に設置されるものである。
したがって、本明細書では、荷出し開口用型枠がそのような状態で使用される場合を想定して、「上板」や「下板」あるいは「上下」などの表現を用いている。また、本発明の荷出し開口用型枠を用いてコンクリートスラブに荷出し開口を形成する方法の具体例として、スラブ形成用型枠の一部を構成する平板材が合板である場合について説明しているが、当該平板材が金属製のデッキプレートである場合にも、以下に説明する荷出し開口の形成方法に係る本発明の作用及び効果は同様に発揮される。
なお、図1(a)に示す荷出し開口用型枠1では木製の角材からなる桟木5a~5cが用いられているが、本発明の荷出し開口用型枠は、このような構造に限定されるものではなく、例えば、木製の角材の代わりに、矩形以外の断面形状を有する金属製の棒材が用いられた構造であっても良い。また、型枠本体2は透明なポリカーボネートによって形成されているが、型枠本体2はポリカーボネート以外の透明な合成樹脂によって形成されたものであっても良い。
図1(b)に示すように一対の分割体7、7は、図1(a)に示した型枠本体2が第1の底板2aの中央部分において、第1の底板2a及び一対の側板2b、2bに対して直交する平面によって切断された形状をなしている。
なお、図1(a)では一対の分割体7、7の端面7a、7a(図1(b)を参照)が当接した状態となっているが、実際に荷出し開口をコンクリートスラブに形成する際には、打設されたコンクリートが端面7a、7aの間から一対の分割体7、7の内部に侵入することを防ぐため、後述するように、一方の分割体7の上に他方の分割体7の一部が重なるような状態で型枠本体2をスラブ形成用型枠の合板12(図5(a)又は図5(b)を参照)の上に設置することが望ましい。
また、図2(c)及び図2(d)に示すように支柱固定具4は側面視コの字をなすように直角に二度曲折された長方形状の板材からなり、ビス固定孔8b、8bが長手方向へ所望の間隔をあけて設けられている上板4aと、この上板4aに平行な下板4bと、上板4aと下板4bの基端側を繋ぐ接続板4cによって構成されている。なお、上板4aと下板4bには、基端側から長手方向と平行に所定の長さを有する第1の切り欠き9a及び第2の切り欠き9bがそれぞれ形成されており、接続板4cには第1の切り欠き9aと第2の切り欠き9bを繋ぐ第3の切り欠き9cが上板4a及び下板4bと直交する方向へ形成されている。
図2(f)に示すように桟木5a~5cは細長い木製の角材であり、桟木5a、5bの幅w(図2(f)を参照)は受け具3における第2の底板3aの幅W1(図2(b)を参照)よりも狭く、桟木5a、5bの厚さt(図2(f)を参照)と受け具3における第2の底板3aの厚さT(図2(a)を参照)の合計及び外板3b及び内板3cの幅W2(図2(a)を参照)は、いずれも支柱固定具4における上板4aと下板4bの間隔L(図2(c)を参照)よりも薄い。そして、桟木5aの長さは、スラブ形成用型枠に設置された型枠本体2の上端に固設された状態で桟木5aの両端をそれぞれ保持する一対の受け具3、3における外板3b、3bの間隔よりも短く、かつ、上述の一対の受け具3、3における第2の底板3a、3aの間隔よりも長い。
なお、桟木5cは、平行に配置された一対の桟木5a、5aに対して垂直に架け渡すことができるように、その長さはスラブ形成用型枠に設置された状態の型枠本体2における一対の外側板2f、2fの間隔よりも長い。
この場合、凹凸部11によって、側板2cに接続されている側と端面7a(図1(b)を参照)の間が上方又は下方へ凸になるような曲げに対する第1の底板2aの剛性が高められるとともに、枠体板2dに接続されている側と第1の底板2aに接続されている側の間が内側又は外側へ向かって凸になるような曲げに対する側板2cの剛性が高められる。すなわち、荷出し開口用型枠1においては、型枠本体2の凹凸部11が設けられている面において曲げ剛性が高まるという作用を有する。したがって、荷出し開口用型枠1では、肉厚の薄い型枠本体2を用いることができる。
なお、凹凸部11は第1の底板2aと側板2cだけでなく、側板2bに設けても良いし、第1の底板2aのみに設けても良い。また、型枠本体2を凹凸部11が設けられていない構造とすることもできる。
図8(a)及び図8(b)はそれぞれ図7(b)において型枠本体に設けられたスラブ筋挿通孔にスラブ筋が挿通された状態を示した斜視図及び平面図である。また、図9(a)は図8(b)におけるC-C線矢視断面図であり、図9(b)は図9(a)において型枠本体の周りにコンクリートが打設された状態を示しており、図9(c)は図9(b)において型枠本体内のスラブ筋を切断して端部を折り曲げた状態を示している。さらに、図10(a)及び図10(b)はそれぞれ図9(c)において荷出し開口用型枠を撤去した状態を示した断面図及び斜視図であり、図10(c)は図10(a)において折り曲げられたスラブ筋を元の真っ直ぐな状態に戻すとともに、切断された部分を接合した状態を示している。そして、図11(a)はパイプ固定部材の外観斜視図であり、図11(b)は図10(b)において荷出し開口の周囲にパイプ固定部材が設置された状態を示している。
なお、図が煩雑になるのを避けるため、図5(a)及び図5(b)では一部のビスについてのみ符号を付しており、図8(b)、図9(a)乃至図9(c)、図10(c)及び図11(b)では一部のスラブ筋についてのみ符号を付している。また、図5(a)、図5(b)、図8(b)及び図9(a)乃至図9(c)では凹凸部の図示を省略している。さらに、図1乃至図3に示した構成要素については、同一の符号を付して適宜その説明を省略する。
また、型枠本体2に外側板2e、2fが設けられていない場合、受け具3を型枠本体2の枠体板2dの上に配置する際に受け具3が水平方向へずれて型枠本体2から外れてしまう可能性がある。これに対し、上記構造の荷出し開口用型枠1では、受け具3の外側部が型枠本体2の外側板2e、2fでそれぞれ保持されるため、受け具3が不用意に横方向へずれて型枠本体2の枠体板2dの上から外れてしまうおそれがない。したがって、荷出し開口用型枠1によれば、型枠本体2に受け具3を固設する作業を短時間で効率良く行うことができる。
なお、荷出し開口用型枠1では、支柱6の雄ネジ部6bに螺合している一対のナット10、10の間に支柱固定具4の上板4a及び下板4bが配置されるように各ナット10の位置を調節した後、第3の切り欠き9cの内部に配置した支柱6を接続板4cと平行な状態を維持しながら、上板4a及び下板4bの基端側から先端側へ移動させると、支柱6が第3の切り欠き9cを通って第1の切り欠き9a及び第2の切り欠き9bの内部に配置される。また、コンクリートの固化後に支柱6から支柱固定具4を取り外す場合、一対のナット10、10による支柱固定具4への締め付けを緩めた後に、支柱6から遠ざかる方向へ支柱固定具4を水平に移動させるようにすれば、支柱6から支柱固定具4を簡単に取り外すことができる。したがって、荷出し開口用型枠1では、支柱固定具4に支柱6を設置する作業及び支柱固定具4を支柱6から取り外す作業を短時間で効率良く行うことができる。
また、支柱固定具4において、第1の切り欠き9a、第2の切り欠き9b及び第3の切り欠き9cが上板4a、下板4b及び接続板4cに設けられる代わりに、上板4aに支柱6が挿通される第1の貫通孔が設けられるとともに、この第1の貫通孔に挿通された支柱6を連通可能に第2の貫通孔が下板4bに設けられた構造とすることもできる。このような構造の支柱固定具4においては、上板4aの第1の貫通孔と下板4bの第2の貫通孔に支柱6を連通させた状態で上板4aと下板4bを上下から挟むように一対のナット10、10を締め付けることにより支柱6が固定されるという作用を有する。
ただし、この場合には、コンクリートスラブの形成後に支柱6から支柱固定具4を取り外す際に、一対のナット10、10のうち、上方に位置するナット10を緩めて支柱6の上方へ抜き取った後、支柱固定具4を支柱6の上方へ抜き取る必要があるため、図2(c)に示した支柱固定具4に比べると、支柱6から支柱固定具4を取り外す際の作業性が悪い。
このとき、桟木5a、5bと受け具3の荷重の一部を4本の支柱6が負担することになるため、型枠本体2が桟木5a、5bと受け具3から受ける荷重が軽減される。したがって、荷出し開口用型枠1では、型枠本体2の肉厚を薄くすることができる。
そして、ステップS7では、型枠本体2に形成されたスラブ筋挿通孔にスラブ筋15を挿通し、荷出し開口用型枠1の内部に複数本のスラブ筋15を水平に配置する(図8(a)及び図8(b)並びに図9(a)を参照)。
このように、荷出し開口用型枠1によれば、スラブ筋挿通孔の形成が容易であるため、コンクリートスラブが形成された後に荷出し開口として機能する箇所に対して、スラブ筋15を配置する作業を短時間で効率良く行うことができる。
また、型枠本体2の第1の底板2aは合板12に対してビス13を用いて隙間が生じないように密着した状態で固定されているため、荷出し開口用型枠1の周りに打設されたコンクリートが型枠本体2の第1の底板2aと合板12の間に入り込むおそれはない。
その後、ステップS10において、荷出し開口用型枠1を撤去する(図10(a)及び図10(b)を参照)。具体的には、まず、支柱固定具4の上板4aを桟木5a、5bに固定しているビス(図示せず)を抜いて支柱固定具4を回転させ、上板4aと下板4bの間に受け具3及び桟木5a、5bが配置されていない状態にした後、支柱固定具4を水平に移動させるようにして、第1の切り欠き9a及び第2の切り欠き9bの内部に配置されていた支柱6から取り外す。つぎに、桟木5a~5cのビス(図示せず)を抜いて型枠本体2から桟木5a~5cを取り外した後、ビス13を抜いて受け具3を型枠本体2から取り外す。そして、型枠本体2をスラブ筋15から取り外す。
これに対し、図9(b)に示すように型枠本体2の側板2b、2cが上方へ向かって次第に広がるような形状をなしている場合には、型枠本体2の第1の底板2aに対して鉛直方向上向きに加えられた力が、側板2b、2cをコンクリートスラブ16から引き剥がす方向にも作用する。すなわち、荷出し開口用型枠1では、型枠本体2がコンクリートスラブ16から引き剥がし易い構造となっている。
このように、荷出し開口用型枠1では、型枠本体2がコンクリートスラブ16から引き剥がし易いため、コンクリートスラブ16の形成後に型枠本体2を撤去する作業を短時間で効率良く行うことができる。
なお、コンクリートスラブ16から取り出した型枠本体2の再利用は困難であるが、荷出し開口用型枠1の型枠本体2の材料費は、従来の金属製の型枠本体に比べると格段に安い。したがって、荷出し開口用型枠1によれば、コンクリートスラブ16の一部に荷出し開口17(図10(b)を参照)を安価に形成することが可能である。
さらに、桟木5cが側板2b、2bではなく、側板2c、2cに架け渡された構造であっても良い。そして、桟木5cの本数は2本に限らず、適宜変更可能である。また、桟木5aと桟木5bは同じ長さであっても良い。
Claims (12)
- コンクリートスラブに荷出し開口を形成する際に、スラブ形成用型枠の一部を構成する平板材の上に設置される荷出し開口用型枠であって、
4枚の側板と矩形状の第1の底板からなり、上部が開口した箱状をなす合成樹脂製の型枠本体と、
平面視矩形状をなすように配置された4本の第1の棒材と、
前記側板の上端側の前記型枠本体の四隅にそれぞれ1個ずつ固設されて前記第1の棒材の両端をそれぞれ保持する4個の受け具と、
4個の前記受け具に1個ずつそれぞれ取り付けられた4個の支柱保持手段と、
前記第1の底板に直交するように前記型枠本体の外側に配置され、前記支柱保持手段によって4個の前記受け具に1本ずつそれぞれ固定された4本の支柱と、を備え、
前記支柱は前記平板材の上に前記型枠本体が設置された状態で先端部が前記平板材に接触可能な長さを有していることを特徴とする荷出し開口用型枠。 - 前記支柱は外周面に雄ネジが設けられ、
前記支柱保持手段は、側面視コの字をなして前記受け具が内部に配置される支柱固定具と、一対のナットと、からなり、
前記支柱固定具は、
前記支柱が挿通される第1の貫通孔を有する上板と、
この上板に平行であって前記第1の貫通孔に挿通された前記支柱を連通可能に第2の貫通孔が設けられた下板と、
前記上板と前記下板の基端側を繋ぐ接続板と、を備え、
一対の前記ナットは、前記支柱の前記雄ネジに螺合した状態で前記支柱固定具の前記上板と前記下板を間に挟むようにその上下にそれぞれ設置されることを特徴とする請求項1に記載の荷出し開口用型枠。 - 前記支柱固定具の前記上板及び前記下板は、前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔が設けられる代わりに、前記支柱を内部に配置可能な第1の切り欠き及び第2の切り欠きが前記基端側から先端側へ向かってそれぞれ形成されるとともに、前記接続板に対し、前記第1の切り欠きと前記第2の切り欠きを繋ぎ、前記支柱を内部に配置可能な第3の切り欠きが前記上板及び前記下板と直交する方向へ形成されていることを特徴とする請求項2に記載の荷出し開口用型枠。
- 前記受け具は、
平面視L字状をなす第2の底板と、
側面視L字状をなし、前記第2の底板の外縁部及び内縁部からそれぞれ同じ方向へ垂直に延設された外板及び内板と、からなり、
前記第2の底板と前記外板と前記内板によって、前記第1の棒材の端部が内部に配置される凹溝が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の荷出し開口用型枠。 - 前記型枠本体は、平面視矩形状をなして4枚の前記側板の前記上端から前記第1の底板と平行に外方へ延設された枠体板を備え、
前記受け具は前記枠体板に固設されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の荷出し開口用型枠。 - 前記型枠本体は、平面視長方形状をなして前記枠体板の外縁部から垂直に上方へ延設された4枚の外側板を備えていることを特徴とする請求項5に記載の荷出し開口用型枠。
- 前記型枠本体の前記側板は、平面視した場合に前記上端側の辺が下端側の辺よりも短い台形をなしていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の荷出し開口用型枠。
- 前記型枠本体の少なくとも一部に対し、断面形状が波型をなす凹凸部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の荷出し開口用型枠。
- 前記型枠本体が透明な部材によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の荷出し開口用型枠。
- 互いに平行をなすように配置された2本の前記第1の棒材に対し、直交するように架け渡された第2の棒材を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の荷出し開口用型枠。
- 前記型枠本体は一対の分割体からなり、
この分割体は、前記第1の底板及び互いに平行をなす一対の前記側板に対して直交する平面によって、前記型枠本体が前記第1の底板の中央部分において切断された形状をなしていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の荷出し開口用型枠。 - 請求項1に記載の荷出し開口用型枠を用いて前記コンクリートスラブに前記荷出し開口を形成する方法であって、
前記スラブ形成用型枠の一部を構成する前記平板材の上に前記型枠本体を固設する工程と、
4個の前記受け具を前記側板の前記上端側の前記型枠本体の四隅に1個ずつ固設する工程と、
4本の前記第1の棒材をそれらの両端が前記受け具によってそれぞれ保持されるように前記型枠本体に固設する工程と、
前記型枠本体に固設された4個の前記受け具に対して4個の支柱保持手段を1個ずつ取り付ける工程と、
前記平板材に直交し、かつ、先端部が前記平板材に接触するように前記型枠本体の外側に4本の支柱を配置する工程と、
前記支柱保持手段を介して4本の前記支柱を前記受け具に1本ずつ固定する工程と、を備えていることを特徴とする荷出し開口の形成方法。
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