以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
(実施形態1)
<成形シート10>
図1に、本発明の実施形態1に係る造形物を製造するための成形シート10の断面構成を示す。成形シート10は、予め選択された部分が加熱により膨張することによって造形物が造形される媒体である。成形シート10は、熱膨張性シートとも呼ばれる。
造形物とは、立体的な形状を有する物体であって、2次元状のシートにおいて、シートのうちの一部分がシートの表面から外側への方向に膨張することによって造形される。造形物は、立体物又は立体画像とも言う。造形物の形状は、単純な形状、幾何学形状、文字等の形状一般を含む。
より詳細には、本実施形態の造形物は、3次元空間内の特定の2次元面を基準とし、その2次元面に垂直な方向又は斜めの方向に凹凸を有する物体である。このような造形物は、立体(3次元)画像に含まれるが、所謂3Dプリンタ技術によって製造される立体画像と区別するため、2.5次元(2.5D)画像又は擬似3次元(pseudo-3D)画像と呼ぶ。また、このような造形物を製造する技術は、立体画像印刷技術に含まれるが、所謂3Dプリンタと区別するため、2.5次元印刷技術又は擬似3次元印刷技術と呼ぶ。造形(造型)によって視覚又は触覚を通じて美感又は質感を表現することを「加飾(造飾)」と呼ぶ。
図1に示すように、成形シート10は、基材20と熱膨張層30とを備えている。なお、図1は、造形物が製造される前、すなわちどの部分も膨張していない状態における成形シート10の断面を示している。以下では、熱膨張層30の側を成形シート10の表側と呼び、基材20の側を成形シート10の裏側と呼ぶ。
基材20は、成形シート10の元となるシート状の媒体である。基材20は、熱膨張層30を支持する支持体であって、成形シート10の強度を保持する役割を担う。基材20として、例えば、一般的な印刷用紙を用いることができる。或いは、基材20の材質は、合成紙、キャンバス地等の布、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のプラスチックフィルムであっても良く、特に限定されるものではない。成形シート10の基材20は、第1主面22と、第1主面22と反対側の第2主面24とを有する。
熱膨張層30は、基材20の第1主面22の上に積層されており、所定の膨張温度以上に加熱されることによって膨張する層である。熱膨張層30は、バインダ31と、バインダ31内に分散配置された熱膨張材料32と、を含む。バインダ31は、エチレン酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等の熱可塑性樹脂である。熱膨張材料32は、具体的には、プロパン、ブタン等の低沸点で気化する物質を、熱可塑性樹脂の外殻に内包した、粒径が約5~50μmの熱膨張性のマイクロカプセル(マイクロパウダー)である。熱膨張材料32は、例えば80℃から120℃程度の温度に加熱されると、内包している物質が気化し、その圧力によって発泡及び膨張する。このようにして、熱膨張層30は、吸収した熱量に応じて膨張する。熱膨張材料32は、発泡剤とも呼ぶ。
成形シート10の表側又は裏側の面のうちの膨張させたい部分には、電磁波を熱に変換する熱変換層40が形成される。図2に、一例として、成形シート10の表側の面(すなわち熱膨張層30の表面)と裏側の面(すなわち基材20の第2主面24)とのそれぞれの一部に熱変換層40が形成された状態を示す。熱変換層40は、インクジェットプリンタ等の印刷装置によって成形シート10の表側又は裏側の面に印刷されることにより、形成される。
熱変換層40は、電磁波を熱に変換し、変換された熱を放出する。これにより、熱膨張層30に含まれる熱膨張材料32は、所定の温度に加熱される。熱膨張材料32が加熱される温度は、成形シート10の表側又は裏側の面に形成される熱変換層40の濃淡と、熱変換層40に照射される電磁波の単位面積と単位時間当たりのエネルギー量とにより制御できる。熱変換層40は、成形シート10の他の部分に比べて速やかに、電磁波を熱に変換するので、熱変換層40の近傍の領域(熱膨張層30)が選択的に加熱される。
熱変換層40の材料は、カーボンブラック、六ホウ化金属化合物、酸化タングステン系化合物等である。例えば、カーボンブラックは、可視光、赤外光等を吸収して熱に変換する。また、六ホウ化金属化合物と酸化タングステン系化合物は、近赤外光を吸収して熱に変換する。六ホウ化金属化合物と酸化タングステン系化合物の中では、近赤外光領域で吸収率が高く、かつ可視光領域の透過率が高いことから、六ホウ化ランタン(LaB6)とセシウム酸化タングステンが好ましい。
熱変換層40が電磁波を熱に変換することにより熱膨張層30が所定の膨張温度まで加熱されると、熱膨張層30に含まれる熱膨張材料32のうちの、熱変換層40が形成された領域に対応する位置に存在する熱膨張材料32が膨張する。その結果、図3に示すように、成形シート10のうちの熱変換層40が形成された部分が表側に向けて盛り上がり、隆起(バンプ)が形成される。このような熱膨張層30の隆起(バンプ)によって凸若しくは凹凸形状を造ることにより、例えば図4に示すような造形物50が製造される。
<造形物50>
造形物50は、シート状の造形物であり、表面に凹凸52、すなわち凸部54と凹部56とを有する。造形物50は、例えば、加飾シート、壁紙等として使用される。
造形物50は、図4に示すように、基材20と、基材20の第1主面22の上に積層され、基材20と反対側に凹凸52を有する熱膨張層30と、基材20の表側又は裏側の面上に凹凸52に対応したパターンで形成された熱変換層40と、を含んでいる。成形シート10における膨張させる領域及び膨張高さを組み合わせることにより、このような造形物50を含む多彩な造形物を製造することができる。
<造形装置100>
次に、造形装置100について説明する。造形装置100は、成形シート10に電磁波を照射することにより、成形シート10を膨張させて、例えば図4に示したような造形物50を製造する。成形シート10は、造形装置100において電磁波が照射される際には、図2に示したように、基材20と熱膨張層30と熱変換層40とを備える。
図5に示すように、造形装置100は、搬送部120と、テンション部130と、照射部150と、制御ユニット180と、を備える。これら各部は、筐体105内に設けられている。筐体105は、成形シート10が搬入される搬入口105aと、製造された造形物50が搬出される搬出口105bと、を有する。
なお、理解を容易にするため、以下では、図5における造形装置100の長手右方向(紙面の右方向)を+X方向、上方向(紙面の上方向)を+Z方向、+X方向と+Z方向に垂直な方向(紙面の手前方向)を+Y方向として説明する。
<搬送部120>
搬送部120は、筐体105の搬入口105aから搬入された成形シート10を搬送路Rに沿って搬送する。搬送路Rは、筐体105の搬入口105aから搬出口105bへ導く経路である。搬送路Rは、凸状に湾曲した経路であって、照射部150により電磁波が照射される位置を頂部Tとして、+Z方向に突出して湾曲している。
より詳細には、搬送部120は、ガイド部122と、従動ローラ124aと、駆動ローラ124bと、テンションローラ124cと、搬送ベルト126と、搬入ローラ128aと、搬出ローラ128bと、を備える。
ガイド部122は、搬送ベルト126の往路部分と復路部分との間に配置されている。ガイド部122は、搬送路Rと同様に、+Z方向に突出して湾曲した形状をしている。ガイド部122は、搬送ベルト126の往路部分を、凸状に湾曲した搬送路Rに沿って湾曲した状態に-Z側から支持する。また、ガイド部122は、搬送ベルト126との間で熱伝導を行う。
従動ローラ124aは、筐体105の搬入口105a側(+X側)に配置されており、搬送ベルト126が巻き掛けられている。従動ローラ124aの回転軸は、成形シート10の搬送方向(-X方向)と搬送路Rの突出方向(+Z方向)とに直交する方向(Y方向)に配置され、従動ローラ124aは筐体105の側板に軸支される。
駆動ローラ124bは、筐体105の搬出口105b側(-X側)に配置されており、搬送ベルト126が巻き掛けられている。駆動ローラ124bの回転軸は、従動ローラ124aの回転軸と同様にY方向に配置され、駆動ローラ124bは筐体105の側板に軸支される。駆動ローラ124bは、図示しないモータの回転により、+Y方向から見て反時計回りに回転して、搬送ベルト126を走行させる。
テンションローラ124cは、搬送ベルト126の復路部分の下側(-Z側)に配置されており、搬送ベルト126の復路部分を-Z側から押圧して、搬送ベルト126にテンションを掛ける。テンションローラ124cの回転軸は、従動ローラ124aの回転軸と同様にY方向に配置され、テンションローラ124cは筐体105の側板に軸支される。
搬送ベルト126は、従動ローラ124aと駆動ローラ124bとに巻き掛けられた無端ベルトである。搬送ベルト126の往路部分は、ガイド部122に支持されることにより、凸状に湾曲した搬送路Rに沿って凸状に湾曲している。搬送ベルト126は、駆動ローラ124bの回転により走行する。具体的には、搬送ベルト126の往路部分は、搬送路Rに沿って-X方向に走行し、搬送ベルト126の復路部分は+X方向に走行する。
搬送ベルト126は、搬送面126aを有し、成形シート10を搬送面126aに載せて搬送する。具体的には、成形シート10は、その表側の面に熱変換層40が形成されている場合、裏側の面を搬送ベルト126の搬送面126aに向けて、すなわち成形シート10の表側の面を上方に向けて、搬送ベルト126に載せられる。一方で、成形シート10は、その裏側の面に熱変換層40が形成されている場合、表側の面を搬送ベルト126の搬送面126aに向けて、すなわち成形シート10の裏側の面を上方に向けて、搬送ベルト126に載せられる。
搬送ベルト126は、駆動ローラ124bの回転により走行することで、搬送ベルト126に載せられた成形シート10を、筐体105の搬入口105aから搬送路Rに沿って-X方向に搬送する。そして、搬送ベルト126は、照射部150により成形シート10に電磁波が照射されることで製造された造形物50を、筐体105の搬出口105bに搬送する。
このように、搬送ベルト126は、照射部150による電磁波の照射位置に対して、搬入口105a側(+X側)から搬出口105b側(-X側)にかけて架け渡されている。これにより、搬送ベルト126は、成形シート10を搬入口105aから照射部150による電磁波の照射位置に搬送し、電磁波の照射により製造された造形物50を搬出口105bに搬送する。
搬入ローラ128aは、従動ローラ124aと同様に、筐体105の側板に軸支される。搬入ローラ128aは、搬入口105aから挿入された成形シート10を搬送ベルト126との間で挟み込み、成形シート10を筐体105内に搬入する。
搬出ローラ128bは、駆動ローラ124bと同様に、筐体105の側板に軸支される。搬出ローラ128bは、成形シート10から製造された造形物50を搬送ベルト126との間で挟み込み、搬出口105bから搬出する。
<テンション部130>
テンション部130は、搬送部120により搬送されている成形シート10に、凸状に湾曲した搬送路Rに沿ってテンションを掛ける。テンション部130は、図6に示すように、一対の押さえベルト131、132を備える。押さえベルト131、132のそれぞれは、成形シート10の搬送ベルト126の幅方向の端部(+Y方向の端部と-Y方向の端部)のそれぞれを搬送ベルト126に押圧して、成形シート10に搬送路Rに沿ったテンションを掛ける。
より詳細には、テンション部130は、押さえベルト131が巻き掛けられる第1プーリ133a及び第2プーリ133bと、押さえベルト132が巻き掛けられる第3プーリ134a及び第4プーリ134bと、を備える。また、テンション部130は、押さえベルト131の走行方向を変える2つのベンドプーリ136,137と、押さえベルト132の走行方向を変える2つのベンドプーリ138,139と、を備える。
第1プーリ133aと第2プーリ133bは、搬送ベルト126の頂部Tを挟んで+X側と-X側のそれぞれに配置されている。第1プーリ133aの外周の下端と第2プーリ133bの外周の下端は、搬送ベルト126の往路部分の頂部Tよりも-Z側に位置している。したがって、押さえベルト131の往路部分は、搬送ベルト126により搬送されている成形シート10の+Y側の端部を搬送ベルト126に押圧する。
第3プーリ134aと第4プーリ134bは、搬送ベルト126の頂部Tを挟んで+X側と-X側のそれぞれに配置されている。第3プーリ134aの外周の下端と第4プーリ134bの外周の下端は、搬送ベルト126の往路部分の頂部Tよりも-Z側に位置している。したがって、押さえベルト132の往路部分は、搬送ベルト126により搬送されている成形シート10の-Y側の端部を搬送ベルト126に押圧する。
このように、一対の押さえベルト131、132のそれぞれが、成形シート10の+Y側の端部と-Y側の端部を搬送ベルト126に押圧する。そのため、成形シート10の+Y側の端部と-Y側の端部とに、搬送路Rに沿ったテンションが掛けられる。これにより、搬送部120により搬送されている成形シート10の反り、撓み等を抑えることができる。
<照射部150>
照射部150は、搬送ベルト126に載せられて搬送されている成形シート10に電磁波を照射する。照射部150は、図5に示すように、搬送ベルト126の頂部Tの上方(+Z側)に配置されている。照射部150は、テンション部130によりテンションをかけられた状態で搬送ベルト126により搬送されている成形シート10の上側の面に向けて、上方から電磁波を照射する。
熱変換層40が形成された成形シート10に照射部150から電磁波が照射されると、熱変換層40は、電磁波を熱に変換し、熱膨張層30に含まれる熱膨張材料32を所定の温度以上に加熱する。熱変換層40が造形物50の凹凸52に対応したパターンで成形シート10の表側又は裏側の面に形成されているため、熱膨張層30の凸部54に対応する部分が所定の温度以上に加熱され、熱膨張材料32が膨張される。その結果、熱膨張層30が膨張して、凸部54(すなわち凹凸52)が熱膨張層30に形成される。
より詳細には、図7に示すように、照射部150は、ランプ151と、リフレクタ152と、ファン153と、カバー154と、を備える。
ランプ151は、電磁波を発する。ランプ151は、例えばハロゲンランプであって、近赤外領域(波長750~1400nm)、可視光領域(波長380~750nm)、又は、中赤外領域(波長1400~4000nm)の電磁波を発する。ランプ151は、搬送ベルト126に載せられて搬送されている成形シート10に対して幅方向(Y方向)に均等に電磁波を照射できるように、搬送ベルト126の幅方向(Y方向)に直管状に形成されている。
リフレクタ152は、ランプ151から発せられた電磁波を、搬送ベルト126に載せられて搬送されている成形シート10に向けて反射する。リフレクタ152は、ランプ151の上方を覆うように配置されており、ランプ151から上方に向けて発せられた電磁波を下方に向けて反射する。ランプ151から発せられ、リフレクタ152の反射面で反射した電磁波は、図7において矢印で示す経路を進み、搬送ベルト126に載せられて搬送されている成形シート10上で集束する。このように、ランプ151から発せられた電磁波は、リフレクタ152により反射されることで、成形シート10に対して集束して照射される。
ファン153は、カバー154内に空気を送り込み、ランプ151とリフレクタ152とを冷却する。カバー154は、ランプ151とリフレクタ152とファン153とを収納する。
<加熱部(ヒータ161~164)>
造形装置100は、図5から図7に示すように、4つのヒータ161~164を更に備える。各ヒータ161~164は、一例として、電熱線ヒータであって、電熱線としてのニクロム線とニクロム線を覆うカバーとを有しており、電流がニクロム線を流れる際に生じる熱を周囲に放出する。各ヒータ161~164は、搬送ベルト126を加熱する加熱部として機能する。
各ヒータ161~164は、搬送ベルト126を、成形シート10の膨張温度よりも低い温度に加熱する。ここで、膨張温度は、熱膨張層30に含まれる熱膨張材料32が膨張を開始する温度であって、上述したように例えば80℃から120℃程度の温度である。
このように、ヒータ161~164は、照射部150による電磁波の照射位置に対して上流側から下流側まで架け渡された搬送ベルト126を加熱する。これにより、成形シート10が電磁波を照射されて加熱及び膨張する際における温度環境を、造形装置100の周囲が暖かいか寒いか、つまり温度が高いか低いかに依らずに、一定の条件に保つことができる。言い換えると、ヒータ161~164は、搬送ベルト126を膨張温度よりも低い温度に加熱することにより、搬送ベルト126とそこを搬送される成形シート10及び造形物50との温度を調節する役割を担う。
より詳細には、造形装置100は、搬送ベルト126の搬送方向における照射部150よりも上流側に、第1ヒータ161と第2ヒータ162とを備える。更に、造形装置100は、搬送ベルト126の搬送方向における照射部150よりも下流側に、第3ヒータ163と第4ヒータ164とを有する。
ここで、搬送ベルト126は成形シート10を筐体105の搬入口105a側(+X側)から搬出口105b側(-X側)に搬送するため、搬送ベルト126の搬送方向は、+X側から-X側への方向、すなわち-X方向に相当する。すなわち、搬送ベルト126の搬送方向における照射部150よりも上流側は、造形装置100において照射部150が設置されている位置よりも+X側に相当する。同様に、搬送ベルト126の搬送方向における照射部150よりも下流側は、造形装置100において照射部150が設置されている位置よりも-X側に相当する。以下、4つのヒータ161~164のそれぞれについて説明する。
第1ヒータ161は、搬送ベルト126の搬送方向における照射部150よりも上流側において、搬送ベルト126の搬送面126aの下方に配置されている。具体的には、第1ヒータ161は、筐体105の搬入口105a側(+X側)において、搬送ベルト126の往路部分と復路部分との間に設けられている。
より詳細には、第1ヒータ161は、搬送ベルト126の往路部分を下側(-Z側)から支持するガイド部122の下側の面に取り付けられて固定されている。第1ヒータ161が熱を発すると、ガイド部122が加熱され、その熱が搬送ベルト126の往路部分に伝達する。これにより、搬送ベルト126が加熱される。ガイド部122の材料は、金属や合金のような比較的熱伝導率の高い材料であることが好ましく、特にステンレス板が好ましい。
第2ヒータ162は、搬送ベルト126の搬送方向における照射部150よりも上流側において、搬送ベルト126の搬送面126aの上方に配置されている。具体的には、第2ヒータ162は、図6に示すように、筐体105の搬入口105a側(+X側)において、搬送ベルト126の幅方向(Y方向)の両端に設けられた押さえベルト131、132の間に設けられている。
より詳細には、第2ヒータ162は、図示しない板金に取り付けられており、搬送ベルト126の搬送面126aから上方に間隔を空けた位置に固定されている。第2ヒータ162が熱を発すると、その放射熱により搬送ベルト126が加熱される。
第1ヒータ161と第2ヒータ162は、照射部150よりも上流側に設けられているため、搬送ベルト126における、照射部150による電磁波の照射位置よりも上流側の領域に熱を加える。そのため、成形シート10は、搬送ベルト126に載せられて搬入口105aから電磁波の照射位置に搬送されるまでに、熱膨張層30の膨張温度よりも低い温度に予熱される。これにより、照射部150により電磁波が照射された際に、成形シート10の温度が所定の膨張温度以上に達する時間を短縮することができるため、成形シート10を膨張させ易くなる。
第3ヒータ163は、搬送ベルト126の搬送方向における照射部150よりも下流側において、搬送ベルト126の搬送面126aの下方に配置されている。具体的には、第3ヒータ163は、筐体105の搬出口105b側(-X側)において、搬送ベルト126の往路部分と復路部分との間に設けられている。
より詳細には、第3ヒータ163は、搬送ベルト126の往路部分を下側(-Z側)から支持するガイド部122の下側の面に取り付けられて固定されている。第1ヒータ161が熱を発すると、ガイド部122が加熱され、その熱が搬送ベルト126の往路部分に伝達する。これにより、搬送ベルト126が加熱される。
第4ヒータ164は、搬送ベルト126の搬送方向における照射部150よりも下流側において、搬送ベルト126の搬送面126aの上方に配置されている。具体的には、第4ヒータ164は、図6に示すように、筐体105の搬出口105b側(-側)において、搬送ベルト126の幅方向(Y方向)の両端に設けられた押さえベルト131、132の間に設けられている。
より詳細には、第4ヒータ164は、図示しない板金に取り付けられており、搬送ベルト126の搬送面126aから上方に間隔を空けた位置に固定されている。第4ヒータ164が熱を発すると、その放射熱により搬送ベルト126が加熱される。
第3ヒータ163と第4ヒータ164は、照射部150よりも下流側に設けられているため、搬送ベルト126における、照射部150による電磁波の照射位置よりも下流側の領域に熱を加える。そのため、電磁波の照射により成形シート10が加熱及び膨張して製造された造形物50は、電磁波の照射位置から搬出口105bまで、一定の温度に保たれて搬送される。これにより、製造直後の造形物50と周囲の環境との間に急激に温度差が生じることを防止できるため、結露の発生を抑制することができる。
<制御ユニット180>
図5に戻って、制御ユニット180は、上述した搬送部120と照射部150とヒータ161~164とを含む造形装置100の各部の動作を制御する。制御ユニット180は、図8に示すように、制御部181と、記憶部182と、入力受付部183と、表示部184と、入出力インタフェース185と、を備える。これら各部は、信号を伝達するためのバスによって接続されている。
制御部181は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。CPUは、例えばマイクロプロセッサ等であって、様々な処理や演算を実行する中央演算処理部である。制御部181において、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、造形装置100全体の動作を制御する。制御部181は、入出力インタフェース185を介して搬送部120、照射部150及びヒータ161~164の各部に制御指令を送信し、各部を稼働させる。
記憶部182は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリである。記憶部182は、制御部181によって実行されるプログラム及びデータを記憶している。
入力受付部183は、各種のボタン、タッチパッド、タッチパネル等の入力装置を備えており、ユーザからの操作入力(ユーザ操作)を受け付ける。例えば、ユーザは、入力受付部183を操作することによって、製造する造形物50の種類、そのために使用する成形シート10の種類等を設定することができる。
表示部184は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を備えており、制御部181による制御のもとで様々な画像を表示する。例えば、表示部184は、成形シート10に造形物50を製造するための設定画面を表示する。
入出力インタフェース185は、制御部181と造形装置100の各部との間で送受信される信号を入出力するインタフェースである。
<造形物の製造処理>
次に、図9に示すフローチャートを参照して、造形物50の製造処理の流れについて説明する。
図9に示す造形物50の製造処理を開始すると、まず、成形シート10を準備する(ステップS10)。具体的に説明すると、基材20の第1主面22にバインダ31と熱膨張材料32とを混合した塗布液をスクリーン印刷し、印刷された塗布液を乾燥する。これにより、図1に示したように、基材20の第1主面22の上に熱膨張層30を積層された成形シート10が製造される。
成形シート10を準備すると、次に、準備された成形シート10に熱変換層40を印刷する(ステップS20)。具体的に説明すると、成形シート10の表側の面(すなわち熱膨張層20の表面)と裏側の面(すなわち基材20の第2主面24)との少なくとも一方の面上に、印刷装置によって、熱変換材料を含むインクを凹凸52に応じた濃淡パターンで印刷する。印刷装置は、例えば、インクジェットプリンタである。
成形シート10に熱変換層40を印刷すると、加熱部として機能するヒータ161~164により搬送ベルト126を加熱する(ステップS30)。具体的に説明すると、ヒータ161~164は、制御部181の制御のもとで稼働し、搬送ベルト126を成形シート10の膨張温度よりも低い温度に加熱する。
搬送ベルト126を加熱すると、加熱されている搬送ベルト126に成形シート10を載せて搬送する(ステップS40)。具体的に説明すると、ユーザは、熱変換層40が印刷された成形シート10を、造形装置100の搬入口105aから挿入する。熱変換層40が成形シート10の表側の面に印刷された場合、ユーザは、成形シート10を、その表側の面を上方に向けて搬入口105aから挿入する。一方で、熱変換層40が成形シート10の裏側の面に印刷された場合、ユーザは、成形シート10を、その裏側の面を上方に向けて搬入口105aから挿入する。搬送部120は、制御部181の制御のもとで稼働し、駆動ローラ124bを回転させて、ヒータ161~164により加熱されている搬送ベルト126を走行させる。これにより、搬送ベルト126は、挿入された成形シート10を搬送路Rに沿って搬送する。
成形シート10を搬送すると、搬送されている成形シート10に電磁波を照射する(ステップS50)。具体的に説明すると、照射部150は、制御部181の制御のもとで稼働し、搬送部120により搬送されている成形シート10に向けて電磁波を照射する。これにより、成形シート10に印刷された熱変換層40は、電磁波を熱に変換することにより発熱する。熱変換層40から発せられた熱により熱膨張層30に含まれる熱膨張材料32が膨張を開始する温度にまで熱せられると、熱膨張層30は膨張を開始し、凹凸52が形成される。その結果、造形物50が製造される。
以上により、成形シート10から造形物50が製造される。製造された造形物50は、搬送部120により搬送路Rに沿って搬送され、造形装置100の搬出口105bから搬出される。このとき、製造される造形物50の装飾性を高めるために、必要に応じて、成形シート10の表側又は裏側の面に、印刷装置によりカラー画像を印刷しても良い。
なお、成形シート10の表側の面と裏側の面との両方に熱変換層40を印刷して成形シート10を膨張させる場合、表側の面と裏側の面とのそれぞれに熱変換層40を印刷して、ステップS20~S50の処理を繰り返す。
以上説明したように、実施形態1に係る造形装置100は、電磁波を照射されることにより膨張する成形シート10を載せて搬送する搬送ベルト126と、搬送ベルト126に載せられて搬送されている成形シート10に電磁波を照射する照射部150と、搬送ベルト126を加熱するヒータ161~164と、を備える。このように、実施形態1に係る造形装置100は、成形シート10を載せて搬送する搬送ベルト126をヒータ161~164により加熱する。そのため、照射部150により成形シート10に電磁波が照射される際に、造形装置100の周囲の環境からの影響を低減することができ、安定した温度環境で成形シート10を膨張させることができる。その結果として、成形シート10に凹凸52を高精度に形成することができるため、所望の造形物50を高精度に製造することにつながる。
特に、実施形態1に係る造形装置100は、搬送ベルト126の搬送方向における照射部150よりも上流側に第1ヒータ161と第2ヒータ162とを備える。これにより、電磁波の照射前に成形シート10が予熱されるため、照射部150により電磁波が照射された際に、成形シート10の温度が所定の膨張温度以上に達する時間が短縮される。そのため、成形シート10を膨張させ易くなる。
更に、実施形態1に係る造形装置100は、搬送ベルト126の搬送方向における照射部150よりも下流側に第3ヒータ163と第4ヒータ164とを備える。これにより、搬送ベルト126のうちの、成形シート10から製造された造形物50が搬送される領域が加熱されるため、成形シート10が所定の膨張温度以上に加熱されることにより製造された造形物50が急激に冷却されない。そのため、造形物50に結露が生じることを抑制することができる。
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。実施形態1と同様の構成及び機能については、適宜説明を省略する。
上記実施形態1に係る造形装置100は、搬送ベルト126を加熱するヒータ161~164を備えていた。しかしながら、ヒータ161~164による加熱だけでは、搬送ベルト126の温度が上昇し続ける等のように、搬送ベルト126の温度が安定しないことがある。搬送ベルト126の温度が安定しないと、成形シート10が膨張しすぎる、凸部と凹部の境界が曖昧になる等、適切にバンプを行うことができないおそれがある。そこで、実施形態2では、ヒータ161~164により加熱されている搬送ベルト126の温度が適切な温度条件に保たれるように調整する。
図10に、実施形態2に係る造形装置200の構成を示す。造形装置200は、搬送部120と、テンション部130と、照射部150と、ヒータ161~164と、制御ユニット180と、を備える。これら各部は、実施形態1に係る造形装置100に備えられたものと同様であるため、説明を省略する。
これらの実施形態1と同様の構成に加えて、実施形態2に係る造形装置200は、水を循環させる配管211と、風を送るファン221~223と、を更に備える。なお、図10では、理解を容易にするために配管211の一部のみに符号を付しているが、図10において斜線を付した部分は、全て配管211の断面を表している。
<配管211>
配管211は、配管211の内部を流れる水により、ヒータ161~164により加熱されている搬送ベルト126の温度を調整する第1の温度調整部として機能する。配管211は、図10に示すように、搬送ベルト126の内側を通るように設置されている。ここで、搬送ベルト126の内側とは、搬送ベルト126の往路部分と復路部分との間に相当する。配管211は、搬送ベルト126の内側において冷水又は温水を循環させることにより、搬送ベルト126を冷却又は加熱する。配管211の内部を流れる水は、熱媒体の一例である。
より詳細には、配管211は、搬送ベルト126の搬送面126aの下方であって、ガイド部122の下面に取り付けられている。ここで、ガイド部122は、実施形態1と同様に、搬送ベルト126を支持する部材である。ガイド部122の上面は搬送ベルト126の下面に接触している。配管211がガイド部122に取り付けられているため、配管211に冷水又は温水が流れると、まずガイド部122が冷却又は加熱される。ガイド部122が冷却又は加熱されると、ガイド部122の熱が搬送ベルト126に伝導して、搬送ベルト126が冷却又は加熱される。
図11に、搬送面126aの下方に設置されている配管211の設置例を、上(+Z側)から見た様子を示す。図11では、理解を容易にするために、搬送ベルト126の搬送面126aの位置を破線で示しており、テンション部130、照射部150等のその他の構成要素は省略している。
配管211は、搬送ベルト126の搬送方向における上流側から下流側にかけて、搬送ベルト126の広い範囲に分布するように、ガイド部122の下面に張り巡らされている。ここで、搬送ベルト126の搬送方向は、実施形態1と同様に、+X側から-X側への方向、すなわち-X方向に相当する。
より詳細には、配管211は、搬送ベルト126の内側において、搬送ベルト126の搬送方向における照射部150よりも上流側及び下流側の位置と、搬送ベルト126の搬送面126aを挟んで照射部150と向かい合う位置と、を少なくとも通る。配管211は、第1ヒータ161よりも更に上流側と、第2ヒータ162よりも更に下流側と、第1ヒータ161と第2ヒータ162との間と、のそれぞれにおいて、搬送ベルト126の幅方向(Y方向)に少なくとも1回往復するように設置される。
また、図11に示すように、造形装置200は、配管211に水を供給する水供給部212を更に備える。水供給部212は、搬送ベルト126の側方、下方等、筐体105内や、筐体105外における適宜の位置に設置されている。なお、水供給部212が作動することで発生する水供給部212自体の熱の影響等を防ぐため、水供給部212は筐体105外に設置されることが好ましい。
水供給部212は、水を冷却して冷水を生成する機能と、水を加熱して温水を生成する機能と、を備える。水供給部212は、生成された冷水と温水とを混ぜ合わせることで、所望の温度に調整された水を生成し、温度調整された水を配管211に供給する。配管211は、水供給部212から供給された水を循環させる。なお、水供給部212の種類は空冷式や水冷式等、冷水から温水までの温度調整が可能なものであれば特に限定されない。
水供給部212から配管211に冷水又は温水が供給されると、冷水又は温水は、図11において矢印で示すように、まず搬送方向の上流側に送られ、上流側で搬送ベルト126を繰り返し横断するように流れる。その後、配管211内の冷水又は温水は、上流側から中央部及び下流側に送られ、中央部及び下流側のそれぞれで搬送ベルト126を繰り返し横断するように流れる。このように、配管211内を流れる冷水又は温水が、搬送ベルト126の幅方向に繰り返し往復することで、温度調整の効率を高めることができる。
より詳細には、水供給部212は、制御ユニット180の制御部181の制御のもとで駆動し、ヒータ161~164により加熱されている搬送ベルト126の温度に応じて、配管211に供給する水の温度を調整する。具体的に説明すると、水供給部212は、ヒータ161~164により加熱されている搬送ベルト126の温度が基準温度よりも高くなると、配管211に冷水を供給することにより、搬送ベルト126を冷却する。また、水供給部212は、ヒータ161~164により加熱されている搬送ベルト126の温度が基準温度よりも低くなると、配管211に温水を供給することにより、搬送ベルト126を加熱する。
ここで、基準温度は、成形シート10を適切に膨張させるための搬送ベルト126の温度であって、例えば、55℃等の適宜の温度に予め設定されている。なお、基準温度は、ある1つの温度であることに限らず、例えば52℃から58℃までの範囲のように、ある程度の幅を有するものであっても良い。
ここで、搬送ベルト126の温度は、図示を省略する温度センサにより計測される。温度センサは、一例として、熱電対により温度を検知する接触型のセンサである。温度センサは、搬送ベルト126の温度を計測可能な位置であれば、どの位置に設けられても良い。例えば、温度センサは、搬送ベルト126の搬送面126aの下方における、第1ヒータ161及び第2ヒータ162により加熱される位置に設けられる。なお、温度センサは一箇所に限られず、複数箇所に設けられていても良い。温度センサにより計測された温度の情報は、図示しない通信線を介して制御ユニット180に供給される。制御ユニット180の制御部181は、温度センサにより計測された温度に応じて、水供給部212から配管211に供給される水の温度を調整する。
なお、温度センサは、接触型のセンサであることに限らず、非接触型のセンサであっても良い。温度センサが非接触型のセンサである場合、温度センサは、例えば、赤外線により搬送ベルト126の搬送面126aの温度を検知する赤外線センサである。この場合、温度センサは、搬送面126aの温度を検知できるように、搬送面126aに対して向かい合う位置に設置される。また、温度センサは一箇所ではなく複数箇所に設けられていても良い。
水供給部212は、ヒータ161~164により加熱されている搬送ベルト126の温度がより高い場合、配管211に供給する水の温度をより低下させ、ヒータ161~164により加熱されている搬送ベルト126の温度がより低い場合、配管211に供給する水の温度をより上昇させる。これにより、配管211は、搬送ベルト126の温度がより高い場合、より低温の水を循環させ、搬送ベルト126の温度がより低い場合、より高温の水を循環させる。
具体的には、水供給部212は、図12に示す温度調整テーブルを参照して、配管211に供給する水の温度を決定する。図12に示す温度調整テーブルは、一例として基準温度が55℃である場合における、搬送ベルト126の温度と配管211内の水温との対応関係を示している。温度調整テーブルは、予め設定されて、記憶部182に記憶されている。
例えば、搬送ベルト126の温度が基準温度よりも5℃高い60℃である場合、水供給部212は、配管211に供給する水の温度を5℃低下させて50℃に調整する。搬送ベルト126の温度が基準温度よりも10℃高い65℃である場合、水供給部212は、配管211に供給する水の温度を10℃低下させて45℃に調整する。搬送ベルト126の温度が基準温度よりも15℃高い70℃である場合、水供給部212は、配管211に供給する水の温度を15℃低下させて40℃に調整する。
また、搬送ベルト126の温度が基準温度よりも5℃低い50℃である場合、水供給部212は、配管211に供給する水の温度を5℃上昇させて60℃に調整する。搬送ベルト126の温度が基準温度よりも10℃低い45℃である場合、水供給部212は、配管211に供給する水の温度を10℃上昇させて65℃に調整する。搬送ベルト126の温度が基準温度よりも15℃低い40℃である場合、水供給部212は、配管211に供給する水の温度を15℃上昇させて70℃に調整する。
このように、水供給部212は、搬送ベルト126の温度が上昇又は低下した場合、上昇又は低下した温度に応じた分だけ、配管211に供給する水の温度を低下又は上昇させる。これにより、搬送ベルト126の温度を基準温度に保つことができる。特に、ヒータによって搬送ベルト126を基準温度まで加熱しようとすると温度が上昇しすぎてしまう可能性があるため、搬送ベルト126の温度が基準温度よりも低い場合は、ヒータによって温度調整するよりも、温度調整部の方がより正確な温度調整が可能となる。
<ファン221~223>
図10に戻って、ファン221~223は、搬送ベルト126に向けて送風することにより、ヒータ161~164により加熱されている搬送ベルト126の温度を調整する第2の温度調整部として機能する。ファン221~223は、搬送ベルト126の内側において、ガイド部122の下面を見上げる向きに設置されている。ファン221~223は、搬送ベルト126の方に向けて冷風又は温風を送ることにより、搬送ベルト126を冷却又は加熱する。
第1ファン221は、搬送ベルト126の搬送方向における照射部150よりも上流側に配置されている。より詳細には、第1ファン221は、第1ヒータ161よりも更に上流側において、ガイド部122の下方に配置されている。
第2ファン222は、搬送ベルト126の搬送方向における照射部150よりも下流側に配置されている。より詳細には、第2ファン222は、第2ヒータ162よりも更に下流側において、ガイド部122の下方に配置されている。
第3ファン223は、搬送ベルト126の搬送面126aを挟んで照射部150と向かい合う位置に配置されている。より詳細には、第3ファン223は、搬送路Rにおける頂部Tの下方に配置されている。
ファン221~223は、制御部181の制御のもとで駆動し、ガイド部122の下方から風を送る。これにより、ガイド部122の温度が調整され、更にガイド部122を介して搬送ベルト126の温度が調整される。3つのファン221~223がそれぞれ搬送ベルト126の上流側と下流側と中央部とに設置されていることにより、搬送ベルト126の全体の温度がなるべく一定に保たれるように、搬送ベルト126の温度を調整することができる。
また、図10に示すように、造形装置200は、ファン用ヒータ231~233を更に備える。ファン用ヒータ231~233は、ファン221~223により送風される空気を加熱する。
より詳細には、ファン用ヒータ231~233は、それぞれファン221~223の下方であって、風上側に配置されている。ファン用ヒータ231~233は、制御部181の指令により駆動すると、ファン221~223の風上側の空気を加熱する。この状態でファン221~223が駆動すると、ガイド部122には温風が送られる。これにより、搬送ベルト126が加熱される。一方で、ファン用ヒータ231~233が駆動していない状態でファン221~223が駆動すると、ガイド部122には冷風が送られる。これにより、搬送ベルト126が冷却される。
ファン221~223及びファン用ヒータ231~233は、制御ユニット180の制御部181の制御のもとで駆動し、ヒータ161~164により加熱されている搬送ベルト126の温度に応じて、送風される空気の温度を調整する。
ここで、搬送ベルト126の温度は、配管211により温度調整する場合と同じ温度センサにより計測される。制御部181は、温度センサにより計測された搬送ベルト126の温度に応じて、ファン221~223及びファン用ヒータ231~233を制御する。
具体的に説明すると、ヒータ161~164により加熱されている搬送ベルト126の温度が基準温度よりも高い場合、制御部181は、ファン用ヒータ231~233を駆動させずに、ファン221~223に送風させる。これにより、ファン221~223は、搬送ベルト126に向けて冷風を送り、搬送ベルト126を基準温度まで冷却する。
一方で、ヒータ161~164により加熱されている搬送ベルト126の温度が基準温度よりも低い場合、制御部181は、ファン用ヒータ231~233を駆動させ、且つ、ファン221~223に送風させる。これにより、ファン221~223は、ファン用ヒータ231~233により加熱された空気を搬送ベルト126に向けて送り、搬送ベルト126を基準温度まで加熱する。
より詳細には、搬送ベルト126を冷却する場合、制御部181は、温度センサにより計測された搬送ベルト126の温度に応じてファン221~223の単位時間当たりの回転数を変更して、送風の強さを調整する。具体的に説明すると、ファン221~223は、搬送ベルト126の温度がより高い場合には、単位時間当たりの回転数を増加させて、より強く送風する。また、ファン221~223は、搬送ベルト126の温度がより低い場合には、単位時間当たりの回転数を減少させて、より弱く送風する。
このようにファン221~223の回転数を制御することにより、搬送ベルト126の温度を基準温度に保つことができる。なお、搬送ベルト126の温度と単位時間当たりの回転数との対応関係は、図12に示した温度調整テーブルと同様に予め定められており、記憶部182に記憶されている。なお、加熱及び冷却の場合共に、筐体105内に熱を帯びた空気がこもらないよう、図示しない排気口やファン等を適宜設け、熱を帯びた空気を筐体105外に排出することで、より精度良く温度調整をすることができる。
以上説明したように、実施形態2に係る造形装置200は、ヒータ161~164により加熱されている搬送ベルト126の温度を調整する温度調整部として、水を循環させる配管211と、空気を送るファン221~223と、を備える。これにより、搬送ベルト126の温度が上昇し過ぎる、又は低下し過ぎることを回避することができ、より安定した温度環境で成形シート10を膨張させることができる。その結果として、成形シート10に凹凸52を高精度に形成することができるため、所望の造形物50を高精度に製造することにつながる。
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上記実施形態1,2では、造形装置100,200は、搬送ベルト126を加熱する加熱部として、4つのヒータ161~164を備えていた。しかしながら、造形装置100,200は、加熱部として、搬送ベルト126を加熱する少なくとも1つのヒータを備えていれば良い。このとき、少なくとも1つのヒータが配置される位置は、照射部150に対して上流側と下流側とのどちらであっても良いし、搬送面126aの上方と下方とのどちらであっても良い。少なくとも1つのヒータにより搬送ベルト126のいずれかの位置が加熱されると、加熱された熱は搬送ベルト126の内部を伝達するため、搬送ベルト126が全体的に温められる。そのため、成形シート10に電磁波が照射される際における温度環境を一定の条件に保つことができ、安定した温度環境で成形シート10を膨張させることができる。
上記実施形態2では、造形装置200は、温度調整部として、配管211とファン221~223とを備えていた。しかしながら、造形装置200は、温度調整部として、配管211とファン221~223とのどちらか一方のみを備えていても良い。どちらも備えることで、造形装置200は、搬送ベルト126の温度をより効率的に調整することができる。例えば、大型のヒータなど比較的発熱量の大きいものに対しては、配管211とファン221~223の両方を備えていた方がより効率的に冷却が可能なため好ましい。これに対して、どちらか一方のみによっても、ヒータ161~164により加熱されている搬送ベルト126の温度を調整することができる。小型のヒータなど比較的発熱量の小さいものに対しては、どちらか一方のみを備えていれば充分効率的な温度調節が可能である。
上記実施形態2では、造形装置200は、搬送ベルト126の内側に3つのファン221~223を備えていた。しかしながら、ファン221~223は、搬送ベルト126の内側に設けられることに限らず、搬送ベルト126に風を送ることができれば、どのような位置に設けられていても良い。また、ファンの数は3つでなくても良い。また、ファン用ヒータ231~233は、ファン221~223の風上側に配置されることに限らず、ファン221~223により送風される空気を加熱することが可能であれば、ファン221~223の風下側に配置されても良い。また、配管211は、図11に示したように、搬送ベルト126の幅方向に沿って往復するように配置されることに限らない。例えば、配管211は、搬送ベルト126の搬送方向に沿って往復するように配置されても良い。
上記実施形態2では、配管211は、水を循環させることにより、ヒータ161~164により加熱されている搬送ベルト126の温度を調整した。しかしながら、配管211の内部を流れる熱媒体は、水であることに限らず、水以外の液体又は気体であっても良い。例えば、水供給部212に対応する熱媒体供給部が、熱媒体として、適宜使用温度に応じた水以外の液体又は気体を配管211に供給して循環させることにより、ヒータ161~164により加熱されている搬送ベルト126を加熱又は冷却しても良い。
上記実施形態1,2では、搬送部120は、凸状に湾曲した搬送路Rに沿って成形シート10を搬送した。しかしながら、搬送部120は、凸状に湾曲した搬送路Rに限らず、どのような搬送路に沿って成形シート10を搬送しても良い。
一例として、図13に、実施形態1の変形例に係る造形装置100aの構成を示す。図13に示すように、造形装置100aは、成形シート10を載せて搬送する搬送ベルト126を有し、平坦な搬送路R’に沿って成形シート10を搬送させる搬送部120aと、搬送ベルト126に載せられて搬送されている成形シート10に電磁波を照射する照射部150と、搬送ベルト126を加熱するヒータ161~164と、を備える。造形装置100aにおける搬送路R’は平坦であるため、搬送部120aは、搬送ベルト126を凸状に湾曲させるためのガイド部122とテンションローラ124cとを備えていない。このように照射部150が平坦な搬送路R’に沿って搬送される場合であっても、ヒータ161~164により搬送ベルト126を加熱することにより、安定した温度環境で成形シート10を膨張させることができる。
また、図14に、実施形態2の変形例に係る造形装置200aの構成を示す。造形装置200aは、図13に示した造形装置100aの構成に加えて、配管211と、水供給部212(図示を省略)と、ファン221~223と、ファン用ヒータ231~233と、を備える。これら各部は、実施形態2で説明したものと同様である。実施形態2では搬送路Rが凸状に湾曲していたのに対して、図14では、平坦な搬送路R’に適合するように各部が配置されている。なお、図13及び図14のように搬送路R’が平坦である場合であっても、ガイド部122又はテンションローラ124cが設けられていても良い。このように搬送路R’が平坦である場合であっても、実施形態2と同様に、配管211又はファン221~223を用いて、ヒータ161~164により加熱されている搬送ベルト126の温度が適切な温度条件に保たれるように調整することができる。
また、上記実施形態1,2のように搬送路Rが凸状に湾曲している場合であっても、造形装置100,200は、ガイド部122を備えなくても良い。つまり、ガイド部122が搬送ベルト126の往路内側の全面に接している方が搬送路Rを凸状に湾曲させるのに好ましいが、搬送路Rを凸状に湾曲させることができれば、ガイド部122が設けられていなくても良い。例えば、凸状に湾曲した搬送路Rの頂部Tにおける幅方向(Y軸方向)の両端2箇所等のように、最低限の位置で搬送ベルト126を支持するようにしても良い。そして、凸状に湾曲した搬送路Rに沿って複数のヒータを設置し、複数のヒータが、ガイド部122を介さずに搬送ベルト126の内側を直接に加熱又は冷却しても良い。
また、テンション部130の内側に、押さえベルト131,132を支持するガイド部が設けられていても良い。更には、テンション部130の内側に温度センサが設けられており、温度センサは、テンション部130の内側に設けられたガイド部の温度を計測することにより、搬送ベルト126の温度を間接的に計測しても良い。また、ヒータによりガイド部を加熱することでテンション部130に熱伝導させても良い。
上記実施形態1,2では、成形シート10は、基材20と熱膨張層30とを備えていた。しかしながら、上記実施形態で示した成形シート10は一例であり、層構成、大きさ、厚み等が異なる様々な種類の成形シート10を使用することができる。例えば、成形シート10は、インクを吸収して受容するインク受容層を備えていても良い。インク受容層は、印刷用のインク、トナー等を表面に定着させるための好適な材料によって形成される。或いは、成形シート10は、他の任意の材料による層を備えていても良い。
上記実施形態1,2では、制御部181において、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することによって、造形装置100,200の各部を制御した。しかしながら、本発明において、制御部181は、CPUの代わりに、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、各種制御回路等の専用のハードウェアを備え、専用のハードウェアが、造形装置100の各部を制御しても良い。この場合、制御部181の各機能を個別のハードウェアで実現しても良いし、各機能をまとめて単一のハードウェアで実現しても良い。また、各機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現しても良い。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記1)
電磁波を照射されることにより膨張する成形シートを載せて搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトに載せられて搬送されている前記成形シートに前記電磁波を照射する照射部と、
前記搬送ベルトを加熱する加熱部と、を備える、
ことを特徴とする造形装置。
(付記2)
前記搬送ベルトの内側には、前記搬送ベルトを支持し、かつ前記搬送ベルトとの間で熱伝導を行うガイド部を備える、
ことを特徴とする付記1に記載の造形装置。
(付記3)
前記加熱部として、前記搬送ベルトの搬送方向における前記照射部よりも上流側に配置された少なくとも1つのヒータを備える、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の造形装置。
(付記4)
前記加熱部として、前記搬送方向における前記照射部よりも上流側において、前記搬送ベルトの搬送面の下方に配置された第1ヒータと、前記搬送面の上方に配置された第2ヒータと、を備える、
ことを特徴とする付記3に記載の造形装置。
(付記5)
前記加熱部として、前記搬送ベルトの搬送方向における前記照射部よりも下流側に配置された少なくとも1つのヒータを備える、
ことを特徴とする付記1から4のいずれか1つに記載の造形装置。
(付記6)
前記加熱部として、前記搬送方向における前記照射部よりも下流側において、前記搬送ベルトの搬送面の下方に配置された第3ヒータと、前記搬送面の上方に配置された第4ヒータと、を備える、
ことを特徴とする付記5に記載の造形装置。
(付記7)
前記加熱部により加熱されている前記搬送ベルトの温度を調整する温度調整部、を更に備える、
ことを特徴とする付記1から6のいずれか1つに記載の造形装置。
(付記8)
前記温度調整部は、前記加熱部により加熱されている前記搬送ベルトの温度が基準温度よりも高い場合、前記搬送ベルトを冷却し、前記加熱部により加熱されている前記搬送ベルトの温度が前記基準温度よりも低い場合、前記搬送ベルトを加熱する、
ことを特徴とする付記7に記載の造形装置。
(付記9)
前記温度調整部として、前記搬送ベルトの内側を通り、熱媒体を循環させる配管を備える、
ことを特徴とする付記7又は8に記載の造形装置。
(付記10)
前記配管は、前記搬送ベルトの内側において、前記搬送ベルトの搬送方向における前記照射部よりも上流側及び下流側の位置と、前記搬送ベルトの搬送面を挟んで前記照射部と向かい合う位置と、を少なくとも通る、
ことを特徴とする付記9に記載の造形装置。
(付記11)
前記配管は、前記加熱部により加熱されている前記搬送ベルトの温度が基準温度より高い場合、前記基準温度より低温の前記熱媒体を循環させ、前記加熱部により加熱されている前記搬送ベルトの温度が前記基準温度より低い場合、前記基準温度より高温の前記熱媒体を循環させる、
ことを特徴とする付記9又は10に記載の造形装置。
(付記12)
前記温度調整部として、前記搬送ベルトに向けて送風する少なくとも1つのファンを備える、
ことを特徴とする付記7から11のいずれか1つに記載の造形装置。
(付記13)
前記少なくとも1つのファンとして、前記搬送ベルトの搬送方向における前記照射部よりも上流側に配置された第1ファンと、前記搬送方向における前記照射部よりも下流側に配置された第2ファンと、前記搬送ベルトの搬送面を挟んで前記照射部と向かい合う位置に配置された第3ファンと、を備える、
ことを特徴とする付記12に記載の造形装置。
(付記14)
前記少なくとも1つのファンにより送風される空気を加熱するファン用ヒータを更に備え、
前記少なくとも1つのファンは、前記ファン用ヒータにより加熱された前記空気を前記搬送ベルトに向けて送ることにより、前記搬送ベルトを加熱する、
ことを特徴とする付記12又は13に記載の造形装置。
(付記15)
前記少なくとも1つのファンは、前記搬送ベルトを冷却する場合、前記加熱部により加熱されている前記搬送ベルトの温度に応じて前記少なくとも1つのファンの回転数を変更する、
ことを特徴とする付記12から14のいずれか1つに記載の造形装置。
(付記16)
前記成形シートは、
基材と、
前記基材の一方の主面の上に積層され、加熱により膨張する熱膨張層と、
前記基材の他方の主面又は前記熱膨張層の上に積層され、前記電磁波を吸収して前記電磁波を熱に変換することにより前記熱膨張層を加熱する熱変換層と、を備える、
ことを特徴とする付記1から15のいずれか1つに記載の造形装置。
(付記17)
前記熱膨張層は、所定の膨張温度以上に加熱されると膨張し、
前記加熱部は、前記搬送ベルトを前記所定の膨張温度よりも低い温度に加熱する、
ことを特徴とする付記16に記載の造形装置。
(付記18)
搬送ベルトを加熱する加熱工程と、
成形シートを、前記加熱工程で加熱されている前記搬送ベルトに載せて搬送する搬送工程と、
前記搬送工程で搬送されている前記成形シートに電磁波を照射する照射工程と、を含む、
ことを特徴とする造形物の製造方法。
(付記19)
前記成形シートは、
基材と、
前記基材の一方の主面の上に積層され、加熱により膨張する熱膨張層と、
前記基材の他方の主面又は前記熱膨張層の上に積層され、前記電磁波を吸収して前記電磁波を熱に変換することにより前記熱膨張層を加熱する熱変換層と、を備える、
ことを特徴とする付記18に記載の造形物の製造方法。