JP4395434B2 - 現場打ち中空コンクリートスラブ構造とその施工方法 - Google Patents

現場打ち中空コンクリートスラブ構造とその施工方法 Download PDF

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Description

本発明は、現場打ち中空コンクリートスラブ構造とその施工方法に関する。
現場打ち中空コンクリートスラブ構造とは、施工現場で水平方向に脱型型枠を建て込み、その上に下端筋と軽量な埋込材と上端筋などを配置した後、現場打ちコンクリートを打設して構築される中空コンクリートスラブ構造であり、現場打ちコンクリートが硬化した後に脱型型枠を取り外され、必要な場合には、露出したコンクリート面に適宜の天井材等が取り付けられてコンクリートスラブとされる。重機を使用することなく、中空コンクリートスラブ構造を現場施工することができるので、この施工方法は、プレキャストコンクリート板(PC板)に埋込材と必要な配筋を取り付けた中空コンクリート基板を工場で製造し、それを施工現場に持ち込んで躯体のスパン間に設置した後、現場打ちコンクリートを打設するようにした中空コンクリートスラブ構造の施工方法と共に、集合住宅などを建てるときに広く採用されている。
ところで、現場打ち中空コンクリートスラブ構造の施工では、現場打ちコンクリートの打設により軽量体である埋込材に浮力が生じる。その浮力が上端筋に作用すると上端筋が不安定になり、極端な場合には、上端筋の膨れや位置ずれが生じることがある。また、埋込材が浮き上がる過程で埋込材に不用意な傾斜や回転が生じることもある。その不都合を回避するために、特許文献1には、基板(脱型型枠)に一端を固定した支承脚の他端側で埋込材を押さえ付けて上端筋に衝接しないようにし、埋込材の自由移動を拘束すると同時に、埋込材の浮力が直接上端筋に作用しないようにした施工構造が記載されている。
また、特許文献2、特許文献3には、コンクリート打ち込み時に埋込材に作用する浮力を抑制するのではなく、埋込材を貫通するようにして配置した所定のガイド材に沿って、横置きされた円柱状の埋込材が規則的に浮き上がるのを許容すると共に、ガイド材の上端にストッパーを設けて、上端筋に衝接しない位置で埋込材の所定位置での位置決めを行うようにしたものが記載されている。
実公昭61−43862号公報 特開2000−234409号公報 特開2000−192591号公報
特許文献1に記載の方法は、多数ある埋込材に対応して、脱型型枠に埋込材固定具としての支承脚を取り付ける作業が必要であり、この作業は下階での作業を必要とすることもあって、やや施工が煩雑化する。特許文献2あるいは特許文献3に記載の方法は、いずれも、埋込材の軸線に沿って形成した複数個の貫通孔に、固定具として機能するガイド材を上から差し込み、差し込んだガイド材の下端側を脱型型枠側で保持するようにしており、特許文献1に記載のものと比較して施工現場での工程数を少なくすることができる。
しかし、特許文献2に記載のものでは、ガイド材として下端に拡開部を備えたものを用い、該拡開部が脱型型枠に形成した孔を通過して下面側で拡開することにより、ガイド材が脱型型枠から抜け出るのを防止するようにしており、現場打ちコンクリートが硬化した後に脱型型枠を取り外すときに、ガイド部材の下端拡開部を工具で切断除去することが必要であり、作業の簡素化の点で解決すべき課題を残している。他の形態として、ガイド材の下端にネジを切っておき、下端を脱型型枠の下面に突出させた後に、ナットをネジ係合してストッパーとしての機能を果たさせる例が記載されているが、この場合には、ナットの締め付けのために下階での作業が必要であり、やはり作業が煩雑化する。また、特許文献3の場合には、ガイド材の下端拡開部を係止するのに必要な部材を予め脱型型枠の所定箇所に取り付けておくようにしており、その取り付けに多くの作業量を必要とする。
さらに、特許文献2および特許文献3に記載のものでは、ガイド材の長さで一義的に埋込材の浮き上がり停止位置が定まるようになっており、埋込材の厚み等の設計仕様が異なるときに、その都度、それに合った長さのガイド材を用意することが必要であり、施工の自由度が高いとはいえない。
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、現場打ち中空コンクリートスラブを構築するに際し、現場での作業を容易化でき、かつ、施工の自由度も大きくすることのできる、より改良された現場打ち中空コンクリートスラブ構造とその施工方法を提供することを目的とする。
本発明による現場打ち中空コンクリートスラブ構造は、脱型型枠の上に少なくとも下端筋と埋込材と上端筋とを配置した状態で現場打ちコンクリートが打設され、かつ埋込材は脱型型枠に対して固定具により上方への移動が規制された状態でかつ上端筋に接しない状態で固定されている構造を備えた現場打ち中空コンクリートスラブ構造であって、1つの埋込材に対して少なくとも2つの固定具が使用されており、各固定具は脱型型枠に係脱自在な第1部分と第1部分に着脱自在な第2部分とを少なくとも備えており、少なくとも第2部分は埋込材を貫通していてその先端が埋込材の上面から突出しており、第2部分の前記突出部に装着された止め板により埋込材の上方への移動が規制されていることを特徴とする。
また、本発明は、上記の現場打ち中空コンクリートスラブ構造を施工する方法として、前記固定具として、脱型型枠に係脱自在な第1部分と第1部分に着脱自在な第2部分とを少なくとも備えている固定具を用い、当該固定具を1つの埋込材に対して少なくとも2つ使用すると共に、第1部分と第2部分とを分離した状態で第1部分を脱型型枠の上からの作業によって脱型型枠から抜け出ないよう脱型型枠に取り付ける工程、取り付けた第1部分に第2部分を接続する工程、下端筋を配筋する工程、埋込材をそこに形成した貫通孔に少なくとも第2部分を貫通させながら下端筋の上に置いていく工程、埋込材の上方への移動を規制するために第2部分の埋込材の上面から突出している箇所に止め板を装着する工程、埋込材に接しないようにして上端筋を配筋する工程、現場打ちコンクリートを打設する工程、および、打設したコンクリートが硬化した後に固定具の第1部分を第2部分から分離して取り除く工程、脱型型枠を取り除く工程、とを少なくとも備えることを特徴とする現場打ち中空コンクリートスラブ構造の施工方法、も開示する。
本発明によれば、打設したコンクリートによって生じる埋込材の浮き上がりは、下端側を脱型型枠に固定した固定具の上端側に装着した止め板によって規制されており、埋込材が上端筋に衝接することはないので、上端筋に膨れや位置ずれが生じることはない。また、固定具は、1つの埋込材に対して少なくとも2つ使用されており、埋込材が不用意に傾斜したり回転したりすることもない。
固定具は、脱型型枠に係脱自在な第1部分と第1部分に着脱自在な第2部分とを少なくとも備えており、第1部分は、第2部分から分離した状態で脱型型枠の上からの作業によって脱型型枠から抜け出ないよう取り付けることができるようにされている。第1部分の取り付けに階下での作業を要しないので、作業の簡素化が図られる。第2部分の接続は、第1部分を脱型型枠に固定した後に行えばよく、その作業は容易である。
第2部分を第1部分に着脱自在に接続する態様に特に制限はないが、第1部分の上端側と第2部分の下端側にネジを切っておき、長ナットを用いて両者をネジ係合により接続一体化する形態は、作業の容易性から特に好ましい。第1部分の脱型型枠への固定は、直接長ナットを用いてもよいが、仮止めとしてナットを介してもよい。
本発明では、固定具の第2部分が通過できる貫通孔を備えた埋込材が用いられ、該貫通孔に少なくとも第2部分を貫通させながら、埋込材を下端筋の上に置いた後に、第2部分の埋込材の上面から突出している箇所に止め板を装着するようにしており、ナット等の適宜の留め具を用いて止め板を第2部分の任意の高さ位置に装着することができる。そのために、埋込材の厚さ等が変更した場合でも、同じ第2部分を用いてそれに対して容易にかつ適切に対処することができ、施工の自由度が大きくなる。施工現場に応じて、第2部分のみを長さの異なるものに代えて施工することもで可能であり、この点でも、施工の自由度が大きくなる。
打設したコンクリートが硬化した後に、固定具の第1部分を脱型型枠の下面側からの作業で第2部分から分離し、取り外す。前記のように、両者をネジ係合により接続一体化させている形態では、第1部分を回動させるだけで、第1部分を第2部分から容易に分離することができる。分離した第1部分をコンクリートスラブ側から取り除くことにより、脱型型枠の取り除きも容易となる。脱型型枠を取り除くことにより、構造物としての現場打ち中空コンクリートスラブ構造が得られる。第1部分を除去することにより生じた、コンクリートスラブ側に残っているネジ穴は、パテ等により埋め込んで閉鎖してもよいが、天井材等の仕上げ材を取り付けるときのネジ等を固定するのに、そのまま利用することもできる。
好ましくは、固定具の第1部分として、下端側に抜け止め片を揺動自在に備え、上端側にネジ部を備える形態のものを用いる。そして、前記した「第1部分を脱型型枠の上からの作業によって脱型型枠から抜け出ないよう脱型型枠に取り付ける工程」を、抜け止め片を直立した姿勢として脱型型枠の上からそこに形成した孔に第1部分の下端側を差し込み、抜け止め片を脱型型枠の下面側で水平姿勢とした後に、上端側のネジ部にナットまたは長ナットを締め込んで、第1部分を脱型型枠に固定することにより行う。この作業は階下での作業を必要とせずきわめて容易である。なお、ナットまたは長ナットで締め付けて固定するときに、同時に大きな直径のワッシャを用いることが、固定状態を安定化するのに、推奨される。また、脱型型枠を取り除いた後に露出しているナットまたは長ナットやワッシャの腐食を防ぐために、樹脂製のパッキンを同時に用いるようにしてもよい。このようなパッキンを用いることにより、打設したコンクリートのノロが階下に漏出するのを防止することもできる。
本発明の現場打ち中空コンクリートスラブ構造およびその施工方法において、埋込材として、平面視矩形状であり、裏面に2条以上の幅の狭い凸条を有する形態のものを用いることもできる。その際には、該凸条の下面が下端筋に接した状態で前記止め板を装着する工程を行うようにする。この態様では、現場打ちコンクリートを打設する時点で、埋込材の位置決めは終了しており、打設したコンクリートによって生じる浮力によって埋込材が不安定な動きをすることはない。そのために、設計値どおりの中空コンクリートスラブ構造を一層確実に構築することができる。埋込材と下端筋とは幅の狭い凸条の下面でのみ接しているので、埋込材裏面へのコンクリートの回り込みが不十分となることもない。好ましくは、凸条の方向は、下端筋への安定性を高めるために、下端筋の方向と交叉する方向とされる。さら好ましくは、凸条と凸条の間へのコンクリートの回り込みをよくするために、凸条と凸条の間の凹部と埋込材の上面とを連通する空気抜き孔を設ける。最も好ましくは、コンクリートの回り込みをよくするために、空気孔の大きさとして、バイブレータを差し込める大きさの空気孔を併用して設ける。
本発明は、さらに、発泡樹脂成形品であり平面視矩形状をなす埋込材であって、裏面に2条以上の幅の狭い凸条を有していることを特徴とする埋込材も開示する。発泡樹脂としては、ポリスチレン発泡体が好適に用いられる。
本発明によれば、現場打ち中空コンクリートスラブ構造を構築するに際し、現場での作業を容易化でき、かつ、施工の自由度も大きくすることが可能となる。結果として、施工コストの低減ももたらされる。また、埋込材に生じる浮力が上端筋に作用するのを確実に阻止することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づき説明する。図1は本発明による現場打ち中空コンクリートスラブ構造を示す断面図。図2はそこで用いられる固定具の一例を分解して示しており、図3は図2に示す固定具の第1部分を脱型型枠に取り付けた状態を示している。図4は本発明による現場打ち中空コンクリートスラブ構造の他の例を示す断面図であり、図5はそこで用いる埋込材を示している。また、図6は他の態様の固定具の要部を説明するための図3に相当する図である。
現場打ち中空コンクリートスラブ構造の施工に際し、最初に、コンクリート打ち込み用の脱型型枠10を水平方向に建て込む作業を行う。なお、脱型型枠10には、設計図に従い、埋込材20を固定するための固定具30を脱型型枠10に取り付けるのに用いる孔11が、所要箇所に必要数だけ、予め設けてある。脱型型枠10を建て込んだ後、作業者は、脱型型枠10の上に乗り、脱型型枠10の上から、前記固定具30を脱型型枠10に固定する作業を行う。それと並行して、またはその前後に、適宜のスペーサ12を介して縦横に下端筋13を配筋する。
固定具30は、図2に示すように、第1部分30aと第2部分30bとからなる。この例において、第1部分30aは、上方部にネジ部31を備えた本体32と、該本体32の下方部に形成した凹溝33の下端に枢支点34を持つ抜け止め片35とを有する。抜け止め片35の前記枢支点34よりも少なくとも一方側の長さは、凹溝33の深さよりも短くされており、そのために、抜け止め片35は、図2に仮想線で示す直立した姿勢と、実線で示す水平な姿勢とを選択的に取ることができる。第1部分30aは、後記するように、ワッシャ36、ナット37または長ナット40を用いて、脱型型枠10に固定される。後記するように、施工後に脱型型枠10を取り除いたときに、打設したコンクリート面にワッシャ36が露出していると、腐食の恐れがある。それを回避するために、プラスチック製のパッキン38を露出面側に同時に用いることが望ましい。ここで、ナット37は脱型型枠10への仮止めとして用いるものであるから、省略可能である。
第2部分30bは、少なくとも上下の領域にネジが切られたネジ棒39と、ネジ棒39の下端を第1部分30aに接続するための長ナット40と、埋込材20が上方へ移動するのを抑制するための止め板41と、該止め板41をネジ棒39の所要高さ位置に定着させるためのナット42とを備える。止め板41の中央には孔43が形成されている。
作業に際し、作業者は、固定具30を図2に示すように分解した状態とする。第1部分30aの本体32を手に持ち、その抜け止め片35を仮想線で示す直立した姿勢とし、脱型型枠10に形成した孔11内に差し入れる。抜け止め片35全体が孔11を通過した時点で、本体32を回転あるいは左右に振ることにより、抜け止め片35は傾いた姿勢となる。その状態で本体32を上方に引き上げると、水平状態となった抜け止め片35が脱型型枠10の下面に衝接した状態となり、本体32は孔11から抜け出ることはない。作業者は、パッキン38やワッシャ36を本体32のネジ部31に通し、ナット37または長ナット40をネジ部31に係合して締め付ける。それにより、図3に示すように、第1部分30aは、脱型型枠10に垂直な姿勢を保持して固定される。この第1部分30aの固定を脱型型枠10に形成した孔11のすべてに対して行う。
次に、固定した第1部分30aの本体32のネジ部31に長ナット40をネジ込み、さらに、該ネジ込んだ長ナット40の上方にネジ棒39の下端をネジ込む。それにより、第2部分30bは第1部分30aと一体化する。この作業をすべての第1部分30aに対して行うことにより、脱型型枠10の上の所定位置に、所定本数のネジ棒39が、垂直姿勢で立設した状態となる。
次に、設計図に沿って貫通孔21が形成されている埋込材20を、当該貫通孔21に立設したネジ棒39を貫通させながら、下端筋13の上に配置していく。図1に示すように、ネジ棒39は、その先端が配筋される上端筋14のやや下方位置に達する長さとされ、ネジ棒39の先端は配置した埋込材20の上面から突出した状態となる。その突出した部分に、固定具30の第2部分30bを構成する止め板41を、中央の孔43を通して取り付け、その後、設計図上、埋込材20の上面が位置することとなる高さ位置にナット42をネジ係合する。施工現場の状況に応じて、同じ第1部分30aに対して、長さの異なるネジ棒39を選択的に用いることもできる。
なお、埋込材20は図示の例では矩形体形状であるが、これに限らない。埋込材20の平面視での大きさも任意であり、施工性を考慮して適宜の大きさのものとすればよい。一例として、400mm×400mm×130mのような正方体形状であってもよく、400mm×1200mm×130mのような大きさの直方体形状であってもよい。1つの埋込材20に少なくとも2個の前記貫通孔21が設けられる。埋込材20は例えば発泡スチロールのような発泡樹脂成形体であることが好ましい。
上記のようにして埋込材20を配置した後、適宜の上端筋用スペーサ15を用いて所定高さに上端筋14を縦横に配筋し、次に、現場打ちコンクリートを打設する。コンクリートの打設により、埋込材20に浮力が生じ上方へ移動するが、その上方への移動は、図1に示すように、第2部分30bに装着した止め板41の高さ位置により規制され、埋込材20が上端筋14に衝接することはない。従って、上端筋14に膨れや位置ずれが生じることはない。また、厚さの異なる埋込材を用いる場合でも、ナット42の固定位置を調節することにより、同じ第2部分30aを用いて、それぞれ最適の高さ位置に埋込材をセットすることができるので、施工の自由度も高くなる。施工現場の状況に応じて、同じ第1部分30aに対して、長さの異なるネジ棒39を選択的に用いるようにしてもよい。
打設したコンクリートが硬化した後、脱型型枠10の下面側で抜け止め片35を手であるいは適宜の工具を用いて回動することにより、第1部分30aの本体32はナット37または長ナット40から外れて第2部分30bから容易に分離する。分離した本体32を引き抜き、次に、脱型型枠10を取り外すことにより、現場打ち中空コンクリートスラブ構造が得られる。本体32を除去することにより生じる打設したコンクリート側に残っているネジ穴は、パテ等により埋め込んで閉鎖するか、天井材等の仕上げ材を取り付けるときのネジとして利用する。
図4は他の形態の埋込材20aを示している。この埋込材20aは、全体が平面視矩形状であり、裏面には、複数条の幅の狭い凸条22が、好ましくは側辺に交叉する方向で形成されている。凸条22の寸法は任意であるが、例えば、400mm×1200mm×130mの大きさの埋込材の場合、例えば、高さ20mm程度、幅80mm程度である。このような幅の狭い凸条22を裏面に形成することにより、埋込材20aを下端筋13の上に置いた状態でも、打設したコンクリートは埋込材20aの裏面に回り込むことができ、下端筋13との間に必要なかぶりを確保することができる。必須のものではないが、好ましくは図示のもののように、凸条22と凸条22の間へのコンクリートの回り込みをよくするために、凸条22と凸条22の間の凹部と埋込材20aの上面とを連通する空気抜き孔23が設けられる。さらに、バイブレータを差し込める大きさの径を備えた空気孔34を併用して設け、コンクリートの打設時に、該空気孔34にバイブレータを差し込んで振動を与えることにより、コンクリートの回り込みを一層良好にすることができる。
図5は、図4に示した埋込材20aを用いて施工した本発明による中空コンクリートスラブ構造の断面を示している。ここでは、埋込材20aの凸条22の下面が下端筋13に乗っている状態が、埋込材20aの適正な高さ位置とされており、従って、ネジ棒39の突出した部分に止め板41を装着するときに、中央の孔43にネジ棒39を通して止め板41を埋込材20aの上面に乗った状態とし、その位置でナット42により、止め板41を埋込材20aと共に位置固定してしまうことができる。固定後に、現場打ちコンクリートを打設して浮力が埋込材20aに生じても、埋込材20aは浮き上がることはなく、不要に回転や傾動することもないので、設計値どおりの中空コンクリートスラブ構造を確実に得ることができる。
図6は固定具30の他の例を説明するための、図3に相当する図である。この固定具30は第1部分30aを構成する本体32aの形状において、上記した固定具30と構成が異なっている。すなわち、ここでは、本体32aはほぼL字状をなす丸鋼棒であり、下方に折曲した水平部35aを有し、上端側はネジ部31とされている。さらに、必須ではないが、ネジ部31の下端には切り込み44が入れられていて、衝撃により破断し易いようになっている。図示しないが、第2部分30bの構成は、上記した固定具30のものと同じである。
この固定具を用いる場合にも、脱型型枠10の上にいる作業者は、すべての部材をバラバラにした後、脱型型枠10の上から、本体32aの水平部35aを傾斜状として孔11内に差し込む。その後、本体32aを垂直姿勢に戻すことにより、水平部35aは脱型型枠10の下面に衝接した姿勢となって抜け止め片としての機能を果たす。それにより、本体32は、上から引っ張っても孔11から抜け出ることはない。その状態で、固定具30の場合と同様、作業者は、パッキン38やワッシャ36を本体32aのネジ部31に通し、ナット37をネジ部31に係合して締め付けることにより、第1部分30aは、脱型型枠10に垂直な姿勢を保持して固定される。以下の作業は、固定具30の場合と同様である。
施工後に、第1部分30aを取り外す場合も、脱型型枠10の下面に露出している本体32aの水平部35aを回動することにより、第2部分30bから容易に分離することができる。もし、図示の例のように切り込み44が入れてある場合には、水平部35aに衝撃を与えることによって、少なくとも水平部35aを容易に破断除去することができる。それにより、脱型型枠10の取り外しも可能となる。
本発明による現場打ち中空コンクリートスラブ構造を示す断面図。 本発明による固定具の一例を分解して示す図。 図2に示す固定具の第1部分を脱型型枠に取り付けた状態で示す図。 埋込材の他の例を説明する図であり、図4aは上面図、図4bは背面図である。 図4に示す埋込材を用いた本発明による現場打ち中空コンクリートスラブ構造のを示す断面図。 他の態様の固定具の要部を説明するための図3に相当する図。
符号の説明
10…脱型型枠、11…孔、12…スペーサ、13…下端筋、14…上端筋、15…スペーサ、20、20a…埋込材、21…埋込材に形成した貫通孔、22…埋込材の裏面に形成した凸条、23…空気抜き孔、24…径の大きな空気抜き孔、30…固定具、30a…第1部分、30b…第2部分、31…上方ネジ部31、32…本体、33…凹溝、34…枢支点、35…抜け止め片、37…ナット、39…ネジ棒、40…長ナット、41…埋込材が上方へ移動するのを抑制するための止め板、42…ナット

Claims (6)

  1. 脱型型枠の上に少なくとも下端筋と埋込材と上端筋とを配置した状態で現場打ちコンクリートが打設され、かつ埋込材は脱型型枠に対して固定具により上方への移動が規制された状態でかつ上端筋に接しない状態で固定されている構造を備えた現場打ち中空コンクリートスラブ構造であって、
    1つの埋込材に対して少なくとも2つの固定具が使用されており、各固定具は脱型型枠に係脱自在な第1部分と第1部分に着脱自在な第2部分とを少なくとも備えており、少なくとも第2部分は埋込材を貫通していてその先端が埋込材の上面から突出しており、第2部分の前記突出部に装着された止め板により埋込材の上方への移動が規制されており、固定具の第1部分は、下端側に抜け止め片を揺動自在に備えており、上端側にはネジ部を備えており、第1部分は、脱型型枠の下面側で係止姿勢となった前記抜け止め片と上端側のネジ部に締め込んだナットまたは長ナットとにより、脱型型枠に固定されていることを特徴とする現場打ち中空コンクリートスラブ構造。
  2. 埋込材は平面視矩形状であって裏面に2条以上の幅の狭い凸条を有しており、該凸条の下面が下端筋に接した構造とされていることを特徴とする請求項1に記載の現場打ち中空コンクリートスラブ構造。
  3. 請求項1または2に記載の現場打ち中空コンクリートスラブ構造から固定具の第1部分と脱型型枠とを取り除くことによって構築された現場打ち中空コンクリートスラブ構造。
  4. 脱型型枠の上に少なくとも下端筋と埋込材と上端筋とを配置した状態で現場打ちコンクリートが打設され、かつ埋込材は脱型型枠に対して固定具により上方への移動が規制された状態でかつ上端筋に接しない状態で固定されている構造を備えた現場打ち中空コンクリートスラブ構造の施工方法であって、
    前記固定具として、脱型型枠に係脱自在な第1部分と第1部分に着脱自在な第2部分とを少なくとも備えている固定具を用い、当該固定具を1つの埋込材に対して少なくとも2つ使用すると共に、
    下端筋を配筋する工程、第1部分と第2部分とを分離した状態で第1部分を脱型型枠の上からの作業によって脱型型枠から抜け出ないよう脱型型枠に取り付ける工程、取り付けた第1部分に第2部分を接続する工程、埋込材をそこに形成した貫通孔に少なくとも第2部分を貫通させながら下端筋の上に置いていく工程、埋込材の上方への移動を規制するために第2部分の埋込材の上面から突出している箇所に止め板を装着する工程、埋込材に接しないようにして上端筋を配筋する工程、現場打ちコンクリートを打設する工程、および、打設したコンクリートが硬化した後に固定具の第1部分を第2部分から分離して取り除く工程、脱型型枠を取り除く工程、とを少なくとも備えることを特徴とする現場打ち中空コンクリートスラブ構造の施工方法。
  5. 固定具として、第1部分が下端側に抜け止め片を揺動自在に備え、上端側にネジ部を備える形態のものを用い、抜け止め片を直立した姿勢として脱型型枠の上からそこに形成した孔に第1部分の下端側を差し込み、抜け止め片を水平姿勢とした後に上端側のネジ部にナットまたは長ナットを締め込んで脱型型枠に固定することにより、前記第1部分を脱型型枠の上からの作業によって脱型型枠から抜け出ないよう脱型型枠に取り付ける工程を行うことを特徴とする請求項4に記載の現場打ち中空コンクリートスラブ構造の施工方法。
  6. 平面視矩形状であり裏面に2条以上の幅の狭い凸条を有している埋込材をそこに形成した貫通孔に少なくとも第2部分を貫通させながら該凸条の下面を下端筋の上に置いていく工程を行うことを特徴とする請求項4または5に記載の現場打ち中空コンクリートスラブ構造の施工方法。
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